...

H24

by user

on
Category: Documents
20

views

Report

Comments

Description

Transcript

H24
身近な自然景観
1
はじめに
「科学と人間生活」には、物理・化学・生物・地学の4領域の学習内容があるが、
地学を苦手とする教員も多い。そこで、指導者となる教員が取り組みやすいように、
地学分野の教材開発を行った。
昨年までに、
「身近な天体と太陽系における地球」の単元で利用できる教材として、
「日時計の製作と観察」、「簡易分光器の製作とフラウンフォーファー線の観察」を
作成した。今年度は「身近な自然景観と自然災害」の単元で利用できる教材を考え
た。
2 教材について
(1)単元
身近な自然景観と自然災害
(2)単元の目標
流水の作用や地震・火山活動に より長大な時間の経過の中で自然景観が作られ
たことを理解する。また、これらの作用 が人間生活に恩恵を与えるとともに、こ
れらにより発生する災害についても考える。
(3)教材
【実習1】河川が作る地形(養老町、八幡町、関市洞戸)
流水作用
・河川の3作用について考える。
・扇状地の断面図を作る。断面図から扇状地堆積物の最大の厚みを知る。
・環流丘陵。差別浸食によりできる丘を知る。
【実習2】リニアメント(養老町、武芸川町)
地震活動
・直線的な地形構造から活断層を推定する。
・武芸川断層。地形図から鞍部を探し活断層を推定する。
・養老断層。尾根線・谷線を読み取る。尾根線の分岐より三角末端面を見 付け
活断層を推定する。
【実習3】濃尾平野を知ろう(美濃地方)
プレートテクトニクス
・濃尾平野の河川・山地を知り、河川の流れる方向から濃尾傾動運動を知る。
・濃尾平野の標高を知る。
・縄文海進を復元する。
3 実習内容について
(1)【実習1】河川の作る地形
扇状地について
・河川の3作用 ( 浸食作用
)(
運搬作用
)(
・扇状地断面図の書き方
断面図を書くときは、図中の線分ABにグラフ
用紙をあてがい、等高線との交点から線分ABに
直角に線を書き入れる。その後、縦軸の目盛りを
入れ断面図を仕上げる。
1
堆積作用
)
・山地の傾きと、扇状地の傾きに気付く。
・山地の傾きを扇状地の方へ延長すると、堆積物の最大の厚みが推定できる。
美濃帯について
岐阜県の美濃地方の山間部を中心に東西方向に分布している。古生代石炭紀から
中生代ジュラ紀に海洋プレート上で形成された砂岩 、泥岩、石灰岩、チャート等の
堆積岩や玄武岩質火山岩がジュラ紀の海洋プレ ートの沈み込みとともに地層が破断、
混合を繰り返し、付加体堆積物として形成されたものである。美濃帯堆積岩コンプ
レックスともいう。
環流丘陵について
山間部において隆起量が比較的小さい地域では河川の蛇行が起こる。
長良川流域では、浸食に弱い砂岩・泥岩の部分と浸食に強いチャートの部分が入り
乱れており、河川の浸食によりチャートの部分が小さな丘として残る。ただし山間
部は隆起しており平野部のような三日月湖は形成されない。
地質図の色分けについて
①時代の表現
年代表を作成する場合や、岩石を時代ごとに分けてその分布を示す地質図を作
成する場合は、原則として、古い時代の岩石は濃く、若い時代のものほど薄く着
色する。また、時代が近接しているものについては 、混同しない程度に似た色に
する。このような原則に従い、各時代の色はできる限り以下のようにする 。
第四紀
水色系統
第三紀
黄色系統
白亜紀
緑色系統
2
ジュラ紀
三畳紀
古生代
原生代
始生代
青色系統
濃い赤みの橙色又は紫色系統
茶色系統
無指定
無指定
②岩石の表現
原則として、古い時代の岩石は濃く、若い時代のものほど薄く着色する。また、
時代が近接しているものについては、混同しない程度に似た色にする 。このよう
な原則に従い、各岩石の色はできる限り以下のようにする 。
礫岩
茶色系統
砂岩
黄色系統
泥岩
青色又は緑色系統
砂岩泥岩互層
黄緑色(砂岩と泥岩との中間色)
チャート
橙色系統
石灰岩
青色系統
珪長質火砕岩
桃色ないし赤色系統
珪長質火成岩
桃色ないし赤色系統又は茶色系統
苦鉄質火砕岩
紫色系統又は緑色系統
苦鉄質火成岩
紫色系統又は緑色系統
変成岩についてはとくに取り決めがないので 、原岩の種類と時代(又は変成時
期)を考慮して、上記の対応するものとする。
(地質調査所月報、第51巻、第12号、p.657-678、2000 より抜粋)
(2)【実習2】リニアメント
リニアメントについて
直線的な地形の特徴のことで、原因は浸食や堆積、断層などの地下構造が考えら
れる。造成地等の崖では実際に地層のずれや断層粘土が観察できること から、断層
が確認でき、地形図よりの鞍部と合わせて断層が推定できる。
図1
断層鞍部と活断層の推定(○印
3
鞍部、直線
断層位置、☆印
露頭)
武芸川断層について
根尾村中付近から武芸川町小知野付近まで続く約 25 ㎞の断層である。梅原断層と
平行に延びるが濃尾地震(1891)の時は活動した形跡は見られない。2000 年に美山
町中洞においてトレンチ調査が行われ、少なくとも 4000 年前以降明確な横ずれを伴
う断層活動がなかったと考えられる。
図2
三角末端面
赤色・・・尾根線
三角末端面
黒色・・・断層線
4
B:三角末端面 C:低断層崖 D:断層池 F:断層鞍部
H:横ずれ谷 I:閉塞丘
L-L’:山麓線のくいちがい M-M’:段丘崖のくいちがい Q:堰き止め性の断層池
(「空中写真判読による活断層の認定と実例」地震研究所彙報,52,461–496)
養老断層について
養老断層の活動は数十万年前から活発化し、その東縁端には、典型的な三角平坦
面や扇状地地形を形成している 。中部地方の活断層は、北東-南西方向の左横ずれ
断層系と東北東~北東-西南西~南西方向の右横ずれ断層が斜めの格子状に発達
し、東西性水平圧縮力で形成された共役活断層系と考えられている(図 1-2)。左横
ずれ断層系の代表として、根尾谷断層系(1891 年濃尾地震)や阿寺断層系(1586 年
の天正地震)があり、右横ずれ断層の代表として跡津川断層(1858 年飛越地震)が
ある。西北西-東南東方向の養老断層は、東西性圧縮方向にほぼ直交するため、逆
断層系を示しているが、北へは明確な左横ずれ変位を示す関ヶ原断層から柳ヶ瀬断
層に、南は伊勢湾断層へと続き、日本列島を縦断している。1586 年の天正地震は様々
な説があり、養老断層もその一つとされている。また、養老断層と鈴鹿断層とは、
今まで高角逆断層と考えられていたが、最近西方からの低角度衝上断層とするモデ
ルが示されている(図 1-3)。
図 1-2
中部地方の共役活断層系(藤田、尾池、 1981;日本地質学会編、 2006 より)
5
図1-3
養老-鈴鹿山地東縁断層帯の地下構造(石山ほか:反射法地震探査から明らかにな
った養老・鈴鹿山地東縁断層帯の地下構造)
(3)【実習3】濃尾平野を知ろう
1 A~Dの河川名を記入しなさい
A( 揖斐川 ) B( 長良川 )
C( 木曽川 ) D( 土岐川、庄内川
2
3
a ~d の山地名を記入しなさい。
a( 伊吹山地 ) b( 鈴鹿山脈
c( 養老山地 ) d( 猿投山
)
)
)
養老断層を記入しなさい。
濃尾平野を流れる河川の特徴を述べなさい。
・山間部から出た河川は、平野部を横切るように東から西へ流れ、平野西部にお
いて南に流れの向きを変え伊勢湾に入る。
上記の理由を述べなさい。
・濃尾傾動運動により養老断層を境に養老山地が隆起し、平野部が沈降したため
平野の東部が高く南西部が低くなっているため。
4
表-1 より各地点の標高を記入しなさい。
およそ 6000 年前の縄文時代は海面がおよそ4~5m上昇していたと考えられてい
る。当時の海岸線を復元しなさい。
・海津市南濃町にある2つの貝塚を話題とするとよい。
・濃尾平野は犬山付近を扇頂とする扇状地になっていることに気付かせる。
6
渡辺誠編
2000
「羽沢貝塚発掘調査報告書」南濃町教育委員会
より
濃尾傾動運動
養老断層を境に西側が上昇し、東側が沈降したため、濃尾平野は西端が沈降し、
東端(猿投山地)が上昇し、木曽三川が運ぶ大量の土砂をためる「巨大な器」を作
り続けている。数百万年前から始まり、沈降の平均の速さは年間 0.5mm 程度と考え
られている。
図1
濃尾平野断面図
(桑原 1968
濃尾盆地と傾動地塊運動.第四紀研究,7)
7
貝塚
岐阜県には2つの貝塚があり、河口よりおよそ 25km の位置にある。
・岐阜県海津市南濃町庭田(縄文時代前期前葉)
養老山地麓の羽根谷扇状地の北端にある小高い丘の上にあり 、1910 年に発見さ
れた。貝層は丘の斜面に3カ所あり、厚さ約40 ㎝の純粋な貝層部分も見られ、縄
文土器片・石器・骨角器・貝類・魚骨・獣骨などが出土してい る。貝はほとんど
がマガキで、海岸の岩場付近で採取していたことが 分かる。魚骨はウナギやマハ
ゼなど内湾で採れるものが中心で、数は少なく、淡水魚は全く 見られない。
・岐阜県海津市南濃町羽沢(縄文時代晩期後葉)
羽根谷扇状地の扇端部にあり、1910 年に発見された。貝層は平坦な面にあり、
厚さは約 40 ㎝ある。大正8年に近鉄養老線の工事に伴い人骨が一体発見され た。
平成8、9年の調査でも、貝塚の周囲からは 10 体の人骨や埋葬された犬が発見さ
れ、他に縄文土器、石器、骨製品、動物の骨、植物など が多く見付かった。これ
らの遺物から、縄文人たちは、河口付近でヤマトシジミを採り、内湾 でマイワシ
やタイを釣り、弓矢や槍でシカ やイノシシを狩り、石でドングリ類をつぶし調理
していたことが推測されている。貝塚の形成時期は、 14 C 年代測定の結果 3290±
100B.P.である。
図2
岐阜県の貝塚
1
庭田貝塚
2
参考資料
・地形図 国土地理院 電子国土
・写真
岐阜県建設研究センター
・日本地質学会編(2006):日本地方地質誌 4
8
羽沢貝塚
中部地方,564p.朝倉書店.
Fly UP