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口唇期型不安と肛門期型不安 完全主義的養育態度
山梨県立大学 人間福祉学部 西澤哲 1 育児不安:口唇期型不安と肛門期型不安 完全主義的養育態度:「母性神話」 愛情の欠如:子どもに対する「嫌悪感」 怒りの統制障害:「間歇性爆発性障害」 未熟な人格:解消されない依存欲求 人格障害:境界性人格,自己愛人格 狭義の精神障害:妄想への取り込み 2 虐待の世代間伝達 ・伝達率の「減少」の意味 ・後方視的研究 (retrospectivestudy):30±10% ・前方視的研究(prospective study):30% 程度 ・深刻な事例に顕著な世代間伝達事例 子どもに対する認知の歪み ・子どもからの被害の認知(Justice, 1990; 池田,1987) 3 共感性の欠如:被共感体験の不足;苦痛や悲しみの麻 痺;アタッチメントの問題 愛情欲求の充足を子どもに求める(役割逆転) 「自己愛」の傷付き:子どもからの「拒否体験」 自己愛の傷付きへの心理的防衛 ・攻撃者との同一視(有能感の回復) 体罰肯定感 虐待者の取り込みによる超自我 ・逆転した同一視:「悪い自己」の投影と自己へ の懲罰 4 誰のための育児か:子どものため,それとも 親のため? ・適応的家族の「少子化」と不適応的家族の 「多子化」 ・「できちゃった婚」は究極のabuse? 思春期心性の長期化 DV加害者との共通性 ・「親密な関係」に限局された暴力の意味は? ・支配を求める心理 5 PAAIによる世代間伝達の虐待心性の理解 ・『体罰肯定観』:自身の被虐待体験を納得す るために ・『自己欲求の優先傾向』:「子ども期」に満たさ れなかった欲求(eg.愛情・依存欲求),子ども による満足(役割逆転) ・『被害的認知』:認知的歪曲 6 さまざまな依存症(薬物・アルコール依存,男 性依存)とネグレクトの関係 偶然ではなかった「パチンコ店の駐車場にお ける放置死」? 大阪府西区の幼児放置死事件の母親 7 《予備調査》 N=130 「自信の欠如」,「非受容(自己欲求の優先)」, 「体罰肯定」,「被害的認知」,「完璧志向性」, 「疲弊感」の6因子尺度 《本調査》 N=506 「嫌悪・拒否」を加えた7因子尺度 《分析》 妥当性の検討:4群の得点比較 自身の被虐待体験,虐待心性,子どもへの虐待 行為の関連の分析 8 7因子,48項目,α=0.88 F1:自信の欠如,12項目,α=0.89 F2:非受容(自己欲求の優先),8項目,α=0.85 F3:体罰肯定,7項目,α=0.87 F4:被害的認知,7項目,α=0.79 F5:完璧志向性,6項目,α=0.70 F6:子どもへの拒否・嫌悪,5項目,α=0.70 F7:疲弊感,3項目,α=0.78 9 自信欠 如 非受容 体罰肯 定 被害的 認知 完璧志 向 0.09 拒否嫌 悪 疲弊感 心性全体 PhA 0.28** 0.38** 0.47** 0.27** 0.21** 0.21** 0.44** NG 0.25** 0.35** 0.22** 0.34** 0.12** 0.21** 0.17** 0.37** PsA 0.20** 0.28** 0.14** 0.24** 0.14** 0.12** 0.15** 0.26** Total 0.34** 0.47** 0.42** 0.39** 0.14** 0.26** 0.25** 0.50** 10 被・身体 .17 CO・否認 .39 被・ネグ .35 .20 e5 .31 .16 -.21 e2 育児非受容 .17e3 体罰肯定 e8 .37 e4 .23 被害認知 .28 .25 .27 .53 .26 身体的虐待 e9 ネグレクト 被・心理 e10 心理 GFI=.917 11 青森県児童相談所とのコラボレーション 2007年度(11事例)と2008年度(8事例)に虐待を理由に 受理した19事例を対象 受理時点でPAAIを含めたアセスメントを実施 「再統合プログラム」の候補としての適否の判断 保護者への支援プランの作成 約1年後にその後の事例の経過を検討(フォロー) 12 身体的虐待11事例,ネグレクト6事例,心理 的虐待5事例,DV目撃2事例(重複あり) 子どもの年齢:平均8.9歳(1∼15) 子どもの性別:男の子13人;女の子6人 フォローまでの期間:平均8.7ヶ月(2∼16) 13 PAAI実施:17事例;PAAC実施:2事例 PAAI(PAAC)による判断 ・再統合プログラム不適:11事例(57.9%) ・再統合プログラム適:事例(36.8%) ・判断できない:1事例(5.3%) PAAI評価と事後経過の一致 ・「一致」(部分的一致を含む):13事例(72.2%) ・不一致:5事例(27.8%) 『実験者効果』の影響の可能性? 14 「拒否・嫌悪」,「自己欲求優先」が高い場合には「再統合」は 困難 「体罰肯定」が高い場合には心理教育やピアレンタル・ト レーニング(CSPなど)が有効(体罰肯定観は性格特性とは無 関係というデータ) PAAIが高値であっても「疲弊」や「自信欠如」が高い場合に は,状況依存的である場合がある 状況要因の解決によって低下の可能性 15 ネグレクトの2つのパターン ・PAAIが低値,しかし関係改善困難:「依存性」の問題 が特徴的? ・「自己欲求優先傾向」や「被害的認知」が優位 精神障害のある親のPAAI ・PAAIによる評価が妥当でない場合:症状の影響? ・精神障害の症状の有無にかかわらず親子関係の改 善が可能な事例 16 行為への直面化 ・行為(体罰)自体の認識 ・行為の意図の認識 ・行為の効果の認識:否定的影響の認識可能性 ・行為の原因の認識:子ども帰属,親帰属,逆行 的認知の可能性 代替的行為への志向性 17 行為にともなう「怒り」の認知 ・子ども由来,その他由来 行為後の感情の認知 ・達成感・有能感;罪悪感・無力感 乱用性(abusiveness)の認識 ・役割逆転 ・親としての有能感 ・依存性の問題 ・子どもを産み育てることの「意味」 18 世代間伝達 ・その対処:回避,否認,直面(怒りの認識と表出) ・「怒り」への対処(現在と過去の切り離し) ・ケア葛藤(子どもの依存性への態度など) 子どもに対する認知 のゆがみ ・被害的認知と現実検討 ・その他の否定的認知(「懐かない」など)と現実検討 ・コントロール葛藤(子どもの自己主張への態度など) 19 子どもの妊娠・出産に対する認知・態度 ・妊娠葛藤 ・胎児期ネグレクト(妊婦健診etc) ・新生児期の養育意思の欠如 援助機関(権威性)に対する認知・態度 ・接触拒否(排除,サボタージュ,偽従順) 頭部への攻撃 ・怒りのコントロール 子どもへの拒否感・嫌悪感 20