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分相によるCRTファンネルガラス からの鉛の分離
分相によるCRTファンネルガラス からの鉛の分離 門木秀幸1), 居藏岳志1), 貴田晶子2), 藤森崇3) 1) 鳥取県衛生環境研究所, 2) 愛媛大学, 3) (独)国立環境研究所 テレビの需要 出典:(社)電子情報技術産業協会:2011 年地上アナログ方法終了に伴うテレビの排出台数 予測(2010 年5 月24 日) 背景 ブラウン管(CRT)型テレビは、家電リサイクル法によりリサイクルが義務 付け CRTテレビの重量の約50~60%がガラス、ガラスのリサイクルが重要 現在は、廃CRTガラスはCRTガラスへ水平リサイクル しかし、 テレビの需要は、CRT型から薄型(FPD)へ急速に転換 FPDの普及によりCRTの生産量は急速に減少、水平リサイクルが停止が 危惧 CRTガラスのファンネルには、有害なPbが含有 Pbの有害性から、そのまま別用途にリサイクルすることが困難 [鉛の有害性] 環境省告示13号試験の方法で溶出試験を行うと、ファンネルガラスにつ いては、埋立判定基準を上回る。 ブラウン管型テレビ [ファンネル] 51.6 % SiO2 PbO 23.9 8.5 K2O [ネック] 48.5 % SiO2 PbO 34.0 10.1 K2O [フリット] PbO 69.3 % ZnO 15.9 8.4 B2O3 出典:還元溶融による廃ブラウン管ガラスからの鉛 分離、北海道立工業試験場報告 №304 [パネル] 61.2 % SiO2 SrO 9.8 BaO 8.7 目的・目標 目的 本研究では、CRTファンネルガラス中のPbを分離し、無害化すること で、ガラスとPbをリサイクルすること。 目標 2成分以上から構成される有る種のガラスは、組成の異なる二種類 のガラス相に分相する。(例えば Na2O-B2O3-SiO2) そこで、鉛ガラス(Pb-Gl)に分相剤として、酸化ホウ素(B2O3)あるい は四ホウ酸ナトリウム(Na2B4O7)を添加し、 鉛ガラスから鉛を選択的に抽出・分離する方法について検討した。 分相法の流れ 鉛ガラス ホウ素原料 ホウ素含有廃水 Pb ボレート相 冷却・ガラス化 溶融 Pb シリカ相 酸処理 多孔質ガラス 特徴と課題 Co、Feの除去への適用事例はあるが、Pbガラスへの適用性は不明。 Pbがボレート相に移行することによって高い除去率が期待 ホウ素の循環利用技術(排水処理)が必要 実験方法 分相剤 B2O3、Na2B4O7 鉛ガラス Pb 20.5%(分析値) Si 54.1%(文献値1)) Na2O源 Na2CO3 粉砕(500μm) 混合 溶融(1100℃) 分相ガラス 冷却、ガラス化 粉砕(500μm) Pb抽出:酸抽出 ICP-AESで定量 1) E. Bernardo, G. Scarinci, S. Hreglich, Foam glass as a way of recycling glasses from cathode ray tubes, Vol.78, pp.7-11 (2005) 120 extraction rate (mass%) 結果 分相剤: B2O3 抽出条件 2 mol/L HNO3 固液比 50 24時間 振とう Pb Si (1) Na2O 0% 100 80 60 40 20 0 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 B2 O3 /Pb glass ratio (g・g-1) 100 80 60 40 20 0 Pb Si (3) Na2O 20% 120 extraction rate (mass%) 120 extraction rate (mass%) Pb Si (2) Na2O 10% 100 80 60 40 20 0 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 B2 O3 /Pb glass ratio (g・g-1) 0.6 0.7 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 B2 O3 /Pb glass ratio (g・g-1 ) 0.6 0.7 120 extraction rate (mass%) 結果 分相剤: Na2B4O7 抽出条件 2 mol/L HNO3 固液比 50 24時間 振とう Pb Si (1) Na2O 0% 100 80 60 40 20 0 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 Na2 B4 O7 /Pb glass ratio (g・g-1 ) 100 80 60 40 20 0 Pb Si (3) Na2O 20% 120 extraction rate (mass%) 120 extraction rate (mass%) Pb Si (2) Na2O 10% 100 80 60 40 20 0 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 -1 Na2 B4 O7 /Pb glass ratio (g・g ) 0.7 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 Na2 B4 O7 /Pb glass ratio (g・g-1 ) 0.7 ガラスの表面 溶融後のガラス表面 2mol/L HNO3 5min浸漬 50µm 表面分析(SEM-EDX) 緑 : Si 赤 : Pb まとめ • Pbを高濃度に含むファンネルガラスを対象として, • 分相現象を利用して、Pbを分離するために、分相剤等の添加条件を検 討した。 • 分相剤(B2O3,Na2B4O7)及びNa2Oの添加量の増加は,Pbの抽出率を 上昇させた。 • しかし、分相剤、Na2Oの過剰な添加はSiの溶解も促進した。 • 分相剤の添加量を最適にすることにより,鉛ガラス中のPbを選択的に抽 出分離することが可能であることが示唆された。 今後の課題 • • • • • 鉛ガラスの分相処理は、ガラスと分相剤とを溶け合わせるだけなので、 還元溶融法や塩化揮発法と比較してエネルギーは比較的少ないと考え られる。 抽出処理では、酸で鉛とホウ素(分相剤)を抽出する。 この抽出液を中和して排出すると仮定すると、酸と分相剤の薬剤費に加 え、排水処理費が必要となり、高コストとなる。 抽出液中の鉛、ホウ素を回収し、酸を再利用することで、抽出処理コスト を最小化することができる。 電解採取等により、鉛を回収し、溶媒抽出等によりホウ素を回収、酸を循 環利用する技術が今後の課題。