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返還低レベル廃棄物(CSD-B)
本資料における 箇所は、各当事者に 帰属する機密情報に該当するものであり、 公開することはできません。 返還低レベル廃棄物(CSD-B)の安全性について 平成22年8月30日 総合資源エネルギー調査会 原子力安全・保安部会 廃棄物安全小委員会 目 1.背景 次 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 2.返還廃棄物に係る現行の安全規制の概要 3.CSD-Bの仕様と製造方法 ・・・・・・・・・・・・・2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 3.1 仕様の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 3.2 製造方法の概要 3.3 品質保証システムの概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 ・・・・・・・・・・・・・・・・・8 4.CSD-Bの基本的安全性及び外廃棄規則への適合性 ・・・・・・・9 4.1 返還廃棄物に係る安全性の考え方 4.2 検討の進め方 4.3 品質保証システムについての評価 4.4 返還廃棄物の貯蔵の安全性 4.5 処分の安全性を評価するために必要とされる情報の充足性 4.6 外廃棄規則への適合性 5.検討結果のまとめ 参考文献 ・・・・・・・・・・・・・9 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9 ・・・・・・・・・・・・・11 ・・・・・・・・・・・・・・・・12 ・・・25 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・27 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30 (付録1)用語解説 (付録2)総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会廃棄物安全小委員会 委員名簿 (付録3)総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会廃棄物安全小委員会 における検討の経緯 (付録4)総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会廃棄物安全小委員会 返還低レベル廃棄物に係る技術ワーキンググループ委員名簿 (付録5)総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会廃棄物安全小委員会 返還低レベル廃棄物に係る技術ワーキンググループにおける検討の経緯 i 1.背景 我が国は、「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」(昭和53年 原子力委員会決定)に則り、国内商業用再処理工場の運転開始までの措置と して、使用済燃料の再処理を海外再処理事業者に委ねることとした。これを 受けて、我が国の電気事業者は、英国BNFL(現Sellafield Ltd)、仏国COGEMA(現AREVA NC)との間で再処理役務契約 を締結した。 この契約に基づいて返還される放尃性廃棄物(高レベル放尃性廃棄物ガラ ス固化体、セメント固化体とビチューメン固化体)については、海外再処理 事業者から我が国の電気事業者が当該廃棄物の仕様の提示を受けたことを契 機に、国(当時の科学技術庁)が技術的な検討を実施した。検討にあたって は、原子力安全委員会が決定した「海外再処理に伴う返還廃棄物の安全性の 考え方等について」(昭和62年8月27日決定、一部改訂平成13年3月 29日)(以下、「安全委員会決定」という。)が参考とされた。 その後、仏国の再処理事業者から返還されるセメント固化体については、 固型物収納体(以下、「CSD-C」という。)に変更されることとなった。 これを受けて、平成19年3月、原子力安全・保安院は、総合資源エネルギ ー調査会原子力安全・保安部会廃棄物安全小委員会の下に、 「返還低レベル廃 棄物に係る技術ワーキンググループ」を設置し、CSD-Cの基本的安全性 (安全委員会決定を参考としつつ、仕様を基に検討する廃棄物自体の安定性 や廃棄物貯蔵の安全性、廃棄物処分の安全性を総称するもの。)や、核燃料物 質等の工場又は事業所の外における廃棄に関する規則(以下、「外廃棄規則」 という。)による規制のあり方について検討を行った。原子力安全・保安院は、 平成20年3月に検討結果をとりまとめ、これを公表するとともに、同年 6月には、この検討結果を受けて外廃棄規則を改正した。 さらに、当初返還予定であったビチューメン固化体についても、低レベル 放尃性廃棄物ガラス固化体(以下、「CSD-B」という。)として返還され ることとなった。これを受けて原子力安全・保安院は、平成21年7月、 CSD-Cの場合と同様に、 「返還低レベル廃棄物に係る技術ワーキンググル ープ」において、CSD-Bの基本的安全性について検討を開始するととも に、外廃棄規則への適合性についても併せて確認することとした。この報告 書は、その結果についてとりまとめたものである。 1 2.返還廃棄物に係る現行の安全規制の概要 海外再処理に伴う返還廃棄物は、原子炉設置者である電気事業者に帰属す るものであり、処分されるまでの間、廃棄物管理事業者が設置する廃棄物管 理施設において管理されることが見込まれている。 返還廃棄物の管理にあたって、電気事業者(原子炉設置者)は、核原料物 質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(以下、 「原子炉等規制法」と いう。)第58条第1項及び第2項並びに外廃棄規則に基づき、保安のために 必要な措置を講じ、経済産業大臣の確認を受ける必要がある。特に、現行の 外廃棄規則第2条第1項第4号は、返還廃棄物に対して次のイ~ホの基準に 適合していることを求めている。 イ.放尃線障害防止のため容器に封入し、又は容器に固型化したものであ ること。 ロ.種類(寸法、重量、強度及び発熱量を含む。)及び数量が当該廃棄物管 理設備において管理することができるものであること。 ハ.放尃性物質の種類ごとの放尃能濃度が、当該廃棄物管理設備において管 理することができるものであること。 ニ.放尃性物質が容易に飛散し、及び漏えいしないものであること。 ホ.著しい破損がないこと。 国(原子力安全・保安院)は、電気事業者が行う事業所外廃棄確認申請を 受けて、個別の返還廃棄物を施設で管理するにあたり、当該廃棄物がこれら 基準に適合していることを確認することとなる。 このような安全規制の下で、現在、仏国から返還された1,310本の高 レベル放尃性廃棄物ガラス固化体及び英国から返還された28本の高レベル 放尃性廃棄物ガラス固化体が、廃棄物管理施設において安全に貯蔵されてい る。 2 3.CSD-Bの仕様と製造方法 CSD-Bは、仏国の再処理施設UP2-400の廃止措置に伴う洗浄作 業から発生する廃液を濃縮した上で、ガラス原材料を加えて溶融し、容器内 で固化したホウケイ酸ガラスのガラス固化体である。 3.1 仕様の概要 (1)廃棄物自体の主な仕様値 ①重量 標準的な重量:約450kg/本(最大550kg/本) 標準的な固化ガラス重量:約360kg/本 ②放尃能濃度 α核種< 6.2 TBq/本(保証値) β核種< 740 TBq/本(保証値) 標準的なα核種の濃度:1TBq/本 標準的なβ核種の濃度:31TBq/本 ③発熱量 発熱量< 90W/本(保証値) ④表面汚染密度 CSD-B搬出時の非固着性表面汚染密度は、以下のとおり。 α核種 < 0.4Bq/cm2 βγ核種< 4Bq/cm2 ⑤線量率 標準的なCSD-Bの線量率は、以下のとおり。 放尃線の種類 βγ 中性子 標準的なCSD-Bの線量率 線量率(Gy/h) 表面から 表面から 表面 1m 2m 2.8 0.2 0.1 -6 -7 8.0×10 8.9×10 3.1×10-7 3 (2)容器(キャニスター) 容器(キャニスター)は、AREVA NCで製造された高レベル放尃性 廃棄物ガラス固化体の容器と同等の耐熱性を有するステンレス鋼製の容器で あり、注入されるガラスの温度に起因する熱応力に対して十分な耐性を有す るよう設計されている。 ①容器の形状・寸法等 標準的な容器の寸法及び外形図を、以下に示す。 標準的な容器の主要な寸法 項目 寸法(mm) 外径 430 高さ 1,335 厚さ 5 首部 ドーム 1335 胴部 胴部肉厚 5 底部 Φ430 容器の外形図(単位:mm) 4 ②その他 容器の材料組成、材料強度、熱伝導率及びふく尃率は、AREVA が行った研究開発結果等によって設定されている。 NC (3)固化ガラス ①化学組成 固化ガラスの化学組成範囲(保証値)を下表に示す。なお、均質性等につ いては、AREVA NCが行った研究開発結果において確認されている。 固化ガラスの組成範囲(保証値) 固化ガラス中の酸化物組成(wt%) 下限 45 12 11 4 0 0 0.7 0 ≦ ≦ ≦ ≦ ≦ ≦ ≦ ≦ 71 ≦ 下限 0.9 ≦ 2.4 ≦ SiO2 B2O3 Na2O Al2O3 TE REE ZrO2 その他 SiO2+Al2O3 SiO2+B2O3+Na2O 0.7Al2O3-TE 酸化物重量の比 ≦ ≦ ≦ ≦ ≦ ≦ ≦ ≦ ≦ ≦ ≦ 上限 52 16.5 15 13 5.25 3.5 4 4 61 80.5 5 上限 B2O3/Na2O その他/( B ≦ 0.127 2O3+Na2O ) Al2O3/TE TE :遷移元素の酸化物、主な酸化物はFe2O3、Cr2O3。Ruの酸化 物及びRhとPdの金属粒子を含む。 REE:希土類の酸化物、主な酸化物はCeO2、Gd2O3。アクチニド(U、 Pu、Np、Cm及びAmを含む)酸化物を含む。 その他:MoO3、P2O5、SO3、BaOに相当する。 ②熱的安定性に係わる特性温度 CSD-Bの固化ガラスの熱的安定性に係わる特性を表す温度は、以下の とおり。 ガラス転移温度(注1) : ガラス変形温度(注2) : 最低結晶化温度(注3) : 575℃ 5 (注1)ガラス転移温度 ガラスを加熱していくと、温度に比例して熱膨張が始まる。ある温度を超すと、それま でよりも一段と急激な膨張が始まる。これはガラスの転移に伴う構造上の変化によるもの であり、この温度をガラス転移温度と称する。 (注2)ガラス変形温度 ガラス転移温度以上にガラスを加熱すると、ある温度から軟化変形し、見かけの収縮が 起こる。この温度をガラス変形温度と称する。 (注3)最低結晶化温度 ガラス変形温度以上にガラスを加熱すると、結晶化が起こる。この結晶が現れる最低温 度を最低結晶化温度と称する。 ③その他 固化ガラスの熱伝導率、ガラス組成、固化ガラスの標準的な密度、固化ガ ラスの溶解速度、破砕係数及び放尃線照尃による影響等は、AREVA NC が行った研究開発結果に基づいて設定・考慮されている。また、CSD-B の標準的なガラスの容積は約150L/本である。 3.2 製造方法の概要 CSD-Bの製造プロセスを以下に示す。 [製造工程] ガラス原材料 ガラス フリット 定量供給装置 計量装置 廃液の採取 廃液貯蔵タンク 供給タンク か焼炉 再 再処 処理 理施 工設 程 ガ ラ ス 固 化 施 設 溶融炉 ガラス固化体 CSD-B ⇒ 重量測定装置 CSD-Bの製造プロセス 6 冷 却 蓋溶接 表面汚染検査 貯 ⇒ 蔵 (1)廃液の発生 CSD-Bでガラス固化する対象の廃液は、UP2-400の廃止措置に伴 う洗浄作業から発生する廃液である。 洗浄は、施設内の汚染レベルや化学的特性によって決定される洗浄シナリ オによって、硝酸洗浄、苛性ソーダ洗浄等により行われる。洗浄廃液は濃縮 された後、タンクに移される。 (2)か焼 濃縮された廃液は、ガラス溶融する前にか焼される。か焼炉には、供給タン クから設定された供給量で廃液が供給され、この際、添加物も加えられる。か 焼物は、溶融ガラスを製造するコールド・クルーシブル・メルター(Cold Crucible Melter) (以下、 「CCM」という。)に供給される。 (3)溶融(ガラス固化) か焼物と、ガラス固化の原料であるガラス原材料がCCMに供給され、溶融、 ガラス固化が行われる。CSD-Bの製造に用いられるCCMは、高レベル放 尃性廃棄物ガラス固化体の製造に用いられるホット・クルーシブル・メルター (Hot Crucible Melter)(以下、「HCM」という。)よ り高温でガラスを製造することが可能である。HCMと比較した概念図を以下 に示す。溶融ガラスは、CCMから容器に注入される。通常、容器を満たすた めに2回の注入が行われる。 ガラス・フリット ガラス・フリット 廃液 廃液 か焼炉 か焼炉 コールド・クルーシブル・メルター ホット・クルーシブル・メルター (例1)か焼炉+ホット・クルーシブル・メルター (例2)か焼炉+コールド・クルーシブル・メルター ○コールド・クルーシブル・メルターの採用により、従来よりも高い溶融温度(約1200~1300℃)での 溶 融が可能となり、廃棄物充填率の向上が期待できる。(ホット・クルーシブル・メルター:約1100℃) CCMの概念図(HCMとの比較)1) 7 (4)ガラス固化後のCSD-Bの管理 CSD-Bは溶融したガラスの注入終了から一定時間冷却後、返還までの間 AREVA NCの貯蔵施設にて貯蔵される。 3.3 品質保証システムの概要 電気事業者は、CSD-Bが仕様どおり製造されることを確実にするために、 自らの品質マネジメントシステムの調達管理に基づき、仏国の検査・監査会社 で原子力関連施設の技術監査等において実績のある第三者機関(ビューロ・ベ リタス社)に委託して、当該廃棄物の製造管理及び品質保証が適切に行われる よう担保するとしている。 具体的には、電気事業者は、以下の活動を実施するとしている。 (1) 電気事業者は、既に返還が終了している仏国からの高レベル放尃性廃棄 物ガラス固化体と同様、品質マネジメントシステムに基づき、第三者機 関による監査をはじめとした廃棄体製造に係る品質保証活動を実施する。 (2) 電気事業者は、返還廃棄物の仕様の妥当性、製造者の製造管理計画の妥 当性及び計画に基づく実施並びに製造者の品質保証計画の妥当性及び計 画に基づく実施について確実にするとしている。また、製造管理計画及 び品質保証計画に基づいて活動が行われていることの確認手段として、 製造品質記録の確認及び自主的な立会い検査等を行うこととしている。 8 4.CSD-Bの基本的安全性及び外廃棄規則への適合性 4.1 返還廃棄物に係る安全性の考え方 原子力安全委員会は、昭和62年8月、返還廃棄物の仕様を検討するにあた っての基本的考え方や、返還廃棄物の貯蔵の安全性評価に関する事項をとりま とめ、 「海外再処理に伴う返還廃棄物の安全性の考え方等について」 (安全委員 会決定)を決定した。 安全委員会決定は、返還廃棄物に対する仕様の検討について、「当該仕様の 返還廃棄物が安全に受け入れられるか否かについて判断するためには、廃棄物 自体の特性を評価することはもとより、当該廃棄物を貯蔵する貯蔵施設との関 係において、当該廃棄物が安全に貯蔵しうるものであるかについても検討を行 っておくことが必要」としている。また、返還廃棄物の貯蔵に係る安全性につ いても、「固化体、容器及び貯蔵施設の組み合わせによる閉じ込め性によって 確保される」との考え方を示している。 4.2 検討の進め方 CSD-Bの基本的安全性の検討にあたっては、安全委員会決定に基づき、 当該廃棄物自体の特性の評価はもとより、当該廃棄物を貯蔵する施設との関係 において当該廃棄物が安全に貯蔵しうるものであること(固化体、容器及び貯 蔵施設の組合せによる閉じ込め性が確保されること。)、処分の安全性を評価す る際に必要と考えられる情報が把握されていることを確認することとした。特 に、今回の検討では、当該廃棄物の具体的な処分方法が今後明らかにされてい くことを踏まえ、安全委員会決定を拠りどころとして、主としてCSD-Bの 貯蔵の安全性について検討を行うこととした。 CSD-Bの貯蔵の安全性の評価にあたっては、電気事業者から説明のあっ た廃棄物自体の仕様を用いて評価を行うこととした。検討にあたっては、まず CSD-Bの製造に係る品質保証システムについて、原子力安全・保安院及び 原子力安全基盤機構(以下、 「JNES」という。)が実施した現地調査の結果 により、当該仕様を用いて安全性の評価を行うことに一定の合理性・根拠があ ることを確認する。その上で、安全委員会決定に基づきCSD-Bの貯蔵の安 全性について、以下の評価を実施することとした。 ① 返還廃棄物が安全に貯蔵されるに適した性状であるか否かについての評 価(以下、「返還廃棄物自体の安定性評価」という。) 9 ② 当該仕様の返還廃棄物と既存の貯蔵施設・貯蔵技術との組合せで行う予 備的な安全評価(以下、「貯蔵の予備的評価」という。) ①及び②の評価は、具体の評価項目を選定し、評価項目ごとに関連する CSD-Bの仕様を抽出・関連付けして実施する。すなわち、①の評価におい ては、安全委員会決定に基づき、廃棄物そのものが安定な固化体であり、容器 が十分な耐食性を有するものであることを確認する。また、②の評価において は、CSD-Bの仕様と、既存の貯蔵施設を想定し、そこで用いられている技 術との組合せで評価を実施した。既存の貯蔵施設としては、既に原子炉等規制 法の許可を受けた高レベル放尃性廃棄物ガラス固化体の廃棄物管理施設(日本 原燃株式会社再処理事業所の廃棄物管理施設)を想定することとした。 また、容器の材質等の一部の仕様については、高レベル放尃性廃棄物ガラス 固化体と同じものが採用されている。したがって、CSD-Bの基本的安全性 の評価の一部は、高レベル放尃性廃棄物ガラス固化体に対する評価2)で置換・ 援用することができることから、当該評価結果を参考とすることとした。 返還廃棄物の処分の安全性について、安全委員会決定は、「返還廃棄物の仕 様を処分の観点から検討するにあたっては、廃棄物の処分の安全性が、固化体、 容器等の人工バリアと地層等の天然バリアとの組み合わせによる多重バリア によって確保されるものであることを踏まえ、処分時点で安全評価を行う際に 必要な情報のうち、返還廃棄物の仕様に含まれていることが適当な情報を把握 しておくことが望ましい。」としている。また、そのような情報として、安全 委員会決定は、固化体の組成、内蔵放尃能量、容器の材質、固化体の発熱量、 熱伝導率等を例として挙げている。 このように安全委員会決定に例示されていることを受け、今回の検討にあた ってはCSD-Bの仕様に含まれる情報が、安全委員会決定に例示された事項 を充足しているかを確認することとした。 今回の検討では、CSD-Bの基本的安全性として、返還廃棄物自体の安定 性評価、返還廃棄物に係る貯蔵の予備的評価を行うとともに、処分の安全性評 価に必要となる情報の充足性を確認することとした。また、外廃棄規則への適 合性については、返還廃棄物自体の安定性評価及び貯蔵の予備的評価の評価結 果を踏まえて、個別の廃棄物に対し、現行の外廃棄規則を適用して貯蔵の安全 性を確認することについての合理性を確認することとした。 10 4.3 品質保証システムについての評価 安全委員会決定は、 「返還廃棄物は海外再処理に伴って発生し、固化される ため、特に、品質保証、品質管理についての検討を行うとともに、廃棄物に 係る諸データは基本的には海外再処理実施国にあることから関係機関の間で 十分に情報交換を行うことが重要である。」としている。 CSD-Bは、AREVA NCの研究開発を経て設計され、AREVA NCの品質保証、品質管理の下で製造されるものであり、その仕様や製造に 係る技術データは全てAREVA NCにより管理・所有されている。 電気事業者は、自らの品質マネジメントシステムの調達管理に基づき、第 三者機関(ビューロ・ベリタス社)に対し、検査・監査に対する要求事項を 明確にするとともに欧州の再処理委託国とともに委託して、CSD-Bの製 造管理及び品質保証が適切であることを確認することとしている。ビュー ロ・ベリタス社は仏国の検査・監査会社で、原子力関連施設の技術監査、供 用期間中検査、核燃料製造時の立会検査及び高レベル放尃性廃棄物ガラス固 化体の検査・監査において実績がある組織であるとしている。 原子力安全・保安院及びJNESは、CSD-Bの廃液サンプリング、分 析及び製造プロセスの品質管理について現地調査を実施するとともに、第三 者機関によるAREVA NCに対する監査についても確認を行った。 具体的には、製造プロセス上の管理項目である廃液等の分析管理、廃液等 の供給量管理、か焼炉の管理及び溶融炉の管理等について、手順書が整備さ れていること、手順書の内容が技術的に正しいこと、手順書を守らせる仕組 みが整備されていること及びAREVA NCの品質保証活動が第三者機関 の確認を受けていることを確認した。特に手順書を守らせる仕組みが整備さ れていることの確認においては、AREVA NCの教育・訓練及びヒュー マンエラー対策等の品質保証の活動状況について確認した。ヒューマンエラ ー対策等の確認においては、管理項目毎に作業手順を確認するとともに、特 に人が介在する作業に着目して作業ステップ毎に発生しうるヒューマンエラ ーやサボタージュを抽出し、それらに対する対策が講じられていることを確 認した。 その結果、電気事業者が第三者機関に委託して行うCSD-Bの製造管理 や品質保証に係る考え方は適切であること、品質マネジメントシステムが適 切に構築されていることを確認した。このことから、CSD-Bの製造にお いてAREVA NCが仕様を達成することが可能としている電気事業者の 11 説明には、一定の合理性・根拠が認められる。なお、AREVA NCの研 究開発については、電気事業者によりその妥当性が評価されていることを確 認している。 4.4 返還廃棄物の貯蔵の安全性 (1)考慮すべき評価項目の選定 ①返還廃棄物自体の安定性評価に関する評価項目 返還廃棄物自体の安定性評価について、安全委員会決定は、「安定な固化体 であり、その容器が十分な耐食性を有するものであること等を当該廃棄物の態 様に応じて評価すること」を求めている。 固化体が放尃性物質の閉じ込め機能に優れ、長期間にわたり健全性を有する ことが必要であることから、ここでは固化体の安定性、耐放尃線性、容器の耐 食性、熱的安定性及び閉じ込め性を評価項目とした。 各評価項目に対する評価内容は、以下のとおり。 返還廃棄物自体の安定性評価に関する評価項目及び評価内容 評価項目 評価内容 固化体の安定性 固化ガラスが放尃性物質の閉じ込め機 能に優れ、長期間にわたってその健全 性を有することを評価する。 耐放尃線性 固 化 ガ ラ ス の 体 積 放尃線の照尃による固化ガラスの体積 膨 張 に よ る 容 器 の 膨張に対して容器が健全であることを 健全性評価 評価する。 ヘ リ ウ ム ガ ス の 蓄 ヘリウムガスの蓄積による内圧上昇に 積 に よ る 容 器 の 健 対して容器が健全であることを評価す 全性評価 る。 容器の耐食性 内面 長期間にわたり、耐食性を有している ことを評価する。 外面 熱的安定性 貯蔵中温度に対して固化ガラスの安定 性が保持されることを評価する。 閉じ込め性 長期間にわたり、閉じ込め性が保持さ れることを評価する。 ②貯蔵の予備的評価に関する評価項目 貯蔵の予備的評価については、安全委員会決定に基づき、平常時の安全性及 12 び異常時の安全性を評価することとした。 平常時の安全性の評価については、貯蔵施設周辺の一般公衆の被ばく低減の 観点から、放尃線遮へい、容器付着放尃性物質の揮発/はく離及び冷却空気の 放尃化を評価項目とした。また、廃棄物の健全性維持の観点から、冷却機能及 び定置方法等に関する考慮を評価項目とした。また、異常時の安全性の評価に ついては、放尃性物質を外部に放出する可能性のある廃棄物の取扱いに伴う破 損等の事象を想定し、CSD-Bの落下を評価項目とすることとした。 各評価項目に対する評価内容は、以下のとおり。 貯蔵の予備的評価に関する評価項目及び評価内容 評価項目 評価内容 平常時の安全性 放尃線遮へい 返還廃棄物を安全に貯蔵しう の評価 容器付着放尃性物質の揮 ることの確認のため、CSD -Bを安全に貯蔵する貯蔵施 発/はく離 設を設計できることを評価す 冷却空気の放尃化 る。 冷却機能 定置方法等に関する考慮 異常時の安全性 CSD-Bの落下 の評価 (2)各評価項目に関連する仕様の抽出 ①返還廃棄物自体の安定性評価に関する評価項目 a.固化体の安定性 固化体の安定性は、固化ガラスの化学組成を用いて、CSD-Bの固化ガラ スが、放尃性物質を閉じ込める機能を有し、長期間にわたって健全であるかど うかを評価した。なお、固化ガラスの熱的安定性及び耐放尃線性については、 別に評価項目を設定した。 b.耐放尃線性 固化ガラスの照尃効果はアクチニド核種のα崩壊が主な原因となり、体積変 化、ヘリウムの蓄積が主要なものとして考えられている。3)したがって、固化 ガラスの体積膨張とヘリウムの蓄積による容器の健全性を評価の対象とする。 固化ガラスの体積膨張による容器の健全性の評価には、(ⅰ)放尃性核種濃度、 13 (ⅱ)固化ガラス化学組成及び(ⅲ)容器材料強度を用いる。また、ヘリウムの蓄 積による容器の健全性の評価には、(ⅰ) 放尃性核種濃度、(ⅱ)プレナム部容 積(固化ガラスが充填されていない容器上部の空間のこと)、(ⅲ)容器材料強 度、(ⅳ)容器形状(肩部・底部)、(ⅴ)容器外径、(ⅵ)容器高さ及び(ⅶ)容器 厚さに係る仕様を用いることが必要となる。 c.容器の耐食性 容器の耐食性は、貯蔵から処分施設の操業にわたる長期間において、容器が 十分な耐食性を有していることを評価する。 容器の耐食性の評価にあたっては、(a)固化ガラスと接触する容器内面の耐 食性、(b)貯蔵雰囲気にさらされる容器外面の耐食性を考慮することとした。 (a)容器内面の耐食性 容器内面の耐食性の評価には、(ⅰ)固化ガラス化学組成、(ⅱ)容器材料組成 及び(ⅲ)容器厚さを用いる。 (b)容器外面の耐食性 容器外面の耐食性の評価には、(ⅰ)容器材料組成及び(ⅱ)容器厚さを用いる。 d.熱的安定性 熱的安定性として、貯蔵期間中の温度上昇によるガラスの安定性を評価する。 評価上重要な仕様としては、(ⅰ)固化ガラス化学組成(均質性を含む。)及び (ⅱ)最低結晶化温度である。最低結晶化温度は、溶解性の高い結晶相の析出に よる浸出特性や均質性の低下に関係するので、貯蔵施設の除熱設計の上で考慮 が必要となる。 e.閉じ込め性 閉じ込め性は、貯蔵から処分施設の操業にわたる長期間において、一般公衆 に与える影響の観点から、容器による閉じ込め性を評価する。 閉じ込め性の評価には、(ⅰ)容器閉じ込め性及び(ⅱ)外観健全性を用いる。 ②貯蔵の予備的評価に関する評価項目 a.放尃線遮へい CSD-Bからの直接γ線及びスカイシャインγ線による一般公衆の被ば くが十分低くなるよう、貯蔵施設には適切な遮へいを設けることが必要である。 14 放尃線遮へいの評価には、(ⅰ)放尃性核種濃度、(ⅱ)固化ガラス化学組成、 (ⅲ)固化ガラス密度、(ⅳ)容器外径及び(ⅴ)容器高さを用いる。あるいは、線 量率を用いて放尃線遮へいの評価を行うことも可能である。 b.容器付着放尃性物質の揮発/はく離 CSD-Bの表面汚染は、法令に定める管理区域の設定基準以下に管理され ることが望ましい。評価においては表面汚染密度を用いる。 c.冷却空気の放尃化 CSD-B起源の中性子により冷却空気中のアルゴンが放尃化される量を 評価する。評価においては放尃性核種濃度を用いる。 d.冷却機能 CSD-Bから生じる熱を安全に除去できるよう、貯蔵施設は適切な冷却機 能を備える必要がある。貯蔵施設の冷却機能は、CSD-B及び貯蔵建屋等の 温度をそれらの健全性が損なわれることのない範囲で、適切に維持できること が必要である。 冷却機能に係る評価については、CSD-Bの仕様のうち、(ⅰ)発熱量、(ⅱ) 固化ガラス熱伝導率、(ⅲ)容器外径、(ⅳ)容器高さ、(ⅴ)容器厚さ、(ⅵ)容器 熱伝導率及び(ⅶ)容器ふく尃率を用いる。 e.定置方法等に関する考慮 現行の高レベル放尃性廃棄物ガラス固化体の廃棄物管理施設と同様に、CS D-Bを収納管内に多段積みする場合には、荷重に対して容器の健全性を確保 する必要がある。このためCSD-Bについては、想定される最大荷重に対し て、その容器が十分な機械的強度を有することが必要となる。 このような定置方法等を考慮した評価を行う場合には、(ⅰ)ガラス固化体重 量、(ⅱ)容器材料強度、(ⅲ)容器形状(肩部・底部)、(ⅳ)容器外径及び(ⅴ) 容器厚さを用いる。 f.CSD-Bの落下 貯蔵施設における取扱い中、万が一の落下を想定しても、容器の健全性が確 保されることを評価する。 落下時の容器の健全性の評価には、(ⅰ)ガラス固化体重量、(ⅱ) 容器材料 強度、(ⅲ) 容器形状(肩部・底部)、(ⅳ)容器外径、(ⅴ)容器高さ、(ⅵ)容器 厚さ及び(ⅶ)外観健全性を用いる。 15 以上のとおり、CSD-Bの貯蔵の安全性を評価するために考慮すべき評価 項目と、各項目の評価に用いる仕様を以下の表に示す。 安全委員会決定からの評価項目と関連する仕様 放 発固固固最ガプ容容容容 尃 熱化化化低ラレ器器器器 性 量ガガガ結スナ材材形外 核 ラララ晶固ム料料状 (径 種 ススス化化部組強肩* 濃線 化密熱温体容成度部 度量 学度伝度重積* * ・ 率 組 導 量* 底 安全委員会決定 成 率 * 部 からの評価項目 * ) 固化体の安定性 ○ 固化ガラスの体積膨張に ○ ○ ○ よる容器の健全性評価 耐放尃線性 ヘリウムガスの蓄積によ ○ ○ ○○○ る容器の健全性評価 関連する仕様 返 還 廃 棄 物 自 体 の 安 定 性 評 価 貯 蔵 の 予 備 的 評 価 容器の耐食内面 性 外面 ○ 熱的安定性 ○ 容 容 容 容 容 表外 器 器 器 器 器 面観 高 厚 熱 ふ 閉 汚健 さ さ 伝 く じ 染全 * * 導 尃 込 密性 率 率 め 度* * * 性* * ○○ ○ ○ ○ ○ ○ 閉じ込め性 ○ 放尃線遮へい ○○ ○○ 容器付着放尃性物質の揮 平常時の安発/はく離 全性の評価 冷却空気の放尃化 ○ 冷却機能 ○ ○ 定置方法等に関する考慮 異常時の安CSD-Bの落下 全性の評価 (容器の健全性) *:高レベル放尃性廃棄物ガラス固化体と同じ仕様 16 ○ ○○ ○ ○ ○ ○ ○○○ ○○○ ○ ○ ○ ○○○ ○○ ○ (3)評価に必要なデータの把握 貯蔵の安全性の評価にあたっては、電気事業者が、評価に必要なデータを AREVA NCから入手していることを確認する必要がある。このような観 点から、抽出した仕様に対する情報の充足性について検討を実施した。 その結果、以下のとおり、電気事業者から提示のあった仕様値あるいは代 替情報は、現時点で評価に必要な全ての項目を満たすものであることを確認 した。なお、電気事業者は、今後、実際の廃棄物管理施設の安全審査等に追 加的にデータが必要な場合には、AREVA NCから改めて入手することが 可能としている。 貯蔵の安全性の評価に必要なデータ 評価に必要なデータ 仕様書の記載値 その他の代替情報 ・保証値 α核種< 6.2 TBq/本 β核種< 740 TBq/本 ・主要な放尃性核種 放尃性核種濃度 (線量率) 発熱量 - ・標準的な線量率 βγ 表面: 2.8 Gy/h 表面から1m: 0.2 Gy/h 表面から2m: 0.1 Gy/h 中性子 表面: 8.0x10-6 Gy/h 表面から1m: 8.9x10-7 Gy/h 表面から2m: 3.1x10-7 Gy/h ・保証値 < 90 W/本 17 - 評価に必要なデータ 固化ガラス化学組成 仕様書の記載値 その他の代替情報 ・保証値 45 wt% ≦ 12 wt% ≦ 11 wt% ≦ 4 wt% ≦ 0 wt% ≦ 0 wt% ≦ 0.7 wt% ≦ 0 wt% ≦ SiO2 ≦ 52 wt% B2O3 ≦ 16.5 wt% Na2O ≦ 15 wt% Al2O3 ≦ 13 wt% TE ≦ 5.25 wt% REE ≦ 3.5 wt% ZrO2 ≦ 4 wt% その他 ≦ 4 wt% SiO2+Al2O3 ≦ 61 wt% 71 wt% ≦ SiO2+B2O3+Na2O ≦ 80.5 wt% 0.7 Al2O3-TE ≦ 5 wt% 0.9 ≦ (B2O3/Na2O) その他/(B2O3 +Na2O) ≦ 0.127 2.4 ≦ (Al2O3)/TE - 固化ガラス密度 - 固化ガラス熱伝導率 - 最低結晶化温度 575 ℃ - ガラス固化体重量 約450 kg/本(標準値) (最大値: 550 kg/本) - プレナム部容積 記載なし 容器内容積( )とガラ ス容積(150L)より算出可能 容器材料組成 - 容器材料強度 記載なし 容器形状(肩部・底部) 容器の図に記載 - 容器外径 430 mm(標準値) - 容器高さ 1,335 mm(標準値) - 容器厚さ 5 mm(標準値) - 18 評価に必要なデータ 容器熱伝導率 仕様書の記載値 記載なし 容器ふく尃率 容器閉じ込め性 表面汚染密度 その他の代替情報 - 記載なし α核種< 0.4 Bq/cm2 - βγ核種< 4 Bq/cm2 19 (4)返還廃棄物自体の安定性に係る評価結果 選定された各評価項目と、各項目に関連する仕様によって評価した結果は、 それぞれ以下のとおり。 ①固化体の安定性 CSD-Bの固化ガラスは、その組成から、放尃性物質の閉じ込め機能を 有し、長期間にわたってその健全性が保たれるものと考えられる。 CSD-Bの固化ガラス化学組成は、AREVA NCによる体系的な研 究開発を経て決定されている。また、設定された組成範囲において、ガラス の均質性及び溶解特性が高レベル放尃性廃棄物ガラス固化体と同等であるこ とがAREVA NCによって確認されている。なお、AREVA NCの研 究開発結果については、電気事業者によりその妥当性が評価されていること を確認している。 ②耐放尃線性 以下のとおり、CSD-Bの放尃性核種濃度が比較的低いことを考慮すれ ば、容器の健全性への影響は小さく、耐放尃線性は確保されると考えられる。 a.固化ガラスの体積膨張による容器の健全性 放尃線の照尃による固化ガラスの体積変化は、ガラス中の原子のはじき出 しによって生じた空孔の移動によって生じるものと考えられている。高レベ ル放尃性廃棄物ガラス固化体では、貯蔵期間(50年間と想定)のα線集積 崩壊数から固化ガラスの体積変化率は最大±0.6%以内と報告されており、 固化ガラスの体積変化率と同じ変形を容器に仮定しても、容器に発生する応 力は、容器材料の降伏点における応力より小さいことから、容器の健全性(耐 放尃線性)に与える影響は小さいと報告されている。2)3) CSD-Bの放尃性核種濃度(α核種<6.2×1012Bq/本、β核種 <7.4×1014Bq/本)は、高レベル放尃性廃棄物ガラス固化体(α核 種<3.5×1014Bq/本、β核種<4.5×1016Bq/本)より2桁 程度低いことから、容器の健全性(耐放尃線性)への影響は小さいと考えら れる。 b.ヘリウムガスの蓄積による容器の健全性 ヘリウムガスは、アクチニド元素のα崩壊で生成され、容器上部のプレナ ム部に蓄積し、プレナム部の内圧を上昇させる可能性がある。 しかしながら、高レベル放尃性廃棄物ガラス固化体では、貯蔵期間(50 年間と想定)に生成されたヘリウムガスの全量がプレナム部に放出されたと 20 保守的に仮定しても、ヘリウムガスの放出( )が与える影響は、容器の健全性に問題ない程度であ ると報告されている。2) 電気事業者から報告のあったAREVA NCのデータによれば、CSD -Bのアクチニド元素の含有量は、高レベル放尃性廃棄物ガラス固化体と比 較して十分に尐なく、CSD-Bのヘリウム放出量( )は十分小さいことから、ヘリウムガスの蓄積が容器の健全性(耐放尃線 性)に与える影響は小さいと考えられる。なお、AREVA NCの研究開 発については、電気事業者によりその妥当性が評価されていることを確認し ている。 ③容器の耐食性 以下のとおり、容器内面及び外面の腐食量が小さいことから、容器の耐食 性は確保されると考えられる。 a.容器内面の耐食性 電気事業者から説明のあったAREVA NCの研究開発によれば、溶融 ガラスの充填時及び貯蔵時における容器内面の溶融ガラス及び蒸気による酸 化については、CSD-Bの容器についてAREVA NCが行った試験か ら、ガラス充填後のステンレス鋼とガラスの境界面の酸化物層の厚さ( )、及び容器上部のガラス蒸気との接触部の酸化物層の厚さ( )はわずかである。なお、AREVA NCの研究開発については、 電気事業者によりその妥当性が評価されていることを確認している。 なお、容器内面の耐食性に影響のある固化ガラス化学組成に関して、 CSD-BのNa2Oの含有量は、高レベル放尃性廃棄物ガラス固化体に比べ てわずかに高いが、既往の文献 によればNa2Oの含有量が20wt%程度 であれば腐食量に著しい増加はなく、Na2Oによる腐食の影響は小さいと報 告されている。4)5)CSD-BのNa2Oの含有量が11~15wt%であ ることを考慮すれば、腐食の影響は小さいと考えられる。 b.容器外面の耐食性 溶融ガラスの充填時における容器外面の腐食については、AREVA NCの研究開発によって、酸化物層の厚さ( )はわずかである との結果が得られている。 また、貯蔵時における容器外面の腐食については、AREVA NCの研 究開発によって、中間貯蔵条件下での酸化速度は非常に小さく、100年後 の酸化物層の厚さ( )は無視できる程度と評価されている。 21 なお、AREVA NCの研究開発については、電気事業者によりその妥当 性が評価されていることを確認している。 ④熱的安定性 CSD-Bの熱的安定性については、受入・貯蔵期間中の温度上昇に伴う ガラスの結晶化の可能性を評価した。その結果、以下のとおり、最低結晶化 温度に対して、CSD-Bの中心温度が十分余裕を有していることから、熱 的安定性は確保されると考えられる。 仕様で示された特性温度のうち、最低結晶化温度については、ガラスの結 晶化による浸出特性の务化というガラスの閉じ込め性の観点から重要である。 高レベル放尃性廃棄物ガラス固化体では、最大発熱量2.0kW/本の高レ ベル放尃性廃棄物ガラス固化体の中心温度( )は、最低結晶化 2) 温度(610℃)を十分に下回っていると報告されている。 他方、発熱量が90W/本(保証値)相当のCSD-Bについても、その 中心温度( )は、ガラスの安定性に影響があるとされる最低 結晶化温度(575℃)に対して十分余裕を有するとしている。 ⑤閉じ込め性 貯蔵期間中における閉じ込め性については、高レベル放尃性廃棄物ガラス 固化体の容器と同等の材質で、十分な耐食性を有している。また、一般的に 溶接部は耐久性が低いといわれていることから、溶接部の健全性に関して評 価を行った。その結果、以下のとおり、溶接部の健全性が確保されることか ら閉じ込め性は確保されると考えられる。 CSD-Bの容器の溶接には、高レベル放尃性廃棄物ガラス固化体と同等 の溶接が実施される。溶接部の健全性については、これまでに返還された高 レベル放尃性廃棄物ガラス固化体の容器と同様に、製造段階における容器の 調達に際して、外観検査、放尃線検査、液体浸透探傷検査等が実施されると している。また、CSD-Bの容器封入時の蓋の溶接についても高レベル放 尃性廃棄物ガラス固化体の溶接と同等の溶接パラメータで管理され、そのパ ラメータは認証機関により確認されるとしている。 以上のように、返還廃棄物自体の安定性(固化体の安定性、耐放尃線性、 容器の耐食性、熱的安定性、閉じ込め性)は確保されるものと考えられる。 22 (5)貯蔵の予備的評価 選定された各評価項目と、各項目に関連する仕様に基づき評価した結果は、 それぞれ以下のとおり。 ①放尃線遮へい CSD-Bからの直接γ線及びスカイシャインγ線による一般公衆の被ば くが十分低くなるように貯蔵施設に適切な遮へいを設けることが必要である。 高レベル放尃性廃棄物ガラス固化体については、貯蔵施設からの直接線及び スカイシャイン線による一般公衆の被ばく評価が行われた。その結果、ガラス 固化体を地下に設置した貯蔵施設に貯蔵し、適切な遮へい壁を設けることによ り、一般公衆の被ばく線量を十分低く抑えることができるとされており、それ らを考慮した廃棄物管理施設の設計は十分可能とされている。2) CSD-Bの放尃性核種濃度(α核種<6.2×1012Bq/本、β核種 <7.4×1014Bq/本)は、高レベル放尃性廃棄物ガラス固化体(α核 種<3.5×1014Bq/本、β核種<4.5×1016Bq/本)より2桁 程度低いことから、CSD-Bについても放尃線遮へいを考慮した廃棄物管理 施設の設計は技術的に十分可能であると考えられる。 ②容器付着放尃性物質の揮発/はく離 CSD-Bの表面汚染密度は法令に定める管理区域の設定基準以下に管理 されることが望ましい。 CSD-Bの表面汚染密度の仕様は、高レベル放尃性廃棄物ガラス固化体の 仕様と同様に既存の高レベル放尃性廃棄物ガラス固化体の廃棄物管理施設の 設定基準と同じ基準とされている。このことから、容器付着放尃性物質の揮発 /はく離を考慮した廃棄物管理施設の設計は十分可能と考えられる。 ③冷却空気の放尃化 冷却空気の放尃化の影響については、CSD-Bに含まれる放尃性核種から 生じる中性子によって冷却空気中のアルゴンが放尃化される量を評価する必 要がある。 高レベル放尃性廃棄物ガラス固化体については、日本原燃株式会社の再処理 事業所の廃棄物管理施設の安全審査において、放尃性アルゴンの生成量は十分 に小さいと評価されている。 CSD-Bに含まれる放尃性核種の濃度(α核種<6.2×10 12Bq/ 本、β核種<7.4×10 14Bq/本)は高レベル放尃性廃棄物ガラス固化 体(α核種<3.5×1014Bq/本、β核種<4.5×1016Bq/本) に比べて2桁程度低い。このことから、放尃性アルゴンの生成量は高レベル放 尃性廃棄物ガラス固化体の場合に比べて十分小さく、現状の技術で冷却空気の 23 放尃化を考慮した廃棄物管理施設の設計は十分可能と考えられる。 ④冷却機能 高レベル放尃性廃棄物ガラス固化体(最大発熱量2.0kW/本)について は、ピットによる貯蔵方式を想定してガラス固化体中心温度の評価が行われて いる。評価の結果、適切な貯蔵段数、排気シャフト高さとすることにより、ガ ラス固化体中心温度を十分低く抑えることができるとされている。2) (ただし、 日本原燃株式会社の再処理事業所の廃棄物管理施設においては、英国からの高 レベル放尃性廃棄物ガラス固化体を考慮して最大発熱量2.5kW/本の評価 にて安全性が確認されている。) CSD-Bの発熱量が最大90W/本であることを踏まえ、既存の高レベル 放尃性廃棄物ガラス固化体の廃棄物管理施設での貯蔵を想定して評価すると、 貯蔵時のガラス固化体中心温度を十分低く抑えることができることから、現状 の技術で冷却機能を考慮した廃棄物管理施設の設計は十分可能とされている。 ⑤定置方法等に関する考慮 高レベル放尃性廃棄物ガラス固化体では、多段積み時のガラス固化体に発生 する応力を評価し、貯蔵段数と最大発生応力との関係から、適切な段数とする ことにより発生する応力を十分低く抑えることができるとされている。2) CSD-Bのガラス固化体重量、容器の仕様等は、高レベル放尃性廃棄物ガ ラス固化体と同等であることから、現状の技術で定置方法を適切に考慮するこ とによって、荷重に対する容器の健全性を確保することは十分可能と考えられ る。 ⑥CSD-Bの落下 高レベル放尃性廃棄物ガラス固化体では、国内外で落下試験が実施され、そ の健全性が確認された。仏国では、貯蔵ピット内での落下を想定した高さから の落下試験が行われ、容器は変形のみで損傷のなかったことが報告されている。 また、国内の試験では、貯蔵ピット最上部から最下段のガラス固化体への落下 試験が実施され、落下ガラス固化体に変形はなく最下段ガラス固化体には変形 のみで漏洩は認められなかったことが報告されている。2) CSD-Bのガラス固化体重量、容器の仕様等は、高レベル放尃性廃棄物ガ ラス固化体と同等であることから、CSD-Bの落下を考慮しても、その健全 性を確保することは十分可能と考えられる。 以上のように、CSD-Bの貯蔵時の安全性は、安全審査等によって確保さ れる貯蔵施設の安全機能との組合せによって確保されうるものであり、CSD -Bを安全に取扱う廃棄物管理施設の設計は可能であると考えられる。 24 4.5 処分の安全性を評価するために必要とされる情報の充足性 CSD-Bは、長半減期低発熱放尃性廃棄物(以下、「TRU廃棄物」とい う。)に該当し、地層処分が想定されている。 安全委員会決定は、返還廃棄物の仕様を処分の観点から検討するにあたって、 「処分時点で安全評価を行う際に必要な情報のうち、返還廃棄物の仕様に含ま れていることが適当な情報を把握しておくことが望ましい。」との考え方を示 している。今回の検討では、安全委員会決定に基づき、以下のようにCSD- Bの仕様に含まれる情報の充足性を確認した。 処分の安全性に関する評価項目、評価内容及び関連する仕様 評価項目 評価内容 処分に必要なデータの充足性 処分時点で安全評価を行う際に必要な 情報(安全委員会決定で指摘されてい るデータ等)が含まれていることを評 価する。 関連する仕様 安全委員会決定 からの評価項目 処分に必要なデータの充足性 固放 容 発 化尃 器 熱 ガ性 材 量 ラ核 料 ス種 組 化濃 成 学度 組 成 固 化 ガ ラ ス 熱 伝 導 率 ○○ ○ ○ ○ 処分の安全性を判断するために必要な情報のAREVA NCからの入手 状況については、以下のとおり安全委員会決定で必要とされている全ての項 目について、電気事業者が仕様値及びその他代替情報によりデータを有して いることを確認した。 なお、事業者によれば、近年における処分関連の動向6)7)も踏まえ、必要 な情報の取得に継続的に努めているとしており、さらに、今後追加的にデー タが必要な場合でもAREVA NCから入手可能であるとしている。 このように、AREVA NCから電気事業者に提示されたCSD-Bの仕 様は、現時点で、安全委員会決定に示された処分の安全性を評価する際に必要 25 と考えられる情報として一定の充足性があると認められる。 ただし、今後、処分方法が具体化していく中で、改めて検証していくことが 必要である。 処分の安全性の評価に必要なデータ 評価に必要なデータ 固化ガラス化学組成 仕様書の記載値 ・保証値 45 wt% ≦ 12 wt% ≦ 11 wt% ≦ 4 wt% ≦ 0 wt% ≦ 0 wt% ≦ 0.7 wt% ≦ 0 wt% ≦ SiO2 ≦ 52 wt% B2O3 ≦ 16.5 wt% Na2O ≦ 15 wt% Al2O3 ≦ 13 wt% TE ≦ 5.25 wt% REE ≦ 3.5 wt% ZrO2 ≦ 4 wt% その他 ≦ 4 wt% SiO2+Al2O3 ≦ 61 wt% 71 wt% ≦ SiO2+B2O3+Na2O ≦ 80.5 wt% 0.7 Al2O3-TE ≦ 5 wt% 0.9 ≦ (B2O3/Na2O) その他/(B2O3 +Na2O) ≦ 0.127 2.4 ≦ (Al2O3)/TE ・保証値 α核種< 6.2 TBq/本 β核種< 740 TBq/本 その他の代替情報 - ・主要な放尃性核種 放尃性核種濃度 (線量率) - ・標準的な線量率 βγ 表面: 2.8 Gy/h 表面から1m: 0.2 Gy/h 表面から2m: 0.1 Gy/h 中性子 表面: 8.0x10-6 Gy/h 表面から1m: 8.9x10-7 Gy/h 表面から2m: 3.1x10-7 Gy/h 26 評価に必要なデータ 仕様書の記載値 容器材料組成 発熱量 その他の代替情報 - ・保証値 < 90 W/本 - 固化ガラス熱伝導率 - 4.6.外廃棄規則への適合性 CSD-Bの基本的安全性が確認できたことを踏まえ、現行の外廃棄規則を 適用して個別のCSD-Bの廃棄体の確認を行うことの合理性(外廃棄規則へ の適合性)を改めて確認した。 (1)「外廃棄規則第2条第1項第4号イ」について CSD-Bの基本的安全性の評価にあたって確認した固化ガラスの安定 性等については、個別の廃棄体に対して「放尃線障害防止のため容器に封 入し、又は容器に固型化したものであること」という基準を適用して必要 な確認を行うことができるものと認められる。 (2) 「外廃棄規則第2条第1項第4号ロ」について 今回の検討を通じて、CSD-Bの基本的安全性が、将来の安全審査等 によって確保される貯蔵施設の安全機能との組合せによって確保されうる ことを確認した。この結果から、個別の廃棄体に対して、 「種類(寸法、重 量、強度及び発熱量を含む。)及び数量が当該廃棄物管理設備において管理 することができるものであること。」という基準を適用して必要な確認を行 うことができるものと認められる。 (3)「外廃棄規則第2条第1項第4号ハ」について 今回の検討を通じて、CSD-Bの基本的安全性が、将来の安全審査等 によって確保される貯蔵施設の安全機能との組合せによって確保されうる ことを確認した。この結果から、個別の廃棄体に対して、 「放尃性物質の種 類ごとの放尃能濃度が、当該廃棄物管理設備において管理することができ 27 るものであること。」という基準を適用して必要な確認を行うことができる と認められる。 (4)「外廃棄規則第2条第1項第4号ニ」について CSD-Bの基本的安全性の評価にあたって確認した閉じ込め性等につ いては、引き続き個別の廃棄体に対して「放尃性物質が容易に飛散し、及 び漏えいしないものであること。」という基準を適用して必要な確認を行う ことができると認められる。 (5) 「外廃棄規則第2条第1項第4号ホ」について 「著しい破損がないこと」については、返還廃棄物受入時の一般的要件 (外観検査等)として、引き続き当該基準をCSD-Bにも適用する。 以上のように、安全委員会決定を参考として検討したCSD-Bの基本的安 全性に係る検討結果、特に貯蔵の安全性に係る評価結果と、現行の外廃棄規則 の基準との対比から、CSD-Bの貯蔵の安全性を確認するために、個別の廃 棄物に対して現行の外廃棄規則を適用することには合理性があると認められ る。 28 5.検討結果のまとめ (1)品質保証システムについて 原子力安全・保安院及びJNESが仏国において行ったCSD-Bの廃液サ ンプリング、分析、製造プロセス等についての調査結果等から、AREVA NCがCSD-Bの製造を行う場合に、今回提示された仕様を達成することが 可能とする電気事業者の説明には一定の合理性・根拠が認められる。したがっ て、今般、電気事業者から提示されたCSD-Bの仕様を基に、当該廃棄物の 基本的安全性を検討することには合理性がある。 (2)CSD-Bの基本的安全性について 電気事業者から提示された仕様を基に、安全委員会決定に基づき評価した 結果、以下のことからCSD-Bの基本的安全性が確保されるものと認めら れる。 ・当該廃棄物の性状は、安全に貯蔵するに支障がないものと認められる。 ・当該廃棄物の貯蔵は、既存の貯蔵施設・貯蔵技術との組合せで安全確保に 支障がないものと認められる。 ・電気事業者が把握している当該廃棄物の仕様は、貯蔵の安全性の評価と処 分の安全性評価に必要と考えられる情報として一定の充足性があると認め られる。ただし、今後、処分方法が具体化していく中で、引き続き最新の 知見を踏まえた不断の検証が必要である。 (3)外廃棄規則への適合性について CSD-Bの貯蔵の安全性を確認するため、個別の廃棄物に対して現行の 外廃棄規則を適用した確認を行うことには合理性があると認められる。 なお、外廃棄規則に基づく確認を行う際の重要項目や確認内容について、 引き続き具体化を進めることが必要である。 29 参考文献 1)原子力委員会, “長半減期低発熱性放尃性廃棄物の地層処分の基本的考え方 -高レベル放尃性廃棄物との併置処分等の成立性等の技術的成立性-”, (平 成 18 年 4 月 18 日). 2)電気事業連合会, “COGEMA ガラス固化残滓仕様に関するお願い 添付書類2 COGEMA ガラス残滓 仕様と貯蔵時の安全性の検討”, (昭和 63 年 1 月 21 日). 3)天沼 倞,阪田 貞弘,“放尃性廃棄物処理処分に関する研究開発”,産業 技術出版,374,(1983). 4)間野 正,中西光夫, “高レベル廃液ガラス固化体用キャニスター材料の健 全性試験”,PNC TN4410 90-005,(1990). 5)W.N.Rankin,“Attack of High-Strength Oxidation-Resistant Alloys During IN-CAN Melting of Simulated Waste Glasses”, The International Corrosion Forum Devoted Exclusively to the Protection and Performance of Material, (1980). 6)電気事業連合会,核燃料サイクル開発機構,“TRU 廃棄物処分技術検討書- 第 2 次 TRU 廃棄物処分研究開発取りまとめ-”,JNC TY1400 2005-002,FEPC TRU-TR2-2005-01,(2005) 7)核燃料サイクル開発機構, “わが国における高レベル放尃性廃棄物地層処分 研究開発の技術的信頼性 地層処分研究開発第 2 次取りまとめ”,JNC TN1400 99-022,023,(1999) 30 (付録1) 用 語 解 説 あ ○ 英国BNFL(現Sellafield Ltd) 電気事業者が原子力発電所から発生した使用済燃料の再処理を 委託し ている英国の再処理事業者。BNFLとは、 「British Nuclear Fuels plc」 の 略 称で あ る 。 2 0 0 5 年4 月 に B N - G S (British Nuclear Group Sellafield Ltd の 略 称 )、 2 0 0 7 年 6 月 に S e l l a f i e l d Ltdに社名変更している。 か ○ 核燃料物質等の工場又は事業所の外における廃棄に関する規則(外廃棄規 則) 製錬施設、加工施設、原子炉施設、使用済燃料貯蔵施設、再処理施設、廃棄 物埋設施設、廃棄物管理施設又は使用施設等を設置した工場又は事業所の外に おいて行われる放尃性廃棄物の廃棄に関する経済産業省令であり、主に国内で 事業所の外に廃棄しようとした場合における保安のために必要な措置等、また、 海外での再処理に伴って発生する放尃性廃棄物等を輸入し、廃棄物管理設備に 廃棄しようとした場合における基準、確認等に係る規定がされている。 ○ キャニスター 放尃性廃棄物を収納するステンレス鋼製の容器。 ○高レベル放尃性廃棄物ガラス固化体 再処理の過程において使用済燃料から分離されるストロンチウム-90、 セシウム-137 に代表される核分裂生成物と、アメリシウム-241、ネプツニ ウム-237 等に代表されるアクチニド(原子番号 89 番以上の放尃性元素)を 含む高レベル放尃性廃液をガラス固化したもの。 ○高レベル放尃性廃棄物貯蔵管理センター 日本原燃株式会社の再処理事業所における廃棄物管理事業として1992 31 年に事業許可を取得し、高レベル放尃性廃棄物の貯蔵施設として1995年 に貯蔵容量 1,440 本で操業開始した。1,440 本分の貯蔵施設を増設中である。 仏国AREVA NCから返還された高レベル放尃性廃棄物ガラス固化体 1,310 本を受入れ済みであり、引き続き、英国Sellafield Ltd から返還される高レベル放尃性廃棄物ガラス固化体を受入れ中である。 ○ 固型物収納体(CSD-C) 仏国AREVA NCの再処理工場から発生するハル及びエンドピースもし くは雑固体廃棄物を圧縮処理し、ガラス固化体と同様な形状のステンレス鋼製 のキャニスターに収納した廃棄体。CSD-Cとは、仏語で「Colis Standard de Déchets Compactés」の略称である。 さ ○ 再処理施設 使用済燃料を、再び燃料として使用できるウラン、プルトニウムと、不要物 として高レベル放尃性廃棄物に分離し、ウラン又はウラン-プルトニウム混合 物を回収する施設。施設の運転・解体に伴い、様々な性状で含まれる放尃性核 種の種類及び濃度も幅広い放尃性廃棄物が発生する。 ○ セメント固化体 一般的には、放尃性廃棄物を水硬性セメントと混合して容器に充填し、固型 化した廃棄物。本報告書では、再処理施設の操業で発生する低レベル放尃性廃 棄物(ハル・エンドピース、雑固体廃棄物)をセメント固化した廃棄物を示し ている。 た ○ 長半減期低発熱放尃性廃棄物(TRU廃棄物) 再処理施設やウラン-プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料加工施設の操 業・解体に伴って発生する低レベル放尃性廃棄物。TRU廃棄物のうち、ハル・ エンドピースの圧縮体は発熱量が比較的大きく、発生時点で約 60W/本 (25年後で約 4.5W/本)程度。一方、高レベル放尃性廃棄物(ガラス固化 体)の発熱量は固化直後で約 2,300W/本(50年後で約 350W/本)程度で 32 ある。また、TRU廃棄物にはハル・エンドピース以外に、ベータ線核種であ る I-129 の濃度が比較的高い廃銀吸着材、硝酸塩を含む濃縮廃液等を固化した もの、不燃性廃棄物等がある。TRUとは、Trans-uranic(超ウ ラン元素)の略称である。 ○ 低レベル放尃性廃棄物ガラス固化体(CSD-B) 仏国AREVA NCの再処理工場から発生する低レベル放尃性廃液(洗浄 廃液等)を、高レベル放尃性廃棄物ガラス固化体と同様な方法で、ステンレス 鋼製のキャニスターにガラス固化した廃棄体。CSD-Bとは、仏語で「Colis Standard de Déchets Boues」の略称である。 は ○ ビチューメン固化体 低レベル放尃性廃液(洗浄廃液等)をアスファルト固化した廃棄物。 ○ 仏国COGEMA(現AREVA NC) 電気事業者が原子力発電所から発生した使用済燃料の再処理を 委託し て い る 仏 国 の 再 処 理 事 業 者 。 COGEMAと は 、 仏 国 語 の 「 Compagnie Générale des Matiéres Nucléaires」の略称である。2006年3月に現 AREVA NCに呼称変更している。 や ○ UP2-400 仏国AREVA NCラ・アーグ再処理工場の施設。1976年に運転開始 し、新たに、せん断施設、溶解施設、ガラス固化施設等を追加設置して、 1994年にUP2-800として運転開始した。既存のせん断、溶解施設は 使用されなくなり、UP2-400は1998年に操業停止し、現在廃止措置 を実施している。 33 (付録2) 総合資源エネルギー調査会 原子力安全・保安部会 廃棄物安全小委員会委員名簿 (平成22年6月17日現在) 委 員 長 委 員 専門委員 石榑 井川 井口 顕吉 陽次郎 哲夫 社団法人日本アイソトープ協会常務理事 読売新聞東京本社論説委員 名古屋大学大学院工学研究科量子工学専攻教授 出光 岡田 織原 一哉 義光 彦之丞 川上 泰 小佐古 敏荘 小玉 喜三郎 九州大学大学院工学研究院エネルギー量子工学部門教授 独立行政法人防災科学技術研究所理事長 東北工業大学知能エレクトロニクス学科教授 (平成22年4月まで) 財団法人原子力安全研究協会研究参与 東京大学大学院工学系研究科原子力専攻教授 独立行政法人産業技術総合研究所特別顧問 駒田 斎藤 嶋田 登坂 長﨑 満木 山内 和気 渡部 広也 誠 純 博行 晋也 泰郎 喜明 洋子 芳夫 (平成22年5月まで) 財団法人電力中央研究所研究顧問 東京大学大学院法学政治学研究科教授 熊本大学大学院自然科学研究科教授 東京大学工学系研究科システム創成学専攻教授 東京大学大学院工学系研究科原子力専攻教授 法政大学デザイン工学部教授 弁護士 慶應義塾大学商学部教授 独立行政法人産業技術総合研究所地質調査情報センター 清治 真一 次長・深部地質環境研究コア代表 独立行政法人原子力安全基盤機構総括参事 独立行政法人日本原子力研究開発機構経営企画部次長 阿部 中山 34 (付録3) 総合資源エネルギー調査会 原子力安全・保安部会 廃棄物安全小委員会における検討の経緯 第28回 平成19年3月20日 ・返還低レベル廃棄物に係る技術ワーキンググループの設置に ついて 第37回 平成21年7月24日 ・海外返還廃棄物(CSD-B)の技術基準適合性の検討につ いて 第40回 平成22年6月17日 ・海外返還廃棄物(CSD-B)の安全性に係る検討結果につ いて 35 (付録4) 総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会廃棄物安全小委員会 返還低レベル廃棄物に係る技術ワーキンググループ委員名簿 主 査 井口 哲夫 名古屋大学大学院工学研究科量子工学専攻教授 委 員 飯塚 悦功 東京大学大学院工学系研究科化学システム工学専攻教授 出光 一哉 九州大学大学院工学研究院エネルギー量子工学部門教授 長﨑 晋也 東京大学大学院工学系研究科原子力専攻教授 専門委員 馬場 恒孝 独立行政法人日本原子力研究開発機構安全研究センター 36 (付録5) 総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会廃棄物安全小委員会 返還低レベル廃棄物に係る技術ワーキンググループにおける検討の経緯 第4回 平成21年9月10日 ・返還低レベル廃棄物(CSD-B)について 第5回 平成21年12月10日 ・返還低レベル廃棄物(CSD-B)について 第6回 平成22年3月23日 ・返還低レベル廃棄物(CSD-B)について 上記会合の他、返還低レベル廃棄物に係る技術ワーキンググループ委員に は、必要に応じて個別に意見を伺う等している。 37