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ウリ類たんそ病に関する研究 - 病原菌の植物体侵入機構
とウリ科植物の抵抗性差異( Abstract_要旨 )
安盛, 博
Kyoto University (京都大学)
1964-09-29
http://hdl.handle.net/2433/211352
Right
Type
Textversion
Thesis or Dissertation
none
Kyoto University
【254 】
氏)
安
盛
やす
もり
博
ひろし
学 位 の 種 類
農
学 位 記 番 号
諭
学位授与の 日付
昭 和 39 年 9 月 29 日
学位授与の要件
学 位 規 則 第 5 条 第 2 項 該 当
学位論文題 目
ウ リ類 た ん そ病 に 関 す る研 究
学
農
博
博
第
士
59 号
一病原菌の植物体侵入機構 とウリ科植物 の抵抗性差異(主
論文 調 査 委員
査)
教 授
赤 井 重 恭
論
文
内
教 授 小 野 寺 幸 之進
容
の
要
教 授 塚 本 洋太郎
旨
ウリ類たんそ病菌は多 くの ウリ科植物を侵 し, 成育初期か ら収穫期まで, さ らに青果物 と して市場 に送
られた後 において も侵入 して大害を与えている。 本論文 はこのよ うなたんそ病菌の寄主体侵入機構を追究
し, ウ リ科植物が示す抵抗性の機作を明 らかに したもので ある。
ウ 1) たんそ病菌分生胞子の発芽はきわめて不安定で あ って, わずかの条件 の変化 によ って もー影響 さ,れ
る。 しか し, 胞子が寄主植物の葉上 にある場合 にはきわめて安定 した発芽を示 した。 このよ うな効果 はキ
ュウリ成葉を水蒸気蒸留 して得た中性池および酸性池 によ って も得 られるが, これはキ ュウ リ成業か ら揮
発するキュウリ臭 の主成分で あるキ ュウリアル コール, キュウ リアルデ ヒ ドなどの作用 と考え られる。
本菌の分生胞 子 は多量の脂肪成分を含んでいるが, それ らは油滴 と して胞子 中に認め られ る。 発芽 した
分生胞子 は大部分直 ちに付着器をつ くる。 付着器をつ くると, 胞子の内容は付着器 中- 移動 して胞子は空
虚 となる。 この付着器が発芽をは じめると, 貯蔵物質である脂肪 は分解 されて低分子の脂肪酸 とな り, 浸
透圧 も高 くな って,
140 気圧 にまで達す る。 病原菌は付着器 か ら侵入糸を出 して寄主体表皮 のクチクラ層
を貫通するものと考え られるが, 脂肪 はこの際のエネル ギー源 と して重要 な役割を果 しているものと解せ
られ る。
以上のよ うに, 本菌はまず細胞縫合線上のクテ クラ層を破 り, その後菌糸は自巳の分泌す るペ クチン分
解酵素 によ って細胞 中層を溶解 して伸展 してゆ く。 しか し病原菌が侵入 した抵抗性品種 の葉では, 病原菌
が細胞原形質 に達す る前 に, 細胞中層 に変質がおこって, 抵抗性があ らわれるものと考え られる。 すなわ
ち本菌の分生胞子を接種 したキュウ リ (台湾毛馬, 抵抗性) の子葉片 は, 健全な場合 には市販ペクチナー
ゼや培養 ろ液で完全 に解離 されるが, 接種葉で は付着器下の細胞 中層が変質 するので, その部分の細胞 は
解離 されないo この部分のペ クチンは高度 にエステル化 されているものと解 しているO このような細胞 中
層の変質 ひん度はウ リ科植物の問で異な っていて, 変質率 は侵入率 と逆比的な関係を示 し, 強抵抗性で あ
るカボチ ャなどでは変質反応が顕著で ある。 このよ うな変化 は, 病原菌が細胞 内へ侵入する以前 におこる
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もので あ って, 侵入後の原形寅 の抵抗反応 とは別個のもので ある。 原形寅 の抵抗反応 はカボチ ャでは顕著
に認め られるが, キ ュウ リではほとん ど認め られない。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
ウ リ科植物 のたんそ病 は圃場 において キ ュウ リその他の成業を侵 して被害を与 え るのみでな く, スイ カ
I
な どで は市場 に輸送 された後 にも果実 に激発 して, 大 きな被害を与 えている。 しか し, 本病 に対するウ リ
科植物の抵抗性を比較考察 し, その機作 の解明を試みた研究 は少 ない。 本論文 は この問題 について, と く
にキ ュウ リ品種 について研究を行な った もので ある。
本菌 は主 と して細胞縫合部 に付着器を形成 し, そ こか ら自巳の分泌するペ クチ ン分解酵素 によ って細胞
中層を溶解 しつつ伸展す るが, キ ュウ リ品種 における抵抗性 は細胞原形質 の示す抵抗反応 によるよ りは,
む しろ細胞 中層 の速やかな変質 に基づ くものと考え られ る。 すなわち抵抗性品種 では細胞中層 はその変質
によ って病原菌菌糸の分泌す るペ クチ ン分解酵素 によ って分解 されな くなるが, このよ うな変質 のひん度
は抵抗性品種 におけるほど高 く, 侵入率 と逆比的な関係 を示 しているO もちろん この変質 は細胞原形質 の
作用 によるもので あ って, 細胞を麻酔す るとこの反応 がおこらない ことか らも明 らかで ある。 かつ この反
応 は侵入後の細胞原形質 の示す抵抗反応 とは異質 の もので ある。
以上 の知見 は植物の侵入抵抗を病原菌のペ クチン分解酵素 の役割 と細胞膜 の反応 の面 か ら解析 した顕著
な例 と して注 目に価す るとともに, 植物病理学上 さ らに病態生理学上 にも多大 の価値を有する も の で あ
る。 よ って本論文 は農 学博士 の学位論文 と して価値 あるものと認 める0
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