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デング熱症例における NS1 抗原検査有用性の検討

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デング熱症例における NS1 抗原検査有用性の検討
デング熱症例における NS1 抗原検査有用性の検討
赤地重宏 1)、田沼正路 2) 、片山正彦 1)
1)
三重県保環研、2)三重県健康福祉部
【はじめに】
デング熱は感染症法において第 4 類に指定されている吸血昆虫媒介性の感染症である。日本においては 1942
年前後より長崎、佐世保等当時の軍港所在地を中心に流行が見られたが、現在は海外からの帰国者に感染者が限
定されている。しかし、近年の温暖化に伴う媒介昆虫の生息域拡大、個体数増加により、日本への再侵入・再定
着が懸念されている。今回、海外からの帰国者でデング熱患者が発生し、検体を確保できたのでその材料を用い
てデング熱診断における各種検査項目、特に、近年注目されている NS1 抗原検出についての検討を実施した。
【材料および方法】
調査対象としたのは、平成 24 年 7 月にタイ・バンコク経由でバングラデシュより帰国し、国内でデング熱を
発症した患者の血漿等である。方法については、RT-PCR 法として国立感染症研究所の「デング熱検査マニュア
ル」に準拠した方法、抗体検査法としてイムノクロマト法を用いた市販 IgM・IgG 検出キット(A 社)および ELISA
法を用いた市販 Capture-IgM ELISA キット(B 社)、NS1 抗原検出法としてイムノクロマト法市販キット(C 社)を使
用して実施し、それら結果を比較検討した。
【成績および考察】
当該患者の1病日目血漿および尿を材料として、検査マニュアルに基づき RT-PCR 法にて検査を実施したところ、
血漿を対象に Universal Primer セットを用いた検出系からウイルス由来遺伝子が検出され、遺伝子配列解析の結
果、1 型であることが判明した。また、各検出法の比較検討については、1、3、4、5、6、7病日目の血漿に
ついて実施した。結果、Universal Primer セットを用いた RT-PCR 法では、1∼4病日目の血漿よりデングウイル
ス由来遺伝子が検出された(図 1)。抗体検出については、A 社イムノクロマト法 IgM・IgG 検出キットにおいて4
病日目以降に IgM が、5病日目以降に IgG が検出された(図 3)。B 社 Capture-IgM ELISA キットにおいても A 社キ
ット同様、4 病日目以降に IgM が検出された(図 2)。C 社 NS1 抗原検出キットにおいては1病日目から7病日目ま
でのすべての検体において NS1 抗原が検出された(図 3)。
なお、型別 Primer セットを用いた RT-PCR ではウイルス由来遺伝子は検出されなかったため、1 型変異株の可能
性を疑い、類似株の遺伝子配列を参考に 1 型 Primer セットを再設計し、再度 RT-PCR を実施したところウイルス
由来遺伝子が検出された。遺伝子配列解析結果から、本ウイルスは型別プライマーの E 遺伝子領域が変異し、従
来の型別 RT-PCR が反応しなくなった株であることが判明した(図 5)。
【結 論】
デング熱診断においては、急性期の感染指標とされる IgM は発病直後にはあまり上昇していないことが判明し
た。ウイルス遺伝子は感染直後より4病日目まで検出可能であったが、それ以降は検出されなかった。血漿中の
NS1 抗原については1∼7病日目のすべての検体において検出が可能であった。また、NS1 抗原検出法は、本症例
のような型別 RT-PCR で検出不能な変異株に対しても有効であった。デング熱診断のためには他の疾病と同様、病
日により各種検査法を組み合わせる必要があると考えられるが、NS1 抗原を標的にした検査法は、血漿中よりウイ
ルス遺伝子が消失したあとも検出が可能であり、ベッドサイドの検査診断法として有用であると考えられた。
【謝辞】
本研究に際し、ご指導いただいた国立感染症研究所・高崎智彦博士、調査に協力いただいた三重県立総合医療
センターおよび四日市市保健所の関係職員の方々に深謝申し上げたい。
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