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Title 『日本霊異記』における夢(二〇一五年度卒業論文要旨集) Author(s
Title 『日本霊異記』における夢(二〇一五年度卒業論文要旨集) Author(s) 長谷川, 望 Citation 札幌国語研究, 21: 105-105 Issue Date 2016 URL http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/8072 Rights Hokkaido University of Education 『日本霊異記』における夢 古典文学研究室 二四六四 長谷川 望 本研究では、仏教説話集『日本霊異記』の夢の特徴を、動物 が関連する夢を中心に明らかにし、『今昔物語集』と比較した。 『霊異記』の夢が出てくる話は 話。うち2話に複数あるの で 例である。熱心な仏教信者の夢で救済を求めるのは、悪行 『狭衣物語』における女性の描かれ方 ──髪を中心に── 古典文学研究室 二四八一 笠原 星凜 本研究では、従来無関係とされてきた『狭衣物語』の髪の描 写と人物像との関りを探る。 『狭衣』 で髪に用いられる形容詞・ 鹿を夢に見ており、 僧がみな牛や蛇に関心があるわけではない。 『江談抄』1の は、財である牛を献上される吉兆の夢解き である。 『明恵上人夢記』 では、 山で暮らす明恵に身近な馬や犬、 現れる点も、 景戒の盗みへの厳しい考え方が夢にも表れている。 用物を返さず死んだ者も成牛ではなく子牛になる。牛のままで 夢以外の話も含め、動物に転生する 例のうち5例は牛であ る。罪と報いに対応があり、盗みをした者は牛に転生する。借 界への回路ではない。畜生道に堕ちた4例中3例は牛である。 願や極楽往生の報告はなく、現報を集めた『霊異記』の夢は異 により病者に転生した者か畜生道に堕ちた者で、地獄からの嘆 源氏の宮は、狭衣を拒み強情とされるが、額髪には無防備な 場面で「ゆらゆら」が、垣間見の際に「なよなよ」が用いられ 紫の上の髪の描写を踏まえて女二の宮の長い髪に用いられている。 『源氏』以降、主に尼削ぎに用いられるが、 「ゆらゆら」は、 『狭衣』では、 「なよなよ」と同様に源氏の宮の額髪に、また 納言物語』 でも吉野の姫君の人柄・心情・状態に用いられていた。 「なよよか」を含め髪以外の柔らかさを表しており、『浜松中 『夜の寝覚』の柔和な石山の姫君、『狭衣』 「なよなよ」は、 の源氏の宮で初めて髪に用いられる。それ以前は同根の 「なふ」 と、『源氏物語』では髪に用いられていない「なよなよ」を扱う。 「はらはら」 「ふさやか」各1例。このうち、最多の「ゆらゆら」 らか」 「さまこと」 「なよなよ」各2例、「あてやか」 「はなやか」 形容動詞・副詞は「ゆらゆら」4例、 「つやつや」3例、 「さは 『今昔』本朝部は『霊異記』を 話引用しているが、 例あ る夢の話は無関係だとされてきた。 例が前兆の夢で、うち 10 76 の4例中3例は『霊異記』の類話で、もう1例も牛を贈る話を 昔』は執着の罪と往生を重視している。しかし、牛が現れる夢 を表す蛇が最多の6例で、仏教信仰の普及で夢も多様化し、 『今 例は吉兆で、往生の予兆は9例ある。転生した動物の夢は執着 の女主人公であることを示しており、 人物像と深く関わっている。 である可能性を表し、女二の宮が紫の上を想起させる点でも後半 ない。 『狭衣』の髪の描写は、源氏の宮の本来の人柄が柔らか しい髪が描かれる。一方、もの柔らかな飛鳥井の女君の用例は ている。女二の宮も狭衣を拒み通すが、「なよなよ」とした美 29 収めており、 景戒の盗みの罪への拘りや夢の要点を継承している。 173 11 33 31 - 105 - 12