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札幌家庭裁判所家庭裁判所委員会(平成21年9月7日開催) 議事概要

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札幌家庭裁判所家庭裁判所委員会(平成21年9月7日開催) 議事概要
札幌家庭裁判所家庭裁判所委員会(平成21年9月7日開催)
議事概要
札幌家庭裁判所家庭裁判所委員会庶務
1
日
時
9月7日(月)午後2時から午後4時まで
2
場
所
札幌家庭裁判所会議室(6階)
3
出席者
(委
員)井上哲男(委員長),金澤勝幸,篠田
野川順子,橋本道政,花形
満,堀
優,高田敏春,髙橋誠二,
弥生,松嶋敏明,吉田信子
(欠席)青木隆直,宇津木健,小野寺敏光
(※敬称略)
(説明者)
(庶
4
進
(1)
務)
札幌家庭裁判所首席家庭裁判所調査官
品田一郎
同
次席家庭裁判所調査官
大松
同
家事首席書記官
工藤克則
同
主任書記官
平野裕章
同
事務局長
福岡正美
泉
札幌家庭裁判所事務局次長
富所猛男
同
須田浩志
事務局総務課長
行
議事
ア
調停関係手続室を中心とした庁舎施設見学に基づく意見等
イ
調停手続を充実させるための方策について
上記アについて別紙の1のとおり意見交換し,イについて,現状の調停手続の実情
等について担当者から説明があり,別紙の2のとおり意見交換が行われた。
(2)
次回の予定等
ア
委員会日程
平成22年2月15日(月)午後2時から午後4時まで
イ
テーマ
後日選定の上,各委員に連絡することとしたい。
(別
紙)
意見交換議事概要
○委員長
1
●委員
△事務局
調停関係手続室を中心とした庁舎施設見学に基づく意見
○
調停関係手続室を中心に当裁判所の施設を見学していただきましたが,今回見学され
た方の率直な御感想・御意見があればお聴かせ願いたいと思います。
●
調停室やラウンドテーブル法廷に車いすの方が来られた時に出入口の通路が狭くな
いか,各部屋に置いてあるテーブルが車いすの高さとの関係で不便に感じることはな い
のかと感じました。現在,庁舎を改修中ということですので,この点について裁判所と
してどういうところを検討しているのか,差し支えのない範囲で聞かせていただきた い
と思います。
△
調停室等のテーブルの高さの関係について,事前に確認していませんでしたので,確
認の上,不都合があるようであれば,何らかの対応をすることにしたいと思います。ま
た,さきほど,待合室の見学の際,入口中央に目隠しパネルとして設置してあるパーテ
ィションと壁等との間隔が狭く,車いすでは通りにくいのではないかとの御指摘があ り
ましたので,これを踏まえて,改修後の待合室の備品類の配置について検討すること に
いたします。
●
調停室については壁の色などにも配慮しているということなど,いろいろ感心する点
がありました。今回,少年事件で使用する部屋も見学しましたが,少年事件の傍聴が認
められることになったことから,これまでの審判廷では傍聴人の席が近すぎると感じ ま
した。改修工事で少年審判用の審判廷も改修するとのことでしたので,圧迫感を感じ な
いよう,傍聴席までの距離が十分とれるような広さにしていただきたいと思います。
○
調停室を見学されて,広さについてはどのように感じられましたか。
●
思っていたよりは狭いと感じました。もう少し広くてもよいのではないかと思います 。
○
広くすると数を確保できないということになってしまいますが,全国の裁判所と比較
して札幌家裁の調停室が狭いわけではないと思いますがいかがでしょうか。
△
全国の裁判所の基準に基づく広さを確保しています。今回の,改修工事により調停室
が17室から20室に増えるのですが,窓のない部屋もあり,開放感を得るために廊 下
側にガラスブロックを入れてはいます。
●
家事事件の代理人として,弁護士待合室を使う機会が多いのですが,事件数が増えて
いるためか,待合室を利用する弁護士がとても多いと感じています。弁護士待合室に 限
らず,申立人,相手方の待合室にしても,声の漏れない打ち合わせスペースがありませ
ん。調停の場合は待ち時間が長く,その間にプライバシーに関わる話をすることが多 い
ので,この点について裁判所側で手当をしていただきたいと思っています。また,本日
1
の見学で,4階の調査官の面接室(試行面接室)を初めて拝見し,マジックミラーが設
置され別室からビデオカメラで撮影できるようになっていることを確認したのですが,
ビデオカメラはどのくらいの割合で撮影されるのか,もし数字等がわかれば教えてい た
だきたいと思います。
△
待合室については,打合せを行う場所としてではなく,あくまでも待合室として設置
していることから,防音等を考慮した打合せを行うための設備は設けていない実情に あ
ります。
△
試行面接室は,親権の争いがあるとき,面接交渉をしたいというケースで利用してい
ます。具体的には,試行面接室で,子供と一方の当事者に面接してもらって,別室から
ワンウェイミラー(マジックミラー)越しに反対当事者に観察してもらうというのが 基
本的な利用方法になり,この場合ビデオは利用しません。
設置してありますビデオは,家裁調査官の面接技術向上のための研修の際などに活用
しています。
2
調停手続を充実させるための方策について
○
すでにいろいろと意見をいただいているところではありますが,今日のテーマは「家
事調停を充実させるために考えられること」ですので,そのような観点からの御提案,
御意見がありましたら発言いただきたいと思います。委員の皆様の新鮮な目で,もっと
こうした方がいいのではないかという御意見があればと思います。一般の方からの意見
というのは非常に貴重であると思いますので,よろしくお願いします。
●
代理人が付いた場合には,当事者は調停手続きについても裁判所の施設についても,何
か言ってくるということはあまりありません。代理人が付いてない案件では,調停委員
が当事者から直接話をうかがう訳ですので,調停委員に対して当事者から要望などが出
されることがあるのでしょうか。
●
調停委員だけで話を聞いていると,裁判官に話が伝わっているのかというようなことを
指摘する方がいます。この点については,裁判官に調停室に来ていただいて評議を行い,
評議が終わった後に裁判官から直接当事者に話をしていただいて,きちんと裁判官も調
停委員会のメンバーとして加わってもらっているということを,当事者の方に理解して
もらっています。
○
裁判所の施設面については,何か当事者からこうしてもらいたいとか,こういうとこ
ろが不便だとかといった意見を言われたことはありませんか。
●
調停室が狭いことや,待合室が狭いこと,待合室や廊下では話がほかの人に聞こえてし
まうといった苦情があります。また,窓のない調停室の場合では,外の景色を眺めた り,
空気を入れ替えたりということができないため,ストレスを感じるという苦情が出てく
ることもあります。
待合室については申立人と相手方に分けてありますが,自由に出入りできますので,会
2
いたくないと思っているのに,相手が待合室に会いに来ることがあるので,そのような
ことがないようにして欲しいということも言われます。当事者同士が顔を合わせると危
険が生じるような場合には,相応の対応をすることになりますが,そうではない場合で,
単に相手と顔を会わせたくないと思っている当事者や,相手が待合室に入ってきて直接
文句を言われたりした当事者からそのような,苦情を言われます。
●
私の知り合いの関係者が離婚で調停手続きを利用することになって,裁判所に来たとき ,
なるべく相手とは顔を会わせたくないと考えていたらしいのですが,別室とはいえ同じ
裁判所の中に相手もいるということで,相手が自分の待合室に入ってくるのではないか
と感じたということを聞いたことがあります。また,以前に,庁舎を見学させていただ
いた時には,調停室は狭いなと感じましたし,待合室には,いろいろな問題で調停に来
ている人が大勢いるので,そこでは雑談などはできないとも感じました。
○
当事者が顔を会わせることで問題が生じるようなこともあると思いますが,そのような
場合の対応として工夫していることはありますか。
△
家事調停の場合には,相手方とは顔を会わせたくないという方が多いという実情にあり
ます。そのため,調停を進める際にはなるべく顔を会わせなくてもすむよう,申立人と
相手方の待合室をなるべく遠くに配置するよう配慮しています。また,当事者同士が顔
を会わせることで,どちらかに身の危険が生じる可能性のある場合には,待合室を別の
フロアにするとか,申立人と相手方を別の日に呼ぶなどして対応しています。
△
結婚してずっと一緒に暮らしていて,離婚することになった訳ですから,相手と顔を会
わせないで離婚するということが,正しい対応であるかという問題もあります。DV事
案のように,実際に暴力をふるうような場合には,裁判所としても当事者同士が顔を会
わ せ な い よ う に 配 慮 し な け れ ば な ら な い と 思 い ま す が ,普 通 に 話 し 合 い が で き て 暴 力 に
至らないということであれば,紛争の解決のためには直接話し合いをするという場面も
必要になると思います。そのような理由から,裁判所としては,ただ当事者を会わせな
ければいいとは必ずしも考えていません。当事者それぞれの責任というものもあります
ので,話せることは面と向かって話してくださいというスタンスもあるということも理
解していただきたいと思います。
○
これもケースバイケースで,DVのおそれのあるような場合には,フロアを分けて,
帰る時間も完全にずらすというような配慮もしています。他方,数は少ないのですが,同
席調停といって,両方の当事者を同席させて話を聞くという場合もあります。
ここまで,施設面について,いろいろと意見をいただきましたので,今後の参考にさせ
ていただきたいと思います。
前回,家事調停の進行について具体的な事例により説明しました。前回の事例では,3
回の調停を行って調停が成立するというものでしたが,実際にはなかなか,そうはうま
くいかない難しい事件もありますので,こうした場合の対応について,事務局から説明
しますので,それを踏まえて,御意見,御感想等をおうかがいしたいと思います。
3
※
事務局から,調停の現状と問題点及びこれに対する裁判所の対応策等,調停手続の実情
について説明
○
今の説明に対して御質問,御意見がありましたら,遠慮なくご発言いただきたいと思い
ます。
●
説 明にあ りま した, 司法 手続の 強化 につい て, 今どう いう ところ が問 題視さ れて い て ,
司法手続強化ということが出てきているのか,もう一度説明いただければと思います。
△
現在の手続きの進め方では,申し立てられた相手には申立ての内容を知らせていません 。
そのため,相手方は自分がどうして裁判所に呼び出されているのかという実情がわから
ないという状況にあります。これは,申立書の中には申立人が感情に任せて記載した部
分があり,そのまま相手方に開示してしまうと,かえって話がまとまらなくなるおそれ
があるためです。訴えられた相手に必ず訴状を送って裁判所に呼び出すことになってい
る民事訴訟の手続きとは異なる点になります。家事の調停では,調停に来た段階で双方
から事情を聴いて,調停委員を通じて,それを相手方に伝えるということになります。
このため,それぞれの当事者の言い分がそれぞれの当事者に正確に伝わっていないので
はないかという不安を感じ,裁判所の手続きが正しく行われていないのではないかとい
う疑念につながっていくということも考えられます。そこで,そのような疑念が生じな
いようにするため,調停手続きについても民事訴訟に近付けて,双方の主張を明らかに
するようにしてはどうかということが検討の一例です。現状では,家庭裁判所の手続き
というのは,家庭裁判所が後見的に関与し,当事者任せにしないで進めているわけです
が,それを一歩引いてはどうだろうか,当事者にもっといろいろな情報を提供してはど
うかという議論がされているということになると思います。
○
現在,法制審議会で家事審判法の改正の検討がされているところですので,最終的にど
のような結論になるかわかりませんが,当事者にどれだけ主体的な地位を与えるかとい
うことが大きなテーマになっているようです。
●
妻から離婚調停を申し立てられて,家庭裁判所に出頭するようにという文書が来ました
と言って依頼してくる夫の代理人となる場合,その依頼を受けた段階では,夫は,妻の
離婚の申立ての理由,未成年の子供がいる場合の親権についての主張,離婚に伴う慰謝
料等がどのような内容かわからない状況にあります。呼び出された日に家庭裁判所に来
て,調停委員を通じて妻の申し立ての内容を聞いて初めてわかるということになってい
ます。調停期日前には,夫から相談を受けた弁護士が,家庭裁判所で申立書を謄写しよ
うとしても,基本的には裁判所はこれを認めてくれません。結局,申立人の主張内容は
申立ての段階ではわからないということになり,その申立てに対して,どのような防御
をするか,または,反論をしていくかということを組み立てられないということになり
ます。通常の民事訴訟であれば,訴状が送られて来ますので,それにより相手がどのよ
4
うな主張をしているかわかりますし,証拠も提出されることが多いので,どういう証拠
に基づいて,このような主張をしているのかというのが大体その時点でわかるのですが,
家事調停の場合には,基本的にはこれがわからないということになります。そういう意
味では,裁判所の後見的機能が大き過ぎるので,これをもっと紛争当事者任せにしよう
ということではないかと思います。
●
今の話ですと,少なくても離婚したがっている,離婚の申立てをしているんだなという
ことはわかる訳ですね。
●
裁判所から送付されるのは,夫婦関係調整の調停の申立てがあったという趣旨の書面で
すが,その書面の中に離婚を求めているというような記載がありますので,その段階で
離婚の調停の申立てがされたということはわかることになります。
●
申立人に代理人が付いていて,訴状と同等の内容の申立書になっていて,その代理人の
了解を取った上で申立書を謄写してもらうということもありますが,本人申立ての場合
には,少なくとも第1回の調停期日の段階では,申立ての内容を相手方に知らせない扱
いとしているというのが実情です。この運用は,離婚をしたいということで申立てをし
たけれども,1か月ほど後に開かれる調停期日までの間によく考えてみたところ,やは
り夫婦関係を元に戻したいというのが本音だと言う申立人もいることなどを考慮しての
ものです。調停を申し立てた段階での夫婦間の問題は,非常に動きが激しく,方向が確
定的になっていないのではないかと感じます。訴訟になれば,訴状の内容を裁判所に認
めて欲しいとい気持ちになるのでしょうが,調停の段階では判断に迷っているという人
が多いのではないかと思います。ですから,申立ての段階で,例えば離婚だ,あるい は,
慰謝料や財産分与がこうだと言ったとしても,必ずしも当事者の確定的な意思ではない
こともあり,これを前提にして調停の手続きを進めると,かえって紛争を煽ってしまい,
解決とは逆の方向に向かってしまうという場合もあると考えられます。
●
今のやり方の不都合は何でしょうか。時間が余計にかかってしまうということでしょう
か。
●
第1回の調停というのが双方から話を聞くということだけで終わってしまい,具体的に
話が進まないということになる点だと思います。
△
過去には,申立書そのものではありませんが,申立人の主張内容を記載した書面を送付
して,申立人の主張内容を知らせて,相手方に準備をしてきてもらって調停を始めると
いう例もありました。
○
私の経験でも,離婚の申立てをしているものの,まだ100%まで気持ちが固まってい
ないということもあり,数は少ないですが,円満に元に戻るという事案もあります。そ
ういうことから,申立人に直接会って話を聞いてみる前に,申立書の内容をそのまま相
手方に送った場合,受け取った相手方がその内容を見て態度を硬化させて,一気に離婚
の方向に進んでいくことも考えられます。ただし,裁判所内部でも,従前から申立書を
相手方に送った方がいいのではないかという議論があることも間違いないところです。
5
それぞれの利点・欠点があるので,そのバランスをどうするかいう問題だと思います。
●
通常の裁判であればそういう訳にはいかないと思いますが,調停だからそれでいいので
はないかという気がします。
○
それでは,この点についてはこの程度として,別に何か意見のある方はいらっしゃいま
せんか。
●
説明の中に,DVの事案が増えてきているという話がありましたが,裁判所であれ,調
停委員であれ,話を聞いていて,これは明らかな暴力だと,傷害罪の構成要件に該当す
ると認識したときには,警察に届けるのですか。
●
裁判所内で暴力をふるったという場合は別ですが,そうでなければ警察に届けるという
例はあまりないようです。
○
事案によっ て は,当 事 者 が調停 の 申 立てを す る 前に, 警 察 に届け て い る例も あ り ます。
●
DVの関係での相談を受けますが,妻が夫を犯罪者にしていいか,自分の子の父親を犯
罪者にしていいかということで迷っている場合がありますから,単純に警察に届けると
いうことにはならないようです。
●
私どものところでは,母子家庭の窓口になっていて,月に2回,弁護士による相談を受
け付けているのですが,養育費の支払いが実行されなくて困っているという内容の相談
がよくあります。
●
養育費を支払わないことについて刑罰を望むというような意見もあるようですし,イギ
リスでは,裁判所で決めた養育費を支払わないというのはけしからんということで,法
廷侮辱罪にあたるという処理をしているようです。
△
家庭裁判所の手続きとして,養育費の支払いの履行を確保する手段として,履行勧告と
いう手段があります。これは電話や裁判所の窓口で,口頭で申立てのできる手続きです。
養育費を払ってもらう側の人が,調停で決まった内容を守ってもらえないと申立てをし
ますと,裁判官から家裁調査官に調査命令が出され,家裁調査官が調査を行います。家
裁調査官は,基本的には,相手に履行勧告の申立てがあったことを伝え,支払っていな
いことが間違いないのであれば支払いを促し,支払っていないということが間違いであ
れば,その旨を裁判所に申し出るように書面で連絡します。この連絡に対し,履行勧告
の申立ての内容に間違いがあると申し出がある場合でも,よく話を聞くと,勘違いして
いたというようなことで払ってもらえることもあります。しかし,最初から払わないつ
もりの人もいますので,そういう場合,電話で相手から話を聞くか,相手に,裁判所に
来てもらって話を聞くことになります。その結果,やはり払ってもらえないということ
になれば,履行勧告の申立てをした人に,相手が払うつもりがないということを伝え,
さらに次の手続きである,履行命令の申立てや強制執行の手続きに進むかどうかという
確認をし,そうした希望があれば,別に手続きを取るよう説明します。
○
今は経済事情を反映して,養育費を払うと決めたものの,給料が減ったり,リストラさ
れたりという事情から,約束した金額が払えないので養育費を減額してほしいという申
6
立てが増えてきている状況にあります。必ずしも,養育費を払えない側を責められない
という事情もあるという感じがします。正当な理由がないのに,養育費を払わない人に
対しては,強制執行をすることができます。しかし,養育費を請求する人が一人でこの
手続を行うというのは難しいところもありますので,家庭裁判所ではもっと簡易な手続
きとして履行勧告というものを用意しているわけですが,その実効性というのはどうで
しょうか。
△
予想以上に,履行勧告によって履行されるという割合は多いと思われます。
●
年間の履行勧告の申し立ては何件くらいあるのでしょうか。
△
札幌家裁本庁で年間600件から700件程度になります。この制度は,調停が成立し
た後に,調停で決められたことが守られない場合には,アフターサービスとして家庭裁
判所が履行の勧告をしますよというもので,強制力はないものの,履行勧告をすること
によって,全部ではなくても一部の支払いがなされるとことが多いように思われます。
まったく,支払ってもらえないということはあまり多くないことから,利用者からは一
応の評価を受けているのではないかと思っています。
△
履行勧告をした相手が,リストラにあったりとか,かなり給料が下がったりというよう
な場合には払ってもらえないことが多いですが,それ以外の場合には,事情を話すと,
今払える範囲で,約束の何割ならという形で払ってくれる方は結構いらっしゃいます。
●
同一人の申立てに対して,例えば3回までですよというように,回数を制限することは
あるのですか。
△
そのような制限はありません。権利者によっては1日遅れただけでも毎月申立てしてき
て,相手に履行勧告の電話をかけるとすぐに振り込んでくるというような例もあります。
現在の経済不況の中で,養育費の支払いが大変になっている場合も,養育費の減額と
いうことまではせずに,履行勧告の中で,どれくらい払えるかという調整を電話でやり
取りしながら,毎月払える範囲で払っているというような実態もあります。
△
養育費の事件は,支払いを求める申立てと減額を求める申立ての両方が増えている状況
にあります。
○
養育費や婚姻費用については裁判所の実務で使われている基準表があり,裁判所のホー
ムページでも公開していますが,この基準表について説明してください。
△
以前は養育費等を決める際の大まかな枠組みがなくて,家裁調査官に養育費等を算定す
るための調査命令が出され,家裁調査官が,当事者それぞれの収入と,どのくらい払え
るかということを計算して養育費等を算出していたのですが,それでは時間がかかり過
ぎるということで,東京家裁と大阪家裁で,父母それぞれの収入を縦軸と横軸にとって,
交差するところに相当と考える金額が記載されている表を,子どもの数やその他の条件
に従ったものをそれぞれ用意して活用しているのですが,それを札幌家裁でも調停の席
で活用して,養育費等はだいたいこの程度になりますということを示し,それに基づい
て養育費等を決めるようになっています。
7
○
この表はインターネット上で確認できますので,当事者の中にはそれを見てきて,自分
の収入がこれくらいだから,養育費は4万円から5万円ですよねなどと言ってくる場合
があります。ですから,昔に比べると養育費等の目安がたてやすくなったということに
なります。
●
熟年離婚というのが増えているというような話がありましたが,実際に,そのような調
停では,もうどうしようもないという場合が多くて離婚してしまう場合が多いのでしょ
うか。
△
いわゆる熟年離婚については,妻側からの申立てが多いのですが,申立ての段階でかな
り考えてきているようで,妻側の離婚後の経済状況に問題がなければ,だいたいは離婚
するということになるようです。夫側は,自覚のない方が多いようで,理由がわからな
いまでも,今後同居の見込みがないということでやむなく離婚するというケースが比較
的多いように思われます。
○
私も調停を担当していますが,元に戻るという例は少ないようです。典型的なパターン
でいいますと,不満が溜まってきて爆発したというケースでは,何かのきっかけで離婚
しようという気持ちになったわけではないので,それを翻させるのは難しいようです。
●
最近では,いわゆる「できちゃった婚」で結婚した夫婦の離婚というのが増えているよ
うです。ほとんど同居生活が1年もないようなケースが目に付くようになっています。
●
家庭生活の基礎的な在り方についての自覚がないまま,子どもができて一緒になるとい
うことから,いやになったら離婚するということなのでしょうか。我々の時代は,段階
を踏んで結婚をしたものですから,それなりに覚悟みたいなものを持って,ある程度の
ことは我慢して結婚生活を送るものだと考えている人が多いと思いますが,今の若い人
たちの中には,我慢するとか,協力し合って結婚生活を送るという気持ちが希薄な人も
いるように思われます。また,親も,いやになったら帰ってくればいいと考えているの
ではないでしょうか。
●
若い人の離婚の場合,離婚そのものには当事者に争いがあるのでしょうか。子供がいる
訳ですから,その養育のためのお金をどうするかということで話し合いがつかないから
調停に持ち込んでいるのか,離婚そのものがいやだという理由で調停ということになっ
ているのでしょうか。
●
若い人の離婚の場合,当事者の後ろに控えている親の意見が合わないということが多い
ように感じます。調停に親が着いて来て,一緒に調停室に入れるものだと考えていらっ
しゃる方もいます。通常は当事者以外は調停室に入れませんが,たびたび当事者が出て
行って親と相談をして,また調停室に戻って来るということがあります。また,子供が
いる場合には,子供の両親よりも,それぞれの親が子供を取りあっていて,両親同士は
それぞれの親の代理戦争をしているような状況になります。
●
結婚も自分で決めた訳ではなく,子どもができたことを親に相談したら,親から結婚し
なさい,籍を入れなきゃだめだといわれて結婚したというようなことがありますので,
8
こうした夫婦については,親の意向というのが結構強いのではないでしょうか。もし,
そこで,当人の意見がしっかりしていれば元に戻るチャンスがあるとも思われるのです
が,親の意見が強すぎるように感じられます。また,子供がいると,孫を跡取りと考え
て固執する人が増えているようで,親から絶対親権は譲るなという指令が出ていて,そ
のことが調停成立のネックになっているという場合があります。
○
調停の進め方について,もっとこういう点について配慮すれば良くなるのではないかと
いう御提言はあるでしょうか。
●
家事手続における司法手続の強化という点ですが,申立てをされた相手方としてはどう
いう内容で裁判所に行くことになるのか,事前に分かっていた方がいいと思いますので,
そのために,一つの案として,調停の申し立てを受ける際に,申立書を相手方に送るこ
とが可能であるかどうかを申立人に確認し,同意が得られれば送付するということにし
てはどうでしょうか。これにより,第1回目の調停を充実させることができると思いま
す。現状の第1回の調停はこちら側の事情を話すだけで終わってしまいますが,1回の
調停は2時間,3時間とかかりますし,当事者のみなさんも勤務している状況もありま
すので,各調停期日を充実させるという方法として,あらかじめ相手方が申立ての内容
を把握しておく必要があるのではないでしょうか。
3
次回の開催予定
○
次回の家裁委員会は平成22年2月15日午後2時から開催することにします。
テーマについては,おってお知らせすることにします。
以
9
上
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