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大学生のメンタルヘルス

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大学生のメンタルヘルス
保健センター
健康通信
From Medical Service Center
大学生のメンタルヘルス
はじめに
の社会の取り組むべき課題として浮上しています。青年
期に限っても、社会的ひきこもり、
さまざまな社会的逸脱
入学試験に無事合格し、希望に満ちて入学してきた新
行動、自殺、
さらに近年徐々に若年層に浸透しつつある
今日、心身医学の分野では、ストレスがいろいろな病気
入生も、大学生活を続けるうちにさまざまな問題に遭遇す
薬物乱用の問題などがあります。
や不健康に影響することが知られています。
るようです。保健センター相談室やサポートルームでは多
くの学生が学校や家庭での人間関係に関して悩んだり、
新しい生活に困惑したりして相談に訪れます。加えて、上
狭義のメンタルヘルスと
広義のメンタルヘルス
ⅰ ストレスが身体にあらわれた場合(心身症など)
心身症とは、ストレスが自律神経系などを介して病気や
症状に強く影響している身体疾患の総称で、高血圧症、
「まず、ストレスの状態に早く気づいて、ストレスと上手に
回生にもなると就職活動や将来の進路に関する相談も
メンタルヘルス
(精神保健:精神健康とも訳されます)
喘息やアレルギー、胃・十二指腸潰瘍、過敏性腸症候
付き合うこと」が心身の健康を維持するポイントになるとい
増えてきます。
しかしながら、相談内容の多くは心身的に
とは、WHOの 定 義によると「 生 物 学 的(biological)
、
群、蕁麻疹など多くのものがあります。また、虚血性心疾
われています。自力でのストレス対策(ストレスのセルフ・コ
も社会的にもおとなとこどもの境界領域にある大学生とし
医学的(medical)
、教育的(educational)および社会的
患、脳血管障害、糖尿病など生活習慣病の発症・経過
ントロールといいます)
として、一人ひとりの「ストレス耐性」
て、いたって健全な場合がほとんどです。発達心理学で
(social)側面から精神健康を促進して、よりよい人間関
にもストレスが強く影響することが知られています。
の強化が必要というのです。そのためには、ストレスに対す
青年期・成人初期と呼ばれるこの時期は、自我同一性
係を作ること」とされています。つまり心の病気の予防・治
ⅱ ストレスが心に影響する場合 る「気づき」を養うことが第一です。この気づきにもとづい
を獲得し、これに基づく親密な人間関係の形成を課題と
療が狭義のメンタルヘルスなら、
精神的不健康状態を正し
ストレスに関連したこころの障害として適応障害や外傷
て、充分な休息“rest”と、
リラクセーション“relaxation”
する重要な時期であり、反面、不安やいらだち、そして孤
く認識し、
これを改善してゆくのが本来のメンタルヘルスと
後ストレス障害などがあります。ストレスが除去されれば、
(これに気晴らし“recreation”を含め、ストレス対策の3R
立への恐れも強まる時期でもあります。この時期が「疾風
も言えるでしょう。そしてこの本来のメンタルヘルス向上の
徐々に改善することがほとんどですが、ストレスが慢性的
と呼ぶこともあります)などを行うことも有効です。要する
怒涛の時期」といわれる所以です。
ためのひとつの重要な鍵となるのが個人・集団のレベル
に続いたり、強烈なものであった場合にはまれに長引く場
にストレスは「日常生活上避けられないもの」と認識して、
また、医学的に見れば、この時期は一部の精神疾患
で行なわれるストレス・コントロール(集団レベルで行うとき
合もあります。
それを肯定的にとらえる姿勢と余裕が大切です。
の好発年齢でもあります。例えば、統合失調症は20歳
はストレス・マネージメントといいます)であるとされています。
ⅲ ストレスの影響が行動にあらわれる場合
台前後に発病することが知られています。さらに、これま
では壮年期の疾患と考えられていたうつ病も、近年では
若年化傾向が認められています。他にも社会不安性障害
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ストレスが影響する健康問題
行動医学の分野ではストレスがアルコールや薬物の乱
メンタルヘルスとストレス
用・依存、ギャンブルなどへの依存や自他を害しかねない
親として、おとなとして周囲が出来る事
行動(事故多発、自傷行為、虐待やハラスメントなど)へ
もっとも、このようなセルフ・コントロールには、当然なが
の指向を招く可能性が指摘されています。
ら限界もあります。特に青年期ごろでは知識のうえでは充
(以前は対人恐怖症と呼ばれていました)や思春期妄
ストレスという言葉は、カナダの生理学者セリエが提唱し
想症もこの時期前後にしばしば認められる疾患です。
しか
て以来、日常用語としても一般的に使われるようになりま
しながら、今日の医学の進歩により、これらの疾患のいず
した。本来的には、気候の寒暖などの物理的要因もストレ
もっとも、
これらはいずれもストレス自体が直接的に原因
裕をもつことが、おとなより困難な傾向にあります。おとな
れも早期に適切な治療を受ければ、概ね治癒可能です。
スの一つなのですが、現代では習慣的に心理社会的な
したというより、ストレスに対して心身が誤った適応(過剰
の知識や経験が本人のストレス対処に有用であるのはも
いまや、必要以上にこ
内容を示すことの方が多くなっているようです。この心理
な適応や、持続不可能であるような適応)を続けた結果、
ちろんの事、周囲の心理的支援がそれにも増して本人の
れら精神疾患を恐れ
社会的なストレスにもさまざまな種類があり、満員電車の長
すなわち生体側のストレス対処法の問題点に由来してい
内在するストレス耐性を高めてゆきます。そしてこのストレス
る時代ではなくなって
距離通勤・通学のような日常生活の中でのささいな不愉
る事が知られています。本来、ストレス自体は適度でさえあ
耐性がさまざまなメンタルヘルス不全への免疫や治癒へ
きました。
快の積み重ねもストレスの一つです。
しかし、ストレスで最
れば、むしろ心身の発達や健康維持に必要であるともい
の力となるのです。付け加えるなら、発達心理学における
むしろ現代ではいじ
大のものは、人生の節目におこる大きな出来事(ライフイ
われます。
われわれ成・壮年期のメンタルヘルス実現のための達成
めや虐待、ハラスメント
ベントと呼ばれます)でしょう。これには家族との死別・別
など従来的には疾病
離などの喪失体験はもちろん、進学や就職、結婚、転居
と考えられなかった精
など生活基盤の変化も含まれます。新生活の開始や新し
神的不健康(メンタル
い人間関係の取り結びが、一方で新しい状況に適応す
ストレスには不可避なものも多く、
また善悪の両面がある
ヘルス不全)
に由来す
るための強い心のエネルギーを必要とし、それ自体ストレス
とすれば、日々増大するストレスに対してどのように対処す
る諸問題がわたしたち
となることもあるのです。
ればいいのでしょうか?ストレスに関する最近の学説では、
立命館大学父母教育後援会だより[2006年冬号]
分な場合でも、問題解決のため幅広い視野や心理的余
課題は「未来の世代への関心」にあるのですから。
ストレスとのつき合い方
立命館保健センター
■衣笠キャンパス 075-465-8232
■びわこ・くさつキャンパス 077-561-2635
http://www.ritsumei.ac.jp/mng/gl/hoken/medical-j.html
立命館大学父母教育後援会だより[2006年冬号]
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