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Vol.2 No.2
environment Update
−海外環境関連情報誌−
第8号
Vol.2
No.2
(2000.7)
CONTENTS
WEEE関連ニュース
EU の WEEE 指令動向 欧州委員会提案を採択
2
WEEE 最終提案の説明メモランダム (仮訳)
6
1
モニタリング
欧州
・連載
欧州環境規制動向
∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑨ 8 5
米国
・連載 米国における環境関連動向
∼在ワシントンコンサルタントモニタリング情報⑤
1
環境・安全グループニュース
environment Update 増刊号 WEEE Hand Book II 刊行のご案内
事務局便り
0 8
78
7
WEEE 指令動向
州
欧委員会提案を採択
∼ブラッセル事務所の東京本部説明会から∼
環境・安全グループ作成
欧州委員会は、
「廃電気電子機器(WEEE)指令」と「電気電子機器に含まれる特定有害物質の使用制限指令」の
草案を去る 6 月 13 日に採択した旨公表した。
ドラフト段階で内外産業界や欧州委員会総局間で活発に論議されていた特定物質の使用禁止に関する規定がそ
のまま分離され、
一つの指令に独立したため、
WEEE 指令と特定有害物質の使用制限の 2 本立ての指令となったが、
これまでの産業界の働きかけや欧州委員会内の論議もあり、それぞれの指令の内容は当初案に比べてかなり現実的
なものに修正されたが、依然いくつかの大きな論点が残され、今後 EU 環境相理事会と欧州議会の場で審議される
ことになる。
EU における法制化プロセスの中で欧州委員会の提案採択という行政プロセスが終了し、政治プロセスに移行す
る局面となったため、当組合においてはこれまで現地で指令案の改善方働きかけを行ってきた組合ブラッセル事務
所の片瀬裕文所長と衣笠和郎次長が一時帰国し、組合員企業を対象に「EU の WEEE 指令案等を巡る最近の動向に
ついて」をテーマに、WEEE 指令案と後述する EEE 指令ドラフトに関する説明会を去る 7 月 5 日に東京本部会議室
において開催した。
WEEE 指令制定への対応については、当誌の既刊号で伝えているとおりブラッセル事務所に事務局を置く JBCE
(在欧日系企業ビジネス協議会)を通じ、1998 年に提示された第 1 次ドラフト段階から対応策を検討し、数次に
わたり提示されたドラフトに対するコメント、改善策の提言、欧州委員会関係総局との対話、日米欧産業界との共
同歩調など多岐にわたり積極的に活動してきたところ。以下は WEEE 指令の概要と今後のスケジュール、残された
論点、関連する新たな EEE 指令ドラフトの概要に関する説明会記録である。
WEEE
1. WEEE の最近の動向
WEEE 指令最終案を欧州委員会が採択しました。
これまでに第 3 次ドラフト
(1999 年 7 月)
、
そして第 4 次ドラフト
(2000
年 5 月)と出ていたのですが、大きな流れをつかむためここでは第 3 次ドラフトと最終草案の比較表を作成しました(資
料 1:P3-4)
。個別の項目としては、今回の資料ではすべてを網羅できないので主なポイントを書き出してあります。
(1) 指令の形態
第 3 次ドラフト・第 4 次ドラフトまでは 1 つの指令案という形でしたが、最終案では特定物質の使用禁止(以下
Substance Ban)に関する指令を分離して、回収リサイクル等に関する指令と別にした形になっています。
(2) 根拠法規
分離した理由は、欧州共同体設立条約(以下 EC 条約)の中で 175 条に基づいて行っているのが回収リサイクル等に
関する指令で、環境保護を目的としており、この指令より厳しい規則も導入できることになっています。Substance
Ban は 95 条に基づいています。こちらは域内市場の確立が目的で、加盟国は指令が決まったらそれ以上厳しい規制の
導入はできない、また、それと違った規則は作れないこととなっています。
(3) 消耗品
従来、対象になっておりましたが、現地の日本の業界で検討したところ、これは非常に問題が多いということで反
対していました。結果的には、廃棄時に本体についている場合だけの対象になり、それ以外はすべて対象外になった
ということで、現地でのロビー活動がかなり功を奏したという評価ができると思います。
JMC environment Update
2
Vol.2 No.2 (2000. 7)
EU の WEEE 指令動向・欧州委員会提案を採択
WEEE 第 3 次ドラフトと最終草案の比較
資料1‐①
JMCブラッセル事務所
2000/7
主要項目
第 3 次ドラフト
最終草案
指令の形
態
1 つの指令で回収・リサイクルと
Substance Ban について規定
回収・リサイクルに関する指令と
Substance Ban に関する指令に分離
根拠法規
EC 条約 95 条および 175 条
WEEE 指令については EC 条約 175 条
(環境保護が目的、加盟国は指令より厳
しい規則を導入できる)
Substance Ban については EC 条約 95 条
(域内市場の確立が目的、加盟国は指令
以上に厳しい規則を導入できない)
根拠法規を分離
消耗品
指令の対象
廃棄時に本体に付属している場合を除
き対象外
日本業界が独自に主張した点が認められた。
OEM 製品
OEM 製品についてのリサイクル責
任が不明確
OEM 製品についてのリサイクル責任は
ブランド保有者が負う。
日本業界が独自に主張した点が認められた。
対象品目
大型家電、小型家電、IT 機器、医療
機器システム等広範な電気電子機器
が対象
医療機器システム、監視・制御機器、自
動販売機は分別回収、一般家庭からの
WEEE のファイナンス、ユーザーのため
の情報提供義務および Substance Ban 対
象外
当初は大型機器のみを対象とし一定の経験
を経て対象製品を追加すべきとの主張は認
められず。ただし、医療機器等はほとんどの
義務から除外
分別回収
一般家庭からの回収について加盟国
に委ねる。
一般家庭からの回収について加盟国は
無料で回収するシステムを設置するこ
と、回収施設へのアクセスを確保するこ
との義務(回収は自治体の責任、回収コ
ストも自治体負担)
自治体ネットワークの利用と自治体による
コスト負担をすべきとの日本業界の主張が
認められた。
備考
ディストリビューターは新製品を供 同左
給する際、一般家庭から類似機器を
無料で引き取る義務(”old for new”)
4 次ドラフトで消えた”old for new”規定が最
終草案で復活
EU 域外で
のリサイ
クル処理
EU 域外でリサイクル処理する場合
は、その処理施設が欧州の技術水準
と同レベルであること
左記の条件を削除
3 次ドラフトにおける規制は第三国における
リサイクル・処理サービスに不当な制限を課
すもので GATS 違反との日本業界独自の主張
が認められた。
リサイク
リング・タ
ーゲット
2004 年1 月1 日までに以下のリサイ
クリング率を達成すべき
・大型家電
90%
・小型家電、ラジオ・TV 等 70%
・ガス放電ランプ
90%
・CRT 付 WEEE
70%
2006 年 1 月 1 日までに以下の再生率お
よびリサイクリング率を達成すべき
・大型家電
80%, 75%
・小型家電、民生機器等 60%, 50%
・情報通信機器
75%, 65%
・ガス放電ランプ
80%
(再生率の規定なし)
・CRT 付 WEEE
75%, 70%
3 次案のリサイクリング・ターゲットは高す
ぎるとの主張が一部認められたものの再生
率ターゲットが追加。
目標日が 2006 年に延長。
3 次案になかった情報通信機器についてもタ
ーゲットを設定
(ただし 4 次案で 90%だった
リサイクリング率が 65%に引き下げられ、4
次案に対する業界の引き下げの主張はある
程度考慮された)
。
2008 年以降について、再生、リサイク
リングのターゲット見直しを行う。(4
次案以降追加)
JMC environment Update
3
Vol.2 No.2 (2000. 7)
EU の WEEE 指令動向・欧州委員会提案を採択
資料 1‐②
主要項目
第 3 次ドラフト
最終草案
備考
ファイナ
ンシング
一般家庭からの WEEE については回
収、再生等のコストはメーカーが負
担
メーカーは自社ブランド品のみにつ
いて集団又は個別システムによって
ファイナンシング
メーカーは一般家庭からのWEEEの回収
施設以降の回収、再生等についてファイ
ナンシング
その際、個別、集団システムのいずれで
も可
上記には 5 年の猶予期間
Historical Waste については、すべての
現存のメーカーがファイナンシングの
責任
新規製品についてメーカーは自社製品につ
いてのみ責任を負うという4 次ドラフトの規
定が削除(エレクトロラックス対その他白物
家電メーカー / フィリップスの争い)
。
メーカーのコスト負担に 5 年の猶予期間が設
定。
4 次ドラフトで追加された「Historical Waste
について
10 年間 visible fee でコストをカバーできる」
旨の規定が削除。
Historical Waste を対象とすることに反対し
た日本業界の主張は認められず。だだし、5
年の猶予期間設定はある程度評価できる。
WEEE から
の取り外
し処理
WEEE を処理する際、取り外して別
処理することを義務づけられるもの
として、鉛、水銀、六価クロム、カ
ドミウム等を含むコンポーネンツ以
外に LCD 等も対象
100 平方センチより大きい LCD は対象。 LCDのほか4次案で追加されたPCB,トナーカ
PCB、トナーカートリッジ等も対象とし ートリッジ等は取り外し処理の対象から外
て追加
すべきとの日本業界の主張は反映されず。
鉛、六価クロム、カドミウム等を含むコ
ンポーネンツを対象から削除
Substance
Ban
2004 年 1 月 1 日までに鉛、水銀、カ
ドミウム、六価クロム、PBB 及び
PBDE の使用は廃止されるべき。
ただし、Annex II に掲げる特定用途
のものは適用除外される。
2008 年 1 月 1 日までに左記の物質は代
替されるべき。
なお、科学技術上の進歩に応じて
Annex II は見直しが行われ、修正さ
れる。
(これら物質の使用が不可避な場
合、それらの材料や部品は除外リス
トに追加。逆にこれら物質の使用が
避けられる場合、除外リストから削
除)
なお、技術上の進歩や新たな科学的証拠
に照らして、Annex は見直しが行われ、
修正される。
(これら物質の使用が不可避な場合、ま
たは代替によるネガティブな環境・健康
上の影響が環境上の利益を上回る場合、
それらの材料や部品は除外リストに追
加。逆にこれら物質の使用が避けられる
場合、または代替によるネガティブな環
境・健康上の影響が環境上の利益を上回
らない場合、除外リストから削除)
ただし、Annex に掲げる特定用途のもの
は適用除外される。
十分なリスクアセスメントが行われた後に、
水平的な指令で取り扱うべきとの日本業界
の主張は認められず。
仮に本指令に盛り込まれるにしても特定物
質の使用禁止を 2010 年からにすべきとの主
張は、実施日の先送りに影響を与えた。
日本業界提示の 2010 年の代替可能性を基準
とした除外リストは採用されず。
ただし技術進歩に応じた除外リストの見直
しを行うべきとの主張は認められた。
上記の除外リスト見直しの際、電気電子
機器メーカーと意見交換を行う。
Substance Ban の要件の見直しは 2004
年 1 月 1 日までに科学的証拠を考慮して
行われる。
(4) OEM 製品
組合員企業に影響しているところもあるのではないかと拝察いたします。これまで OEM についてのリサイクル責任
が規定上明確でありませんでしたが、これはブランド保持者が負うべきであると主張して、この点も認められており
ます。
消耗品の問題を含めて、他の EU の業界団体、アメリカの業界団体は、こういった問題については特に指摘しており
ませんでした。わが国の業界だけが、この点について主張しておりました。
JMC environment Update
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EU の WEEE 指令動向・欧州委員会提案を採択
(5) 対象品目
電子電気関係の機器がほとんど網羅されていることになっています。最終案では、そのうちの医療機器関係とか、
監視・制御機器、自動販売機等は、主要な項目である分別回収、ファイナンス、Substance Ban 等の規定が対象外にな
りました。日本の業界としては、大型機器に限定して、必要があるものは徐々に追加していくべきであると主張した
のですが、その点は残念ながらそのような形にはなりませんでした。ただし、医療機器等は一部外れたところもあり、
ほっとされた関連の組合員の方もおありかと思います。
(6) 分別回収
第 3 次案では基本的にあまり明記せず、回収については加盟国の問題であるという意識で、加盟国に委ねるところ
が多かったのですが、最終案では加盟国が無料で回収するようなシステムを作るべきだ、回収施設へのアクセスも確
保すべきだとして、自治体が責任を持って回収し、回収コストも自治体で持つべきであるという形になりました。こ
の点については、わが国業界としても自治体のネットワークを充分に利用すべきであり、コストについても自治体が
負担すべきだと主張して、その点が認められたと申し上げることができます。ただ、流通業者は新製品を供給する場
合に同じような古い製品を引き取らなければいけないという規定については、日本の業界も問題視しておりました。
第 4 次案では、1 度消えたものの、最終的にはまた残されております。この辺り、まだ問題が残されている点の 1 つ
です。
(7) EU 域外でのリサイクル処理
EU 域外として、例えば中国等へ持っていってリサイクル処理したいという場合には、そのリサイクル施設がこのド
ラフトに定める基準と同じレベルを持っていなければいけないという規定があったのですが、最終案では削除されま
した。これは、日本の産業界が第三国における処理サービス等に制限を課するということで、GATS 違反ではないかと
いうことを指摘して、その問題が認識されたのだと思います。
(8) リサイクリング・ターゲット
皆さん特に関心をお持ちのところではないかと思いますが、ターゲットが非常に高く設定されています。第 3 次案
では 70%∼90%という形でした。日本の業界は、わが国の場合(50%∼60%ぐらい)と比較して非常に高いターゲッ
トであることを指摘して、現実的にあわせてもっと下げるべきだと主張してきました。目標日が 3 次案では 2004 年 1
月までに達成すべきとしていたものが、最終案では 2006 年までと、少し先延ばしになっています。
リサイクリング率は、最終案ではそれぞれ 50%∼80%と減少しておりますが、再生率という新しい条件が設けられ
て、大型家電の場合 80%とかなり高い数字になっています。低い場合でも、小型家電、民生機器等に関して 60%とい
う設定になっています。再生率の場合は、エネルギーリカバリーも含めてということになり、その点で高くなってい
ます。なお、2008 年以降についてはターゲット見直しを行うということになっています。
IT・通信機器関係は、第 3 次ドラフトでは特にリサイクリング・ターゲットが決められておりませんでしたが、最
終案では再生率 75%、リサイクリング率 65%になっています。この点について、第 4 次案では、もう少し高かったの
ですが、第 4 次案が出された後に、日本の業界としても非常に問題が大きいことを指摘したコメントを出し、その率
が最終案では若干下げられて、今回のような数字になっています。
(9) ファイナンシング
一般家庭からのものについて、第 3 次ドラフトでは回収、リサイクルのコストはメーカーが負担することになって
いましたが、最終案では回収施設以降に限定してのコスト負担に変わりました。ただし、回収施設以前については明記
されていないのでメーカーのコスト負担がなくなったと断言することも出来ません(後述)
。なお、いわゆる全体責任
対個別責任の論点につきましては、4 次ドラフトでは個別責任が明確化されていましたが、Historical Waste を除き最
終草案では不明確になっています。
Historical Waste(指令施行以前に上市された WEEE)を対象とすることについては、日本業界としては企業に遡及的
な義務を課すもので法的にも問題であるとして反対をしてきましたが、最終草案では、実施が 5 年間猶予されたもの
の Historical Waste についてのメーカーのコスト負担義務は残りました。Historical Waste に関するファイナンスの責任
は現存するすべてのメーカーにより分担されなければならないとされております。
Historical Waste のリサイクルコスト回収の方法については、日本業界は、visible fee 方式(新製品価格に Historical
Waste のリサイクル・コスト分を上乗せして徴収)も選択出来るよう主張してきており、4 次案では 10 年間に限定し
て visible fee 方式が出来る規定がありましたが、最終草案ではこの規定が落とされました。ただし、指令案に付された
JMC environment Update
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EU の WEEE 指令動向・欧州委員会提案を採択
説明文書においてはメーカーが visible fee を選択できることを認めることについて加盟国に委ねる形になっています。
(10) WEEE からの取り外し処理
第 3 次案では、鉛、水銀等を含むコンポーネンツが挙げられ、それ以外に LCD 等も対象になっていました。LCD に
ついては、日本の業界の他、ORGALIME(ヨーロッパの組織団体)も高い関心を示していたので、そういうところと意
見を交換したりしながら LCD についての問題を欧州委員会に主張したのですが、結局、100cm2 より大きい LCD を対
象として、依然として残されています。
新しい問題としては、PCB、トナーカートリッジ等も対象に入ってしまっています。この根拠は、我々にもなかなか
判りません。いずれにしろ、危険、毒性を含まないようなものならば、取外し処理の対象から外すべきではないかと
いう意見も出したのですが、その点は、最終草案でも依然として入っている形になっています。ただし、鉛、六価ク
ロム等を含むコンポーネンツは対象から削除されております。
(11) Substance Ban
特定物質の使用禁止については、日本業界としては、電気電子機器のみを対象とした WEEE 指令で扱うべきでなく
水平的指令で扱うべきこと、
使用禁止は十分なリスクアセスメントを行った後で必要であると証明されたときのみに実
施すべきことを主張してきました。
しかしながら、環境総局側の姿勢は極めて堅く水平的指令で扱われる可能性が低くなってきたことから、Substance
Ban が WEEE 指令に盛り込まれる場合に備えて使用禁止期限の延長、除外リストの拡充等を目指すこととしました。
このため、日本業界が希望する除外リストについて 2010 年を基準として用途別に代替可能性をチェックすることとし
て、欧州サイドのみでなく本邦の関係業界の方々に検討をお願いしたうえで意見をとりまとめ、水平的指令で扱うべき
ことを主張しつつ仮に禁止する場合には 2010 年に延期すべきこと、使用禁止の対象については技術進歩に応じて見直
すべきこと等を欧州委員会に要望しました。
その結果、3 次案では鉛、水銀、カドミウム等の物質の使用を 2004 年としていたものが、最終草案では 2008 年に
延期されました。ただし、業界の要望にも拘わらず除外リストは変更されず、問題は残されております。
また、最終草案には技術上の進歩や新しい科学的な証拠に照らして見直しを行うという規定があり、さらに見直しの
際に電気電子機器メーカーと協議するという条項が盛り込まれました。
この点は日本の業界をはじめ欧米の業界から再
三、
意見を出していたことから欧州委員会当局に関係業界との協議の必要性が深く認識されたのではないかと思います。
さらに、
Substance Ban の要件について 2004 年までに科学的証拠を考慮して見直しを行うことになっています。
2004
年に近くなって、あるいはそれ以前に見直しのためのいろいろな動きが出てきて、日本の業界としても検討行う必要が
生じてくると思います(後述)
。
2. WEEE を巡る今後の予定
今後のプロセスをご説明しますと、まず、欧州委員会のドラフトが 6 月に採択されましたので、次は欧州議会と EU 環
境相理事会(各加盟国によって構成される機関)に付託され、最終的には、欧州議会と理事会が同じ案について合意し、
欧州委員会がそれについて合意する必要があります。そのプロセスがこれから始まるということです(資料 2)
。
JMC environment Update
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EU の WEEE 指令動向・欧州委員会提案を採択
WEEE を巡る今後の予定
資料2
JMCブラッセル事務所
2000/7
欧州委員会草案採択
(2000.6.13)
欧州議会・理事会への正式提案
7∼12 月の議長国・仏は環境関連では WEEE と Substance Ban の優先順
位を高くする意向
↓
欧州議会
6.22 欧州委員会、EU 環境理事会にて草案提示
第 1 読会
↓
議会環境委員会の rapporteur は、Mr.Karl-Heinz Florenz(EPP, 独)
陰の rapporteur は、Mr.Pjililip Withehead(PSE, 英)
との説があるが、未定。
議長国・仏は、12 月 18・19 日に開催予定の EU 環境理事会で「共通の
立場」の採択を目指している。
理事会
↓
欧州議会
第 2 読会
↓ (必要により調整)
欧州議会・理事会 指令採択
↓ (通常 18 ヶ月以内)
加盟国法制化
詳細を申し上げると、第 1 読会のプロセス、第 2 読会のプロセスと、二段階になっています。欧州議会は、環境委員会
に付託されるわけですが、今回は、Karl-Heinz Florenz というドイツの CDU の議員が rapporteur(報告者)として決まり、
彼が、欧州議会としての意見を纏め、それを環境委員会で議論して意見を集約し、本会議においてまた意見を集約すると
いうのが欧州議会の第 1 読会のプロセスです。同時に理事会でも議論が始まります。
第 1 読会が終わり、理事会の立場との違いを摺り合わせた後、もう 1 度第 2 読会で同じことを行います。最終的に欧州
議会と理事会で意見調整をして採択を行い、欧州委員会がノーといわなければ、それで通るというわけです。その後、指
令に基づく各国の国内法制化手続が始まるということです。通常は、第 1 読会、第 2 読会併せて、大体 1 年半か 2 年ぐら
いかかります。欧州理事会は半年交代で議長国を交代していて、今年の後半(7 月 1 日)からフランスが担当しています。
そしてフランスは、WEEE 指令について相当優先順位を高くしていきたい意向を持っていまして、プロセスをかなり急ぐ
のではないかと見られます。そういう意味では、通常の 1 年半、2 年とはいわずに、早いタイミングで決まっていく可能
性があります(欧州委員会による草案の提案後の立法プロセスについては、別掲の環境・安全 G 作成「EU の立法過程」本
誌 P.15 参照)
。
3. WEEE に関する論点
今後の意志決定の主役は、欧州議会、理事会に移るので、欧州の産業界も含めて、議会、理事会への働きかけが始まる
と思います。具体的には、どのような論点が予想されるかについて「WEEE 指令案に関する論点」を一覧表(資料 3)に
してあります。この資料は、各論点ごとに、欧州産業界がどういうプライオリティを持っているかということと、環境保
護派がどのように動くであろうか、日本はどう対応すべきか等を簡単に整理したものです。
(1) visible fee/個別責任 or 全体責任
個別責任は、各社がマーケットに投入した製品については、マーケットに投入したメーカーが責任を負うというのが
個別責任論の立場です。全体責任は、産業界全体として責任を負うということです。具体的には、フィリップスならフ
ィリップスが投入した製品であっても、将来的にはフィリップスのみが責任を負うのではなく、電子電気業界全体とし
JMC environment Update
7
Vol.2 No.2 (2000. 7)
EU の WEEE 指令動向・欧州委員会提案を採択
て責任を負えばいいというのが全体責任論の立場です。欧州の産業界においても二つに割れています。個別責任論を主
張しているのは、IT メーカー(主にコンピュータ・メーカー)
、そしてスェーデンの白物メーカーのエレクトロラック
スです。全体責任論を主張しているのは、フィリップスとエレクトロラックス以外の白物メーカーということになって
います。
WEEE 指令案に関する論点一覧表
資料3
JMCブラッセル事務所
2000/07
論点
予想される産業界の立場
Visible Fee /
個別責任 or 全
体責任
リサイクリン
グ・ターゲット
IT メーカー / Electrolux(個別責任)とその他白
物家電メーカー及び Philips(全体責任 / ビジブ
ル・フィー)の争い
引き下げ
ローカル・コレ
クション
予想される環境派
の立場
個別責任をサポー
トか?
日本の対応
オランダモデルでよいか。
製品のデザインで競争するのがよいのか。
さらなる引き上げ
引き下げを主張するのは当然であるが、こ
のためにどのようなデータが出せるか。
現状で満足するもディフェンスのため明確化を
主張
産業界の責任とす
ることを追求か?
欧州産業界と同じ立場でよいか。
Historical
Waste
責任の免除 / さらなる先送り
5 年の猶予期間の延長を目指すが、環境派に対
するディフェンス以上のものがないか。
5 年の猶予期間の
短縮
欧州産業界と同じ立場でよいか。
Substance Ban
3 つの選択肢があるが、これらを同時に追求か。
(1) 企業総局の行うリスクアセスメントをサポ
ートして Substance Ban の全面的撤廃を目
指すこと
(2) 除外リストの決定手続きと除外基準の改善
を目指すこと
(3) 除外リストの拡大そのものを目 指すこと
・除外リストのさ
らなる縮小
・使用禁止期限の
切り上げ
(1)∼(3)を同時に追求することでよいか。
(3)については、欧州産業界具体的な立場は
異なりうる。
(1)については、どのようなデータが出せる
か。
(3)について、テクニカル・フィッシュをど
のようにプレゼンテーションするのが有
効か。
LCD
LCD には有害物質が含まれていないので使用済
み機器からの除去の対象とすべきでない。
?
欧州産業界と同じ立場でよいか。
何故、論点が分かれているのか。第 1 点として、IT メーカー、エレクトロラックスは、基本的には製品のデザインに
自信があり、競争力があると思っています。これからリサイクルし易いデザインをどんどんと投入して、市場で優位に
立ちたいという思いがあります。 一方、フィリップスとエレクトロラックス以外の白物家電メーカーは、むしろ競争
が起きることを恐れているところがあります。フィリップスなどは既にオランダで全体責任論のモデルが開始されてい
るわけですから、彼らにはやり慣れているオランダ型のモデルにしたいという思いがあります。オランダ型のモデルは
まさに全体責任論です。要するに新しい製品を市場に投入するときに、一定の金額を各社が基金のようなところに支払
います。その基金は何に充てられるかというと、その時点で売った製品のリサイクル費用に充てるのではなく、その時
点で回収される製品のリサイクル費用に充てられるのです。つまり、過去に誰かが売った製品のリサイクル費用に充て
るということです。ですから、これは製品デザインをリサイクルし易いように各社が競争して改善していくというイン
センティヴが非常に薄くなるスキームです。
同時に、もう 1 つのポイントは、フィリップスの思惑でもあると思われますが、マーケットシェアが下がりつつある
企業にとっては過去に売った製品について自分がリサイクルする義務よりも、全体責任ということの方が負担が少なく
て済みます。そういうこともあって、フィリップスなとは強く全体責任論を主張しています。
visible fee というのは、実は全体責任論をカバーするための言葉です。visible fee を導入しようと思ったら基本的
には産業界同一の fee ということですから、必然的にオランダ・モデルに限りなく近いということにもなります。そう
いう意味で visible fee といっているのは実は全体責任のことだと思います。
日本メーカーは、これまでフィリップス主導でそういう動きをしているのを基本的には黙認していました。visible
fee の方がやり易いのではないかということで働きかけをしていました。しかし今一度本当にそういう戦略でよいのか
どうか。再評価して決めていただく必要があるのではないかと考えております。
(2)
リサイクリング・ターゲット
欧州の産業界は今のターゲットが非現実的といってもよいほど高いと強く思っていますので、産業界一致して引き下
JMC environment Update
8
Vol.2 No.2 (2000. 7)
EU の WEEE 指令動向・欧州委員会提案を採択
げの方向でロビーイングすると思います。
一方、環境保護派の立場というのは引き上げを当然主張するでしょうから、その間の綱引きになっていくということ
であります。日本は勿論引き下げを主張するのだと思いますけれども、やはり決め手になるのは政治力もさることなが
ら、具体的にリサイクル率がどうしてここまでしか上がらないのかというのを如何に説得的に判ってもらうか。
「デー
タを示して…」というのがポイントになると思います。リサイクル率が高い方がいいということは誰も争えないわけで
す。政治的にはみな環境保護派ですから、その中で物理的にどこまでしか高められないのだということを具体的にどう
いえるかというのがポイントになると思います。
(3) ローカル・コレクション
各家庭から回収場まで誰に回収責任があるかということなのです。今のところ WEEE 指令では、その点は曖昧になっ
ています。曖昧になっているというのは、メーカーの責任として回収場から後についてはメーカーが責任を負いなさい
と書いてあるけれども、その前についてはメーカーは責任を負わなくてもいいとは書いてありません。従って厳密にい
えば、それは各加盟国ごとに判断されることになるのです。国内法制化される段階で、回収についてもメーカーに負担
をしてもらうのだということが出てくる余地はあります。それをどうするか。産業界は勿論それをはっきり書きたいと
思っていますが、やはり EU と各加盟国の間の責任分担という議論の中で、そこまで EU が各加盟国の裁量を縛れるのか
という問題があります。欧州の産業界はその点については非常に悲観的な見通しを持っていて、欧州議会を通じて働き
かけをしても実際上は意味がないであろう、可能性は薄いであろうという判断をしています。環境派は産業界の責任と
して積極的に書くべきだということを言ってくるであろことを皆が予想しているので、基本的には環境保護派の動きに
対するディフェンスという意味で、一応は「これは産業界の責任ではない」ことをはっきりして欲しいということをい
うのであろうと思いますけれども、それはあくまでもディフェンスという主旨ではないかと考えています。日本も基本
的には同じ立場でよいのではないかと我々は考えています。
なお、
(資料 1)の中で自治体回収施設までの回収コストは自治体負担と書きましたが、これは産業界の解釈を書い
ているということであります。指令の「無料で返却できる」というのは、最終消費者およびディストリビューターが無
料で返却できるということであり、今申し上げましたとおりそれの費用を税金で賄うのか、メーカーから費用を負担さ
せるのかということについては何も書いていないのです。要するに、これは「返却をする消費者から費用を取ってはい
けない」といっていることに過ぎないわけです。
(4) Historical Waste
欧州の産業界の中で意見が割れています。IT メーカーを主体に、製品の寿命が短いところは 5 年間の猶予期間があれ
ば、それは、実際上問題点は解消されているという意識なのですが、勿論白物メーカーとかエアコンメーカーはもっと
製品寿命が長いので問題意識は持っています。従って、個別業界でいうと、そういう業界は 5 年間をもう少し延ばして
欲しいといような議論をするのだと思いますけれども、欧州産業界全体としてはマイノリティだと思います。環境保護
派の立場は 5 年間の猶予期間を短縮する方向だろうと思います。
(5) Substance Ban
おそらく欧州の産業界は次の 3 点を同時に追求すると思います。1 点目は、先ほどご説明したとおり、2004 年の 1
月までに新しい科学的な証拠に基づいて Substance Ban の条項を必要があれば見直しをするという条項が入っています。
それは事実上何をするのか。それは企業総局がここで対象になっている禁止物質のリスクアセスメントをするというこ
とです。そのリスクアセスメントで、これは環境上害がないのだという結論になれば、可能性としてはそれを以って
Substance Ban をその部分について、その物質についてはなくすということもあり得るわけです。従って欧州の産業界
としては、その企業総局のリスクアセスメントに、いろいろデータを提供するなど、全面的にサポートするということ
をやります。
2 点目は除外リストの決定手続と除外基準の改善です。これは指令上、除外リストの決定手続については廃棄物に関
する指令 18 条に基づく委員会で行うと書いてあるのですが、これは環境総局主導で行うということの会議であり、そ
れを企業総局主導のものに変えるとか、そうすると産業界の意見が反映し易くなるとか、あるいは除外基準でいうと、
経済的な合理性という観点を強めるとか…、要するに物理的に代替可能であっても経済的に非合理であれば代替しなく
ていいようなものにするとか、そういうところをするのだと思います。
3 点目は、ここの指令に付いている除外リストそのものの拡大ということです。これは、各産業界それぞれの思惑に
よって、指令が成立してから見直しをするという話はありますが、指令の出発点での除外リスト、それ自体の拡大をす
るということが起きるのだろうと思います。勿論、環境保護派は、その逆に動くわけですけれども、日本の対応として
JMC environment Update
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Vol.2 No.2 (2000. 7)
EU の WEEE 指令動向・欧州委員会提案を採択
も(1)から(3)のものを同時に追求していくのだろうと考えています。
(6)LCD 等回収後の部品の取外し義務
最後のポイントが、いわゆる回収後の部品の取外し義務です。大きく問題になっているのは LCD、PCB があります。
これについては、欧州の産業界も含めて何故危険性がないのに、それを外す必要があるのだという議論を行って、議会、
理事会のプロセスで理由のない分離取扱い義務の品目を抜いていくことになると思っています。以上が WEEE 指令につ
いての概要です。
EEE
1. EEE の最近の動向について
EEE(電気電子機器環境影響指令案)指令案の概要について(資料 4:P.12 参照)に基づいて説明をします。細かい説
明に入る前にコンセプトだけお話すると、ライフサイクル・アセスメント(LCA)のアプローチを使って、製品の製造か
らデザインまで一貫して規制をしようというのが基本的な発想の「その 1」です。発想の「その 2」は、その規制をする
具体的なやり方です。EC 条約 95 条に基づく、ニューアプローチ指令という手法を取ろうということですが、ニューアプ
ローチ指令について判り易く言うと、CE マーキングと同じアプローチです。その意味は、指令上は抽象的にベイシック・
リクワイアメントを書いて、そのベイシック・リクワイアメントを基本的な要求項目に合致するように製品をデザインし
なければいけないという規制がかかるのです。基本的な要求項目に合致していない限りにおいては、製品を売ってはいけ
ないということです。逆に、基本的要求品目に合致している限りにおいては、製品をどこの加盟国で売ってもいいという
ことです。 基本的要求項目に合致していればいいということなのですが、実際は欧州の標準規格が参照規格となります。
参照規格に合致していないものでも勿論法律的には、
マーケットに出せるのですが、
各加盟国がそれをモニターしていて、
参照規格と同等ぐらいの厳しさのものであるかどうかというのをチェックできるのです。そのため、ニューアプローチ指
令は個別の規格を作らないというのが売り物なのですが、実際上は、欧州の参照規格が事実上の強制規格になってしまっ
ているというのが CE マークの実体で、それと同じ形のものを目指しているというのが基本的な全体像です。
(1) 指令の考え方
詳しくご説明しますと、まさに、EEE がライフサイクル全体の中で環境に与える影響を最小にするため、LCA のコ
ンセプトに基づいて、機器の設計・製造を規制するということで、その規制を重視した場合だけマーケットに投入で
きるのです。
基本的要求事項に合致するように設計、製造し、その製品がその基本要求事項に合致しているかどうかということ
について、適合性評価手続を取って、適合性評価手続を終えたものは、CE マークのように EE マークを貼付し、EE
マークがついているものだけ売っていいという規制です。
(2) 対象製品
対象製品は、電気電子機器全部であり、個々の電子部品、部品、アセンブリー、消耗品を含みます。
(3) 基本的要求事項
LCA のコンセプトがまさに全面的に取り入れられています。まず一般的な規定で、ライフサイクルの中で環境に与
える影響を最小にするように設計、製造するということになっています。その際、設計技術上の選択の原則は、
「ラ
イフサイクルの最後で処分可能な廃棄物のように、環境に脅威を与える装置、部品、材料、物質の過度の使用を回避
する」
、
「保守、修理、解体、再使用および廃棄物管理を促進することにより、環境上の悪影響が著しく削減される場
合には機器の設計を見直す」等ということで、注目すべきは、環境側面でエネルギー消費を最小にするというコンセ
プトが入っていることです。
個別の要求事項として、設計、製造上の要求事項があります。設計と材料の選択では、設計における考慮事項では、
ライフサイクル持続期間の最適化等、保守対応設計では、サブアセンブリーや装置は簡単に交換できるべき等、解体
対応設計では、解体は簡単な工具で可能であるべきよう設計しなさい、材料の選択は、廃棄物として処分するので、
できるだけ少なくするため、リサイクル性の程度を考慮して選択し得ること、等々書いてあります。製造プロセスも、
材料の無駄を省いて、エネルギー消費を最小化にするという観点から、製造方法を最適化しなければいけないという
ことです。
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EU の WEEE 指令動向・欧州委員会提案を採択
機器の使用段階では、必要なエネルギー消費を最小化するように設計しなくてはいけないとか、危険な排出物や排
出物の発生を回避、削減すること。
説明書と機器からの廃棄物の最終発生では、サブアセンブリー、装置、その他の材料は正しくラベリングすること
となっています。
資料に記載してなくて重要なことは、これに基づいて規格を作ることです。その規格に合致した場合、そしてここ
に書いてある欧州の現在のエコラベル・スキームに合致している場合の 2 つの場合においては、ここでの基本的要求
事項を満たすというように推定するという規定があります。逆にいえば、それに合致していない場合においては、よ
り厳しい証明責務を負うわけです。
(4) 適合性評価手続
現在のところ 2 つのプロセスを用意しています。それが AnnexII、AnnexIII ですが、AnnexII による場合は内部設
計監理ということで、書類にここに書いてあるような項目を全部書いて、専門家によってそれを証明しなければいけ
ないということになります。もう 1 点は、環境監理システムということで書いてありますが、基本的にはこれは
ISO14001 的な発想で、内部の環境マネジメントシステムがはっきりしていれば、認証手続はそれを以ってよしと見
なすことになっています。ただ、注意していただきたいのは、認証手続はそれでいいということであって、必ずしも
個別の製品が基本的要求事項に合致するかどうかということを推定させるものではありません。それ自身は加盟国が
サンプリング調査等で実際にモニタリングして、監視してくるということです。認証手続に合致したものについては、
EE マークを貼るということになっています。このようなことが出てきた背景として、長期的背景と短期的背景を次
にお話します。
(5) 長期的背景と短期的背景
長期的背景は、基本的には欧州委員会が LCA を志向していることです。EEE 指令案を担いでいるのは環境総局では
なくて企業総局です。企業総局としてはいずれ LCA を導入するのであれば自分たちでやりたいという一種役所の権限
意識と、ニューアプローチ指令が最適であるという思いがあります。同時に長期的な問題意識としては、仮に、こう
いうことをやらなければ LCA の規制ができる前に個別の項目ごとに規制がされてしまう。まさに Substance Ban では
それが起きたわけです。それが省エネでもやるし、あるいはリサイクル可能性の規制とか、あらゆる観点から規制が
思いつき得るわけです。それを加盟国が独自に、あるいは企業総局以外の総局が主導して欧州全体で細切れの規制が
できてくるのではないかという懸念があって、それができる前に、全体を総合的に規制できるようにしたいというの
が長期的な彼らの問題意識です。
短期的な動機は単純です。EEE は、冒頭申し上げたとおり、WEEE 指令の中の Substance Ban に対抗するために出
てきた法案です。ただ、それは結局 EEE で Substance Ban を全部抜くということをできずに、WEEE 指令から、単に
Substance Ban の指令が切り離されて終わっているわけです。そういう意味では、短期的動機の部分は、いま一段落
しているわけですけれども、企業総局は、WEEE 指令を決めるときに、まさに LCA の発想にしたがって、製品のデザ
インに関するニューアプローチ指令を、今後制定する必要があるというのを、WEEE 指令の前文に盛り込んでいるの
です。現在、EEE を推進すべく、欧州委員会部内でいま方針を最終決定中です。何を議論しているかというと、WEEE
指令に対抗ということで、産業界の支援がこの時点では一時盛り上がりかけたのですが、それが期待できなくなった
今、どういう形で EEE の指令を進めるかということを、いま検討中でだということです。恐らく EEE を産業界の意
向にしたがって弱めるということが入っているのですけれども、いま検討中で、スケジュールとしては 7 月の末まで
に彼らが多分内部方針を決め、今年 9 月か 10 月ぐらいに正式に、欧州委員会の中の総局間協議を始めるとしていま
す。彼らの願いは、これを早く欧州議会、理事会に提出して、Substance Ban の指令をこちらに統合して、自分たち
の権限に抱えるというのを狙っているのだと思います。そういう意味では、かなり早いタイミングで進む可能性があ
る前提があると思います(資料 No.5: P.14 参照)
。
2. 問題点
日本企業にとっては 2 つの大きな問題があると思います。
問題のその 1 は、
まさに製品のデザインについて、
CE マーキングと同様にまた欧州だけの基準ができてしまうことです。
問題点その 2 は、LCA について、欧州に基準ができると、それが恐らくいずれ世界の標準になってしまうことが予想され
ます。何故かというと、国際基準は IEC で、欧州規格は CENELEC で作業するのですが、CENELEC はドレスデン協定によ
り、同じ項目については CENELEC が先に作業を開始した場合は CENELEC が結論を出すまで IEC は検討を開始しないとい
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EU の WEEE 指令動向・欧州委員会提案を採択
うものです。即ち、CENELEC が自分たちのドラフトを作り、それを IEC に提出して初めて IEC のプロセスが始まるわけで
す。技術上欧州が世界のドラフトをまず作ってそれに対して投票するということになるわけです。
そういう意味で、ある意味ではまだ非常に曖昧で、これまで誰も規格化しようとしなかった LCA について欧州が先駆け
て規格化を行い、それを世界中に事実上押し付けてくるというのが 2 番目の問題点だと思います。
日本企業あるいは日本の産業界がこれに対してどういう対応をとるべきか。EEE については、極力無害化するように EEE
自体を変えていくというやり方が 1 つと、EEE に変えて、世界的な基準作りを提唱していくというやり方の 2 つがあると
思います。それは同時的に追求できると思いますが、2 番目のメリットとしては、仮に、IEC が CENELEC よりも先に基準
作りに着手してどんどん進めば、仮に EEE がつぶれなくても、日本企業が相当コントロールできる体制で世界の基準作り
を進められると思います。IEC が先に決まると、基本的に、ヨーロッパ基準は、それに従わざるを得ませんから、欧州独
自の基準を作るというのがかなりの確立で防止できるということだと思います。◇
資料 4
EEE 指令案の概要
JMCブラッセル事務所
2000/7
EEE(電気電子機器)がライフサイクルの中で環境に与える影響を最小にするため、機器の設計・製造に関して規定す
るもの。規定を順守した場合のみ上市・サービスを提供できる。すなわち、基本的要求事項を考慮して設計・製造したう
えで、適合性評価手続きを経て、マーキング・適合宣言の手続きを行うなどメーカーが包括的に責任を負う、というもの。
1.対象製品
電気電子機器(構成部品、サブアセンブリー、消耗品を含む)
2.基本的要求事項(性能等についての整合規格)
(Annex I)
EEE は、以下の事項を考慮して設計、製造されなければならない。
A) 一般規定
・ ライフサイクルの中で環境に与える影響を最小にするよう設計、製造する。
・ 最適な設計・技術上の選択における原則
* ライフサイクルの最後で処分可能な廃棄物のように、環境に脅威を与える装置、部品、材料、物質の過度の
使用を回避する。
* 保守、修理、解体、再使用および廃棄物管理を促進することにより、機器が環境に与える悪影響を最小にす
る。
* 機器の通常使用の際、汚染を最小にし、制御する。
* 機器の通常使用の際、エネルギー消費を最小にする。
・新知識や科学的発見の適用、環境に優しい設計への最新技術の開発により、環境上の悪影響が著しく削減される
場合には機器の設計を見直す。等
B) 設計・製造上の要求事項
1. 設計と材料の選択
・ 設計における考慮事項――ライフサイクル持続期間の最適化等
・ 保守対応設計――サブアセンブリーや装置は簡単に交換できるべき等
・ 解体対応設計――解体は簡単な工具で可能であるべき等
・ 材料リサイクル設計――材料は廃棄物としての処分よりリサイクル性の程度を考慮して選択
・ 機器の仕様は、リサイクルされた材料の使用を妨げない。等
2. 機器の製造
・材料の無駄をはぶき、エネルギー消費を最少化するため、製造方法を最適化する。
3. 機器の使用
・ 機器が性能を発揮するのに必要なエネルギーを最小化する。
・危険な排出物や廃棄物の発生を回避、削減する。等
4. 説明書と機器からの廃棄物の最終発生
・ サブアセンブリー、装置、その他の材料は正しくラベリングする。
・ 装置刷新の可能性をユーザーに伝える。
・ 廃棄物の正しい取り扱いと処分のメカニズムを提案する。等
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EU の WEEE 指令動向・欧州委員会提案を採択
エコラベル・スキームに合致しているものは、当該エコラベルがカバーする範囲は適合している(基本要求事項を満た
す)と推定
3.適合性評価手続き
・EEE 上市の前に、内部設計監理(Annex II)または環境監理システム(Annex III)により適合性評価を行わなければ
ならない。
・EEE 上市の後、最後の製造後 10 年間、加盟国が検査出来るよう、適合性評価遂行に関する文書および適合宣言書コ
ピーを保管しなければならない。
A. 内部設計監理(Annex II)
指令の要求事項に適合しているかどうか評価できるよう、書類には特に以下のことを規定しなければならない。
・ 予想される環境への影響の確認と評価
・ 環境専門家によって行われたライフサイクル・アセスメントの検討結果
・ EEE とそれが意図される使用についての一般的説明
・ 概念設計と製造仕様
・ 適用した整合規格のリスト等
↓
EE マーク貼付、適合宣言書作成
B. 環境監理システム(Annex III)
以下の環境監理システム(EMS)を実行しなければならない。
1. 環境方針
・ 全体的な環境パーフォーマンスの完全達成と環境目的を設定し見直す枠組みの提供をコミットする。
・ 採用したすべての規定は、手続き書と指示書という形で文書化する。
・ それらは以下の記述を含む。
* 環境目的と組織構造、実行と継続を考慮した責任と監理力
* 定期的に審査されているという回答が要求される統制文書に関する手続き
2. 計画
・以下のことを設定し、維持する。
* メーカーがコントロールでき、環境目的の設定に影響力を行使できるという機器の環境面を確認する手続
き
* 環境目的。ならびにオペレーションとビジネスに関する要求事項を考慮した技術的オプションの検討。
* 目的達成のためのプログラム
3. 実施
・ 効果的な環境管理の確保等のため、責任と権限を定め、文書化する。
・ 機器を設計する際、実施される設計コントロールと技術検証、仕様工程等を示した文書を作成する。
・ 適用した規格または関連の基本要求事項を遵守するため使用される手段を示した仕様書を作成する。
・ メーカー自身が遂行するか、専門家によって遂行される廃棄物管理プログラムを確立する。
・ 定期的に内部環境監理システム監査を実行する。等
↓
EE マーク貼付、適合宣言書作成
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EU の WEEE 指令動向・欧州委員会提案を採択
資料 5
EEE 指令案に関する主要団体の意見
EACEM
・ ニューアプローチによる法的確実性(域内の自由流通を妨げない)を歓迎
・ メンバー企業は、Annex I で示された基本的要求事項のほとんどを既に実施している。
・ 基本的要求事項への整合性を確保ために欧州標準化機関に規格の作成を委ねているが、製品寿命の長い方が環境の観点
からは望ましいというような基本的な価値判断を CEN,CENELEC 等にどのように行わせるのか不明。
・ 整合性の規則が技術革新やエコラベルに関するメーカー間の競争を阻害するような負担を課すべきでない。
・ 6 条の適合性評価に関する規定は歓迎するが、内部設計監理(Annex II)についてはかなりの管理的・財政的負担が生
じ、またライフサイクル・アセスメントのアプローチは時期尚早である。
・ 新しいマーキングを導入するより既存の CE マーキング制度を利用することが望ましい。
EICTA/IPC/CAMA
・ 新しいマーキングの導入は何の利益もなく大幅なコスト負担の増加となるので、CE マーキングのみを利用すべき。
・ 上市の制限の規定に関して、欧州委員会は環境保護に関連した国家としての措置の導入を受け入れまたは拒否できるが、
10 条ではこの点が述べられていない。
・ ニューアプローチの精神に鑑みて、Annex I における整合要件は法的措置でなく標準化を通じて行うべき。
・ 内部設計監理(Annex II)における書類記載条件として「環境専門家によるライフサイクル・アセスメントの結果」と
あるが、専門家とは、メーカーの雇用者であり得ると推定される。従って、専門家と記述する必要はない。
EEB(European Environmental Bureau)
・ この指令案は、現在作成作業中の IPP と同様な特徴を持つとみられるので IPP の策定後に出されるべきである。
・ 設計要求事項の設定のための責任を欧州規格機関に委ねすぎている。
ORGALIME
・ EC 条約 95 条に基づくアプローチは評価するが、ニューアプローチの適用には注意深い配慮が必要である。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◆◇◆◇◆◇◆
WEEE と Substance Ban の欧州委員会提案と EEE ドラフトのテキスト(和英対訳版)は増刊号 WEEE Hand
Book II として刊行しています(P78‐79 参照)
。
JMC environment Update
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Vol.2 No.2 (2000. 7)
EU の立法過程
27.06.2000
(共同決定手続き)
∼EC 条約第 251 条に従う指令の採択∼
日本機械輸出組合
環境安全 G 作成
欧州委員会、法案を提出
欧州議会
修正提案(あれば)
(第 1 読会)
理事会
理事会、欧州議会の修正提案を全
て承認した場合、修正版を採択
理事会、共通の立場を特定多数決で採択
理事会、欧州議会が修正提案をし
ない場合、提案を採択できる
(伝達)
欧州議会
欧州議会(伝達 3 ヶ月以内)
第2読会
(共通の立場を採択するに至った理由を欧州議会に通知)
欧州議会、共通の立場の承認 or 決定を
欧州議会、総議員の絶対多数決により共通の
欧州議会、総議員の絶対多数決により共通の
行わない場合、共通の立場に従い採択
立場を拒否した場合、提案は採択されない
立場を修正提案した場合、修正案の送付
理事会 3 ヶ月以内*に
特定多数決☆で行動
☆
全会一致
欧州委員会、修正につい
ての意見を述べる
否定的な意見の場合
理事会、欧州議会の全ての修正を承認した場合、修
理事会、一つでも修正を承認しない場合、
正された共通の立場の形で採択
理事会議長、欧州議会議長との合意で、6 週間以内に調停委員会開催
・構成 : 理事会のメンバー又はその代表、同数
の欧州議会の代表
・欧州委員会 : 手続きに参加、必要な発議
調停委員会
・多数決で共同草案の合意
・第2読会の欧州議会の修正提案を検討
調停委員会、6週間以内*に共同
調停委員会、共同草案を承認しなかった
草案を承認した場合
*3ヶ月及び6週間の期間は、欧州議
場合、不成立
会 or 理事会の発議により、夫々最大
1ヶ月及び2週間延長
欧州議会、投票の絶対多
理事会、特定多数決で採
数決で採択か否か決定
択か否か決定
どちらか一方が、共同草案を承認しなか
った場合不成立
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Vol.2 No.2 (2000. 7)
仮訳
欧州共同体委員会
ブラッセル、2000 年 6 月 13 日
COM(2000)347 (暫定)
2000/0158(COD)
2000/0159(COD)
WEEE(廃電気電子機器)に関する欧州議会および欧州理事会指令提案
EEE(電気電子機器)に含まれる特定有害物質の使用規制に関する欧州委員会および欧州理事会指令提案
(欧州委員会による提出)
説明メモランダム
1. 序文
2. 政策の検討
3. 目的と主な提案項目
4. 本提案で言及されている環境問題
4.1 WEEE(廃電気電子機器)管理の現状
4.1.1 WEEE の焼却
4.1.2 WEEE の埋立
4.1.3 WEEE のリサイクル
4.2 資源の側面
4.3 生産者責任の原則
5. 有害物質に関する立法
5.1 政策の検討
5.2 目標物質に関するリスク
6. 域内市場の側面−加盟国の現状
6.1 加盟国の現状
6.2 域内市場
7. 国際的側面
7.1 国際的展開
7.2 通商側面
8. 法的基盤
9. 補完原則と比例原則
9.1 補完原則
9.2 比例原則
10. 他共同体政策との整合性
11. 経済的評価
JMC environment Update
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Vol.2 No.2 (2000.7)
WEEE 最終提案の説明メモランダム
11.1 施行コスト
11.1.1 分別回収と再使用・リサイクル
家庭用製品の回収コスト
家庭用製品のリサイクルコスト
11.1.2 新製品における有害物質の削減
11.2 提案された指令の利益
11.2.1 経済上の利益
11.2.2 外形上の利益
分別回収とリサイクルの外形上利益
設計改良と有害物質削減の外形上利益
11.2.3 ライフサイクルアセスメントとライフサイクル財務分析
11.3 マクロ経済効果
12. 利害関係者の協議
13. データ/科学的基礎
WEEE に関する指令提案の内容
EEE に含まれる特定有害物質の使用規制に関する指令提案の内容
付属書 I 再加工時の環境影響への材料の特定削減
付属書 II ビジネスに関する本提案の影響 −特に中小企業に関して
付属書 III 参考文献
付属書 IV 科学的評価に関するメモランダム
<これ以降の廃電気電子機器に関する欧州議会および欧州理事会指令案以降は、environment Update 増刊号
Hand Book II に掲載。お申込の詳細は、本誌 P.78-79 を参照>
WEEE(廃電気電子機器)に関する欧州議会および欧州理事会指令
付属書 IA∼IV
EEE(電気電子機器)に含まれる特定有害物質の使用規制に関する欧州議会および欧州理事会指令
付属書
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Vol.2 No.2 (2000.7)
WEEE 最終提案の説明メモランダム
説明メモランダム
1. 序文
EEE(電気電子機器)の生産は、西側世界における製造業の中で最も速い成長を示す領域の一つである。技術
的革新と市場拡大の双方が、買い換えプロセス(replacement process)を加速し続けている1。EEE の新しい応用
は著しく増加しつつあり、もはや EEE を使用しない生活は考えられない。この発展が WEEE(waste electrical and
electronic equipment:廃電気電子機器)の深刻な増加を導いている。
WEEE の流れ(stream)は、材料(materials)と構成部品(components)の複雑な混合である。環境への影響
がある新らしい材料と化学物質の絶えざる開発が絡み合い、廃棄物段階における問題の増加という結果につなが
っている。WEEE の流れは、次に掲げるさまざまな理由により自治体廃棄物(municipal waste stream)の流れと
異なっている:
◇ WEEE の急速な増加が懸念されている。1998 年には 6 百万トンの WEEE が発生した(自治体廃棄物の流
れの 4%)。今後その量は、少なくとも年間 3∼5%ずつ増大が見込まれる。これは 5 年間で WEEE の量
が 16∼28%増加することを意味し、12 年間で 2 倍になることが見込まれる。WEEE の伸びは平均的な都
市廃棄物の伸びの 3 倍である2。
◇ EEE は、有害物質を含む性質上、正しく事前処理がされない場合、廃棄物管理の段階で重大な環境問題を
引き起こす。WEEE の 90%以上が事前処理されないまま埋立、焼却、再生されているため、自治体廃棄物
の流れに見られる多種多様な汚染物のかなりの割合が WEEE に拠るものである3。
◇ EEE の生産による環境負荷(「環境荷物"ecological baggage"」)は、自治体廃棄物の流れの中で、他の流
れを構成している材料の生産による環境負荷をはるかに陵駕するものである4。従って、WEEE のリサイク
ルの向上は、特にエネルギーの節約に関連して資源の節減に貢献するはずである。
WEEE の管理に関連する環境問題を考慮して、加盟国はこの分野の国家立法の起草を始めた。オランダ、デン
マーク、スウェーデン、オーストリア、ベルギーおよびイタリアは既に当該立法を提出した。フィンランドとド
イツも間もなく行うものと予想される。今のところまだ国の立法を起草していない加盟諸国は、現在のイニシア
ティブに先立つさまざまな協議の会合で、この廃棄物の流れに対する欧州立法の調和が欠如していることに懸念
を示した。
域内市場を考慮して、WEEE の件への国家的アプローチから種々の問題が発生している。即ち、
◇ WEEE 管理における各国の異なる政策は、より安価な廃棄物管理制度への WEEE の国境を超えた動き
がありそうな場合、各国リサイクル政策の効果を妨げる。
◇ 生産者責任の原則へのそれぞれの加盟国単位の異なる適用が、経済オペレーターへの財政的負荷に関
する相当な不一致を導く。
◇ 特定の物質が使われなくなる段階での各国の要求が異なることが、EEE 貿易に影響を与える可能性が
1
2
3
4
コンピューターの初期使用期間は 60 年代には平均 10 年。今日では初期使用時間は平均で 4.3 年であり、最も革新的な製品の場合は既に 2
年以下になっている。(Umweltverträgliche Produktgestaltung (München 1998), Ferdinand Quella/Siemens (editor) Publicis MCD Verlag.)
AEA Technology, Recovery of WEEE: Economic and Environmental Impacts, June, 1997.
Environmental Consequences of Incineration and Landfilling of Waste from Electr(on)ic Equipment (Copenhagen 1995), Nordic Council of
Ministers. (EEE からの廃棄物の焼却と埋立の環境的帰結《コペンハーゲン 1995》、北欧閣僚理事会。)
"Pilotsammlung von
Elektroaltgeräten in Bregenz"という研究によると、オーストリアで発生する廃電気電子機器の 95%は自治体廃棄物と一緒に単純に処分され
るか、事前処理なしに金属リサイクル連鎖に導入されている。
例として Malley “Schwergewicht” c’t1997, Vol5, p.170 を比較せよ。
JMC environment Update
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Vol.2 No.2 (2000.7)
WEEE 最終提案の説明メモランダム
ある。
現在の WEEE の処理と処分に関連した環境問題に適切に対処するためには、第 1 に WEEE の防止、第 2 に廃
棄物の再使用、リサイクルおよび再生などの他の形式、そして、第 3 に WEEE の処理と処分から環境へのリスク
と影響の最少化を目指した共同体レベルの対策を打ち出すことが適切と考えられる。また、域内市場の機能を確
立するために、WEEE 管理に関する加盟国の国家措置を調和させることが、このイニシアティブの目標である。
これらの措置は 2 つに分かれた指令に提案されている。ひとつは、条約第 175 条に基づく廃棄物管理に関連する
WEEE に関する指令案であり、もうひとつは、EC 条約第 95 条に基づく EEE における特定有害物質の使用規制に
関する国家措置を調和しようとするものである。これらふたつの指令は、今年後半の EEE 設計と製造に関するさ
らに詳しい提案を伴うことになる。
2. 政策の検討
ヨーロッパ共同体(EC 条約)を制定する条約の第 174 条は、共同体の環境政策は、共同体の個々の地域にお
ける事情の多様性を考慮しながら高い保護水準を目的とする、と述べている。それは予防行動をとらなければな
らない原則、環境破壊はその根源を優先的に正すという原則、ならびに汚染者負担の原則に基づかなければなら
ない。
環境と持続可能な開発に関する政策と行動の共同体計画(「第 5 次環境行動計画」)5は、持続可能な開発の
達成のためには開発、生産、消費そして行動の現行パターンを大きく変えなければならないと述べている。さら
に、とりわけ天然資源の無駄な消費を削減し、汚染を防止することを唱えている。具体的には「第 5 次環境行動
計画」は、一つの章全部を廃棄物管理問題に専念しており、その中で WEEE は、廃棄物の予防、再生ならびに安
全な処分という原則の適用により規範的目標領域の一つとして述べられている。
理事会は、廃棄物管理政策に関する 1990 年 5 月 7 日の決議6の中で、欧州委員会が特種廃棄物に行動プログラ
ムを設定するよう促している。加盟国は、なかんずく寿命のつきた EEE を、この尊厳において委ねられるべき廃
棄物の流れとして認識した。
理事会は、廃棄物管理の共同体戦略に関する 1997 年 2 月 24 日の理事会決議7の中で、欧州委員会が WEEE に
関するイニシアティブを適切にフォローアップすることを展開するよう促した。
欧州議会は、1996 年 11 月 14 日の決議(A4-0364/96)の中で、WEEE を含み、かつ生産者責任の原則を基礎
に、多くの優先的廃棄物の流れに関する指令案を提出するよう欧州委員会に求めた。同提案の中で、欧州議会は
理事会と委員会が塩素、水銀、PVC(塩化ビニル樹脂)、カドミウム等の重金属のような廃棄物中の有害物質の
存在を削減すると共に廃棄物の量を削減する提案を提出することを要求した。
3. 目的と主な提案項目
WEEE 指令提案は、条約の第 174 条に求められている人間の健康と環境の保護に寄与するであろう。本提案の
5
6
7
EC 官報(以下 OJ)C 138, 1993 年 5 月 17 日
OJ C 122, 1990 年 5 月 18 日
OJ C 76, 1997 年 3 月 11 日
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主要目的は、WEEE の現行管理が原因の汚染から、土壌、水質、大気を保護し処分しなければならない廃棄物の
発生を回避し、WEEE の有害性を削減することにある。それは価値のある資源、特にエネルギーの保全を目指し
ている。指令提案のもう一つの目的は、WEEE 管理に関する各国の措置を調和させることにある。
これら諸目的は、設計に関する措置、WEEE の分別回収措置、WEEE の処理と再生の措置等を含んだ広範な諸
施策によって達成されるべきものである。
◇ 生産者は自社製品の廃棄物管理の特定の段階での責任をもたなければならない。この財政的、物理的責
任により、健全な廃棄物管理の必要条件に自社製品の設計を適合させるという経済的インセンティブを
生産者にもたらす。経営オペレーターの経済的責任に関しても、個人用家庭の機器を無料で回収できる
ようにしなければならない。
◇ WEEE の分別回収は、ユーザーがその EEE を返却できるよう適切なシステムによって確保されなければ
ならない。加盟国間の土俵が同じになるよう「ソフト」な回収目標を規定する。
◇WEEE の処理と再使用/リサイクルの改善を確実にするために、生産者は適切なシステムを構築しなけれ
ばならない。WEEE の処理の最低基準としての特定の要件が定められている。処理施設は加盟国により認
定されなければならない。これにより、WEEE の再使用、リサイクルおよびエネルギー再生の義務に関す
る目標値を規定する。
◇ 高回収率を達成し、WEEE の再生を容易にするため、EEE ユーザーはこのシステムにおける自分の役割
を知らされなければならない。指令提案は、安易にごみ箱に捨てられる機器に対するラベル貼付の要求を
含んでいる。さらに、生産者はリサイクル業者にこのような機器の内容についての特定の状況を通知す
ることも必要である。
EEE に関する特定有害物質の使用規制に関して提案された指令は、鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、特定
臭素系難燃剤のような廃棄管理段階での主な問題を引き起こす物質が代替されることを確実にすることで、前述
の目的の一助となる。
4. 本提案で言及されている環境問題
一般的に、正しく動くため電機を必要とするすべての機器が電気または電子である。それぞれの電気または電
子製品はいくつかの基礎的な組立て用ブロックの組合せで構成されている。EEE に共通する基礎的な組立て用ブ
ロックは、プリント基板/組立、ケーブル、コードとワイヤー、難燃剤を含むプラスチック、水銀スイッチとブ
レーカー、ブラウン管や液晶表示板のようなディスプレー機器、蓄電池と乾電池、データ蓄積媒体、照明装置、
コンデンサー、抵抗及びリレー、センサーとコネクターである。これらの部品に含まれる環境上最も問題な物質
は、水銀、鉛、カドミウム、クロムのような重金属、CFC、PCB、PVC 及び臭素系難燃剤のようなハロゲン系物
質ならびにアスベストと砒素である8。
4.1 WEEE 管理の現状
廃棄物の流れに関連した環境リスクは、現行の廃棄物管理慣行によっては正しく取扱われない。今日、WEEE
8
詳細は ”Waste from electrical and electronic products – a survey of the contents materials and hazardous substances in electric and
electronic products” (Copenhagen 1995), Nordic Council of Ministers.(北欧閣僚理事会)
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の 90%以上が何らの事前処理なしに埋立、焼却、再生されている9。これは有害物質の処分または再生ルートへ
の著しいインプットの要因となっている。
4.1.1 WEEE の焼却
廃棄物の焼却からの排出は、共同体内で水銀年間 36 トン、カドミウム年間 16 トンに達していると最近の研究
では推定されている10。更に、無害廃棄物の焼却が、欧州におけるダイオキシンとフランの大気への排出の最大
の源と認められた11。WEEE の流れは、自治体廃棄物の流れに含まれる重金属とハロゲン系物質への大きな一因
となっている。加えて、WEEE の中に一緒に見つかる様々な物質により、特定の負の効果が焼却中に起こり得る。
銅は触媒の働きをし、難燃剤が焼却された時にダイオキシン形成のリスクを増大する。このことは、臭素系難燃
剤の低温(600 ー 800℃)での焼却が、極度に有毒なポリ臭素系ダイオキシン(PBDD:polybrominated dioxin)や
フラン(PBDF)の発生を起こすこともあるため、特に重要な関係がある12。
欧州委員会は、廃棄物の焼却に関する理事会指令提案を 1998 年 10 月 7 日に採択した13。この提案は、様々な
汚染物質の大気への放出が顕著な削減に至るよう、厳格な排出限度値を規定している。この指令提案は、新規の
自治体廃棄物焼却炉からの大気汚染防止に関する 1989 年 6 月 8 日付指令 89/369/EEC14、ならびに既存の自治体
廃棄物焼却炉からの大気汚染防止に関する 1989 年 6 月 21 日付指令 89/429/EEC15にとって代わるものである。
しかしいくつかの理由から、エンドオブパイプの技術は廃棄物管理運営から排出を避ける唯一の方法として考え
られなくなっている。WEEE のような廃棄物の流れの分別回収や処置は、より汚染のない自治体廃棄物の流れと、
重金属やハロゲン系物質を含むWEEE の焼却や精錬により引き起こされる排出削減の一助となっている。
これは、
金属精錬所のケースと同様に、それぞれの厳格な排出基準が施行されない場合や、適切でない場合に特に重要で
ある。
相当量の PVC が WEEE に含まれている16。PVC が、特に焼却による煙道ガス(flue gas)の残さい量と有害性
により、焼却に適していないという見解を支持する物質的証拠がある17。加えて、PVC の埋立による可塑剤、特
にフタル酸エステルの流出が広く認められていることと、人の健康と環境に潜在的な悪影響を与える可能性があ
る。とりわけ WEEE においては、現在 PVC 廃棄物がまれにしかリサイクルされないことに留意すべきである18。
大気への排出とは別に、WEEE の焼却に連結した他の2つの側面が重要である。これは、廃棄物の焼却に関する
理事会指令提案の条項を守っている施設と条項を守っていない施設の双方に関わるものである19。
(1)
パイロット・テスト20では、テレビのような普通の電気用品が焼却工程を通じて負のエネルギーのアウト
プットを生ずることが明らかになった。例えば、(ブラウン管のような)ガラスを焼却炉に入れること
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
注 3 に同じ
The European Atmospheric Emission Inventory of Heavy Metals and Persistent Organic Pollutants for 1990, Umweltbundesamt, Germany,
1997。
Identification of Relevant industrial Sources of Dixins and Furans in Europe, Landesumweltamt Nordrhein-Westfalen, 1997
"Bestimmung von polybromierten und plychlorierten Dibenzofioxinen und -furanen in verschiedenen umwelt relevanten Materialien" U.
Schacht, B. Gras と S. Sievers( in Dioxin-Informationsveranstaltung EPA Dioxin-Reassessment)共著. Otto Hutzinger と Heidelore Fiedler
により編集され、この事項に関してそれ以上の参照事項を含む
COM(1998)558 final
OJ L 192, 1989 年 7 月 7 日
OJ L 203, 1989 年 7 月 15 日
M. Rohr, Umwelt Wirschaftsforum, No. 1, 1992 によると、EEE に使用されるプラスチックの 20%以上が PVC である
デンマーク環境保護庁による、PVC の環境的側面(コペンハーゲン 1996)、及びオランダの住空間計画環境省(Ministry of Housing, Spatial
Planning and the Environment )による、PVC に関するポジション・ペーパー(ハーグ 1997)
The behaivior of PVC in Landfill, Study for DG ENV, Argus in association with University Rotstock, 1999.
Prognos, Study for DGXI, Mechanical recycling of PVC wastes, January 2000
ICER(電子機器リサイクル産業審議会)宛の ”Electrical/Electronic products recycling in Germany”と題する C. Voute, (Recycle and Waste
Control Officer, Corporation of London)のレポート
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によるエネルギーロスは"−400kj/kg"と計算された。
(2) (小型)WEEE の焼却炉への投入は、スラッジ(鉱さい)、煙道ガスあるいは濾塊中の重金属を含む金属
に高濃度をもたらす21。オランダの研究22によると、オランダで出る炉底灰のほとんど(1995 年で約
600,000 トン)が道路建設セクターで処分されており、充填材として使われている。この関連で、焼却炉
に入ったカドミウムの 90%以上が飛散灰の中に見つかり、水銀の 70%以上が濾塊の中に見つかっている。
焼却炉の残さいの汚染に連結した問題は、オランダの例を基礎にした"Modelmatige analyse van integraal
verbranden vam klein chemisch afvalen klein wit-en bruingoed"という研究の中に文書化されている。環境
上安全な方法で使用するのに、炉底灰は、物理的技術的要件、特に浸出要件に合致しなければならない。
ある濃度の重金属を含む炉底灰が、特別の汚染除去をほどこされる場合であっても、追加の環境要件に
より建設資材として使用できる。小型の白モノ茶モノ製品が他の廃棄物と一緒に焼却されなかった場合、
銅、鉛、ニッケル等の金属の含有は、オランダの浸出要件の範囲に納まる程度に炉底灰が削減されるだ
ろうと計算されている。
4.1.2 WEEE の埋立て
WEEE に含まれる様々な物質が原因で、廃棄物の埋立て中に負の環境効果が起こる。WEEE が環境的に健全な
技術標準を重視した管理型埋立て地に持ち込まれた場合、大きな影響は防げる。しかし、終生完全な防水の埋立
て地はないため、金属と化学物質のある程度の浸透は避けられない。一部の加盟国23とほとんどの加盟候補国24で
かなり盛んに行われているように、WEEE が無管理の埋立て地に持ち込まれる場合、環境に与える影響が著しく
高いことは言うまでもない。
WEEE の埋立に関するリスクは、WEEE に含まれる多種多様な物質によるものである。この関連での主な問題
は、有害物質の浸透と蒸発である。水銀の浸透はサーキット・ブレーカーのような電子装置の破壊の際に起こる。
コンデンサーからの PCB についても同様である。臭素系難燃剤やカドミウムを含むプラスチックが埋立てられる
と、PBDE とカドミウムの両方が土壌や地下水に浸透する。相当量の鉛イオンが、埋立て地に発生する酸性地下
水によって、ブラウン管の円錐形ガラスのように鉛を含むガラスの壊れたものから溶けだす。従って、埋立て地
の円錐形ガラスによる汚染は起こり得る25。
水銀の浸透だけが、具体的な問題を引き起こしているわけではない。WEEE の一部である金属水銀とジメチレ
ン(dimethylene)水銀の気化も懸念事項である。加えて、制御できない火災が埋立て地で起こる可能性もある。
このような火災において、ハロゲン系難燃剤と PCB を含むコンデンサーから、金属および極めて有毒なダイオキ
シンやフラン(Tetrachloro-dibenzo-dioxin:TCDD や Polychlorinated and polybrominated dioxin and furans:PCDD,
PBDD, PCDF を含む)のようなその他の化学物質が排出される可能性がある。
21
22
23
24
25
例として、小型の WEEE は、自治体液化廃棄物焼却炉の炉底灰中の、銅の内訳の 40%の源になっている(Modelmatige analyse van integraal
verbranden van klein chemisch afval en klein wit- en bruingoed <Netherlands,1996>,TNO rapport voor VROM/DGM<Directie Afvalstoffen>
を比較せよ)。焼却炉のスラッジの中の銅の占める割合が増えることに関連した主な問題の一つに、環境責任上、二次的建築材料としてこ
れらのスラッジを再生することが困難であることがあげられる。スラッジ、煙道ガス、ろ塊、飛散灰等に含まれる重金属に関する詳細なデ
ータは、「Messung der Güter-und Stoffbilanz einer Müllverbrennungsanlage」 (Wien 1994), Umweltbudeamt and MA 22 にある。
Netherlands 1996, TNO rapport voor VROM/DGM (Directie Afvalstoffen)
一つの例として、ギリシャの埋立て地の総数は約 5,000 である。その 70%は無管理と考えられる (廃棄物管理に関する会議 於: ギリ
シャ 1997 年 1 月 16-17 日) ポルトガルでは、無管理埋立て地の数は約 300 である(廃棄物管理に関する会議 於:ポルトガル 1997 年 1
月 23-24 日)
関連法令のスクリーニングで分かったことは、これら諸国の埋立て地のほとんどすべてが無管理であって、有害物質の地下水への浸透や大
気への排出を防止する何らの技術的決まりもないことである。
WEEE 焼却と埋立の環境的帰結(コペンハーゲン 1995)、北欧閣僚理事会(原題は注 3 参照)。
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4.1.3 WEEE のリサイクル
今回のイニシアティブの主な目的の一つは、WEEE のリサイクルを増やすことである。一般的に、リサイクル
の増大は、資源と特に埋立の処理能力を維持する。積極的な効果にかかわらず、再生オペレーションは、廃棄物
が正しく事前処理されないと環境汚染を増大させることになる。
ダイオキシン及びフランの両方が、ハロゲン系プラスチックを含む WEEE の金属部分をリサイクルした結果と
して発生する26。WEEE に含まれるハロゲン系物質、特に臭素系難燃剤も、プラスチックのリサイクルの一部と
して、プラスチックを型押しする際懸念されている27。ダイオキシン及びフラン発生のリスクにより、通常リサ
イクル業者は、WEEE からの難燃剤入りプラスチックのリサイクルを避ける28。難燃剤を含むプラスチックを正
しく認識できないことと、難燃剤入りプラスチックを普通のプラスチックから区別することが困難であることを
考慮して、大抵のリサイクル業者は WEEE からのプラスチックは一切処理しない29。
WEEE リサイクルの際の環境問題は、ハロゲン系物質にリンクしているだけでない。大気への有害排出物も、
鉛やカドミウムのような重金属を含む WEEE のリサイクルに拠るものである30。それぞれの材料の置き換え、新
しい EEE の汚染物質の削減、WEEE の適切な事前処理により、これらの排出は顕著に削減され得る。未処理の
WEEE 中の重金属とハロゲン系物質に伴うもう一つの問題は、破砕工程で起こる。大抵の場合、WEEE を正しく
分解せずに破砕するため、コンデンサーに含まれた PCB のような有害物質が、再生金属とシュレッダー廃棄物中
に拡散する31。
4.2 資源の側面
現在の WEEE の管理では、有価値材料が処分され将来の世代の損失となっている。資源の損失と共に、採掘に
よる環境汚染が懸念の種である。EEE に含まれるすべての材料の抽出にかかわる環境影響の正確な数字は分から
ない。これは材料抽出の現場と地域次第である。しかし、これら金属の抽出に至る工程とその環境へのインパク
トは周知されており、書類化されている32。
4.3 生産者責任の原則
汚染者負担の原則は、EC 条約の第 174 条に規定されている。この原則の背景にある考え方は、環境汚染を改
善する可能性のある者に責任をもたせるということである。EEE の生産者は、製品を設計し、仕様を決め、材料
を選択する。生産者だけが自社製品に関し最長の製品寿命を確保すべく、製品の設計と製造への研究法を開発す
ることができ、スクラップされる際には最良な方法での再生と処分を行うことができる。
今のところ、生産者が廃棄物管理、特にリサイクルの側面を設計段階で考慮に入れることに対して、どのよう
26
27
28
29
30
31
32
一つの例として、
オーストリアの金属再生工場"Brixlegg"のケースがある。(「金属再生工場からの排出による PCDD/PCDF 汚染エリアでの、
土壌、ガラス、牛乳、血液、針葉樹の葉における、PCDD/PCDF のレベルの比較」Riss, Hagenmaier, Chemosphere, Vol. 21, no. 12, p 1451-1456,
1990)
「デカブロモジフェニルエーテル(DBDPE)/Sb203 とブレンドしたポリブチレンテレフタレート(PBTP)/グラスファイバー樹脂成型中の
ポリ臭化ジベンゾフラン(PBDF)とダイオキシン(PBDD)の形成;製品と作業場の分析」Brenner, Knies, BASF, 1986 参照
デンマーク EPA による「Brominated flame retardants-Substance Flow Analysis and Assessment of Alternatives」(1999)報告書によると、
臭素系難燃剤を含む材料のリサイクル活動は実施されていない。
注 20 のレポート 18 ページの例を比較せよ
オーストリア Brixlegg の銅リサイクル業者のケースは、良く文書化されており、この状況を確認している("Montanwerke Brixlegg Wirkungen auf die Umwelt"; Umweltbundesamt, Monographien, Bd. 25, Wien, Juni 1990”を比較せよ)
WEEE の正しい分解が行われないため、白もののシュレッダー廃棄物は 940 から 9,400 mg/kg の巾で高濃度の鉛を含んでいる。コンデンサ
ーに含まれる PCB の約 95%(617,500 mg/kg)は最終的にシュレッダー・ダストに含まれる。従って、汚染されたシュレッダーは危険廃
棄物として対応しなければならない。通常の廃棄物の焼却と比べて、危険廃棄物の焼却は高価な工程である。その結果、シュレッダー廃棄
物の PCB 汚染は莫大なコスト増を引き起こす
Malley”Schwergewicht” c’t 1997, Heft 5,p.170
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な経済的インセンティブもほとんど存在しない。これに関連して、リサイクル対応設計に投資した生産者は、こ
の製品政策を持続すべき財政的インセンティブのないことに不満を訴えている。このような行動は結果として中
断のリスクを導くことになる。従って、この WEEE 指令提案では、製品寿命の最後の段階で電気電子製品の管理
について、生産者に責任をもたせることにより生産者の伝統的な役割の拡大を模索している。生産者と廃棄物管
理間の連結を創設することが、寿命に達した製品のリサイクルと処分の容易化を目的とした製品設計の改善の一
助となる。専門リサイクル業者は、EEE リサイクルのための設計改善という実践上の関わりを確認する。
この法律が施行される前に上市された製品の廃棄物(ヒストリカル・ウェイスト:historical waste)の管理に
より生ずる生産者へのコストを削減するために、法施行後 5 年間の過渡期間が与えられる。電子産業のほとんど
の部門の懸念が、この過渡期間により払拭される一方で、より長寿命製品の生産者は、ヒストリカル・ウェイス
トの問題を申し入れるためのさらなる助力を必要とする可能性もある。これに関連して加盟国は、共同体の競走
法を侵すことなく、生産者に対し、目に見える固定された料金を新商品の価格に上乗せ(visible fee)することで、
これらのコストをまかなうことを自由に許可することに留まる。
個人用家庭に使用されない EEE にとって、廃棄物管理のファイナンシングは、購買時における商品の生産者と
消費者間での合意が必要となろう。これは常套的なビジネスの実践に調和する。
5. 有害物質に関する立法
5.1 政策の検討
1996 年からの廃棄物管理に関する共同体の戦略の見直しに関するコミュニケーションに調和して、EEE にお
ける特定有害物質の使用規制に関する指令の提案は、WEEE に含まれる特定有害物質(鉛、水銀、カドミウム、
六価クロム、ポリ臭化ビフェニール:PBB、ポリ臭化ジフェニールエーテル:PBDE を含む)の含有量の削減を規
定している。この点で、当提案は、既に危険物質の上市に関する制限を含む現行の共同体廃棄物立法の原則を規
範としている。包装及び包装廃棄物に関する欧州議会及び理事会指令 94/62/EC33と、危険物質を含有する電池及
び蓄電池に関する理事会指令 91/157/EEC(指令 91/157/EEC の技術的進歩への適合化のための委員会指令
98/101/EC で改正)34の中に例を見ることができる。
現行の WEEE 管理に連結する様々な健康と環境問題は、これら廃棄物を埋立や焼却炉から遠ざけることにより、
削減される可能性がある。これは、WEEE の分別回収、処理、再生計画を開始することにより達成され得る。し
かしこの段階では、いつ回収率が達成されるのか、このことは上市された EEE の実質的な部分を表すが明確では
ない。一方で、特定の小型 WEEE は、現行の処分ルートを維持すると思われる。加えて、たとえ WEEE が分別回
収されリサイクルプロセスに従ったとしても、それらの有害物質成分は、健康もしくは環境へのリスクを引き起
こす。そこで、これらの物質を代用すること(これは廃棄物管理段階ではほとんど未解決であるが)が、有害物
質に関連する健康と環境へのリスクを顕著に削減するための最も効果的な方法である。しかし、適切な代替物の
不足により、代用が実現不可能な場合は、代用要件の免除が認められなければならない。これらの免除は、EEE
における特定有害物質の使用規制における指令付属書に掲載せねばならず、技術進歩や新たな科学的根拠を考慮
して、定期的に修正されなければならない。
代用物質戦略は、廃棄物の流れにおける有害物質による特殊な問題にとりわけ注意する最新の科学的知識に基
33
34
OJ L 365, 31 December, 1994, p.10.
OJ No L 1, 5. 1. 1999, p.1.
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づく。これらの物質は熟知されており、すでに共同体と各国レベルにおいて、異なる強制措置の範囲に従属して
いる。しかし、これら物質の科学的研究は継続中であり、特に EC 規則 793/93 における包括的リスク評価は、現
在カドミウムと 3 種の PBDE に関しては進行中である。これらのリスク評価によるデータに見られる情報は、こ
の提案において予知されている措置が不均衡であると考える理由を与えないにも拘らず、科学的研究やその他の
研究は再調査をし続け、必要であればこの提案は、この研究結果に従い調整されることになる。
5.2 目標物質に関するリスク
<鉛>
鉛は、人間の中枢および末端神経組織の両方に損傷を与える。内分泌組織への影響も観察されたことがある。
加えて、鉛は心血管と腎臓に悪い影響がある。鉛は環境に蓄積し、植物、動物、微生物に高い急性・慢性の有毒
効果をもたらす35。
危険物質の分類、表示に関する理事会指令 67/548/EEC の改正指令36によると、鉛化合物を次のように分類して
いる:
-R20/22 吸入および飲み下した場合有害
-R33 蓄積効果の危険
暴露の単一の源に関する相対的重要性は予測困難であり、地理的位置、天候、地域の地質的性質によって変動
する。どのような場合でも、民生用電子製品は埋立て地に見られる鉛の 40%を構成する。埋立て地の鉛の存在に
関する主な懸念は、鉛が浸透し飲料水を汚染する可能性である。
<カドミウム>
カドミウム化合物は、
人間の健康上回復不能の効果をもたらすリスクの可能性がある有毒物と分類されている。
カドミウムとカドミウム化合物は人間の身体、特に腎臓に蓄積して、時間がたつと損傷をもたらす。カドミウム
は呼吸によって吸入されるが、また食物と共に摂取される。
カドミウムは長い半減期(30 年)により、容易に中毒症状を呈する量に蓄積する。塩化カドミウムは、長期に
わたって暴露することで癌を発生することがある。カドミウムはその急性・慢性の毒性により環境における蓄積
効果の危険性を示す37。
危険物質の分類、表示に関する理事会指令 67/548/EEC では、カドミウム化合物を次のように分類している:
-R23/25 吸入、飲み下した場合有毒
-R33 蓄積効果の危険
-R40 回復不可能な効果のリスクの可能性
<水銀>
水中に広がった無機水銀は底の沈殿物の中でメチル化水銀に変化する。メチル化水銀は生体内で簡単に累積さ
れ、魚を経由した食物連鎖の中で濃縮する。メチル化水銀は慢性的効果があり脳に損傷をきたす。
35
36
37
Risk Reduction Monograph No 1 Lead – Background and national experience with reducing risk, OECD Paris 1993 を比較せよ
OJ L 196, 16/08/1967, P. 1.
この情報は、Risk Reduction monograph No5, Cadmium, Background and national experience with reducing risk(OECD/GD894)97;Health
effects of cadmium exposure-a review of the literature and a risk estimate(Lars Järup and others) Scand J Work Environ Health 98;
Environmental impacts of cadmium,(Gerrit H. Vonkeman) 1995;Cadmium in Sweden-environmental risks, (Helena Parkman and others)
1997;等この問題に関する研究に基づいている。
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WEEE 最終提案の説明メモランダム
危険物質の分類、表示に関する理事会指令 67/548/EEC(修正)では水銀を次のように分類している:
-R23/24/25 吸入、皮膚に触れ、および飲み下した場合有毒
-R33 蓄積効果の危険
危険物質の分類、表示に関する理事会指令 67/548/EEC では、水銀アルキルと水銀の無機化合物を次のように
分類している:
-R26/27/28 吸入、皮膚接触、および飲み下した場合極めて有毒
-R33 蓄積効果の危険
世界の水銀年間消費の 22%が EEE に使用されていると推定されている。
<六価クロム>(クロミウムⅥ)
六価クロムは細胞の皮膜を簡単に通過できるので、容易に吸収され、細胞内で様々な有毒効果を作りだす。従
って、六価クロムは、工業国では環境に対する重要なリスクと考えられる。さらに、六価クロムは深刻なアレル
ギー反応を引き起こす。環境における六価クロムのわずかな凝縮もアレルギーの増加に至る可能性がある。喘息
性気管支炎は、六価クロムに関連したアレルギー性反応のひとつである。また六価クロムは、遺伝子毒性があり、
DNA を破壊する可能性もある。
加えて、六価クロム化合物は環境に有毒と考えられる。
暴露の可能性に関しては、廃棄物に含まれた六価クロムは、適切に密閉されていない埋立て地から容易に浸透
する。六価クロムで汚染された廃棄物の焼却中に、金属が飛散灰に蒸着する。飛散灰中の六価クロムは、溶け出
しやすい。クロミウムを含む廃棄物を焼却してはならないことは科学者の合意事項である。
<臭素系難燃剤>
臭素系難燃剤は、可燃性の保護のために今日では電子製品に定常的に作りこまれる。この使用には主に 4 つの
アプリケーションがある。即ち、プリント基板、コネクターのような部品、プラスチック・カバー、ケーブルで
ある。5-, 8-, 10-BDE は、プリント基板、テレビのプラスチック・カバー、家庭用台所用品に主に使用されてい
る。
当提案の主目的の一つは、WEEE を処分オペレーションから転換して、リサイクルを増やすことである。これ
は特に WEEE の構成の 20%を占めるプラスチックにあてはまる。
この部分のリサイクルに関する主な阻害要因の
一つが、それぞれのプラスチックのリサイクル中に、臭素系難燃剤によりダイオキシンとフランが発生するリス
クである。特に、プラスチック・リサイクルの工程の一部である押し出しの最中に、ポリ臭化ジフェニルエーテ
ル(PBDE)が有毒なポリ臭化ジベンゾフラン(PBDF)とポリ臭化ジベンゾダイオキシン(PBDD)を形成したことが示
された。その結果、ドイツの化学工業は 1986 年にこれら化学物質の生産を中止した38。
加えて、高濃度の PBDE がリサイクル工場の労働者の血液から発見された39。様々な科学的観察は、PBDE が環
境ホルモンとして働く可能性を指摘している。
北極アザラシのサンプルに含まれるのポリ臭化ビフェニル(PBB)の存在は、広範囲の地理的分布を示している。
発生源から水生環境への PBB の主として知られているルートは、PBB の工場地域と廃棄物の投棄場である。PBB
38
39
“Formation of Polybrominated Dibenzofurans(PBDF’s) and –Dioxins(PBDD’s) during extrusion production of a
Polybutyleneterephtalate(PBTP)/Gfassfibre resin blended with Dcabromodipgenylether(DBDPE)/Sb2O3; product and workplace analysis”
Brenner, Knies, BASF 1986 年を参照。これ以上の情報は、”Polybrominated Diphenyl Ethers in the Swedish Environment” Ulla Sellström,
Stockholm 1996 年にある。
難燃剤の暴露―スウェーデン労働者の血液中ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)、Sjödin et al. Stockholm 1999
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はほとんど水に溶けず、主として汚染された湖や川の沈殿物に見つかる。PBB は蒸留水より埋立て地の浸透物の
中に 200 倍も溶け易いことが分かった。これにより、環境への広範囲にわたる分布という結果につながる。一度
環境に放出されれば、食物連鎖に到達し濃縮が高まる。PBB は数カ所の地域の魚から検出された。魚の摂取は、
哺乳動物や鳥への PBB の移転のもとである。植物による PBB の摂取や悪化は記録されていない。対照的に PBB
は容易に動物に吸収され、動物の中で非常に安定的であることが分かっているが、PBB の代謝物質は少量しか検
出されていない40。
これらの物質に関連するリスクに関するさらに詳しい情報は、付属書 IV に規定されている。
6. 域内市場の側面−加盟国の現状
6.1 加盟国の現状
WEEE の管理にリンクした環境問題を考慮して、加盟国は各国の立法の起草を始めた。オランダ、デンマーク、
スウェーデン、オーストリア、ベルギー、イタリーは既に WEEE に関する立法を提出した。フィンランドとドイ
ツはまもなく提出する。これまでに自国の立法を起草していない国々は、現在のイニシアティブに先立つ様々な
協議の場で、この廃棄物の流れに関して調和した欧州立法がないことに懸念を表明した。
オーストリアでは 1990 年代半ば以降、ランプと白モノ製品の引取りと再生に関する立法が存在している。両
製品グループの再生システムは、当初は料金を新製品の価格に上乗せすることにより資金供給された。ドイツと
イタリアの競合相手との競争上、オーストリアの白モノ製品小売業者が不利となり、製品の廃棄時にも料金を分
散するという制度が導入され、製品価格への料金の上乗せはそれにつれて低減された。全ての WEEE の流れに関
する政令案が 1994 年 3 月に公布されたが、それ以上の議論は EU 立法の発効待ちとなった。
ベルギーのフランドル地方における茶モノと白モノを対象にした規制が、1998 年に採択された。メーカー、
輸入業者、ディストリビューター、小売業者は、IT(情報技術)機器と同様すべての種類の白モノ茶モノを無料
で引取る義務がある。鉄と非鉄金属ならびにプラスチックのリサイクル目標はこの規制に含まれている。
デンマーク法令の命令によると、デンマークの当局は 1999 年 1 月から、法令により茶モノ、白モノ、IT・通
信機器、モニター機器、医療と研究所用機器等の EEE の回収と再生に責任がある。この資金手当のために、最終
ユーザーは地方税または回収料金をチャージされる。
ドイツでは、WEEE の引取りとリサイクルに関する政令が立法手続の最終段階にある。この草案は地方自治体
の WEEE 回収の責任と生産者がその廃棄物を処理、再生、処分する責任を規定している。
イタリアでは、1997 年 12 月の廃棄物管理政令により、白モノ、テレビ、特定の IT 機器のような数種類の家
庭用耐久財の引取りと再生の義務を規定している。産業界との合意をもとに、回収センターと再生施設の全国規
模のネットワークが作られる予定である。最終ユーザーは、その機器を公認ディーラーか公的または民間の廃棄
物管理機関に持参しなければならない。
オランダでは、1998 年 6 月 1 日に使用済みの白モノおよび茶モノの引取りと処理のルールを確立する規制が
発効した。法令によれば、消費者は WEEE を無料でサプライヤーか地方当局に返却できる。従って、メーカーと
輸入業者は該当品を処理しなければならない。分別回収された WEEE の埋立や焼却は禁止される。
2000 年 4 月、スウェーデンは、消費者がその廃棄物を小売店か地方自治体の回収地点に返却できるようにす
40
Information and recommendation from the risk reduction monograph no3, selected brominated flame retardants – Background and national
experience with reducing risk, OECD Paris 1994
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る WEEE の政令案を採択した。リサイクルコストは、自治体かメーカーのどちらかが負担する。WEEE は公認オ
ペレーターの処理なしに埋立、焼却あるいは破砕をしてはならない。この政令は 2001 年 7 月 1 日に発効を目指
す。
鉛を含む製品と鉛の特定使用に関する規制41の例の一部は下記の通り。
− オーストリアでは、土壌やスラッジ内の重金属を含む物質が一定の制限を超える場合、化学肥料に含まれ
る鉛と下水スラッジの使用に関する制限がある。
− デンマークでは、鉛を含む製品に関す規制は、進行中である。この規制草案には、鉛物質を含む製品販売
の全般的な禁止(例外あり)が含まれている。鉛を含む指定製品レンジの販売も禁止される。
− スウェーデンでは、ケーブル、ハンダ、電球、陰極線、竜骨を含む多くの製品に関する鉛の使用を段階的
に無くすイニシアティブがある。
この他の重金属に関する法律の例として、オランダの、色素、染料、安定剤、メッキのようなカドミウムの使
用を禁止した 1999 年「カドミウム法令」がある。類似した法令が 1993 年オーストリア政府により採択されてい
る。オーストリアでは、ランプに含まれる水銀は、ランプあたり 15mg に制限されている。1998 年オランダ政府
も、製品に含まれる水銀の全般的な段階的廃止を制定した。
スウェーデン国立化学検査院(The Swedish National Chemicals Inspectorate)が PBDE と PBB 禁止を提案した
が、これは現在スウェーデン政府が考案中である一方で、オーストリアは早くも 1993 年に PBB を禁止した。ド
イツでは、国家化学禁止法令に従った臭素系フランとダイオキシンに関する一定の制限値が超えてはいけないの
と同様に、事実上 PBDE の使用は禁止されている。これは、ドイツ化学業界が 1989 年に提案した PBDE 使用の
中止への自主的公約に同調したものである。
6.2 域内市場
域内市場に関して、WEEE の管理に対する加盟国の異なるアプローチに起因する 3 つの主要な問題は下記の通
り:
◇生産者責任の原則に対する国毎の異なる適用は、経済オペレーターの財政的負荷が相当な不均衡を導く可
能性がある。
◇寿命のつきた EEE の管理に関する加盟国の異なる政策は、より安価な廃棄物管理システムへの国境を超
えた動きが起こり得るため、国のリサイクル政策の有効性を阻害するおそれがある。
◇特定物質の段階的廃止に関する異なる要求事項が、EEE の下取りへの関わり合いをもつ可能性がある。
加盟国の発展を考慮して、共同体レベルでの環境目的と WEEE 管理に関するさまざまな関係者の責任について、
明確にする必要がある。
41
OECD 加盟国の鉛に関するリスク管理活動を比較せよ(1993-1998), OECD, Paris 2000.
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7. 国際的側面
7.1 国際的展開
OECD(経済協力開発機構)は、拡大生産者責任(EPR= Extended Producer Responsibility)の概念を廃棄物最少
化の政策手段と考える。OECD は 2000 年のうちに、EPR の実施を望む政府への基盤として、ガイダンス文書の
公布を描いている。これに関連して、WEEE は、決議の優先分野の一つとして認識されている。
米連邦レベルにおいて、「拡大生産者責任」に関する自主的システムはさておき、WEEE に関する立法の決議
は描かれていない。これとは反対に米国のいくつかの州では、新製品への事前の廃棄料を含んだ白モノとブラウ
ン管から成る機器に関する埋立廃棄禁止令を導入している。
1998 年 5 月に、国内電気製品リサイクル法案が、日本の国会で採択された。この法律によると、小売業者は、
消費者からテレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコンを回収しなければならない。これらの製品は、特にリサイクルに
おいて細かい処理責任のある製造業者へ転送される。小売業者と製造業者は、廃棄物リサイクルのコストをカバ
ーするのに必要な料金を徴収することになる。同様の法令が台湾で採択され、1998 年 3 月に施行された。
スイスでは、1998 年 7 月に、電気電子製品の引取りと処分に関する法令が施行された。ノルウェーでは 1998
年 3 月に、EEE の受取り、回収、リサイクル、処分、放棄に関する法令が採択された。
7.2 通商側面
2 つの指令提案は、生産地の如何を問わず、EU 市場にあるすべての EEE に一様に適用される。措置案はこの
指令案の目的を満たす必要がある。EEE における特定有害物質の使用規制に関する指令に関しては、現行の WEEE
管理にリンクした様々な健康や環境問題が、埋立地や焼却炉からこれらの廃棄物をわきへそらすことにより減少
する可能性があるにも拘らず、回収率がいつ達成されるかは(これは上市された EEE の実質的な部分をあらわし
ているが)明らかではない。一方で、特に小型 WEEE は、現行処分経路に存在しつづける。加えて、たとえ WEEE
が分別回収され、リサイクルプロセスに提起されたとしても、有害物質を含んだものが、リスクを健康や環境に
引き起こす。そこで、有害物質の代替(廃棄物管理段階で、最も問題がある)は、有害物質に関連した健康と環
境へのリスクの意義ある削減のための、最も効果的な方法である。これを考慮して、EEE における特定有害物質
の使用規制に関する指令提案の第 4 条に記された代替要求事項が、科学的に危険と認識される物質から生じる健
康・環境影響に取り組む手段になりうると考えられている。加えて指令案にある全ての措置は国際的義務を果た
すためと潜在的な貿易上の影響を最小限にするために、そのような方法で組み立てられている。貿易への不必要
な障害を避けるための必要性が適切に考慮されている。このことは、例外リストを規定し、特殊な状況下での部
分的な法の取消しの可能性(再考条項)を見越して、物質禁止の法性の施行を定義する際と、とりわけ時期調整
時(2008 年)に、特に心に留められることになった。さらに、技術的進歩と新たな科学的根拠を考慮して、見直
しのもとにこれらの部分的な法の取消しが抑えられるようにしなければならない。
8. 法的基盤
WEEE 指令におけるほとんどの措置が、WEEE 管理の改善への焦点に着手している。そのため、この指令は EC
条約の第 175 条に基づいている。EEE 内に含まれる特定有害物質の使用規制における指令の目標は、EEE に含ま
れる有害物質の使用規制に関する加盟国それぞれの法律を近づけることである。これに従い、この措置の法的根
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拠は EC 条約の第 95 条である。
9. 補完原則と比例原則
9.1 補完原則
環境保護措置と域内市場への影響に対する措置は、共同体と加盟国の双方の権限に応ずる。WEEE に関する措
置は、この権限分担のはっきりした一例である。補完原則(条約の第 5 条)に従って、提案された行動の目的が
加盟国により充分達成できず、そのため提案された行動の規模と効果が起因して、共同体により、より良く達成
できる場合に限り、共同体は排他的権限に応じない地域において行動をとらなければならない。
◇WEEE の管理によって発生した汚染は国境を超える性質がある。特に WEEE の焼却と不適切なリサイ
クルに起因する大気汚染については事実である。
◇WEEE のさまざまな部品について、大量の廃棄物が加工される場合に限り、リサイクルは経済的に成
立し得る。節約基準の原則に従って、欧州のわずかな中央施設だけがこれらの廃棄物を加工する。ブ
ラウン管はこの状況の一例である。WEEE が欧州の数ヶ国で回収された場合のみ、ブラウン管は充分
な量を加工することができる。
◇加盟国による WEEE、特に EEE に含まれる有害物質使用規制に関する WEEE への個々の国々のアプ
ローチは、
「域内市場」
の章に述べられたように、
域内市場へのさまざまな問題におよぶことになる。
これらの問題は共同体レベルの施策によってのみ対応できるものである。
WEEE 管理のための回収、処理、ファイナンス・システムを工夫する際、国家と地域の条件が考慮されなけれ
ばならない。当該イニシアティブでは、加盟国がこれらの側面を考慮に入れる充分な柔軟性を残している。提案
された共同体立法は、WEEE 管理とファイナンスの主な規定原則と、域内市場のひずみを避けることが必要な共
同体レベルでの設立原則に限られている。これらに沿って、EEE に含まれる有害物質使用規制は、EC 条約第 95
条に基づく指令提案に統合されている。
9.2 比例原則
両提案は、防止、回収、処理、再生、ファイナンシングのような WEEE に関する決議が取られるための主要素
について排他的に焦点を合せている。加えて、比例原則に従い、環境目標を達成するために必要な義務を導入す
るだけのものである。
WEEE が分別回収され、それにより一般廃棄物の流れから取り除かれ別に処理されるにつれ、新しい EEE に含
まれる有害物質の代替が過剰になる可能性が論じられてきた。しかし、WEEE 量の様々な見積りは、WEEE 提案
の第 5 条に記されるように、1 世帯あたり 4kg の「穏やかな」回収目標が、この廃棄物の年間総産出の 25%を構
成することを示している。提示目標の適切さはオランダの WEEE 立法の経験により確認されたが、他の加盟国が
中期において回収目標に達成するかどうかは確認の余地がある。結果として、EEE に含まれる特定有害物質の使
用規制に関する提案の第 4 条に規定されている有害物質の代替は、廃棄物の流れにおけるこれら物質の存在を削
減する最も効果的な方法である。
WEEE の処理、再生、廃棄にかかる経済的責任を製造者に属すとすることは、廃棄物管理の側面を考慮に入れ
る EEE の設計を改善するための重要な誘引を制定する。これとは対照的に、個人の家庭からの WEEE 回収が生産
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者に属することは、製品の設計に影響を持つことには何の根拠もない。そこで、生産者責任は WEEE の現実的な
処理、再生、廃棄に制限される。実践上の理由により、生産者は廃棄物を指定回収拠点から収集しなければなら
なくなる。
10. 他共同体政策との整合性
提案の目的は、環境保護と消費者の権利に対する条約の要件に完全に一致しており、さらに、モノとサービス
の自由な移動への障害の除去や競争に関する歪曲の予防の一助となっている。
共同体の廃棄物管理政策に関して、
当該イニシアティブは、電池のような具体的な廃棄物の流れに関する立法と同様に廃棄物処理(即ち、廃棄物の
埋立と焼却)に関する立法を補完するものである。
<廃棄物の埋立>
埋立に関する指令 1999/31/EC は、処理された廃棄物のみを埋立できると規定ている。WEEE の処理に関する
具体的な要件を規定することにより埋立指令を補完することは、当該イニシアティブの範囲に入るものである。
<廃棄物の焼却>
焼却炉に送られる廃棄物は、さまざまな理由で事前処理が必要である。鉱さい、飛散灰、濾塊を含む焼却工程
からのすべての残さい物は、例えば建設資材のような別の工程に使用される。これら残さい物の再生可能性は
(重)金属の含有量に依存しており、これは焼却工程に導入される材料の品質にリンクしている。その結果、当
該イニシアティブに予想された処理オペレーションは、それぞれの残さい物中の様々な金属の削減に大きく貢献
する。加えて、煙道ガス浄化の投資と操業コストは、焼却される廃棄物の重金属あるいはハロゲン系物質の含有
が少なければ削減できる。
<電池>
自治体廃棄物の流れの中で、鉛やカドミウムのような重金属の大部分は電池によるものである。その結果、特
定有害物質を含む電池と蓄電池に関する指令 91/157/EEC42は、これらの電池の回収を要求している。しかし、民
生用電池の 90%にも昇る量がが、
製品処理に先立ち消費者に取り除かれることなく EEE に統合されているため、
WEEE 指令のもと予測された EEE の分別回収は、電池の効果的回収計画の必須部分を構成している。
<気候変動とオゾン層破壊物質に関する立法>
当該イニシアティブは、EU の京都戦略後におけるハロゲン系フッ化炭素(HFC)排出削減の有用なツールとし
てはっきり認識されている。さらに、この提案は、オゾン層破壊物質に関する理事会規制(EC)3093/9443に含まれ
た使用済み管理物質の再生に関する一般的な条件であると定義している。
金属の一次製造は、地球全体の CO2 排出の 10%を計上している。金属によっては、金属の一次抽出に使用され
るエネルギーの 70%から 95%が、リサイクルの強化により節減される可能性がある。年間に産出される WEEE
に、350 万トン以上の金属が含まれているという事実を考慮し、WEEE 提案は京都目標達成のために要求される
CO2 削減に大きく寄与する。
42
43
OJ L 78, 26 March 1991
OJ L 333, 22 December 1994
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<研究政策>
共同体研究枠組み計画は、
提案された指令の条項に同調して、
産業界における環境をさらに重視した新世代 EEE
の設計、製造、使用などの必要性への変化を刺激するための活動を数年に渡り支援してきた。とりわけ、EUREKA
先導の“CARE”と同等の成長計画(the GROWTH programme)は、産業界がより真剣に製品の環境影響を考慮し、
設計段階から廃棄物側面のリサイクルと削減に本気で取りかかるよう激励している。欧州の行動は、危険材料を
より毒性の少ないものに替えることも支援する。このような行動は、RTD プロジェクトばかりでなく、行動と訓
練活動に協調した調和のネットワークも取り囲んでいる。
11. 経済的評価
11.1 履行コスト
11.1.1 分別回収と再使用・リサイクル
入手可能な情報44に基づき、提案された WEEE 指令案の家庭用 WEEE の回収・再使用・リサイクル要件を満た
す総額(ネット)45は、EU15 ヶ国で 5∼9 億ユーロ/年の範囲になるとみられる。商用製品の要件は、おおまかな
見積りではあるが、この数字に約 20%加えたものになろう。オランダの推定数値は、1999 年の国家 WEEE 立法
の実践的な経験から算出されたものであるが、公共関連、コンサルタント、回収、再生システム等一切含めたコ
ストで、初年度(以降下方向に減じるとして)約 1 億ユーロのコストを示している。これらのコストの全てを、
製品価格により直接消費者に負担させることとなれば、多くの EEE の価格は平均 1%上昇するであろうし、冷蔵
庫、テレビやその他のモニターのような製品カテゴリーに関しては、2∼3%価格上昇の可能性がある。
しかしながら、節約経済や処分コストを避けること等のために承認が役立てられる時、これら計算上のコスト
は著しく過大評価されていると思われる46。さらに、これらのコストは加盟国が自らのイニシアティブに着手し
ないという前提に基づいている。ところが、15 の加盟国の内 10 ヶ国は WEEE の分別回収とリサイクルのシステ
ムを既に実施しているか、実施の意向である。従って、EU 提案の増加コストは上述の数字より著しく低くなるで
あろう。
<家庭用機器の回収コスト>
一世帯あたり 4Kg 回収するとして、指令による WEEE の全回収量は 150 万トンになる。報告された回収コスト
の平均は、200 から 400 ユーロ/トンの範囲である。この数字を使えば、EU 15 ヶ国の総回収コストは、年間 3 億
から 6 億ユーロ/トンになる。しかし、時間がたてば、回収インフラへの基礎的投資が行われ、物流が最適化し消
費者の意識が高回収率に導かれて、これらのコストは低減すると思われる。
44
45
46
分別回収とリサイクルにかかるコスト評価の主な情報源は、以下のような WEEE 回収・リサイクルパイロットプロジェクトにある:Bregenz,
Weiz, Flachgau, Apparetour, LEEP, Lower Saxony, RDE, DSD, Swedish Ecocycle Commission, Rhone-Alpes; (生産者、リサイクル業者等に)
関係のある利害関係者により提供された情報、“Recovery of WEEE: Economic and Environmental Impacts”(European Commission 1997)の
研究、および Life Cycle Assessment and Life Cycle Financial Analysis of the Proposal for a Directive on WEEE(UK DTI 1999) および Priority
Waste Streams Waste From Electrical and Electronic Equipment(ENEA 1995)報告。
二次的材料の販売から得た収入から回収・リサイクルコストを引いたもの。計算は、パイロット計画の目的に必要な投資コストを含む数値
に基づく。
これは、オランダ WEEE 法令の施行に関連した予備結果によるものと確認されている:製造者とリサイクル業者間の初契約は、Apparetour
Pirot Project により予言されたコストの半分で落ちついている。
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<家庭用機器のリサイクル・コスト>
リサイクル・コストは機器のタイプによって大きく異なる。大型家庭用機器の場合のコストは、典型的に約 10
から 80 ユーロ/トンである。冷蔵庫の場合のコストは普通 200 から 300 ユーロ/トンであり、モニター内蔵機器
は 100 から 800 ユーロ/トン、小型家庭電気器具は 200 から 500 ユーロ/トンである。様々なパイロットプロジェ
クトに基づくと、廃棄生産の 70%が大型家庭用品、15%がモニター内蔵機器、15%が小型家庭電気器具と推定
すると、概ね年間 2 億から 3 億ユーロが指令の要件に従ったリサイクル・コストとして計算される。
この見積りは、オランダの WEEE の再生システムによる初めての結果により確認されている。1999 年には、
100 万戸あたりのリサイクルコストは、695,000 ユーロであった47。EU 全土の人口を推定すると、総額年間 2 億
5800 万ユーロになる48。
11.1.2 新製品における有害物質の削減
多くのメーカーは、既に様々な製品への鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、ハロゲン系難燃剤を廃止した。
このことはそのコストが極めて限られていることを示唆している。
産業界からさらに実質的なコストの問題が提起された唯一の論点は、ハンダの鉛である。委員会の計算による
と、スズメッキベースのハンダ使用による付加操業コストは、年間約 1 億 5000 万ユーロにものぼるとおおまか
に評価される。年間投資コストは、比較的低いと考えられる。これをもとに、全ての価格の増加は、ほとんどの
製品で極めてわずかなものに留まっている(例として、電話 1 つにつき 0.0006∼0.003 ユーロ、計算機 1 つ 0.003
∼0.017 ユーロ、テレビ 1 つにつき 0.03∼0.17 ユーロなど)。結論として、ハンダにおける鉛の置き換えの問題
は、コストの疑問より調整された代替テクノロジーの問題であると考えられる。
11.2 提案された指令の利益
11.2.1 経済上の利益
純粋な経済的観点から、3 つのタイプの利点が上げられる
•
二次材料によるバージン材料への置き換えにより、生産コストが節約できる。このために再生とリサイク
ルが存在するのである。二次材料はバージン材料と競う位置にあるため、価格が異なることは、生産者が
どちらの材料を使うかを決定させる。しかし、これはすでに上記コスト数値に考慮されており、ネットコ
ストである。
•
WEEE のより高いレベルでの再使用・リサイクルを通して、処理コストが節約できる。WEEE のほとんど
が今日よりもより高い基準で埋立地に運ばれること(1 トンあたり 50 ユーロ)を仮定すると、埋立地削
減によるコスト節約は、EU 15 ヶ国でほぼ 5000 万ユーロになる49。削減された有害部品が破砕されるこ
とで、さらに経済コスト削減が達成される。
•
最後に、生産者責任のフィードバックメカニズムによる新製品の設計や、加盟国がエコ・デザインを奨励
するための設計基準や一般義務のような付加的手法を通して、再使用・リサイクルコストは将来下げられ
ることになる。
47
48
49
輸送、仕分け、ロジスティック、処理:オランダ環境相によるコミュニケーション
しかしこの数値は直説法としてのみ見られ、また期待されるより高い質、最大限に活用されるシステム状況、国の特別コストが調整され
る必要がある(オランダの数値は、NVMP の枠組み内で 1 世帯あたり回収・処理された WEEE は 2.1kg である;しかしこの 2.1kg は、NVMP
システム外の WEEE をカバーしていない、例えば、明確な市場価格の自治体により直接再販された機器)。
しかしながら、この金額はリサイクル物質による置き換え可能な新品材料の使用から生じる鉱業廃棄物を考慮に入れていない。この種の
廃棄物に必要な埋立キャパは、少なくとも提案によって避けられる自治体廃棄物の埋立キャパよりも数倍である。
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WEEE 最終提案の説明メモランダム
11.2.2 外形上の利益
この分野での制定が必要である主な理由は、外部的存在、すなわち製品価格に統合されない環境影響、または
浄化コストや環境悪化を媒介する社会により通常報いを受けている環境影響である。WEEE に関連した問題に対
する一般的な意識があるにもかかわらず、この廃棄物現行管理の実践から生じる、外部の財政評価が出来る研究
はほとんどない50。しかし、このような分析の欠如を、政策的に緊急の問題を決議しないことの理由として解釈
することはできない。
<分別回収とリサイクルの外形上の利益>
分別回収とリサイクルの主な利益は以下の通り。
•
処理されてしまう WEEE(年間約 600 万トン)に含まれる資源使用の可能性により、外形上コストを回
避。一世帯当り 4kg の回収率で、100 万トン以上もの材料が経済サイクルの中に方向転換され再導入でき
る。未来の世代に残したり、バージン材料の価格に反映される世界人口に公平に分配せずに、今日の資源
利用がいったいどれほどコストがかかるのか評価するのは困難である。
•
WEEE の焼却や埋立から生じる環境への悪影響による外形上コストの回避。回収機器の処理後には、もと
の重量のわずか 10∼30%しか最終廃棄に搬送されない。処理後の残った部品(約 100,000 トン)で、有
害廃棄物取扱いの必要性がある場合は特別施設に送られる。通常は重量もしくは均一料金に基づくため、
廃棄料金は、異なる環境影響を起こす廃棄素材の区別をしていない。現行の WEEE 管理による外形上コ
ストは、WEEE に含まれる有害物質が原因で、平均的なタイプの廃棄物よりも間違いなく高額である。そ
のためこれらの外形上コストは、とりわけ CFC を含んだ冷蔵庫やブラウン管のある機器が高くなる。
•
バージン材料の製品から生じる環境への悪影響による外形上コストの回避。とりわけ、WEEE リサイクル
は、年間 1 億 2000 万ギガ・ジュール(約 280 万トンのオイルに相当)のエネルギー節約を産出している
と見積られる。バージン材料(付属書 I を比較)を使用するのと比較して、見積りのエネルギー節約の
60∼80%が WEEE 提案によるリサイクル材料を使用することにより得られる51。
<設計改良と有害物質削減の外形的利益>
•
生産者責任の効果と新製品の設計改良において設定されたその他の施策は、
再使用とリサイクルの財政的
コストばかりか機器の廃棄管理による環境影響をも削減しうる。しかし、これらの効果は、国毎に実施さ
れる施策の設計と、これら施策への市場反応によるため量的な評価は難しい。
•
EEE に含まれる特定有害物質の使用規制における提案により目標とされる物質のリスクは、第 5 条第 2
項と付属書 IV に記述されている。しかし、特殊な汚染経路、生態反応機能、可能性のある事故のリスク、
これらのリスクの欠如に社会が置かれる意味についての専門的知識の欠如により、これらの外形的利益に
関する明確な金銭的価値を位置付けるのは不可能である。これら物質固有の毒性と、生物学的に可能な形
式で環境におよび得るという事実により、関連性のあるリスクは実に現実的である。さらに環境に優しい
代替物質が手頃な価格で存在する時はいつも、これにより資源の時点で予防することが、流れの最終時点
50
51
この書類における定量体系的な分析の欠如が欧州における廃棄物管理の現状を反映している。汚染への道に関連するかもしれなが、科学的
統計的データは、このような汚染から生ずるリスクの欠如に社会が置かれるという価値などよくわからない関係へ反応している。処理が異
なる形になる廃棄物量と多くの廃棄物管理プロセスの状態における確かなデータでさえ、ほとんどの加盟国で不足している。外的効果の評
価は、概念的に問題でなくても、基本的な化学的情報の欠如により不可能になる。
White, M. Franke, P.Hindle, Integrated Solid Waste Management : A lifecycle inventory, 1995 in : European Commission, Recovery of
WEEE: Economic and Environmental Impacts, 1997 に基づき算出された。
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での解決よりも好ましく思われる。
11.2.3 ライフサイクルアセスメントとライフサイクル財務分析
1999 年イギリス通産省のための研究は、処理に関する代替コストとバージン材料製品を含んだ目標提案に沿っ
て、再使用とリサイクル活動に関する環境と財務バランスを詳細に調査した52。この研究は、今日でさえ様々な
種類の機器において比較的高い割合の再使用とリサイクルが達成されていると述べている53。これらの活動は、
純粋な財政見通しからでさえ有益であるように思われる。レベルの上昇がコストを上昇させることになり、再使
用・リサイクル機器市場が作り出される必要がある。しかし、この提案の目標に関するシナリオは、財務的観点
からコスト効果のあるものと見てとれると結論づけている。
WEEE 提案の目標による再使用とリサイクルの増加は、冷蔵庫とテレビがなければ、結果としてより低い環境
影響に終るであろう。しかし研究は、冷蔵庫からの CFC やモニターから出る重金属が環境に放出されるような特
に深刻な特定の効果を評価しようとしていない。
11.3 マクロ経済効果
製品価格の変化についてありうる効果を検討する場合の主要因は、対象商品に対する需要が、弾力性があるか
そうでないかである。この項目に関するオランダの研究54は、多くの電子製品、特に大型の白モノといくつかの
茶モノ(冷蔵庫、洗濯機、加熱ボイラー、テレビ、コンピューター)はかかわりのある価格変動のタイプ55(1∼
3%)を考えると、非弾力性とみなすことができると示唆している。言い換えると、販売のレベルは長期的にこ
の種の価格変動で影響されそうもないということである。
特定の他の製品に対しては、主としてハイファイやシェーバーのような民生用電子製品であるが、需要は部分
的に弾力性があるとみなせる。平均 1%の価格アップを想定すると、計算上の最大の販売ロスは 1∼2%である。
しかし、この効果と関連する間接コストは、経済規模と技術革新が WEEE の分別回収と処理のコストを引き下げ
るので帳消しになってしまう。
結果としてこの措置が、価格、インフレ、統計需要等になんらかの効果を与えることになる。しかしこれらす
べては比較的制限されると思われる。
12. 利害関係者の協議
1994 年と 1995 年に、加盟国の代表、すべての関連経済オペレーターならびに環境 NGO がプロジェクト・グ
ループに参加し、WEEE の管理に関する情報/勧告の文書を作成した。これに続いて、利害関係者が、当該提案
に先立つ討議用文書に関する協議に加わった。
一般的に、すべての加盟国は欧州委員会のイニシアティブを歓迎している。加盟国は、あらゆる機会に共同体
レベルで法的拘束力のある枠組が作られるべきだという意見を表明した。加盟国の大多数は、WEEE の回収に関
し既に確立した総合廃棄物管理スキームに従って、地方自治体、小売業者、生産者が財政的、技術的責任を分担
52
53
54
55
Life Cycle Assessment and Life Cycle Financial Analysis of the Proposal for a Directive on Waste from Electrical and Electronic Equipment(UK
1999), Ecobalance UK and DMG Consulting Ltd for UK Department of Trade and Industry.
洗濯機 62%、パソコン 60%、電話 62%、湯沸しポット 58%、冷蔵庫 60%、テレビ 42.2%
Economische effecten verwijderingsbijdrage wit- en bruingoed(Den Haag 1995), KPMG.
ここに述べられたパーセンテージは回収と再生のコストの合計である。
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するというシステムに賛意を示した。加盟国との会合結果によると、WEEE の処理、再生、処分の責任は生産者
にあるべきである。国による解決に対する柔軟性は、WEEE の如何なるファイナンス・スキームに対しても擁護
された。
•
産業界との協議の会合において、
WEEE の分野について調和のとれた欧州的アプローチを支持することが、
域内市場の歪みを回避するために表明された。さらに、本提案の目的についても産業界によって歓迎され
た。物質に関しては、懸念物質使用を最少化する必要は広く受入れられたが、廃止要件を EC 条約第 175
条に基づく廃棄物管理指令に取り入れることは不適切とされた。産業界は自らの製品のリサイクルにおい
て、ある程度の関与は受入れた。これに関連して、一部の産業界は、メーカーとディストリビューターの
関係に影響しない透明性のある支払システムに賛成した。別の産業界は、透明性のある料金を製品価格に
上乗せしない、競争的なファイナンス・システムに関心を示した。
•
1999 年 6 月、WEEE に関する指令案(これには特定有害物質の規制を含むが)は、パイロットプロジェ
クト56としてビジネステストパネルに提出された。相談した 611 ビジネスのうち、188 が提案により影響
を受けた。諮問会合に参加したいくつかのビジネスは、WEEE に関する責任は分担されるべきであると主
張した。特に、自治体、小売業者、ディストリビューター、製造業者、リサイクル業者は家庭用 WEEE の
引取り・リサイクルを協力して行うべきである。加えて、金属禁止の除去、もしくは遅延を擁護するビジ
ネスもいくつかあった。
•
WEEE に関し生産者責任の原則に賛成する委員会のイニシアティブは、環境 NGO に歓迎された。NGO に
よると、WEEE の発生の予防が強調されるべきとし、これには、長寿命の製品を生産することを生産者に
奨励することが含まれる。物質代替の条項は NGO が大いに支持しており、この要件を追加のハロゲン系
物質、特に PVC に広げることを求めた。
13. データ/科学的基礎
指令提案は、それぞれの加盟国における WEEE 管理の現行法の影響に関する科学的評価に基づいている。欧州
連合を通じて実施された1ダース以上の回収と再生のパイロット・プロジェクトは、この問題に関わるデータを
提供している。付属書 III に掲げられた作業は、当指令が基づく科学的根拠の例である。
WEEE(廃電気電子機器)に関する指令提内容案の内容
第 1 条は指令の目標を掲げている。
第 2 条は本指令で使われた言葉の定義を含んでいる。
EEE(電気電子機器)の定義(第 2.1 条)は、電気で動く機器であって提案の付属書 IA に規定されたカテゴリーに
含まれるすべての機器を含む。ボルテージ限度を記載した目的は、付属書 IA のカテゴリーに入ると解釈される大
型の産業用機器が、提案に網羅されていないということを請合うためである。このボルテージ限度は、あるボル
テージ限度内で使用するように設計された電気機器に関係した加盟国の法律の調和に関する 1973 年 2 月 19 日の
56
このパネルは、COM/98/0197 最終コミュニケーションを通じて開業した中小企業を特に狙った協議演習の一環である。
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理事会指令 73/23/EEC の第 1 条に定められた上限である57。ボルテージの定格は電気的インプットやアウトプッ
トのことであって、機器の内部で現れるかもしれないボルテージのことではない。
構成部品とは、EEE の部品であって、ハウジング、スクリーン、モーター、回路板、コンデンサー、整流器、
トランジスター、チューブ等のようなものである。サブ・アセンブリーとは、機器の部品であって必ずしも電気
フローの部品ではないが、これなしには機器がメーカーの意図通りに動かないものである。サブ・アセンブリー
の例としては冷蔵庫の中の棚がある。消耗品とはトナー・カートリッジや電池のような短期間に取り替えられる
/処分される機器の部品である。WEEE に関する条項は、構成部品、サブ・アセンブリー、消耗品が捨てられる
時点で製品の一部である場合、これらのみに適用する。
第 2.10 条:欧州の製造業者を差別しないようこの指令の条項は、遠隔販売や電子的販売を含む販売手法と関わ
らない製品と生産者に適用されなければならない。本指令でいう生産者とは、個々の部品、サブ・アセンブリー、
消耗品のサプライヤーやメーカーではない。もともとは他社によって製造された独自ブランドの製品を上市する
場合、生産者の定義は、オリジナルの製造業者よりも製品を上市する会社に適用する。
個人家庭用 WEEE(第 2.11 条)の定義によれば、放射線治療機器のような特殊機器は、その性質上、個人家庭
用機器に適用する提案の要求事項に入らない。しかし、個人の家庭用として使用するのと同様に、法律事務所の
ような小さな会社で使用するのに適している同種のコンピューターシステムは、個人の家庭用 WEEE の定義に含
まれる。法律事務所が明らかに家庭用で使われる通常の数を超えたコンピューターを使用している場合、その数
を考慮して個人の家庭用 WEEE の定義には含まないこととする。
第 3 条は指令案の範囲を定めている。指令案は付属書 IA に記載された EEE のすべてのカテゴリーに適用され
る。
このリストは網羅的である。
これらのカテゴリーのそれぞれに属する機器の例は、
付属書 IB に示されている。
急速に変化しつつある EEE の市場に鑑みて、機器の網羅的リストは避けた方が有用と考えられた。それは、網羅
的リストは更新を永久に続けなければならないという国の経験に明らかに従っている。
医療機器システム、監視制御機器、自動販売機のような製品は特殊な流通のため、おもに、もしくは全く民生
用機器と同様、これらの製品には、同様の回収やファイナンシング、利用者情報の条項を適用する必要がないと
見なされた。
医療機器システムに関して、移植機器は指令案の範囲とされていない。
第 4 条は WEEE の分別回収を規定している。
現行の WEEE への廃棄管理の実行に関しての主な問題のひとつに、
大規模生産のための効果的な材料を、リサイクル業者が得られるような回収の欠如が上げられる58。このことは、
個人の家庭用 EEE において特に事実である。結果として、加盟国は回収システムが設立されるようにしなければ
ならない。
効果的な回収システムを作り出すための主な課題は、消費者が参加するためのモティベーションである。しか
し、補完原則に従い、回収システムの一般要求事項のみが指令案に規定された。効果的な回収システムを確実に
する措置は、この廃棄物の流れの異なった製品グループと EU 内の異なる地方の特殊な様相により変化し得るた
め、国家もしくは地方レベルで取られるべきである59。現提案で規定された主な原則は、消費者が容易にアクセ
スできる回収拠点の設立要件と、消費者が無料で製品を返却できるようにすること、さらに、回収システムにデ
ィストリビューターを取り込むことを含んでいる。
57
58
59
OJ L 77, 26. 03. 1973, p. 29
AEA Technology, Recovery of WEEE: Economic and Environmental Impacts, June 1997, p.84
これらの措置は、ディポジットのような機器を返却するための財務的な奨励、公共意識キャンペーンを含む消費者情報、都合の良い開放時
間を含んだ回収施設の消費者への助けとなるオリエンテーション、施設へのアクセス方法、回収拠点において提供される効果的なサービス
を含む。
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WEEE 管理に関連した財務的負荷における実質的な不均衡を避けるため、回収成功のために調和の取れた基準
が設立される必要がある。しかし、この段階では、個人家庭用 WEEE の年間算出量の正確なデータの欠如により、
回収目標を法的に縛ることは不可能である。そこで、加盟国のための指標として「穏やかな」回収目標が提示さ
れた。一世帯あたり WEEE4kg という数値が示されたが、これは一世帯が達成すべき平均数値である。これは、
パイロット回収計画60のコースにおいて、EU のいくつかの国々により達成された典型的な平均回収収益に相当し、
オランダ WEEE 立法のもとでの実践における回収達成に相当する。後の段階において、経験が WEEE 指令の施行
中に集積されたあとで、強制目標が公式化する。
第 5.1 条は、付属書 IV との関係で必要な措置を規定している。これらは、WEEE 管理の様々な段階での主な困
難の原因となる物質の除去を含んでいる61。いずれにしても、これらの処理オペレーションが実施される時には、
再使用とリサイクルの可能性は考慮されなければならない。付属書 II のリスト作成の背景として、液晶ディスプ
レー(LCD)をこのリストに含めることに関しての広範囲な議論が行われた。研究では、LCD が多くの物質を含
み、そのうちのいくつかは発ガン性の疑いがあるとされる。加えて、LCD の熱処理が毒性化合物の形成を導く可
能性もあるとされた。いくつかの液晶大規模製造業者は、LCD 廃棄管理が健康や環境をリスクに導くことはない
と立証するために著しい努力をした一方で、特定の輸入 LCD 化合物に関する疑いは残ったままである。
提案では、処理オペレーションを実施する施設や請負業の認可要件を紹介している。この認可は処理要件や処
理場に関する要件を含んでいる。加えて、第 6 条に規定された再使用とリサイクルの目標に従うことはこの認可
の一部である。
リサイクルを経済的に実行するために、製造者は中央集権化された大規模処理工場を設立する能力を持たねば
ならない。結果として、5.5 条は、WEEE が生み出される際の、加盟国外の処理運営に着手する可能性を強調し
ている。
第 6 条は WEEE リサイクルの規準を定めている。一般的に、リサイクル目標は再生を焼却や有価材料の取り外
しだけに限って、残りを処分オペレーションに持って行くことを避けるために必要と考えられる。第 6 条に予想
されている全ての目標はリサイクル業者の技術の状態を反映している。これは大規模パイロットテスト62で証明
されており、リサイクル専門家により確認されている。上記のパイロットプロジェクトの間、リサイクル目標達
成の関連する価格の評価へ特別な考慮が与えられた。WEEE の関連カテゴリーに関して、それぞれのコストはそ
の他ヨーロッパのパイロット・プロジェクトにおいて生じたリサイクル平均コストに対応する。これは、リサイ
クル目標の達成が特定の追加料金を含まないことを示す。
第 6 条のリサイクル目標は、提案第 4 条に関連して分別回収された廃棄製品に単に言及している。製品全てで
はなく、構成部品の再使用は、これら目標達成の一助となる。
生産者責任の原則に従って、EEE の生産者は再生不能部分の処分と同様、リサイクルの義務も持つ。生産者は
地方自治体か民間企業である第三者に実際の業務をまかすことによって責任からの開放も可能である。
第 7 条は WEEE 管理のための財政的システムを規定している。この財政的システムの一つの目標は、消費者が
EEE を通常の自治体廃棄物回収や不適切な処理に至る経路を通じて処分するのではなく、回収地点や小売店に返
却するようにすることである。WEEE パイロット・プロジェクトから明らかなことは、消費者に返却時点で処分
コストをチャージすることは、回収結果にネガティブな影響があるということである63。そこで、生産者責任の
60
61
62
63
Collection targets for waste from electrical and electronic equipment ( Germany 1998), European Commission DGXI, p.13
必要な対策の背景の詳細な説明と記述は、以下の研究論文にある:"Pilotsammlung von Elektrogeräten in Bregenz - Wissenschaftliche
Begleitstudie" (Bregenz/Österreich 1996), (Bundesministerium für Umwelt Jugend und Familie.
Apparetour Back to the beginning (本誌 47 ページ付属書Ⅰ参照)- アイントホーヘン地区における電気電子機器の回収、リサイクル、と
修理のための国家パイロット・プロジェクト(アイントホーヘン 1997 年)、p 52.
全オーストリア・ドイツのパイロット・プロジェクトからの経験 (“Collection targets for waste from electrical and electronic equipment”,
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原則に沿って、生産者は個人の家庭用 WEEE の処理、再生および環境に優しい処分にかかる費用を負担しなけれ
ばならない。生産者の責任は、指定された回収拠点から始まるべきである。
法律が施行される前に上市された製品(ヒストリカル・ウェイスト:historical waste)の廃棄管理に起因する
製造者のコストを削減するために、指令施行後 5 年間の過渡期間が認められた。
重要な利益が、企業が独自に製品のために設立したファイナンスシステムから生じる可能性もある。しかし、
独自のシステムに従う生産者に対し、ファイナンス義務の効力が発効する前に上市された商品の廃棄管理のファ
イナンシングへの責任をシェアするようにする必要がある。そこで、独自のシステムを選択している生産者が、
ヒストリカル・ウェイスト全般の管理ファイナンシングの公平なシェアを提供することが必要になるだろう。
第 8 条:個人の家庭用に使用されない EEE に関連して、廃棄物管理のファイナンシングは、購入時の生産者と
製品ユーザー間の合意が必要である。
第 9 条は、消費者に与えられるべき情報ならびに消費者の参加が、回収スキームが機能するために一番重要で
あると規定している。具体的な情報の手段は、普通のごみ箱や類似の自治体廃棄物回収手段への廃棄を回避する
よう、当該小型 EEE にマーキングすることである。
第 10 条は、生産者が製品のリサイクルを容易にし、EEE に含まれた有害物質により作業者の健康や環境に悪
い影響が出ないよう、EEE の含有物に関する情報を処理施設に提供するよう規定している。この処理施設が必要
とする情報は、リサイクル業者の要求によりデータ・ベース、マニュアル、インターネット上の情報の形で提供
されなければならない。
第 11 条は、加盟国が、この法律の成功を評価するのに必要な情報と、WEEE の将来の発生を推定するのに必要
な情報を提供しなければならないと規定している。
付属書 IA は、本提案でカバーされる EEE のカテゴリーを網羅的に掲げている。
付属書 IB は、各カテゴリーに対してそれぞれ該当のカテゴリーでカバーされる製品の例を示したリストである。
付属書 II は、環境上の理由により分別回収された WEEE から取り除くべき物質や調剤を掲げている。
付属書 III は、WEEE の貯蔵と処理場の条件に関する最低条件を規定している。
付属書 IV は、ごみ箱や類似の家庭廃棄物回収手段に適した機器につけるべきマーキングを規定している。
EEE(電気電子機器)における特定有害物質の使用規制に関する指令案の内容
第 1 条は、指令の目的を規定している。
第 2 条は、この指令の目的の定義を含む。EEE(電気電子機器)の定義は、WEEE に関する指令のそれぞれの
定義に等しい。第 4 条に使われている生産者という用語の目的に適合されたにも拘らず、生産者の定義も WEEE
指令の概念に追随する。
第 3 条は、現行指令の範囲を規定している。この範囲は WEEE 指令の第 3 条により定義された範囲に対応して
いる。
第 4 条は、鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、臭素系物質、特に 5-BDE、8-BDE、10BDE を含む PBDE、PBB
など、重金属物質の代替要求を規定している。これらの物質は、廃棄管理の段階で深刻な環境問題を引き起こす
European Commission 1998, Page 10)
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WEEE 最終提案の説明メモランダム
ためである。これら物質の適用除外は、代替が実行不可能、もしくはこの代替による環境の利益よりも代替によ
り引き起こされる潜在的な環境や健康へのインパクトが重要な場合に認められる。物質の段階的禁止の除外は、
本指令付属書に表示される。この付属書に含まれる挿入部分は、技術進歩と新たな科学の根拠に従い委員会によ
って修正されるべきであり、委員会指令 75/442/EEC 第 18 条によって援助されるべきである。委員会は、この付
属書の修正に関する決議がなされる前に、EEE の生産者と協議するものとする。
付属書は、本指令の第 4 条における代替要求から除外される製品のリストを含む。このリストは、技術進歩と
新たな科学的根拠により定期的に更新される必要がある。
付属書Ⅰ
再加工時の環境影響への材料の特定削減64
エネルギー節
材料
減プロセス
固形廃棄物削
大気排出
水域排出
(GJ/トン)
ガラス
3.8
減
コメント
(Kg/トン)
一般に低い
一般に低い
(25)
完成品の容器の工程。すべてのガラス
製造は若干のカレットを使うので、
100%バージンと推定されるデータ
鉄(ブリキ)
13.5
一般に低い
一般に低い
278
新しいブリキの生産に匹敵するブリ
キ・リサイクルのデータ
アルミ
156
一般に低い
一般に低い
639
データ少
(93)
(HCl 以外)
プラスチック
15.4
LDPE
一般に低い
(CO2 以外)
LDPE の再生工に関してはデータが不
完全;47.7GJ/トンの追加された固有のエ
ネルギー節約
プラスチック
25.6
HDPE
一般に低い
データが乏しい
が多分高い
(184)
HDPE の再加工に関してはデータが不
完全;47.7GJ/トンの追加された固有のエ
ネルギー節約
64
P.R.White, M.Franke, P.Hindle, Integrated Solid Waste Management: A lifecycle inventory, 1995, in: AEA Technology, Recovery of WEEE:
Economic and Environmental Impacts, June 1997; この数値は直接的なものであり、プロセスと使用された機器により変化する。結果は生
産されたリサイクル材料のトン当りである。回収と再生材料の仕分け積載トン数および再加工業者への搬送は含まれない。同様に、埋立か
らの再生材料の転換も固体廃棄物節約には含まれない。
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付属書 II
ビジネスに関する提案の影響 − 特に中小企業に関して
この提案によって誰が影響を受けるか?
どのセクターのビジネスか
本指令案で一番影響を受けるに違いないセクターは、電子構成部品供給者、機器生産者、電気修理業者ならび
に廃棄物回収/処理業者である。廃棄物回収/処理業者に対する影響はほとんど確実に肯定的なものである。本
指令は処理とリサイクル市場の拡大を強制し、その結果このセクターの雇用を増進することになる。ファイナン
スのメカニズムがどう作られるかにある程度よるが、生産者が独自の回収やリサイクルのシステムを設立しよう
として現存の伝統的なリサイクル業者に損害を与えるリスクはある。
どのサイズのビジネス (中小企業の集中)か
家電製品(Nace 29.7)、コンピューターと事務機(Nace 30)、通信機器(Nace 32.2)、民生用電子機器(Nace 32.3)
ならびに電球(31.5)は、ほんの少数の企業によって支配されており、決まってこのセクターの売上と雇用の 80%
を占めている。とはいうものの、電子産業には 20 人以下を雇用している企業が依然として 100,000 以上あって、
それぞれこのセクター全雇用者数140 万のうち18 万の雇用を計上している。
電子構成部品のサブ・セクター(Nace
32.1)は他のサブ・セクターに比べて集約化が進んでおらず、雇用と売上のかなりの部分が中小企業によって占め
られている。
これらのビジネスが見つかる特別な共同体の地理的地域があるか?
金属リサイクル業者はすべての加盟国に存在する。
EEE のメーカーは主にドイツ、イギリス、フランス、イタリア、オランダ、スウェーデンに所在している。
この提案を遵守するためにビジネスは何をなすべきか?
この措置は加盟国に宛てられている。ビジネスはこの措置を施行する国の立法を遵守しなければならない。
EEE の生産にかかわっているビジネスは、機器の設計と生産に廃棄物管理の配慮を反映しなければならない。
これら廃棄物管理の配慮は、リサイクル/再生の容易な材料の使用、有害物質の抑制、可能ならリサイクルされ
た材料と共通部品ならびに材料コーティング基準の使用を含む。特定のケースでは、水銀、鉛、カドミウム、六
価クロム、臭素系難燃剤のような重金属を代替する必要がある。
WEEE の処理にかかわる請負業者や企業は、WEEE 指令案の第 5 条や付属書に規定された多くの技術的要求を
満たさなければならない。ビジネスの構造や地理的位置に大きな違いがある以上、多くのセクターを横断してど
こに投資を集中しなくてはならないかを正確に予想することは困難であるが、いくつかのケースでは、これら要
件を遵守するために行われる投資は相当なものと思われる。これら投資の本当の大きさは、国や地域の立法が既
に行われているかどうかにもかかっている。このような立法が行われている所では、産業界が本提案の要件を遵
守することは比較的容易であろう。
処理オペレーションを実施している施設やオペレーターも、オペレーションを行うためには公共の当局から認
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WEEE 最終提案の説明メモランダム
可を得ることが要求されよう。
どのような経済的効果をこの提案は持ち得るか?(特に、雇用、投資、新ビジネスの創造において)
EEE の価格における廃棄物管理コストの内面化は、下記のような事態に至る可能性がある:
(1) 製品の販売における変化
(2) 購買の時期における変化、価格セグメント内での動きあるいは支出力の喪失といった他の効果
製品の販売における変化
製品価格の変化の考えられる効果を考慮する場合の鍵となる要因は、対象商品に対する需要に弾力性があるか
非弾力的であるかである。コンサルティング会社 KPMG の調査は、多くの電子製品、特に大型の白モノと数種類
の茶モノ(冷蔵庫、洗濯機、湯沸し器、テレビ、コンピューター)は、かかわりのある価格変動のタイプ65(1~3%)
を考えると、非弾力的と考えられると示唆している。言い換れば、販売のレベルは長期的にこの種の価格変動で
影響されそうもないということである。
他の製品のあるものに対しては、主としてハイファイやシェーバーのような民生用電子電気製品であるが、需
要は部分的に弾力性があるとみなせる。平均 1%の価格アップを想定すると、計算上の最大の販売ロスは 1∼2%
である。しかし、この効果と関連した間接コストは、経済規模と技術革新により WEEE の分別回収と処理のコス
トを引き下げるので帳消しになってしまう(編者注:前述 11.3 とほぼ同じ内容だが、原文に従い掲載した)。
いくつかの他の潜在的間接コスト
製品価格の引き上げは、購買を先行するか延期するかのどちらかの決定に結びつく。おそらく比較的小さな規
模においてではあろうが、後者が起こる可能性の方が高い。同様に、消費者は製品価格のカテゴリーで、安くて
性能の良くない機種を選択し、結果として消費者の生活基準を低下させる。
雇用
WEEE のリサイクルは労働集約的である。これは WEEE の管理コストにインパクトを与えるが、雇用創出の分
野で大きな利益を作りだす。従って、各国政府はその WEEE 立法を環境と社会政策の双方の一環として提出して
いる。この関連で、さまざまなプロジェクトを通して、WEEE の解体は仕事の工程で長期の失業者と身体障害者
の統合に特に適していることが示された。
ドイツの実施状況によると、年間売上 500 万ユーロの規模では、リサイクル業者が常勤ベースで 30 人、さら
に関連企業で約 70 人の雇用を可能にする。住民一人あたり年間 4Kg の WEEE の最低回収量をベースにすると、
欧州全体のリサイクル・コストは 5.25 億ユーロに達し、その結果リサイクル業だけで約 10,500 人の雇用が創出
され、さらに、WEEE の回収と運送により多くの雇用が創出されることになる。リサイクルと雇用に関するアメ
リカの研究によると、465 トンの材料加工で平均一人の雇用が創出される。従って、600 万トンの WEEE のリサ
イクルによる雇用創出の可能性は 12,903 人分となる。
65
ここに述べられたパーセンテージは回収と再生のコストの合計である
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Vol.2 No.2 (2000.7)
WEEE 最終提案の説明メモランダム
この提案は、中小企業の具体的状況を配慮した対策を含んでいるか(要求の削減または相違)?
WEEE の管理にかかわっている欧州中小企業組合の協議からわかったことは、最も重要な考慮すべき変動要因
は、投資を行い、そして必要な環境関係の技能を開発するのに必要な一定の時間的な長さと思われる。この一定
の時間的長さは解体オペレーターにとっては約 6 ヶ月と推定される。提案では、指令発効後 18 ヶ月で加盟国の
法律に転換されなければならないので、充分な移行期間を規定している。
協議ビジネス機関のリスト
本提案を最終決定する前に 1994 年から 1999 年までの間、いくつかの国際機関、欧州および加盟国のビジネ
ス機関のと協議が行われた。国際機関、欧州機関の中には次のものを含む:
AEA (American Electronics Association)
AIE(Association International des Entreprises d’Equipment Electrique)
APME(Association of Plastics Manufacturers in Europe)
CECED(Conseil Européen de la Construction Électrodomestique)
CEFIC(European Chemical Indusry Council)
CELMA ( Federation of National Manufacturers Association for Luminaires and Electrotechnical Components for
Luminaires)
EACEM(European Association of Consumer Electronics Manufacturers)
ECTEL(European Telecommunications and Professional Electronics Industry)
EECA(European Electronic Component Manufacturers Association)
ELC(European Lighting Companies Federation)
EUROMETAUX(Association Européene des Metaux)
EPTA(European Power Tool Association )
ETNO(European Public Telecommunications Network Operators’ Association)
EUCOMED(European Confederation of Medical devices Association)
EUPC(European Plastics Converters)
EUROBIT(European Association of Manufacturers of Business Machines and Information Technology Indusry)
EUROM(European Federation of Precision Mechanical and Optical Indutries)
EUROPACABLE(European Conference of Association of Manufacturers of insulted wires and cables)
EUPC (European Plastics Converters)
EURO COMMERCE(European Association of Consumer Electronics Manufacturers)
EVA(European Vending Association)
FEAD(Fédération Européene des Activites du Dechet)
GPRMC(Groupement Européen des Plastique Renforces/Materiaux Composites)
ISWA(The International Solid Waste Association)
JBCE (Japan Business Council in Europe)
ORGALIME(Liaison of European Mechanical, Electrical and Electronic Engineering and Metalworking)
TIE(Toy industries of Europe)
UEAPME(Union Européenne de l’Artisanat et des Petites et Moennes Entreprises)
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Vol.2 No.2 (2000.7)
WEEE 最終提案の説明メモランダム
UGAL(Union des Groupement de Commercants Detaillants Indépendants de l'Europe)
付属書 III
参考文献
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Apparetour Back to the beginning - National pilot project, for collecting, recycling and repairing electrical and electronic
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Territory, Housing and
Environment.
Collection and treatment of waste from electrical and electronic products (Oslo1996), Ministry of the Environment.
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(Vienna 1996), Austrian Electrical and Electronic Industries Association
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Elektronikschrott Projekt Weiz - Modellversuch zur Sammlung, Demontage und Verwertung von Elektro- und Elektronikaltgeräten im Bezirk
Weiz(Graz/Österreich 1995), Amt der Steiermärkischen Landesregierung.
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Erfassung von Elektro-Haushalt-Kleingeräten aus Haushalten mit verschiedenen Erfassungssystemen (Germany 1995),
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Etude de faisabilité – Recyclage du materiel électrique et électronique (Bruxelles 1996), Institut Bruxellois pour la Gestion de
l’Environnement.
Evaluierung von Systemvarianten für die Sammlung und Verwertung von Elektroaltgeräten (Wien 1997), Bundesministerium für
Umwelt Jugend und Familie.
Extended Producer Responsibility: Take-Back Programmes and International Trade Law - ENV/EPOC/WMP/RD(97)3 (Paris 1997).
JMC environment Update
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Vol.2 No.2 (2000.7)
WEEE 最終提案の説明メモランダム
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Lead-Free Soldering, An Analysis of the Current Status of Lead-Free Soldering –UK DTI 1999.
Life Cycle Assessment and Life Cycle Financial Analysis of the Proposal for a Directive on Waste from Electrical and Electronic
Equipment(UK 1999), Ecobalance UK and DMG Consulting Ltd for UK Department of Trade and Industry.
Modelmatige analyse van integraal verbranden van klein chemisch afval en klein wit- en bruingoed (Netherlands 1996), TNO
rapport voor VROM/DGM(Directie Afvalstoffen)
Pilotprojekt zur Erfassung von Elektroaltgeräten (Germany 1997), Interseroh AG.
Pilotsammlung von Elektroaltgeräten in Bregenz – Wissenschaftliche Begleitstudie (Bregenz/Österreich 1996), Bundesministerium für
Umwelt Jugend und Familie.
Priority Waste Streams Waste From Electrical and Electronic Equipment –Information Document (Rome 1995), Italian National
Agency for New Technology, Energy and the Environment.
Produits électriques et électroniques non portables en fin de vie en région Rhône-Alpes (France 1997), Fédération des industries
électriques et électroniques.
Recovery of WEEE: Economic and Environmental impacts. (UK 1997), EuropeanCommission DG XI.
Report on the UK industry for recycling end of life electrical and electronic equipment second draft (London 1998), ICER – Industry
Council for electronicequipment recycling.
Sammlung von Elektroaltgeräten im Flachgau – Wissenschaftliche Begleitstudie (Wien 1997), Amt der Salzburger Landesregierung.
Switching on to Electronic Waste Recycling (UK 1998), Save Waste & Prosper Ltd.
Umweltverträgliche Produktgestaltung (München 1998), Ferdinand Quella/Siemens (editor) Publicis MCD Verlag.
Waste from electrical and electronic products - a survey of the contents of materials and hazardous substances in electric and
electronic products(Copenhagen 1995), Nordic Council of Ministers.
Verwertung von Elektro- und Elektronikgeräten (Essen 1994), Landesumweltamt Nordrhein-Westfalen.
Unplugging electrical & electronic waste - The findings of the LEEP Collection Trial (Edinburgh 1997), Lothian & Edinburgh
Environmental Partnership.
付属書 IV
EEE に含まれる特定有害物質使用規制に関する
欧州議会と理事会指令への提案第 4 条に規定される代替要件に関しての
科学的評価に関するメモランダム
このメモランダムの目的は、指令案第 4 条第 4 項に規定された要件に入る物質のリスクの全般的評価はもちろ
んのこと、危険な性質、投与反応、曝露の主要ルートからの要約を提示するためのものである。このメモランダ
ムは、全般的リスクと、このようなリスクの削減や評価を行うための提案された戦略への WEEE の貢献も提示し
ている。
思案中の物質は、国の当局や、WHO、IARC、OECD などの正当な権力を持つ国際機関によって評価されてきた。
委員会のリスクアセスメントは、責任ある国立または国際的な当局や機関により実行された科学的評価とリスク
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WEEE 最終提案の説明メモランダム
アセスメントに基づいており、EU および加盟国内の事実上の情勢に適応した。これらの物質により提起されたリ
スクに関して、得られうる最新の科学的情報も考慮に入れている。
危険性の識別
カドミウム
カドミウムとカドミウム化合物は、危険物質の分類とラベル付けに関する理事会指令 67/548/EEC のもと、下
記の通りである:
−R20/21/22:吸入、食物摂取、もしくは皮膚接触により有害(特定カドミウム化合物)
−R23/25:吸入、飲み込んだ場合有毒(特定カドミウム化合物)
−R33:蓄積効果の危険(特定カドミウム化合物)
−R40:もとに戻らない効果のリスクの可能性(特定カドミウム化合物)
−R45:発ガン性(カドミウム塩化物)
−R49:吸入による発ガン性(カドミウム酸化物)
鉛
鉛と鉛化合物は、危険物質の分類とラベル付けに関する理事会指令 67/548/EEC のもと、下記の通りである:
−R20/22:吸入、飲み込んだ場合有害
−R33:蓄積効果の危険
−R61:胎児への発有害性
−R62:繁殖力低下のリスクの可能性
−理事会指令 67/548EEC、カテゴリー1、再生への有毒(付属書 6)
水銀
水銀と水銀化合物は、危険物質の分類とラベル付けに関する理事会指令 67/548/EEC のもと、下記の通りである:
水銀化合物の分類は以下の通り:
−R23/24/25:吸入、皮膚接触、飲み込んだ場合有毒
−R33:蓄積効果の危険
アルキル水銀および無機水銀化合物の分類は以下の通り:
−R26/27/28:吸入、皮膚接触、飲み込んだ場合非常に有毒
−R33:蓄積効果の危険
六価クロム
バリウムクロム酸塩およびこの付属書で指定された化合物を除く六価クロム化合物は、危険物質の分類とラベ
ル付けに関する理事会指令 67/548/EEC のもと、下記の通りである:
−理事会指令 67/548EEC、カテゴリー2、発ガン性(付属書 6)
−R49:吸入による発ガン性
−R43:皮膚接触による敏感症
−R50/53:水生生物へ非常に有毒、水生環境に長期にわたる悪影響の可能性
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WEEE 最終提案の説明メモランダム
PBB および PBDE
PBB、penta-(5)、octa-(8)、deca(10)BDE は、危険物質の分類とラベル付けに関する理事会指令 67/548/EEC
のもと分類されていない。
投与(濃縮)/反応(効果)評価
1.1. 人間の健康に関する悪影響
科学的根拠は、カドミウム、鉛、水銀には、生物上の有機組織体に役立つ機能は何一つない、と示している。
カドミウム
カドミウムの人体への蓄積、特に腎臓、骨、血液に関しての蓄積は、蓄積することでその本来の毒性を増強す
る。カドミウムは 10∼30 年の半減期除去をもつ。主に報告された健康への影響は、腎機能不全、成長障害、骨
格損傷、生殖欠陥である。カドミウムは、肝臓、肺、前立腺ガンを引き起こす可能性があるとみられている。ガ
ン研究国際機関(IARC)は、カドミウムを人間の発ガン物質として分類している(IARC のカテゴリーI)。
世界保健機構(WHO)は、カドミウムの暫定的週間摂取許容量を、体重 1kg あたり 7μg(一日おおよそ成人
で 70μg)と規定している。
鉛
鉛は、健康への悪影響に最も抵抗力のないサブグループに属する妊婦、胎児、幼児、6 歳以下の小児に、累積
的な一般毒性を持つ(WHO 1995 年 、WHO 1996 年)。鉛は、人間の中心・抹消神経系ともに損傷を引き起こ
す可能性がある。内分泌機能への影響も観察されている。鉛は、人間のいくつかの機能に悪影響を与える可能性
があるが、特に神経系、血液機能、および腎臓があげられる。さらに鉛は、動物実験による充分な実証により、
人体への発ガン物質である可能性がある。
1986 年、WTO は、小児の体重 1kg あたり 25μg を「暫定的週間摂取許容量」(PTWI)とした。この数値を
超えた鉛を摂取した小児は、健康への損傷を引き起こすような濃縮されたものに曝されることになる。成人の
PTWI は、胎児を保護する目的に基づいて、1992 年に WTO によって体重 1kg あたり 50μg から 25μg(小児と
同等)へと変更された。
「有毒性・環境有毒性・環境に関する科学委員会(CSTEE)」による、「鉛に関するデンマークの通知書」に
関連した 5 月 5 日付の見解において公表されたように、鉛にとって安全な血液レベルはどれほどか、結果として
説明するのに充分な科学的データはないとしている。
幼い子どもはリスクに犯されており、
血液 1 リットル中 100
μg 以下の幼い子どもにかすかな影響が報告されている。CSTT は、後の見解でさらにこの詳細を再調査する予定
である。
水銀
人体内の水銀は特に、視覚、(諸筋肉運動の)協同、平行間隔のような、脳に影響を与える可能性がある。妊
婦内のメチル水銀は、胎盤から胎児に運ばれ、これにより胎児は脳障害や精神障害で誕生するといった深刻なケ
ースに陥る可能性もある。
WTO は、水銀に関して体重 1kg 当り 5μg、メチル水銀は 3.3μg 以下という PTWI を設定している。
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WEEE 最終提案の説明メモランダム
PBB と PBDE
低臭素化された人為的 PBDE 化合物は、肝臓に対する上記全ての影響ばかりか、甲状腺ホルモンへの影響を示
し、実験動物の行動にも影響を与える。これらの物質は環境中、血中、母乳に広く生じる。人為的 octaBDE と
decaBDE に含まれる高臭素系化合物は分解しにくく、生殖に影響を与え、肝臓の腫瘍形成を引き起こす可能性が
ある。これらの化合物が低臭素系化合物に変換され得るという仮説を裏付ける科学的データがある。
低臭素系 PBB 化合物は高い毒性があり、
塩素系ダイオキシンや PCB のような影響を生み出す。
PBDE のように、
decaBB すなわち人為的に使用される PBB 化合物は、低臭素系ビフェニールに変換され、これも同じく毒性を持
つ。PBDE も内分泌かく乱を起す可能性があると証明されている。
pentaBDE と octaBDE のケースでは、ラットとウサギの動物実験で、有害な影響を引き起こさない曝露最高値
は、1 日当り、1∼2mg/kg である。
1.2 環境への悪影響
カドミウム
地上と水生動物へのカドミウムの影響は、慢性的な毒性同様の深刻さを包含している。哺乳類のカドミウム中
毒における最も重要な兆候は、生殖減退、関節肥大、毛並みがぼろぼろになる、肝臓と腎臓障害による発育不全
といった無気力(脱力感)である。高濃度のカドミウムに曝露した魚は、ただちに血中のカルシウウム不足とヘ
モグロビン低下に発展する。カドミウム濃度をおおよそ 0.25mg/l に下げる微生物に関して、成長活動抑制を伴う
毒性影響が観察される。
鉛
鉛は環境に蓄積され、植物、動物、微生物に対し、非常に深刻で慢性的な有毒性をもたらす。鉛の濃度をおお
よそ 1mg/l に下げる微生物への毒性影響が観察される。鉛の著しい体内蓄積は、魚には見られないが、ムール貝
のようないくつかの貝には現れている。
水銀
通常食物連鎖の中にある動物は、食物連鎖を通じて生物に蓄積される水銀の特性によって生じる水銀中毒に、
特に曝される可能性がある。とりわけ鳥類にリスクが高い。水銀中毒は、数種類の鳥をほぼ絶滅させる原因にな
りうると考えられている。水生環境のもと餌を摂取する鳥類は、おそらく危険な量の水銀に曝されることになろ
う。スウェーデンの科学研究は、土中の水銀濃度が現行の 2∼10 倍で、土中の生物分解活動に影響を与えるよう
だと結論づけている。
臭素系難燃剤
低臭素系の人為的 PBDE 化合物は、このほとんどが pentaBDE を含んでいるが、分解しにくく生物蓄積をし、
水生の環境に毒性をもたらす。pentaBDE は、水中、空気中とも微生物学的にも非生物学的にも分解しにくい。
tetraPBDE と pentaPBDE は、5,000 から 35,000 の範囲の生物濃度因子により、とりわけ生物蓄積に高い潜在力を
もつ。octaBDE と decaBDE に関しては、著しい生物蓄積は証明されていない。octaBDE と decaBDE は、水中、
空気中とも微生物学的にも非生物学的にも分解しにくい。しかし、UV 光と太陽光における連続した非臭素化が、
decaBDE において証明されている。
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WEEE 最終提案の説明メモランダム
曝露評価
曝露に関する科学的データが、常に共同体の全てにおいて入手可能というわけではないということが強調され
なければならない。しかし、人間の健康と環境への曝露に、著しい違いの徴候はない。
カドミウム
人は汚染された食物の摂取とカドミウム微粒子の吸入により、カドミウムに曝露する。後者は、特に職務上の
曝露の際中起こることで知られている。産業諸国は、総人口で、特に高いカドミウム摂取が起こっている。研究
では、ベルギーのようないくつかの国々で、総人口のおおよそ 10%に腎機能不全を引き起こすのに十分なカドミ
ウムが体内濃縮されていると示している。農業用土壌、小麦、人の骨、腎臓のカドミウム濃縮は、この 1 世紀の
間で著しく増加したとこの研究は伝えている。長期曝露による低いカドミウム凝縮は、慢性のカドミウム中毒を
引き起こす可能性があり、結果として一連の生理学的機能不全に至る。10 年間に及ぶ 1,000 人以上を対象にした
調査に基づき、最近の研究(Stassen et alter, April 1999)は、カドミウムに低く穏やかに曝露することが、骨格
の鉱物を除去することに関連していることを確認している。
鉛
人の鉛摂取の主な原因は、食物、土、そして塵である。食物は、主に大気中の鉛が植物に堆積することにより
鉛を受取っている。しかし、植物が土中から鉛を吸収するこによっても多少の幅がある。土壌は本来低レベルの
鉛を含んでいるが、長年に渡る鉛の排出が、この観察されたレベルに加わってきている。
鉛は、採鉱、鉱石加工、製錬、精製利用、リサイクル、処理の最中に環境に取り込まれる可能性もある。一般
的に、取り込まれる最初の媒介は、大気を介してである。土壌や火山が外気に曝されることでも大気中に鉛が取
り込まれ得るが、これらの原因は、人為的操作によるものに比較すると重要ではない。鉛が大気中に取り込まれ
る形は確定されない。しかし、金属製の鉛は、製錬・精製工場から放出される可能性もある。土壌に放出、もし
くは堆積された場合、特に少なくとも 5%の有機物を含む土壌もしくは pH5 以上の土壌の上層 2∼5cm 部分に保
たれることになる。鉛がいくつかの工場で集められているという提示を裏付けるいくつかの証拠があるが、通常
の状況では浸透は重要ではない。一般的に、鉛を土壌から工場に集めるのはさほど重要ではない。非溶解硫酸塩、
亜硫酸塩、酸化物、リン酸塩類への種形成にゆっくりと耐えることが予想されている。大気中からの放射性降下
物や、雨による流水または廃棄水から、鉛は水中に取り入れられる。自然鉱石からはほとんど水中には入らない。
鉛は、安定した金属であり、腐蝕から金属を保護する保護非溶解塩基の付着性薄膜である。
最近の見解では、CSTEE が、前進的なガソリン中の鉛の使用禁止は風媒の鉛を削減し、子どもと大人の鉛の血
中レベルを低くする第 1 の理由であると考えられていると言及している。
水銀
環境内メチル水銀は、全てではないかもしれないが、無機水銀のメチル化により広く起こる。水中に広がる無
機水銀は、水底堆積物の中でメチル水銀に変換する。メチル水銀は、脂肪可溶性であるため容易に生物に蓄積し、
食物連鎖を通じて凝縮される。
総人口が主として食事を通してメチル水銀に曝露している。
凝縮レベルによるが、
空気と水は、総水銀の日常的な摂取に著しく関与している。魚と魚肉加工品は、食事におけるメチル水銀のほと
んどを占めている。魚に含まれるメチル水銀の成分は、食物連鎖を通じて様々な種類の生物に対する毒性や魚そ
れぞれの生息地の水銀凝縮に変化する。1200μg/kg 以上ものレベルが、フカ、メカジキ、地中海マグロの食用一
人前から検出されている。同様のレベルが、汚染された淡水から釣られたカワカマス、ウォールアイ(目が横に
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WEEE 最終提案の説明メモランダム
ついている魚)、バスから検出されている。魚に含まれる水銀のレベルは、人が消費するのはわずかだが(1 日
当り魚 10∼20g)、メチル水銀を摂取することで増加する可能性がある。1kg あたり 500μg の水銀を含む魚を
200g 摂取することは、結果として、100μg の水銀を摂取したことになる。この量は、WTO の提示した暫定週間
容認摂取量(1989 年)の半分である。
PBB および PBDE
北極アザラシのサンプルに含まれている臭素系ビフェニール(PBB)の存在は、地理学上広範囲にわたり分布
していることを示している。発端源から水生環境へと移動する PBB の認知される原則のルートは、PBB 工場エリ
アとゴミ捨て場である。PBB はほとんど水に非溶解であり、主として汚染された湖や河川の堆積物から検出され
る。一旦環境の中に放たれると食物連鎖に到達し、これにより凝縮される。PBB はいくつかの地方の魚から見つ
かっている。魚の食物摂取は、哺乳類と鳥類への移動の原因である。植物による取り込みも低下も記録されてい
ない。対照的に、PBB は動物に容易に吸収され、動物の体内では非常に分解しにくいことが分かっているが、少
量の PBB 代謝産物が見つかっている。
PBDE と同様、人間と環境の曝露は、製品の使用、PBB を含むプラスティックのリサイクル中、および処理・
埋立後に関連して起こり得る。放出はおそらく緩慢であるが、PBB はベアリング素材 PBB の減成後放たれる可能
性がある。
pentaPDE は堆積物や生物相からの環境的サンプルに広く起こる。バルト海その他の調査データは、低臭素系
PBDE の高濃縮が食物連鎖によりさらに高まっていると提唱している。
一般的に人は、主原因は食物の経路による PCB 同属のものや DDT 関連化合物のような多くの中性脂肪親和の
有機ハロゲン化合物と同様の曝露により、PBDE に曝され可能性がある。しかしながら、PBDE の気体の段階での
曝露の可能性は、さほど重要ではなく、これはこれらの合成物の蒸気圧が低いためである一方で、特定の職業環
境における PBDE を含む微粒子の吸入もまた、人間の曝露に関与し得る。食物が PBDE 曝露のその他の原因であ
るとする徴候もある。
六価クロム
六価クロムに関しては、他の目標が掲げられた重金属(鉛、カドミウム、水銀)と比較して、曝露に関する情
報が少ない。しかし、六価クロムの危険性プロファイルには、鉛、カドミウム、水銀に関連する危険性プロファ
イルよりも懸念が上がっている。そこで、六価クロムに対しても他の物質同様のリスク削減アプローチが採用さ
れるよう提唱されている。
リスクの特徴
カドミウム
世界保健機構(WTO)は、カドミウムの暫定的週間摂取許容量を体重 1kg 当り 7μg(成人 1 日当りおおよそ
70μg)設定している。毎日の平均摂取量は、10∼40μg からひどく汚染された地域の数百μg までと、かなりば
らつきがある。スカンジナビアの研究(Health effects of cadmium exposure – a review of the literature and a risk
estimate, 1998 )によれば、この曝露レベルは明かに許容され得ない。スウェーデンの研究では、1 日の平均摂
取量を 70μg とした時の影響を以下のように述べている:成人総人口の 7%と鉄分が低下している女性などハイ
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WEEE 最終提案の説明メモランダム
リスクグループの 17%にも及ぶ人々が、カドミウムによる腎臓障害に発展すると見込まれる。1 日平均摂取量が
30μg でさえ、人口の 1%とリスク下にある特殊グループの 5%に及ぶ人々が、腎管の障害を起す可能性がある。
この研究によると、出産年齢のスウェーデン女性の 10∼40%が鉄分の蓄えが全くなく(S-ferritin<12μg/l)、こ
のためリスクのある特殊グループに入っている。
鉛
1986 年、WHO は、子どもの暫定的週間摂取許容量(PTWI)を体重 1kg 当り 25μg とした。この数値を超え
て鉛を摂取した場合、これにより子どもは健康障害を引き起こすような濃縮に曝される。成人の PTWI は、胎児
を保護する目的に基づいて、1992 年に WTO によって体重 1kg あたり 50μg から 25μg(小児と同等)へと変更
された。加えて、特に子どもの場合、鉛の安全血中レベルは証明されていない。
たいていの非喫煙成人人口と年齢が上の子どもにおいて、鉛の主な摂取源は補供物であり、1 日の推定摂取量
は約 10μg である(WTO 1995 年)。デンマークでは、成人の食物から 1 日当りの平均摂取量(1988∼1992 年)
は、27μg と推定され、このうち 95%が 46μg 摂取している(LST 1995 年)。ここ 5 年間(1993∼1997 年)
で、食物からの摂取は減少してきているが(VFD 刊行されていない結果による)、これはリスク下にある特定の
グループには当てはまらない。
CSTEE は、最近の見解で、オランダの子どもの最近の血中鉛レベル測定が、1 歳から 12 歳までの子どものお
およそ 3.3%が 100μg/l の数値の超過を示していると言及している。加えて CSTEE は、血中鉛レベルが 100μg/l
以下でさえ悪影響が起こり得ることを示す、子どもの鉛の健康影響に関する疫学的データがあると述べている。
CSTEE は将来、現行の WTO 値の適切性を再調査することにしている。
水銀
WTO は、水銀の暫定的週間摂取許容量(PTWI)を体重 1kg 当り 5μg とし、メチル水銀に関しては、3.3μg
を超えてはならないとした。平均デンマーク人の、食品による水銀摂取量は、一週間当りおおよそ 55μg(体重
1kg 当り約 0.8μg)であると、デンマーク国立食品機関により推定されている。これは平均的デンマーク人がリ
スク下にないことを意味するが、妊婦にとってこの差は十分ではないと推定されている。
PBB と PBDE
高濃度の tetraBDE と pentaBDE が、カワカマス、スズキ科の食用魚、ウナギなどの淡水魚から観察されている。
スウェーデンの母乳の濃度は、1970 年から指数的に上昇している。octaBDE は、コンピュータやテレビ受信機の
ような難燃系電子機器が家屋にある屋内空気中に観察されている。octaBDE の血中濃度の上昇が、コンピュータ
を扱う職種の人々に現れている。
pentaBDEとoctaBDEのケースにおいて、
ラットとウサギの動物実験で有害な影響を起こさない最大曝露量は、
1 日当り 1∼2mg/kg である。しかし留意せねばならないのは、これらの動物実験のデータは、一生の曝露に基づ
いたものではなく、このことが人間の曝露の比較とを考慮に入れるためのさらに現実的な筋書きになる。
一般的リスクへの WEEE の貢献
1.1. 試験下での物質の EEE(電気電子機器)における現行使用
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WEEE 最終提案の説明メモランダム
カドミウム
プリント配線板における SMD チップ抵抗器、赤外線探知機、半導体のような特定の構成部品において、カド
ミウムが生じることが知られている。旧式のブラウン管は、カドミウムを含んでいる。さらにカドミウムは PVC
の安定剤として使用されている。
鉛
全鉛製品の 1.5%∼2.5%が、EEE に使用されている。この他主な利用は、電池(63%)、パイプや建築用製品
のような成形品(9%)、ガソリン添加物(2%)、色素、PVC 安定剤、その他である。EEE における主な鉛の製
品は、プリント配線板のハンダ付け、ブラウン管のガラス、電球と蛍光灯のハンダ付けとガラスを含んでいる。
パソコンブラウン管は、ガラスに約 0.4kg、テレビは約 2kg の鉛を含んでいる。これら管の中に含まれる鉛酸
化物は、WEEE における鉛の大部分を占める。ブラウン管の鉛は、ケイ酸塩基を表す。電球は、鉛・スズハンダ
において 0.3∼1g の鉛を含んでおり、ガラスには 0.5∼1g の鉛ケイ酸塩を含む(ハンダとガラス平均で 1.5g)。
スウェーデンでは、この製品が、年間約 100t の使用につながる。プリント板アセンブリーのハンダは、1 平方メ
ートル当り 50g を含む。
水銀
地球規模の人間による大気への水銀放出は、年間おおよそ 2000∼3000 トンである。世界の年間水銀消費量は
22%が EEE に使用されると推定される。水銀は基本的に、サーモスタット、センサー、リレー&スイッチ(例と
して測定機器のプリント配線板と放電ランプ)に使用される。さらに医療機器、データ送信、通信、携帯電話に
使用される。EU においては、300 トンの水銀が、位置センサーに使用されている。
PBDE と PBB
今日、臭素系難燃剤は、通常引火性保護のための手段として電気製品の中に設計されているが、このことが、こ
れらの物質を使用する主な部分である。ポリ臭化ビフェニル(PBB)とポリ臭化ディフェニルエーテル(PBDE)
は、それぞれおおよそ 1∼9%とされている。商業上入手可能な PBDE の 3 グループは、penta-(5-)、octa-(8-)、
deca-(10-)の BDE(bromodiphenylether)である。これは主に、プリント配線板や、コネクターなどの構成部
品,プラスティックカバーおよびケーブルの 4 つの製品に使用される。デンマークの見積りによると、廃棄物の全
臭素系難燃剤の約 78%が、WEEE であるとしている。
1.2 現行 WEEE 管理に関連する問題
EEE に含まれる有害物質は、おそらく、使用段階で機器の中に残り、これにより、著しい曝露は起こらないと
される。EEE に使用するこれら有害物質による環境の潜在的な汚染は、生産と廃棄段階で発生する。
生産段階における、重金属従事作業者の曝露を減少させる目的で、いくつかの保護措置が必要になってくるで
あろう。
今日、90%以上もの WEEE が、事前処理されることなく埋め立て、焼却、破砕されている。このことは、標的
の物質による環境への著しい排出を導いている。日常の家庭廃棄物として処分される小型 WEEE は、通常、直接
焼却や埋立地に運ばれる。これらの廃棄管理オプションのシェアは、加盟国間で大きく異なっている(デンマー
ク焼却 90%、埋立 10%、ギリシャ埋立 100%)。
JMC environment Update
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Vol.2 No.2 (2000.7)
WEEE 最終提案の説明メモランダム
WEEE の焼却
WEEE の焼却は、焼却炉からの総鉛排出量のほとんどを占めている。WEEE からの鉛は、焼却炉における鉛供
給の約 50%である。
焼却後、鉛の 65%がスラッグ(鉱さい)の中から見つかり、35%が残さい物から、1%が空気中から見つかっ
ている。
•
最近の研究では、EU 内での廃棄物焼却から生じる排出を、水銀年間 36 トン、カドミウム年間 16 トンの
算出と見積っている。
•
WEEE に含まれる重金属により、著しい量のスラッグが危険であると条件付けられる必要がある。結果的
にスラッグは、危険廃棄物埋立地に埋め立てられる必要がある。汚染されていないスラッグは、建設資材
として使用される可能性がある。
•
重金属の高汚染により、一般的に混合する飛散灰と残さい物は、制御化された埋立地に処分される必要が
ある。これにより環境への重金属の消散が可能になる。
近く発表の廃棄物焼却に関する指令(1999 年 11 月 25 日のコモン・ポジション 7/2000)は、大気中への様々
な汚染物質放出の著しい削減につながる厳しい排出制限値を規定している。これは、1989 年 6 月 8 日の新規自
治体廃棄焼却場からの大気汚染の防止に関する指令 89/369/EEC と、1989 年 6 月 21 日の現存する自治体廃棄焼
却場からの大気汚染の削減に関する指令 89/429/EEC に取って変わる。しかし、排出が削減されればされるほど、
残さい物を浄化する炉底灰、飛散灰、煙道ガス中の汚染物質濃度が高くなる。残さい物に残るこれら汚染物質の
存在が、廃棄物管理問題と、これらの物質に曝されるリスクを増加している環境下で汚染物質の起こり得る不調
和を作り出しているのである。最近の見解で、CSTEE は、鉛に汚染されたスラッグと炉底灰は、埋め立てが要求
され得ると言及している。このことは、遅い浸透の可能性を生み出す。インパクトは小さいようだが、持続可能
な目標の達成に影響を及ぼすことが可能である。CSTEE は、飛散灰に関する持続可能性の疑問が、取り組まれな
ければならないことを指摘している。
(小型)WEEE の焼却炉導入は、スラッグ、煙道ガス、濾塊の中の重金属を含む金属の濃度を高めるという結
果に至った66。オランダの研究67によると、オランダで産出される炉底灰のほとんど全部が(1995 年で約 60 万ト
ン)、充填剤として使用されている道路建設セクターで最終的に処理されている。環境に安全な方法で使用され
るためには、炉底灰は特定の技術要件、とりわけ浸出要件を満たす必要がある。さらに、一定の濃度の重金属を
含む炉底灰において、特に浄化され、加えて環境安全要件を満たした建設材料として使用することのみが可能で
ある。小型白モノ・茶モノ製品が他の廃棄物と一緒にもはや焼却されなくなったなら、銅、鉛、ニッケルその他
の金属の含有物は、炉底灰がオランダの浸出要件内にあるような範囲まで削減され、それにより、建設作業にお
いてリサイクルされるだろう。
臭素系難燃剤
ポリ臭化ディベンゾフラン(polybrominated dibenzofurans)とディベンゾ P ダイオキシン(dibenzo-p-dioxins)
66
67
例として、小型の WEEE は、自治体液化廃棄物焼却炉の炉底灰中の、銅の内訳の 40%の源になっている(Modelmatige analyse van integraal
verbranden van klein chemisch afval en klein wit- en bruingoed <Netherlands,1996>,TNO rapport voor VROM/DGM<Directie Afvalstoffen>
を比較せよ)。焼却炉のスラッジの中の銅の占める割合が増えることに関連した主な問題の一つに、環境責任上、二次的建設資材としてこ
れらのスラッジを再生することが困難であることがあげられる。スラッジ、煙道ガス、ろ塊、飛散灰等に含まれる重金属に関する詳細なデ
ータは、「Messung der Güter-und Stoffbilanz einer Müllverbrennungsanlage」(Wien 1994), Umweltbudeamt and MA 22 にある。
Netherlands 1996, TNO rapport voor VROM/DGM (Directie Afvalstoffen)
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WEEE 最終提案の説明メモランダム
が、特定の燃焼や熱分解条件下、PBDE と PBB から形成され得ることを示す莫大な文献が存在する。摂氏約 300
度で、ダイオキシン形成は最大限である。しかしながら、オランダの自治体廃棄焼却炉からのデータは、ダイオ
キシン形成と臭素を含む廃棄物との間に、どのような意味のある関係もないと示した。しかし、この問題を評価
するために、さらに詳しい調査が必要である。特に、ハロゲンを含む物質がダイオキシン形成にどのような影響
を与えるか、上記のしきい値を評価するためのさらに詳細な評価が実行されるべきである。加えて、臭素系難燃
剤リサイクル中のダイオキシン形成の問題が、この書類の後半で記述されている。
WEEE の埋立
WEEE に含まれる多種の異なる物質により、これらを廃棄する最中に環境に対しての悪影響が起こる。雨水に
解け込む状況や多種の化学的および自然的なプロセスの下、自治体廃棄物の処理による上記汚染物質は、浸透す
る可能性がある。WEEE が、制御されていない埋立地に埋め立てられる時、環境的な影響は著しく高まることは
言うまでもなく、これは、特定の加盟国の著しい範囲で起こっている68。
サーキットブレーカーのような特定の電子装置が壊される時、水銀の浸透は起こる。臭素系難燃剤系のプラス
ティックや、カドミウムを含むプラスティックが埋め立てられる際、ポリ臭化ディフェニルエーテル(PBDE)と
カドミウムの両方が、土中と地下水に浸透する。PBB は、蒸留水よりもろ過性質物質を持つ埋立地の方が、200
倍も溶けやすいことが分かっている。これは結果的に、環境に広範囲に渡って分布することになる。ブラウン管
の円錐形ガラスのようなガラスに含まれる破壊された鉛から、著しい量の鉛鉄が、埋立地にしばしば見られる酸
性地下水の付近で見つかっている。このため、埋立地の円錐形ガラスから出る鉛による汚染は起こり得る。WEEE
に含まれる金属水銀とディメチレン水銀の蒸発も、懸念される。この状況下で、スウェーデンでは、埋立地から
の年間トータル水銀放出が、約 9 トンに昇ると算出されている。このことは、大気への総水銀放出量の 10%以上
を示し、これにより水銀曝露を著しくしている。
指令 99/31/EC に規定されているような環境的に堅実な技術基準について、ろ過特性物質の回収や制御埋立地
の処理は完全な曝露の除去にはならないし、全ての問題解決にもつながらない。高基準の埋立地が、ろ過特性物
質の回収と底封システムで処理している。これらのケースではろ過特性物質が回収され、サイトの処理場または
自治体下水処理場へ送られる。ひどいケースでは、重金属は浄化プロセスを妨げ得るが、どのようなケースでも
最終的には下水スラッジにおさまり、少量ではあるが制御できない量が地表水におさまる。下水スラッジは、農
業用土壌で使用され(他の状況とも関連して、EC 下水スラッジ指令;1986 年 6 月 12 日理事会指令の制限値が
超過しない場合)、また埋立地や焼却炉へ運ばれることになる。埋め立てられた下水スラッジに関連して、埋立
地からの曝露が完全に除去できないために埋立地からの放出に関した同様の問題が起こることになる。
制御埋立地の管理に関連した状況とは別に、多くの埋立サイトが排出制御に関する最良の技術を得られていな
いことを強調すべきである。短・中期間では、EU 全地域のほとんどの非制御埋立立地が、完全に高基準の埋立立
地に取って代わることはないであろう。
非制御埋立地の場合、汚染されたろ過特性物質が直接土壌、地下水、地上水に到達する。非制御埋立地から生
じる上記の汚染物質を含んでいるろ過特性物質は、人間の消費のための水質に関する理事会指令 80/778/EEC に
規定される制限に基づく飲料水としての使用が不可能な範囲まで、水を汚染する可能性がある。
68
一つの例として、ギリシャの埋立て地の総数は約 5,000 である。その 70%は無管理と考えられる (廃棄物管理に関する会議 於: ギリ
シャ 1997 年 1 月 16-17 日)。 ポルトガルでは、無管理埋立て地の数は約 300 である(廃棄物管理に関する会議 於:ポルトガル 1997 年
1 月 23-24 日)。また EU 加盟就任候補国のほとんどにおいても、さらに危機的な状況であると説明されるべき。
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WEEE 最終提案の説明メモランダム
臭素系難燃剤
短期間の場合のプラスティックからの化合物浸透は小さいが、化合物は、少なくともプラスティックの品質が
落ちた状態で、遅かれ早かれプラスティックから放出されることになろう。そのために、曝露の筋書きのタイム
スケールは、100 年に及ぶ可能性がある。この長期間の曝露筋書きに関して、キーとなる疑問点は、化合物がろ
過特性物質におさまる前に品質が落ちるかどうかということである。いくつかの化合物は環境の中では分解しに
くいため、埋立地からの長期的拡散放出が起こり得る。PBB は、蒸留水よりも、ろ過性質物質を持つ埋立地の方
が、200 倍も溶けやすいことが分かっており、これが結果的に、環境に広範囲に渡って分布することになること
に留意することが重要である。
WEEE のリサイクル
重金属
大気中への危険な排出は、製鉄業や鉛銅製錬所の鉛、水銀、カドミウムのような重金属を含む WEEE のリサイ
クルから発生している。汚染された金属のスクラップは、これら重金属、特に揮発性の高い水銀とカドミウムの
排出を増加させる。このような排出を防ぐはずのろ過装置は、特に製鉄業に関しては、技術的に技能がある状態
ではない。
臭素系難燃剤
ダイオキシンもフランも、WEEE が含んでいる金属をリサイクルする結果生じている。この金属はハロゲン系
プラスティックも含んでいる。WEEE の特に臭素系難燃剤に含まれるハロゲン系物質は、プラスティックリサイ
クルの一部であるプラスティックの成形中もまた懸念される。これは、プラスティックリサイクル中に、臭素系
難燃剤、臭素系ディベンゾフラン、臭素系ディベンゾ-P-ダイオキシンが形成され得るという事実に基づいている。
様々な研究が、ダイオキシン発生のリスクは、臭素系難燃剤を含んだプラスティックリサイクルの完全な不足が
起因していると提唱している。
電子分解工場で働く職員は、対象標準グループと比較して、血清中の全 BBDE 類のレベルが著しく高いことを
示していると立証されている。スウェーデン研究の結果は、decaBDE は生物上摂取可能であり、高レベルの PBDE
への職業的曝露が電子分解工場で起こっていることを示している。このような職業上の健康問題を申し入れるた
めの特別保護措置が施行されるよう論議される可能性がある。しかし、そのような措置が効果的に労働者の曝露
を除去できそうもない。加えて、EU 全域におけるそのような措置の首尾一貫した行使は確実ではない。
代替によるリスク削減戦略
この戦略は、現在入手可能な科学的リスクアセスメントに基づき、将来的な科学進歩に基づいて再考される。
代替の選択
現行の WEEE 管理に関連する様々な健康と環境の曝露問題は、これらの廃棄物を埋立地や焼却炉から転換する
という手段により削減することが可能である。これは、WEEE の分別回収、処理および再生計画を立てることに
より達成されうる。しかし、この段階でいつ回収率が達成されるか、これは EEE の実質的な部分が上市されるこ
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とを表すが、明確ではない。一方で、特に小型 WEEE は現行の処理ルートで継続されることになる。加えて、
WEEE がたとえ分別回収されリサイクルプロセスに運ばれたとしても、重金属、PBB、PBDE などの含有物は、健
康や環境にリスクを引き起こす。それゆえ廃棄物管理段階において、最も困難とされるこれらの物質の代替が、
危険物質に関連する健康と環境へのリスクの多大な削減への最も効果的な方法である。
臭素系難燃剤の生産者は、PBB と PBDE を含むプラスティック成形に関連する健康へのリスクは、リサイクル
施設における労働者保護措置の強化により避けられうると提唱している。例として、労働者が保護マスクを着用
することが推奨されている。このような種類の措置がどのような場合でも支持される一方、EU のリサイクル施設
を通してこのような措置が厳密に適用されないことや、臭素系難燃剤に関連した悪影響の可能性を充分に削減し
除去することはできないことを示す知識や経験がある。明らかに、特定物質の代替により、懸念される労働者は
最良の保護を享受することになる。
比例原則
指定された物質の代替は、明確な肯定的環境効果を導く。多くの製造業者がすでに多くの使用において、鉛、
水銀、カドミウム、六価クロム、ハロゲン系難燃剤の使用を段階的に廃止している。これは、段階的廃止を実施
するコストが(少なくとも除外リストに含まれない製品に関しては)非常に制限されることを示している。PBB
や pentaBDE の代替を受け入れることは、これらの物質の生産者が団結した「欧州臭素系難燃剤産業委員会
(EBFRIP)」により示された。加えて、欧州電気電子産業のリーディングカンパニーが、製品に PBDE と PBB 使
用を避ける公約を宣言している一方で、1986 年初め、ドイツ化学産業協会のメンバーが、自主的に PBDE と PBB
の生産を中止した。これらの動向に沿って、欧州における PBB 最後の製造業者が、2000 年に製品に PBB を使用
するのを中止した。
業界が要求した代替問題における唯一の領域は、ハンダに含まれる鉛に関連している。ハンダに含まれる鉛の
技術的・経済的代替実行可能性は、すでに製品のハンダに含まれる鉛を代替し始めている製造業者の実践的な経
験により確認されている。そのため、鉛を含むハンダの段階的使用禁止は、道理に合ったコストで、与えられた
2008 年 1 月 1 日という枠の中で可能であるという欧州委員会の見解がある。
比例原則により、代替がまだ可能でないものや代替により環境的な利益が派生する可能性よりも、環境への否
定的な影響が起こり得る場合、目標とされた物質の製品は、代替要件から除外さるか委員会(committee)の手
順方法として除外される可能性がある。
代替
多くの製品において、他の安全なもしくはより危険でない材料に対し目標とされた危険物質は、すでに競合し
ている。これら危険物質の代替は、すでにほとんどの製品で行われている。
目標の危険物質の代替物は、危険物質よりもより危険性のない性質である。技術的な理由(製品の品質、基準、
テスト要件等)と経済的基盤(より高価なコスト)は現在、総体的な代替を妨げている。
参照
―
Evaluation of human toxicity by exposure to lead and inorganic lead compounds, a summary report, Elsa Nielsen, Institute
of Food Safety and Toxicology Danish Veterinary and Food Administration, July 1999
―
Heavy Metals, Ministry of the Environment and Energy, Denmark, no3, 1994
JMC environment Update
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WEEE 最終提案の説明メモランダム
―
Some uses of lead and their possible substitute, KEMI, 1994
―
Risk reduction, Lead, OECD, 1993
―
Risk Reduction Monograph No.4, Mercury, OECD/GD(94)98, Paris 1994
―
Environmental Consequences of Incineration and Landfilling of Waste from Electr(on)ic Equipment (Copenhagen 1995),
Nordic Council of Ministers.
― The European Atmospheric Emission Inventory of Heavy Metals and Persistent Organic Pollutants for 1990,
Umweltbundesamt, Germany, 1997.
―
Identification of Relevant industrial Sources of Dioxins and Furans in Europe, Landesumweltamt Nordrhein-Westfalen,
1997.
―
Bestimmung von polybromierten und plychlorierten Debezofioxinen und – furanen in verschiedenen umwaltrelebanten
Materialien ” U. Schacht, B. Gras und S.Sievers in Dioxin-Heidelore Fiedler containing further references on this subject.
―
Risk reduction monograph no5, CADMIUM – Background and national experience with reducing risk (OECD/GD94/97,
1994).
―
Sources of cadmium in the environment (OECD proceedings, 1996)
―
Public health implications of environmental exposure to cadmium and lead: an interview of epidemiological studies in
Belgium ( J. Staessen and others for CadmiBel and PheeCad Study Groups, 1996)
―
Market, evolution of technological progress and environmental impact of batteries and accumulators (ERM, 1997),
European Commission DGXI.
―
Market, evolution of cadmium exposure – a review of the literature and a risk estimate (Lars Järup and others – de Scan J
Work Environ Health, 1998)
―
Environmental exposure to cadmium, forearm bone density, and risk of fractures : prospective population study ( J.
Staessen and others for PheeCad Study Group, 3 April 1999)
―
Montanwerke Brixlegg – Wirkungen auf die Umwelt; Umweltbundesamet, Monographien Bd. 25, Wien, Juni 1990
―
Mechanische Aufarbeitung von elektrischen und elektronicshen Alltgeräten – Behandlungsvarianten in Gegenüberstellung
zu einer thermischen Behandlung, Salhofer et al Universität für Bodenkultur Wien, Oktober 1999.
―
Brominated Flame Retardnats – Substance Flow Analysis and Assessment of Alternatives, Danish Environmental Protection
Agency, June 1999.
―
Phase-out of PBDEs and PBBs – Report on a Governmental Commission, The Swedish National Chemicals Inspectorate,
March 1999.
― Flame Retardant Exposure: Polybrominated Diphenyl Ethers in Blood from Swedish Workers, Sjödin et al, Environmental
Health Perspectives, 1999.
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連載
欧州環境規制動向
∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報 ⑨
部修正についても合意に達し、その結果、鉛に関す
る数項目を導入し、また欧州議会の要求どおりヴィ
ンテージ車(vintage car)を指令から除外している。
さらに、合意文書によると、同指令の技術適合委員
会(the Committee on Technical Adaptation)が本項
目の見直しを行うことになっており、特に電気自動
車用バッテリーに使用されるカドミウムなど特定項
目の見直しを優先すると規定されている(重金属の
使用禁止を導入する指令の発効までの期間をこの問
題の検討に充当する可能性がある。この問題は、電
気自動車の主要メーカーである仏自動車産業にとっ
て重要性が高く、また代替製品がないことが認識さ
れている)
。
I EU
1. 閣僚理事会・欧州議会、ELV 指令で合意
ELV 指令をめぐり 2000 年 5 月 24 日、欧州議会お
よび閣僚理事会はELV の環境保護案件についての両
者の意見を合わせるための調停手続きにおいて合意
に達した。調停プロセスの二大争点は、最終所有者
から無料で引取った中古車を廃車する場合の解体お
よびリサイクルコストの大部分をいつから製造業者
に負担させるかという問題(製造者責任条項)と、
新車製造における重金属の使用禁止に関する日程で
あった。合意内容の概略は以下のとおり。
(1) 費用負担への製造者責任:2001 年 1 月 1 日以
降に販売される自動車を対象とする製造者責任
の適用開始日は、理事会の「共通の立場」のと
おりとし変更しない。本責任は指令の発効後直
ちに適用する。一方、2001 年 1 月 1 日以前に
販売された既存の自動車については 1 年延期し
て 2006 年ではなく 2007 年から適用する。しか
し、本文の追加条項に規定するように、加盟国
は実施日を自由に早めることができる(デンマ
ーク、スウエーデン、オランダは前倒しが可能
なはずである)
。
(2) 重金属の使用禁止: 合意により 2003 年 7 月 1
日以降に市場投入される自動車は、
カドミウム、
鉛、六価クロムなどの重金属を含有していては
ならないと定められた。この解決策は理事会の
「共通の立場」
(2003 年 1 月 1 日以降に市場投
入される自動車を対象に、指令の発効から 18
ヶ月後の禁止措置の発効を想定)および欧州議
会の修正案(2005 年 1 月 1 日以降に型式認定
される自動車を対象に、指令の発効から 18 ヶ
月後の禁止措置の実施を要求)とをうまくすり
合わせた結果である。歩み寄りの結果、型式認
定日ではなく市場投入日を重視し、禁止措置の
延期を防止しようとしている。
調停手続が順調に進んだことから、理事会および
欧州議会で 2 年間以上にわたり討議され(欧州委員
会の提案は 1997 年 7 月に溯る)
、大きな争点となっ
ていた問題が決着する。
ヴァルストレム(Wallström) 環境コミッショナ
ーは今回の調停結果を歓迎し、
「環境にとって好ま
しい結果である。我々は持続可能な開発を図る上で
重要な目標を達成した。これにより廃棄物管理を改
善し、環境に被害を及ぼす多くの物質が廃棄物とし
て放出されるのを防ぐことになる」とし、今回の合
意は特に欧州委員会が今後提案を予定している
WEEE 指令案および使用済み電池指令修正案など、
他に予定されている廃棄物関連法にとっても幸先の
良い結果であると発言している。
2. EU、
夏までに PVC 廃棄物関連で動きがあるとの
見通し
欧州委員会は、グリーンペーパーの中で将来予定
されているポリ塩化ビニール(PVC)法整備に向け
ての計画をこの夏までに明らかにする可能性がある。
当局筋によると、欧州委員会が PVC 廃棄物問題の検
討にあたり、業界、NGO、消費者団体、加盟国、そ
の他の利害関係者との多面的な協議を重視する決定
両者の代表者は、本条項(指令の附属書 II)の一
JMC environment Update
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欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑨
を下せば、フィードバックを求めるグリーンペーパ
ーが夏休み前に発表される可能性があるという。し
かし、欧州委員会がこの段階を飛ばして、いきなり
法律を提案する可能性もあり、その場合はさらに時
間を要するであろう。
廃棄処分を見た場合、このようなフタル酸エステル
の浸出は比較的微量である点を強調し、PVC を含有
しない廃棄物からもフタル酸エステル類が浸出して
いる点を指摘し、フタル酸エステル類の存在は PVC
だけが原因ではないことを示唆している。
昨年末までに予定されていた5件の環境影響評価
報告のうち4件がようやく発表され、PVC 焼却禁止
に関する費用/効果分析の結果を残すだけとなった
1
。
研究期間はわずか 1 年であったが、pH、温度、土
壌の構造および種類、湿度、微生物、酸素、光など
諸条件の違いがいずれも PVC の長期的分解にさま
ざまな影響を及ぼす可能性があると結論づけている。
欧州委員会はグリーンペーパーを発表せずに、直
ちに欧州 PVC 戦略を提出して協議段階を省略する
可能性もある。このようなアプローチを取った場合
には多少時間を要することから早くても秋まで公表
されることはないだろう。欧州委員会はいずれの選
択肢を取るべきか現在検討中であるが、いずれにせ
よ将来の戦略では、PVC 添加物(主としてフタル酸
エステル類、鉛、カドミウムなどの重金属)を対象
範囲に含め、また考えられる財政的手段・手法をす
べて網羅した廃棄物管理について取扱う内容となる
だろう。
法律によって PVC 廃棄物が焼却されるようにな
れば、
埋立てはやがて減少していくものと思われが、
この移行速度については欧州各国間に差が生じてい
る。オーストリア、フランス、ドイツおよびオラン
ダの法律では 2005 年までに PVC の埋立て処分を一
切行わないようにし、欧州で埋立て処分されるプラ
スチックの量を実質上約 50%削減する。また、将来
EU のゴミ埋立地に関する指令が採択・発効されれば、
PVC の焼却処理が一気に進むものと思われる。
第 2 の研究結果によると、市町村のゴミ焼却施設
での環境に配慮した方法による PVC 焼却処理にか
かる諸コストは非常に低い。PVC プラスチック焼却
に関連する主な追加コストは、石灰、炭酸水素塩、
水酸化ナトリウムなどアルカリ物質を使用して、酸
性の塩化水素(HCl)の生成を法定限度の 10mg/m3
以下におさえるための厳格なガス処理工程である。
発表された4件の独立研究ではPVC廃棄物に焦点
が当てられた。PVC 廃棄物の埋立て処分が環境に与
える影響、化学的リサイクルおよび機械的リサイク
ルのそれぞれについての見通し、市町村固形廃棄物
焼却施設(MSWI)における PVC 焼却関連特別コス
トの分析結果が研究論文にまとめられた。
焼却により、PVC は固形廃棄物残さ∼通常カルシ
ウム、ナトリウムまたはカリウム塩∼に含まれる塩
素を約 2 倍増加させる。埋立処理の前に残さを安定
化させることもあるが、もっとも厳しい HCl 基準を
適用し生成される残さに含まれる塩素がもっとも多
くなる場合でも、やはりこのプロセスにかかるコス
トも非常に低い。
4 件のうち一番目の研究結果によると、ゴミ埋立
て地からフタル酸エステル類は浸出していない。同
研究では埋立て第一段階はこれらの物質が完全に生
物分解するほど長くないのかもしれないが、条件が
整えば容易に起こることであるとしている。特にジ
フタル酸エステル類(DEHP: 2 エチルヒキシルフタ
レート)がゴミ埋立て地から浸出していることが確
認されている。
焼却は、まず HCl 中和プロセスにより埋立処分残
さから浸出する PVC 量を 4.3%∼19%ほど増大させ
る場合がある。PVC 焼却による廃棄物はすべて有害
物質として分類されるため最善の注意をはらって取
扱われるので、環境への脅威がそれ以上増大するこ
とはないと示唆している。
PVC を焼却処理した場合、
埋立処分される PVC 廃棄物から浸出する重金属が
有意に増大することはないようである。
ゴミ埋立て地のライニングおよび浸出防止用に
使用されているプラスチック性シートの寿命は 80
年であり、PVC からの浸出防止を保証するには短す
ぎると警告している。また、このプラスチックは管
理されずに投棄されることが多く、浸出した物質が
直接下水道に流込む点も懸念している。
第 3 の研究結果によると、PCV のリサイクルは強
力な経済的または法律的支援がなければ将来重要な
廃棄物ルートにはならないという。化学物質(また
は供給材料)のリサイクルは、セメント炉焼却また
しかしながら、PVC ライフサイクルの一部として
1
これら文書は環境総局ウェッブサイトを参照。
http://europa.eu.int/comm/environment/pubs/studieshtm
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欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑨
は機械的リサイクルのように広く普及し、資金的に
実行可能な技術に比べて十分に大きな環境メリット
があるわけではないので、自然な発展にはいたらな
い。化学的リサイクルの場合 PVC を化学成分に分解
してから再利用する。このプロセスは、法律でリサ
イクル目標を定めないかぎり主流になる可能性はな
い。せいぜいパッケージ廃棄物に使用される程度で
あろう。化学的リサイクルに関する研究では、技術
よりむしろ法的および経済的枠組みが化学的リサイ
クル発展の障害であると強調している。
体は、これらの研究結果は不完全または不適切な情
報に大きく依拠するものであると主張している。例
えば研究者は、市町村廃棄物と建築廃棄物を区別し
ていないので、ゴミ埋立て地の重金属量が業界の
3%に対して 28%と高めに推定されているし、PVC
がゴミ埋立て地に与える長期的影響を調査する十分
な時間がなかったため、結果が歪曲されているとも
主張している。
業界代表は、最近の欧州委員会との協議の中で
2005 年までに企業が回収する古い PVC パイプおよ
び窓枠について 50%リサイクリングを達成すると
いう自主目標の設定を提案した。欧州委員会筋によ
ると、業界提案を正式に評価する機会がもてなかっ
たことを強調しながらも、EU 執行部が独自の PVC
戦略を提案する前に性急な公約をするつもりはない
と付言した。
第 4 の研究結果によると、機械的リサイクルにも
高コストという課題があり、2020 年までに PVC 廃
棄物管理ルートの 18%を上回ることはないだろう
という。リサイクルをオプションとして重視するの
であれば、助成制度あるいは目標値設定などの支援
が必要である。特に PVC リサイクルをというより
PVC 回収を推進する法律の方が普通であることを明
らかにしている。つまり一般的でない機械的リサイ
クルではなく、エネルギー回収を PVC 処分に利用す
ることの方が多い。一般的に他の物質と混在する
PVC は少量にすぎないので、PVC と他の廃棄物との
分別は大きな資金的制約となる。
3. 欧州議会、医療機器へのフタル酸エステル使用禁
止の適用拡大を EU に提案予定
欧州議会は、3 歳未満の乳児が口に入れる商品へ
のフタル酸エステル類使用禁止を医療機器にも適用
拡大するよう EU に強く求めるものと思われる。環
境委員会において現行の一時的禁止措置を恒久化す
る指令案について議論した結果、血液バッグおよび
チューブなどの医療機器にも禁止措置の適用を求め
る声が一部にあることが明らかになった。ソフト
PVC 医療機器には可塑剤の DEHP が含有されている
が、玩具にはジイソノニルフタル酸エステル(DINP)
が使用されている。
埋立処分または焼却処分に対する課税制度は、費
用対効果という視点からリサイクルに有利となる可
能性がある。新法によってゴミ埋立て地および廃棄
物焼却施設における PVC 処理が厳しく管理されれ
ば、
少なくともリサイクルの競争力が若干高まるが、
さらに一段の財政的優遇措置が必要である。
環境という視点では、PVC を低グレード原料にリ
サイクルする低品質プロセス(通常、断熱材または
パッケージ廃棄物を利用)ではなく、PVC を同じ用
途に再利用する大量リサイクルが実際に実施されて
初めて利点が生じる。リサイクルが拡大、発展する
可能性のある主な領域として建築廃棄物があげられ
ている。この領域では機械的リサイクルの可能性が
高いが、その利用は限界にまできている。低品質リ
サイクルは増大するが実質的な環境へのメリットは
ない。長期的には、PVC 廃棄物の全体の流れにおけ
る増大、特に消費後の流れにおける増大は小規模な
ものにとどまるであろう。
オランダの環境派のルー(Alexander de Roo)欧
州議会議員(MEP)は、4 月 17 日の討議で、フタル
酸エステル類は体内に使用される医療機器の方が濃
度は高いと主張した。環境派は医療機器を対象範囲
に入れた修正案を提出すると思われるが、それには
他の党の支持を取付ける必要がある。玩具に関する
禁止措置を正当化する適切な科学的根拠に欠けると
いうのが欧州議会議員の大方の見方であるため、支
持が得られるかどうかはまだ分からない。
ホワイトヘッド氏(Phillip Whitehead,英国)は、
討議の中でフタル酸エステル類使用禁止措置の科学
的根拠が十分でないとしたら欧州委員会は決定的な
科学的証明がなされる前に行動をとる必要があり、
より純粋な意味で健康および環境にかかわる問題が
将来発生した場合に効果的に対応できなくなると警
告している。ボウイズ氏(John Bowis,英国)も科学
的根拠が全く欠けるような「フタル酸エステル類の
一方、
欧州 PVC 製造業者はこの 4 件の研究には重
大な欠陥があり、プラスチックが環境に及ぼす影響
を誤って伝えるものであると主張している。
欧州ビニール製造業者協議会(the European
Council for Vinyl Manufacturers)および他の業界団
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欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑨
コルティネス氏(Cristina Gutiérrez-Cortines,スペイ
ン)もロビー団体の要求に屈し、クエン酸塩やアジ
ピン酸塩など代替物質のリスクを適切に調査するこ
となく禁止措置を急いだとして欧州委員会を非難し
た。
欧州委員会筋は、
禁止措置は過剰反応ではなく、
適切な溶出測定技術が開発されるまでの間、唯一考
えられる法的措置であるとして、自らの立場を弁明
している。
先例」に反対する発言をしている。
ジャクソン(Caroline Jackson)委員長(英国)は、
提案されている(恒久的)禁止措置は「実質的に事前
警告原則(precautionary principle)の初の適用事例」
であると発言している。欧州議会の立場は、将来の
環境法制定上の重要な概念を実質的に解釈した初の
事例として認識される可能性があると強調した。
欧州議会における同提案のラポルトゥール(報告
者)であるアービドソン氏(Peter Ame Arvidsson,
スウエーデン)は、口に入れる玩具に限らず指令案
の範囲を 3 歳未満の乳児を対象とするすべての玩具
に拡大する修正案を提出する予定である。同提案に
よると、口に入れる玩具および育児用品(ラベル表
示またはおしゃぶりなど製品の種類による)のみフ
タル酸エステル含有率を 0.1%に制限する。つまり
実質的な禁止措置である。その他の玩具については
口に入れてはならないという注意をラベル表示する
だけでよい。アービドソン氏は修正案に添えた説明
の中でこの年齢の子供は2種類の玩具を区別できな
いと主張している。
4. 欧州委員会、新エネルギー効率化提案
欧州委員会は 2000 年 4 月 28 日、各セクターに
おける新自主協定などを内容とするエネルギー効率
化計画を提案した。同計画は 2012 年までに 1990
年の水準から 8%温暖化ガスを削減するという京都
議定書に定められた目標を EU が達成するための支
援策である。
エネルギー効率化行動計画では鉄鋼、製紙、セメ
ント、繊維業界に対して、自動車メーカーが二酸化
炭素排出および自動車に関して最近締結したような
新自主協定の締結を呼びかけている。
しかしながら、欧州委員会環境総局ではここ数ヶ
月間、自主協定の法的根拠として規制という枠組み
を構築する必要があると論じている。欧州議会環境
委員会は自主協定に関してはほとんど発言権がない
ので主な委員は同じように法的枠組みの制定を求め
ている。
ラベル表示自体は「禁止措置と同等」である。環
境推進派も欧州議会議員も、フタル酸エステル含有
玩具製造は投資する時間とエネルギーの大きさから、
業界にとって実際的なオプションでないことを認め
ている。範囲の拡大とラベル表示要件の削除を同時
に実施することで、アービドソン氏はより実質的で
実現可能性の高い指令案の提示を目指している。
エネルギー効率化行動計画提案に概要が示され
たいくつかの他の対策は以下のとおり。
・ 家電製品、業務用機器などエンドユーザー機器へ
のラベル表示による消費者情報の改善
・ コジェネレーションおよびエネルギーサービス
推進を目的とする業界との長期協定と EU 行動計
画との調整
・ 絶縁規格およびボイラー検査に関する高効率エ
ネルギー認証に関する指令 93/76/EEC の修正
・ EU 全域エネルギー監査制度導入
・ モニターおよび評価の改善
ラポルトゥールのアービドソン氏は4年後に科学
的検討を実施するという提案に対して、検討を採択
後 2 年後に前倒しするよう呼びかけている。また香
りのよさによって子供は玩具を口に入れやすくなり、
フタル酸エステルを摂取する可能性が高まるとして、
フタル酸エステル含有ソフト PVC に使用される芳
香剤を禁止する修正案も提出している。
欧州議会議員はラベル表示か禁止措置かをめぐ
り対立している。ホワイトヘッド氏は過剰反応を戒
めながらも、ラベル表示には正当性があると考えて
いる。ボウ氏(David Bowe,英国)は禁止措置が「現
段階では賢明」として、長期的にはソフト PVC 玩具
離れの方向を支持し禁止措置を歓迎している。
エネルギー効率化計画は、長期懸案事項として徹
底的に議論された欧州委員会の指令提案の前日に発
表された。同指令案は 2010 年までに EU における再
生可能エネルギー資源の利用を倍増する新目標を明
示するよう求めている。目標の法的拘束力を求める
加盟国および環境団体もある。
これは「欧州委員会は何をもって科学的根拠に基
づくリスクがあると確信し、またリスクのない代替
案があると確信しているのか」と疑問をつきつけて
きたボウ氏の禁止措置反対の立場とは対照的である。
JMC environment Update
また、エネルギー効率の改善を求める新しい米
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欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑨
EU 間の対話(trans-Atlantic initiative)に先行して発
表されている。
大企業でなければ欧州標準の起草作業にかかる際限
のない会合にスタッフを提供し報酬を支払うことは
できない。
一方、再生可能エネルギーをめぐる論議の別の側
面として、再生エネルギー業界への国の補助金を 5
年以内に廃止する提案が予定されていることから、
モンティ(Monti)競争担当コミッショナーが環境団
体の非難を浴びている。国の補助金の規則に関する
モンティ提案は今後数ヶ月のうちに発表される予定
である。
CEN および CENELEC をアメリカ規格協会(ANSI:
American National Standards Institute)の欧州版と
単純に見なすことはできない。
ANSI 基準は法律とし
て採択される場合もあるが、それに先立ち環境保護
庁(the Environmental Protection Agency)や食品医
薬品局(Food and Drug Administration)など米国政
府機関が当該基準を法案化し、官報に掲載して通知
したり意見を求める。
5.欧州環境ビューロー、欧州標準化プロセスから
撤退
欧 州 環 境 ビ ュ ー ロ ー ( EEB: the European
Environmental Bureau)および環境 NGO 協会(the
Association of Environmental NGO’s)は、欧州にお
ける標準策定は環境に対するリップサービスにすぎ
ないとして欧州標準化プロセスから撤退した。
一方、欧州標準案はインターネットで公開される
こともなく、標準化プロセスの関係者以外ほとんど
入手できない。ジャーナリストがコピーを入手する
場合があるが、その場合も CEN/CENLEC の正式ル
ートではなく当然ながら漏洩情報である。
標準が採択された場合でも、欧州委員会は官報に
委員会関連の参照事項を発表するだけで、原文をす
べて掲載することはない。新指令を遵守しなければ
ならない企業にとって重要性があるとして、文書を
希望する場合は、CEN/CENELEC の会員‐EU および
欧州経済地域(EEA: European Economic Area)諸国
の国家規格機関‐から購入しなければならない。英
国法を政府刊行物出版局から購入する場合のように
文書の複製にかかる実質コストだけではないので価
格も高い。
EEB は、
CEN 環境戦略諮問委員会
(SABE: Strategic
Advisory Board on Environment)に関与していた。
同委員会は標準化プロセスのグリーン化を目指して
昨年環境援助部(EHD: Environmental Help Desk)
とともに設立されたブラッセルに本拠をおく標準化
機関である。しかし EEB は、CEN の改革は「満足で
きるものではない」とし、また環境援助部の指令は
「制約が強すぎて効果的ではない」と言う。さらに
業界代表はヘルプデスクの助言は CEN 内部で公表
されていないとまで主張している。EEB は SABE と
いう機関が標準設定にほとんど影響力をもっていな
いこと、また先般のいくつかの業界団体を受入れて
の拡大は環境 NGO(非政府組織)が主流からはずれ
たことを意味するものであるという。
6.欧州委員会、PCB 指令の適切な実施について 14
加盟国に対して法的措置を開始
欧州委員会は 2000 年 4 月 14 日、EU 加盟 14 ヶ
国に対してポリ塩化ビフェニールおよびポリ塩化テ
ルフェニールの処分に関する指令 96/95 の特定条項
に違反した疑いがあるとして法的措置を取った2。欧
州委員会によると、
フィンランドを除くすべての EU
加盟国が「PCB の取扱いと処分に関する十分な情報
を委員会に提出していない」という。
EEB が CEN から撤退した主な理由は、欧州委員
会が環境団体 ― EEB の他に WWF および地球の
友(Friends of the Earth)― に対して環境専門ビ
ューロー(Environmental Technical Bureau)設立資
金の提供を拒否しつづけてきたことである。同ビュ
ーローは標準化プロセスに直接関与するために必要
な専門的組織を構築する上で必要な存在であると
EEB はいう。欧州議会の支持を得た3つの環境ロビ
ー団体は、1995 年以来資金を要求しており、労働組
合および消費者団体のように委員会の資金提供によ
るビューローの設立を目指している。
加盟国に宛てた欧州委員会の警告書は、委員会が
加盟国を欧州司法裁判所に提訴するにあたり踏みだ
した 3 段階プロセスの第 1 段階である。PCB に関す
る必要情報の提出期限は 1999 年 9 月であった。
14 の加盟国は PCB 指令が要求する以下の措置を
取らなかった。
EEB によると、標準化プロセスは名目上オープン
であるが、実質的にはこのような法制化手段は欧州
でのプレゼンスが大きい大企業の領分であるという。
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2
62
1996 年 9 月 16 日付指令 96/59/EC
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欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑨
・ 1999 年 9 月 16 日を期限として、PCB 含有量が
敷居値を超える機器の一覧作成
・ 一覧に掲げる機器と含有 PCB の無害化および
(または)処分に関する計画の作成
・ PCB 含有量が敷居値を越える機器リストに掲載
されなかった機器の回収およびその後の処分に
関する概要の作成
8.欧州委員会、欧州環境庁(EEA)への 13 カ国新
規加盟交渉を開始
2000 年 3 月 27 日に、欧州委員会は欧州環境庁へ
の 13 カ国加盟承認交渉を開始した。
ベルトラン(Domingo Jiménez Beltrán)専務理事
によると、EEA は早ければ 2001 年までにこれらの
国々の加盟承認を開始したいとしている5。また 12
カ国については現在 EU 加盟交渉中である。EEA は
EU 加盟申請国をEU 機関に受入れる初めてのケース
になると述べている。
7.欧州環境庁報告書、運輸・エネルギー政策への
環境統合は失敗の公算を発表
欧州環境庁(the European Environment Agency)
は 2000 年 5 月 3 日に刊行された新報告書の中で3、
環境優先政策をEU運輸・エネルギー政策に統合しよ
うとする試みは失敗するとして拒否した。
すべての国の加盟が承認されれば、EEA 加盟国は
現在の 18 カ国から 31 カ国へと飛躍的に増加する。
現在の EU 加盟 15 カ国に加えて、アイスランド、ノ
ルウエイ、
リヒテンシュタインがEEA加盟国である。
スイスも加盟申請の意思を明らかにしている。
欧州委員会および欧州議会に提出された新報告
書によると、1998 年英国サミットで EU 指導者が承
認した正式目標である環境統合に関して、
指標は
「運
輸・エネルギー業界における目標かい離現象」
を示し
ている。
コペンハーゲンに本拠をおく EEA は、モニター結
果の収集・配布、各種 EU 環境実態レポートの作成
などEU環境情報の提供母体である。
職員は約70 名、
2000 年度予算総額は 830 万ユーロ
(8 億 4660 万円)
である。
EU が 2012 年までに 1990 年水準より 8%温暖化
ガスを削減するという京都議定書に定められた目標
から後退していることを再度確認し、
「大半の EEA
加盟国4において 1990 年以降温暖化ガス排出総量は
上昇しているし、1990 年から 2010 年までに EU で
6%上昇する見込みである。京都議定書に定められ
た目標を達成するにはオーストリア、ベルギー、デ
ンマーク、フィンランド、ドイツ、イタリアおよび
オランダで 10%以上の排出削減が必要である」
。
欧州委員会は、EEA 加盟に関する二国間交渉の終
了予定を 6 月、拘束力を有する EEA 加盟承認協定の
締結予定は 2000 年末と定めており、つまり 2001
年初頭には最初の加盟国が誕生する。加盟準備の状
況に応じて一度に一カ国ずつ加盟することになる。
主な要件は EEA 加盟国としての会費支払能力で
ある。いわゆる PHARE プログラム筋によると、加
盟国の資金負担責任を補完する 3 年間の EU 支援プ
ログラムが設立されているという。EEA 加盟国とな
った初年度は会費の 70%を EU が補助する。2 年目
および 3 年目は各国の自己負担割合の増大が期待さ
れている。EU 中欧・東欧支援プログラムである
PHARE がこの加盟補助制度の資金源となる。
また、EU 加盟国の GDP は 1985∼1997 年の間に
34%増加し、エネルギー効率の年間改善率 1.4%を
大きく凌駕しているという。その結果、同期間にお
けるエネルギー供給が全体で 13%増大した。
運輸分野では「技術の発展による環境へのメリッ
トが、交通量、特に道路交通と航空交通の急速な伸
びによって相殺されている」
という。
「道路交通の効
率(すなわち、1 トンまたは 1 キロメートルあたり
のエネルギー使用量)は過去 30 年間改善が見られ
ない」
。また、
「運輸成長と経済成長のリンクを断切
り、運輸効率を改善し、各種運輸形態のバランスを
図るには、需要管理政策が必要である」という。
3
4
9. 環境コミッショナー、事前警告原則白書の不備
を指摘する米国の主張を拒否
ヴァルストレム環境コミッショナーは 2000 年 3
月30 日の記者会見で、
事前警告原則の白書に関し、
用語の定義がないなどとする米国の欧州委員会批判
を強く退けた。
報告書のコピーはEEA のウェッブサイト
http://www.eea.eu.int を参照。
EEA 加盟国とは、EU 構成 15 カ国とアイスランド、ノルウエ
イ、リヒテンシュタインである。
JMC environment Update
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63
ブルガリア、キプロス、チェコ共和国、エストニア、ハンガ
リー、ラトビア、リトアニア、マルタ、ポーランド、ルーマ
ニア、スロバキアおよびスロベニア
Vol.2 No.2 (2000.7)
欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑨
「実際欧州委員会は事前警告原則提案を定義し
ようとしていない」と米国農務省(the Department
of Agriculture)および食品医薬品局(FDA)は 2000
「欧州委員会
年3月22日付文書の中で述べている6。
の声明によると定義の欠如は法的曖昧さを生じさせ
るものではない、定義は司法府および立法府によっ
て時間をかけて形成されていくものである」と指摘
し、
「しかしながら条件および実際の適用について
明瞭性に欠けるため、欧州委員会の事前警告原則提
案については、特に海外の財とサービスに不利な適
用がなされるのではないかという懸念が払拭されな
い」と述べた。
境問題についても事前警告原則に言及している。
10. フォード、自動車エコラベル表示を開始
フォード社は 2000 年 5 月 10 日ブラッセルで、
初の自動車エコラベル表示を正式に開始した。
「フ
ォード社は環境リーダーシップを発揮するとともに
顧客志向を強化する」とシール(Nick Scheele)欧
州フォード会長は述べ、同社の「最新グリーンモデ
ル」を引き立てる緑色の葉の形をしたロゴを公開し
た。式典は欧州委員会、欧州議会および NGO の代
表者列席のもとで執り行われた。
同コミッショナーは米国側の批判に対して「通知
文書の中に事前警告原則の定義がある」と応じてい
る。
その内容を問われて、
「それは適用される事例に
よる…我々は適用にあたって差別的または不相応な
内容であってはならないと述べている」と回答して
いる。また米国は「過去において事前警告原則を使
用したことがある」とも述べている。
フォード社によると、このエコラベル表示計画
は確かな安全性、高い燃料効率、低レベルの汚染排
ガス、高いリサイクル率をめざす同社の決意を反映
するものであるという。ラベルには、自動車の種類
に関する情報(車種、モデル、エンジン排気量、ト
ランスミッション)の他に、自動安全装置(同乗者
および歩行者)に関する NCAP 評価、自動車のリサ
イクル可能性が表示される。最後にフォードエコラ
ベル表示のついた自動車は、ISO14001 認証工場で
製造/組立てが行われなければならない。
また、前述の米国機関は、事前警告原則は 1992
年にリオデジャネイロで開催された国連環境開発会
議(UNCED)アジェンダ 21、世界貿易機関(WTO)
衛生および植物衛生条約、国連生物多様性枠組み条
約など各種の国際協定にも「示されている」とする
欧州委員会の白書の記述は誤りであると主張してい
る。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
II.ドイツ
欧州委員会食品安全問題担当スポークスマンの
グミンダー氏(Beate Gminder)は「事前警告原則
は生物多様性条約の中で言及されている。また SPS
条約第 7 条第 5 項の中でも明示的ではないが暗示的
に言及されている」と応じた。さらに「我々は米国
の対応を歓迎する。この問題に関する建設的な対話
に発展するものと思う」と述べた。また最近 EU 加
盟国代表は食品安全問題をカバーするために事前警
告原則をアムステルダム条約に盛り込む希望を表明
したとのことである。
1. 気候変動防止対策に関する国家戦略案を発表
環境省(the Environment Ministry)が 2000 年 4
月 12 日に発表した「気候変動対策に関する国家戦
略案」によると、ドイツは温暖化ガス削減のための
国際的義務を果たすために、航空機の速度制限、追
加課税、さらに各種対策の中でも特に改良措置に対
する助成制度を検討している。
トリティン環境大臣(Juergen Trittin)は 2000 年
4 月 19 日の記者会見で、交通、工業およびエネルギ
ー生産において、エネルギー効率改善および排ガス
削減を目的とする対策が 30 種類以上提案されてい
るが、これらは最終的なものではないと示唆し、各
提案が拒絶された場合には、
2005 年までに二酸化炭
素を現在の水準から総量で 1 億トン削減するための
代替的解決策を見出さなければならないと発言した。
事前警告原則問題は EU および米国間の大きな論
争となっている。特にこのことは EU 側が継続して
いる米国産ホルモン処理牛肉輸入禁止措置の根拠に
なっているからである。但し、WTO は EU の禁止措
置に十分な科学的根拠はないとの判断を示している。
EU はその他の食品安全および気候変動などの環
6
環境省は 2005 年までに一般家庭のエネルギー消
費量を削減し、二酸化炭素の排出量を現水準から
2500 万∼3000 万トン削減するために、建築基準の
この US ペーパーは FDA のホームページを参照。
http://www.fsis.usda.gov
JMC environment Update
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Vol.2 No.2 (2000.7)
欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑨
強化と古い建築物の近代化に対する税控除導入を検
討している。その他の措置は、啓蒙活動、家電製品
のエネルギー効率に関するラベル表示、家電製品の
待機電力削減を推進する電子機器業界との合意など
である。
レーションの電力供給寄与率倍増をめざす同国にと
って追い風となる。
交通分野では、公共交通機関、エネルギー効率の
良い自動車への投資など多数の措置の他に、速度制
限および課税措置の導入によって、2005 年までにさ
らに 2000 トンの削減余地があるという。
この新法により、電力供給ネットワーク事業者は
コジェネレーション電力を受入れ、1 キロワット時
(kWh)
あたり 9 ペニッヒの支払を義務づけられる。
これは、約 3∼6 ペニッヒという従来の電力の通常
生産価格を著しく上回る金額である。還付の対象と
なるのは設備容量の少なくとも 4 分の 1 をコジェネ
レーションでまかなう電力供給会社だけである。
さらに、工業およびエネルギー生産分野について
は、それぞれ少なくとも 2000 万トンの削減を実現
するために最も有力な方法は、熱と電力の同時生産
である。その他に提案されている措置は、再生可能
エネルギー源および工場におけるエネルギー使用分
析に対する資金的支援などである。
また、法は環境には優しいが割高のコジェネレー
ションに投資し、現在、エネルギー市場の自由化に
伴う電力料金の低下に苦しむ小規模市営電力会社
(Stadtwerke)を保護する目的がある。昨年の秋に
は、何千人もの市営電力会社職員が失業防止対策と
して助成金を求める街頭デモを実施した。
同戦略案は今年の夏に最終決定される予定であ
るが、1999 年 10 月に開催された第5回国連気候変
動枠組条約締約国会議(COP5)でシュレーダー首相
が発表したものである。首相は 2005 年までに二酸
化炭素の排出量を 1990 年の水準から 25%削減する
というドイツの目標を繰り返し強調した。また京都
議定書に定められた 6 種類の温暖化ガスについて、
同議定書における EU の責任の一環として、2008∼
2012 年の期間を目処に 1990 年の水準から 21%削
減することを公約した。
還付金の総額は年間約 10 億マルクとなるが、ネ
ットワークを運営する大手電力供給会社は消費者へ
の上乗せが認められている。すなわち法により電力
消費コストは1kWh あたり0.2∼0.3 ペニッヒほど増
大することになる。工業用コジェネレーションプラ
ントは還付の対象外である。
2010 年の目標達成に向けての第二の取組みとし
て、ドイツの緑の党および社会民主党による連立与
党はコジェネレーション長期利用を確保するための
新たな法案の年内成立をめざしている。緑の党は、
今回は工業用プラントも含めて各電力供給業者のエ
ネルギーミックスに占める固定割合を確定するよう
提案している。電力会社に新規制を満たせるだけの
柔軟性を与えるために、ライセンス取引制度の設立
が計画されている。これはエネルギーミックスに占
めるコジェネレーションの割合が基準を超える電力
会社については、プラント設備を拡大する余力のな
い電力会社に余剰分をライセンスとして販売できる
という制度である。しかし同案をめぐり依然として
議会と経済相の意見が対立している。
環境省は、ドイツが 2005 年という期限を守れる
かどうか深刻に懸念する調査結果がいくつかでてい
ることから、
戦略案の中でこれらの目標の達成は
「容
易ではない」との見解を示している。1999 年末まで
にエネルギー使用による二酸化炭素排出量は、1990
年の約 10 億 3000 万トンという数字から 15.6%ま
で削減されている。6 種類の温暖化ガスは 1990 年
の数字を 18.6%下回るところまで削減されている。
2005 年までに 25%という削減目標を達成するため
には、さらに約 9500 万トンの二酸化炭素を削減す
る必要がある。工業分野の二酸化炭素排出量は 31%、
エネルギー生産分野は 16.1%削減されているが、一
般家庭の排出量は 6%、交通分野は 11%増加してい
る。
コジェネレーションは、環境に優しいエネルギー
源と認識され、政府は気候変動防止のための自国目
標を達成するにはコジェネレーションの拡大が必要
であると確信している。コジェネレーションの導入
により、電力生産過程から発生する廃熱は通常地域
暖房にも利用できる。従来のプラントの一次エネル
ギー使用効率は約 30、40%程度であるが、コジェネ
レーションの導入により 80%以上の効率改善がは
かられる。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
2.政府、コジェネレーション採用電力会社に緊急
救済措置を提供
政府は 2000 年 3 月 24 日、コジェネレーション
を採用する小規模電力供給会社に対する緊急救済措
置を成立させた。同措置は、2010 年までにコジェネ
JMC environment Update
65
Vol.2 No.2 (2000.7)
欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑨
III. 英国
びガソリンスタンドの所有者が汚染対策として自発
的な措置を講じたかによって変わる。
1. 新ガイドライン、汚染された土地の浄化を求め
る強制力を当局に付与
環境庁(U.K. Environmental Agency)および地方
自治体は、企業が汚染の責任者であるかどうかにか
かわらず、企業の占拠する土地が汚染されている場
合にはその浄化を企業に求める強制力を新たに獲得
した。
かかる事例が発生した場合には、地方自治体が
「しかるべき補修復帰実施責任者
(単数または複数)
を確定し、執行当局は、個別の事例ごとに必要な補
修復帰を決定し、実施責任者との協定によるか、ま
たは必要に応じて(緊急性を要しない場合には)補
修復帰通知を送付し協議した後にその実施を徹底さ
せるものとする。
」
この権限拡大は 2000 年 4 月 1 日に発効するが、
2000 年の汚染された土地(英国)に関する規制委任
立法集 227 号、および 1995 年の環境法(開始番号
16 号および留保規定)
(英国)にもとづく 2000 年
の規則委任立法集 340 号の下に、2000 年 3 月 20 日
に公布された法定ガイドラインによるものである7。
政府が浄化作業を命じた場合の上訴手続につい
ても規定している。
2.協議文書、IPPC 準拠に新たな許可取得要件を導
入
2000 年 4 月 28 日に発行された EU 統合的汚染防
止管理指令(IPPC: the European Union’s Integrated
Pollution Prevention and Control Directive)の実施に
関する第 5 次協議文書によると9、政府の新汚染管理
防止規制の導入に伴い、産業界はその設備に関する
汚染管理許可を新たに取得しなければならない。業
界 は 現 行 の 統 合 的 汚 染 管 理 ( IPC: Integrated
Pollution Control)に関する許可制度を修正して新
IPPC 許可制度に移行するよう要請しているのに対
し、英国政府はこれを反対している。
このガイドラインは、地方自治体および環境庁に
対して汚染された土地の特定と浄化の徹底を義務づ
けている。責任者を規定しており、まず、汚染の原
因となった個人または企業が浄化を実施し費用を負
担しなければならないと定めている。但し、政府が
汚染の原因となった責任者を決定できない場合には、
汚染源であるかどうかに関わらず浄化責任は土地の
所有者にあるとされる。
2000 年 3 月 20 日には、ミーチャー(Michael
Meacher)環境大臣署名の文書が送付され、英国の
大手企業すべての会長および経営責任者宛てに、企
業は自らが所有する土地の汚染に対する責任を担わ
なければならないと通知された8。汚染された土地に
対する責任が発生する可能性のある企業は、規制当
局の立ち入りを待つのではなく、かかる用地の特定
および浄化に関する戦略を策定するよう呼びかけて
いる。
2000 年英国汚染防止・管理(PPC)規則が本格的
に導入されると、1990 年の環境保護法の第一部で取
扱っている現行の国内汚染管理、すなわち IPC およ
び国内大気汚染管理(LAPC: Local Air Pollution
Control)は無効となる。それらは、IPPC 指令を国内
法に置換することになり、産業汚染全般を管理する
規制の枠組みが確立される。
同規則が取扱う範囲は以下のとおり。
・ 事業体の設備変更申請の取扱い
・ 許可の再検討の頻度
・ 標準申請書式の使用および標準許可条件の適
用
・ IPPC 指令による用地浄化要件の取扱い
・ IPPC 指令によるエネルギー使用効率要件の
取扱い
・ 協議文書の規制影響評価によって、現在は
IPC の規制対象であるが、IPPC 指令の規制対
象にはならない設備の取扱い
ガイドラインでは新たな義務を詳述する他に必
要となる補修復帰作業とその費用に関する具体例を
あげている。
例えば、
ガソリンスタンドの所有者が、
地下の貯蔵タンクの油漏れにより近隣の水道用井戸
を汚染した場合には、12,000∼100 万ポンド(192
万∼1 億 6000 万円)の浄化費用を負担しなければ
ならないとしている。正確な数字は汚染の程度およ
7 (英国)汚染された土地の規制と法令ガイダンスに関しては
http://www.environment.detr.gov.uk/cntaminated/land/ria/index
.htm を参照。
8
9
DETR に関するウエッブサイトは http: //
www.environment.detr.gov.uk/cntaminated/land/index.htm
JMC environment Update
協 議 文 書 は 、 DETR の サ イ ト を 参 照 せ よ 。 http:
www.environment/detr.gov.uk/consult/ippc5/index.htm
66
Vol.2 No.2 (2000.7)
欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑨
規定もいくつかある。
汚染防止管理規則案の改定版に関する最終協議文
書である第 5 次協議文書は、今年後半に議会に上程
される最終的 IPPC 規制となるが、
「現行 IPC 認可制
度を PPC 許可制度に移行させる方法では、新体制の
明確な出発点を示せない。例えば、同じ PPC 設備で
実施される異なる作業に関する IPC 認可が複数存在
するような状況が発生する可能性がある。政府とし
ては、包括的な PPC 許可制度を導入し、体制をスタ
ートさせる方が明確であると考える」
と述べている。
VCM、二塩化エチレン、二酸化炭素、オゾン層枯
渇物資の排出および偶然による放出について規制し
ており、局地的環境影響を徹底的にモニターするこ
とになっている。今後は処分のためゴミ埋立て施設
に移動させられた廃棄物に含まれるダイオキシンの
量を(PVC1 トン当たりで)定量化し、2002 年まで
に、準拠の証明として国際環境管理システム規格
ISO14001 認証を取得する必要がある10。
環 境 運 輸 省 ( DETR : the Department of
Environment and Transport)によると、1990 年の環
境保護法にもとづく許可制度を IPPC 許可制度に移
行させる方法が協議の焦点になるという。
4. 新 PCB 段階的廃止対策を公表
英国は、
イングランドおよびウェールズにおいて、
PCB を段階的に廃止し安全に処分するための新対策
を公表した。新規制によると、PCB 汚染装置の所有
者は、環境庁に登録し、一部の例外を除き、12 月末
までに PCB および関連装置を安全に処分しなけれ
ばならない。
同法では、方式 A および方式 B という 2 種類の許
可が発行されている。方式 A は、重大な汚染プロセ
スおよび大気、陸地、水系への汚染物質排出を取扱
う包括的許可制度であり、環境庁によって規制され
る。方式 B は、それほど重大ではない汚染プロセス
および大気中への排出に関連するものだけを取扱う
許可制度であり、地方自治体によって規制される。
ミーチャー環境大臣は、PCB を「その毒性および
食物連鎖を通じて生体に蓄積される傾向により環境
に脅威を与える有害化学物質である」と述べ、新規
制の導入は将来的の放出削減により環境中に存在す
る PCB 総量を減少させるものであると公約した。
IPPC では、新たに A1、A2 および B という 3 種類
の方式が導入され、新協議文書では、EPA の方式 B
をIPPC のA2 方式に移行させる方法について意見を
求めている。A1 は、大気、陸地および水系への重大
な汚染プロセスを取扱う統合許可制度であり、環境
庁に規制される。A2 は、それほど重大でない汚染プ
ロセスを取扱う統合的許可制度であり、
同じく大気、
陸地および水系への排出を対象とし、環境庁に規制
される。統合許可制度 B は、汚染の可能性の低いプ
ロセスを取扱い、大気汚染に関連するものだけを対
象とし、地方自治体に規制される。
英国は、1970 年代より PCB の使用を段階的に規
制してきており、新設工場または新規設備における
PCB の供給および使用は 1986 年より禁止されてい
る。2000 年の環境保護規制(ポリ塩化ビフェニール
その他の危険物質の処分)
(イングランドおよびウ
ェールズ)では、トランスおよびコンデンサーなど
の装置に残留する PCB を取扱っており、EU 指令
96/59 を実施している11。スコットランドおよび北
アイルランドについても同様の規制が導入される。
PCB 含有量の低い(EU で合意している制限値以
下)家電製品および照明など一部の機器は、耐用年
数がくるまで引きつづき除外される。
3. PVC 製造業者、自主規制コードに合意
英国の PVC 製造業者は、サプライチェーンに関わ
る利害関係者に可能な限り最善の実施基準にもとづ
き PVC が製造されていることを明確に示すねらい
から、自主環境規制コードに合意した。
英国は PCB 対策を講じたものの、欧州委員会の非
難を免れることはできなかった。フィンランドを除
くすべての EU 加盟国は、PCB およびポリ塩化トリ
フェニール(PCT)の処分および取扱いに関する重要
情報を提供しなかった場合法的措置を取られること
になる。当該情報の提供期限である 1999 年 9 月は
同コードは、小売業者と協力して開発されたもの
で、PVC 製造について環境パフォーマンスに関する
各種の指針および基準ならびに今後の改善目標を規
定している。全般的に英国汚染管理規則にもとづく
パフォーマンス要件より厳しい内容となっており、
また昨年欧州のPVC製造業者9 社が公約した塩化ビ
ニールモノマー(VCM)に関する改善内容より厳しい
JMC environment Update
10
11
67
自主規制コードに関する情報は、National Center for Business
and Ecology の下記サイトを参照せよ。
http://www.ncbe.co.uk/body_press_release.html
1996 年 9 月 16 日付指令 96/59/EC。
Vol.2 No.2 (2000.7)
欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑨
すでに過ぎている。欧州委員会は、情報提供のない
14 カ国すべてに対して、EU 要件を遵守しない場合
には法的手続を取るという主旨の正式通知を送付し
ている。
環境団体、規制当局、学会など各界代表者間の意見
調整をおこなう。委員は欧州議会の環境・公衆衛生・
消費者政策委員会(Committee on the Environment,
Public Health and Consumer Policy)元委員長を務め、
現在はスコットランド環境保護庁(the Scottish
Environmental Protection Agency)
長官であるコリン
ズ氏(Ken Collins)
、第一級の法廷弁護士トロマンス
氏(Stephen Tromans)
、著名な学術政策専門家であ
り欧州環境庁のヘイ委員(Nigel Haigh)などである。
NSCA 副会長兼Norsk Hydro UK の経営責任者スピア
ーズ氏(John Speirs)が新委員会の委員長である。
5. 環境庁、内分泌撹乱物質に関する戦略を発表
2000 年 3 月、イングランドおよびウエールズ環
境庁(the Environment Agency of England and
Wales)は、内分泌撹乱化学物質(EDC: endocrine
disrupting chemicals)に関する戦略を発表した。環
境庁がさらに内外の研究を要する問題であるとの認
識を示すなど、同問題に対する強い警戒感を示す内
容となっている12。
統合的汚染防止・管理(IPPC)指令の国内法への
移行過程にある多くの EU 加盟国の場合と同じく14、
英国内の急速な経済的および社会的変化によって、
将来の規制は発効前に時代遅れの不適切な規制にな
る可能性が高い。
EU レベルで討議すべき主要な分野
の一つは、1996 年 IPPC 指令の実施と持続可能な開
発という目標との整合性をどう取るかである。
戦略策定提案が最初に回付されてから 2 年経過し
ての公表となった。すでに規制対象となっているが
(今後の研究の結果)EDC と分類される可能性のあ
る化学物質の放出を削減するための措置の他に、下
水場から大量に放出される各種アルキルフェノール
類およびステロイド類に関する新規制および環境品
質基準を主な内容とする。
インターネット経済の発展、英国経済に占める中
小企業の割合の上昇(および劣悪な環境パフォーマ
ンス)および一般的傾向として管理型規制から経済
的手法への移行傾向が見られることから、議題に含
むべき重要課題を以下に示す。
・ 規制システムと環境管理システムとの関係。
・ 計画システムと特定用地に関する環境規制と
の相互作用。
・ 新しい政策手法の役割。特に、経済的手法と
自主協定。
・ 実際のリスクに照らしてみた場合の従来型規
制手法の妥当性。
・ グローバリゼーション、近代テクノロジーお
よび自由貿易の影響。
・ 規制当局は新しい持続可能な開発という責任
をいかに配慮すべきか。
業界も英国独自の統合的汚染管理(IPC)体制に
もとづく一段の排出削減が可能であるか見直すとと
もに、自主的削減対策の策定および実施を求められ
ことになる。環境庁は、科学的アプローチについて
の批判を回避するために一連の研究目標を設定して
いる。さまざまな環境媒体に存在する自然 EDC およ
び合成 EDC の変化および反応に関するさらに詳細
な研究がその代表例である。
6. 業界規制および持続可能な開発に関する新委員
会の設立
業界規制および持続可能な開発に関する新委員会
( Commission on Industrial Regulation and
Sustainable Development)では、英国が環境パフォ
ーマンスの改善および持続可能な開発という大目標
を達成するには、産業公害規制をいかに改善したら
よいかを検討する13。
委員会は 18 ヶ月以内に検討作業を完了し、今後
どのようにすれば規制および執行の合理性およびコ
スト効果を改善し、産業が環境に与える影響を最も
効率的に管理できるかについて、包括的レポートを
まとめる予定である。
同委員会は、全英大気浄化・環境保護推進協会
(NSCA: the National Society for Clean Air and
Environmental Protection)
によって設立され、
業界、
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
12
戦略は、下記サイトを参照せよ。
www.environment-agency.gov.uk/issues/endocrin.pdf
13
委員会に関する詳細は、NSCA のサイトを参照せよ。
http://www.nsca.org.uk
JMC environment Update
14
68
1996 年 9 月 24 日付 96/61/EC 指令。
Vol.2 No.2 (2000.7)
欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑨
得した。反対票を投じたのは極左共産党だけであっ
た。今後同法案は上院に送られるが、いわゆる象徴
的な投票が行われて同条約は批准される見込みであ
る。
IV. フランス
1. 政府、環境リスク調査の新庁を設立
仏議会(the French National Assembly)は 2000
年 4 月 25 日、環境健康安全庁(AFSSE: the French
Environmental Health and Safety Agency)を設立し
た。リスク分析および予防対策に関する政府への助
言を行う。
ヴォイネ(Voynet)環境大臣は地球規模の気候変
動をめぐる議論の次なる段階において、フランスは
有利に主張を展開できる立場にあると議会で発言し
た。その理由は、第一にフランスは原子力依存度が
高いため、先進国の中では一人当たりの温暖化ガス
排出量が最も少ない国の一つであること。第二に、
フランスは2000年後半に輪番制のEU議長国を務め
ること。したがって、フランスは 11 月の会議に向
けて、
EU 統一見解を調整する責務を担うこと等を理
由としてあげている。
議会承認された原文によると、AFSSE は、環境健
康安全問題に関する研究および啓蒙を実施するが、
執行または規制権限はもたないという。
法案成立は、緑の党の政治的勝利である。同党は
1997 年中頃に社会党主導の連立政権に参加したも
のの、その後は立法過程にほとんど影響力を及ぼし
ていなかった。今回の AFSSE 設立にあたり、1998
年の食品安全庁および医薬品安全庁の設立への同党
の支持を調整した。
EU は、
京都議定書の中で責任分担に関する合意に
基づき、15 加盟国の温暖化ガス総排出量を 2012 年
までに 1990 年水準から 8%削減することに合意し
ている。フランスについては、2010 年までに総排出
量を 1990 年水準に削減するよう求められているだ
けである。
AFSSE は環境省(the Environment Ministry)と健
康省(the Health Ministry)の共同管轄となるが、長
官は首相に直接任命される。
予算および職員は 2000
年後半に決定されることになる。
3. 議会報告書でバイオ燃料推進の必要性を主張
仏議会が 2000 年 5 月 4 日に発表した報告書によ
ると、農産物によるバイオ燃料は、都市部の大気汚
染および気候変動によるリスクの解決策となる可能
性があり、EU レベルでの財政的、政治的、技術的支
援を拡大すべきであるという。
短期的には、原文にある 16 の政府系機関が実施
している環境分析の引継ぎは行わない。例えば、仏
環境エネルギー管理庁(the French Agency for the
Environment and Energy Management)の汚染管理、
国立産業環境リスク研究所(the National Institute
for the Industrial Environment and Risks)のリスク
分析調査などである。その代わりに、公的部門が実
施する環境リスクに関する研究の取りまとめ役を求
められている。
「EU におけるバイオ燃料について」という表題の
報告書によると、15 の EU 加盟国は農産物を原料と
するエタノールなど再生可能燃料の製造および使用
において、
ブラジルおよび米国に遅れをとっている。
この格差を埋めるために、EU レベルの免税措置、燃
料ミックスへの強制的バイオ燃料導入措置、
EU レベ
ルの研究開発助成制度拡大など、欧州に思い切った
措置を講じるよう呼びかけている。
新庁と既存の環境関連機関との最終的な権限の線
引きは、2000 年後半に発表される法令で詳細が明ら
かになるが、ある分野の権限をめぐり意見対立が生
じた場合には、仏最高行政裁判所(the Council of
State)の判断に委ねられる。
ブラジルは、サトウキビを原料とするエタノール
を毎年推定 1200 万トン生産している。米国は、ト
ウモロコシを原料とするエタノールを毎年400 万ト
ン生産している。しかし、EU 全体のバイオ燃料生産
レベルが100 万トンの大台にのるのはまだ先のこと
であるという。さらに、欧州のバイオ燃料生産は世
界のわずか 5.9%であり、また再生可能燃料が EU 道
路交通に使用される総燃料に占める割合は、1%未
満であるという。
2. 仏、EU 加盟国として初めて京都議定書を批准へ
仏議会は 2000 年 4 月 5 日、政府の京都議定書批
准を認める法案を第一読会で承認した。
これにより、
フランスは EU 加盟国の中で最初に歴史的な気候変
動防止条約を正式承認する国となる。
同法案は仏議会すなわち下院で超党派の支持を獲
JMC environment Update
69
Vol.2 No.2 (2000.7)
欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑨
EU 諸国がバイオ燃料に関する調和税制あるいは
生産国が求めている一連の免税措置について合意で
きれば、これらの数字は著しく改善すると、述べて
いる。
ないというのが専門家の見方である。シェレ燃料電
池発電所は、フランスの原子力発電所や水力発電所
に比べて電力料金が 3 倍∼4 倍も高いのである。
EDF および GDF は、国内および欧州で燃料電池を
利用した多くの試験的プロジェクトに参加している。
GDF には、燃料電池設備を導入する意図はなく、む
しろ天然ガスの新たな市場およびエネルギーサービ
ス分野における新たな機会として、燃料技術の発展
を捉えている。そういう意味で GDF は、地域ネット
ワークに電力と熱を生産、供給する天然ガスコジェ
ネレーションプラントと同列のものとして燃料電池
の発展を見ていると、ベイル(Bayle)氏はいう。
4. 国有公益事業体 EDF および GDF、燃料電池発電
所を実験的導入
仏国有ガス会社 Gaz de France および電力会社
Electricité de France は、燃料電池技術が 21 世紀の
主要エネルギー源の一つになるとの楽観的な見通し
から、初の大規模試験プロジェクトとして固定式燃
料電池発電所をスタートさせた。
この 200 キロワット発電施設は、パリ郊外のシェ
レ(Chelles)にある EDF と GDF の合弁事業で 2000
年初頭に稼動を開始し、現在は電気と蒸気熱を地域
ネットワークに供給している。約 1000 万フラン(1
億 5000 万円相当)のコストをかけてシェレ燃料電
池発電所を設置したことで、同公益事業体 2 社は、
一生産単位モデルの寿命を通じて必要となる運営・
維持コストを徹底的に調査することができる。
GDF シェレプロジェクト以外に、今年後半に他の
燃料電池の試験的使用を開始する。具体的には一般
家庭向け、テレビサイズの 3∼10kW 発電設備、病
院およびスーパーマーケット向けの 150kW 発電設
備、原子力発電所並みの出力があるが原発のような
廃棄物および安全性に関する問題はないドイツの
1MW 発電設備などである。
一方 EDF は、仏全体で電力供給の 75%強を原子
力に依存している現状から、段階的にエネルギー生
産を多様化させていく中で、潜在的な補完要素とし
て燃料電池を捉えている。
シェレで使用されているシステムは、ONSI
Corporation(コネチカット州)が製造した PC25 燃
料電池発電設備である。これは、3 段回プロセスに
もとづき、まず、GDF が供給する天然ガスがケミカ
ル・コンバーターに投入され、
水素を多く含むガス、
すなわち燃料電池の「燃料」を生産する。次にこの
ガスが空気とともにリン酸ベースのエレクトロケミ
カル・コンバーターに供給されると高温で水と電気
が生産される。最大 200kW/時で発電設備から出る
水はろ過され、
熱は電力ネットワークで捕捉される。
燃料電池発電の最終段階である第 3 プロセスでは電
気化学反応で発生した電流が電気に変換され、地域
の電力ネットワークに供給される。
□
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
製造業者はリン酸ベースの燃料電池用に、この
PAFC という型の発電設備を全世界で 200 基弱販売
している。日本で稼動しているのが約 100 基、米国
で試験的に運用されているのが約 70 基、欧州でさ
らに 25 基ということで、設備容量は合わせて約
36MW である。
EDF によると、出力 200kW のシェレ発電所から
の供給電力によって、1 年間に 200 世帯のエネルギ
ー消費が支えられているという。化石燃料の消費は
かなり低くなり二酸化炭素の排出量もそれに応じて
低下している。但し環境面のメリットは確かにある
が、近い将来燃料電池発電所が広く普及することは
JMC environment Update
70
Vol.2 No.2 (2000.7)
連載 米国における環境関連動向
∼在ワシントン/コンサルタントによるモニタリング情報 ⑤
● はじめに
本報告書は 2000 年 7 月はじめまでの最新の米国の環境関連動向を包括的にまとめている。今回は、
全米で初めて個人対象のブラウン管投棄規制を導入したマサチューセッツ州の動向のほか、ブッシュ
知事、ゴア副大統領の環境政策の進展、EPA のダイオキシン研究などについてもふれている。また、
遺伝子組み換え作物の商品化に際し、事前協議を義務付けた FDA の初めての規制のほか、水質汚染
の疑われている MTBE 規制がもたらした予期せぬ余波などについてもまとめている。
ポイント
・ マサチューセッツ州環境保護局は 4 月から、個人を対象にしたパソコンのスクリ
ーンやテレビ受信機などのブラウン管を投棄することを禁じた規制を発令した。個
人を対象にしたブラウン管投棄規制は全米初。
・ ゴア副大統領、ブッシュ・テキサス州知事はいずれも具体的な環境政策を明らか
にしており、京都議定書批准に対する見方などが対照的である。また、環境保護政
党「緑の党」の大統領候補ネーダー氏の動向も注目される。
・ EPA はダイオキシンについて、初めて「発がん物質」と認定する報告書案をまとめ
たほか、大規模な環境ホルモン研究なども進めている。
・ FDA は遺伝子組み換え作物の商品化に際し、FDA との事前協議を義務付けるとと
もに、組み換え作物を含むか否か表示する際のガイドラインを作ると初めて発表し
た。
・ 深刻な水質汚染の可能性が指摘されており MTBE について、EPA は利用を段階的
に禁止する規制を発表したものの、エタノールの利用がガソリン価格の高騰を助長
しているという非難が多い。
・ EPA の規制は有効であるとする連邦控訴裁の判決を受け、ノースカロライナ州大気
品質局は窒素酸化物削減規制を本格的に実施することを明らかにした。
JMC environment Update
71
Vol.2 No.2 (2000.7)
米国における環境関連動向∼在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報⑤
● マサチューセッツ州、全米初の個人対象のブ
ラウン管投棄規制
き彫りになっている。
一方、ハイテク機器が含有する水銀についての規制も全
マサチューセッツ州環境保護局はこの 4 月から全米で
米的に厳しくなる傾向にあり、既にバーモントのほか、
初めて、個人を対象にしたパソコンのスクリーンやテレ
ミネソタ、メインなどの各州では抜本的な規制が導入さ
ビ受信機などのブラウン管(cathode-ray tubes =CRT)
れている。FDA(食品医薬品局)は海水に含まれる水銀
を投棄することを禁じた規制を発令した。これまでも事
の全米的なモニターを検討しているほか、6 月中旬には
業者のブラウン管投棄はほぼ全米的に禁じられている
サンフランシスコ市当局が水銀温度計の利用や市内へ
が、個人を対象にしたブラウン管投棄規制は全米初であ
の持ち込みを禁止するなど、今後も水銀をめぐる各種規
り、パソコンの普及率が年々高くなる中、他州も同様の
制はさらに厳格になるとみられている。
規制を導入する可能性が高く、注目されている。
この規制は 4 月 1 日から適用されており、これまでご
● 大統領選と環境政策
みとして投棄されて、埋め立てや焼却処分されていたパ
ソコンのスクリーン、テレビ受信機、テレビゲーム機な
民主・共和の大統領候補指名を確実にしている、ゴア副
どブラウン管を利用した機器は全て州内6カ所にある
大統領、ブッシュ・テキサス州知事の支持率はいまだ、
リサイクルセンターに持ち込むことが義務づけられて
横一線であり、11 月 7 日の大統領選投票日まであと 4
いる。これを受け、州内のごみ処理場もブラウン管を利
ヶ月を切る中、具体的な環境政策にも注目が集まってい
用した機器の受取を拒否している。
る。
規制の目的はブラウン管の中の鉛部分が埋め立てや焼
ブッシュ知事は、6 月はじめ、
「環境保護・資源保全に
却処分の際に漏洩することを防ぐためであり、マサチュ
関する 5 つの政策」を発表した。この発表は、環境政
ーセッツ州環境保護局によると、現在、同州がごみとし
策について積極的ではないという批判をかわし、大統領
て処理するブラウン管は年間、7 万 5000 トンに及び、
候補として過去に例をみない環境保護主義者とされて
パソコンをはじめ、DVD などの機器が急速に普及しつ
いるゴア副大統領の支持層の切り崩しを狙っている。
つあるため、2005 年には 30 万トンになると推定され
ている。一般的なパソコンのスクリーンには 5∼8 ポン
ブッシュ知事は「セオドア・ルーズベルトの時代(20
ドの鉛が含まれており、今後、深刻な土壌・河川汚染の
世紀初め)からこれまで、土地や河川を積極的に保護す
原因になる可能性があるため、同州は抜本的な規制を導
るのは国民的コンセンサスであり、環境保護は非常に重
入した。
要である」とする一方で、
「しかし、環境保護を連邦政
府任せにするのは問題があり、脱中央の柔軟な環境政策
マサチューセッツ州環境保護局は 20 万ドルを掛け、ブ
が必要だ」と指摘している。実際、今回の「環境保護・
ラウン管回収ネットワーク作りを進めており、ブラウン
資源保全に関する 5 つの政策」の多くが個人の土地所
管リサイクルのための市町村の費用助成などに充てら
有者に対する環境対策を支援するものが多く、多額の予
れる。
中古パソコンを慈善団体に寄付するほか、
銅、金、
算が必要な現在の連邦政府主導で規制する形の環境保
銀、鉛などの各種金属を再利用する。
護政策とは一線を画している。
調査会社 IDC の予測では、米国では今年、1100 万台の
「環境保護・資源保全に関する 5 つの政策」は次のと
パソコンが捨てられるとみられている。今後、全米各州
おりである。
で個人を対象にした、ブラウン管のリサイクルが義務づ
1)
けられるのは時間の問題であるといわれている。現在、
「 土 地 水 質 保 全 基 金 ( Land and Water
EPA の 危 険 廃 棄 物 特 定 部 ( Hazardous Waste
Conservation Fund)
」に十分な予算を割り当て、
Identification Division)は連邦レベルの規制の導入も検
その 50%を州や自治体の資源保全活動にあて
討している。一方で、ブラウン管やサーキットボードな
る。
2)
どパソコン部品のリサイクルなどは、非常に手間も時間
州政府とのマッチングファンド方式で助成する
も掛かるため、リサイクル事業者もあまり積極的でない
「 土 地 所 有 者 奨 励 プ ロ グ ラ ム ( Landowner
という現状もあり、規制当局と産業界の思惑の違いが浮
Incentive Program)
」を設け、国民の個人所有地
JMC environment Update
72
Vol.2 No.2 (2000.7)
米国における環境関連動向∼在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報⑤
3)
4)
5)
における植生の保護や絶滅寸前の動植物の保護
して、10 年間で総額 1250 億ドルもの大幅な減税を行
などに助成する。
う案を明らかにした。風力やごみを利用した発電、太陽
個人の行っている環境保護努力をたたえるため
電池などを指しており、ゴア副大統領は「様々な環境問
に「環境保護のための大統領賞推進賞
題の原因となっている石油に依存している状態から、多
(President’s Award for Private Stewardship)
」
様でクリーンなエネルギーへの投資を急ぐべきだ。ビッ
を新設する。
クオイル(大石油会社)の時代は終わった」と指摘して
個人の土地を環境保護のために売却する際、キ
いる。この発言は、元石油会社経営者であるブッシュ知
ャピタルゲイン税控除を行う。
事を暗に批判しているのは言うまでもない。
土地相続に関する税金を廃止し、個人の土地を
ゴア副大統領が環境保護主義者という基礎票を固める
そのままの形で次の世代に残せるようにする。
中、環境保護政党「緑の党」は 6 月末、著名な環境・
ブッシュ知事の環境政策の行方は、言うまでもなく、大
消費者問題活動家のラルフ・ネーダー氏を同党の大統領
統領選の公約にとどまらず、国際的な環境政策に影響す
候補に指名した。ネーダー氏は 96 年に続いて、同党の
る。特に、ゴア副大統領、ブッシュ州知事の京都議定書
大統領候補になる。米国では共和・民主を除く、第三政
批准に対する見方などは非常に対照的である。
党が大統領選の鍵を握ったのは、1912 年のセオドア・
ルーズベルト(改革党)と 1992 年のロス・ペロー(無
クリントン米政権は 3 月末、温室効果ガスの排出を削
所属。のちに「改革党」
)しかなく、今のところ、国民
減する京都議定書の批准要請を新政権に繰り延べする
全体からみれば、人気はいまひとつといえるネーダー氏
ことを決定し、残りの任期は中国の世界貿易機関
の動向が選挙の行方を変えるような影響はあまりない
(WTO)加盟など少数の外交課題を優先する方針を明
とみる見方が多い一方で、環境政策を軸に大きな波乱を
らかにしている。京都議定書は 2002 年までの発効を目
もたらす可能性を指摘するアナリストもいる。というの
指しており、米国の議定書批准は条約発効の前提となる
も、ネーダー氏の動向次第では、緑の党の支持者が多い
が、いまのところ、道は遠い。というのも、地球温暖化
カリフォルニア州などで、ゴア副大統領の支持層の票が
防止京都会議そのものを提唱したゴア副大統領に対し、
ネーダー氏に流れ、ちょうど、92 年の選挙で保守票を
ブッシュ州知事は議定書批准に反対する意向を明らか
さらい、当時のブッシュ大統領支持者を二分させたペロ
にしているためで、大統領選の結果次第では条約の空洞
ー氏のような影響力を持つ可能性があるためである。
化はますます進む可能性が高い。ゴア政権になったとし
ても、批准を審議する上院議員の中で現在、京都議定書
ゴア副大統領、ブッシュ知事のいずれも中道であり、い
の批准賛成を明らかにしている議員は 10 人ほどであり、
まのところ、世論調査の結果は伯仲している。今回の大
批准案を通過させるためには、上院議員 3 分の 2 にあ
統領選は空前の激戦が予想され、環境に対する様々な具
たる 67 票が必要なため、途上国の参加などを訴える反
体的な政策が今後も打ち出されるものとみられている。
対議員の説得にはかなりの紆余曲折があるとみられて
いる。
● EPA、ダイオキシンを発ガン物質に初認定
なお、6 月中に中旬にドイツで開かれた地球温暖化対策
会議「気候変動枠組み条約第六回締約国会議」
(COP6)
EPA は 6 月中旬、ごみ焼却場などから発生し、食物を通
の準備会合では、途上国を中心とした海外での活動を先
じて人間の体に蓄積するダイオキシンについて、初めて
進国の削減実績とみなすかどうか(柔軟化措置の活用)
「発ガン物質」と認定する報告書案をまとめた。報告書
が、焦点となった。米国代表は植林事業や、排出量の少
は一般からのコメントなども受け、今年末に完成する。
ない発電設備の建設支援のほか、排出削減を目的とした
途上国向けの経済支援も含んだ柔軟化措置の積極活用
ダイオキシンはこれまでも肺やリンパ腺のガンを誘発
を訴え、柔軟化措置に反対する EU と対立した。11 月
すると考えられてきたが、米国内の農業ロビーなどの影
には本協議が開かれ、大統領選の行方は米国代表の動き
響もあり、疫学調査を慎重に行ってきた。連邦政府がダ
にも大きく影響する。
イオキシンを発ガン物質と明確に結論づけたのは初め
てである。
一方、ゴア副大統領は 6 月末、クリーンエネルギーや
エネルギー効率の良い技術を利用した事業者などに対
JMC environment Update
報告書によると、米国のダイオキシンの発生量はここ
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米国における環境関連動向∼在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報⑤
20 年で急激に減っているとしており、特に 1987 年か
環境ホルモンに対し、米国では比較的多数の研究者がか
ら 95 年の間に 80%急減している。これについて、ごみ
なり以前からこの問題に注目し研究を行ってきた。これ
焼却処理量の削減などが要因になっているとしている。
は、フロリダのハクトウワシの生殖能力が著しく減少し
しかし、ダイオキシンのもたらす発ガンのリスクは EPA
たり、野生のワニの絶対数が激減したなどの象徴的な事
の従来の推定より高く、
「ダイオキシンが肉などの脂肪
件に触発されたことなどによる。そのため、米国連邦議
に蓄積され、脂肪分の多い食事をする人は、ガンになる
会は 1996 年に「食品品質保護法」と「飲料水安全法」
危険性がこれまでの推定より 10 倍高く、100 人に 1 人
を修正した。修正された「1996 食品品質保護法(1996
の割合に相当する」としている。
Food Quality Protection Act)
」では 1998 年 8 月までに
内分泌攪乱作用のある化学物質のスクリーニングプロ
グラムを準備し、99 年 8 月までにこれをスタートさせ
調査そのものは 1991 年に始まり、1994 年に一度報告
書 案 を 作 成 し た も の の 、 EPA の 科 学 諮 問 委 員 会
ると規定されている。
実際、
1998 年 10 月から 1 万 5000
(Scientific Advisory Board)の諮問により、95 年から
の化学物質を対象に研究を実施している。また、EPA 同
これまで再調査を続けている。
時に「内分泌かく乱物質のスクリーニングとテストに関
する諮問委員会」(Endocrine Disruptor Screening and
一方、低濃度の場合はホルモンに似た働きをして、幼児
Testing Advisory Committee = EDSTAC)を組織し、ス
や子供の発達を妨げたり、不妊などを起こす恐れがある
クリーニングに関する客観的に評価する制度を確立さ
としており、EPA がこれまでおこなってきた環境ホルモ
せている。
ン(
「外因性内分泌撹乱化学物質」
)研究の成果をほぼ初
めて、本格公表している(EPA の環境ホルモン研究につ
環境ホルモン対策は汚染防止政策のほかにも、水質浄化
いては次項参照)
。EPA のキャロル・ブラウナー長官は
や廃棄物管理など環境対策全てと関連していくため、今
「ダイオキシンの危険は予想より大きく、食物連鎖を通
後、環境ホルモンについて、具体的な対策段階に至った
じた危険性は高く、脂肪分の少ない食事にすることが重
際には他分野との広範な連携体制が取られるものとみ
要である」と指摘している。
られている。EPA の科学調整政策部(Office of Science
Coordination and Policy)によると、いまのところ、今
60 種類あまりの代表的な環境ホルモンのうち、代表的
回のダイオキシン研究のように長期的な研究になるも
な物質として挙げられるダイオキシンはガンを誘発す
のとみられており、今年夏には化学物質の選定方法や選
るだけでなく、体内に蓄積され持続的に免疫機能の低
定リストに対する変更の手続きなどについても論議を
下・成長遅延・生殖機能低下のような致命的な働きをす
深めるという。
るとこれまでいわれてきた。一方、ダイオキシンはあま
りにも広範囲に生成・吸収されているため対策を設ける
また、環境ホルモン研究を進める一方で、環境ホルモン
のが容易ではないため、環境保護団体などからは「脂肪
対策のために、EPA は現在、TRI(Toxic Release Inventory
分の少ない食事にすることが重要というだけでは、抜本
=有害物質放出明細)報告制度をさらに強化し、規制を
的な対策にならない」と指摘する声が多い。今後、ダイ
厳格にする傾向にある。TRI 報告制度は「1986 年緊急
オキシンを初めとする環境ホルモンに対する米国の規
計画とコミュニティの知る権利法(1986 Emergency
制強化は必至であり、今回の認定は今後の占う意味で、
Planning and Community Right-to-Know Act)
」の立法化
重要といえるだろう。
でスタートしており、報告制度では、ダイオキシン、ト
リクロロエチレンなど、有害化学物質である難分解性化
学物質(PBT)を含む、約 300 の化学物質について、事
● 環境ホルモン対策
業者に報告する義務を定めている。環境ホルモン対策も
あって、EPA は現在、TRI 報告制度の対象となる難分解
EPA は先進国中でも初めての国家レベルの本格的な環
性化学物質のリストの拡大を急いでおり、例えば、鉛と
境ホルモン研究を続けており、成果によっては今後、世
鉛化合物の報告すべき最低値(threshold)を大幅に引
界的な影響を与える可能性もある。いまのところ、研究
き下げる新ルールが決まりつつある。さらに、有害物質
分析や研究方法についても、非常に慎重であり、今回の
のデータベース化も進んでおり、
「環境モニター方法イ
ダイオキシン研究のように長期的な研究になるものと
ン デ ッ ク ス ( Environmental Monitoring Methods
みられている。
Index)
」では、EPA が規制している 2600 以上の化学物
質を記録しているほか、「統合リスク情報システム
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米国における環境関連動向∼在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報⑤
(Integrated Risk Information System)
」では約 500 の
FDA の今回の発表は連邦政府内の規制強化の声に対応
化学物質の人体に与えるリスクに関するデータを集め
したものであるとみられている。例えば、連邦政府の助
言組織である科学アカデミーは 4 月、
「遺伝子組み換え
ている。
作物は健康や環境に悪影響を与える潜在的な可能性が
環境ホルモン対策研究は現時点では EPA に集中してい
ある」とし、研究を強化するよう求める報告書を公表し
るが、日本の厚生省に該当する保健・福祉省
たばかりだった。
(Department of Health and Human Services)の一機関
である FDA も一部、薬理学的・毒物学的観点からの研
今回の規制自身は非常に緩やかであり、FDA との事前
究が行われている。例えば、1998 年に発売が許された、
協議を行うだけにとどまり、表示義務化や安全検査強化、
製薬会社のメルク社が開発した育毛薬「プロペシア」に
人体や環境への長期的影響の監視は見送られている。こ
は環境ホルモン成分が含有されている疑いがあったた
れに対しては、米国最大の消費者団体であり、これまで
め、発売の正式許可まで、FDA 内での検査が続けられ
遺伝子組み換え作物の抜本的な規制を訴えてきたコン
た。プロペシアはこれまで前立腺肥大症に対する薬とし
シューマー・ユニオン(Consumer Union)などは一斉
て使用されていたもので、服用を中止すると元に戻るた
に反発している。米国では欧州や日本に比べ、組み換え
め、一生飲み続けることになり、人体に与える可能性が
作物に対する消費者の関心も比較的低いが、規制強化を
大きかったため、一部で論争を呼んでいた。プロペシア
訴える声は少しずつ強まっている。
は、ホルモンの抑制効果を持つため、一部の男性に精力
減退作用がみられる。さらに妊娠している女性が服用す
一方、遺伝子組み換え作物は、米国の食品・農業産業に
ると胎児に生異常をもたらす可能性があり、女性や子供
とって、非常に大きな打撃になるため、モンサント、デ
の服用は禁止されているというが、男性のほとんどの場
ュポン、ダウ・ケミカルなど米欧のバイオテクノロジー
合、環境ホルモン成分の与える影響は少ないと判断し、
関連企業は 5 月から共同で、遺伝子組み換え作物の安
FDA は発売を許可した。
全性を訴える CM を共同で放映し、
「最貧国の食料不足
を救うために非常に重要な技術」と効用を強調している。
FDA の環境ホルモン対策・研究の要となっているのが、
また、業界団体である「国際食品・農業関連産業マネジ
全 米 毒 性 学 研 究 所 ( NCTR = National Center for
メント協会(IFAMA)
」なども今後、普及キャンペーン
Toxicological Research)であり、食品、薬品、化粧品、
を推し進めていくことという。
医療器具などの安全を確保するため、プラスチックや農
薬などに含まれる環境ホルモンと考えられる成分の研
究が続けられている。
● 米国の排出権取引の現状
● 組み換え作物に表示指針
出する権利を売買しながら削減を目指す排出権売買
地球温暖化を防止するため二酸化炭素(CO2)などを排
(emission trading)が注目を集めている。排出権売買
FDA は 5 月、遺伝子組み換え作物(GMO)の商品化に
には、1) 温室効果ガスが排出できる枠を、国内の企業
際し、FDA との事前協議を義務付けるとともに、組み
同士などで取引する「国内排出量取引」
、2) 国を単位に
換え作物を含むか否か表示する際のガイドラインを作
国際間の取引を行う「国際排出量取引」――の 2 種類
ると発表した。FDA が遺伝子組み換え作物の規制に本
あり、いずれも特に排出権取引は投資の回収ができるた
格的に取り組むのは初めてで、動向が注目されている。
め、市場原理に乗っ取った環境保護コストの負担(市場
主義アプローチ)として、産業界は歓迎しているが、適
正なコストを定めるのが難しく問題も少なくない。
遺伝子組み換えなどバイオ技術で作られた生物などの
国際貿易を規制は、今年 1 月末に開かれた生物多様性
条約(Convention on Biodiversity)の特別締約国会議で
国内排出量取引の場合、温室効果ガスなどの排出源とな
採択された「バイオ安全議定書(Biosafety Protocol)
」
る企業の排出量に上限を設定、省エネルギーなどで排出
で定められている。米国は生物多様性条約自体の批准を
量を減らし上限内に収まった分を権利として販売する
行っていないものの、遺伝子組み換え作物の世界最大の
というのが、排出権売買の基本的な考え方であり、削減
生産国であるため、経済協力開発機構(OECD)加盟国
コストの高い企業などが、削減コストの低い企業などか
協議などでは米国のリーダーシップが求められており、
ら排出枠の一部を購入することで、総排出枠を変えずに
JMC environment Update
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米国における環境関連動向∼在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報⑤
国内全体の削減コストを抑えるのが狙いである。米国で
● MTBE 利用規制とその余波
は 1978 年に EPA が部分的に許可を与えたのち、1986
年に本格的にスタートした。1990 年の大気浄化法
(Clean Air Act)の改正で排出権取引はさらに活発にな
深刻な水質汚染の可能性が指摘されており、今年になっ
り、現在はブローカーによる排出権売買が盛んである。
てから、全米各地で規制の声が一気に高まっている
また、
「エンロンオンライン(Enrononline)」や「ナッ
MTBE(メチル・ターシャリー・ブチル・エーテル。methyl
トソース(Natsource)
」などのインターネットによる排
tertiary butyl ether)について、EPA と農務省は4月
出権取引サイトも既に立ち上げられ、オンラインによる
末、MTBE の利用を段階的に禁止する規制を発表した。
取引も増えている。
MTBE は、1990 年大気浄化法(Clean Air Act)で改質ガ
国際排出量取引制度については、1997 年の温暖化防止
ソリンの使用が義務づけられた含酸素添加剤の一つで、
京都会議で採択された京都議定書に盛り込まれており、
全米的に広範に利用されてきた。しかし、ガソリンスタ
先進各国の企業間の協力で削減した量、先進国の企業な
ンドの地下ガソリン貯蔵タンクから MTBE が漏れる事
どが発展途上国の企業を援助して削減した量を売買で
故が急増し、地下水を汚染し、問題になっていた。新規
きる。先進国は 2008 年から大幅な排出削減を強いられ
制では MTBE の利用を段階的に禁止するほか、MTBE の
る一方で、低コストで排出権を購入できることから、
代替含酸素添加剤として、エタノールの利用を義務づけ
CO2 の排出削減目標の達成も容易となる。
ている。
排出権取引は、これまでの規制を中心としたのアプロー
MTBE 規制について、環境団体などは一様に歓迎してい
チから、
「市場主義(market-based)アプローチ」へ、
るものの、規制の発表前から、米国ではガソリン小売の
環境対策自身のパラダイム変換であると指摘する声も
高騰傾向が続いており、ガソリン大手は低コストの
多い。市場主義アプローチとは、市場原理に乗っ取った
MTBE からエタノールに切り替える費用などを上乗せ
環境保護コストの負担であり、例えば、企業が流出した
したため、規制発表後にはさらにガソリン価格は値上が
廃棄物の汚染率が高ければ高いほど、その企業に高い税
りする形になっている。全米で最もガソリン価格が高い
金を課すアプローチである。排出件取引については、企
シカゴの場合、7 月はじめ現在で 1 ガロン 2 ドル 20 セ
業にとっては、上限を超えた場合は、権利を他社や市場
ントと、1 年前の倍以上の値で販売しているガソリンス
から購入するか、罰金を払わなければならない一方で、
タンドがほとんどで、ボストンやボルチモアなど米国東
廃棄量を自主的に減らせば、他の企業に売却できるため、
部地区でも 1 ガロン 1 ドル 70 セントと前年に比べ 6 割
環境対策を進めるうえで大きなメリットになっている。
程度の高値を記録している。そのため、規制の思わぬ余
波に「規制は拙速過ぎた」と指摘する消費者の声が増え
米国以外の諸国では、デンマークが世界で初めて国内で
ている。これを受けて、イリノイ州のジョージ・ライア
の大々的な本格的な売買制度を 2000 年 1 月から導入し
ン知事は 6 月 15 日、EPA に対し、規制を先送りにする
た。英国でも企業間で試験的に取り組まれているほか、
要望書を提出し、注目された。
ノルウェーやオーストラリア、ニュージーランドでも売
買制度の議論が進んでいる。いずれも、本格的な排出権
ちょうど夏場の需要期に当たるため、石油輸出国機構
の国際取引を前にして、まず国内から売買制度を導入し、
(OPEC)は 6 月末、ウィーンで開いた臨時総会で 7 月
ノウハウを蓄積しようというのが、排出権取引導入のき
から生産上限枠(目標生産値)を約 3%引き上げ、小売
っかけになっている
価格に歯止めを掛けることを決めている。この臨時総会
の際、やり玉に上がったのが、今回の規制であり、合意
しかし、コスト決定の段階においては、廃棄にかかる適
点に「米国の環境規制も原油価格高騰の一因」というポ
正なコストを定めるのが極めて難しいほか、排出権を購
イントも含められた。
入する企業が増えた場合など、全体の排出量が減るとは
限らず、このアプローチには数々の問題もある。
さらに、
ガソリン急騰については、クリントン大統領が EPA な
“廃棄物を売リ付ける”という倫理的な点を非難する声
どに対し、原因究明を要請しており、EPA のブラウナー
も少なくないほか、売却する国家のモラルハザードを指
長官は「調査によると、価格増のうち、MTBE からエタ
摘する声も多い。
ノールへの転換はほんの 2、3%に過ぎない」と述べて
いる。
JMC environment Update
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Vol.2 No.2 (2000.7)
米国における環境関連動向∼在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報⑤
● ノースカロライナ州、窒素酸化物削減規制
● ダイムラークライスラーの環境 PR
ノースカロライナ州大気品質局は 6 月末、窒素酸化物
自動車メーカーのダイムラークライスラーはここ 2 カ
削減規制を本格的に実施することを明らかにした。この
月の間、世界初の商用燃料電池(Fuel Cell)搭載のバス
規制は 2004 年までに硫黄含有率が低いガソリンの利用
を開発したほか、ごみの埋め立て地から出るガスを利用
や、自動車の大気汚染規制検査の 2006 年までの延長な
した発電で一部工場を稼働させることを決めるなど、環
どが盛り込まれているほか、発電所の排気規制などを通
境への取り組みを PR し全米のメディアの注目を集めて
じて、スモッグの削減やオゾン層の保護を狙っている。
いる。
この規制は、
ジム・ハント知事の環境政策の目玉として、
燃料電池を利用したバスについて、ダイムラークライス
昨年、州議会を通過した。元々は 1998 年に EPA がノー
ラーは 5 月、2002 年末までに 30 車程度発売すること
スカロライナ州を含む 21 の州に対し、窒素酸化物削減
を決めた。これまで、実験レベルの燃料電池搭載の自動
を義務づけたもので「窒素酸化物削減規制州導入計画
車運行はあったものの、商業用に発売するのは世界的に
(NOx State Implementation Plan = NOx SIP)
」と呼ば
もおそらく初めてである。
れている。しかし、
「EPA のこの政策は基準があいまい
で、科学的な根拠が足りない」として、中西部の州の電
燃料電池は、水素と酸素を化合し化学反応により水とと
力事業者などから訴えられていたため、規制準拠が遅れ
もに電気を作り出し、モーターを回すシステムである。
ていた。ワシントンの連邦控訴裁は今年 6 月 26 日、EPA
燃焼を起こさないことから、内燃機関のガソリン車と比
の規制は有効であるという判決を下したため、ノースカ
べると、CO2 排気量を大幅に削減できるほか、エネルギ
ロライナ州でも規制が本格開始することになった。今回
ー効率も燃焼と比べて 40%から 60%ほど高くなるため、
の判決で、今後、他州でも同様の窒素酸化物削減規制が
代替エネルギーとしては非常に注目されている。トヨタ、
早急に義務づけられるとみられている。
日産、本田のほか、GM、フォード, ダイムラー・クラ
イスラー、ホルクスワーゲンを含む多くの自動車メーカ
ーが燃料電池技術の開発に投資している。
● 生態系に関する米国シンクタンクなどの調査
再充電などの煩雑さや普及に伴うメタノールの生産増
米国のシンクタンク世界資源研究所(WRI)や国連環境
や販売設備網の整備などの問題も少なくなく、今回の商
計画(UNEP)
、世界銀行などの研究チームは地球生態系
用販売も 1 台あたり 120 万ドルと非常にコストが掛か
観測計画「ミレニアム生態系アセスメント」の予備調査
っており、
「あくまでも環境への取り組みへの PR 段階」
の結果として 6 月末、森林、農地、草地、淡水、沿岸
(環境アナリスト)という声が多い。
域の 5 生態系の現状を分析した結果を発表した。これ
によると、20 世紀中に地球上の湿地半分が消失し、多
一方、6 月初めに発表された、ごみの埋め立て地から出
くの地域で生態系の悪化が進んでいると指摘している。
るガスを利用した発電の方は、ミズーリ州セントルイス
特に、淡水魚の場合、1 万種絶滅の危機にあるという。
の 2 工場で実験的に導入される。オニックス・スペリ
ア・サービーシーズ(Superior Services of Onyx)とい
研究グループは、5 つの生態系について、各国政府のデ
うごみ処理会社と提携し、ごみ埋め立て地から出るメタ
ータや過去に発表された研究成果に、人工衛星を使った
ンガスを 2 工場の 4 つのボイラーに引き込み天然がス
観測結果なども加えて分析した。研究によると、深刻な
の代替物として利用する。天然ガスの節約になるほか、
のは生物種数の減少で、5 つの生態系すべてで減少は進
温室効果があるメタンガスの大気放出を抑制する効果
んでおり、特に淡水の生物全体では少なくとも 20%、
も期待されている。□
淡水魚類では約 1 万種が絶滅の危機にあるとしている。
この原因となるのが、汚染や栄養分の流出で、これまで
の 20 年間で世界の農地の 66%で土地が劣化した結果
によるという。また、埋め立てなどで今世紀中に消失し
た湿地は、全体の半分と算出されている。
JMC environment Update
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「WEEE HAND BOOK II」刊行のご案内について
∼environment Update 増刊号∼
EU における廃電気電子機器(回収・リサイクル)指令案(WEEE)は 6 月 13 日に欧州議会・理事
会への正式提案を採択し、ステージを議会・理事会に移し、次ぎのフェーズへと駒を進めました。
正式提案におては、これまで議論の中心の一つであった特定物質の使用制限について、WEEE から
切り離され「特定有害物質使用制限指令案」として新たな指令案が盛込まれました。
欧州議会・理事会指令採択までには、なおも時間を要するものと思われますが、引続き議会・理事
会の動向を注視する必要があります。
さらに、当初 WEEE の対抗法案として企業総局より提案された「電気電子機器の環境に与える影響
に関する指令案(EEE)
」に関しても、今後欧州委員会の動きが本各化する見通しもあり、こちらも併
行して注視して行く必要があります。
そこで前回の「WEEE HAND BOOK」増刊号のご好評もあり、第 2 弾として「WEEE HAND BOOK
II」を臨時増刊することといたしました。
「WEEE」最終提案と「EEE」の原文及び和訳を対訳形式で見易く掲載しております。是非ご利用い
ただきたくご案内申し上げます。
《目
次》
1. WEEE Hand BookⅡの刊行に寄せて
2. WEEE に関する欧州議会および理事会指令(原文と和訳)
3. EEE に含まれる特定有害物質の使用制限に関する欧州議会および理事会指令
(原文と和訳)
4. EEE の環境に与える影響に関する欧州議会および理事会指令案
(原文と和訳)
《体
裁》
A4 版
61 ページ
《頒布価格》
一般価格 1,500 円(組合員割引価格 500 円)(消費税込み、送料別)
《連絡先》
日本機械輸出組合
TEL:03-3431-9230
環境・安全グループ
FAX:03-3436-6455
右ページの申込書にてお申込下さい。
JMC environment Update
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Vol.2 No.2 (2000.7)
平成
年
月
日
日本機械輸出組合
国際業務部門
環境・安全グループ行き
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WEEE Hand Book II
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T E L
F A X
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役 職 名
住
所
JMC environment Update
〒
79
Vol.2 No.2 (2000.7)
事務局便り
環境・安全グループ
◇ 暑中お見舞い申し上げます。
◇ WEEE の欧州委員会正式提案は、substance ban が切り離され 2 本立て指令の形になりましたがや
っと採択されました。
◇ 欧州委員会環境総局が第 1 次ドラフトを示したのが 1998 年 4 月で、爾来第 2 次ドラフト(1998
年 7 月)
、第 3 次ドラフト(1999 年 7 月)
、第 4 次ドラフト(2000 年 5 月)
、そして最終提案採択
寸前には第 5 次も存在したようです。
◇ 当組合ブラッセル事務所では第1次ドラフト提示直後から、事の重要性を認識し、在欧日系企業
のグループ(JBCE)により、コメント・提案の作成、欧州委員会関係部局との対話、欧米業界団
体との協調など極めて精力的に、かつ迅速にロビイング活動を続けて実施してきました。
◇
欧州委員会正式提案は近く官報に公示されます。このテキストを初めてみる人は、例えば
「substance ban は 2008 年から対応すればいいのか」と簡単に受け止めることもあろうかと思い
ますが、この間、関係者が原案の様々な論点に対し改善方相当な努力をされたことや、EU で法律
が作られる過程で、日本の利害関係者が意見を述べたり、当事者と対話をもつことはおそらく初
めてのことで、大変意義ある活動だったと考えます(米国は法制化プロセスの中でパブリックコ
メントを募集しますが)
。 また現地日系企業を欧州企業の一員であるとして、諸活動を受けとめ
られた相手方の行政担当官の姿勢についても、東京から見て極めても印象に残ります。
◇ そのブラッセル事務所による「WEEE と EEE」に関する説明会が去る 7 月 5 日東京本部にて開催さ
れ 70 余名の参加や活発な質問など大盛況でした。 今号のトップ記事としてその内容を紹介して
おりますが、主な項目につき第 3 次ドラフトと比較してその変化がわかりやすいように解説し、
残された論点や、今後無視できない存在の EEE の問題点などを指摘しております。
◇ 今号は取上げるべき記事が多すぎたため、WEEE と substance ban の欧州委員会正式提案と EEE ド
ラフトのテキストについては増刊号として別刷りとしました。使い勝手を考え和英対訳編集とし
ていますのでご利用ください。また欧州委員会内議論のための、2つの指令案に関する説明資料
については当号に載せています。
◇ 委員会活動報告は休みます。
◇ 欧州委員会提案後の「EU の立法過程」の図(P.15 参照)を作ってみました。何らご参考まで。
(TI)
JMC environment Update
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Vol.2 No.2 (2000.7)
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