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退職金の運用について
退職金の運用について (はじめに) 今般、 『退職金貧乏 定年後の「お金」の話』という本を出すことになりまし たので、エッセンスを御紹介します。直接の対象は、長年サラリーマン(会社員 や公務員など)として勤めて来て、退職が近い人と退職した人ですが、自営業の 方などにも御読みいただければ、参考になる事は多いと思います。 (要旨) 退職金で、まず借金を全部返しましょう。あとは、「長生きをして、その間に インフレになるリスク」に備えて対策を打ちましょう。 具体的には、数百万円を残して生活費に使い、年金の受取開始を出来るだけ遅 らせましょう。残った数百万円は、主に株と外貨で運用しましょう。 (老後のリスク) 老後の生活は夫婦で1億円程度かかります。しかし、退職金も年金も出ますし、 親からの遺産が相続できるかもしれません。大雑把に言って、サラリーマンの半 分は、何とかなります。残りの半分も、チョッと倹約するか老後も仕事を探せば、 何とかなるでしょう。 老後の主なリスクは、長生きをし、その間にインフレになる事です。退職金を 全部現金(銀行預金を含む)で持っていると、予想外に長生きをした時に不足し てしまいますし、インフレになった時にお手上げですから、そうしたリスクを如 何に軽減するかを考える必要があります。 その観点からすると、実に頼もしいのが公的年金です。第一に、死ぬまで年金 が受け取れますから、120歳まで長生きしても、最低限の生活は出来るでしょ う。第二に、インフレになると年金支給額も増えて行くので、インフレのリスク に対する備えにもなっているのです。 公的年金というと、将来は破綻すると思っている人も多いようですが、受取額 が今より目減りする事はあっても、破綻して支払いが止まるといった事は考えに くいので、頼りにしましょう。 リスクに備えるというと、生命保険を考える人もいると思いますが、定年前後 のサラリーマンにとって、生命保険は原則として必要ありません。生命保険とい うのは、 「加入者が支払った金額から保険会社の費用や利益を差し引いて、残りを 死亡した人の遺族に支払う」 という物なので、 期待値としてはマイナスなのです。 若い人が「自分が死んだら残された家族が路頭に迷う」と考えて生命保険に加 入するのは合理的ですが、定年前後の人は「自分が死んでも、子供は働ける年齢 だし、女房には年金が出るので、路頭に迷う事は無いだろう」と考えるのが普通 です。そうであれば、生命保険に加入すべきではありません。わざわざ保険会社 のコストと利益を負担してあげる必要は無いからです。 (実際の運用例) 退職金を受け取ったら、まず借金をすべて返しましょう。借金の金利は預金の 金利よりも遥かに高いので、 「借金を返さずに退職金を預金に寝かせておく」のは 愚かなことです。借金と預金の金利差は、銀行のコストや利益などですから、わ ざわざそんな物を支払う必要はないのです。 次に、年金の受取開始時期を出来るだけ遅らせましょう。年金は、原則として 65歳から支給されますが、60歳と70歳の間であれば、受取開始時期を選ぶ 事ができるのです。当然ながら、開始時期が遅い方が毎月の支給額は多くなりま すから、退職金を生活費に使って食いつなぎながら、少しでも我慢しましょう。 そうすれば、長生きをしている間にインフレが来ても安心です。 もっとも、ギリギリまで我慢するのではなく、手元に数百万円は残しておきま しょう。葬儀費用として、それくらいは相続人に残しておきたいですし、何らか の事情でお金が必要になる場合もあるからです。 手元に残す数百万円は、主に株式と外貨で運用しましょう。株と外貨はインフ レに強い資産なので、 「長生きしている間にインフレになるリスク」に対する備え として適切な資産です。株は、個別銘柄を選ぶのではなく、ETF(上場されて いる投資信託)が良いでしょう。 ただし、株式や外貨は一度に買うのではなく、時間をかけて少しずつ買ってい きましょう。たまたま退職日が株価のピークだったりすると、悲惨な目に遭いか ねないので、そうしたリスクを避けるためです。 退職金を受け取ってからも、定年後再雇用などで収入を得て、その後に退職金 で生活するという場合には、退職金を数年間運用する必要があります。これを株 や外貨で運用すると、買った時と売った時が偶然高値だったり安値だったりする 運により大きな影響を受けてしまいます。それを避け、かつインフレのリスクを 避けるためには、 「個人向け国債10年物変動金利型」と「物価連動国債(2015 年以降、個人も購入が可能になる予定) 」で運用しましょう。もっとも、売買手数 料などを節約することも必要ですから、2〜3年後に使う予定の資金は、定期預 金で運用しましょう。 今回は、以上です。詳しい事は、拙著『退職金貧乏 定年後の「お金」の話』 をご覧いただければ幸いです。