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福音のすすめ ~神の母聖マリア~

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福音のすすめ ~神の母聖マリア~
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福音のすすめ
~神の母聖マリア~
(今日の聖書朗読箇所)
第一朗読 民数記(6章22-27節)
第二朗読 ガラテヤの信徒への手紙(4章4-7節)
福音朗読 ルカによる福音書(2章16-21節)
明 け ま し て お め で と う ご ざ い ま す 。 元 日 の 今 日 は 、 神 の 母 聖 マ リ ア を 祝 い ま す 。「 神 の
母」という呼称がついていますが、マリアは、けっして神ではありません。この呼称がつ
いているのは、マリアが聖霊によって身ごもり、神の独り子であるイエスを産んだからで
す。当然、神の独り子ですから、イエスは神であり、またマリアから生まれてきたのです
から、人間という側面も持ち合わせています。ただし、凡人であるわたしたちとマリアと
は大きく異なっているところがあります。それは、マリアがわたしたちとは比較にならな
いほどの信仰をもっていたということです。たとえば、受胎告知の場面においては、マリ
アはまだ結婚もしておらず、男性も知らなかったにもかかわらず、男性と交わらないで、
子どもを孕むという天使のことばを信じました。聖書を読めばわかりますが、マリアはけ
っ し て 理 性 や 知 性 で は 理 解 で き て い ま せ ん で し た 。す べ て は 、信 仰 に よ る 理 解 で す 。ま た 、
神を産むということは、マリアが汚れのない状態でなければなりません。汚れていないと
いうことは、生まれてから今までに一度も罪を犯していないということです。このことを
説 明 す る た め に 、「 無 原 罪 」 と い う 考 え 方 が 生 ま れ 、 今 で は 教 義 と な っ て い ま す 。 こ の こ
とは特殊なことですが、これ以外においては、わたしたちと何ら変わらない人間であり、
わたしたちと同じ悩み苦しみ、思い煩い、誘惑などを多数経験していたことでしょう。年
の初めにあたり、このようなマリアの信仰を黙想し、マリアの信仰に倣ってこの一年、わ
たしたちの信仰を深めていきたいものです。
さ て 、今 日 は 神 の 母 聖 マ リ ア の お 祝 い と 同 時 に 、世 界 平 和 の 日 と な っ て い ま す 。そ こ で 、
次に、平和とは何かということについて考えていきたいと思います。まず、今のこの世の
中は、平和でしょうか。答えは、否です。これは、皆さんもおわかりのことと思います。
いくつかの例と共に、その原因となっているものはどこにあるのかを考えていくことにし
ます。世界をみると、あちらでもこちらでも紛争が起きています。それが如実に表れてい
るのが、中東の方です。ご存じのように、イスラム国というテロ集団が、とても残虐な行
為を繰り返していますし、パキスタンでは、タリバン系のテロリストによって、罪もない
女 の 子 が 学 校 で 殺 さ れ た り し て い ま す 。両 方 と も イ ス ラ ム 系 の 組 織 で す が 、わ た し た ち は 、
イ ス ラ ム 教 に 対 す る 誤 解 や 偏 見 だ け は も た な い よ う に し な い と い け ま せ ん 。彼 ら の 行 為 は 、
実際にイスラムの人たちも批判していますし、彼らのコーランにはそのようなことは書か
れていません。あくまでも、イスラム教の信徒のごく一部の人たちが、テロや虐殺を繰り
返しているのです。そこを見誤ると、キリスト教徒の一部がテロリストになった時に、キ
リ ス ト 教 は 残 虐 な 宗 教 だ と い わ れ た ら 、「 そ う じ ゃ な い 人 も い る の に 」 と 、 困 惑 す る で し
ょう。
中東の場合、一つの共通点があります。それは、それまでの独裁者が倒れた後に、テロ
リストたちが出てきて、彼らを国が抑えることができないということです。イラクは、ア
メリカを中心とした多国籍軍によってフセイン大統領が殺されましたし、シリアやその他
の国は、革命によって独裁者が失脚しました。このことからいえるのは、真の民主主義、
平和を築いていくためには、今の政治体制を力によって倒したとしても、その後のサポー
ト、ビジョンがなければ、独裁政治の時よりも、国民はより傷ついてしまうということで
す。ここに、福音的なヒントが隠されているのではないでしょうか。今、目の前にある悪
をなくそうとするのは、良いことなのですが、性急に事を運ぶのではなく、その悪をなく
した後にどのようにしたら良いのかというビジョンをもっていないと、以前よりももっと
悪 い 状 態 に な り ま す 。こ の こ と は 聖 書 に も 書 か れ て い ま す 。聖 書 に よ る と 、「 汚 れ た 霊 が 、
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ある人から出ていきますが、結局は行くところがなく、もとの人に戻ってきたところ、居
心地が良いので、自分よりも悪い他の七つの霊を誘って一緒に住み、以前よりも状態が悪
くなった」とあります。イエスは、これを世の中のことに当てはめて説いています。わた
したちが誰かに何かをする時、ちゃんと祈りのうちに識別をしなければ、いくら良いこと
をやったつもりでも、結果が最悪になることがあるので、注意しなければなりません。
次に、国内に目を向けてみたいと思います。今、日本国内にはいろいろな問題がありま
す。貧富の差の拡大、ストーカー、危険ドラッグ、児童虐待などの事件が毎日のように、
報道されています。今の政治をみていると、大企業や富裕層などに有利な意見は聞きます
が 、中 小 零 細 企 業 や 低 所 得 者 層 な ど の 、声 を 出 し た く て も 出 す こ と の で き な い 人 の こ と は ,
ある意味、無視している状況です。この状況は、まるでイエスの時代のようでもあり、イ
エスがもっとも憂いていたことでもあります。わたしたちは、その人たちを自己責任だと
いって突き放すのではなく、どうしたらその人が人間の尊厳を保ちながら生きていくこと
ができるのかを考える必要があるでしょう。
そして、今年はもっと恐ろしいことが起こるかもしれません。昨年暮れには、特定秘密
保護法が施行され、今後、運用次第では、わたしたちもスパイ罪で逮捕される可能性があ
ります。また、集団的自衛権に関する問題は、統一地方選挙以後に法案化されます。集団
的自衛権を認めたならば、わたしたちは知らない間に戦争に巻き込まれ、戦争をする国に
なります。それに関連して、今の政治は、過去に国会で決めていた武器輸出三原則を破棄
し、海外に武器を売ろうとし、防衛産業が潤うような政策を行おうとしています。そうな
ると、どこかで戦争や紛争が起きないと利益が上がらないので、日本が戦争を仕掛ける国
になります。ともかく、今まで日本は、憲法9条を盾にして、世界の国々と付き合ってき
ま し た 。ア メ リ カ な ど か ら の 要 求 も 、憲 法 に 抵 触 す る と い っ て 、断 っ た り も し て い ま し た 。
しかし、これからは、積極的に武器をもって世界の紛争に関わっていき、多くの人の命が
失われていくでしょう。果たして、これが本当に積極的平和主義なのでしょうか。
もう一つ大事な問題があります。それは、原発です。原発の地元に住んでいる人のこと
を考えると再稼働や新設が必要なのは、重々理解できます。しかし、原発にはいくつかの
重大な欠陥を抱えています。一つは、わたしたち人類は、放射線をコントロールできない
ということです。これは、東日本大震災時の福島原発事故をみればわかるでしょう。そろ
そ ろ 四 年 が 経 と う と し て い ま す が 、除 染 は お ろ か 、事 故 処 理 も 遅 々 と し て 進 ん で い ま せ ん 。
もう一つは、原発を動かすと必ず出る、放射性廃棄物の処理です。現段階では、どこかに
埋 め る こ と し か 方 法 が あ り ま せ ん 。日 本 は 、地 震 や 火 山 が 世 界 的 に み て 、数 多 く あ り ま す 。
もし、どこかに埋設して、地震や火山活動などが近くで起きるとなると、埋めた放射性廃
棄物から出る放射能が、地上にひろがる可能性があります。そしてなによりも、そのよう
なことをするためには、膨大な費用が必要となり、後々電気料金に反映されてきて、わた
したちがその負担を負うことになるのは間違いありません。
年の初めに暗い話をしました。あえて暗い話をしたのは、わたしたちキリスト者がもう
一度福音の原点に立ち戻り、神はわたしたちに何を望んでいるのかを識別して欲しいから
です。この世の中は、神からわたしたち人間に管理を委託されました。ということは、わ
たしたち人間が勝手なことをして良いということではありません。よりこの世の中が福音
的な世の中となっていくように、一人ひとりが意識して生きていくしかないのです。
真 の 平 和 が こ の 世 に 訪 れ 、神 の 国 を 完 成 さ せ る た め に は 、わ た し た ち 人 間 一 人 ひ と り が 、
人の命や自然などの被造物を大切にし、一人の人が人間的な生活ができるためには、何が
できるのかを考えていくことです。何かきな臭くなってきている昨今、わたしたち一人ひ
とりが、何らかの声をあげ、行動に移していくようにしていきたいものです。と同時に、
判断を間違えないように、聖霊とともに識別しこの世の中が真の平和になるようにしてい
きましょう。
わたしたちが、福音の根底、真髄を聖霊とともに振り返り、識別しながら、一人ひとり
何ができるのかを判断していくことができますように、聖霊の導きと照らしを祈り求めま
しょう。
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