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沖ノ鳥島周辺海域における仔稚魚相 - 東京都島しょ農林水産総合センター

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沖ノ鳥島周辺海域における仔稚魚相 - 東京都島しょ農林水産総合センター
東京都水産海洋研究報告(1)51-63,2006
沖ノ鳥島周辺海域における仔稚魚相
前田洋志]・小埜田明’
FaunaofflshlarvaeflronlthewatersaroundtheOkino-torishima
lsland,southernJapan
HirosbiMAEDAandAkiraONODA
日本領土の最南端に位置する沖ノ鳥島周辺海域は亜
調査方法
熱帯域に属し,回遊性魚類の産卵場として利用されて
いることが予想される。そこで,沖ノ烏烏海域の漁業
調査は,2005年4月13日,5月19日,||月26~29
特性調査の一環として,本海域における魚類の再生産
日の3回行った。4月13日と5月19日の調査には,東
状況を把握するため,各種ネットによる仔稚魚の採集
京都島しょ農林水産総合センター所属調査指導船「み
調査を行ったので報告する。
やこ」(136t)を,11月の調査には,日本海洋株式会
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137。
136.
図1沖ノ鳥島周辺における仔稚魚調査地点
l:沖ノ鳥島西,2:沖ノ鳥島北,3:沖ノ鳥島東,4:沖ノ鳥島南,5:沖ノ鳥島東方沖合
東京都島しょ農林水産総合センター大島事業所〒lOO-0212東京都大島町波浮港18
-51-
社所属調査船「第七開洋丸」(499t)を使用した。調
結果を表Zに示した。4月には4調査地点で昼夜各1回
査地点は沖ノ鳥島を中心とした東西南北方向の海域に
(合計8回)の曳網で14科の魚類仔稚魚が確認され,
4調査地点(図l)を設定した。また,11月には上記4
全部で173個体が採集された。出現割合は,ハダカイ
地点の他に沖ノ鳥島東方沖合木星海山,土星海山,天
ワシ科が最も多く67個体(39%)で,次いでヨコエソ
王星海山(図1)上で調査を行った。各調査地点の位置,
科35個体(20%),トビウオ科16個体(9%),シイラ
使用ネット曳網時刻は表lに示すとおりである。仔
科9個体(5%)であった。
日中の調査では8科94個体が採集され,出現割合
稚魚の採集は,各種プランクトンネットの表層および
はハダカイワシ科47個体(50%),トビウオ科11個体
中層曳きで行い,以下のような調査法によった。
表層調査には新型稚魚ネット(渡邊1992),口径
(12%),ヒメジ科91固体(10%),シイラ科41固体(4%)
130cm,網地54GG(以下リングネット)を使用した。
であった。特に東側の観測地点1ヶ所で約半数の57
曳網速度はネットの網口部が半分海面上に出るように
個体が採集され,他の3調査地点では10~15個体の
船速2ktとし,曳網時間は10分間とした。「みやこ」で
採集数であった。
は右舷舷側にネットがくるように調整し,一方「第七
夜間の調査では9科79個体が採集され,出現割合
開洋丸」では船尾よりワイヤー長50mまで延ばし曳網
はヨコエソ科35個体(44%),ハダカイワシ科20個体
した。4月13日の調査では,同一地点で,日中と日没
(25%),シイラ科51固体(4%)であった。ヨコエゾ
後の調査を行い,出現種の比較を行った。
科は夜間にのみ採集された。夜間では北側の調査地点
1ケ所で大半の46個体が採集され,他の3調査地点で
中層調査は,改良型NORPACネット(口径40cm,
網地45OG)によるワイヤー長150mの垂直曳きを行っ
は8~13個体の採集数であった。
5月には4調査地点で各1回合計4回の曳網で7科が
た。4月13日の調査では,同一地点で,日中と日没後
確認され,全部で2051固体が採集された。出現割合は
の調査を行い,出現種の比較を行った。
5月19日には,沖ノ鳥島南調査地点でMTDネット
トビウオ科が最も多く1851固体(90%),ダツ科2個体
(口径45cm,目合335#)による層別採集を実施した。
(1%)となった。調査地点別の採集個体数は,南調査
曳網水深は第1回目が,200,250,300,350m,第2
地点が最も多く168個体,次いで西調査地点の29個
回目が25,50,100,150mの各4層合計8層であった。
体,東調査地点16個体,北調査地点の2個体となった。
11月25日には,同じくMTDネットを用い,土星海山
5月の調査ではハダカイワシ科がほとんど採集されな
でワイヤー長75,,150,,225,,300mの4層曳きを
かった。
行った。曳網は,傾角45.に安定後,船速2ktで30分
11月の調査では士星海山,木星海山,天王星海山,
間行った。MTDネットには,各ネットに小型メモリー
沖/烏島東方海域を含む8調査地点で合計9回の曳網
式深度計(アレック電子製,MDS,毎分計測)と濾水
を行い13科が確認され,全部で2781固体が採集され
計(鶴見精器製)を取り付けて調査した。
た。出現割合はハダカイワシ科が163個体(59%),
11月27日には,沖ノ鳥島東方沖合,11月26日に土
ハダカエソ科27個体(10%),ホテイエゾ科14個体
星海山,11月28日には天王星海山でボンゴネット(口
(5%),ギンハダカ科12個体(4%)となった。これ
径60cm×2,目合い335/L)を用い水深130mからの傾
らの中で水産上重要な種としては,サバ科のメバチ
斜曳きを行った。ボンゴネットは船尾より所定の水深
川'""z/so6es"sl個体が出現した。11月にのみ出現し
までワイヤーを延ばし30分間かけて表層まで巻き上
た種としては,マカジキ科,アンコウ目,アナゴ科が
げた。
少数であるが採集されており,一方,トビウオ科は全
各ネットの採集物は,ネット引き上げ後直ちに船上
く採集されなかった。
にて5%中'性ホルマリンにより固定し,下船後,研究
中層調査における改良型NORPACネットl曳網あた
室において,種の同定を行うとともに個体数を計数し
りの採集個体数を表3に示した。4月には4調査地点
た。学名は中坊(2000)に従った。さらに種の同定
で日中と夜間の調査を実施し,合計8回の曳網で8科
が可能であったものについてはLeisandCarsoM2004)
101個体が採集された。不明種を除くとハダカイワシ
に従い,体長の測定と発育段階の確認を行った。
科が最も多く採集されており,次にヨコエゾ科となっ
た。昼夜の比較では,採集数が日中で31個体であっ
結果
たのに対し夜間で701固体と多かった。]1月は7調査
表層調査におけるリングネットl曳網あたりの採集
地点で7回の曳網を行った。全体的にl曳網あたりの
-52-
表l沖ノ烏島調査地点情報
調査地点名
使用ネット
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2005年5月19日
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2005年11月29日
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2005年11月26日
2005年11月27日
2005年11月28日
2005年11月25日
2005年5月19日
2005年5月19日
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LNP
LNP
LNP
LNP
LNP
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中中中中間間間間
RN
RN
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RN
RN
RN
RN
RN
RN
RN-l
RN-2
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RN
RN
RN
RN
RN
RN
ムロ
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ボンゴネット
ボンゴネット
MTD
MTD-l
MTD-2
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1840
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20:45
21:30
22:10
23:00
17:00
16:54
16:47
2020
21:35
22:44
23:49
1610
17:17
18:25
1925
2035
m:19
22:04
15:40
15:15
18:00
1930
1937
19:00
2030
21:45
22:53
23:59
20:00
19:Sl
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1825
912
1025
経度
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LNP
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LNP
LNP
緯度
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136.05′
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l36oO4′
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136.05ノ
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136.04′
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136.32′
l36oOO′
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136.59′
136.04ノ
136.08ノ
136.59ノ
136.05ノ
136.10ノ
136.04ノ
l36o59
l36oO5ノ
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136.04ノ
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l36o24ノ
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l36oO5′
136.05ノ
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RN
LNP
調査時刻
6-796-798000600617961790600388000600800800
352535254000390352535259390544000390400400
2005年5月19日
LNP
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沖
士鳰矼士
RN
LNP
沖山
西北東南西北東南
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沖
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20○25ノ
20.25′
20o28
20o25ノ
Z0o2Z
20o25′
20.26ノ
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LNP
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沖
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日付
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2005年4月131」
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2005年4月13日
2005年4月13日
2005年4月13日
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2005年4月13日
2005年11月26,
2005年11月27日
2005年11月28日
2005年n月29日
2005年11月29日
2005年IlH291ヨ
2005年11月29日
2005年4月131三1
2005年4月13日
2005年4月13日
2005年4月13日
2005年4月l3H
2005年4月13日
2005年4月13日
2005年4月13日
LNP
注)RN:新型稚魚ネット,LNP:改良型NORPACネット
採集個体数は少なく,土星海山,沖ノ烏島東方沖合,
科8種107個体が採集された。採集魚の鉛直分布をみ
沖/鳥島東調査地点では仔稚魚が全く採集されなかっ
ると,25~100mまでの3層における採集個体数が合
た。不明種を除き3科13個体が採集された。採集され
計1021固体と全体の95%を占めた。さらに,150m以
た魚類のうち最も多くかつたのはハダカイワシ科の8
深の層では採集個体数は0~21固体と僅少であった。
個体であった。
25m居では6科54個体が採集された。その内訳をみる
MTDネットでのl曳網あたりの採集結果を表4に
と,ヨコエソ科のウスオニハダカqノc/or/,o"epα///`/aが
示した。また5月19日に沖ノ鳥島南調査地点で行っ
28個体と最も多く,次いでハダカイワシ科が19個体,
た曳網水深の変化を図2に示した。8層(F1的水深は
ギンハダカ科のヤベウキエゾ川c/gzィe〃/α〃〃6Mα
25,50,100,150,200,250,300,350mであった
4個体,ヤリエソ科のマダラヤリエソEve'"?α""e//α
が,図2によれば実際の曳網水深は目的水深より深く,
/"cノノ、,ニザダイ科の一種,エボシダイ科のホソオキ
25~200mおよび250~450mであった)の調査で8
メダイ0,6/cePMa,/c〃c,/、/"sが各l個体採集されてい
-53-
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経過時間(分)
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0
100
200
300
400
500
600
水深(、)
図2-12005年5月19日沖ノ鳥島南調査地点におけるMTDネット第]回曳網水深変化
経過時間(分)
00:OOO5:0010:OO15:0020:0025:00300035:OO40:0045:0050:00
50
100
150
200
250
水深(、)
図2-22005年5月19日沖ノ鳥島南調査地点におけるMTDネット第2回曳網水深変化
る。50m層では,5科35個体が採集され,その内訳は,
また,この調査地点では75~300mの各水深で仔稚魚
ハダカイワシ科22個体,ギンハダカ科ヤベウキエソ6
が採集された。
個体,ヨコエソ科ユキオニハダカqノc/Cl/、"eα仏α5個
ボンゴネットによるl曳網あたりの採集結果を表4
体,ハダカエソ科ハダカエソルs/、/epjMJpo"jcaとエ
に示した。沖ノ鳥島周辺海山での出現状況は,土星海
ボシダイ科ホソオキメダイが各1個体であった。
山で13科172個体,天王星海山で4科34個体,沖ノ鳥
11月25日に土星海山で行ったMTDネット(75,
島東方沖合で9科42個体が採集された。最も多くの個
150,225,300mの4層)では,10科107個体が採集さ
体数が採集されたのはハダカイワシ科で,各調査地点
れた。その内訳はハダカイワシ科が64個体と最も多
とも同様の傾向が認められた。
く,次にギンハダカ科ヤベウキエソ20個体となった。
-57-
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59
するものの,全体的に各調査地点や各種ネットで普通
考察
に採集されており,沖ノ鳥島周辺海域においても優占
沖/鳥島周辺海域において各種ネットにより151-1
種であった。ハダカイワシ科魚類は漁業対象魚として
33科133タイプ,合計1233個体の仔稚魚が採集され
直接は利用されることはないが,マグロ類やイカ類な
た。このうち種まで同定できたものが39種確認され,
どの有用魚種の餌になるなど,沖合域での重要な資源
リストを表5に示した。
の一つである(多紀ら2005)。
トビウオ科Exocoetidae
沖ノ烏島周辺海域での出現仔稚魚の内訳は,春季の
トビウオ科やシイラ科など表層性の魚種,ハダカイワ
種まで|ril定できたものは,サヨリトビウオ
シ科,ギンハダカ科,ヨコエソ科など巾・深層性の魚
0W)or力α"z/〕ん"s〃ノノcmp/e,WS〃,/c,〃/e,WS,ハゴロモトビ
種が多くを占めていた。採集総個体数の多かった4科,
ウオnocoe/"s''70"ocj〃ん"s(図4),ツマリトビウオ
および水産上重要な種それぞれついて以下に考察を示
Pα肥xocoe/"s伽c/】りや/elzMrac/jリlp/elws,ニノジトビウオ
す。
HノノWMC〃柳speaノノノge'の5種で,他に種まで特定でき
ハダカイワシ科Myctophidae
なかった12タイプの仔稚魚が採集された。今回の調
種まで同定できたものは,ウスハダカMノaOpA""7
査中,ハゴロモトビウオとニノジトビウオの成魚がタ
or/e'7/α/e(図3),イバラハダカノMW"osw",,ツマ
モ網により採集されており(加藤ら2006),両者は本
リドングリハダカノヨ〕w)ルノ'w,'Dx/'""''1,マガリハ
海域で仔稚魚から成魚まで確認された。トビウオ科は
ダカ51〕ノ'"Mop/、'wseVe'wZq""/,マルハナハダカ
11月に全く採集されなかったことから,本海域にお
Ce,7/,o6,α"c伽α"clMJ,ナガハナハダカCchaeroCep〃α/Ms
いて,トビウオ科の産卵が春季に行われていることが
の6種で他に種まで特定できかなった21タイプが確認
示唆された。これは,5月の調査において成熟したト
された。
ビウオ類の成魚が多く採集されたこととも一致する。
本科魚類は外洋域の中層魚であり,生物量は最優位
ヨコエソ科Oonostomatidac
にある(小沢,1988)。本調査においても,採集総個体
種まで同定できたものは,ネッタイユメハダカ
数中の41%を占めており,5月には採集個体数が減少
DliP/OP〃oslfae"/α,ユメハダカロme"/αノノs,ユキオニハ
鐘
図3ウスハダカMc/叩〃"",Mel7/α/e2005年4月13日
に沖ノ鳥島西調査地点で新型稚魚ネットにより採集さ
れた。(体長233mm,稚魚期)
図5タイワンアイノコイワシE"clQIs/c〃oノノ"αp""c/旅r
2005年11月29日に沖ノ烏島西調査地点で新型稚魚ネッ
トにより採集された。(体長ZLlmm,屈曲後仔魚)
1M;i洲揃『…W』…
図4ハゴロモトビウオEXocoeノWS〃7ol7oc/〃〃"82005年4
月13日に沖ノ鳥島南調査地点(日中)で新型稚魚ネッ
トにより採集された。(体長37.4mm,稚魚期)
図6メバチ71/7""""so6es"s2005年11月25日に土星海
山で新型稚魚ネットにより採集された。(体長55mm,
屈曲前仔魚)
-60-
図8ミズウオ4ノビノ,/sα"'wM?、x2005年4月13日に沖ノ
図7フウライカジキTbか叩""WISα"91M'℃s/ノブ`v2005年11
月28日に天王星海山で新型稚魚ネットにより採集され
た。(体長49mm,屈曲前仔魚)
烏島北調査地点で,改良型NORPACネットにより採集
された。(体長7.6mm,屈lill期仔魚)
ダカ,ウスオニハダカの4種で,他に種まで同定できな
ングネットにより表層でI個体採集された(図6)。採
かった4タイプの仔稚魚が採集された。
集個体は体長5.5mmで屈曲前仔魚であり,発育段階
ユキオニハダカはヤベウキエソに次いで採集個体数
初期の個体であった。ColletteandNauen(1983)によ
が多く,合計58個体が採集されているが,このうち
ればメバチは世界の熱帯から温帯域に広く分布し,北
の45個体は4月13日の沖ノ鳥島北調査地点でリング
緯10.から南緯10゜の問では周年産卵が行われ,北半球
ネット(夜間)l曳網により採集されており,平均的
では4月から9月が産卵盛期であるとされている。ま
には採集されなかった。
た,西川(l988a)によれば,仔魚は夏季に本州中部
ギンハダカ科Phosichthyidae
沖合に出現するとしている。今回の仔魚採集時期より,
種まで同定できたものは,オキウキエソ〃'7CノgZ'e,Wa
沖ノ鳥島周辺海域においては11月にもメバチの産卵
powerjae,ヤベウキエソの2種で,他に種まで同定で
が行われている可能性が示|度された。
きなかったlタイプの仔魚が採集された。ヤベウキエ
マカジキ科Istiophoridae
ゾは今回の調査で,合計65個体と採集個体数が最も
フウライカジキ7と"叩/z"WSα"gzM'、WSがl]月28日
多く,表層から中層まで各種ネットによって採集され
に天王星海山でリングネットによりl個体採集された
ている。ハダカイワシ科同様,広く出現しており,資
(図7)。採集個体は体長49mmで屈曲前仔魚であり発
源量が多いことが示唆された。オキウキエソは]1月
育段階初期の仔魚であった。
26日に土星海山でボンゴネットにより8個体が採集さ
フウライカジキの産卵期は冬季であることが成魚
れている。ギンハダカ科魚類もハダカイワシ科魚類と
の生殖腺などから推測されている(Nakamura」985)。
同様,水産有用種の餌生物になっている。
一方,西川(l988b)によれば,本種は日本周辺では
カタクチイワシ科Engraulididae
夏季に琉球列島沖合域から出現するとされている。今
タイワンアイノコイワシE"c7as/c〃oノノ"αノブuノ"c/(/b八図
回の採集結果から,11月に本海域においてフウライ
5)が11月に表層のリングネット,中層のボンゴネッ
カジキの産卵が行われていることが示唆された。
ト,MTDネットによって合計11個体採集された。本
ミズウオ科Alepisauridae
種はカタクチイワシE,79,αUイノノ1s/叩O"/C"Sによく似るが,
ミズウオA/epMz""s/blDxが4月13日に沖ノ鳥島北
臂鰭より後ろの尾部腹面にある一連の黒色素胞が隙
調査地点で改良型NORPACネットによりl個体採集さ
間無く連続的に見えることから識別することができ
れた(図8)。採集個体は体長76mmの屈曲前仔魚で
る(田北1988)。本種は南日本,西太平洋,インド洋
発育段階初期の仔魚であった。ミズウオの成魚は北海
に分布し,産卵期は春から夏とされている(多紀ら
道以南~南日本,太平洋,インド洋,大西洋に広く分
2005)が,今回の調査では11月に仔魚が採集されて
布しているが(多紀ら2005),沖山(1988)によれば
おり,沖ノ鳥島周辺では本種の産卵期は長期にわたっ
日本近海において仔稚魚の記録はないとしており,本
ていることが示唆された。
個体が本種の仔魚の日本近海における初採集記録であ
サバ科Scombridae
メバチ71/71"7""so6es"sが11月25日に土星海山でリ
る可能性がある。一方Ambrose(]996)は,ミズウオ
の仔稚魚は北緯29゜48'以南,東経179゜04'以西でのみ
-61-
採集される,としており,沖ノ烏島周辺海域もこの海
のうち種まで同定できたものが39種確認された。本調
域内に含まれている。したがって,今後本海域では仔
査では,トビウオ科やマグロ属のメバチ,マカジキ科
稚魚の採集調査を続けていけば,ミズウオの仔稚魚が
のフウライカジキの仔魚が採集され,回遊性の漁獲対
さらに多く採集される可能性も考えられる。
象魚の産卵場として,本海域が利用されていることが
明かになった。また,水産上重要種の餌料生物として
今回の調査では,トビウオ科やマグロ属のメバチ,
マカジキ科のフウライカジキの仔魚が採集され,回遊
重要なハダカイワシ科魚類などの生息も認められた。
性の漁獲対象魚の産卵場として,本海域が利用され
ていることが明かになった。このことは同時に,三谷
キーワード:沖ノ鳥島,稚魚,仔魚,プランクトンネッ
ト調査
(1991)の指摘するように,本海域が日本本土や小笠
原諸島海域において見られる魚種の熱帯域における補
謝辞
給源としての可能性を示唆している。また,今回の調
査で水産上重要種の餌料生物として重要なハダカイワ
採集調査にご尽力をいただいた「みやこ」の黒雲輝
シ科魚類などの生息も認められ,マグロ,カツオ類な
一船長はじめ乗組員の皆様,および,「第七開洋丸」
ど漁獲対象となるような大型回遊'性魚類の餌料となっ
乗組員・調査員の皆様に心よりお礼を申し上げる。
ている可能性が示唆された。
文献
沖/鳥島海域(木星海山~天王星海山)について本
ネット調査の結果と,同時に実施した表中層トロール
Ambrose,,.A、1996.Alepisauridae:LallcetHshes・Moser,H、
の結果(前田ら2006)を比較すると,ネット調査では
G、,edTheearlystagesofflshesintbeCalifbmiaCurrent
18科39種(種まで確認されたもののみ)が採集された
Region、CaliforniaCooperativeOceanicFishcrics
のに対し,トロールでは23科41種が採集され,この
lnvestigations,Atlas(33).NationalMarineFish
内11種が両調査に出現した。ネット調査で採集数が
多かったヤベウキエソ,ユキオニハダカ,ウスオニハ
Service,SouthwestFishSci・Ctr.,LaJolla,pp、379-381.
Collette,B、BandC・ENauen・’983.Scombridsofthe
ダカのうち,ヤベウキエソのみがトロール調査で採集
world,Analmotatedandillustratedcatalogueoftuna,
されたが採集数は13個体と多くはなかった。逆にト
mackerels,bonitos,aIldrelatedspeciesknownto
ロール調査で採集量が多かったタイワンアイノコイワ
date,FAOspeciescatalogue,ZU.N、Developmcnt
シ,ゴコウハダカ,マガリハダカのうちネット調査で
Programme,FA.0.U、N、,Rome、pp88-90・
はタイワンアイノコイワシとマガリハダカが出現した
加藤憲司・小埜田明・前田洋志・川辺勝俊2006沖ノ鳥
が採集数はそれぞれ11個体,]個体と少なく両調査に
島周辺海域で採集されたトビウオ類に関する漁業生
よる採集物の組成には違いがみられた。採集個体の大
物学的知見.東京都水産海洋研究報告,(1):65-7L
きさはトロール調査によるものの方が大きく,手法に
Leis,」.M、andCarson-Ewart,B、M,eds2004.Thelarvac
よる組成の違いは,成長による分布域の違いを示すと
oflndo-Pacihccoastalfishes,Anidentiflcationguidcto
も考えられるが,これまでの採集努力量が少ないこと
marineHshlarvae,Znded・Brill,Leiden,pp9-24
や,調査時期に分布する稚魚の大きさによっても偏り
三谷卓美」991.調査の概要.沖/鳥島周辺海域におけ
が発生することなどから,今の段階では両手法により
る漁業資源調査,沖ノ烏島周辺海域の魚類.西海区
採集された魚種は仔稚魚から成魚まで沖ノ鳥島海域に
水産研究所:6-21.
中坊徹次2000.ミズウオ科.中坊徹次(編)旧本産魚類
分布する可能性が高いと考えられる。
検索,全種の同定,第2版.東海大学出版会,東京,
要約
p32L
日本領土の最南端に位置する沖ノ鳥島周辺海域は亜
Nakamura,L1985.BillHshesoftheworld,Allalmotatedand
熱帯域に属し,回遊性魚類の産卵場として利用されて
illustratedcatalogueofmarlins,sailflshes,spearfishes
いることが予想される。そこで,沖ノ鳥島海域の漁業
andswordHshesknowntodatcFAOspeciescataloguc,
特性調査の一環として2005年4月,5月,]1月に表層
5.UN,DevclopmentProgramlne,F、A、0.U、N、,Rome,
および中層を曳網する各種ネットによる仔稚魚の採集
調査を行った。その結果,各種ネットにより1s目33科
Pp38-40・
西川康夫.l988a・サバ科.沖山宗雄(編).日本産稚魚図
133タイプ,合計1233個体の仔稚魚が採集された。こ
-62-
鑑.東海大学出I仮会,東京,pp609-624
西川康夫1988bマカジキ科.沖山宗雄(編).日本産稚魚
田北徹1988カタクチイワシ,タイワンアイノコイ
図鑑.東海大学出版会,東京.,pp601-605・
ワシ.沖山宗雄(編).日本産稚魚図鑑.東海大学出版
沖山宗雄(編)」988日本産稚魚図鑑.東海大学出版会,
会,東京pp9-lL
東京,1154pP
渡邊良朗.1992表層曳きネットの仕様と採集データ処
小沢貴和.1988ハダカイワシ科.沖山宗雄(編).日本産
稚魚図鑑.東海大学出版会,東京,ppl94-233・
理法.水産業関係試験研究推進会議・調査器具及び
調査方法の標準化作業委員会・浮魚類卵稚仔採集器
多紀保彦・河野博・坂本一男・細谷和海(監)2005.
新訂原色魚類大図鑑,図鑑編.北隆館,東京,
具標準化作業部会.浮魚類卵・稚仔採集調査マニュ
具標準化作業部会.浮魚類卵・稚仔採集
アル.中央水産研究所水産研究官:15-22
971pp
-63-
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