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製品に含まれる化学物質

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製品に含まれる化学物質
製品に含まれる化学物質
2007.04
KECA
化学物質委員会
最近、REACH など、欧州の化学品規制が目白押しですが、その先駆けとなった WEEE
(廃電気電子機器)指令は、前文で「悪魔のサークルの切断」をうたっています。これは、
よりよい生活を求めて購入した家電製品が、その廃棄過程での不適切な処分により、ある
いは適切な処分であっても経時的な変化により有害物質が溶出し、それらが食物連鎖によ
り次世代の健康被害を引き起こすことをいったものです。そしてこの WEEE 指令とセッ
トの RoHS 指令は鉛、カドミウムなど6種類の有害物質の電気電子機器への含有を禁止し
ています。日本の家電メーカーは、これらの規制に対してほぼ対応済ですが、問題はこの
規制以前に生産された製品です。テレビを例にとると、薄型テレビなどへの買い換えによ
り、ブラウン管(CRT)型テレビは捨てられようとしています。規制対応前のテレビのプリ
ント板には、5 ~ 10 gの鉛(また、CRT に鉛ガラスとして約 900 gの鉛成分)が使用さ
れているといわれています。鉛やその酸化物は工業的に有用な材料で、多くの分野で使用
されています。いっぽうで鉛の有害性も広く知られておりいくつかの法規制を受けている
ことに加え、最近では水鳥等の中毒事故を防ぐために、鉛散弾の使用を禁止している地方
自治体もあります。
テレビなどの廃家電は家電リサイクル法により回収されることになっていますが、問題
は回収率が低いことです。環境省と経産省は、2005 年度のリサイクル対象家電数は 2287
万台、そのうちメーカーへ回収されたのは 1162 万台と推計しています。残りは中古市場
や海外市場へ流れたり、あるいは不法投棄されていると見られています。話は少し複雑に
なりますが、日本はバーゼル条約に加盟していますが、バーゼル禁止修正条項を批准して
いません。したがって、「リサイクル」目的での有害廃棄物の途上国への移動は可能とな
っています。鉛等の有害物質を含有した廃家電は、途上国でリサイクル等に回されますが、
このような国々は一般に環境意識や制度面で立ち後れ、また、安全面での設備も十分では
ありません。そのため、廃家電に含まれる有害物質やリサイクル工程で使用される化学物
質が、労働者の健康被害や周辺の環境汚染を引き起こすことが懸念されています。
特定化学物質の環境中への排出量を把握するための制度として PRTR 制度があり、事業
者は工場等で環境中へ排出した化学物質の量を届け出ることになっています。東京都の調
査は、事業者の届出量はその取扱量の十数%であり、残りの大半は製品として出荷される
ことを示しています。このような製品としては、テレビなどの家電製品ばかりでなく、洗
剤や殺虫剤、塗料、農薬など様々なものがあげられ、それらの多くは私たちの日常生活の
中で使用され、直接的・間接的にわれわれの生活を快適に、また便利にしてくれます。そ
して最終的には廃棄されますが、廃棄過程において先に述べた問題が残されています。
水俣病に代表されるように、かっての化学物質が関与した公害や環境問題の多くは企業
の廃棄物が原因でした。社会的な環境意識の高まりや環境技術の進歩、取組の進展などに
より、現在ではそのような問題は少なくなっています。現状を見ると、経済活動のグロー
バル化が進んでいることもあって、私たち市民の生活を豊かにしている化学物質を含む製
品が、その廃棄過程において、環境問題を引き起こすという構図が浮かび上がってきます。
この問題と私たちはどのように向かいあっていけばいいのでしょうか。
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