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第 5 章 現代の諸問題

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第 5 章 現代の諸問題
第 53 講
大衆社会とその特徴②
第 5 章 現代の諸問題 生命倫理
(センター試験) ア=C イ=A ウ=B エ=D
【解説】
ア 「十分に深い麻酔をかける」ことから、C「動物が受ける苦痛の軽減」につながる。
イ 「重複する実験を行わないようにする」ことは、A「動物使用数の削減」につながる。
ウ 「ウサギの目」ではなく、
「目の組織によく似た細胞」を実験に使用することは、B「動
物実験の代替手段への置換」に当たる。
エ 実験動物が快適な環境下で過ごせるように配慮していることから、C「動物が受ける
苦痛の軽減」に当たる。
(センター試験) ③ 【解説】
体細胞クローンは、親と全く同じ遺伝子を持つので、これを用いて臓器を作成すれば、移
植に際しての拒絶反応が少ないとみられている。しかし、クローン技術によって新たな生命
を誕生させることについては倫理的な問題がある。ips 細胞による再生医療技術の進展が今
後どのように進んでいくか注目されるところである。
① 出生前診断によって「男女の判別や産み分け」は可能である。後半部分は正しい。
② ヒト=ゲノムの解読は 2003 年に完了したが、どの遺伝子配列がどのような役割を果た
すかについては、まだ解明されていない。
1
第 54 講
生命倫理
④ 遺伝子組み換え作物に対する疑問の声は、いまだに存在する。
(センター試験) ③ 【解説】
「定義」によれば、緩和ケアとは、身体的苦痛に限らず、患者と家族または周囲の人々の
あらゆる種類の苦痛(全人的苦痛=トータル・ペイン)を評価・予防・対処することである。
よって、③の「患者の身体的苦痛に集中して治療」という部分が誤りである。 ① 正文。緩和ケアは、様々な苦痛つまり「全人的苦痛」に対処するものである。
② 正文。定義では、患者と「その家族」も対象としている。
④ 正文。コミュニケーションについては定義にも図にも出ていないが、患者とその家族
に対して、全人的苦痛を評価・予防・対処していくためには、しっかりとしたコミュニ
ケーションが取られなければならいことは当然である。
(センター試験) ④ 【解説】
自己の決定が他者に対して影響を与える場合、その自己決定はどこまで許されるのかとい
う倫理的問題がある。その「他者」の中には、今回の例のように胎児も含まれる。
① 「子どもの権利条約」については第 58 講で扱うが、その中には意志表明権も含まれ
る。
② 自己決定権とは、自らが自主的な判断ができるかということである。
③ 「医療行為の選択について担当医に全面的に委任」という部分が誤りである。患者が
十分な説明を受けた上で同意・決定するインフォームド・コンセントが重要な原則であ
る。
② 【解説】
2
(センター試験) 第 54 講
生命倫理
問 4 の③にあるように、インフォームド・コンセントは、患者が十分な説明を受けた上で
同意・決定するという自己決定権の原則に基づく。
(センター試験) ③ 【解説】
「生命の質や患者の意思を重視」と「患者の延命を第一とする」という考え方が逆になっ
ている。本人の意志に基づく尊厳死や安楽死も取り上げられている。
① 正文。将来の病気予測により就職や結婚などに影響が出ることが懸念される。
② 正文。代理母から生まれた子は養子という扱いになるなど課題が残されている。
④ 正文。ノロウィルスなどの院内感染による死者の事例はたびたびニュースで報じられ
る。
(センター試験) ② 【解説】
②はインフォームド・コンセントの原則に反した文章となっている。
① 正文。この出題が 1999 年であることを除いたとしても、臓器移植技術の進展にとも
なって、脳死を人の死であると「考えられるようになってきた」という内容は確かであ
る。
③ 正文。ホスピスや緩和ケアを含む末期医療(終末医療)の説明として正しい。
④ 正文。
「患者の人間らしい生活にも配慮」は生命の質(クオリティー=オブ=ライフ)
の説明として正しい。
(センター試験) ③ 【解説】
脳死の定義は、脳幹を含む脳全体の機能が不可逆的に停止した状態である。脳死になると
自発的な呼吸ができず、やがて体内の酸素が不足して心臓停止(心臓死)に至る。
①と②は、心停止(つまり心臓死)とともにとなっているので、臓器移植法にもとづく脳死
3
第 54 講
生命倫理
としては誤り。④は「脳幹を除く」となっているので誤り。脳幹が機能していれば心臓は鼓
動し、自発呼吸も可能であるが意識はない。つまり脳死ではなく「植物状態」である。
(センター試験) ア=C イ=A ウ=B
【解説】
臓器移植法改正(2009 年)による変更点 改 正 前 臓器移植の場合に限り脳死を人の死と
改 正 後 脳死を一律に人の死とする 認定 本人の生前の意思表示(ドナーカード 本人の拒否の意思表示がない場合は ・臓器提供意思表示カード)が必要 家族の同意で可能 15 歳未満の者の臓器移植は認めない 年齢制限の撤廃 ア 口頭での意思表示について改正前は認められなかったが、改正後は本人が書面で拒否
していない限り、家族が認めれば臓器提供が可能となった。さらに改正前は不可能であ
った 14 歳からの臓器提供も可能となった。
イ 本人の意思表示(ドナーカード)、15 歳以上であること、家族の同意を得ている。よっ
て改正前・改正後ともに認められる。
ウ 臓器提供を拒否する意思を書面で示している場合、改正前・改正後ともに認められな
い。
4
第 56 講
その他の現代の諸問題①
環境倫理
(センター試験) a=① b=④
【解説】
「民を殺すは国家を殺すなり」は田中正造の言葉。古河が経営する足尾銅山から流出した
鉱毒が渡良瀬川流域に甚大な被害を及ぼしたことに対し、もと衆議院議員(栃木県選出)の田
中正造は農民とともに闘い、明治天皇に直訴を試みるなど(直訴状を書いたのは幸徳秋水)公
害問題に生涯をささげた。 ② 石牟礼道子は、水俣病患者に寄り添う立場から『苦界浄土』を著した。
③ 南方熊楠は、明治政府による神社合祀令による神社の統廃合から、鎮守の森が破壊さ
れることに対して、自然保護のみならず、人々の心の拠り所を失うとして反対した。
(センター試験) ③ 【解説】
「全参加国に対して一律に」という部分が誤りである。先進国の中でも温室効果ガスの排
出削減目標値が 1990 年を基準として日本は 6%、アメリカは 7%、EU は 8%と差が設けら
れ、さらに開発途上国に対しては排出削減が義務づけられなかった。
① 正文。
「宇宙船地球号」はアメリカのボールディングらが提唱した言葉。
② 正文。1992 年、ブラジルのリオデジャネイロで開催された地球サミットでは、
「持続
可能な開発」をスローガンとするリオ宣言が採択された。
④ 正文。
「地球規模で考え、足元から行動しよう」は、環境に配慮した品物を購入する
グリーン=コンシューマー、リサイクル運度やゴミ削減運動、フリーマーケット運動な
ど、身近なことからはじめる環境保護運動のこと。
5
第 56 講
その他の現代の諸問題①
(センター試験) ④ 【解説】
閉鎖システムとしての考えは正しいが、
「廃棄物が高度の科学技術によって船内で完全に処
理されている」ではなく、汚染物質などを地球の外に排出することはできないから、いかに
して地球規模の環境破壊を防ぐことができるかということが重視されている。①②③は正文
として確認のこと。 (センター試験) ③ 【解説】
の②で確認した通り、
「世代間倫理」は自分たちの世代だけでなく、将来の世代にも責
任を負うべきだとする考えである。
① 文章の後半が「食物連鎖」の説明になってしまっている。
② 「暮らし続けている人々」ではなく、原発事故などによる環境破壊で、それまでの居
住地を離れなければならなくなった人々を環境難民という。
④ 「経済や消費の水準をさらに高めながら」ではなく、それを抑制もしくは脱却して、
リサイクルなどをすすめながら環境に対する負担を軽減するのが循環型社会の発想で
ある。しかし大量生産・大量消費に慣れてしまった現代の人々に、その見直しができる
かどうか疑問視する声もある。
6
第 56 講
その他の現代の諸問題①
(センター試験) ② 【解説】
「動植物の権利を侵害するおそれがある」として、動物や自然環境を「他者」と見なして
尊重している。アマミノクロウサギ訴訟や高尾山天狗裁判などのように、自然の生存権を主
張する人々もいる。
① 「私たちが現在の生活レベルを享受しつづけるため」という人間本位の考えは、動植
物をも尊重するという設問の趣旨に反している。
③ 動物たちの死を「悲しむ人々が・・・いるのだから」と、人間本位の立場から見ており、
これも設問の趣旨に反している。
④ 「先人たちの偉大さを思うならば」としており、動植物など自然環境を対象としてい
ない。
(センター試験) ② 【解説】
問 4 の④で確認した通り、循環型社会の説明として正しい。
① 環境アセスメントの説明である。
③ 世代間倫理の説明である。
④ 「地球規模で考え、足元から行動しよう」というスローガンの説明である。
7
第 56 講
その他の現代の諸問題①
(センター試験) ③ 【解説】
「世代間倫理」の説明として正しい。
① レイチェル=カーソンは『沈黙の春』で、DDT などの有機塩素系農薬や殺虫剤の大
量使用による生態系の破壊について警鐘を鳴らしたのであって、
「地球温暖化やオゾン
層破壊」ではない。
② 「現地で」抜本的な解決策を打ちたてるのではなく、国を超えた地球規模で対策を講
じなければならない。
④ 京都議定書のように発展途上国(開発途上国)には排出量削減の義務が課せられていな
い。
(センター試験) a=④ b=③ c=④ d=① e=③ f 1=④ 2=② 3=③
【解説】
a
ア 水俣病の説明文であるので、
『苦界浄土』を著した石牟礼道子が適切である。
イ 神社合祀に反対しているので、南方熊楠が適切である。
ウ この説明文から安藤昌益を導き出すのは難しいだろう。この設問に関しては、アイエ
を確定させて正解を④とする方法が良いだろう。
エ 足尾銅山鉱毒事件の説明文であるので、田中正造が適切である。
b 1972 年にストックホルムで開催された国連人間環境会議に関する出題であるので、そこで
のスローガン「かけがえのない地球」と、人間環境宣言についての理解を問うものである。
人間環境宣言の内容は、環境は人類の生存権に関わる重要問題であるから、各国が解決に向
けて積極的に行動すべきというものである。この内容をもっとも表しているのは③である。
ちなみに③の文章は人間環境宣言の前文の一部を要約したものである。①は貧困問題、②は
人口爆発による飢餓問題、④は環境保護だけでなく国際平和や経済成長にも触れられている
8
第 56 講
その他の現代の諸問題①
ので、消去法も併用して正解を導き出したい。
c
でも扱った「自然の権利」に関する出題である。①②③はともに人間以外の動物を保護
するものであるが、④だけは「洪水の危険性」という人間を対象としたものになっているの
で誤りである。 d
・
・
で扱った通り、将来世代に対しても責任を負う「世代間倫理」である。
e
「これまで環境破壊を引き起こしてきた」北半球の先進国と、南半球の開発途上国との間 で生じる対立が南北問題である。環境破壊が先進国には許されて、開発途上国には許され
ないというのは先進国の身勝手であるというのが開発途上国の主張であるが、それに対して
先進国は、地球環境問題は人類共通の課題であるとして反論している。 ① 開発途上国は「環境問題に配慮してきた」わけではない。
② 援助の方向が北と南で逆になっている。
④ 「公害輸出」というのは事実であるが、
「認められないことが多い」という部分は誤
りである。開発途上国の多くは先進国からの資本の導入によって近代化することがある。
f
1 ローマ=クラブは 1970 年に設立された民間組織で、1968 年にローマで初の会合が開
かれたことから命名された。石油など化石資源の使用が環境汚染を進めると人類の脅威
に対して警告を鳴らし、1972 年に『成長の限界』刊行して国際的な反響をもたらした。
2 空欄前の「自然との調和を図りつつ,自然の賢明な利用や開発を志向する」という部
分を参考にし、さらに「生態系を中心に考える立場」と対比させて考える。
3 「将来生まれてくる人々が生存する可能性を狭めてはならない」
「リオデジャネイロで
開催された国連環境開発会議(地球サミット)」とあるので「持続可能な開発」が正解と
なる。①は 1972 年にストックホルムで開催された国連人間環境会議でのスローガンで
ある。
9
第 56 講
その他の現代の諸問題①
その他の現代の諸課題①
(センター試験) ③
【解説】
核家族とは、夫婦と未婚の子どもからなる家族、夫婦だけの家族、父親または母親と子供
からなる家族である。高度経済成長期には、人口への急速な都市集中(特に太平洋ベルト地帯
の工業都市)が見られ、大都市郊外に核家族向けの団地などの新興住宅街が大量に建設された。
故郷には両親が残るケースが多かったため、急速に核家族化が進んだ。
① 「国家を構成する核」ではなく、家族の最小基本単位という意味である。
② 核家族世帯数の「急激な減少」はみられないが、単独世帯(独身世帯)が増えている。
④ 医療・教育・仕事など家族機能の外部化がすすんでおり、
「そのまま保持」という部
分が誤りである。
(センター試験) ③
【解説】
都市化や核家族化は、地域社会の相互扶助機能を弱体化させたので、
「強まった」は誤り。
第 52 講でも学習した通り、現代では地域社会(コミュニティ)が弱体化した。2011 年 3 月 11
日の大災害を機に、地域とのつながりや絆が再び取り上げられるようになった背景には、現
代の特に都市部におけるコミュニティの弱体化がある。①家族機能の外部化、②老齢人口の
比率の高まり、④出生率の低下や少子化はそれぞれ正文として確認しよう。
10
第 56 講
その他の現代の諸問題①
(センター試験) ④
【解説】
育児をめぐる問題について、講義では特に扱っていないが、社会に対する一般的な知識な
どから正解に近づこう。そのためには、平素からニュースなどには関心を持つことが必要で
ある。
家族機能の外部化は学習したのであるから、
「従来家族がもっていたさまざまな機能が,
企業や学校など外部の機関に吸収され」という部分が正しいのは理解できるだろう。
① 核家族化が続いているので、三世代家族が「大幅に増えた」は誤り。
② 育児休業などはまだまだ企業や社会への理解が浸透しておらず、
「母子の接触の機会
はむしろ大きく増加している」とは言えないのが現状である。
③ 非婚化や晩婚化の上昇が、少子化の一原因ともなっている。
(センター試験) ④
【解説】
女性の社会進出も進んでおり、さらに不景気(収入面)などの理由から、結婚や出産後も共
働きをする家庭が増えている。
① 問 1 の②で確認した通り、単独世帯は増加の傾向にある。非婚化や晩婚化が原因であ
る。
② 核家族化の傾向は続いており、
「拡大家族の割合が増大しつつある」は誤り。
③ 「婚姻率が上昇しつつあり」が誤り。非婚化や晩婚化がすすんでいる。
11
第 56 講
その他の現代の諸問題①
(センター試験) ②
【解説】
家族機能の外部化について述べている部分は正しいが、
「地域社会の住民どうしの連帯は強
まった」という部分が誤りである。問 2 の解説を参照のこと。
① 第 1 講で学習したモラトリアムの長期化やマージナルマン(境界人・周辺人)、第 2 講
で学習した小此木啓吾のモラトリアム人間を思い出そう。
③ 戦前の民法には戸主権が規定されていたが、戦後の改正で戸主権は廃止され、婚姻・
相続に関する男女平等が定められた。
④ 親の過干渉が子どもの自立を妨げ、パラサイト=シングル(親に寄生する未婚者)などの
状況をつくりだす一因となっている。
(センター試験) ③
【解説】
用語を選択する問題であるから確実に正解したい。空欄の前「1960 年代以降、一組の夫婦
と未婚の子どもから成る」が核家族を導くキーワードである。
(センター試験) ④
【解説】
戦後の民法改正については、問 5 の③で確認した通りである。
① 日本の場合、従来から在宅介護は「嫁」の仕事とされてきたことが多く、家族の負担
が重い。また近年では、高齢化した子どもが親の世話をする「老老介護」も問題になっ
ている。
在宅介護は資格を持った者しかできないというのは誤りである。
② 男性も女性と同様に晩婚化の傾向が見られる。
③ 未婚の母の増加と、出生率上昇という関連性はない。
12
第 56 講
その他の現代の諸問題①
(センター試験) a=③ b=②
【解説】
a
第 2 講で学習した通り、アメリカの精神分析学者エリクソンは、青年期をモラトリアムと
よび、現代社会の特徴としてモラトリアムが長期化している。
b
空欄の後ろの「同様の葛藤」とは、前述の「家事・育児の責任と負担が増えて仕事や余暇
の時間を失うかもしれない」という部分を指している。これは子どもを持つことによって生
じるものであるから、
「少子化」傾向の原因であることが分かる。
(センター試験) ①
【解説】
「どちらかといえば反対」と「反対」を見れば、2002 年の 30-39 歳がほぼ 50%でもっと
も多いが、
「概ねどの年齢階級でも半数以下である」ことが分かる。そして 10 年間の変化を
見るためには、1992 年のグラフで 20 歳だった人は、2002 年のグラフでは 30 歳になってい
ることをふまえて読み取らなければならないので、
「賛成」を抜き出すと以下のようになる。
「夫は外 妻は家庭」という考えに「賛成」の人が各年齢層で減少していることが分かる。
よって、各年代が 10 年の間に「性別役割分担意識を薄めていく傾向が見られる」は正しい
ことになる。 1992 年 → 2002 年 20-29 歳(15.4) → 30-39 歳(11.2) 減っている 30-39 歳(17.2) → 40-49 歳(10.8) 減っている 40-49 歳(18.8) → 50-59 歳(17.8) 減っている 50-59 歳(29.8) → 60-69 歳(21.4) 減っている 60-69 歳(36.5) → 70 歳以上(31.7) 減っている 13
第 56 講
その他の現代の諸問題①
センター試験の倫理は、文章の趣旨やグラフの読み取り問題が必ず出題されるので、落ち着い
て取り掛かるように心がけよう。 14
第 57 講
その他の現代の諸問題②
その他の現代の諸課題②
(センター試験) ③ 【解説】
フェミニズムは、一見、当然のこととされている価値観や社会構造の中に、性をめぐる古
典的・因習的な支配が存在していることを明らかにし、そのような性差別の撤廃を求めるこ
と。
これにもっとも当てはまるのは③である。 (センター試験) 1=① 2=④
【解説】
1 は、
「女性の職場進出が進展した」に相当する法律名を選ぶのであるから、学習した法律
の中から①男女雇用機会均等法が選べるだろう。
2 は、
「知的労働やサービス産業」と見えているので、④第三次産業が正解となる。倫理の
授業では扱わなかったが、これまでの社会科の学習が身についているかが問われる。
(センター試験) ③ 【解説】
日本の女性の就業率は、学校卒業後が最も高く、結婚や出産の時期に下がり、子育てが一
段落する時期に再び上昇する「M 字曲線」を描くことが特徴である。しかし、再就職をする
場合は、非正規社員・派遣社員・パートタイム労働が多いのが現実である。
① 第 56 講で学習した通り、核家族化や単身世帯が増加傾向にあるので、
「一世帯あたり
の家族構成員数は増加傾向にある」というのは誤りである。
② 夫(男性)も家事や育児に参加する傾向にあるのは正しいが、
「人は女に生まれない、女
15
第 57 講
その他の現代の諸問題②
になるのである」というボーヴォワールの言葉は、女性という存在は生得的なものでは
なく、社会の中の習慣などにより人為的につくりだされたものだと批判する内容である。
④ 二世帯同居が増加傾向にあるとまでは言えない。
(センター試験) ② 【解説】
問 1 のフェミニズム、問 3 で扱ったボーヴォワールの言葉などもふまえ、
「女は家事・育
児」という因習的な考え方は、その女性個人の人生に対する「重大な侵害」という考え方は
正しいととるべきであろう。
① 一般的な分業と、性別による役割分業を同じに考えるのは正しくない。
③ 「女性優位」と主張するのは間違いである。これはかえって、男性差別となる。
④ 乳幼児を育てるのに女性が適しているというのは、ある部分において正しいかもしれ
ないが、育児に関しても両性が協力し合うことが求められる。
」
(センター試験) ① 【解説】
「従来の社会通念」そのものが問題とされているわけであるから、①が誤りである。
② 正文。
「男は∼」
「女は∼」という固定観念が、子どもの成長過程において個性や才能
の発揮を阻害するというのは、ジェンダーフリーの考えに合致する。
③ 女性が働きやすい職場環境づくりが求められている。
④ ステレオタイプは第 53 講でも扱ったが、
広く共有されている偏見や固定観念のこと。
とくにマス=コミが流すステレオタイプによって、人々に偏見や固定観念が植えつけら
れる危険性があるので注意が必要である。
16
第 57 講
その他の現代の諸問題②
(センター試験) ① 【解説】
因習的な固定観念や決めつけ(男は∼、女は∼)を打破し、社会全体で性別役割分業の見直
しを進めていかなければならない。男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、男女共同参画
社会基本法などの法整備もすすんでいるが、形式的なものに終わることなく、企業なども率
先して環境整備に取り組む必要がある。
② 「男女がそれぞれ生来もっている役割に専念する」というのは、むしろ性別役割分業
の見直しに逆行している。
③ 育児・介護休業法は男性にも休暇を認めている。
④ 問 3 で扱った「女性の M 字型就労」こそが、見直さなければならない部分である。
よって「今後も維持していく必要がある」は誤りである。
(センター試験) ④
【解説】
問 6 の③でも確認した通り、育児・介護休業法は男女ともに休暇取得の権利が認められて
いる。
① 男子は 18 歳であるが、女子は 16 歳と規定されている。
② 日本においては、議員数の比率はまだ定められていない。
③ 男女雇用機会均等法には罰則規定がない。違反企業(厚生労働大臣の勧告に従わない)
に対する社会的制裁措置として企業名を公表するという措置が取られるだけである。
(センター試験) ④
【解説】
ここまで見てきたとおり、介護休業法は労働者の権利として男女ともに認められている。
①②ともに「義務づけられている」は誤りである。③育児休業法に関しても、男性にも認め
られている。よって「女性労働者にのみ」は誤りである。 17
第 58 講
その他の現代の諸問題③
その他の現代の諸課題③
(センター試験) ④ 【解説】
「不利な立場の人を優遇する、
『不平等な扱い』
」とは、第 57 講で学習したアファーマテ
ィブ=アクション(ポジティブ=アクション)のことで、積極的差別是正措置をさす。差別によ
り不利益を受けてきた女性や少数民族などに対して優遇措置をとるものであるから、障碍者
の雇用に関する法規定が正解となる。ちなみに日本では、1960 年に障害者雇用促進法が制定
され、事業者に対して従業員数の一定比率を障害者とすることが義務づけられた。①②③と
もに、差別を受けている人に対する「優遇措置」とは言えない。
(センター試験) ② 【解説】
差別の構造について知らせないことは、表面上は差別がないように見せかけることが可能
となるかもしれないが、差別に対する根本的な解決にはならない。①③④正文。差別は誤解
や偏見から生じている場合も多いので、平素から意識すると同時に、差別される側の気持ち
も考える必要がある。
(センター試験) ② 【解説】
オタワ条約(対人地雷禁止条約)は、ICBL(地雷禁止国際キャンペーン)の呼びかけによって、
1997 年にカナダのオタワで採択された。日本も 1998 年に批准したが、アメリカ・ロシア・
中国・インドが参加していないのが問題である。ICBL(地雷禁止国際キャンペーン)は 1997
年にノーベル平和賞を受賞した。
18
第 58 講
その他の現代の諸問題③
① 1993 年に婚外子に関しての日本の法制度に対する改正勧告、1994 年に外国人登録法
の撤廃勧告など、数回の勧告を受けている。
③ 日本は 1990 年代を通じて 2000 年まで世界第一の ODA(政府開発援助)拠出国であっ
た。
④ 日本は難民の受け入れに対して消極的である。
(センター試験) ① 【解説】
問 3 の解説を参照のこと。
② 2003 年、常設の国際刑事裁判所(ICC)がオランダのハーグに設置された。
③ 1997 年、化学兵器禁止条約が発効している。
④ 1868 年に国連総会で採択された核拡散防止条約(NPT)では、加盟国のうち非核保有国
に対しては核兵器の製造が禁止されているが、核保有国(米・ロ・英・仏・中)について
は、核兵器の製造禁止は義務づけられていない。
(センター試験) ① 【解説】
子どもの支援を目的とする国際機関は「ユニセフ(国連児童基金)」である。
「ユネスコ(国
連教育科学文化機関)」は、教育・科学・文化・通信を通じて国家間の協力を促進し、世界の
平和と安全をはかることを目的とした専門機関である。②世界人権宣言、③子どもの権利条
約、④女子差別撤廃条約のほかにも、今回の講義では、国際人権規約、人種差別撤廃条約も
学習したので再確認しておこう。 19
第 58 講
その他の現代の諸問題③
(センター試験) ③ 【解説】
国際障害者年に示される「完全参加」の考え方で、ノーマライゼーションの理念である。
① 国際婦人年は、男女の性差別撤廃のための行動計画である。
「男性らしさ、女性らし
さ」
「分業体制の導入」は、その理念とは逆行している。
② 国際児童年は、児童の福祉向上をめざす取り組みが目的である。
④ 国際先住民年は、先住民の持つ文化やアイデンティティを尊重するという目的をもつ。
「同化」をめざすものではない。
(センター試験) ② 【解説】
ユネスコ憲章前文の冒頭「戦争は人の心の中で生れるものであるから,人の心の中に平和
のとりでを築かなければならない。
」は有名な部分である。①は日本国憲法の前文、③は世界
人権宣言、④は国連憲章である。ユネスコ憲章については、第 38 講の
で既に学習済み。
① 戦争は人の心の中で生まれるものであるから,人の心の中に平和のとりでを築かなけ
ればならない。ユネスコ憲章
② 過去に目を閉ざす者は,けっきょく現在にも目を開かなくなる。西ドイツ大統領ヴァ
イツゼッカーの演説「荒野の 40 年」の一節 ③ 孤立して無力感に囚(とら)われた大衆が,帰属感を求めて人種主義に吸収され,全体
主義が発生する。
④ 汝(なんじ)殺すなかれと呼びかける他者の苦痛に責任をもつとき,人間は倫理的主体
となる。
20
第 58 講
その他の現代の諸問題③
(センター試験) ② 【解説】
ラッセル(数理哲学者)とアインシュタイン(物理学者)は、1955 年に他の科学者たちととも
に、核兵器廃絶と科学の平和利用を訴える宣言を出した。この 10 年前の 1945 年 8 月に、核
兵器(原子爆弾)が日本に対して用いられたことがひとつのきっかけともなった。①人種差別、
③人体実験、④環境破壊はそれぞれラッセル-アインシュタイン宣言の内容には合致しない。
(センター試験) ② 【解説】
「核兵器廃絶」というキーワードから正解を導き出すことができる。
① フランスのロマン=ロランの説明である。
③ シュヴァイツァーの説明である。
④ トルストイの説明である。
(センター試験) ② 【解説】
「近年の先進国の人口増加」という部分が誤りである。先進国の人口は、横ばいか減少の
傾向にある。日本を含む先進国では、出生率の低下、少子化が課題となっている。
① 正文。環境破壊や資源の枯渇が経済成長の限界をもたらす。ローマクラブ『成長の限
界』を思い出そう。
③ 都市化の進展は、地域社会の人間的なつながりを失わせ、相互扶助が困難となり、福
祉コストが増加する。また、コミュニティの崩壊は道徳心の低下をもたらし、非行や犯
罪の増加を招く。
④ 経済のグローバル化により、国境を越えた投機的取引が活発化することは、世界のど
こかの国の経済不安が一気に世界経済に影響を与える可能性が高くなる。よって金融市
場が不安定となるのは避けられない。
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第 58 講
その他の現代の諸問題③
(センター試験) ④ 【解説】
ボーダレス化と同時に、民族的アイデンティティを求める動きが世界で広がっている。移
民などに対する排斥運動や、冷戦終結後における各地の民族対立や内戦などが頻発している。
第 53 講で学習した、自民族中心主義(エスノセントリズム)やナショナリズムを再確認して
おこう。 ① 「もはや不必要となった」というのは言い過ぎである。
② 第 52 講で学習した通り、都市化や大衆化は人々を平均化・画一化させ、没個性的で
主体性のない人間にする傾向がある。
③ 少子高齢化が進むと、少ない若年世代で、多くの高齢世代を支えることになる。
(センター試験) ② 【解説】
NGO(非政府組織)や NPO(非営利組織)では、ボランティアと違い無償の活動に力点が置か
れているわけではない。組織の運営に必要な、妥当な額の報酬は否定されていない。
よって「金銭的な報酬を得ることは避けるべきである」は誤りである。 ① 正文。参加はそれぞれ個人の任意に任されているのが特徴である。
③ 正文。ODA に比べ規模は小さくても地元住民の要求に沿った活動が可能である。
④ 正文。どちらも民間組織であり、市民レベルの活動である。
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第 58 講
その他の現代の諸問題③
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