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10分間コミュニケーショントレーニング ~会話力を

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10分間コミュニケーショントレーニング ~会話力を
高等学校
No.3
10分間コミュニケーション
トレーニング
∼会話力を向上させ良い人間
関係をつくる∼
県立有馬高等学校
ど
教諭
1
はじめに
本校の総合学科では,
「産業社会と人間」や
「総合的な学習の時間」を通して,コミュニ
ケーション能力を向上させる取り組みとし
て,スピーチ活動やインタビュー活動に力を
入れてきた。特にインタビュー活動では,毎
年プロのアナウンサーによるインタビュー講
座を実施し,インタビューの考え方やコツを
教わり,職業人へのインタビューを実践して
いる。その結果として,卒業時のアンケート
調査では,8割を超える生徒が「スピーチ力
が身についた」
,
「コミュニケーション能力が
身についた」と答えている。
しかし,このような活動が日常の生活に生
かされているとは言い難い面もある。些細な
行き違いから人間関係に亀裂が生じたり,学
年が上がりクラスが変わると,新しいクラス
に馴染めず孤立したりというようなことはよ
くある。また,友人との連絡の手段として携
帯電話やスマートフォンが主流になったこと
による,メールやLINEでのトラブルも少な
くない。
そこで,日常の会話力を向上させることを
目的とした「コミュニケーショントレーニン
グ」のプログラムを考案し,
「産業社会と人間」
の授業の中で実践した。プログラムの作成に
あたっては,1回のトレーニング内容を10分
間でできるものとした。また,内容について
は,教育総合サポートみらい∞(むげんだい)
代表の富岡澄夫氏の助言を受けた。ここでそ
16
い
土居
きょう こ
恭子
の取り組みと成果を報告する。
▲ 教師を相手にインタビューの練習
2
実践内容
総合学科1年次の必履修科目である「産業
社会と人間」では,自分の将来を考えるため
の上級学校研究や職業研究などと並行して,
ブレーンストーミング,スピーチ,インタ
ビューなどに体系的に取り組んでいる。その
年間計画の中に10分間10回分のプログラムを
組み込んだ。以下に,生徒に説明した授業内
容を記す。
【目標】
①人と話すことに慣れる
「毎日誰かと話しています」と言っても,
家族や特定の友人に限られていないでしょ
うか?普段あまり話したことがない人とト
レーニングに取り組むことで,人と話すこ
とに慣れましょう。
②人と関わる時の自分の癖や思い込みに気づく
知らず知らずに身についた自分の癖や思い
込みが,コミュニケーションを難しくしてい
ることもあります。自分の癖や思い込みを
知り,周りを見る角度を変えてみましょう。
③より良い人間関係を築く
一人一人がコミュニケーション能力を高め
ることで,より良い人間関係を築きましょ
う。まず,クラスから始めます。
【留意点】
①相手の表情や状況などの手がかりに注意す
る。また,手がかりの意味を理解する。
②相手の感情を認知する。
③言葉に関わる特徴に注意する。声の大きさ,
高低,調子,抑揚,流暢さ
④非言語的な特徴に注意する。視線の合わせ
方,姿勢,表情,距離,身振り,手振り
⑤相互作用的な行動に注意する。反応のタイ
ミング
【内容】
1 2人1組で交互に自己紹介を兼ねた1分
間スピーチ
①私の好きな食べもの
2
②日曜日の過ごし方
3 クラス全員でエクササイズ
私の好きなものを紹介する
4 思い込みチェック
チェックシートを利用し,人と関わる
ときの自分の傾向を知る
5 ジェスチャーで言葉を伝える
6 言葉で図形を伝える
注)
7 アサーショントレーニング
8 「私もOK,あなたもOK」な友人関係
9 を考える
10 振り返り
3
アサーショントレーニング
第7∼9回に行ったアサーショントレーニ
ングについて詳しく説明する。
【導入】
友人との間で,
言いたいことが表現できず
「あ
の時,きちんとこう言っておけば」とか,つ
い言い過ぎてしまい「あんな言い方をしなけ
れば」と思い,後悔した…。こんな経験は誰
にでもあるのではないでしょうか。そんな
時,どうすればよかったのかを考えます。
(高校生用教育資料「HUMAN RIGHITS」
平成12年3月)
【指導内容】
アサーショントレーニング1
1.アサーションとは何か,自己表現の3
つのタイプ(攻撃的・非主張的・アサー
ティブ)を説明する。
2.教師2人が3つのタイプの話者を演じる。
3.生徒に感想を聞く。
4.自分ならいつもどう答えているかを考
えさせる。
アサーショントレーニング2
1.アサーション,3つのタイプの自己表
現の復習。
2.3つのタイプのスキットを配布し,2
人1組で読む。
3.役割を変えて読む。
4.シェアリング。生徒,教師の感想。
アサーショントレーニング3
1.アサーション,3つのタイプの自己表
現の復習。
2.場面を提示する。
3.2人で協力して3つのタイプのスキッ
トの台本を作る。
4.2人で読み合わせ。いくつかのペアが,
前で発表。
5.シェアリング。生徒,教師の感想。
この内容を,2月の第15回兵庫県総合学科
高等学校研究発表会で,代表生徒4人が発表
した。その発表内容の一部を記す。これは「ア
▲ 2人1組で言葉を使って図形を伝える
注)自分も相手も大切にした自己表現をするにはどうしたらよいかを考え,身につけていくトレーニング。
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サーショントレーニング3」で自分たちが考
えた台本と振り返りを元にしたものである。
司会:明日から期末考査!というときを想像
してみてください。中間考査はあまり試験
勉強できなくてイマイチだった。でも今回
は一週間前から勉強してきたし,今日も追
い込みをかけて勉強したい。そんな時,い
つも一緒に帰っているA君がこの一言。
「今日CD買いについてきて!」あなたな
らどう答えますか?
−−−−−−−−−−−−−−−−−−
A君:今日CD買いについてきて!
らんぼうさん:何言っとん?明日テストや
で!そんなん行くわけないやん。1人で
行ってきたら?
A君:そんなひどい言い方せんでえーやん。
何なんその言い方。
司会:さぁ,この後2人の関係はどうなって
しまうのでしょう。自分のことは大切だ
が,相手は大切にしない。自己中心的で,
相手を傷つけてしまうこともある。会話を
していても,コミュニケーションがうまく
取れているとは言い難いですね。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−
A君:今日CD買いについてきて!
もじもじさん:明日,テストやねんけど…
A君:え?なんて?
もじもじさん:ううん,何でもないよ。行こ
か…。
司会:断りたいと思っているのに,断れず,
相手に流されてしまったようです。相手が
大切。自分はひかえめ。ストレスがたまり
ますね。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−
A君:今日CD買いについてきて!
さわやかさん:誘ってくれてありがとう。でも
明日からテストやし,今日は勉強したいねん。
A君:あっ,そうなん?
さわやかさん:よかったら,一緒に勉強して,
テスト最終日に行こうよ。
司会:ちゃんと思っていることも言えたし,
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相手もわかってくれたみたい。もっと仲良
くなれる気がしますね。お互いに歩み寄っ
て解決していこうとする「アサーティブな
関係」
。いいと思いませんか?
▲ 発表会の様子
発表会後,参観者から「私はコミュニケー
ションが苦手なので『コミトレ』をやってみ
たいと思いました」
(中学2年生)
「コミュニ
ケーショントレーニング,現代だからこそ大
切ですね」
(中学2年生保護者)のような感想
があり,大変好評であった。
4
生徒アンケートより
10回のトレーニング実施後,1年生236名
を対象に行ったアンケートの結果を記す。
【生徒の感想】
このコミトレをして,中学時代よりも,人と
話すことが上手くいったり,楽しかったりす
る気がします。中学のときは,人のことを考
えず,ただただ話していただけだけれど,今
となっては,相手の気持ちを考えて話すよう
になりました。1回,たった10分でこんなに
も話せるようになるのはびっくりしました。
これからもしっかりとコミュニケーションを
大切にしていきたいです。
コミトレの授業で一番印象に残ったのはア
サーションです。今までは,何か相手に頼ま
れたとき,自分は嫌だと思っていても良い断
り方が分からず引き受けていました。だから,
相手を傷つけず自分も傷つかないアサーティ
ブな話し方を学べたことは本当に良かったで
す。また,友達と一緒にセリフを考えたり,ク
ラスの皆の実演を見たりしてすごく楽しかっ
たです。少しずつですが,自分の思いを伝え
られるようになったのはコミトレのお蔭です。
私は人見知りが激しかったので,今まで自分
からしゃべろうという気持ちは一切ありませ
んでした。だけど,一年間「産業社会と人間」
をやってきて,講義棟でまったく知らない隣
の席の人とコミュニケーションをとったり,
クラスのみんなの前で夢を語ったりして,人
とたくさん関わるような授業ができて,緊張
したけれど,とても楽しかったです。自分の
考えを相手に伝える良さを学ぶことができま
した。
5
おわりに
生徒たちが生き生きと活動している毎回の
授業の様子やアンケート結果を見て,誰もが
気持ちのよいコミュニケーションをし,より
よい人間関係を持ちたいと望んでいるのだと
実感した。コミュニケーション能力が向上し
たと回答した生徒が74%,良い人間関係を築
くことができたと回答した生徒が91%であ
り,コミトレをやってよかったという感想も
多数得られた。一つ一つの内容は,目新しい
ものではないが,活動の目的を明確にし,一
年間少しずつ継続したのが良かったと思う。
コミュニケーションとは,情報と共に感情
をやりとりする行為である。その基本となる
のが,日常の何気ない会話である。会話の中
に,どのような情報と感情を込めるかで,人
間関係が築かれる。今回の取り組みによっ
て,生徒たちがそのことに気付き,人間関係
を広げるきっかけにすることができたのな
ら,大変うれしいことである。また,社会に
出る一歩手前の高校生にとって,このような
気付きの機会を持つというのは,大切なこと
だと改めて考えさせられた。
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