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映画「ペイ・フォワード」とボランティア
映画「ペイ・フォワード」とボランティア ラスベガスに住むアルコール依存症の母と家を出て行った DV の夫との間に生まれ、中学 1 年 生になった主人公トレバーの担任の先生は社会科担当のシモネット先生だった。 教室でシモネット先生は、中学1年生(アメリカでは 7 年生)の生徒達に向かって、 「もし自分 の手で世界を変えたいと思ったら、何をする?」と問いかける。 さて、 「自分の手で世界を変えるにはどうしたらいいか?」自分だったら何をしますか? さて、トレバ―は、何を考えたのか。 トレバーの提案はつぎのようなものでした。 それが、 「ペイ・フォワード」です。 ペイ・フォワードとは自分が受けた思いやりや善意を、そ の相手に返すのではなく、別の 3 人の相手に渡すというもの でした。それを実行に移していったときに、いろんな波紋がひろがっていきます。あなたは、何 か世界が変わる予感に満ちた可能性を感じたでしょうか、それともシモネット先生が言うように、 「ユートピア的」すぎると感じたでしょうか。 「ペイ・フォワード」について、あなたはどう考えますか? ■トレバー財団について 実は、トレバ―財団という実在の財団があります。映画の“トレバ―”という名前はもしかし たら、この実在のトレバ―くんから採ったのかもしれません。 トレバー・フェレル(1972 年生まれ)は、1983 年、11 歳のとき、12 月 8 日にストリートの人びとのニュースを見て、親(フラン クとジャネット)にどうやって彼らを助けることができるか尋ねました。親はトレバーをフィラデルフィアに連れて行ったのですが、 市の中心部のユニオンリーグの前の歩道に寝ているホームレスの男性に彼はベッドを提供したのだそうです。 彼はその後、1985 年に、両親の助けを借りて、「トレバーの場所」(Trevor’s place)と呼ばれるシェルターを設立しました。 その努力に対して、1986 年ロナルド・レーガン大統領から表彰を受け、それは、テレビ映画化され、「ディビジョンストリートのクリ スマス」というタイトルで 1991 年に放送されました。18 歳のときに彼と彼の家族は「トレバーキャンペーン」を離れ、現在はリサ イクルショップをランカスター通り(フィラデルフィアでしょうね)に開いているそうです。 さて、内田樹(フランス哲学者)はこんなことを言っています。あなたはどう考えますか。 ●そして最も重要なことは、「人間は自分が欲しいものは他人から与えられるという仕方でしか手に入れることが出来ない」とい う真理。 ●何かを手に入れたいと思ったら、他人から贈られる他ない。その為には「まず自分がそれと同じものを他人に与えることから 始めなければならない。」それが「贈与についての基本ルール」 ●だからこそ、そのルールに則り、自分が面白いと思ったこと、感じたこと、興味を持ったことを「まずは」発信し続けること。何 かを期待するのでなく、まずは自分が、贈与を行うことで、何かを失い、「受け取ったもの」が反対給付を行う。それが贈与のル ール。 ●ただし、そのルールは、与えたものが与えられたものからお返えしを貰う訳ではない。反対給付は「ずれてゆく」。 ●パートナーたちは、自分が贈った相手からは返礼を受け取らず、自分が贈られた相手には返礼をしない。あるパートナーに 贈り、別のパートナーから受け取るのである。これは相互性のサイクルであるが、1つの方向に流れている【構造人類学】 ●人間が他者と共生してゆくための2つのルール。それは『人間社会は同じ状態にあり続けることが出来ない』と、『私たちが欲 するものは、まず他者に与えなければならない』 とするなら(内田樹がいうように)、「ボランティア」は、最近生まれたことではなく、人類の記憶につながり、 歴史の中で連綿と維持してきた私たちの基本的な行動様式であるのかもしれず、それは「ペイフォワード」に どこか私たちが惹かれることとも重なっているような気がします。