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神経と興奮の発生
基礎から分かる生物 神経と興奮の発生 1.神経の構造 ① ニューロン 神経細胞のこと.多細胞生物では神経細胞同士が連絡しあい,ネットワークを形成す ることで外界の情報を中枢に伝えたり,中枢からの指令を効果器に伝えたりしている. ② ニューロンの構造 ニューロンは細胞体と軸索からなる.細胞体には核があり,細胞体から多数の突起が 伸びている.そのうちの 1 つである軸索は,神経終末(軸索末端)でとなりのニューロン の樹状突起と接続する.ニューロンでは樹状突起で隣のニューロンから情報を受け取り, その情報が軸索を伝わって神経終末から隣のニューロンへと伝達されている. 49 ③ 有髄神経 シュワン細胞が軸索に巻きついてできた髄鞘をもつニューロンを有髄神経という.髄 鞘同士の隙間をランビエ絞輪という.また,髄鞘を持たない神経を無髄神経という. 2.興奮の発生 ① 静止電位 静止状態(反応していない状態)の神経細胞では,細胞膜内外で電位の差が見られ,細 胞内が細胞外に対して約 40mV~80mV程度負になっている.この電位差を静止電位 という. ② 活動電位の発生 ある強さ以上の刺激(閾値以上の刺激)が神経細胞に与えられると,一時的に細胞内外 の電位が逆転して細胞内が正,細胞外が負の電位となる.この電位変化を活動電位とい う.活動電位の大きさはおよそ 100mV程度である. この電位変化は一時的なもの(約 1 ミリ秒)で,その後すぐに静止電位に戻る. 電位(mV) 40 0 活動電位 -60 静止電位 刺激 0 1 2 3 4 5 時間(ミリ秒) 50 基礎から分かる生物 ③ 興奮 神経細胞に活動電位が生じている状態を興奮といい,興奮の有無が神経系の情報の信 号として伝えられる. まとめ~興奮が発生するしくみ~ ① 静止状態の細胞に閾値以上の刺激が与えられる. ② 細胞内外の電位差が逆転する. ③ 活動電位が生じて,興奮が発生する. ④ 全か無かの法則 神経細胞は閾値より小さな刺激では興奮せず,閾値以上の刺激を与えないと興奮が起 こらない.また,閾値以上の刺激では,刺激の強さによらず反応の大きさは変わらない. 反応の大きさ 閾値 刺激の強さ ⑤ 刺激の強さの伝え方 刺激の強さによって,神経細胞の活動電位の大きさは変化しないが,刺激が強いほど 活動電位が発生する回数(頻度)が多くなる.そのため,脳などに伝えられる信号の量が 増えることで,刺激の大きさが伝えられる. 51 52 基礎から分かる生物 神経細胞はニューロンとよばれる.ニューロンは核のまわりの細胞体と多数の突起とか らできている.突起のうちの 1 本は長くて( A )とよばれる.他の突起は( B )とよばれ るが,これは短く細かく枝分かれしている.脊椎動物の大部分の( ( C )によって覆われているが,ところどころ( C A )は絶縁体である )を欠く部分があり( いる.この部分を ( D )という.静止状態の神経細胞では,細胞内の( e が細胞外より高く,( f 細胞内が細胞外よりも( A )が露出して )イオンの濃度 )イオンの濃度は細胞内より細胞外の方が高い.静止時の電位は, g )になっている.これを( h )とよぶ.神経はある値以下の 刺激には反応しないが,その値以上の刺激を受けると,その部分の電位が逆転し,細胞内が細 胞外に対して( i )になる.この電位変化を( j )という. 問 1 空欄( A 問 2 ( A )~( j )に適当な語句を埋めて文を完成させよ. )を電気的興奮が伝わるとき,( C )によって覆われているものと,覆われてい ないものとではどちらの方が伝導速度が速いか. 問 3 下線部のような反応様式を何とよぶか. 問 4 生理食塩水中に置いた 1 個の神経細胞に,ある強さの 電気刺激を与えて,細胞外に対する細胞内の電位差 の変化をオシロスコープに記録した.その結果を表 したものが右の図である.縦軸と横軸の適切な単位 を示せ. 問 5 問 4 の図において,(j)の大きさはおよそいくらか. 53 分化した細胞の中でも,ニューロンは極めて特殊なかたちをしている. 図 1 は有髄の運動ニューロンの構造を示したものである.次の設問(1)と(2)に答えよ. (1) 図 1 のア~キは何か.適切な名称を答えよ. (2) 図 1 のアに存在する細胞小器官のうち,核以外の細胞小器官の名称を 3 つ答えよ. 54 基礎から分かる生物 問 1 次の文章の空欄[ A ]~[ e ]にあてはまる最も適切な語句を,以下の〔選択肢〕 から選び,ア~カの記号で解答欄に答えなさい. 神経や筋肉などの興奮性細胞において,ナトリウムイオンの濃度は細胞の[ うが高く,カリウムイオンの濃度は細胞の[ B A ]側のほ ]側のほうが高い.神経細胞の細胞外の電 位を 0mVとするとき,電気的に興奮していない状態(静止電位)では,神経細胞の細胞内は, [ C ]の電位をもつ.興奮部に活動電位が生じると,これに隣接する部位が願次興奮し, 興奮は神経軸索を伝わっていく.これを興奮の[ D ]とよぶ.興奮が軸索の末端に達する と,シナプスで神経伝達物質を放出することにより,次のニューロンに興奮が伝わる.これ を興奮の[ e ]とよぶ. 〔選択肢〕 ア.内 イ.外 ウ.正 オ.伝達 カ.伝導 エ.負 問 2 次の文章の空欄( ア )~( テ )に適当な語句を書きなさい. 神経細胞(ニューロン)は,核のある( からできている.有髄神経では( イ ア ),そこから出ている樹状突起および( )にシュワン細胞が巻きついて( て,ある間隔でくびれがみられる.この部分を( エ ウ イ ) )を形成してい )といい,この存在により( オ )伝 導が可能となる.実際,有髄神経は無髄神経の神経伝導速度の 100 倍にもなることがある. ニューロンはその働きに応じて次の 3 つに分けられる.受容体(感覚器官)の興奮を中枢に伝 える働きをしている( カ )ニューロン,それとは逆に中枢の興奮を作動体に伝える( )ニューロン,および中枢でニューロンとニューロンの間を連絡する( ク キ )ニューロンで ある. ニューロンの細胞膜に存在するナトリウム―カリウムポンプの働きによって,( オンが細胞外にくみ出され,( 55 コ ケ )イ )イオンが細胞内に取り込まれる.これは濃度勾配に逆 らう輸送であり( サ )輸送と呼ばれ,この時に消費されるエネルギーは ATP によってまか なわれる.ところが細胞膜にある( コ )イオンチャンネルを通じて( 外に流れ出し,その結果,細胞膜の外側は( シ )に,内側は( コ )イオンが細胞 )に分極する.この時 ス に生じる電位差を( セ )といい,その大きさは約-70mVである.ニューロンが刺激を受 けると,細胞膜にある( ケ 流入し,( ソ )イオンチャンネルが開き,( )イオンが細胞内に急激に ケ )電位が発生する.これが興奮である.興奮は直ぐにおさまり電位は元の状 態にもどる.この後しばらくは刺激されてもこの部位では興奮が起きない.この時期を( タ )といい,これがあるおかげで興奮の伝導が一方向に進む. ニューロンの末端は次のニューロンと小さなすきま(間隙)を介してつながっていて,この 接続部を( チ )という.( チ )での興奮伝達は( ツ われ,化学物質としてノルアドレナリンや( テ )と総称される化学物質を介して行 )などがある.( ツ )は興奮を伝える側 のニューロンの末端に存在する小胞に蓄えられていて,興奮がこの末端にまで達すると,そ れを感知して小胞が細胞膜と融合し,その結果( ツ )が間隙に分泌される.分泌された( ツ )は相手のニューロンの細胞膜にある受容体に結合し,これが刺激となって興奮が生じ る.その後,直ぐにこれを分解して興奮をおさめるが,( テ )はコリンエステラーゼによ って分解される. 56