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地域活動との協働・支援のあり方に関する提言

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地域活動との協働・支援のあり方に関する提言
横浜市における
地域活動との協働・支援のあり方に関する提言
∼新しい時代の「協働」を目指して∼
平成17年2月
地域活動との協働・支援のあり方検討委員会
は じ め に
本検討委員会は、「地域活動との協働・支援のあり方について」提言を行うこと
を目的に、平成 16 年 5 月に設置され、これまで7回の検討を行ってまいりました。
ここでいう「地域活動」とは、「地縁組織としての自治会町内会の活動」を対象と
しています。
自治会町内会は、これまでも地域住民の福祉の向上や地域コミュニティの醸成に
大きく寄与するとともに、行政と地域住民を結ぶ基礎的な組織として、様々な行政
サービスを協働で担うなど重要な役割を果たしてきました。
近年、防犯・防災や環境対策など地域における課題が増大、多様化する中で、よ
り安全に安心して生活できるまちづくりに向けた自治会町内会活動など、地域コミ
ュニティの活動の重要性が再認識されています。
一方、社会構造の変化や価値観の多様化などが進んでおり、自治会町内会は加入
世帯の減少や、役員の高齢化、担い手不足など様々な課題を抱えています。
本検討委員会では、自治会町内会の主体的な活動を基本とした、より活発な活動
が展開できる環境づくりをめざして、検討をすすめ、10 月 15 日には中間報告を発
表しました。その後、自治会町内会をはじめ、市民の方々からも多くのご意見をい
ただき、それらを参考にしながら、提言としてまとめました。
中間報告をきっかけに横浜市町内会連合会から、意見書をいただいたのをはじめ、
自治会町内会の皆様には多くの活発な議論をいただきましたことに、心から感謝申
し上げます。
横浜の地域活動のより素晴らしい発展により、地域コミュニティがさらに元気に
なることを期待し、提言をまとめさせていただきましたが、この提言を、行政も今
後の施策化の中で是非、活かしていただき、横浜がより安全で安心なまちに、そし
て次世代に継承できる住みやすい潤いのあるまちになることを願ってやみません。
平成 17 年 2 月
地域活動との協働・支援のあり方検討委員会
目
Ⅰ 本検討の主旨
Ⅱ
1
次
∼地域と行政との望ましい関係づくりに向けて∼
自治会町内会が果たしてきた役割
……… 4
住民による住民のための参加の場
……… 4
2 行政と地域をつなぐ窓口
Ⅲ
……… 2
……… 5
地域活動の現状と課題
……… 6
1
地域活動をめぐる環境の推移
……… 6
2
自治会町内会活動の現状と課題
……… 7
3
市民からみた地域活動
………10
Ⅳ
地域活動との協働・支援のあり方・再構築の視点
………12
1
地域活動との協働にあたっての自治会町内会への期待
………12
2
自治会町内会と行政との関係性の再構築にむけた課題
………14
Ⅴ
21 世紀にふさわしい横浜の「地域活動との協働・支援」のあり方
(提言) ∼新しい時代の「協働」をめざして∼
………15
1
地域活動との協働の基本理念(めざすべき姿)
2
協働を進めるにあたっての基本姿勢
∼行政が変わる! 地域も変わる! 市民も変わる!∼
3
………17
新しい協働・支援の具体策
∼「双方向の関係づくり」と「多面的支援」の時代へ∼
5
………16
協働・支援の基本的方向性
∼横浜における地域自治の確立に向けて∼
4
………15
今後に向けて
………20
………26
資 料 編
………27
資料1
協働の指針(抜粋)
………28
資料2
自治会町内会の沿革
………30
資料3
地域活動の現状と課題
………31
資料4
ヒアリング調査 意見概要
………42
資料5
中間報告書に対する市民意見等
………47
資料6
市内地域活動実践事例
………52
検 討 経 過
「地域活動との協働・支援のあり方検討委員会」委員名簿
1
………56
………57
Ⅰ
1
本検討の主旨
∼地域と行政との望ましい関係づくりに向けて∼
「新しい公共」の時代の到来
国においては、平成 16 年 5 月地方自治法が改正され、住民との結びつきを強化
するための「地域自治区」の制度が創設され、住民自治の実現に向けた取り組みが
進められています。また同じく 5 月には国民生活白書が発表され、多様化するニー
ズに対応するための地域活動への大きな期待が盛り込まれ、地域の位置づけを改め
て考え直す必要性が示されています。
横浜市においても多様な市民ニーズに対応していくため市民、団体、企業などの
様々な主体が力を合わせて地域課題に対応する方向性を示した「協働推進の基本指
針」(P3 参照)を平成 16 年 7 月に策定しています。
この流れは行政側からだけではなく、安全・安心で快適な生活を自らの力で守っ
ていきたいと願う住民の側からもおこりつつあります。増大・多様化する地域課題
に対応するためには、行政だけでなく市民自らが主体的に「公共」にかかわり、と
もに「新しい公共」(P3 参照)を担っていく時代が到来しているといえます。
2
市民活動を織りなす二つの系譜
市民が担う公共的な活動には、NPOやボランティア活動などのように有志によ
る“特定の課題や目的に対応する事業・活動”(テーマ型活動)と、全員参加型で
“緩やかなつながりを大切にしながら、地域の様々な課題に対応する自治会町内会
活動”(地縁型活動)があります。この二つの活動は異なる系譜を持ちながら地域
課題に対応してきましたが、市民からみると、相互に補完的・相乗的な関係にある
ともいえます。テーマ型活動の中からも自治会町内会との関係づくりは欠かせない
との声も聞かれます。
今後は地縁型活動(横糸)とテーマ型活動(縦糸)がそれぞれの特性を活かしな
がら、より豊かな市民社会を織りなしていくことが期待されます。
3
自治会町内会との協働・支援のあり方・再構築の必要性
自治会町内会は市民にとって地域活動に参加するためのもっとも身近な場であ
り、行政の公共的なサービスを補完代行するなど重要な役割を担ってきました。し
かし、昨今のライフスタイルや意識の変化などから近隣との関係が希薄化する中、
自治会町内会への加入率の低下とともに、地域コミュニティの活力の低下も懸念さ
れています。また、一部には自治会町内会の活動内容がわかりにくい、活動に参加
しにくい、行政からの助成費がどう使われているのかなど、活動や財政についてよ
り公開や透明性を求める声もあがっています。
地域ニーズが多様化し、多くの担い手が求められる時代において地域活動への参
加促進と活動の活発化など地域コミュニティの再生に向けて、自治会町内会と行政
とが互いの立場と役割を尊重した新しい協働・支援のあり方が求められています。
2
4
検討の対象
地域活動には自治会町内会だけでなくボランティア活動やNPOなどが行う地
域での活動も含まれますが、本検討では自治会町内会の活動を対象として検討しま
す。これまでの自治会町内会の果たしてきた重要な役割を認識した上で、時代の流
れや様々な環境の変化を踏まえて、新しい協働のあり方や支援策について検討し提
言を行うものです。
新しい公共
公共とは、国家や行政のみが担っていると考えられてきましたが、民間の中にも
公共的な活動を担っていこうとする意志や力が存在してきています。公共を、「市
民みんなにかかわること」として、行政と市民社会の様々な主体が、役割分担を改
めて見直しながら協働して支えるという「新しい公共」の概念を市民とともに構築
していく必要があります。
協
働
協働とは「公的サービス」を担う異なる主体が、地域課題や社会的な課題を解決
するために、相乗効果を上げながら、新たな仕組みや事業を作り出すことや取り組
むこととされています。
協働推進の基本指針
様々な主体が行政と協働し、地域課題を解決していくにあたっての協働の考え方
や進め方などへの理解を深め、共通認識を持って協働を進めていくために、平成 16
年 7 月に策定されたものです。(概要は P28 資料編-資料1参照)
3
Ⅱ
1
自治会町内会が果たしてきた役割
住民による住民のための参加の場
(1)住民同士の親睦と絆づくり
自治会町内会は、それぞれの地域に起こる様々な課題を解決し、住民相互の親睦
を図ることを目的に自主的に組織された住民団体で、その起源は明治の時代までさ
かのぼることができます。その後、戦後の混乱期や高度経済成長の時代を経て現在
に至っています。(P30 資料編-資料 2 参照)
地域に住む人なら誰でも会の趣旨に賛同して加入できる組織であり、地域を包括
した基礎的な住民組織です。運営も住民が自主的に行い、地域住民の福祉増進を主
な目的にレクリエーションや福利厚生など様々な事業を行ってきました。
そのような中で、自治会町内会は新旧住民の交流や親睦を図るとともに、回覧板
を回しあいながら顔のみえる関係を保ちつつ、いざという時に助け合える住民同士
の「絆」を育むとともに地域コミュニティを醸成する役割を果たしてきました。
(2)地域文化の伝承と創造
各地域には、伝統や歴史のある様々な祭りや行事がありますが、自治会町内会に
よるそれらへの参加、協力は新旧住民の連帯感を育むと同時に、住民のふるさと意
識、地域への帰属意識を高めてきました。
また、これらは地域の伝統文化の継承や新しい地域文化の創造に大きく貢献し、
地域生活に潤いをもたらすとともに、横浜らしさを下支えする力にもなってきたと
考えられます。
(3)地域課題の解決
地域にはそれぞれの時代ごとに様々な課題が生じます。特に横浜の場合は、急激
な人口増加や高度経済成長の中で公害・交通・ごみ問題などをはじめ、生活環境・
住宅問題などの多くの都市問題が発生しました。
横浜市の自治会町内会は、その時々で地域の課題に目配りし、その解決に積極的
に取り組んできた他、地域の将来や住民要望を把握しながら、地道に対応していく
力を蓄えてきました。
住民にとっては、災害など不測の事態や緊急の課題にも対応する、最も身近な拠
り所ともなってきました。
様々な地域課題の解決に際しては、住民同士でできること、地元の商店街、学校、
各種団体、近隣地域等と協力して取り組むこと、また、行政等に要望することなど
を整理し、連絡調整する主体的な役割を果たしてきました。
地域の課題は、ますます多様化しており、これまで果たしてきた役割を踏まえな
がら、地域における新たな課題への対応、解決に向けての合意形成や具体的な取り
組みなど自治会町内会には期待が高まっています。
4
2
行政と地域をつなぐ窓口
(1)行政情報の伝達
横浜市の自治会町内会は、昭和 31 年からの「広報よこはま」配布をはじめ、ポ
スター掲示、回覧等の媒体を通じ、行政情報を住民にくまなく伝える役割を担って
きました。
その後、情報通信手段の発達や自治会町内会未加入者の増加などにより、回覧等
による全戸への情報伝達の機能はやや低下しつつありますが、行政と地域をつなぐ
大事な調整役として、地域における情報の共有化、コミュニケーションづくりに貢
献してきました。
(2)行政サービスの補完・代行
地域課題や住民ニーズが多様化する中で、福祉、衛生、環境などの分野における
各種委員の推薦など行政の様々な事業・行事への自治会町内会の協力・取り組みは、
高度経済成長期など制度の追いつかない時期に行政サービスの補完代行を果たす
など重要な役割を担ってきた経緯があります。
また、横浜市では従来から、防犯灯の設置は行政が行い、維持管理(電気代、補
修管理)は自治会町内会が担ってきています。
自治会町内会は、その他に地域の防犯・防災・防火、環境衛生、美化活動等の身
近な公共的活動を担っていますが、現在、これらの活動へは行政から包括的な謝礼
として「地域振興協力費」などが支払われています。
自治会町内会が担っている身近な公共的活動
○防犯灯の維持管理
○防犯・防災・防火活動
○各種広報物の配布、ポスターの掲示、回覧
○各種委員の推薦(民生委員・児童委員、主任児童委員、保健活動推進員、
環境事業推進員、体育指導委員、青少年指導員、
家庭防災員、消費生活推進員ほか)
○G30 の取組み、環境美化活動
○社会福祉活動(日赤、共同募金など)への協力
○選挙実施への協力
○国勢調査等の各種調査への協力・調査員の推薦
○学校と連携した諸活動
○その他市政、区政への協力など
5
Ⅲ
1
地域活動の現状と課題
地域活動をめぐる環境の推移
(1)地域課題の増大・多様化
防犯、防災、環境問題、高齢者福祉など、身近な地域での解決が必要な課題は増
大・多様化し、行政施策の充実とともに住民の主体的な関わりが期待されています。
複雑化する社会の中で、支援を必要とする高齢者や障害者、在住外国人など特定
の人々だけでなく、誰もが状況によって地域の中で何らかの支援を求める可能性を
もっています。
地域の実情に即したきめ細かな対応や、住民同士の目配りや支え合い、思いやり
を育む環境がますます大事になってきています。
今後行政が充実すべきもの(複数回答可)
0
10
20
40 %
30
防犯対策
36.2%
違法駐車の防止や交通安全対策
33.3%
高齢者福祉
31.0%
地震などの災害対策
29.5%
28.0%
ごみの不法投棄対策や街の美化
26.5%
病院や救急医療など地域医療
24.9% (N=2,092)
高齢者や障害者が移動しやすい街づくり
資料:平成 15 年度横浜市市民意識調査
(2)市民の地域への参加機会などの変化
市民が地域に参加する機会や状況なども変化してきています。
ア
人口・世帯構造の変化
少子高齢化、世帯規模の縮小化などにより、各世帯の地域活動を担う力が減退
しつつありますが、今後は団塊の世代が定年を迎えると、活動の担い手として参
加することが期待され、地域の様相も変わることが予想されます。
(P31 資料編-資料 3①参照)
イ
定住意向の変化
現住地への定住意向は、地域差がありますが、「住み続ける」との回答は平成
元年の 77%をピークに低下傾向となり、平成 15 年には 67%となっています。
また、自治会町内会の約6割が 30 年以上の活動歴を持つのに対し、市民の現
住地への居住年数をみると半数以上が平成以降に居住した住民となっています。
(P33 資料編-資料 3②参照)
6
ウ
自治会町内会への加入率の低下
横浜市の人口・世帯数は増加傾向にあったことから、自治会町内会加入世帯数
を増やしてきましたが、ライフスタイルの変化、行動範囲の広域化、個人生活重
視など近隣関係が希薄化する中で自治会町内会への加入率は近年低下し、自治会
町内会が未加入世帯への対応に苦慮する場面も増えています。
(P31 資料編-資料①参照)
エ
多様な参加機会の広がり
最近では、地域課題解決のためのボランティア団体やNPOなどの公益的な活
動が活発化し、自治会町内会以外にも参加する機会が広がってきました。
(P35,P36 資料編-資料 3③④参照)
2
自治会町内会活動の現状と課題
*15 年度自治会町内会実態調査(以下「実態調査」と記載)
特に断りのないものは平成 16 年度アンケート調査結果
(1)自治会町内会の運営
∼組織の規模・体制は千差万別∼
ア
組織の歴史と規模
横浜市には 2,835 の自治会町内会(平成 16 年 4 月 1 日現在)があります。高
度成長期を通じての住宅開発などによる人口流入にともない、組織数は増えてき
ましたが、最近は横ばいとなっています。活動年数は総じて長くなってきており、
設立後 30 年以上経つ組織が6割
(うち3分の1が設立後 50 年以上)を占めます。
組織の規模は、100 世帯以下から 1,000 世帯以上まで様々(平均 444 世帯:実
態調査)で、班構成も「班なし」から「70 班以上」まで幅があります。
イ
財政及び活動拠点
自治会町内会の財政は、会員からの会費収入(月 200 円∼300 円台が一番多い)
と行政からの地域振興協力費(1,000 円/年/世帯)などです。実態調査による
と財政規模の平均は1団体あたり約 394 万円となっています。
活動拠点として、約7割が自治会町内会会館を持っていますが、「会所有」は
半数程度で、「借用」も少なくありません。
(P37 資料編−資料 3⑤参照)
ウ
役員
会長は、60 歳以上が4分の3を占めています。選出方法は、推薦制6割、輪番
制2割、投票制1割で、大半が会長職に1∼2年の任期を設けていますが、実際
の在職年数は「5年以上」が4割弱に上っており、役員の高齢化や、担い手不足
が大きな課題となってきています。
(P37 資料編−資料 3⑤参照)
7
エ
運営上の課題意識
組織運営上の悩みとしては、①役員のなり手がいない、②役員の高齢化、③行
事等参加者が少ない、④未加入世帯の増加など、「担い手」と「参加」の問題が
上位を占めています。
(P38 資料編-資料 3⑥参照)
自治会町内会の活動上の問題点(複数回答可)
0
10
20
30
40
50
54.7
役員のなり手がいない
役員の高齢化
42.4
行事等参加者が少ない
未加入世帯の増加
41.7
自治会町内会館がない
予算の不足
60 %
29.4
9.7
8.2
21.1
20.0
その他
無回答
資料:平成 15 年度自治会町内会実態調査
(2)自治会町内会の活動状況
∼多岐に亘る活動∼
ア
事業実施状況
自治会町内会が実施する事業としては、実施率が高い順に①掲示板の管理、②
清掃等街の美化事業、③防災防犯活動、④防犯灯の維持管理、⑤敬老会、⑥慶弔
事業、⑦子供会育成、⑧資源回収・リサイクル、⑨名簿の作成、⑩青少年活動な
どがあります。
その他の活動も含め、自治会町内会の活動は極めて多様です。
(P37 資料編-資料 3⑤参照)
イ
今後の活動意向
平成 16 年度調査で「今後取り組みたい活動」について聞いたところ、何らか
の活動を挙げた組織が9割近くみられました。内容としては、①防犯活動、②G
30 やリサイクル、③防災、④親睦活動などが多く挙げられています。
一方「縮小・停止したい活動」については、①委員推薦が最も多く、次いで②
行事、③広報物の配布などが挙げられています。
8
(3)行政との関係
∼“負担軽減”と財政的支援の“合理化”が望まれている∼
ア
委員推薦
各種委員の推薦が「難しくなってきている」という実感が高まり、「委員等の
仕事の種類によって、自治会町内会の推薦と公募制を併用すべき」との考え方が
多くみられます。
イ
回覧物
「自治会町内会の情報も一緒に回覧しており、有効な情報媒体」、
「行政情報の
回覧は必要なので現状でよい」との見方が過半数を占める一方、「内容を厳選し
数を減らして」など、工夫も求められています。
行政の側でも、配布物の軽減、各課による依頼事項の調整、窓口の一元化など、
内部的な効率化、地域との関係の合理化などが望まれます。
行政からの依頼が負担となる業務(複数回答可)
0
10 20
30
40
50 60
70 %
65.5
委員の選出・住民意思の取りまとめ
58.8
会議等への出席・動員
35.3
34.3
物品・金品等の募集・配布
ちらし類の回覧
「広報よこはま」区版等の配布
16.7
15.2
ポスター類の掲出
4.9
その他
1.1
無回答
資料:平成 15 年度自治会町内会実態調査
ウ
財政支援
平成 16 年度調査で地域振興協力費については、「現状維持・継続希望」などの
意見が7割を占めていましたが、見直し検討が必要との意見も1割以上みられま
した。①防犯灯の維持管理費の過不足感、②募金や分担金の扱い(合理化など)
に関わる指摘が目立ちました。
また、自治会町内会は、各種募金等の集金の窓口にもなっていますが、
「世帯か
らの寄付のみ」という団体は3割で、6割の自治会町内会は全額又は一部を「会
予算から」拠出している状況にあります。
9
(4)地区連合町内会
∼地域での活動のほか、地域の課題を行政につなぐ∼
ア
運営体制
自治会町内会は、地区ごとに連合自治会町内会(地区連合町内会)を形成して
います。地区連合町内会は、現在市内に 247 団体(平成 16 年 4 月 1 日現在)あ
り、全自治会町内会の 93%が加入しています。
地区連合町内会長は、過半数が 70 歳代以上で、ほとんどが複数の役職を兼任
しています。自治会町内会同様、高齢化と担い手不足が課題となっています。
(P37,38 資料編-資料 3⑤⑥参照)
イ
活動内容
自治会町内会間の連絡調整のほかに、地区を単位とする様々な事業を実施して
います。実施率が高い順に①青少年活動、②防災防犯活動、③清掃等街の美化事
業、④子供会育成/慶弔事業、⑥交通安全活動、⑦敬老会、⑧婦人活動など多彩
に実施しています。活動の担い手に苦慮する自治会町内会が増える中、単位組織
の活動を地区連合町内会で実施する傾向もみられます。
地区連合町内会は行政に対する要望として、バス路線や信号機設置などの「交
通問題」、公園・道路整備などの「都市基盤整備」、地区センター・ケアプラザ整
備などの「公共施設」に関わる項目を多く挙げています。(実態調査から)
地域問題を行政につなぐ役割の大きさが反映されているといえます。
(P37,38 資料編-資料 3⑤⑥参照)
ウ
活動上の課題
活動上の課題としては、記述が多い順に「役員のなり手がいない」、
「地区セン
ター・ケアプラザの整備」、「地域活動への参加が少ない」、「未加入世帯の増加」、
「違法駐車・放置自転車」、「会館の整備」、「防犯対策」などがあげられ、住民の
地域への参加を促進する必要性が認識されている様子がうかがえます。
(P38 資料編-資料 3⑥参照)
3
市民からみた地域活動
(1)市民活動への参加状況
∼自治会町内会は、市民活動参加への玄関口∼
平成 14 年度の市民意識調査結果をみると、市民活動に「参加している」との
回答が4割に上り、横浜市民の市民活動への参加率の高さが示されています。
「参加している活動」は、①自治会町内会の活動、②文化芸術スポーツ活動、
③祭や盆踊り運動会などのイベント、④資源回収やゴミ分別・リサイクル活動、
⑤子供会・婦人会・老人クラブなどで、自治会町内会やこれを基礎とするような
活動が上位を占めています。
「活動のきっかけ」も、
「地域の活動として参加する
きっかけがあったから」が半数に上っており、自治会町内会が活動参加への玄関
口になっている様子がうかがえます。
(P35 資料編-資料 3③参照)
10
(2)地域参加の実感
ア
∼行政等との協働で地域課題に取り組みたい∼
「協働」志向
横浜市民は、「祭やイベント」、「身近な道路や公園の清掃」は「市民主体で」、
「建物についてのルールやまちなみづくり」、
「身近な水辺や緑地などの自然環境
保全」などは「行政主体で」と考えていますが、高齢者・障害者・子育て対策、
国際交流、リサイクルなど多くの分野で「市民と行政の協働で進めることがふさ
わしい」と考えていることがわかります。
市民が考える望ましい活動の主体
0%
高齢者や障害者への手助けや交流などの福祉活動
20%
7.9
40%
20.0
25.6
13.7
14.1
在日外国人や海外との交流・支援などの活動
子育て支援や青少年の健全育成
交通安全や防災・防犯などの地域の安全活動
7.6
12.9
10.6
建物の用途や高さなど建物についてのルールや美しいまちなみづくり 4.4
市民(団体)
(N=2,059)
2.0
41.0
17.9
23.4
43.1
行政
5.8
54.8
3.4
20.3
51.3
2.8
50.0
4.4
31.8
28.6
3.0
41.6
74.3
身近な水辺や緑地(里山など)などの自然環境の保全 4.6
100%
3.9
16.0
祭や盆踊り、運動会などのイベント
資源回収やごみの分別、リサイクル活動
80%
68.2
39.4
身近な道路や公園などの清掃活動
文化・芸術・スポーツの参加や振興
60%
56.3
7.5
5.1
64.1
3.4
62.6
48.1
市民(団体)と行政が協働して
4.4
わからない
資料:平成 14 年度横浜市市民意識調査
イ
市民活動に必要な支援
「市民活動を活発にしていくために必要なこと」については、①必要な情報の
提供、②経済的支援、③活動場所の提供が上位に挙げられています。
参加・協働の前提として、「情報の提供・共有化」が最も重要なことと認識さ
れている様子がうかがえます。
(平成 14 年度市民意識調査より)
ウ
自治会町内会活動に対する評価
自治会町内会は担い手が不足する中で、環境問題や防災など大切な活動を行っ
ていることや、役員も大変であると理解されている一方で、一部において活動内
容が見えにくいという声や、行政からの助成についてより公平性、透明性を求め
る声もあります。
一方、薄れがちな地域のつながりを取り戻すために自治会町内会の活動への期
待も大きく、今後は、活動の負担感を減らした上で、さらに参加がしやすい組織
にしていくことが求められています。
(P40 資料編-資料 3⑧参照)
11
Ⅳ
1
地域活動との協働・支援のあり方・再構築の視点
地域活動との協働にあたっての自治会町内会への期待
(1)地域におけるこれからの「協働」のあり方
協働とは「協力して働く」ことですが、行政と市民との協働には、課題の解決の
ために「互いに対等の立場で働く」という意味が込められています。
これまでも行政と市民は協働により、様々な課題に対応してきましたが、互いの
間には「してもらう・してあげる」という関係がありました。しかし、新しい協働
関係を望むとすれば、それぞれに何ができるか自覚し、コミュニケーションをとり
ながら、互いの立場やできることを確認しあって取り組んでいくことが重要です。
地域の実情、課題、地域自治の姿は一律ではありません。地域ごとに話し合いな
がら進めることが重要です。
(2)これからの「協働」に向けての自治会町内会の役割
ア
コミュニケーションと合意形成の場として
住民と住民、住民と行政が、対等の立場で地域ごとに異なる課題に取り組むと
き、自治会町内会のような地縁による組織の存在は、地域のコミュニケーション
の基礎として極めて貴重です。
特に、身近な地域の課題解決のために合意形成を必要とする時、自治会町内会
のような有効な機能をもつ組織は他にはありません。
行政が用意したこれまでの参加機会だけでなく、今後は、地域の側が用意した
参加や合意形成の機会に、行政も参加するような場づくりも必要になってくると
考えられます。
イ
地域課題解決の担い手として
身近な地域を、安全・安心な住みよい地域にしていきたいという願いは、市民
の間でますます高まってきています。
その願いを自ら実現していくための場として自治会町内会があり、市民はこの
場を最大限に活用し、活動を通して築いた「絆」を、課題解決への力として発揮
していくことができます。
時代によって様々な地域の課題があり、これまでも環境美化活動、防災防犯活
動、青少年の健全育成など、公共的な活動を担ってきましたがこれからもその活
動を担う主体としての役割が期待されます。
12
ウ
「協働」の基盤として
市民は行政との協働の基盤として自治会町内会を活用することができます。
横浜市も、「協働推進の基本指針」(平成 16 年 7 月)の中で、自治会町内会を
“公共を担う協働の主体”として位置づけ、地域課題解決のための一番身近で基
礎的な活動団体として期待しています。
自治会町内会は、すべての住民に門戸をひらくとともに、市民と行政をつなぐ
最も基礎的なネットワークとして、日々の生活に根ざした活動をしてきました。
ここに、住民自治と協働の基盤としての大きな資質があるといえます。
エ
更なる市民活動推進のために
地域の課題解決の担い手は、自治会町内会のみならず、様々なボランティアや
NPO、学校、企業、施設、地域の公共機関や専門家、そして一人ひとりの住民
です。地域では、ニーズの多様化に従い、ますます多くの担い手が必要になって
きています。そして、様々なサービスを市民の発想から担おうとする多様な動き
が興ってきています。
地域の身近な公共的活動の担い手を確保していくためには、地域のニーズや供
給力をよく知る立場にある自治会町内会が、ボランティアやNPO等と連携しな
がら互いに協働していくことも大いに期待されます。
今後はますます、市民の力が活かされるような様々な協働の形が生まれてくる
と考えられます。その舞台として、今ある自治会町内会のネットワークを活用す
ることは、市民にも行政にも大いに有効と考えられます。
(3)地域での望ましい協働を実現するために
自治会町内会には次のようなことが期待されます。
●地域を取りまとめる組織として、住民への周知や加入促進を図り、より参加し
やすい組織づくりを進めることが望まれます。
●「地域における公共的な活動を担う主体」として重要な立場にあり、行政との
協働をすすめていく上でも、さらに透明性、公開性のある運営が期待されます。
●地域づくりのために地域の様々な力が発揮されやすいように、それぞれをつな
ぎ、調整するような「地域のとりまとめ役」としての機能が期待されます。
●地域の中で情報を共有し、問題を提起するなど、行政と対等に協議・協働する
力をさらに備えた組織としての活躍が期待されます。
13
2
自治会町内会と行政との関係性の再構築にむけた課題
(1)新しい時代における協働の関係づくり
協働の原則(参照 P16)に則り、
「してもらう・してあげる」から「力を出し合う」
関係への転換を図る必要があります。
行政には、自治会町内会に何でも依頼するのではなく、公的責任の遂行、企業や
他の市民活動との連携も踏まえた上で、双方向型のコミュニケーションを基本に地
域と協働していく姿勢が求められます。
自治会町内会も、自らの力を蓄え活かしていくとともに、行政以外の連携先も見
極めつつ、自主性・主体性をもって地域課題と向き合っていくことが重要です。そ
して、そのことを一人ひとりの市民が十分心に止めていくことも必要です。
(2)市民からみて透明・公平な納得のいく関係に
一人ひとりの市民からみれば、地域の課題が適切に解決されるのであれば、その
主体が行政であっても、自治会町内会であっても、ボランティアやNPOであって
もいいのです。関心があるのは、そのために自らが払うべき労力・時間・経済的負
担などの現実的なことであり、合意形成やお金の流れが透明で公平であるかどうか
ということが重要です。
自治会町内会と行政は、長い歴史の中で今日の関係を築いてきましたが、今後は、
より透明・公平な関係づくりを進める必要があります。
(3)地域コミュニティの再生をめざし様々な力が活かされるまちに
自治会町内会が地域の基礎組織として公共的活動などの活発化をすすめること
で地域コミュニティを再生する力になることが期待されます。また多様化する地域
ニーズに対応するには、様々な人・団体・機関の力が発揮される必要があります。
自治会町内会以外にも様々なテーマによる市民活動等が展開され、住みよい地域の
コミュニティづくりに貢献しています。
自治会町内会に財政面や活動場所の提供などの支援をうけて活躍する活動団体
もたくさんあり、自治会町内会にはそれらの活動を後押しする力になることが期待
されます。また、自治会町内会と他の活動団体との連携が図れるよう、行政もきっ
かけづくりを行うなど、地域の中の様々な力が活かされるような検討も必要です。
14
Ⅴ
21 世紀にふさわしい横浜の「地域活動との協働・支援」のあり方(提言)
∼新しい時代の「協働」をめざして∼
1
地域活動との協働の基本理念(めざすべき姿)
自治会町内会との関係を、
「地域における 21 世紀にふさわしい協働関係」を築く
ための基礎として捉え、次のような理念を掲げることを提言します。
21 世紀の横浜にふさわしい地域との協働の「基本理念」
●地域とは市民にとってまちづくりを協働で進めるためのもっとも身近な舞台
である。
●地域を構成する市民は、地域コミュニティの一員として住みよい地域づくり
に主体的に参画する立場にある。
●自治会町内会は、住民の立場で参加する地域活動の場であり地縁を中心にし
た身近な地域の公共的活動を担う主体の一つである。
●行政は、活力ある地域づくりを進めるため、新しい時代にふさわしい地域と
の協働関係をつくり、様々な地域の力が活かされる環境づくりに努める立場
にある。
市民のライフスタイルや価値観の変化とともに、地域の中の生活課題も増大、多
様化していることから、市民も地域コミュニティの一員として様々な形で地域活動
へ参加し、地域の課題を共有しながら、協働して解決していく姿勢が期待されます。
自治会町内会には地域における身近な公共的活動を担う主体の一つとしての活
躍が期待されますが、地域のニーズも多種多様な現在、自治会町内会に期待される
活動も一律ではありません。
課題解決に必要な公共的活動の範囲(質と量)は地域ごとの協議を必要とします
が、行政には地域からの働きかけに応じて、地域の力が充分生かされるよう多様な
支援と環境づくりが求められています。
地域を舞台に、住民を主役とする活動が豊かに展開
∼住民・自治会町内会・行政は、力を出し合って「地域の底力」を培う
自治会町内会
市民(住民)
地域
行政
住 民
他の民間団体
各種団体、機関、ボランテ
ィア、NPO、企業、学校
15
2
協働を進めるにあたっての基本姿勢
∼行政が変わる!
地域も変わる!
市民も変わる!∼
基本理念に描かれた地域活動の姿を実現するため、市民・自治会町内会・行政に
は、日々の具体的な活動の中で、次のような姿勢を持っていくことが求められます。
協働を進めるにあたっての「基本姿勢」
協働の原則(*)にもとづき、
●市民は、地域コミュニティの一員としての自覚をもち、主体的に地域と関
わる。
●自治会町内会は、より開かれた場での話し合いなどを通じて地域のニーズ
把握や課題の共有を図るとともに、身近な地域での公共的な活動を主体的
に担っていく。
●行政は、これまでの関係を協働の視点から再構築し、地域性を尊重しなが
ら、地域でのコーディネート役など総合的な協働・支援策をすすめていく。
(*)協働の原則
①対等の原則
②自主性の原則
④相互理解の原則
③自立化の原則
⑤目的共有の原則
⑥公開の原則
「横浜における市民活動との協働に関する基本方針」(平成 11 年 3 月)
自治会町内会と行政とがよりよい関係を築くには、相互の主体性に基づく協働の
関係づくりが必要です。そのためには行政がまず変わることが求められます。自治
会町内会への依頼業務を見直すことで自治会町内会がより主体的な活動に力を入
れることができるようになります。また、行政職員がともに地域を担う当事者とし
ての意識をもち、調整力を発揮することで、地域の様々な活動団体が相互に連携し
て課題解決に取り組むこともできます。
自治会町内会も、「地域の基礎組織」として積極的なニーズ把握や課題共有を進
め、協働の原則に基づいたより透明性の高い運営を目指すことが望まれます。
このような過程を通じ、地域での様々な活動が活発になることで、市民の地域へ
の関心も高まることが期待できます。
行政が変わる、地域も変わる、そして市民も地域に関心を持つことが協働の基礎
を築くことになります。
16
3
協働・支援の基本的方向性
∼横浜における地域自治の確立に向けて∼
現在、横浜には 350 万人を超える「横浜市民」が生活しています。数年後には団
塊の世代が定年を迎えるなど、ますます「民の力」が期待される時代において、多
くの潜在力があることは横浜の最大の強みともいえます。
地域における協働を進めていくことは、横浜における地域自治の確立につながる
大きなテーマです。検討の主旨でも述べたとおり、国の動向に地域自治区の流れが
ありますが 、住民自治の制度化と地域活動の組織との関係については今後の検討
課題と考えます。
この検討委員会では横浜の地域自治の確立を展望しつつ、その基盤として自治会
町内会をとらえ協働・支援の方向性を提言します。
地域活動との協働・支援の基本的方向性
∼「双方向の関係づくり」と「多面的支援」の時代へ∼
●「してもらう・してあげる」から、協議してともに築く協働関係へ
●「一律的」な支援から、地域の実情に即した「合理的な支援」へ
●「地域コミュニティの再生」をめざし様々な力が活かされるまちへ
自治会町内会・行政の共通テーマ
協働・支援策の方向
(1)協働のための関係づくり
双方向型のコミュニケーションの体系づ
くり
ア 行政職員の意識改革
イ 市連会・区連会支援策の再構築
(2)財政的支援策等の再構築
無理のない合理的な支援策の再構築
ア 行政依頼業務の整理
イ 財政的支援策等の再構築
(3)地域力の再構築
地域の元気づくり支援
ア 地域活動への参加の呼びかけ
イ 組織運営活発化への支援
ウ 他の市民活動との連携・支援
17
(1)協働のための関係づくり ∼双方向型のコミュニケーションの体系づくり∼
これまで自治会町内会を介した行政と市民との関係は、行政情報を地域に流す、
地域の要望を行政に伝えるといったものでした。しかし今後は、地域の側から行政
へと流れる情報体系づくり(意思決定、問題提起・提案等を含む)も重視し、双方
向型のコミュニケーション体制をつくることが重要です。住民の視点からニーズを
把握し、地域情報を共有し行政への提案や協議する場づくりも必要です。
ア
イ
行政職員の意識改革
新しい時代にふさわしい関係を構築するため、自治会町内会に回覧や行事への
参加など安易に依頼する姿勢を改める必要があります。新しい事業を進めるにあ
たって、自治会町内会と協働する必要がある場合は、事前の協議やコミュニケー
ションを図りながら自治会町内会の主体性を尊重し進める必要があります。
市町内会連合会(市連会)・各区自治会町内会連合会(区連会)への支援策の
再構築
市連会・区連会はこれまでも住民と行政との協議や連絡調整の窓口として重要
な役割を担ってきましたが、さらに活発な「情報交換や研究の場」として、ある
いは事務局を行政内部から外部化する手法もとるなど地域の実情にあわせた新
しい運営が期待されます。
行政と自治会町内会が対等の立場で議論する仕組みづくりが協働の第一歩と
考えられます。
(2)財政的支援策等の再構築
∼無理のない合理的な支援策の再構築∼
ア
行政依頼業務の整理
委員委嘱の推薦や広報配布、回覧依頼や行事への動員など、自治会町内会に負
担となっている依頼業務を見直し、行政サービスの補完・代行は極力削り、地域
が自らの主体的な活動や、行政との有効な協働に取り組めるよう支援することが
求められます。
イ
財政的支援策等の再構築
地域振興協力費などの財政的支援については、防犯灯維持管理費の負担のあり
方や、活動に見合った助成方法の検討など、新しい時代にふさわしい、より公平
で透明、かつ合理的なシステムに再構築することが求められます。また、市連会・
区連会・地区連合町内会への助成のあり方も再構築が必要です。
また、他団体からの募金や各種団体の分担金の負担の仕組みも、わかりやすい
納得のできるシステムに再構築していくことも求められます。
18
(3)地域力の再構築
∼地域の元気づくり支援∼
ア
地域活動への参加の呼びかけ
地域での住民同士のつながりが希薄化しており、地域課題解決のためには、多
くの市民が地域に参加することはこれからますます期待されるところです。
自治会町内会への加入促進は、自治会町内会が主体的に行うものですが、地域
の課題解決のためには、多くの市民の力が必要であり、自治会町内会をはじめと
する様々な地域活動の重要性を、行政も積極的に市民へ広報していくことが必要
です。
イ
組織運営活発化への支援
自治会町内会には、最も身近な「地域の基礎組織」として、課題解決力や企
画力を高めることが求められますが、その一方で、組織を担う人々が負担を感じ
ない運営の仕組みづくりが大切です。
自治会町内会の運営にあたって活動に必要な情報やノウハウを提供する支援
策が必要です。特に各区連会や地区連合町内会は、自治会町内会が活発な活動が
できるよう支援するとともに、他団体との連携や調整役を担うなど「地域のまと
め役・つなぎ役」としての機能も発揮できるよう行政も支援していく必要があり
ます。
ウ
他の市民活動との連携・支援
地域の担い手として様々なボランティア活動やNPOの活動がありますが、自
治会町内会の活動と連携する促進策も必要です。自治会町内会がすべての課題を
担うというより地域の中で目配りしながら他の団体との連携や調整役を担うな
ど様々な活動が活かされる支援策も必要です。
19
4
新しい協働・支援の具体策
∼「双方向の関係づくり」と「多面的支援」の時代へ∼
(1)協働のための関係づくり
∼双方向型のコミュニケーションの体系づくり∼
住民組織と行政が対等に協議する関係づくりにむけて、行政職員には協議し
ながら進める姿勢や地域に積極的に出向くなどの意識改革が求められます。
また市連会・区連会の主体的な活動を支援する新たな協働の関係づくりが必
要です。
ア
行政職員の意識改革
新しい時代にふさわしい関係を構築していくためには、回覧や行事、会議へ
の参加などを安易に依頼する姿勢を改める必要があります。
行事や会議の必要性を十分議論し、必要な場合はより参加しやすい休日や平
日夜間の時間帯に設定するなどの配慮が望まれます。
新しい事業を始めるときは、事前の協議やコミュニケーションを十分に図り
ながら自治会町内会の主体性を尊重し進める必要があります。
また、自治会町内会などのニーズ把握のために積極的に、自ら地域に出向き、
ともに協議する姿勢を持つことが大事です。区によっては「地域担当」を置く
例もみられますが、常に情報を提供し協議をする体制づくりや信頼関係を築く
ことができる職員の配置なども必要です。
イ
市連会・区連会への支援策
地域の基礎組織である単位自治会町内会の活発化を基本としながら、市連
会・区連会・地区連合町内会がそれぞれの役割を発揮し、主体的な活動を進め
ることができるような関係づくりが求められます。行政からの依頼業務や会議
の持ち方などについて、上意下達(連絡)型から双方向(協議企画)型へ転換
することが必要です
現在は事務局を行政が担っていますが、事務局の外部化を希望する区連会へ
は場所や人的支援の検討も必要です。
20
(2)財政的支援策等の再構築
∼無理のない協働関係づくりと合理的な支援策の再構築∼
自治会町内会への様々な依頼業務の軽減・見直しを図ることや、防犯灯維持
管理費などの支援の考え方を整理し、公平で合理的な財政的支援策等の再構築
が求められます。
ア 行政の依頼業務の整理
(ア)委員委嘱等
各種の委員委嘱については、地域における役割、委嘱内容、人数など、時代
にあった制度の見直しが求められています。その上で、自治会町内会が推薦し
やすい時期の設定や少子高齢社会を踏まえた推薦基準(年齢等)や推薦方法な
ど、柔軟な対応が求められます。
(イ)広報配布
広報配布については、配布が負担という自治会町内会へは、他の方法による
配送などきめ細かな対応が求められます。
一部では既に自治会町内会から業者委託に移行している例があるように、今
後は、区・地区ごとに業者委託制も選択できるような柔軟なシステムに切り替
えていくことが考えられます。
(ウ)回覧・掲示物等
「印刷物が多い」「紙資源にも配慮すべき」「できるだけ広報紙に掲載して」
などの声もあることから、周知方法としては安易に回覧に頼ることなく他の方
法による広報が望まれます。やむを得ない場合には「大きさや閉じ方を統一す
る」など一定のルール化や各所管で依頼する業務の調整・統合化も必要です。
21
イ 財政的支援策等の再構築
(ア)地域振興協力費の見直し
地域振興協力費については新しい時代にふさわしい公平で透明な、かつ合
理的なシステムに再構築することが求められます。これまで、防犯灯の維持
管理費を含んだ包括的な謝礼という形で、世帯あたり一律同額の支出が行な
われていますが、防犯灯の保有が多い自治会町内会と少ない自治会町内会も
あることから、防犯灯保有数に応じた公平な支援策が望まれます。
また、活動や実績に応じた透明性を担保できる支援制度への移行を図るこ
とも重要です。
新しい制度を導入するにあたっては、自治会町内会に負担とならない事務手
続きの簡素化にも配慮する必要があります。
なお、現在、地域振興協力費は支払い対象を広報配布世帯としていますが、
広報配布をしない自治会町内会もあることから、より合理的な方法を検討す
る必要があります。
(イ)他の団体からの募金募集、分担金の検討
自治会町内会に募金募集や分担金を依頼する団体は、自治会町内会から理
解を得るとともに様々な意見や時代状況の変化も踏まえ、手法の再検討の他、
募金などの必要性の周知を十分に行うことが望まれます。
また、自治会町内会ごとに、様々な方法により対応が行われていますが、
自治会町内会は会員へそれぞれの趣旨の十分な理解を、図っていくことが重要
です。
自治会町内会への財政支援のモデル
現 行
●全自治会町内会
モ
●防犯灯を多数保有
デ
ル
●平均的なケース
●防犯灯を保有
していない
広報配布世帯
数1世帯あた
り 1,000 円
防犯灯
維持
管理費
活動
助成費
(仮称)
活動
助成費
(仮称)
防犯灯
維持
管理費
防犯灯
維持
管理費
22
活動
助成費
(仮称)
(3)地域力の再構築
∼地域の元気づくり支援∼
市民に地域活動の重要性を広報するとともに、自治会町内会が元気に活動でき
るよう、区連会や地区連合町内会が「地域の事務局」として、人材・情報・コー
ディネート等の多様な展開をするための支援策が求められます。
ア 地域活動への参加の呼びかけ
(ア)地域コミュニティや地域活動の重要性の広報
市民が地域コミュニティの一員として地域とのつながりを大事にし、地域
活動に参加しやすいように後押しすることが自治会町内会と行政には期待さ
れます。
地域活動に関する広報の充実強化や地域活動団体と連携した広報キャンペ
ーンやシンポジウムの開催などが考えられます。
(イ)自治会町内会への加入促進
自治会町内会は、主体的な活動と任意加入が基本ですが、G30 の活動をは
じめ住民の生活に密着した行政施策の推進にあたっては、地域全体をカバーす
る自治会町内会に多くの市民が参加することが望まれます。
自治会町内会は、各地域で加入促進対策に主体的に取り組むことが求めら
れますが、行政も加入促進につながるアドバイスなど様々な方法の検討が期待
されます。
自治会町内会が行う地域組織への加入や地域活動への参加を促す「基本リ
ーフレット」づくり、ホームページなどによる広報PR、ITを活用した「い
つでも気軽に地域の輪にアクセスできる環境づくり」、元気のある活動事例の
紹介なども有効と考えます。
23
イ
組織運営活性化への支援
自治会町内会には、地域のニーズを把握し、行政や住民に伝え、ともに考え
る「身近な地域のとりまとめ」などの役割が期待されます。そのためには、組
織運営を担う役員や幹事の方々に負担感を感じさせない応援の仕組みづくり
も重要です。
また、区連会や地区連合町内会が「地域の中のつなぎ役」「情報収集発信」
など様々な役割を発揮できるような、地域活動を多面的に応援できる仕組みづ
くりを進めることが考えられます。
(ア)「地域の事務局」としての地区連合町内会・区連会への支援
地区連合町内会が、自治会町内会の元気を支え、「地域のつなぎ役」として
様々な地域活動へのバックアップなどができるよう、人材情報や地域情報の提
供、地域活動相談等の多面的な支援体制をつくることが有効と考えられます。
区連会が、行政とのパイプ役として地域情報の収集・提供や地域活動の相談
をはじめとした様々な役割を発揮できるような支援も必要です。
自立化した対等な関係づくりのために、区連会事務局の外部化を希望すると
ころには人的支援や場所の支援なども検討する必要があります。活動場所には
地域の市民利用施設などの活用も視野に検討が望まれます。
新しい支援の概念図
市連会
区域の事務局
(区連会事務局)
行政
運営・活動支援、地域の事務局づくり支援
地区連合町内会
広域的な地域活動の取り組み、地域のつなぎ役、
運営・活動支援
自治会町内会
自治会町内会
24
自治会町内会
(イ)自治会町内会への運営支援
自治会町内会には様々な運営支援が求められていますが、これらの支援は区連
会や地区連合町内会が、それぞれの地域の状況に応じて対応することが望まれま
す。
①人材活用支援
地域には様々な技能や知識を持った人がいます。地域の人材情報の収集提供や
講師紹介などの仕組みづくりも必要です。数年後には多くの団塊の世代が定年を
迎え地域に戻ってきます。そのノウハウや技能などを積極的に地域活動に活用で
きるよう人材情報の集積や地域活動相談などの充実なども期待されます。
②情報の収集、共有化支援
自治会町内会は地域のニーズを最も把握しうる立場にあり、行政に提案するこ
とも視野に、地域での問題点や課題について情報を収集し、行政と共有化する必
要があります。
地域の情報拠点として、行政からの情報をはじめ、地域情報などを蓄積し活用
できるようホームページづくりなどIT化の促進を自ら図ることも大切です。
ITに関してはノウハウを持った企業や市民も多いことから、地域の人的資源
を発掘して取り組むことも考えられます。
③事務効率化支援
自治会町内会の事務の効率化簡素化を図るために会計ソフトや事業計画・報告
書フォ−マットのソフトづくりやその普及促進、また事務の外部化・共同化のシ
ステムをつくることも有効です。
④研修会等の開催
自治会町内会の組織運営のノウハウや行政との事務、事業などを学ぶ新任役員
を対象とした研修会の開催や運営マニュアル・ガイドブックの作成、また、活発
で特色ある地域活動の事例集発行なども有効と考えられます。
ウ
他の市民活動との連携・支援
自治会町内会は地域の基礎的な組織として、活動がより活発になることで地域
コミュニティ再生の原動力になることが大いに期待されますが、地域の担い手と
して、地域には様々なボランティアやNPO団体の活動があり、自治会町内会活
動との連携や協働事業の実施を促進していく支援策も必要です。
行政はそれらの活動団体同士のつなぎ役として、調整力を発揮していくことも
重要です。
自治会町内会と他の活動団体との情報交換の場の設定や、すでに取り組まれて
いる連携事例の紹介、新たにとりくむ連携事業への支援なども考えられます。
25
5
今後に向けて
阪神淡路大震災をはじめとする大災害での教訓から、住民同士の絆の重要性が再
認識されたことは記憶に新しいことだと思います。また昨今の防犯に対する意識の
高まりから地域の結束が強まるという現象も起きています。これらの危機管理上の
問題のみならず、少子高齢社会を迎え、子育て中の母親や高齢者の孤立化など住民
の不安を解消するためにも、地域での日頃の連携の重要性が増しています。
横浜でのG30 の取り組みでは、ごみの減量効果はもとより、副次的な効果として
地域のつながりが再生し始めていると聞いています。これらの機運の中で自治会町
内会についての価値が再認識される時代であると同時に、地域コミュニティの再
生・再構築の時代がきたと言うことができるでしょう。
今回の委員会の役割は行政と自治会町内会との関係性を検討することでしたが、
これからは自治会町内会だけでなく、地域を構成する様々な主体が地域のコミュニ
ティの将来像を話し合っていくことが重要となります。
横浜市町内会連合会では、本検討に合わせて、自らも自治会町内会のあり方につ
いて検討を開始しています。自治会町内会の役割とは何か、そして、未加入問題へ
の対応、自治のための適正なエリア規模、地域が担うべき公共的活動の範囲、地域
の事務局づくりの推進等々は、是非とも、市連会・区連会の場を活かして、さらに
検討を重ねていただければ幸いです。
行政と地域が対等に協議して連携する体制づくりや、他団体も含む広い連携が広
がるにはまだ時間を必要とします。行政がまず変わる姿勢を示しながら、様々な局
面で協働の仕組みをつくり活動を積み重ねていくことが重要です。
横浜において、地域における協働の推進は、地域自治の確立につながる大きなテ
ーマと考えられます。本検討は、将来の地域自治体制づくりに向けての布石の一つ
でもあります。
ここに示したものは、あくまで検討委員会からの提案であり、主体は市民、地域、
そして行政です。これをたたき台とし、身近な地域、様々な活動の場を舞台として、
より広い議論が展開していくことを望んでいます。
地域が持っている多様な力が十分に活かされるよう、行政も調整力を発揮し自治
会町内会と協働しながら、総合的な支援策と環境づくりを進めることを期待します。
(以上)
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