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経済原論Ⅱ

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経済原論Ⅱ
はじめに
経済原論Ⅱ
経済原論
Ⅱ
2004農経学科
2004
農経学科
再生産のしくみと景気変動
(2年11/30,3年11/19)
担当:久野秀二(
Hisano, Shuji)農業市場学分野・助手
o 前回考察した拡大再生産(資本蓄積)のメカニズム,及びその遂
行に不可欠な労働力商品の再生産のメカニズム(相対的過剰人
口)は,生産過程に焦点をあて,流通過程における売買の成否に
ついては不問に付していた。
o しかし,年間総生産物の各要素がどこへどのように流通し,価値
的に・使用価値的に補填されるのかが明らかにされなければ,資
本の再生産の分析は完了しない。
o 価値的・使用価値的な補填の問題を考察するためには,個別資
本や社会的総資本という設定ではなく,社会の総生産物の各要素
を生産する諸部門への区分が必要。
Hokkaido University, Faculty of Agriculture
Hokkaido University, Faculty of Agriculture
社会の「物質代謝」としての再生産
単純再生産の成立条件
o 自然生態系における物質代謝のアナロジー
o 社会的総生産物の構成
n 植物群の内部における代謝
n 動物群の内部における代謝
n 植物群と動物群との間の代謝
n 両群と外部環境(微生物等)との間の代謝
è各々の代謝のバランスによって生態系が維持され再生産される
è不断に動揺するも一定の比率的構造=自然法則が貫徹
o 社会の「物質代謝」
n
n
広義)資源à生産(加工)
à流通à消費à廃棄à処理
狭義)生産と消費(供給と需要)が各生産要素の内部および相互間
で取り結ばれる関係
n
n
n
価値的構成 W’=C+V+M
素材的構成 W’=生産手段+消費手段(生活手段)
社会的総資本を生産手段生産部門(Ⅰ)と消費手段生産部門(
Ⅱ)に
区分して考察
価値的構成
価値的構成
Ⅰ部門
=W’
Ⅰ部門 C
C11+V
+V11+M
+M11=W
=W’’11
Ⅱ部門
=W’
Ⅱ部門 C
C22+V
+V22+M
+M22=W
=W’’22
o 補填のあり方
n
n
u
生産手段商品=各部門の生産過程で消費された生産手段Cを補填
消費手段商品=各部門の労働者の賃金V と資本家の個人的消費M とし
て消費された消費手段を補填
Hokkaido University, Faculty of Agriculture
Hokkaido University, Faculty of Agriculture
・・・つづき
・・・つづき
o 単純再生産の成立条件
<供給>
「C 1+V1+M 1」è生産手段として
「C 2+V2+M 2」è消費手段として
n
n
n
<需要>
n
n
「C 1」& 「
C 2」è生産手段として
「V1+M 1」& 「V2+M 2」è消費手段として
固定資本=不変資本のうち機械・設備など,1サイクルの生産過程では
素材的に消滅せず,耐用期間中は何回も何年でも機能し続けるが,そ
の間,価値の一部ずつしか価値移転しない(減価償却)cf. 流動資本
u この価値移転額は生産物の販売によって貨幣に転化(
Wà G)した後,
減価償却基金として積み立てられ,すぐに現物補填(GàW)されないが,
耐用期間終了後に一挙投下され,固定資本が更新される
• 耐用期間中(G積立)での「需要なき一方的供給」
• 固定資本の購入・更新時点(GàW)での「供給なき一方的需要」
「C1」の生産手段としての部門内交換
「V2+M2」の消費手段としての部門内交換
「V1+M1」と「
C2」との部門間交換
C1
V1+M1
C2
V2+M2
Hokkaido University, Faculty of Agriculture
基礎条件 「V1+M 1」=「
C 2」
貨幣還流条件(省略)
固定資本の補填条件
u
o バランスが必要な「物質代謝」
は以下の通り
n
n
n
Ⅰ
Ⅰ4000C+1000V+1000M=6000
4000C+1000V+1000M=6000
Ⅱ
Ⅱ2000C+
2000C+ 500V+
500V+ 500M=3000
500M=3000
価値的補填 市場での売買を通じた商品の貨幣への転化
素材的補填
u
n
n
素材的構成
素材的構成
生産手段商品
生産手段商品
消費手段商品
消費手段商品
u
このギャップは社会的総資本レベルでは相殺され,「解決」される。した
がって,単純再生産が成立するための条件は 「貨幣的蓄積(償却基金
積立総額)=現実的蓄積(償却基金投下総額)」
Hokkaido University, Faculty of Agriculture
1
拡大再生産の成立条件
・・・つづき
o バランスが必要な「物質代謝」
は以下の通り
o 社会的総生産物の構成
価値的構成
価値的構成
Ⅰ部門
=W’
Ⅰ部門 C
C11+V
+V11+M
+M11 (mc
(mc11+mv
+mv11+mm
+mm11))=W
=W’’11
Ⅱ部門
=W’
Ⅱ部門 C
C22+V
+V22+M
+M22 (mc
(mc22+mv
+mv22+mm
+mm22))=W
=W’’22
n
n
n
素材的構成
素材的構成
生産手段商品
生産手段商品
消費手段商品
消費手段商品
o 拡大再生産の成立条件
※拡大再生産の前提=「
V
※拡大再生産の前提=「
V11+
+M
M11>C
>C22」(つまり設備投資の先行)
」(つまり設備投資の先行)
o 補填のあり方
<供給>
n
n
Ⅰ
Ⅰ4400C+1100V+1100M
4400C+1100V+1100M(440mc+110mv+550mm)=6600
(440mc+110mv+550mm)=6600
Ⅱ
Ⅱ1600C+
1600C+ 400V+
400V+ 400M
400M (160mc+40mv+200mm)=3000
(160mc+40mv+200mm)=3000
n
n
n
基礎条件 「V1+mc1+mm 1」=「
C 2+mc2」
貨幣還流条件(省略)
蓄積基金
剰余価値が追加的不変資本(mc1, mc2)および追加的可変資本
(mv1, mv2)として投下しうる一定の大きさに達するまでのタイムラグ
• 蓄積期間中(G積立)での「需要なき一方的供給」
• 蓄積基金の投下(GàW)時点での「供給なき一方的需要」
u このギャップは社会的総資本レベルでは相殺され,「解決」される。した
がって,拡大再生産が成立するための条件は 「貨幣的蓄積(蓄積基金
積立総額)=現実的蓄積(蓄積基金投下総額)」
u
「C 1+V1+M 1」è生産手段として
「C 2+V2+M 2」è消費手段として
<需要>
n
n
「C 1+mc1」の生産手段としての部門内交換
「V2+mv 2+mm 2」の消費手段としての部門内交換
「V1+mc1+mm 1」と 「C 2+mc2」との部門間交換
「C 1+mc1」& 「C 2+mc2」è生産手段として
「V1+mv 1+mm 1」& 「V2+mv 2+mm 2」è消費手段として
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・・・つづき
・・・つづき
o 固定資本の補填条件
o 単純再生産から拡大再生産への移行過程
n
n
拡大再生産では蓄積するにつれて固定資本額も拡大していくから,
「償却基金積立額>償却基金投下額」となる傾向
この差分(供給過剰)を吸収するだけの追加投資による需要創出
が必要
tt期の貨幣積立額α+
期の貨幣積立額α
期の貨幣積立額
α+ β
/n
β/n
2yr
3yr
30
30
30
40
40
40
50
50
120
150
90
120
B 120
C 150
D 180
積立額
4yr
固定資本額
A 90
1yr
70
投下額
u
u
u
n
n
t-n
n
t
時間
資本の再生産:総括
o 成立諸条件の絶妙なバランスによって資本主義的生産関係が維
持され,再生産されているということ
蓄積を通じた際限のない価値増殖という資本の本性に導かれながら,
資本間の競争と共生が展開 è 不断の動揺(バランス/アンバラン
ス)を繰り返しながらも一定の比率的構造を編み上げている=価値
価値
法則の貫徹
u
u
u
u
u
500M1 を追加投資する場合 ,①1000M1 è ②400mc 1 +100mv 1 +500mm 1
ところが・・・1000V1 +100mv 1 +500mm1 < 2000C2
Ⅱ部門の縮小
これまでⅡ部門で生産された消費手段2000C 2 が Ⅰ部門の労働者1000V 1 と資
本家1000M1 の需要によって消費されていたが,4 0 0 M1需要が減ってしまった
ので,①2000C2 è ②1600C 2 , 有機的構成不変なら ①500V2 è ②4 0 0 V2
拡大再生産の開始
u Ⅰ② 4400C1 +1100V1 +1100M1 =6600
u Ⅱ② 1600C2 +400V2 +400M 2 =2400
u 縮小された Ⅱ部門の① 400C2 +① 100V2 分の消費手段の処理 è 資本家によ
る追加的消費 or 廃 棄 or 商品在庫として持ち越し
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n
Ⅰ① 4000C1 +1000V1 +1000M1 =6000
Ⅱ① 2000C2 +500V2 +500M 2=3000
u
β
α
0
Ⅰ部門の先行的拡大
Ⅰ部門内での再配分
u
>
期の現物補填額α
期の現物補填額
α/n
> tt期の現物補填額α/n
60
30
n
n
・・・条件の不成立=需給の不一致(+)
à価格の変動à 資本の移動
à需給の一致=条件の成立=価値の実現
à条件の不成立=需給の不一致(ー)
à価格の変動à 資本の移動・・・
o たんに「不断の動揺」が繰り返されるだけではない・・・矛盾の蓄積
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景気変動(産業循環)
o 好況から繁栄へ
n
n
n
n
市場シェアの獲得と利潤極大化をめぐって競争が展開
資本の加速度的蓄積。その一方で,
u
第Ⅰ部門と第 Ⅱ部門との不均等発展(ß設備投資の先行)
u
u
資金調達コスト(利子率)の上昇
労働コスト(賃金率)の上昇
u
キャピタルゲイン目当ての投機熱の拡大
過剰生産(過剰供給)による生産と消費の矛盾(ギャップ)が拡大
表面化を遅らせる諸要因(
è矛盾のさらなる拡大)
見込み需要の継続(拡大再生産の継続)
過剰化する固定資本需要への追加投資=投資規模の拡大(さらに貸付
資本への依存によりさらなる利子率の上昇を招く)
u 流通部面における在庫プールとしての商品滞留(需給ギャップが不可視)
u 信用取引による貨幣還流の「円滑化」(現実貨幣還流の成否が不可視)
u
u
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2
・・・つづき
・・・つづき
o 恐慌
o 回復から好況へ
n
n
n
n
需要と供給の逆転 è 過剰生産の表面化と全面化
価格の全面的暴落と生産の縮小
貨幣還流の滞り=支払連鎖の中断 è 金融不安/信用恐慌
生産が支払能力のある需要水準に引き戻される(生産と消費の強制
的適合)
o 不況
n
n
n
n
n
産業と商業の縮小・停滞の累積的継続
生産過程にある資本の価値的・使用価値的破壊(向上の閉鎖や弱
小企業のスクラップ)
商品形態にある資本の価値的・使用価値的破壊(過剰在庫の処分)
賃金率の低下(ß膨大な過剰人口=失業者・産業予備軍の増大)
利子率の低下(貸付可能な遊休貨幣資本の増加)
n
停滞局面での新たな競争の開始
u 生産コスト・資本コスト(原材料価格,賃金率,利子率など)の低
下を梃子とした競争の回復
u 新たな需要創出,そのための製品開拓,市場開拓,技術改良に
よる設備投資需要
o 恐慌回避と財政出動
n
n
ケインズ型有効需要政策
u 公共事業à企業の生産活動の喚起à雇用増加と賃金支払いà
所得増による消費需要の喚起
ケインズ政策の限界
u 不況にもかかわらずインフレが進行=スタグフレーション
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有効需要と不完全雇用の理論と実際
o
供給
供給
生産
生産
雇用
雇用
有効需要
有効需要
o
所得
所得
貯蓄
貯蓄
消費
消費
需要
需要
投資
投資
需要
需要
需要
需要
o
需要(ニーズ)は貨幣的支出の裏付けが
需要(ニーズ)は貨幣的支出の裏付けが
あってはじめて需要(購買)となる。後者
あってはじめて需要(購買)となる。後者
の需要を「
有
の需要を「
有効
効需
需要
要」
」と
とい
いう
う。
。
貯蓄にまわらない所得は消費需要に転化。
貯蓄の投資需要への転化を規定するのは
利子率(高 à貯蓄増・投資減,低 à貯蓄源・
投資増)
ケインズの批判・・・投資は資本の限界効率
低下により減,貯蓄は消費性向の傾向的低
下により増 è利子率操作による需要調整
は困難 è需要の恒常的不足(生産要素が
余剰した水準での需給均衡)è不完全雇用
均衡,したがって所得減à消費需要低下à
需要不足の「悪循環」
社会的需要の拡大が必要
n
n
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次週の内容
o 2年目12/7,3年目12/3
o 講義内容
n
n
社会経済学の基礎理論(5)
資本間競争と価格理論
o 次週までの課題
n
とくになし
消費需要の政策的拡大(創出)
投資需要の政策的拡大(創出)
u 期待利潤率 ↑(利子率↓)
u 公共投資(公共事業,軍事など)
Hokkaido University, Faculty of Agriculture
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3
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