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東京電力による原子力発電所点検の不正報告について

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東京電力による原子力発電所点検の不正報告について
配布資料
第12回電気事業分科会・文書発言
東京電力による原子力発電所点検の不正報告について
吉岡 初子
渡辺 光代
これまでの電気事業分科会において、電力市場の在り方について率直な意見交換
をしてきました。残された時間の中で、電力市場の行く末を見極め、消費者の選択が
実質的に可能となり、情報公開による透明性をもった電力市場を創り上げたいと考え
ます。
しかし、原子力安全・保安院が8月29日に発表した、東京電力による「原子力発電
所における事業者の自主点検作業記録に係る不正等に関する調査について」は、私
たちの電力会社および政府の原子力行政に対する信頼感を根底から覆すものでした。
電気事業分科会において、さらに今後の議論を進めていくためには、電力会社およ
び経済産業省が、これまで前提としてきた国民との信頼関係を再構築するため方法を
明確にすべきと考えます。
消費者としての立場から、以上の点をふまえて、以下の意見を申し上げます。
1.東京電力の原子力発電所における自主点検の不正について
原子力事業において、平和利用と安全確保は、日本国民との約束であり、基本とな
る前提条件であることを共通の認識としてきました。当該事業者がその基本業務にお
いて不正な事実を隠蔽し、原子力発電所の運転を継続したことは、極めて重大な裏
切り行為です。先ず、信頼回復のためには、東京電力は、社内調査委員会の結果を
公表し、第三者による調査内容の点検を経て、経営陣の責任問題だけでなく、組織
的な体質や機構運営にかかわる対応策を一日も早く取り組むことが必要と考えます。
また、他の原子力発電事業者はもちろんのこと、電力業界自身においても、今回の
不正を自らの問題と真摯に受け止め、早急に内部調査を実施し、点検作業に係る不
正がないことを検証し、公表することが求められています。
2.経済産業省原子力安全・保安院の責任について
今回の東京電力による不正が明らかにされたのは、1999年のJCO臨界事故の後、
原子炉等規制法において主務大臣に対する申告(いわゆる内部告発)が位置付けら
れたことによるものです。関係者による告発については様々な意見がありますが、今
回のように、原子炉における事故を未然に防ぐことが出来たことは極めて重要なことで
す。これまで、他業界の企業における虚偽不正も、内部告発によって明らかになって
きたことに注視する必要があります。経済産業省は、国民の知る権利を保障する立場
から、関係者による告発が有効に機能するように法制度を整備すべきと考えます。
しかし、原子力安全・保安院は、今回の東京電力の不正について、どうして告発を
受けてから2年も経てからの発表となったのか、果たして国民の知る権利を侵害してい
ないのかどうか等、経済産業省の対応についても事実にもとづく検証が必要です。ま
た、その結果として、原子力安全・保安院は、告発等により違反事項を知り得てから、
どの程度の期間で事実を検証し、国民に明らかにすべきかを明記した行動規範を明
示すべきと考えます。
3.今後の電力市場のあり方を検討するために
日本の企業をめぐって様々な虚偽や不正が次々と明るみに出るなかで、多くの国
民、消費者は事業者の選択をとおして、その意思を示しはじめています。
しかし、電力市場においては、電気事業者が地域を独占するとしているため、消費
者による事業者の選択は不可能となっています。消費者は、より信頼できる事業者を
選び、不正を行う事業者に反省を促す行動すら取れないのが現状です。電力市場の
思い切った再設計を行い、電気事業者の体質の転換を促すことが必要と思います。
一方、これまでの電気事業分科会において、原子力発電に関して、大切な課題で
あるとしながらも、議題とすることが出来ていません。発電コストについても、「原子力に
よる発電が最も安い」としたままであり、発電にかかわる直接的なコスト、および社会的
な管理、リスクを回避するために要するコスト等、総合的なコストを明らかにし、議論を
重ねるべきと思います。
エネルギー源は単に経済的なメリットだけではなく、エネルギーセキュリティや環境
対策等の視点が必要であることは言うまでもありませんが、現状での費用を明らかに
することをとおして、本来的な理解を得るべきと考えます。そのためにも、本電気事業
分科会において、原子力発電の安全性確保のために何をすべきかについて、率直な
議論が必要と考えます。
以 上
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