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●フォーラム・リポート フォーラム・リポート 公益財団法人 8020 推進財団学術集会 第12 回フォーラム 8020 会誌「8020」編集委員 羽根司人 平成 26 年 11 月 29 日(土)午後 1 時より、 歯科医師会館 1 階大会議室において、公益財 団法人 8020 推進財団の学術集会「第 12 回 フォーラム 8020」が開催されました。 残念ながら急きょ行われた衆議院解散のため 大久保 8020 推進財団理事長が全国の歯科に 関わりの深い立候補予定者のもとを駆け巡って おり欠席されましたが、山科透副理事長により、 基調講演を行う武見敬三参議院議員が日本特集 号国内実行委員長を務めた世界的医学雑誌「ラ ンセット」の日本特集号「国民皆保険達成から 50 年」の記事に感銘したことなどが紹介され、 挨拶としました。 C 今回のフォーラムのプログラム概要は以下の構成となっています 8020推進財団研究調査報告 <基調講演> 13:15 ~ 14:00 健康長寿に向けた医療政策 ~健康長寿社会に向けた歯科医療提供体制への期待と課題~ 参議院議員 武見敬三 <講演①> 14:00 ~ 14:15 診療室での“歯の喪失防止効果” 東京都開業 宮地建夫 <講演②> 14:20 ~ 14:50 患者の声<ナラティブ>とエビデンス:期待される口腔保健情報 京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻 健康情報学分野 教授 中山健夫 <講演③> 14:50 ~ 15:10 地域保健と歯科医療をどうつなげるか 公益社団法人日本歯科医師会 常務理事 佐藤 徹 <講演④> 15:10 ~ 15:40 データの蓄積をどう図るか 公益財団法人 8020 推進財団 専務理事 深井穫博 <シンポジウム> 15:50 ~ 17:00 保健と医療のベストミックス ~ 8020 運動における歯科医療の役割~ <座長> 公益財団法人 8020 推進財団 専務理事 深井穫博 <シンポジスト> 宮地建夫/中山健夫/佐藤 徹/山科 透(8020 推進財団副理事長) 102 8020 No.14 2015-1 フォーラム・リポート● ●基調講演 健康長寿に向けた医療政策 ~健康長寿社会に向けた歯科医療提供体制への期待と課題~ プロフィール(たけみ・けいぞう) 1974 年慶應義塾大学法学部卒業。1976 年同大学法学 研究科修士課程修了。1980 年東海大学政治経済学部助手、 1987 年助教授、平和戦略国際研究所次長を経て 1995 年教授に就任。その間、テレビ朝日「CNN デイ・ウオッチ」 のアンカーマンやテレビ朝日「モーニングショー」メイン キャスター等を務める。1995 年、参議院議員に初当選、 外務政務次官、厚生労働副大臣等を歴任。現在 4 期目(自 民党・東京都選挙区)。自民党総務会副会長、国際保健医 療戦略特命委員会委員長。日本国際交流センター シニア・ フェロー。東海大学教授。長崎大学客員教授。福島県立医 科大学客員教授。2012 年、8020 推進財団「歯科口腔 保健法に基づく優先順位の高い施策研究班」班長を務める。 ●講演① 診療室での“歯の喪失防止効果” 宮地先生は、まず冒頭に 8020 運動のはじまりのこ ろに、臨床医として関わられていたものが、現在の 8020 運動が臨床家の手を離れ、保健事業や保健行政 主体になりすぎていないか?という問題を提起され ました。 診療室での“歯の喪失防止効果”という視点で初 診から 30 年以上経過し、80 歳を超えた患者さんを ピックアップしてみると該当者は 56 人となりまし た。その 56 人の初診時での平均保有歯数が 23 本、80 歳での保有する歯は 18 歯程度でした。全体では 30 年 で平均 5.4 本なくなったこととなり、通常のメイン テナンスを行う患者で 10 年で 1.8 本喪失しています。 しかし 56 人中 14 人が 10 年で 3.6 本、つまり倍のペー スで歯を失うグループがありました。このグループ をどうするかが、一つのポイントになります。 リスクの高いパターンは、上顎臼歯が喪失し続い 東京都開業 宮地建夫 氏 プロフィール(みやち・たてお) 1967 年東京歯科大学卒業。1971 年東京歯科大学大学 院修了 ( 解剖学専攻 )。1972 年東京都千代田区にて開業。 1975 年岩手医科大学歯学部非常勤講師。2009 年東京 歯科大学臨床教授。2012 年大阪大学歯学部非常勤講師。 現在、東京都新宿区歯科診療室新宿 NS 顧問。 て上顎前歯そして下顎を喪失していくパターンだと わかりました。この「上減歯列」は男性7:女性3 の割合で上顎の歯をまもることが重要となります。 ブリッジによる 1 次固定がなじみやすいが、義歯を 用いる二次固定の予後が良いケースが多いとのこと でした。歯の喪失を防ぐ1次予防が最も重要だが、 歯を失ってから治療することによる2次予防3次予 防も重要であり、咬合支持など欠損パターンへの臨 床対応など両者のバランス、臨床家の役割の重要性 がよくわかる講演でした。 8020 No.14 2015-1 103 8020推進財団研究調査報告 ベルの高い中産階級の増大につながりました。皆保 険制度は実は所得の分配機能も持ち所得格差の 7 割 は医療保険制度が分配し社会の公平性を確保できた とのことです。国民皆保険制度によるアクセスと給 付の平等が初期診断初期治療に結びつき平均寿命の 延伸につながったが、男性 9.13 年、女性 12.68 年の 平均寿命と健康寿命の差を縮めることが重要な課題 となっています。 21 世紀の日本における経済的に活力ある健康長寿 社会の確立が世界の趨勢であり、歯科が大きな役割を 担っているとして講演を終わりました。武見敬三議員 も他の候補者の応援などもありシンポジウムは欠席さ れましたが、当日早朝までテレビの生放送に出演され ていたとはとても思えない迫力ある講演でした。 C 武見敬三議員は、口腔の健康が全身の健康に及ぼ す影響の 8020 推進財団の研究班の班長を務めたこと など、過去の財団との関わりを紹介し、自身の専門 が政治学がベースであり医療経済などのマクロ分析 について話を進めました。 2025 年には 5 人に一人が高齢者となり、人口減少 社会、生産人口減少、後期高齢者が増え、社会のダ イナミズムが下がることになり、ここをいかに支え るかが重要な問題となります。更に 2030 年には世界 的に高齢化が進みアジアでは特に日本以上のスピー ドで進行することになります。また疾病構造の変化 ももたらし、感染症と非感染症二重負担が課題とな り、現に動物由来の感染症など、たとえばエボラ出 血熱の問題なども出てきており、地域医療、グローバ ルヘルス(国際保健)が確立していることが重要です。 ユニバーサルヘルスカバレッジ(UHC)「すべて の人が適切な予防、治療、リハビリなどの保健医療 サービスを、必要な時に支払い可能な費用で受けら れる状態」 (WHO による定義)を実現することが重 要で、このことは世界銀行も着目、UHC に関する日 本・世銀共同研究プログラムが 2012 年 1 月より開始 されており、自身も深く関わっています。 1961 年最後の村で国民健康保険制度ができ上がり 国民皆保険制度が確立し、そのことが健康で教育レ 参議院議員 武見敬三 氏 ●フォーラム・リポート ●講演② 患者の声<ナラティブ>とエビデンス: 期待される口腔保健情報 京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻 健康情報学分野 教授 中山健夫 氏 中山先生は内科医としての経歴を積まれた後、健 康情報学というどちらかというと耳慣れない学問の 分野に進まれました。健康情報学とは「生・老・病・ 死」に向き合う時、人間を支え力づけるコミュニケー ション、情報を伝えるものだそうです。 1991 年に EBM(evidence-based medicine)根拠に 基づく医療が発表されたとき臨床家は今までの自分 の経験に基づく医療との違いに戸惑いを感じたが、 エビデンスや診療ガイドラインだけで、すべてを決 定するものではないと述べています。 本来 EBM は臨床研究によるエビデンス、医療者 の専門性・経験・熟練、患者の希望・価値観、患者 の臨床的状況と環境の要素を統合し、よりよい医療 に向けた意思決定を行うものだとしています。一方 エビデンスや診療ガイドラインが重視される中で 1999 年 NBM(narrative-based medicine) が 提 案 さ れました。 「専門家」としての「患者」の<語り> に基づく医療です。患者の求めている情報は客観的 な情報、日常生活に何を注意したらよいか、他の患 者はどうしているのか、などだそうです。 プロフィール(なかやま・たけお) 1987 年東京医科歯科大学医学部卒業。内科研修後、東 京医科歯科大学難治疾患研究所疫学部門助手、米国 UCLA フェロー、国立がんセンター研究所がん情報研究部室長 を経て京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻助 教授。2006 年より同教授(健康情報学) 。2010 年よ り同副専攻長。日本医学会総会 2015 関西プログラム委 員、日本歯科医学会ガイドラインライブラリー収載委員会 座長、日本神経学会・消化器病学会・日本緩和医療学会等 の診療ガイドライン作成委員・統括委員、日本疫学会理事、 公益財団法人日本医療機能評価機構 Minds 委員、NPO 法 人健康と病いの語り・ディペックスジャパン副理事長、他 2007 年には 任意団体「健康と病いの語りディ ペックス・ジャパン」として発足、2009 年から NPO 法人として現在乳がん・前立腺がん・認知症の患者 インタビューを動画で提供しています。これは英国 で作られている「DIPEx」をモデルにデータベース を構築し、社会資源として活用していくことを目的 としています。「ナラティブの隣にエビデンスを・エ ビデンスの隣にナラティブを・葛藤をこえ協働によ る共有価値の創設」を訴えて講演を終わりました。 C ●講演③ 8020推進財団研究調査報告 地域保健と歯科医療をどうつなげるか 日本歯科医師会 常務理事 佐藤 徹 氏 佐 藤 先 生 は「New Public Health」 と は 衛 生、 環 境、健康増進、個人またはコミュニティに対する予 防サービスに基づき、臨床医療、リハビリテーショ ンや介護などの幅広いサービスと結びついて、個人 や社会の健康水準を維持・改善するための包括的ア プローチであり、多職種がシステマティックに連携 することが必要。個人の健康を守る医療と集団の健 康を守る公衆衛生つまり「保健と医療のベストミッ クス」が新しい規範となると説明しました。 また地域包括ケアシステムの構築や医療・介護提 供体制の見直しの今後のスケジュールなどにふれ、 これまでに日本歯科医師会が取り組んできた代表的 な 2 つの事業「生活歯援プログラム」と「全国がん 診療医科歯科連携推進事業」について報告しました。 まとめとして、 ○歯科口腔保健法基本的事項目標値の達成 ○歯の喪失予防のため、定期歯科受診 機能回復 治療 管理 ○かかりつけ歯科医機能の明示 104 8020 No.14 2015-1 プロフィール(さとう・とおる) 1983 年 松 本 歯 科 大 学 卒 業。1987 年 東 京 歯 科 大 学 大 学院修了(歯学博士)。1989 年フェイス歯科医院開設。 2003 年新潟県歯科医師会理事、2009 年~ 2013 年 新潟県歯科医師会常務理事。2009 年新潟県歯科保健協 会専務理事(現職)。2006 年日本歯科医師会地域保健委 員会委員、2009 年日本歯科医師会地域保健委員会幹事、 2011 年日本歯科医師会地域保健委員会副委員長。2013 年日本歯科医師会常務理事(現職) 。 ○郡市区歯科医師会の組織力強化(地域医療・介 護総合確保基金) をあげました。またある雑誌のアンケートでシニア 1,000 人にリタイア前にやるべきことだった後悔の一 番にあがったのが「歯の定期検診を受けていればよ かった」ということも紹介し、深く印象に残りました。 フォーラム・リポート● ●講演④ データの蓄積をどう図るか 深井先生は、健康政策の決定には,エビデンス、 国民・関係者の理解と共感が必要であるが、歯科医 療の健康増進効果の検証、地域口腔保健事業の成果 の蓄積、歯科疾患、口腔保健、歯科医療に関する国 民の声の蓄積、エビデンスに基づく口腔保健情報の 提供が欠かせないと述べました。 8020 推進財団では全国の歯科医療機関に 10 月 27 日から 11 月 1 日の 1 週間に受診した初診・再初診の 患者さんに協力を依頼し、調査を行い、合わせて約 3万人の 20 歳以上の成人を対象に、今後5年以上に わたり追跡調査を行う予定です。これをもとに患者 の社会経済状況、歯科受診行動・口腔保健行動、全 身の健康状態(身体状態、既往歴・現病歴、要介護 状態等)などの項目から歯科医療の全身への健康増 8020 推進財団 専務理事 深井穫博 プロフィール(ふかい・かくひろ) 1983 年福岡県立九州歯科大学卒業。1985 年深井歯科 医院(埼玉県三郷市)開業。1997 年博士(歯学)学位 受領(東京歯科大学) 。2001 年深井保健科学研究所所長、 ヘルスサイエンス・ヘルスケア編集長。2006 年日本歯科 医師会 地域保健委員会委員長、8020 推進財団地域保健 活動推進委員会委員長。2010 年埼玉県歯科医師会理事(地 域保健部長) (2013 年より常務理事) 。2013 年公益社 団法人日本歯科医師会理事、公益財団法人 8020 推進財 団専務理事。日本口腔衛生学会理事、日本国際保健医療学 会理事、日本健康教育学会理事、IADR 他 進効果を検証していくことになります。また 8020 推 進財団では財団の指定応募研究のデータベース化や 都道府県調査項目の集積も今後の課題としていきた いとのことです。 ◆ シンポジウム ◆ 保健と医療のベストミックス C ~ 8020 運動における歯科医療の役割~ 8020推進財団研究調査報告 前述したように残念ながら武見議員はシンポジウ ムへの参加はかないませんでしたが、演者一同に 山科 8020 推進財団副理事長が加わり、深井先生が座 長を務め、シンポジウムが始まりました。 各講演の補足や解説のなかで、佐藤先生より平成 26 年度厚生労働省において各種研究事業等、歯科保 健サービスの効果実証事業、レセプト・健康情報等 を活用したデータヘルスの推進、歯科口腔保健と作 業関連に関する実証研究等が進んでいることが追加 で報告されました。 宮地先生からはやはり臨床家がもっと参加すべき という意見、中山先生より、ディペックス「DIPEx」 は政策への連携がまだ少なく歯科も含め、教育も 10 大学くらいでとりあげているに過ぎないとのことで した。佐藤先生より医科歯科連携はいろいろ困難な ことも多いが、がん患者の口腔の問題がクローズ アップされ、国、日本歯科医師会が関わり有意義な 事業となり、今後も継続することによりいろいろな 連携が注目されるだろうと話しました。また山科先 生から EBM をしっかり構築することが財団の責務 であり国民に伝え施策に生かす、またナラティブに も取り組むと語りました。 参加者からも質問・意見が出て、医科などと連携 の問題などもあり歯科医師も変わらなくてはならな いなど活発な討議がなされ、最後に財団の高橋秀直 常務理事が財団のできることはなんでもやると言葉 を述べ、閉会となりました。 8020 No.14 2015-1 105 ■8020推進財団 指定研究事業報告 8020 推進財団 指定研究事業報告 1 歯科医師を対象とした歯と全身の健康、 栄養との関連に関する研究 ∼歯磨き回数と狭心症・心筋梗塞、脳卒中のリスクとの関連∼ 名古屋大学大学院医学系研究科 予防医学 若井 建志 * (執筆代表者) 内藤真理子 京都大学環境安全保健機構 健康科学センター 川村 孝 福岡歯科大学 高齢者歯科 内藤 徹 愛知県歯科医師会 小島 正彰 愛知学院大学歯学部 口腔衛生学 中垣 晴男 社会保険診療報酬支払基金愛知支部 医療顧問 梅村 長生 福和会横田塾 横田 誠 鶴見大学歯学部 探索歯学 花田 信弘 歯と全身の健康の関連を検討するため、都道府県歯科医師会員自らが参加する追跡調査を実施して います。今回は歯磨き回数と、動脈硬化を基礎とする狭心症・心筋梗塞、脳卒中との関係を検討しま した。歯磨き回数が多いほど、これら疾患とくに脳卒中のリスクは低く、歯磨きという基本的な口腔 C のセルフケアによって、動脈硬化による疾患が予防できる可能性が考えられました。 8020推進財団研究調査報告 数年から十数年の長期にわたって追跡することが必 1. 歯の健康と全身の健康 -歯科医師コホート研究- 要です。 しかし地域住民を対象とした場合、大規模なコ ホート研究には、歯科検診や追跡調査に膨大な費用 歯の健康が全身の健康につながるとする「8020 と労力が必要になります。そこで私たちは、調査 運動」のテーゼを証明するためには、口腔状態が良 票(アンケート)によってもかなり正確な口腔状態 い者では、実際に寿命が長く、重大疾病への罹患が のデータが得られ、かつ歯科医師会を通じた追跡調 少ないかどうかを追跡調査(コホート研究)により 査が可能な歯科医師を対象に追跡調査を実施して 検討することが望まれます。しかも死亡や全身疾患 きました 1 ~ 3)。この研究は、口腔保健の重要性につ の発生などは多くはないため、1 万人単位の集団を いての情報を歯科医師自らが発信する機会になり、 「8020運動」の推進にも有用と考えています 4)。 PROFILE *わかい・けんじ 名古屋大学大学院医学系研究科 予防医学教授、医師、博 士(医学)。1990 年名古屋大学医学部卒業、94 年名古 屋大学大学院医学研究科修了、同助手。03 年愛知県がん センター研究所主任研究員、06 年名古屋大学大学院医学 系研究科准教授、14 年 1 月より現職。1965 年 11 月 生まれ、岐阜県岐阜市出身。主研究テーマ:歯と全身の健 康との関連、栄養疫学、がんの疫学、分子疫学 本研究は都道府県歯科医師会のご協力の下、歯科 医師会員を対象に実施しております。調査開始時点 の基礎情報の収集は「歯科医師健康白書」調査 5) と して、アンケートにより行いました。収集した情報は、 年齢、既往歴、家族歴、口腔状態、生活習慣、心理 要因などで、2001 年 2 月から 2006 年 7 月までに、 106 8020 No.14 2015-1 8020推進財団 指定研究事業報告■ 表1 歯磨き回数グループ別の研究参加時特性 1 日の歯磨き回数 1 回以下 2回 3回 4 回以上 2,674 5,902 8,327 2,789 4.2 5.9 10.1 11.2 55.0 ± 13.7 50.9 ± 11.4 50.0 ± 11.0 52.7 ± 11.0 5.4 ± 9.0 2.7 ± 5.0 2.5 ± 4.8 2.9 ± 5.0 現在喫煙者(%) 35.2 34.5 24.3 26.5 現在飲酒者(%) 68.9 72.8 73.2 71.0 23.8 ± 3.3 23.9 ± 3.1 23.5 ± 2.9 23.5 ± 2.9 低精神的健康度(%) 24.8 24.8 24.3 22.9 激しい運動あり(%) 17.5 22.1 25.6 25.8 1 日睡眠時間 7 時間台(%) 39.9 42.4 43.7 40.7 糖尿病(%) 9.4 6.8 5.6 7.0 高脂血症(%) 16.5 16.3 15.1 14.5 高血圧症(%) 40.7 34.4 30.5 31.8 人数 女性(%) 年齢(平均±標準偏差) 喪失歯数(平均±標準偏差) BMI(平均±標準偏差) 卒中との関連を歯科医師コホート研究の中で検討し 研究参加者の追跡調査には、書面による同意を得 ました。分析対象者は最初のアンケート実施時点で た上で、歯科医師共済制度などの関係で都道府県歯 これらの疾患がなく、歯磨き回数など必要な情報が 科医師会に提出される死亡診断書の写し、および診 得られた研究参加者 19,692 名です(平均年齢±標 断書などを利用しました。個人情報保護のため、 「歯 準偏差は 51.4 ± 11.6 歳、女性 1,608 名[8.2%])。 科医師健康白書」調査では、署名のある調査同意書 2014 年 6 月までの平均 9.4 年間の追跡期間中に、 虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞など)212 例、脳 局でそれぞれ厳重に保管し、追跡調査には両者に共 卒中 310 例の死亡・発症が確認されました。データ 通の整理番号を用いています。 分析では、調査参加者を歯磨き回数(アンケートへ の回答による)により、1 日 1 回以下、2 回、3 回、 2.歯磨き回数と脳卒中、狭心症・ 心筋梗塞のリスクとの関係 4 回以上の4つのグループに分け、歯磨き回数が 1 日 2 回と回答したグループを 1(基準)とした、他 の各グループの虚血性心疾患または脳卒中の死亡・ 過去 20 年以上にわたり、歯周病と動脈硬化を基 発症危険度(ハザード比)を求めました。危険度の 礎とする狭心症・心筋梗塞、脳卒中との関係が議論 計算では、これら疾患のリスクに影響する可能性の されてきましたが、研究の多くでは歯科検診によっ ある要因(性別、年齢、喪失歯数[智歯除く]、喫煙、 て歯周病を調べていました。ところが最近、歯磨き 飲酒、BMI、精神的健康度、激しい運動の有無、睡 回数が 1 日 1 回未満の者では 1 日 2 回の者と比較し 眠時間、糖尿病、高脂血症、高血圧)を考慮しました。 て、これらの病気(循環器疾患)の危険度が 1.7 倍 分析結果ですが、表1に歯磨き回数グループ別の になるとの研究結果が報告されました 6)。この関係 研究参加時特性を示します。1 日の歯磨き回数が多 が他でも確認されれば、十分な歯磨きによって、循 いほど,女性、激しい運動ありの割合が高く、逆 環器疾患が予防できる可能性があると考えられま に現在喫煙者や低精神的健康度(General Health す。 Questionnaire のスコア 3 以上)、高脂血症の割合 そこで今回、歯磨き回数と狭心症・心筋梗塞、脳 は低い傾向がみられました。 8020 No.14 2015-1 107 8020推進財団研究調査報告 は各都道府県歯科医師会、匿名の調査票は調査事務 C 全国で 21,272 名の先生にご回答いただきました。 ■8020推進財団 指定研究事業報告 1.5 全体 (trend P=0.025) 狭心症・心筋梗塞など (trend P=0.36) 脳卒中 (trend P=0.042) 1.14 死亡・発症危険度 1.0 1.00 0.90 1.02 1.00 1.00 1.00 0.88 0.86 0.77# 0.73* 0.65* 0.5 0.0 1回以下 2回 3回 1日の歯磨き回数 4回以上 (# P < 0.10、 * P < 0.05) 図1 歯磨き回数と循環器疾患(狭心症・心筋梗塞など、脳卒中)の死亡・発症危険度(ハザード比)との関係 (#P<0.10、*P<0.05) 歯磨き回数が 1 日 2 回のグループを 1 とした、1 日 1 回以下、3 回、4 回以上のグループの狭心症・ 心筋梗塞、脳卒中の危険度は、それぞれ 1.00、0.86、 文献 1)Wakai, K., Naito, M., Naito, T., Nakagaki, H., Umemura, O., Yokota, M., Hanada, N., Kawamura, T.: Longitudinal Evaluation of Multi-phasic, Odontological and 0.73 となり、歯磨き回数 1 日 2 回以上では、回数増 Nutritional Associations in Dentists (LEMONADE 加とともにリスクが低下していました(図1) 。病気 Study): study design and profiles of nationwide cohort C (疾患)の内訳別では、とくに脳卒中について、歯磨 き回数 1 日 2 回以上でのリスク低下が認められまし participants at baseline. J. Epidemiol., 19 : 72-80, 2009. 2)Wakai, K., Naito, M., Naito, T., Kojima, M., Nakagaki, 8020推進財団研究調査報告 H., Umemura, O., Yokota, M., Hanada, N., Kawamura, た。 以上の結果から、さらに詳細な検討が必要ではあ るものの、歯磨きという最も基本的な口腔のセルフ T.: Tooth loss and intakes of nutrients and foods : a nationwide survey of Japanese dentists. Community Dent. Oral Epidemiol., 38 : 43-49, 2010. ケアによって、循環器疾患、とくに脳卒中を予防で 3)Wakai, K., Naito, M., Naito, T., Kojima, M., Nakagaki, きる可能性が示唆されました。今回、歯磨き回数に H., Umemura, O., Yokota, M., Hanada, N., Kawamura, よる循環器疾患のリスク(1 日 2 回と 4 回以上の比、 約 1.4)は、生活習慣としては、同疾患の危険性を 高めることが確立している喫煙習慣のリスク(非喫 煙者と現在喫煙者の比、約 1.7)に次ぐもので、口 腔ケアの重要性を提起する所見と思われました。今 後は歯磨き回数と死亡リスク、がんなど他の疾患の リスクとの関連についても検討する予定です。 < 謝辞 > 最後になりましたが、多大なご協力を賜っております都道 府県歯科医師会、8020推進財団の関係者、ならびに調査 にご参加いただいております歯科医師会会員の先生に深謝申 し上げます。 108 8020 No.14 2015-1 T.: Tooth loss and risk of hip fracture : a prospective study of male Japanese dentists. Community Dent. Oral Epidemiol., 41 : 48-54, 2013. 4)若井建志,川村 孝,内藤真理子,内藤 徹,小島正彰,中垣 晴男,梅村長生,横田 誠,花田信弘:歯科医師を対象とした 歯と全身の健康、栄養との関連に関するコホート研究-歯科医 師自身からのエビデンス発信をめざして-.日本歯科医師会雑 誌,58:865-873,2005. 5)歯科医師を対象とした歯と全身の健康,栄養との関連に関する 研究-これまでの研究成果と「歯科医師健康白書」調査集計結 果-.名古屋大学大学院医学系研究科 予防医学/医学推計・ 判断学,名古屋,2008. 6)de Oliveira, C., Watt, R., Hamer, M.: Toothbrushing, inflammation, and risk of cardiovascular disease: results from Scottish Health Survey. BMJ, 340: c2451, 2010. 8020推進財団 指定研究事業報告■ 2 8020 推進財団 指定研究事業報告 多目的コホート研究(JPHC study) における口腔と全身の健康に関する研究 ∼出産回数と歯の状況との関連∼ 東京医科歯科大学大学院 健康推進歯学分野 植野 正之 * 東京医科歯科大学大学院 健康推進歯学分野 川口 陽子 ** 多目的コホート研究の疫学データを用いて分析したところ、男性では子どもの数と歯の状況 との間に関連はみられませんでしたが、女性では出産回数が多くなるにしたがい、現在歯数お よび臼歯の咬合状態を示す n - F T U が減少していました。したがって、女性は出産により歯の 喪失リスクが高まることが明らかになりました。 産回数との関連を調査することは今後一層困難にな 1.はじめに ると予測されます。 本研究では出産回数が歯の状況と関連しているか、 妊娠や出産は母体に大きな影響を与えます。妊娠 日本の疫学データをもとに検討を行いました 4)。 時の合併症として出血、早期破水、産褥子宮内膜炎 などが挙げられますが、最悪の場合、母体は重篤な 2.方 法 状態となり、死に至ることもあります。妊娠は口腔 の健康状態とも関連しています。 本研究は、多目的コホート調査のベースライン調 保健状況と関連がある」という報告が海外では行わ 加した 1,211 名(男性 562 名、女性 649 名、55 れています 1 ~ 3)が、日本では出産回数と口腔保健状 ~ 75 歳:2005 年時点)を分析対象としました。 況との関連を調査した研究はほとんど行われていま ベースライン調査の結果から、女性の場合は出産 せん。わが国の出生率は近年低下しているため、出 回数を、男性の場合は子どもの数をそれぞれ 0 人、 1 人、2 人、3 人、4 人以上の 5 つのカテゴリーに分 類しました。また、学歴も調べました。保健行動は PROFILE *うえの・まさゆき 東京医科歯科大学大学院健康推進歯学分野准教授、歯学 博士、公衆衛生学修士。1986 年鹿児島大学歯学部卒業、 90 年東京医科歯科大学大学院博士課程修了、94 年カ リフォルニア大学バークレー校大学院修士課程修了、96 年カリフォルニア大学サンフランシスコ校レジデント修 了、08 年東京医科歯科大学大学院健康推進歯学分野助教、 10 年より現職。宮崎県出身。研究テーマ:口腔衛生、 疫学、 行動科学、統計学 **かわぐち・ようこ 東京医科歯科大学大学院健康推進歯学分野教授、歯学博 士。1979 年東京医科歯科大学歯学部卒業、79 年同・ 歯学部予防歯科学講座助手、94 年オーストラリアメル ボルン大学歯学部客員研究員、東京医科歯科大学歯学部 国際交流室講師、文部省在外研究員(米国、デンマーク) 等を経て、2000 年より現職。横浜市出身。研究テーマ: 口腔疾患の予防と疫学に関する研究、オーラルヘルスプ ロモーションに関する研究、国際歯科保健に関する研究、 ほか 歯科調査に基づき、甘いお菓子・飲み物の摂取頻度、 かかりつけ歯科医の有無、喫煙状況を調査しました。 歯科健診を行って、現在歯数、未処置歯数、処置 歯数を調べました(第三大臼歯を除く)。また、臼歯 の咬合状態を示す機能歯ユニット n-FTU(天然歯に よる FTU)を算出しました。口腔衛生状態は、すべ ての歯あるいは義歯を診査し、歯垢の付着状態を評 価しました。 出産回数あるいは子どもの数と歯の状況との解析 は年齢、学歴、甘いお菓子・飲み物の摂取頻度、か かりつけ歯科医の有無、喫煙状況、口腔衛生状態な どの交絡因子を調整して行いました。 8020 No.14 2015-1 109 8020推進財団研究調査報告 査(1990 年)と歯科調査(2005 年)の両方に参 C これまで、 「出産回数は歯の喪失やう蝕等の口腔 ■8020推進財団 指定研究事業報告 p for trend=0.046 現在歯数 (本) 19.1 20 18.6 18.3 16.4 15 15.6 15 10 10 5 5 0 0 0 1 2 3 (n=36) (n=68)(n=371)(n=150) 女性:出産回数 p for trend=0.452 現在歯数 (本) 20.3 19.7 19.5 20 18.9 p for trend=0.750 未処置歯数 (本) 20 1.2 0.6 15 10 10 5 5 0 0 図1 出産回数および子どもの数と現在歯数 (交絡因子調整後) 0.8 p for trend=0.306 20 15 0 1 2 3 (n=25) (n=53)(n=336)(n=130)(n=18) 男性:子どもの数 1.1 0 1 2 3 (n=36) (n=68)(n=371)(n=150) 女性:出産回数 未処置歯数 (本) 18.0 1.1 1.6 1.5 1.3 1.3 0.9 0 1 2 3 (n=25) (n=53)(n=336)(n=130)(n=18) 男性:子どもの数 図2 出産回数および子どもの数と未処置歯数 (交絡因子調整済み) と出産回数との間に有意な関連がみられました。出 3.結 果 産回数が増えるにしたがい現在歯数(傾向性p= C 0.046)と n-FTU(傾向性p= 0.026)は有意に 8020推進財団研究調査報告 1)出産回数あるいは子どもの数と年齢・学歴・ 保健行動 女性の出産回数あるいは男性の子どもの数と、平 均年齢、学歴、甘いお菓子あるいは飲み物の摂取頻 少なくなる傾向がみられました。未処置歯数および 処置歯数との間には有意な関連はみられませんでし た。男性では、子どもの数と歯の状況との間に有意 な関連は認められませんでした(図 1 ~図4)。 度、かかりつけ歯科医の有無との間に有意な関連は みられませんでした。女性の喫煙者の割合は出産回 4.考 察 数が多くなるにしたがい有意に低くなりました(傾 向性 p = 0.015)。男性では、喫煙状況と子どもの 数との間に有意な関連はみられませんでした。 本研究により、日本人の女性では、出産回数は歯 の状況と関連していましたが、男性では関連は認め 男性では、子どもの数は口腔衛生状態と有意な関 られませんでした。この結果は、出産回数の多い女 連がみられました。子どもの数が多い者ほど口腔衛 性は出産回数の少ない女性に比べ、歯周病あるいは 生状態が悪い者の割合が有意に多い傾向にありまし う蝕によって歯を喪失するリスクがより高いことを た(傾向性 p = 0.004) 。しかし、女性では出産回 示しています。4 人以上出産した女性では、出産経 数と口腔衛生状態との間に有意な関連はみられませ 験のない女性あるいは1人のみ出産した女性に比べ んでした。 約 3 本歯を多く喪失していました。また、出産回数 の多い女性では n-FTU が少ないことから、歯の喪失 2)出産回数あるいは子どもの数と歯の状況 女性では交絡因子調整後も現在歯数および n-FTU 110 8020 No.14 2015-1 が臼歯部の咬合状態に影響を与えていることが判明 しました。FTU は咀嚼能率と密接に関係しているた 8020推進財団 指定研究事業報告■ n-FTU 6 p for trend=0.962 処置歯数 (本) 20 p for trend=0.026 4.9 5 15 10 9.5 11.9 11.3 10.2 4.5 10.3 3.1 3 2 1 0 0 1 2 3 (n=36) (n=68)(n=371)(n=150) 女性:出産回数 p for trend=0.517 処置歯数 (本) 0 1 2 3 (n=36) (n=68)(n=371)(n=150) 女性:出産回数 n-FTU 6 20 5.8 5.6 p for trend=0.249 5 15 10 10.5 5.3 5.2 4.4 4 8.7 8.7 9.6 3 8.8 2 5 0 3.9 4 5 0 4.9 1 0 0 1 2 3 (n=25) (n=53)(n=336)(n=130)(n=18) 男性:子どもの数 図3 出産回数および子どもの数と処置歯数 (交絡因子調整後) め、出産回数の多い女性では咬合や咀嚼に問題を抱 図4 出産回数および子どもの数と n-FTU (交絡因子調整後) 本研究により、女性は出産により歯の喪失リスク が高まることが明らかになりました。したがって、 歯科の専門家は妊婦に対し、歯科疾患の予防に積極 くつか考えられます。プロゲステロンやエストロゲ 的に取り組む必要があることを情報提供していくこ ンのような妊娠性ホルモンの変動や口腔内細菌叢の とが重要と考えられました。 変化は、妊婦における歯肉炎や歯周炎を増悪させま す。歯周組織の炎症は一時的で出産後に緩和します が、歯周組織の破壊は出産後も持続します。出産回 数が増え、歯周組織の炎症が繰り返し起こることは、 歯周病の病態をさらに悪化させます。進行した歯周 文献 病は最終的には歯の喪失をもたらすことになります。 1)Christensen, K., Gaist, D., Jeune, B., Vaupel, J.W.: A tooth per child? Lancet , 352 : 204, 1998. また、多くの子どもを持つ女性はさまざまな理由 2)Russell, S.L., Ickovics, J.R., Yaffee, R. A.: Exploring により歯科治療を受けない傾向にあることが挙げら potential pathways between parity and tooth loss れます。これまでの研究で、歯科的な問題を抱えて among American women. Am . J. Public Health, 98 : 1263-1270, 2008. いる妊婦の約半数は歯科治療を全く受けないか、あ 3)Russell, S.L., Ickovics, J.R., Yaffee, R.A.: Parity & るいは出産後まで歯科治療を延期することがわかっ untreated dental caries in US women. J. Dent. Res., ています。そのため、歯科疾患へのリスクが高い妊 4)Ueno, M., Ohara, S., Inoue, M., Tsugane, S., Kawaguchi, 婦は、治療から遠ざかる傾向があるのです。一方、 歯科医師側も妊婦の歯科治療を躊躇し、多くの場合 出産後まで治療を延期する傾向にあります。 89 : 1091-1096, 2010. Y.: Association between parity and dentition status among Japanese women : Japan public health centerbased oral health study. BMC Public Health, 13 : 993, 2013. 8020 No.14 2015-1 111 8020推進財団研究調査報告 出産回数が多い者ほど現在歯数が少ない理由はい C えるリスクが高いと考えられました。 0 1 2 3 (n=25) (n=53)(n=336)(n=130)(n=18) 男性:子どもの数 ■8020推進財団 指定研究事業報告 3 8020 推進財団 指定研究事業報告 高齢者における歯・口腔の健康と 全身の健康の関連に関する医療費分析調査 九州歯科大学 地域健康開発歯学分野 岩㟢 正則 * (執筆代表者) 新潟大学大学院医歯学総合研究科 口腔生命福祉学講座 口腔保健学分野 葭原 明弘 新潟大学大学院医歯学総合研究科 口腔健康科学講座 予防歯科学分野 宮㟢 秀夫 我々は 80 歳高齢者を対象に歯の喪失が医療費に与える影響を評価する調査を実施し、歯の 喪失がその後 33 か月間の脳梗塞関連医療費の増加に関連することを明らかにしました。高齢 者において歯・口腔の健康を保持することが全身の健康の保持、さらには医療費の抑制につな がることが示唆され、8020(ハチマルニイマル)達成の重要性が改めて確認されました。 1.地域在住 80 歳高齢者を対象と した医療費分析調査 2008年6月にベースライン歯 科調査を実施 ? 高齢化が急速に進展するなか、国民医療費の伸び 2008年6月時点の残存歯数が その後33か月間の医科医療費 に与える影響を評価 フォローアップ期間中のレ セプト情報を元に,医療費 (円)を国保加入期間(月) で除し,1人あたり1か月間 の医科総医療費および疾 病別医療費を算出 は国民所得の伸びを上回っています。非感染性疾患 に代表される慢性疾患は治療期間が長く、さらに高 C 額な医療技術を要するため、医療費増加の要因と なっています。こうした長期・高額な医療を要する 8020推進財団研究調査報告 必要性は高齢になるほど高くなることから、高齢化 2008年6月 2009年6月 2010年6月 2011年2月 が進む我が国では医療保険制度における課題の一つ 図 1 研究デザイン です。 2012 年度の後期高齢者人口の総人口に占める割 高齢者においては歯の喪失と低栄養・全身疾患の 合は 11.9%であるにもかかわらず、75 歳以上後期 関連が過去の研究から示唆されています 1, 2)。今回、 高齢者医療費は、約 13.7 兆円、国民医療費に占め 我々は「歯の喪失が低栄養あるいは全身疾患の発症・ る割合は 35.7%となっています。国民医療費の多 重症化につながり、結果として高齢者の医療費を増 くを占める後期高齢者医療費の増加につながる因子 加させる」との仮説を設定し、医療費分析調査を実 を特定し、効果的な対策を推進していくことが求め 施しました。 られています。 アップ期間を 2011 年 2 月までの 33 か月間とする PROFILE *いわさき・まさのり 九州歯科大学准教授、博士(歯学) 。2006 年北海道大学 歯学部歯学科卒業、07 年新潟大学医歯学総合病院歯科医 師臨床研修課程修了、08 年アメリカ・ミシガン大学客員 研究員、10 年 3 月新潟大学医歯学総合研究科 ( 口腔生命 科学専攻 ) 博士課程修了、10 年 4 月新潟大学医歯学総合 病院医員、10 年 6 月新潟大学医歯学総合病院助教、14 年 10 月より現職。1981 年 7 月生まれ、新潟県上越市 出身。研究テーマ:歯・口腔の健康と全身の健康、歯・口 腔の健康と栄養 112 本研究はベースラインを 2008 年 6 月、フォロー 8020 No.14 2015-1 前向きコホート研究としてデザインされました(図 1)。調査の趣旨に同意し、2008 年時点の年齢が 80 歳である地方都市在住高齢者 273 名に調査に参 加していただきました。 まず 2008 年 6 月のベースライン調査において対 象者の現在歯数を把握しました。そして 2008 年 6 月から 2011 年 2 月までの 33 か月分のレセプト情 8020推進財団 指定研究事業報告■ 表 1 現在歯数にみた参加者のベースライン時の特徴 全参加者 8020達成 8020非達成 n = 273 n = 104 n = 169 歯・口腔に関する診査項目 16.4±9.5 現在歯数 24.7±3.2 8.3±6.1 年齢,性別,社会経済的状況 80 80 年齢† 性別 男性 女性 低所得 低教育水準 血圧 最高血圧 (mmHg) 最低血圧 (mmHg) BMI (kg/m2 ) 日常生活活動能力 TMIG index ≤11 喫煙状況 まったく吸ったことがない 以前吸っていた & 吸っている 多量飲酒 136 (49.8) 50 (48.1) 137 (50.2) 54 (51.9) 42 (15.4) 11 (10.6) 112 (41.0) 737 (35.6) 健康状態,健康行動 80 86 83 31 75 (50.9) (49.1) (18.3) (44.4) P* <0.001 − 0.652 0.084 0.151 135.1±16.0 69.0±10.4 22.2± 2.9 135.4±15.9 69.4±10.4 21.9± 2.8 134.9±16.0 68.7±10.4 22.4± 2.9 0.799 0.627 0.234 77 (28.2) 24 (23.1) 53 (31.4) 1.140 169 (61.9) 104 (38.1) 34 (12.5) 67 (64.4) 37 (35.6) 9 (8.7) 102 (60.4) 67 (39.6) 25 (14.8) 0.501 0.136 カテゴリー変数は人数(パーセント),連続変数は平均±標準偏差で示す。 太字は統計学的に有意であることを示す(P<0.05)。 低所得=世帯収入が2,000,000円/年以下,低教育水準=就学年数9年以下,多量飲酒=1日飲酒量がエタノール換算で20g/日以上 BMI = body mass index; TMIG index = Tokyo Metropolitan Institute of Gerontology index. 8020達成者/非達成者での比較。 参加者はすべて80歳。 * * 院時食事・生活医療費を除く)の集計を行い、研究 響について考慮し、調整を行っています。8020 達 期間内の医科総医療費および疾病別医療費を算出し 成 / 非達成者の間で医科総医療費に差は認められま ました。レセプト病名から抽出した疾病別医療費は せんでしたが、非達成者は達成者に比べ脳梗塞関連 心血管疾患(心血管疾患のサブグループとして、虚 医療費が高い結果となりました(脳梗塞関連医療費 血性心疾患、脳梗塞) 、糖尿病、肺炎、慢性腎臓病と の最小 2 乗平均値は達成者で 1,589 円、非達成者 しました。これらは過去の研究から口腔の健康と関 で 5,577 円)。また、肺炎関連医療費も高い傾向が 連が示唆されている疾病です 。 認められました(肺炎関連医療費の最小 2 乗平均値 3) これらのデータをもとに、ベースライン時点の残 は達成者で 1,575 円、非達成者で 4,051 円)。 存歯数がその後の医科医療費に与える影響を評価す るための解析を行いました。 3.おわりに 2.ベースライン時の現在歯数と その後の医療費の関連 はその後 33 か月間の脳梗塞関連医療費の増加に関 はじめに対象者をベースライン時の現在歯数に基 口腔の健康を保持することが全身の健康の保持、さ 本研究結果から、80 歳高齢者において歯の喪失 連することが示されました。高齢者において、歯・ づき 8020 達成者、非達成者の 2 グループに分け らには医療費の抑制に繋がる可能性が考えられます。 ました。表 1 に研究対象者の特徴を示します。本研 8020(ハチマルニイマル)達成の重要性が改めて 究参加者で 8020 達成者は 104 名(38.1%)、非 確認されました。 達 成 者 は 169 名(61.9%) で し た。8020 達 成 歯の喪失は咀嚼能力の低下に繋がり、個人の食品 / 非達成者の間ではベースライン時の現在歯数以外、 選択、食品摂取に影響を与え、結果として栄養摂取 差は認められませんでした。 に影響を及ぼします。こうした関連について、我々は、 次にベースライン時の現在歯数と医療費の関連を 残存歯数が 19 本以下の群は 20 本以上の群と比較 示します(表 2、図 2)。両者の関連を見る上で性別、 して野菜・魚の摂取量が少ないことを報告していま 収入、教育水準、日常生活活動能力、飲酒状況、喫 す 4)。野菜に多く含まれるビタミン類、また魚に多 8020 No.14 2015-1 113 8020推進財団研究調査報告 煙状況、Body mass index および血圧が与える影 C 報をもとに、医科診療医療費(薬局調剤医療費、入 ■8020推進財団 指定研究事業報告 表 2 ベースライン時の現在歯数とその後医療費の関連 † 目的変数 = 1人あたり1か月間の医療費(円) 説明変数 最小二乗平均値 標準誤差 P‡ 最小二乗平均値 標準誤差 P‡ 医科総医療費 現在歯数 8020非達成 36,358 4,736 8020達成 28,795 5,825 0.126 疾病別医療費 糖尿 病 脳梗塞 現在歯数 8020非達成 9,042 3,065 8020達成 6, 206 3, 770 0.375 5,577 1,860 1, 589 2, 288 心血管疾患 0.040 慢性腎臓病 現在歯数 8020非達成 20,843 4,296 8020達成 14, 447 5, 284 0.154 4,862 3,071 3, 931 3, 777 虚血性心疾患 0.771 肺炎 現在歯数 8020非達成 8,152 3,007 8020達成 6, 237 3, 699 0.541 4,051 1,238 1, 575 1, 523 0.056 性別,収入,教育水準,日常生活活動能力,飲酒状況,喫煙状況,Body mass indexおよび血圧にて調整。 ‡ 8020達成者/非達成者での比較。 † 国の医療費適正化のための方策を歯科保健の視点から 構築することの一助になると確信しています。 = 0.040 = 0.056 C 8020推進財団研究調査報告 ¥5,577 ¥1,589 ¥4,051 ¥1,575 8020非達成 8020達成 8020非達成 8020達成 図 2 ベースライン時の現在歯数と脳梗塞および肺炎関 連医療費の関連 く含まれる不飽和脂肪酸は抗炎症・抗酸化作用を持 ち、その摂取は脳梗塞を含めた多くの炎症性疾患の リスクを下げます 5, 6)。また、歯の喪失は総摂取エネ ルギーにも影響を与え、高齢者における低栄養のリ スクとなります 7, 8)。栄養不良状態では、免疫機能が 低下し、感染症にかかりやすくなります 9)。こうし たことが今回観察された歯の喪失と医療費の関連の 背景にあることが推測されます。 今後は歯・口腔の健康と医療費についての研究を 年齢層を広げ展開していきます。本研究結果、および 本研究から派生した将来の研究が、歯・口腔の健康が 全身の健康に及ぼす影響のさらなる解明、そして我が 114 8020 No.14 2015-1 文献 1)Joshipura, K.J., Hung, H.C., Rimm, E.B., Willett, W.C., Ascherio, A.: Periodontal disease, tooth loss, and incidence of ischemic stroke. Stroke, 34(1): 47-52, 2003. 2)Sahyoun, N.R., Lin, C.L., Krall, E.: Nutritional status of the older adult is associated with dentition status. J. Am. Diet Assoc., 103(1): 61-66, 2003. 3)Linden, G.J., Lyons, A., Scannapieco, F.A.: Periodontal systemic associations: review of the evidence. J. Clin. Periodontol., 40 Suppl ,14 : S8-S19, 2013. 4)Yoshihara, A., Watanabe, R., Nishimuta, M., Hanada, N., Miyazaki, H.: The relationship between dietary intake and the number of teeth in elderly Japanese subjects. Gerodontology, 22(4): 211-218, 2005. 5)Dauchet, L., Amouyel, P., Dallongeville, J.: Fruit and vegetable consumption and risk of stroke: a metaanalysis of cohort studies. Neurology, 65(8): 11931197, 2005. 6)Xun, P., Qin, B., Song, Y., Nakamura, Y., Kurth, T., Yaemsiri, S. et al.: Fish consumption and risk of stroke and its subtypes: accumulative evidence from a metaanalysis of prospective cohort studies. Eur. J. Clin. Nutr., 66(11): 1199-1207, 2012. 7)Perera, R., Ekanayake, L.: Relationship between nutritional status and tooth loss in an older population from Sri Lanka. Gerodontology, 29(2): E566-E570, 2012. 8)Sheiham, A., Steele, J.G., Marcenes, W., Lowe, C., Finch, S., Bates, C.J. et al.: The relationship among dental status, nutrient intake, and nutritional status in older people. J. Dent. Res., 80(2): 408-413, 2001. 9)Don, B.R., Kaysen, G.: Serum albumin: Relationship to inflammation and nutrition. Semin. Dialysis., 17(6): 432-437, 2004. コラム・ズームアップ■ コラム・ズームアップ 歯科衛生士法と歯科技工士法の改正 東京歯科大学歯科社会保障学 教授 上條英之 一部改正で、業務として歯科保健指 児歯科検診の後にフッ化物塗布を行 導が位置付けられましたが、法制定 うケースもありますが、検診と同日 前後の主な歯科保健医療施策の推移 ではなく、後日に行うなどの対応が を顧みると、昭和 58 年に歯科衛生 され、状況変化への対応を行っても 歯科技工士法の改正がされ、半年が 士学校のカリキュラムが変更され、 問題はないと判断されることから行 すぎましたが、一般的に歯科関係者 保健指導が教育科目として新設され われているものです。 の身分法の改正があると、いままで ました。その後、国家試験の科目に も業務への影響があることから歯科 保健指導が追加されました。 1.今回の法律改正について 平成 26 年6月に歯科衛生士法と 医療関係者の間で関心が高まる傾向 が見受けられます。 また、地域保健事業についても、 老人保健法に基づく事業として、昭 今回の直接を法文から削除し、連 携に関する条文を追加する改正は、 政策的側面よりも現場の変化への側 面が強いといえます。 和 62 年度から歯の健康教育、健康 歯科診療補助や歯科保健指導に 政策的に行う場合と現場の状況変化 相談が位置付けられ、その後、平成 も、今回の改正が影響するとの解釈 のため行われる場合があり、今回の 4 年には、同事業で訪問口腔衛生指 を主張する方もいますが、いままで 歯科衛生士法、歯科技工士法の改正 導が開始されました。 の法改正の経緯からみると、他の法 身分法を含め医療制度の改正は、 は、後者の現場対応への側面が強い と筆者は考えています。 2.今までの歯科衛生士法見直し 医療保険においては、平成 6 年に、 歯科衛生士の実地指導が新たに評価 ず、法改正を行った予防処置にのみ されていて、どちらかというと政策 影響するとの解釈が妥当であると考 的な側面が現状変化への側面よりも えられます。したがって、現状追認 強いとの解釈が成り立ちます。 の側面が強い法改正であると現時点 では解釈するのが適当であろうと考 現在の歯科衛生士法は、昭和 23 年に制定されました。当初は保健所 文への影響があるとの解釈にはなら 3.今回の歯科衛生士法改正 えます。 に歯科衛生士が配置され、歯科医師 の直接の指示のもとで、フッ化物塗 今 回 の 歯 科 衛 生 士 法 改 正 は、 4.歯科技工士法の改正 布などの予防処置を行う目的で制定 2011 年に「歯科口腔保健の推進に されました。 関する法律」が制定され、地域の歯 歯科技工士法については、実技試 歯科診療所で多くの歯科衛生士が 科保健サービスを進めていく政策的 験を当初、国で行うのが制度的に難 勤務する想定はされていませんでし 側面を否定するものではありません しいため、都道府県で実施されてき たが、法制定後、免許を取得した歯 が、保健所や市町村保健センターで ましたが、すでにほとんどの医療関 科衛生士の多くが歯科診療所で勤務 は、平成 24 年地域保健・健康増進 係職種の試験が国で実施され、国家 するケースが多かったことから、昭 事業報告によると、延べ 180 万人が 試験にふさわしい試験とする必要か 和 30 年の歯科衛生士法一部改正で 予防処置を受け、この多くは、歯科 ら、今回の法改正で、国に移管され 診療補助が、歯科衛生士の業務に位 衛生士によるフッ化物塗布と考えら ることとなりました。歯科技工士試 置づけられ、現場の状況変化で改正 れています。 験については、検討会の報告による がなされました。 また、平成元年の歯科衛生士法の 改正前の歯科衛生士法の条文に示 す歯科医師の直接の指示の下で乳幼 と、実技試験を存続して、国家試験 を行うこととなっています。 8020 No.14 2015-1 115 地域における歯科保健活動 地域における歯科保健活動 1 お口のケア“チェック&アドバイス” 北海道歯科医師会 一般社団法人 北海道歯科医師会 常務理事 (歯科医療総合対策・機構改正担当) 馬場宏治 問診と唾液検査でわかるお口のリスク判定として、各診療所での健診等に用いていただきたいと考 案された「お口の健康度チェック」を、日本歯科医師会の標準的な成人歯科健診プログラムを参考に、 名称を「お口のケア“チェック & アドバイス”」に変更しました。ネット環境があればどこでも受け ることができるお口の健診リスク判定です。 1.はじめに 問診より得られる生活習慣を把握することにより口 腔内におけるう蝕・歯周病のリスクについて簡易的 C 本システムは、平成 24 年から名称を「お口の健 に判定を行うようにしました。問診結果は、基となっ 康度チェック」から「お口のケア“チェック&ア た日本歯科医師会の標準的な成人歯科健診プログラ ドバイス”」に変更し、日常生活の中で歯の健康を ムと同様に問診項目を点数化し、健診後の指導に際 見直してもらえるように改良を加えているところ し、さまざまな指導とならないように、指導内容を です。 あらかじめ用意しました。これにより、「お口の健康 8020推進財団研究調査報告 平成 19 年から始まった口腔内を診ずに問診と 度チェック」の問診・指導内容をプログラム化する 唾液検査でわかるお口のリスク判定として、各診 ことができ、パソコンを利用した健診方法を完成す 療所での健診等に用い、患者さんの継続管理に役 ることができました。そしてイベント会場や各会員 に立てていただきたいとの主旨で始まった「お口 診療所において、能率的に健診を行うことができる の健康度チェック」でした。しかしながら、唾液 ようになりました(図1)。 検査の有効性は認められていますが、診療所で行 う健診として、口腔内診査と唾液検査を同時に行 うことの有効性が上手く健診に繋がらなかったた めかと思われますが、診療所で行われることが少 なく、この健診は、各郡市区歯会のイベントのみ で行われることが多くなってしまいました。また、 血液検査と違い、口腔内の環境により唾液検査結 果が大きく影響を受けることもあり、活用方法に ついてもう一度考え直さなくてはならない状況と なっていました。 2.パソコンを利用した健診方法 そこで北海道歯科医師会として、平成 17 年度よ り日本歯科医師会において考案されていた標準的な 成人歯科健診プログラムに着目し、平成 21 年から 116 8020 No.14 2015-1 図1 イベントでの実施の様子 地域における歯科保健活動 図2 お口のケア“チェック&アドバイス”トップページ 唾液検査については、この問診結果とともに受診 者に説明するためのオプションとして活用すること 図3 北海道歯科衛生士会の事業所健診の様子 加えたものです。 り、現在は会員診療所での個々の活用をお願いせざ 4.歯科診療所を受診し具体的な 指導へ るをえない状況となっています。 では、自宅でこの健診をご自身で行った方は、そ としましたが、残念ながら試験薬の製造中止等によ そして、これらの改変を加えながら、 「お口の健康 の後どうすれば良いのでしょうか? 問診結果より 度チェック」の健診を会員の診療所はもとより、さ 歯科医院への受診喚起および注意があった場合には、 らに自宅に居ながらにして行うことができ、少しで 歯科診療所を受診していただきます。そこで歯科治 も歯科受診を喚起・継続できるものにしたいと議論 療が必要な方は、治療に進み、指導が必要な方はもっ と試みを重ねてきました。 と具体的な指導を受けることになります。さらに現 3.健診プログラムを Web 上で公開 在、試行中なのですが、問診結果を持参して歯科医 診療所では、健診結果に添付された ID 番号を照会し 開し、生活習慣に答えるだけで簡単にお口のリスク ていただくと、北海道歯科医師会より健診結果がそ 判定をチェックできるようにしました。北海道歯科 の診療所に届くようになります。このことは、転勤 医師会のホームページにアクセスしていただき問診 等で転院があっても北海道内であれば継続的なお口 による歯科健診を行うものです(図2) 。もちろん の健康維持管理が行うことができるということです。 Web 上の健診なのでスマホやタブレットでもアクセ また、北海道では北海道歯科衛生士会が中心となっ スは可能となっています。よってインターネット環 て行っている事業所健診では、この「お口のケア 境にある方々は、日頃の生活習慣について答えるだ “チェック & アドバイス”」を使用しています(図3)。 けで、自宅や就業先で簡単にご自分のお口の健康に そして、事業所健診を行っている地区での健診後の 対するリスク判定を大まかですが、知ることができ フォローアップを行うことができる歯科診療所養成 るようになりました。 のための講習会も開催しており、それに参加した歯 このホームページにアップしたことを機会に一般 の方に内容がわかりやすい名称として「お口の健康 度チェック」から「お口のケア“チェック & アドバ 科診療所では、さらによりきめ細かな継続的なお口 の健康管理が期待できます。 イス” 」に変更しました。そして平成 25 年には、そ 5.おわりに れまで 18 歳以上の方々のための健診として行って 現在では、セルフチェックでのワンコイン健診等 きたこの健診をすべての年齢に使用可能なプログラ も普及しつつあり、より健康志向が高まっています。 ムとしてバージョンアップを行いました。就学前(0 そんな中で「お口のケア“チェック & アドバイス”」 ~ 6 歳未満) ・小学生(6 ~ 12 歳未満) ・中高生(12 は、「生きる力を支える」ことができるお口の健康 ~ 18 歳未満) ・18 歳以上の成人の4つの年齢群に について、多くの方々に受診していただきたい歯科 分け、問診内容、健診結果をその年齢ごとに変更を 健診だと考えています。 8020 No.14 2015-1 117 8020推進財団研究調査報告 平成 24 年からこの健診プログラムを Web 上で公 C 院を受診しなくても、北海道歯科医師会会員の歯科 地域における歯科保健活動 地域における歯科保健活動 2 福島県における被災地口腔ケア推進事業 福島県歯科医師会 一般社団法人福島県歯科医師会 理事 池山丈二 福島県歯では、長期避難生活をおくる被災者に対して歯科的問題を調査するために被災地口腔ケア 推進事業を行いました。口腔内診査および、唾液アミラーゼ簡易測定を原理としたストレス度測定等 を実施した結果、歯科的問題の解明だけでなく、震災関連死の一要因であるストレスに関して、これ まで実施されてきた質問用紙によるストレスチェックによらず、唾液中に含まれる唾液アミラーゼに よるストレス測定法により、ストレス状況を数値化し客観的評価が可能であることを確認しました。 以下の項目にて実施しました。 1.はじめに 1)口腔内診査 東日本大震災に伴う原発事故により福島県民の約 口腔診査のうち歯の状況は WHO 口腔診査法の 12 万人は現在も避難生活を余儀なくされています。 基準で、歯周組織の状況は CPI(Community また震災関連死は、1都9県で 3,089 人となって Periodontal Index, WHO,1997)に従って診査 おり(26 年 5 月 27 日復興庁発表) 、死亡原因の約 しました。 半数が「避難所生活での肉体的・精神的疲労」とさ 2)唾液アミラーゼモニターによるストレス度測定 C ストレス度測定にはアミラーゼ簡易測定を原理 れています。 8020推進財団研究調査報告 長期にわたる仮設住宅での生活は、とりわけ高齢 とした酵素分析装置(唾液アミラーゼモニターⓇニ 者においては体力低下による誤嚥を誘発しやすく、 プロ株式会社)を用い測定しました 2)。測定結果 またさらに精神的ストレス等による免疫力の低下が の評価は数値によりストレスが「なし」、「ややあ 加わることにより、特に肺炎になるリスクの高い高 り」、「あり」、「かなりあり」の4段階で表し、上 齢者、要介護高齢者に誤嚥性肺炎が多発すると指摘 限は 200ku/l までとなります。 されています。この誤嚥性肺炎のリスクを減らすた 3)口腔水分計による口腔乾燥度測定 めには、口腔ケアが極めて重要であり、このことは 口腔乾燥度測定には、口腔水分計ムーカスⓇ(株 阪神淡路大震災、中越地震の被災者への口腔支援活 式会社ライフ)を用い、測定は 3 回行い、その中 動からも多数報告されています 。 央値を測定値としました 3)。測定値の評価として 1) 福島県歯では平成 25 年度、震災による長期避難 は 30%以上「正常」、29 ~ 30%未満「境界」、 被災者の歯科的問題を調査、検討するために奥羽大 27 ~ 29%未満「軽度乾燥」、25 ~ 27%未満「中 学歯学部、福島県歯科衛生士会と協力し、帰還困難 等度乾燥」、25%以上「重度乾燥」としました。 地域の住民および津波被害による被災者が居住する 仮設住宅に被災地口腔ケア推進事業を実施しまし た。 2.事業の内容 仮設住宅の運営管理を行う市町村へ事業実施の募 集をし、希望があった葛尾村(仮設の所在は三春町) といわき市の仮設住宅の計 4 か所に対し支援を行い ました。実施場所としては各仮設住宅の集会場とし、 118 8020 No.14 2015-1 4)口腔がん検診 奥羽大学歯学部口腔外科の専門医により診査が 行われました。 5)歯科衛生士による術者みがき DENT.EX systema genki(ライオン歯科材株 式会社)を使用し術者みがきを実施しました。 6)被災者へのアンケート 事業終了後、参加者に対しアンケートを実施し ました。 地域における歯科保健活動 コード4 36% コード1 12% コード3 29% なし 10% 異常なし(個人コード=0) 要指導 (個人コード=1) 要精検 a 歯石除去 (個人コード=2または3) b 歯周治療 (個人コード=4) コード0 21% かなりあり 78% コード2 2% ややあり 6% あり <判定> 6% ストレスなし (0∼30ku/l) ストレスややあり (31∼45ku/l) ストレスあり (46∼60ku/l) ストレスかなりあり(61ku/l以上) 図 2 ストレス度測定結果 図 1 歯周疾患罹患状況 正常2% 重度乾燥 21% 境界値 10% 中等度乾燥 36% 軽度乾燥 31% で抵抗感なく術者みがきができました。またアン <判定> 1 正常(30%以上) 2 境界値(29∼30%未満) 3 軽度乾燥(27∼29%未満) 4 中等度乾燥(25∼27%未満) 5 重度乾燥(25%未満) ケートの結果から多くの参加者が自ら爽快感を体 験しています。 6)アンケート結果 本事業の必要性および満足度が高く、事業の継 続を求める声が多く集まりました。 図 3 口腔乾燥度測定結果 4.おわりに 福島県ではこれまでに仮設住宅の高齢者に対して、 3.結 果 参 加 者 合 計 は 57 名( 葛 尾 村 25 名、 い わ き 市 32 名)で、参加者の 88.6%が 60 歳以上であり、 健康支援活動等が行われていますが、最近の報告に よりますと福島県での震災関連死は 1,704 人(26 年3月末現在)と増加し問題になっています。 このようなことから、仮設住宅等に居住される者 に対し、ストレス度測定を含む歯科検診を行うこと 1) 口腔内診査 で、被災者自身が口腔状態を把握して口腔ケアの重 現在歯数および DMF 歯数は、平成 23 年度歯 要性を認識し、歯・口腔の健康の保持・増進を進め 科疾患実態調査と比較すると全体的には大きな ることで全身疾患予防の啓発を図ること、またスト 相 違 は あ り ま せ ん が、CPI は、 要 精 検( コ ー ド レス度測定の結果より長期にわたる避難生活からの 2、3、4)と判定した者の割合は全体の 67%を占 ストレスを再認識させ、震災関連死の一要因である めました(上下無歯顎者は 9 名) (図1)。 2)唾液アミラーゼモニターによるストレス度測定 ストレスがあると判定された者は 90%となり、 ストレスの軽減の一助として歯科からのアプローチ (歯科的問題を抱えるストレス度が高い高齢者を重点 的に、歯科医院受診や歯科衛生士等による口腔ケア そのうち「かなりあり」が 78% でした。またか および指導)が可能になります。さらに得られた情 なりあるとされた者のうち、上限の 200ku/l を示 報を仮設住宅等の運営管理主体である市町村と共有 す者が 14 名に達しました(図2) 。 することで、保健師等の見守りの活動やカウンセリ 3)口腔水分計による口腔乾燥度測定 乾燥と判定された者は 88%で、そのうち重度 ング、またストレス調査の聞き取りの際にもこの情 報が活用できると考えます。 乾燥と判定された者は 21%でした(図3)。 4)口腔がん検診 扁平苔癬が1名のみで前癌病変およびその他の 口腔粘膜疾患は認められませんでした。 5)歯科衛生士による術者みがき 人前で口を開けることや義歯を外す行為に抵抗 を抱く参加者もいましたが、事前に説明すること 文献 1)田中 彰:大規模災害時における被災高齢者に対する歯科保健 医療支援活動.老年歯学 , 24(3):284-292, 2009. 2)中野敦行 , 山口昌樹:唾液アミラーゼによるストレス測定.バ イオフィードバック研究 , 38(1):4-9, 2011. 3)大田洋二郎:がん治療における口腔乾燥症状とその対処.株式 会社ライフ , 埼玉 , 2011. 8020 No.14 2015-1 119 8020推進財団研究調査報告 女の比率は男性が 3 割、女性が 7 割でした。 C そのうち 70 歳代が全体の 39.6%と最も多く、男 自治会による見回り、保健師による巡回保健指導や 地域における歯科保健活動 地域における歯科保健活動 3 大垣市メタボ歯科健診 5 年間の歯周病実態調査 糖尿病医科歯科連携事業 岐阜県歯科医師会 公益社団法人岐阜県歯科医師会 阿部義和 松村康正 片野雅文 一般社団法人大垣歯科医師会 杉山勝治 早野泰弘 平成 20 年より歯周病に特化した大垣市メタボ歯科健診を行っています。平成 20 年度には、受診 者の歯周病検査と医科の特定健診検査データについて疫学調査を行いました。これらの取り組みの結 果、糖尿病専門医から要請があり、糖尿病医科歯科連携事業が始まりました。平成 20 年度から 24 年度まで 5 年間の大垣市メタボ歯科健診歯周病実態調査と糖尿病医科歯科連携会議をご紹介します。 1. はじめに C 8020推進財団研究調査報告 歯周病は従来考えられていたような口の中だけの 病気ではなく、さまざまな全身疾患を起こす可能性 が高いといわれています。内臓脂肪型肥満(メタボ リックシンドローム)は、動脈硬化を誘発し糖尿病・ 脳梗塞・心筋梗塞になりやすいだけでなく歯周病も 増悪します。また、慢性の炎症でもある重度歯周病 は動脈硬化を増悪するとも言われています。生活習 慣病的側面が強いそれぞれの疾患が影響し合い、病 状を悪化させるのがメタボリックシンドロームであ るともいえます。 これまでのメタボリックシンドロームと歯周病に おける研究は、医科からの研究発表や歯科において も西村英紀教授の発表等があり、エビデンスとして 確立されつつあります。そこで大垣市メタボ歯科健 診において、歯周病に特化した歯科健診を行うこと としました。これら歯科データはファイルメーカー にデジタルデータとして保存し、再利用しやすい環 境を作りました。 2. 平成 20 年度大垣市メタボ歯科健診 初年度平成 20 年度は、受診者の歯周病検査デー タと医科の特定健診データについて広島大学の西村 英紀教授(現九州大学)に依頼し、そのデータ間の 疫学調査を行いました。その解析結果から、 「歯槽 骨吸収度と中性脂肪の間に正の相関関係が観察され た」との報告をいただきました。これらの研究は、 米国専門誌メタボリズム 2011 年 6 月号に“日本人 における歯周病と高中性脂肪血症について脂肪分解 の亢進との関連性からの検討”というタイトルで論 文として掲載されました。 3. 大垣市メタボ歯科健診 平成 20 年度から 24 年度 5 年間実態調査 平成 20 年から 24 年度まで延べ 1,625 名の大 120 8020 No.14 2015-1 垣市民に、大垣市メタボ歯科健診を受診していただ きました。歯周病の評価を、①歯周病重篤度、②最 大ポケット深さ、③ 1 歯当たりのポケット深さ、④ BOP 陽性数で行い、その分布調査を行いました(図 1、図 2)。その結果、50 歳代で歯周病の重症化傾 向が認められました。特に女性においてその傾向が 強いように思われ、その前の年代 40 歳からの歯周 病に対する啓発が重要であると考えます。 年齢層別歯周炎重篤度の人数 1)40歳以上50歳未満 女性 年齢 軽度 40以上50未満 89 中等度 15 重度 1 年齢層別歯周炎重篤度の比率 40歳以上50歳未満の比率 女性 1% 14% 軽度 中等度 85% 2)50歳以上60歳未満 女性 年齢 軽度 50以上60未満 83 中等度 23 重度 6 重度 50歳以上60歳未満の比率 女性 5% 21% 軽度 中等度 74% 重度 3)60歳以上70歳未満 女性 年齢 軽度 60以上70未満 275 中等度 119 重度 10 60歳以上70歳未満の比率 女性 3% 29% 軽度 中等度 68% 重度 図 1 年齢層別歯周炎重篤度の比率(女性) 大垣市メタボ歯科健診受診者数H20∼H24推移 男性 女性 合計 500 450 400 350 300 250 200 150 100 50 0 平成20年 149 320 469 平成21年 109 146 255 平成22年 125 174 299 平成23年 102 145 247 平成24年 159 196 355 女性 男性 平成20年 平成21年 平成22年 平成23年 平成24年 図 2 大垣市メタボ歯科健診受診者数 H20 ~ H24 までの推移 地域における歯科保健活動 図 3 岐阜大学医学部内分泌代謝病態学講座 武田純教授 4. 糖尿病医科歯科連携事業 A. 不破郡糖尿病医科歯科連携事業 岐阜県における糖尿病対策推進のリーダーでもあ る岐阜大学医学部内分泌代謝病態学講座・武田純教 授の提案で、糖尿病医科歯科連携会議が始まりまし た。近年急増する糖尿病患者対策として糖尿病の医 科歯科連携を進めるため、不破郡という小さな地域 で連携を深めるよう行政担当者も交え、率直に話し あえる環境づくりを行いました。 5. 今後の課題 大垣市メタボ歯科健診において今後もデータの積 み重ねや歯周病に対する啓発活動を行っていく予定 です。また、糖尿病医科歯科連携事業は歯周病と糖 尿病の病態改善を目的に情報共有を図り、顔が見え る関係を構築でき大変有意義なものとなりました。 今後も医科と歯科が連携を取り、地域住民の健康増 進に取り組んでいきたいと思います。 文献 1)Nakarai, H., Yamashita, A., Takagi, M., Adachi, M., Sugiyama, M., Noda, .H, Katano, M., Yamakawa, R., Nakayama, K., Takumiya, H., Nakai, Y., Taniguchi, A., Nishimura, F.:Periodontal disease and hypertriglyceridemia in Japanese subjects: potential association with enhanced lipolysis. Metabolism, 60 (6): 823-829, PMI D : 20817211, 2011 Jun. 2)Munenaga, Y., Hiroshima Study Group, Yamashina, T., Tanaka, J., Nishimura, F.: Improvement of glycated hemoglobin in Japanese subjects with type 2 diabetes by resolution of periodontal inflammation using adjunct topical antibiotics: results from the Hiroshima Study. Diabetes Res.Clin.Pract., 100(1): 53-60, PMID : 23465365, 2013 Apr. 3)JDCP study ウエブサイト : 口腔検査報告書 http://www.jds.or.jp/jdcp_study/download/kouku.pdf (2014 年 10 月 15 日アクセス) 4)JDCP study ウエブサイト : 症例報告書 4 年目 http://www.jds.or.jp/jdcp_study/download/4year_ houkoku.pdf(2014 年 10 月 15 日アクセス) 8020 No.14 2015-1 121 8020推進財団研究調査報告 B.「歯周病と糖尿病」地域住民講演会 平成 26 年 2 月 23 日(日) 垂井町文化会館 岐阜大学より武田純教授をお招きし、「生活習慣病 の予防のために『食べる』を考える」という演題で 講演していただきました(図 3)。糖尿病と歯周病の つながり(同じ患者でも歯周病のリスクを持つ方の ほうが、治療成績、予後に差異がある)を、グラフ を用いてわかりやすく示されました。さらに、生活 習慣・ダイエットなど、旬を愛でる日本の食文化の 素晴らしさを感じさせられた講演でした(図 4)。地 域住民にも熱心にご参加いただき、十分な理解を示 していただきました。高度な質問にも丁寧なご回答 をいただき、地域住民にもご満足いただいたものと 思います。 C 1)第 1 回不破郡糖尿病医科歯科連携会議 平成 25 年 6 月 28 日(金) 糖尿病専門医不破義之先生から、①この会の目 的、②糖尿病医科歯科連携の実践について、③糖 尿病連携手帳を利用してのやりとりや記載方法、 ④診療情報提供書等の説明がありました。 2)第 2 回不破郡糖尿病医科歯科連携会議 平成 25 年 10 月 28 日(月) ①糖尿病と歯周病、②糖尿病患者の歯科治療、 ③糖尿病診療情報提供書の利用説明など、歯科か ら医科への情報提供を行いました。 3)第 3 回不破郡糖尿病医科歯科連携会議 平成 25 年 12 月 9 日(月) 医科から歯科への情報提供ということで、専門 医不破先生に“最近の糖尿病の知見について”と いう演題で講演していただきました。① 2 型糖 尿病の Natural History、②インスリン抵抗性に ついて、③高血糖の記憶、④糖尿病の判定区分と IGT/IFG 別心血管死亡への影響、⑤糖尿病治療薬 の選択、⑥複数の生理的異常が 2 型糖尿病の病態 生理に関係している、⑦熊本宣言 2013、⑧糖尿 病のコントロール指標など、最新の情報をわかり やすく講演していただきました。 4)第 4 回不破郡糖尿病医科歯科連携会議 平成 26 年 2 月 23 日(日) 今後の連携会議について意見交換を行いました。 図 4 「歯周病と糖尿病」地域住民講演会 地域における歯科保健活動 地域における歯科保健活動 4 歯周病予防のための新唾液検査事業 ~だ液でカンタン歯周病チェック! あなたの歯ぐきは大丈夫?~ 東京都港区芝歯科医師会 公益社団法人東京都港区芝歯科医師会 地域保健(成人保健)担当理事 西辻直之 歯科医師会管内で最も知名度が高い JR 新橋駅西口 SL 広場にて、岩手県歯科医師会歯周病検診事 業をもとにした無料唾液検査を実施しています。この検査は唾液を採取するだけで歯科用プローブを 使用しないため、検査時に痛みを伴いません。また、検査結果が数値で出ることが特徴で、受診者に とてもわかりやすい歯周病検診です。 実施に先立ち、事後措置を担当する、登録医療機 1.はじめに 関を公募し説明会を毎年開催します。説明会の講師 この事業は私どもの歯科医師会が公益社団法人格 は、厚生労働省労働科学研究班主任研究者としてこ 取得を目指す中、新たな公益事業として平成 20 年 の唾液を検体とした歯周病の臨床検査法の開発をし に地域保健常任委員会から提案され、平成 22 年よ てこられた花田信弘教授(鶴見大学歯学部探索歯学 り実施しています。 講座)にお願いしています。花田教授、野村義明准 岩手県歯科医師会歯周病検診事業をもとにし、地 C 域における公益事業として一般の方々への歯周病検 教授(同講座)にはこの事業全般にわたりご指導を いただいています。 8020推進財団研究調査報告 診・歯周病予防の啓発、および歯科医師に対し『新 毎年、5 月の平日の JR 新橋駅西口 SL 広場が使 たな唾液検査』の可能性と将来性についての周知を 用できる日に 1 回実施しています(図2、図3)。時 目的としています。 間は 11 時~ 15 時まで 4 時間で、250 人分の検 2.事業内容 査キットを用意します。唾液検査の実施は歯科医師 会会員があたり、検査所要時間は問診票の記入を含 唾液を検体とした生化学検査による数値判定結果 め 15 分程度です。検査結果は約 2 週間後に検査機 (乳酸脱水素酵素値・唾液ヘモグロビン値)と生活 関である公益財団法人岩手県予防医学協会より受診 習慣についての問診結果を総合判定し、歯周病のリ 者に直接送付されます。検査結果により、詳しい説 スク判定をします。対象者は港区在住・在勤者を含 明、精査および治療を希望する受診者は結果票を持っ む 20 歳以上の方すべてです。唾液を採取するだけ て登録医療機関もしくは、かかりつけ歯科医院等を の検査のため、従来のように歯科用プローブを用い 受診することになります。 て歯周ポケット測定することはなく、出血や痛みを 感じることがありません。 この唾液検査の最大の特徴は、乳酸脱水素酵素値・ 3.事業実施にあたり留意した点 1)新橋駅西口 SL 広場での実施 唾液ヘモグロビン値として結果が数値で出ることに 広く一般への歯周病検診・歯周病予防の啓発を あります。従来の唾液を検体とした検査は反応試験 目的とし、多くのメディアの取材を受けることを 紙等の色調の変化や濃淡を視覚により判定するもの 目指すため、本歯科医師会管内において最も知名 でした。検査結果が数値で表されることにより客観 度が高いと思われる場所での実施にこだわりまし 性および再現性が格段に向上するだけではなく、受 た。SL 広場は JR 新橋駅西口に位置し、SL が展 診者にとってもわかりやすく、努力目標にもなりま 示されランドマークとしても広く知られている場 す(図1) 。 所です。駅ホームより一望でき、テレビ番組では 122 8020 No.14 2015-1 地域における歯科保健活動 検査結果は下記のとおりです。 検査項目 基準範囲 検査結果 判 定 出血検査(ヘモグロビン) 1.6 以下 0.1 μg/ml a 炎症検査(乳酸脱水素酵素) 270 以下 195 U/I a 問診スコア 30 以下 18 点 a 図1 結果表の見本 図3 事業当日の様子(平成 25 年) 4.唾液検査標準化について この唾液検査で行っている生化学検査の一つであ る、唾液ヘモグロビンの検査試薬は、栄研化学(株) とアルフレッサファーマ(株)の 2 社から出されて おり、(公財)岩手県予防医学協会は栄研化学(株) のものを使用しています。この2社の検査試薬にお ける検査結果の標準化についての検討を、この SL 広場で採取した唾液検体についても平成 24 年より 2社にて行い、検査試薬間の精度検定を実施するも のです。この結果は 8020 推進財団指定研究事業報 告書「唾液検査標準化に関する研究」に収載されて たびたび一般市民へのインタビュー場所として登 場します。 2)事後措置を担当する登録医療機関の配置 います。 5.今後の課題 この事業のような集団健診はいうまでもなくス 唾液検体の分析は岩手県の健診業者(岩手県予防 クリーニング検査になります。検査の結果で「要 医学協会)にて行っていますが、これは地域に適切 指導」あるいは「要医療」と判定された人には、 な臨床検査会社がないという理由もあります(アル 医療機関において検査結果の説明および精査によ フレッサファーマは検査試薬の製造会社)。今後、唾 る確定診断を行い、その後の指導や治療さらには 液ヘモグロビン検査の実用化には、臨床検査会社と メインテナンスにつなげていく必要があります。 の連携が重要であり、地域の臨床検査会社へのアプ このような事後措置に対応できる医療機関を用意 ローチは非常に重要な課題となります。神奈川県に しておくことは必要なことです。 ある臨床検査会社と接触し、検体分析依頼について 3)地域の歯科保健活動を目指す 検討する予定です。 地域の歯科保健活動となるには、地域の構成メ また、事業を継続し地道に回数を重ね、実績を積 ンバーがより多く参加することが望ましいはずで み重ねて行っていくことにより、地域の行政、町会 す。歯科医師会が主体となって実施するだけでは および企業の方々との強固な人間関係を作っていく なく、地域の行政や住民の理解、協力を得て継続 ことが大切であると考えます。これにより事業の更 していくことが、より事業の効果を高めると考え なる発展あるいは新たな展開につなげていきたいと ます。 思います。 8020 No.14 2015-1 123 8020推進財団研究調査報告 図2 事業の告知ポスター C 行っています。これは唾液ヘモグロビン値の分析を 地域における歯科保健活動 地域における歯科保健活動 5 特別支援学校における TEACCH プログラムを応用した オーダーメイドの口腔清掃法指導システムの構築 広島市歯科医師会 一般社団法人 広島市歯科医師会 会長 土江健也 理事 上田裕次 広島大学病院口腔健康発育歯科障害者歯科 教授 岡田 貢 助教 尾田友紀 TEACCH プログラムとは、TreatmentandEducationofAutisticandrelatedCommunication handicapped Children の略で、早期から成人期に至るまでの知的障害あるいは自閉症の包括的治療教 育プログラムのことです1)。本事業は、広島大学病院障害者歯科と連携して、特別支援学校の学童・生 徒たちのお口の健康を守るために TEACCH プログラムを応用し、個別に最適な口腔清掃指導法を構築 していくことを目的としています。また、本事業に参加する広島市歯科医師会会員の障害者歯科診療に 対する知識と技能の向上も期待できます。 1.はじめに C 8020推進財団研究調査報告 覚優位である(絵や写真などの視覚支援ツールを示 して指示する方が理解しやすい)という特徴があり ます3)(図1)。 TEACCH プログラムは、1966 年に米国ノースカ ロライナ大学精神科において自閉症児と家族への支 援プログラムとして設立されました。当時、自閉症 は親が適切な情緒的サポートや養育を怠っているこ とで引き起こされると考えられていました。しかし、 TEACCH の創始者であるショプラーらは、自閉症は 親の子育てが原因ではなく、器質的な原因があると 仮定し、親と専門家が協力しあうことで支援を成功 させることができると考えました。TEACCH プログ ラムでは、現実の子どもと関わりあいながら、親と 専門家が協力し、自閉症の特性(視覚優位・こだわ りの強さなど)を理解した上で適応しやすい環境を 整えることが重要であるとしています4)。 特別支援学校の児童・生徒たちは、さまざまな障 害を有するため、口腔清掃、口腔衛生指導が困難で あることが多いと言われています。そこで広島市歯 科医師会では、公益財団法人 8020 推進財団歯科保 健活動委員会を立ち上げ、広島大学病院障害者歯科 および学校歯科医(広島市歯科医師会会員)と連携 して、特別支援学校の児童・生徒たちの口腔健康の 維持増進を目指し、口腔清掃技能の向上および児童・ 生徒の個々に合った口腔清掃法を構築することを目 的に上記事業を行っています。 平成 25 年度の広島市立広島特別支援学校の生徒 数は、小学部 86 名、中学部 74 名、高等部 235 名 の 395 名で、そのうち自閉性障害を有するものは 160 名(40.5%)でした(小学部 54 名、中学部 21 名、高等部 85 名)。 2.事業内容 近年、自閉性障害と診断される子どもの数は増加 しており2)、自閉性障害の発現は 1,000 人に 1 ~ 2 本事業においては TEACCH プログラムの考え方 人といわれています1)。 に基づき、保護者、学校職員、歯科衛生士および歯 科医師が協力し、各児童・生徒に最適な口腔清掃の 自閉性障害の定義は米国精神疾患野分類と診断の パターンを 3 年かけて、構築していきます。今年は 手引き(DSM―Ⅳ)によると以下のように記され 2 年目となりました。保護者、学校職員、歯科衛生 ています1)。 ①対人的相互反応における質的な障害 (視線が合わない、人と協調的に行動 することが苦手、人の表情からその人の 感情を読み取ることが苦手など) ②コミュニケーションの質的障害 (話し言葉の遅れ、人と会話のやりと りができないなど) ③行動、興味、および活動の限定された情 動的で限定された様式 (異常にこだわりが強いなど) 図1 視覚支援ツール(iPad を使用した絵カード) また、言語による指示の理解が乏しく、視 124 8020 No.14 2015-1 地域における歯科保健活動 表1 小学校 3 年生を境に口腔清掃状態が不良になっている/中学校 1 年生を境に歯肉炎が重症化している 歯垢の状態 歯肉の状態 0(良好) 1(若干の付着) 2(相当の付着) 0(異常なし) 1(要観察) 2(要精検) 問(講演会前) あなたは歯科保健に関する研修があれば 受けたいと思いますか 9% 19% 5% 17% 50% 受けたい 受けたいが時間がない 受けなくてもよい どちらでもよい 無回答 小1 14 3 0 15 2 0 小2 9 0 0 9 0 0 小3 9 6 0 9 4 2 小4 4 3 0 4 3 0 小5 16 0 0 12 4 0 小6 10 2 0 10 2 0 中1 7 9 8 10 6 8 中2 32 0 0 29 3 0 中3 3 8 1 3 9 0 高1 38 39 10 31 44 12 高2 34 41 8 36 35 12 高3 31 14 0 39 6 0 問(講演会後) 今後、このような講演があれば 参加したいですか 8% 42% 50% ぜひ参加したい 参加したい 参加したいが時間がない 参加したくない 図2 講演前には受講を希望する職員の割合が 67%であったが、 講演後には 92%となっている 3.おわりに 今後も特別支援学校の学童・生徒たちの口腔内状 況の改善を目指して、各自に最適な口腔清掃指導法 の構築を進めていく予定です。 文献 1)森崎市治郎,緒方克也,向井美惠:障害者歯科ガイドブック. 医歯薬出版,東京,1999. 2)土屋賢治,松本かおり,武井教使:自閉症・自閉症スペクトラ ム障害の疫学研究の動向.脳と精神の医学,第 20 巻第 4 号, 2009. 3)日本障害者歯科学会:スペシャルニーズデンティストリー障害 者歯科.医歯薬出版,東京,2009. 4)緒 方 克 也: 視 覚 支 援 の 考 え 方 と 実 践. 医 歯 薬 出 版, 東 京, 2008. 8020 No.14 2015-1 125 8020推進財団研究調査報告 ら、矯正装置の周りを熱心に歯磨きする生徒までさ まざまです。 具体的な手順としては、まず視覚支援ツールとし て、絵カードか i-Pad のどちらかを選択してもらい ます。その後、選択したツールを使用しながら、お 口の診査、写真撮影、プラークを染め出しした後、 歯磨き指導を行います。各指導は 30 分程度を目安 として、保護者、職員、歯科衛生士および歯科医師 が話し合う時間を 10 分程度としました。現在は、 それぞれに有効と思われるオーダーメイドの視覚支 援ツールを広島大学病院障害者歯科および学校歯科 医と連携して検討しているところです。例えば、右 側の歯磨きが苦手な生徒に対しては絵カードの最後 に右側の歯を再度磨く絵カードを追加する、短時間 しか歯磨きできない生徒にはタイマーを見ながら見 通しがたつよう具体的に指導する、という具合です。 併せて、学校の歯磨きスペースや生徒の自宅の洗 面所など歯磨きを行う場所において、多くの刺激を 整理することで歯磨きに集中できる環境を整えてい く必要もあり検討中です。 来年度には再度、歯科検診、アンケートを実施し、 1 年目の結果と比較検討する予定です。 C 士および歯科医師の協力がすべて揃うことが前提と なっています。 1年目には、広島市立広島特別支援学校にて広島 市歯科医師会、広島大学病院障害者歯科および学校 歯科医と連携して学校歯科検診を実施し、その結果 を分析したところ興味深い結果を得ました。小学校 3 年生を境に口腔清掃状態が不良になる点と中学校 1 年生を境に歯肉炎が重症化するという点です。こ れは対象となる児童・生徒を抽出していく上で非常 に参考になる結果です(表 1) 。 また、保護者や学校職員に対し「三つ子のお口 百まで」と題し、広島大学病院障害者歯科による講 演会を開催し、講演会の前後に「口腔保健に対する 意識調査」をアンケート形式で行いました。アンケー ト結果より、高校の職員が特に時間的に余裕のない こと、講演会の前後で職員の口腔に関する意識が高 まったことなどがわかりました(図2) 。高校の職員 の時間的な余裕のなさは、生徒の就職活動などに多 くの時間が割かれることが原因であると思われます。 このような点を踏まえて本事業の対象となる児童・ 生徒の人数や障害の種類などを広島大学病院障害者 歯科とワークショップ形式で 3 度にわたり会合を開 き、検討しました。 本年度には、本事業に参加予定の広島市歯科医師 会会員などを対象として、広島大学病院障害者歯科 岡田貢教授による研修会「障害を持つ児童・生徒の ための口腔清掃法を考える」を開催いたしました。 この研修会には約 150 名の参加者があり、歯科医 療従事者が障害を持つ子どもたちの口腔に対し高い 関心を持っていることが伺えました。 本事業に参加希望の児童・生徒のうち、44 名を 本事業の対象としました。8 月より、対象児童・生徒、 保護者、職員、歯科医師、歯科衛生士(5 ~ 10 名) が顔を揃え、個別歯磨き指導の 1 回目が始まってい ます(図3) 。指導の場に来ることすら困難な児童か 図3 個別歯磨き指導 地域における歯科保健活動 地域における歯科保健活動 6 石垣市の小・中学生の歯と口の健康から 健康な地域づくりの取り組み ライオン歯科衛生研究所 公益財団法人ライオン歯科衛生研究所 黒川亜紀子 稲葉 卓 石垣市の小・中学生の歯と口の健康づくりを推進するために、石垣市教育委員会、八重山地区歯科 医師会、八重山地区養護教諭研究会と連携し取り組みを進めています。今年度は子どもには歯みがき 行動、食行動、健康意識、その保護者には子どもに対する意識と行動のアンケートを実施して、現状 把握と課題の抽出を行いました。 1. はじめに 沖縄県石垣市において健康や生活習慣に関わる地 域の状況や課題にあわせて「小学生を中心とした子 もはどんな子どもか」をテーマに話し合い、仮説 として「甘い飲み物をよく飲んでいるのではない か」、 「口の中が常に甘い状態にあるのではないか」、 「昼は学校で歯をみがいているが、家では歯をみが C どもの歯と口の健康づくり」の取り組みを推進し、 いていないのではないか」といった項目が挙がり、 口腔の健康に対する学校・家庭の意識向上を図り、 これらの項目から、子どもには生活習慣としての 健康な地域づくりにつなげることを目的に事業を展 歯みがき行動、甘い飲み物のとり方などの食行動 開しています。 ならびに健康意識に関する 26 項目としました。 8020推進財団研究調査報告 本事業を展開するに当たり、小・中学生にとって の活動の中心であり、最も影響を受けやすい場であ 保護者には子どもに対する意識および行動など 15 項目からなるアンケート用紙を作成しました。 る「学校」に着目し、 「学校」を司る石垣市教育委 回答は、小・中学生は 99%、保護者は 87% 員会を中心に八重山地区歯科医師会、八重山地区養 から回答を得ました。小・中学生の結果の中から、 護教諭研究会と連携し、諸活動を推進していくこと 歯みがき行動に関しては、朝食後の歯みがきでは、 としました。今回は、小・中学生の家庭等での生活 毎日みがくと答えた人は小学 1 年では 71.3%、 習慣およびその保護者についての現状把握と課題の 小学 4 年では 68.9%、中学 1 年では 77.5% で 抽出を中心に報告します。 した(図 1)。夕食後・寝る前については、小学 2. 事業内容 1)小・中学生とその保護者の現状把握 1 年で 81.3% でした。昼食後の歯みがきについ ては、毎日みがくとの回答は小学 1 年で 73.6% 現状把握として、市内小学校 14 校と中学校 5 と 一 番 高 く、 小 学 4 年 で 60.1%、 中 学 1 年 で 校、および小・中併設学校 4 校の計 23 校の小学 40.6% と学年が高くなるにつれて低くなる傾向 1 年生 609 名、小学 4 年生 499 名、中学 1 年 がみられました。「昼食後の歯みがき」に関しては 生 546 名とその保護者にアンケートを実施しま すべての学校で歯みがき時間が設定はされている した。 ものの、みがいていない実態が明らかとなりまし アンケート調査項目の作成にあたっては、養護 教諭研究会の代表と「石垣市のむし歯の多い子ど 126 1 年では 75.8%、小学 4 年では 77.8%、中学 8020 No.14 2015-1 た。 また食行動に関しては、「朝食時の甘い飲み物 地域における歯科保健活動 100% 90% 80% 70% 71.3 68.9 77.5 75.8 77.8 73.6 81.3 60.1 60% 50% 40.6 40% 30% 20% 10% 0% 朝食後 昼食後 50% 45% 40% 35% 30% 25% 20% 15% 10% 5% 0% 37.5 夕食後・寝る前 33.9 20.1 朝食 23.3 24.3 夕食 小学1年 小学4年 中学1年 小学1年 小学4年 中学1年 図1 歯みがき実施状況 41.3 図2 食事の時の甘い飲み物の摂取状況 の摂取」では、小学 1 年で 37.5%、小学 4 年で 33.9%、 中学 1 年で 41.3% が飲んでいました(図 2) 。 「夕食時の甘い飲み物の摂取」では、小学 1 年で 20.1%、小学 4 年では 23.3%、中学 1 年 では 24.3% でした。食事の際に甘い飲み物を飲 むことについては、パン食の場合はオレンジジュー スなどの甘い飲み物を組み合わせることはあるが、 米食とジュース等の甘い飲み物の組み合わせにつ いては、食の組み合わせという点で課題があると 考えられました。 図3 養護教諭研修会での課題抽出 方を含めた生活習慣の乱れ」、保護者においては、 「子どもの歯と口に対する関心が低い」、学校にお 康状態を気にかけているか」という問いに対して、 ていない」などが課題として挙がりました。その後、 「気にかけている」と回答した人が 78.6% でした。 歯科医師会とアンケート調査結果を共有化すると しかし「子どもの歯と口の健康状態に関して気に ともに、石垣市の子どもたちの現状課題について かけているか」という問いについては、 「気にかけ の意見交換を行う場を設け、歯科医師会からは上 ている」と回答した人が 61.9% と 16.7 ポイン 記課題に取り組んでいく上で、「学校関係者に正し ト低い結果でした。このことは、保護者は日ごろ い知識を持ってもらうことが重要であり、そのた 子どもの体の健康は気をつけていても、歯と口の めには歯科医師会は全面的に協力していく」とあ 健康に関しては気にかけないということが考えら りました。 れました。 2)小・中学生の健康に携わる関係者との共有化 3. 今後の課題 今回実施したアンケート調査結果から、「課題に 養護教諭に対しては、石垣市教育委員会主催の 対する手立ての具体化」、「家庭、特に保護者に対 養護教諭研修会を活用して調査結果を共有化する してのアプローチ方法」、「養護教諭、学校歯科医 とともに、明海大学学長安井利一先生より結果の 以外の小・中学生に携わる関係者との連携」が課 解説をいただき、養護教諭がグループワークを行 題として挙がりました。 い課題を抽出しました(図 3) 。 そのまとめとして、子どもにおいては「歯みが き習慣が身についていない」 、 「甘い飲み物の摂り これらの課題に対して、今後、教育委員会・歯 科医師会・養護教諭と協力し継続して取り組んで いきます。 8020 No.14 2015-1 127 8020推進財団研究調査報告 いては「歯みがきの時間は設定しているがみがい C 保護者のアンケート調査結果では、 「子どもの健 8020 推進財団の幅広い研究活動をご紹介します 8020 推進財団の幅広い 研究活動をご紹介します 8020 研究事業公募課題の概要報告 1 日本とイギリスの高齢者の口腔の健康: 大規模疫学調査の比較研究 東北大学大学院歯学研究科 国際歯科保健学分野 相田 潤、伊藤 奏、小坂 健、小山史穂子 千葉大学 予防医学センター 環境健康学研究部門 近藤克則 国の政策や研究において、地域や集団による健康状態の差、即ち健康格差が注目されています。 本研究では日本とイギリスの高齢者の口腔保健状態を比較しました。無歯顎者の割合はイギリスの 方が多かったのですが、日英ともに所得による無歯顎者の割合の格差が見られました。健康格差の 解消につながる研究や施策が求められます。 1.はじめに C 8020推進財団研究調査報告 日本人の長寿は、世界的に注目されるところです。 口腔の健康が全身の健康に寄与することが示される 中、日本人の長寿に口腔の健康が貢献している可能 性が存在します。このことを考えた時に、日本人の 口腔の健康状態は、海外の国と比較してどのような 水準にあるのかは、大変興味深いところです。 国と国との健康状態の違いは大きいことが予想さ れます。近年、地域や集団間の健康水準の違いは、 さまざまな社会環境や経済状態などが原因で生じて いることがわかってきました。こうした差は健康格 差と呼ばれており、国の政策「健康日本 21(第二次) 」 にも盛り込まれました。また研究分野でも注目され、 国際歯科学会(IADR)では健康格差研究の部会が 発足しています 1)。 健康格差は、医療受診の格差だけで生じるのでは なく、そもそもの病気の発生率の格差によるところ が大きいことも知られています。そのため、国民皆 ながらこれまで日本人を含む口腔の健康格差の比較 はほとんど行われていません。そこで、本研究では、 高齢者の口腔の健康状態とその格差について、日本 とイギリスの大規模疫学研究データを用いて比較検 討しました。 2.研究方法 2010 ~ 2011 年に収集された、自立した生活 を送る高齢者を対象とした疫学研究である日本老年 学 的 評 価 研 究(J-AGES プ ロ ジ ェ ク ト )7) お よ び English Longitudinal Study of Aging(ELSA) の 65 歳以上高齢者のデータを比較に用いました。 社会経済状態を示す指標として、所得をそれぞれ のカテゴリーが同じ人数になるように4つに分けて 用いました。口腔の状態は、歯がすべてなくなった 状態である無歯顎かどうかを質問紙で把握しました。 年齢や性別、学歴の影響を取り除いたうえで、所得 と無歯顎の関係を調べる解析を Log-binomial 回帰 分析で行いました。 保険制度の存在する日本人にも口腔の健康格差が報 告されています 2 ~ 6)。一般的に健康格差は、健康状 3.研究結果 態が極端に悪い人が存在するいわゆる「二極化」で はなく、社会経済的状況による連続的な分布をもっ 対象者(日本:19,726 名、イギリス:4,876 名) た差を示すことが知られており、これは「社会的勾 配」 と呼ばれます。そのため健康格差はすべての人々 に影響しているのです。 国際比較によりそれぞれの国の保健医療制度や保 健政策の違いの影響も見えると考えられます。残念 128 8020 No.14 2015-1 のうち無歯顎者の割合は、日本で 15.0%、イギリ スで 20.9%でした。図1に年齢ごとの無歯顎者の 割合を示します。無歯顎者は 85 歳以下ではイギリ スの方が多くなっています。85 歳以上で日本が逆 転している理由としては、日本人の方が年齢が高い ことが理由だと考えられます。また日英ともに所得 8020 研究事業公募課題の概要報告 ● (リスク) (%) 1.6 50 p<0.05 1.4 イギリス 1.2 40 30 イギリス 1.0 日本 0.8 20 日本 0.6 0.4 10 0 p<0.05 1.8 60 0.2 65-69歳 70-74歳 75-79歳 80-84歳 85歳以上 図1 日本とイギリスの年齢ごとの無歯顎者の割合(%) イギリスの方が無歯顎者が多い。85 歳以上で日本が多 いのは、超高齢者が多いことが影響していると考えられる。 4.考 察 お観察されたという意味で、深刻な事象だと考えら れます。 そもそも高齢者の歯の状態は、幼少期から成人期 を通じての歯科保健行動や医療受診の積み重ねの結 果と言えます。そのため社会文化的な環境の違いや、 保険制度の違いが影響していると考えられます。ご 存知の通り日本では一部負担金が存在するものの、 国民皆保険制度が実施され、比較的安価に歯科治療 を受けることができます。イギリスでは 1948 年 に National Health Service(NHS)が導入され、 国民は原則無料で歯科を含む医療を受けることが可 能でしたが、財源等の問題から、現在では歯科治療 には自己負担金が導入されています。また診療報酬 が安いためと言われていますが、NHS に登録する 歯科医師が減少しており、診療を受けるための順番 待ちが問題となっています。 中位 高位 最高位 図2 最高所得層と比較した、各所得階層ごとの無歯顎 であるリスク 年齢、性別、学歴の違いを調整している。日本では低位 所得層でのみ、最高位よりも有意に無歯顎のリスクが高い。 イギリスでは、どの所得階層においても、最高位よりも有 意に無歯顎のリスクが高い。 このようにイギリスでは歯科受診が日本よりも難 しいことが考えられ、これが今回の結果を生じさせ た一因と考えられます。所得が低い人の場合、負担 額の抑制を優先して NHS による歯科医療を受診し、 治療回数を最小限に抑えるため、治療を重ねるより もさっさと歯を抜いてしまう可能性があります。一 方日本においては最も低い所得層だけが無歯顎のリ スクが高い結果でした。これは日本では一部の層を 除いて、比較的平等に歯科医療が受診できている可 能性を示唆しているのでしょう。 このような日本人の歯の喪失の格差が小さいこと が、日本人の平均的な長寿にも寄与しているのかも しれません。今後の研究により口腔の健康格差の原 因を解明し、格差の解消につなげることが、一層の 健康増進のために必要でしょう。 文献 1)Williams, D.M.: Global oral health inequalities: the research agenda. Journal of dental research, 90 (5): 549-551, 2011. 2)Morita, I., Nakagaki, H., Yoshii, S. et al.: Gradients in periodontal status in Japanese employed males. J. Clin. Periodontol., 34(11): 952-956, 2007. 3)Tanaka, K., Miyake, Y., Sasaki, S. et al.: Socioeconomic status and risk of dental caries in Japanese preschool children: the Osaka Maternal and Child Health Study. Journal of public health dentistry, 2013. 4)Aida, J., Kondo, K., Kondo, N. et al.: Income inequality, social capital and self-rated health and dental status in older Japanese. Soc. Sci .Med., 73(10):15611568, 2011. 5)相田 潤 , 安藤雄一 , 青山 旬ほか: 経験的ベイズ推定値を用 いた市町村別 3 歳児う蝕有病者率の地域比較および歯科保健水 準との関連 . 口腔衛生学会雑誌,54(5):566-576,2004. 6)Ueno, M., Ohara, S., Inoue, M. et al.: Association between education level and dentition status in Japanese adults: Japan public health center-based oral health study. Community dentistry and oral epidemiology, 40(6): 481-487, 2012. 7)近 藤 克 則 編 集 : 検 証「 健 康 格 差 社 会 」. 医 学 書 院, 東 京, 2007. 8020 No.14 2015-1 129 8020推進財団研究調査報告 高齢者の口腔の健康は日英共に、所得による格差 が認められました。無歯顎の割合およびその格差は イギリスの方が大きい傾向にありました。これは、 学歴というもう一つの社会的な要因を考慮してもな 低位 C や学歴が高いほど無歯顎者が少ない傾向にありまし た。 図2に、最高所得層を1とした時の、各所得階層 ごとの無歯顎であるリスクが何倍かを示しました。 年齢、性別、学歴の違いの影響を取り除いています。 日本、イギリスともに、所得が低いほど無歯顎の割 合が高い傾向でしたが、イギリスの方がその差は顕 著で、また明確な階段状の違いがみられました。日 本では最も所得が低い層でのみ、無歯顎であるリス クが有意に高くなっていました。 0 8020 推進財団の幅広い研究活動をご紹介します 2 歯周疾患と腎臓病との関係に関する疫学研究 ~ながはま 0 次予防コホート事業~ 京都大学大学院医学研究科 感覚運動系外科学講座 口腔外科学分野 浅井啓太、園部純也、山崎 亨、家森正志、山口昭彦、高橋 克、別所和久 京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻 健康情報学 中山健夫 今回の研究では、日本人における歯周病と腎臓病との関係について検討を行いました。その結果、 歯周疾患がある人の方が、腎機能が低下している可能性が示唆されました。歯周疾患が腎機能に影 響する可能性や、腎機能が低下している人は歯周疾患になりやすい可能性があります。それらを予 防するため口腔衛生状態を良好に保つことが重要だと考えます。 1.はじめに 域 歯 周 疾 患 指 数(CPI : Community Periodontal 歯周病をはじめとした口腔内の疾患が、糖尿病や Loss)を測定しました。 Index)、 ア タ ッ チ メ ン ト ロ ス(AL : Attachment 心疾患など全身疾患と関係していることが報告され その他の要因として、年齢、性別、喫煙歴、高血 ています。口腔内の衛生状態を改善することが健康 圧の有無(収縮期血圧 140mmHg 以上または、か を維持するためにどのように影響するか、また健康 つ拡張期血圧 90mmHg 以上)、糖尿病(空腹時血 状態が口腔内にどのように影響されているかが注目 糖 126mg/dl 以上、または随時血糖 200mg/dl 以 されています。 上、 ま た は HbA1c 6.1% 以 上〔NGSP 値 〕)、 メ 特に誤嚥性肺炎、糖尿病、心疾患、骨粗鬆症など C との関連について報告されていますが、腎臓病との タボリックシンドロームに関わる因子(BMI、腹囲、 HDL、LDL)、について調査を行いました。 8020推進財団研究調査報告 関連についてはあまり研究されていません。腎臓病 研究を開始する前に京都大学大学院医学研究科・ は、脳卒中や心筋梗塞など突然死のリスクを上昇さ 医学部および医学部附属病院医の倫理委員会、なが せることが報告されています 。また、透析治療 はま 0 次予防コホート事業審査会の承認を得ました。 など、腎臓病に関わる後遺症やそれに伴う医療費な 参加者には、研究の内容について説明し、同意を得 どが社会的な問題となっています。そこで、腎機能 た上で実施しました。 1) と歯周疾患との関わりについて大規模な調査を実施 しました。 2.対象および方法 3.結 果 1)解 析対象者の性別における構成人数、調査項目 における患者背景(表 1) われわれは 2007 年から 2010 年まで、滋賀県 本 研 究 に お け る 解 析 対 象 者 は 男 性 が 2,679 人 長浜市民 1 万人を対象とした「ながはま 0 次予防 (平均年齢:56.0 ± 13.6 歳)、女性(平均年齢: コホート事業」を実施しました。本研究の対象者は、 53.3 ± 13.1 歳 ) で し た。 腎 機 能 の 指 標 で あ る ながはま 0 次予防コホート事業参加者のうち、中年 eGFR は、ほとんどの人が正常範囲内でしたが、女 期(45 歳~ 64 歳)、前期高年期(65 歳~ 75 歳) 性にくらべると男性の方が低い値を示しました。つ までの男女を対象にしました。 まり、本研究の場合、女性と比較し男性の方がやや 腎 機 能 の 評 価 は、 糸 球 体 濾 過 量 GFR の 推 定 値 (eGFR)を用いました(図1) 。 腎機能が低下していることを意味します。 口腔内の状況では、歯周病の指標である CPI や 歯周疾患に関する評価は、喪失歯数の測定、歯周 CAL が高値の参加者の割合が男性の方が高く、また 病の検査として WHO の CPI プローブを用いた地 喪失歯数も多くみられました。その他、高血圧を有 130 8020 No.14 2015-1 8020 研究事業公募課題の概要報告 ● 糸球体濾過量(GFR): 男性 194 ×血清クレアチニン - 1.094 ×年齢 - 0.287 女性 eGFR( 男性 ) × 0.739 図1 血液検査のクレアチニンの値からおおよその糸球体濾過量(推算糸球体 濾過量 estimated GFR(eGFR))を計算します 表 1 参加者の背景 表 2 重回帰分析の結果(eGFR と 喪失歯数、CPI、CAL 男性(2,679) 56.0 ± 13.6 23.4 ± 3.0 1066.0(39.8%) 128.6 ± 15.8 79.9 ± 10.8 226.0(8.4%) 4.8 ± 0.6 827.0(30.9%) 1,184.0(44.2%) 57.7 ± 15.8 123.0 ± 31.3 76.4 ± 15.0 0.9 ± 0.2 4.3 ± 7.0 女性(5,442) 53.3 ± 13.1 21.8 ± 3.2 1354.0(24.9%) 119.4 ± 16.9 73.5 ± 10.7 151.0(2.8%) 4.6 ± 0.4 345.0(6.3%) 454.0(8.3%) 68.7 ± 16.2 123.8 ± 31.2 80.4 ± 15.9 0.6 ± 0.1 3.2 ± 5.6 Moderate CPI (CPI=3) 804(30.0%) 1,579(29.0%) Severe CPI (CPI=4) 735(27.4%) 861(15.8%) Moderate CAL (CAL=1) 576(21.5%) 1,176(21.6%) Severe CAL (CAL>=2) 488(18.2%) 545(10.0%) 年齢 Body mass Index 高血圧 収縮期血圧 拡張期血圧 糖尿病 HbA1c 現在の喫煙 過去の喫煙歴 HDL LDL eGFR Serum creatinine 喪失歯数 との関係) n 単回帰分析 95%CI (-4.4 to -3.8) β -3.0 重回帰解析 95%CI (-3.3 to -2.7) 喪失歯数 8,121 β -4.1 Community periodontal Index 7,923 -3.0 (-3.4 to -2.5) -1.9 (-2.3 to -1.4) Clinical attachment loss 7,923 -3.9 (-4.4 to -3.4) -3.0 (-3.5 to -2.6) 認めました。また、CPI や CAL についても同様に有 意な負の相関を認めました。 4.考察・まとめ 今回の調査では、歯周疾患が腎機能の状態と関連 している可能性が考えられました。腎機能障害に至 る主な原因として腎臓病(糸球体腎炎や腎硬化症な ど)、糖尿病、高血圧症の 3 つがあります。このうち、 特に糖尿病は、歯周疾患と深く関連していることが が糖尿病などを介して腎機能を低下させる可能性が 喫煙率などについても男性の方が高い割合を示しま 考えられます。また、逆に腎臓病患者では、唾液分 した。 泌抑制や水分摂取制限などによる口腔乾燥の影響も あり、歯垢や歯石の沈着が著しいため3、4)、歯周疾患 2)歯周疾患と eGFR との関係 1(表 2) 歯周疾患と eGFR の関係については、単回帰分析 の結果、喪失歯数と eGFR は有意な負の相関を認め が進行しやすい可能性があります。 今後はさらに追跡調査を行い、腎臓病と歯周疾患 の関連について検討していく予定です。 ました。CPI や CAL についても同様に有意な負の 相関を認めました。これは、喪失歯数が多いほど、 また歯周病の状態が悪い人ほど腎機能が低下してい ることを示します。 また、性別および喫煙歴、高血圧の有無(収縮 期 血 圧 140mmHg 以 上 ま た は、 か つ 拡 張 期 血 圧 90mmHg 以 上 )、 糖 尿 病 の 有 無( 空 腹 時 血 糖 126mg/dl 以上、または随時血糖 200mg/dl 以上、 または HbA1c 6.5% 以上〔JDS 値〕)、メタボリッ クシンドロームに関わる因子(BMI、腹囲、HDL、 LDL)を調整した重回帰解析を行いました。 多変量 解析において喪失歯数と eGFR は有意な負の相関を 文献 1)Yeun, J.Y. et al.: C-Reactive protein predicts all-cause and cardiovascular mortality in hemodialysis patients. Am. J. Kidney Dis., 35(3): 469-476, 2000. 2)Khader, Y.S. et al.: Periodontal status of diabetics compared with nondiabetics: a meta-analysis. J. Diabetes Complications, 20(1): 59-68, 2006. 3)Buhlin, K. et al.: Oral health and pro-inflammatory status in end-stage renal disease patients. Oral Health Prev. Dent., 5(3): 235-244, 2007. 4)Borawski, J. et al.: The periodontal status of pre-dialysis chronic kidney disease and maintenance dialysis patients. Nephrol. Dial.Transplant., 22(2): 457-464, 2007. 8020 No.14 2015-1 131 8020推進財団研究調査報告 する参加者の割合、糖尿病を有する参加者の割合、 C 明らかとなっています2)。そのため、歯周疾患の増悪 8020 推進財団の幅広い研究活動をご紹介します 3 口腔のケアは脳賦活に影響を及ぼすのか? 藤田保健衛生大学医学部 七栗サナトリウム歯科 藤井 航 藤田保健衛生大学 七栗サナトリウム歯科 永田千里、坂口貴代美 藤田保健衛生大学病院 歯科・口腔外科 渡邉理沙 口腔のケア中における脳血流を計測したところ、口腔のケアが脳血流の増加と関係している可能 性が明らかになりました。口腔のケアが肺炎予防や口腔機能の維持だけでなく、意識状態や認知機 能の改善など、総合的な脳に対するリハビリテーションとしての役割も果たすことができると考え られました。 脳 血 流 の 測 定 は、 近 赤 外 光 イ メ ー ジ ン グ 装 置 1.はじめに (SMARTNIRS:島津製作所社製、京都、日本)を 口腔のケアや口腔機能向上トレーニングは肺炎の 予防 、認知機能の向上 、栄養状態の改善 1、2) 3) 4) に 寄与することは報告されています。口腔内への刺激 用いて行いました。プローブを前頭前野の位置に合 わせて装着し、脳血流を酸素化ヘモグロビン(oxyHb) の変動を用いて測定しました(図 1)。 や口腔内への 脳血流測定中の口腔のケアは、同一の歯科衛生士 歯ブラシによる刺激 6)により脳血流が増加すること により、通常行っている口腔のケアと同様に、歯ブ が健常人で報告されています。 ラシを用いた歯面の清掃、歯間部は歯間ブラシによ に対する脳活性についても味覚刺激 5) C しかし、実際の患者において、口腔のケアが脳 る清掃、舌ブラシによる舌の清掃、スポンジブラシ 賦活に対して寄与しているかの報告はなく明らか による口蓋・頬粘膜の清掃が順に約 10 分間行われ ではありません。また、従来の口腔内へのさまざ ました(図 2)。 まな刺激における脳活性の測定は fMRI や PET な なお、本研究は当院倫理委員会にて審査され承認 8020推進財団研究調査報告 どが使用されていますが、装置が大型であること、 を受けており(七栗倫理第 108 号)、対象者にはご 測定姿勢が仰向けであることから、実際の口腔の 本人またはご家族の同意を得た上で研究を実施しま ケアの場面での測定は困難であると考えられます。 した。 今 回、 使 用 す る 近 赤 外 線 分 光 法(Near-Infrared Spectroscopy: NIRS)は装置が小さく、ベッドサ イドや歯科ユニット上などでの測定が可能であり、 3.結 果 口腔のケア中の前頭前野の脳血流は、健常群、患 従来では脳血流の測定ができなかった日常生活場面 者群ともに対象の全員が、口腔のケア時と安静時を や口腔のケア施行中における脳血流の変化がリアル 比較して、oxyHb が増加を示したチャンネルを 1 タイムにおいて測定可能です。 つ以上認めました(図 3)。oxyHb が増加を示した 今回、NIRS を使用し、口腔のケア中の前頭前野 チャンネルが過半数以上を示したのは、健常群が における脳血流測定を行い、口腔のケアが脳に対し 50.0%、患者群が 47.1% でした。両群間に有意差 てどのような影響を与えているのかを検証したので は認めませんでした(図 4)。 報告します。 2.対象と方法 対象は健常ボランティア 4 名(健常群、平均年齢 4.考察とまとめ ◆脳血流の変動について 健常群、患者群ともに、口腔のケア中の前頭前野 36.0 歳)と、口腔のケア目的に当科を受診した患 における脳血流の増加が認められました。これは、 者 17 名(患者群、平均年齢 72.8 歳)です。 健常人による味覚刺激や口腔内への歯ブラシによる 132 8020 No.14 2015-1 8020 研究事業公募課題の概要報告 ● 図 2 口腔のケア中の oxyHb の変化(患者群の 1 例) 図 1 実際の口腔のケア中における脳血流測定場面 上昇あり (患者群の 1 例) 上昇なし 53% 47% 患者群 50% 50% 健常群 ns 図4 健 常群と患者群における、oxyHb が口腔のケア 中に上昇を認めたチャンネル数が、過半数を超え た人数の割合。健常群と患者群においてその割合 に大きな違いは認めませんでした 法の検討や、新しい口腔のケア方法の開発が期待で 図 3 口腔のケア中に上昇を認めたチャンネル いった従来の fMRI や NIRS での報告と同様の結果 を示しました。遷延性意識障害患者においては、見 ためではわからなくても健常人と同様に脳は賦活し ていることが fMRI で報告されています 7)。音楽運 動療法によっても意識状態の改善がみられたことが 報告されています 8)。また、前頭前野領域は他の脳 部位との神経連絡があり、話をするといった言語機 能や、物事を覚える記憶、計算などの学習、さらに 咀嚼運動など、幅広い分野に深く関わっていること が明らかになっています 9)。 今回の口腔のケア中に前頭前野における脳血流が 増加するといった結果から、口腔のケアが肺炎予防 や、口腔機能の維持だけでなく、意識状態や認知機 能の改善など総合的な脳に対するリハビリテーショ ンとしての役割も果たすことができると考えられま した。さらに、口腔のケア手技や刺激部位のより詳 細な検討を行うことにより、効果的な口腔のケア方 8020 No.14 2015-1 133 8020推進財団研究調査報告 刺激、部分床義歯の装着により脳血流が増加すると 文献 1)Yoneyama,T., Yoshida,M., Matsui,T. et al.: Oral care and Pheumonia. Lancet, 354:515, 1999. 2)Bassim,C.W., Gibson,G., Ward,T. et al.: Modification of the risk of mortality from pneumonia with oral hygiene care. J.Am.Geriatr. Soc., 56: 1601-1607, 2008. 3)Kikutani,T., Yoneyama,T., Nishiwaki,K. et al.: Effect of oral care on cognitive function in patients with dementia. Geriatr. Gerontol. Int., 10: 327-328, 2010. 4)Kikutani,T., Enomoto,R., Tamura,F. et al.: Effects of oral functional training for nutritional improvement in Japanese older people requiring long-term care. Gerodontology, 23: 93-98, 2006. 5)Masako,O., Haruka,D., Lester,C. et al.: Activation in ventro-lateral prefrontal cortex during the act of tasting: An fNIRS study. Neuroscience Letters, 451: 129–133, 2009. 6)Shimazaki,T., Otsuka,T., Akimoto,S. et al.: Comparison of brain activation via tooth stimulation. J.Dent.Res., 91: 759-763, 2012. 7)Owen,A.M., Coleman,M.R.: Using neuroimaging to detect awareness in disorders of consciousness. Funct. Neurol., 23: 189-194, 2008. 8)Noda,R., Maeda,Y., Yoshino,A.: Therapeutic time window for musicokinetic therapy in a persistent vegetative state after severe brain damage. Brain Inj., 18: 509-515, 2004. 9)Grafman,J.: Handbook of Neuropsychology, 2nd ed. Amsterdum: Elsevier, 2002. C (○、患者群の 1 例) きると考えられました。 8020 推進財団の幅広い研究活動をご紹介します 4 8020 達成のための条件は? ~ 80 歳の地域住民の調査より~ 大阪大学大学院歯学研究科 顎口腔機能再建学講座 有床義歯補綴学・高齢者歯科学分野 池邉一典、三原佑介、松田謙一、多田紗弥夏、前田芳信 どのような人が、高齢期に歯を維持しているのかを、80 歳の地域住民 964 名から分析しました。 その結果、8020 の達成者は、都市部の住人、教育年数の長い人、非喫煙者、砂糖の摂取量が少な い人、唾液分泌が多い人に多くみられました。本研究結果を、若年期から生涯を通じてのオーラル ヘルスプロモ-ションに活用していただければと考えています(本研究は、大阪大学大学院歯学研 究科倫理審査委員会(H22-E9)の承認を得て行いました)。 1.はじめに C 加齢に伴って、心身の健康状態は一般に低下しま すが、その個人差がより大きくなることもよく知ら れています。平成 23 年度歯科疾患実態調査によれ ば、高齢者の残存歯数は年々増加し、8020 達成者 (80 歳で 20 本以上の歯を有する者)の割合は、平 成 17 年の 24%から、平成 23 年では、38%に著 しく増加しています。その一方で、80 歳の人の中 では、無歯顎者が約 25%を占め、歯数に関しては、 他の身体状況以上に、個人差が非常に大きいことが 明らかです。しかし、どのような理由によって、高 齢者の残存歯数にこのような極端な差が生じるのか は、いまだ明らかにされていません。 本研究においては、どのような条件の人が、多数 の歯を失ったのかを、80 歳の地域住民から分析し、 8020 達成のためのリスクファクターを検討しまし た。 8020推進財団研究調査報告 2.方 法 1)対象者 本研究の対象者は、兵庫県伊丹市、東京都板橋区 (以上都市部) 、ならびに兵庫県朝来市、東京都西多 摩 郡( 以 上 非 都 市 部 ) の、80 歳(79 ~ 81 歳 ) の地域住民です。4 地区それぞれの特定の地域より、 該当者を住民基本台帳から抽出し、全員に参加を依 頼する形式での調査を行いました。調査地域につい ては、日本の東西に長い地理的特徴(関西 / 関東) および産業構成(都市部 / 非都市部)を加味し、地 域特性が多様になるように、4 か所を選定しました。 調査は、歯学(大阪大学歯学研究科)、医学(大阪 大学医学系研究科、慶応大学医学部)、心理学(大阪 大学人間科学研究科、東京都健康長寿医療センター 研究所) 、栄養疫学(東京大学医学系研究科)の研 究者が、同一被験者に対して、同一日に調査会場で 行いました。最終的な参加者は、999 名で、その うち歯科のデータの得られた 964 名を分析対象と しました。 2)調査項目 これらの対象者に対して、以下の項目について、 調査を行いました。 ①口腔の状態 134 8020 No.14 2015-1 歯科医師による口腔内の検診により、歯の数 や部位、義歯の使用、歯周ポケット、咬合力、 唾液分泌速度1)。 ②社会経済的状況 住居地域、経済状況、教育歴、小学生時の成績。 ③性格特性 神経症傾向、外向性傾向、開放性傾向、親密 2) 。 性傾向、誠実性傾向(NEO-FFI) ④生活習慣、食品摂取 喫 煙・ 飲 酒 歴。 自 記 式 質 問 票 (Brief diet history questionnaire、BDHQ) 3) による、食 品・栄養摂取状況。 3)統計学的分析 対象者を無歯顎、残存歯数が 1 ~ 19 本、20 本 以上の3グループに分け、上記の各項目について各 群の人数比率や平均値を比較検討しました。統計学 的有意水準は 5% としました。 3.結 果 1)8020 達成者の割合 分析を行った被験者全 964 名のうち、残存歯が 20 本以上の者は、431 名(44.7%)、1 ~ 19 本 の者は 389 名(40.4%)、0 本の無歯顎者は 144 名(14.9%)でした。 2)歯数と他の因子との関係 ①社会経済的要因 8020 達成者は、女性に比べ男性に多く、出 身県(大都市圏か否か)とは有意な関連がなく、 現在の居住地域では、都市部で多かったが、有 意差はみられませんでした(表1)。現在の経済 状態については、8020 達成者は、教育年数が 有意に長く、また、「ゆとりがある人」に多く、 勤続年数が長い傾向がみられましたが(表2)、 有意差はありませんでした。 ②生活習慣 現在喫煙している人は、8020 達成率が有意 に低くなりました。一方で、過去の喫煙歴や飲 酒については、有意な関連はみられませんでし た(表1)。 ③性格傾向 開放的(新しい経験や知識を追い求める傾向) 性格の人は、8020 達成者が多くなりましたが、 8020 研究事業公募課題の概要報告 ● 2 表1 社会経済的要因、生活習慣と歯数との関係(χ 検定) 項目 人数 女性 男性 大都市圏 1 出身県 それ以外 非都市部 2 居住地 都市部 3 ゆとりなし 現在の経済状況 普通 ゆとりあり なし 現在の喫煙 あり なし 過去の喫煙 あり なし 現在の飲酒 あり なし 過去の飲酒 あり 性別 510 454 682 280 380 584 185 548 229 470 30 175 283 306 185 85 356 0本 144 15.0% 14.7% 15.2% 16.1% 11.4% 17.4% 13.4% 17.3% 15.7% 11.4% 10.2% 33.3% 8.0% 10.6% 13.1% 8.6% 9.4% 11.2% 残存歯数 1-19 本 20 本以上 389 431 40.2% 44.8% 44.5% 40.8% 35.7% 49.1% 39.4% 44.4% 42.9% 45.7% 42.1% 40.5% 39.2% 47.4% 41.1% 41.6% 41.6% 42.7% 36.2% 52.4% 40.6% 49.1% 33.3% 33.3% 40.0% 52.0% 41.7% 47.7% 41.2% 45.8% 39.5% 51.9% 37.6% 52.9% 42.4% 46.3% 項目 0.015 0.164 0.067 0.093 0.001 0.537 0.227 0.545 表2 性格傾向、社会経済的要因と歯数との関係(一元配置分散分析) 神経症傾向(点) 外交性傾向(点) 開放性傾向(点) 調和性傾向(点) 誠実性傾向(点) 教育年数(年) 最長職の勤続年数(年) 0本 7.7 12.8 12.2 14.2 13.9 10.6 30.3 残存歯数 1-19 本 20 本以上 7.8 7.6 13.1 13.2 12.8 13.2 14.1 14.1 13.4 13.5 11.1 11.7 31.0 32.9 人数 P値 出身県 1:東京都、神奈川県、大阪府、京都府、兵庫県、愛知県 居住地 2:朝来市、西多摩郡 3:伊丹市、板橋区 表 3 現在の全身疾患と歯数との関係 P値 0.695 0.470 0.011 0.957 0.420 0.002 0.080 これまでの海外の文献によれば、残存歯数は、社 会階級や教育歴、経済状態、居住地域に影響を受け ることが多いとされてきました4)。今回の結果から も、教育年数は、8020 達成率と有意な関連がみら れました。 今回データは示していませんが、高血圧症、糖尿 病、高脂血症、高尿酸血症、腎臓病は、教育年数と いずれも有意な関連はみられませんでした。した 高脂血症 腎臓病 心臓病既往 脳卒中既往 悪性腫瘍既往 骨粗鬆症 523 423 105 805 333 590 29 871 160 734 50 840 135 764 180 724 20 本以上 431 44.8% 44.7% 44.7% 41.9% 44.7% 42.9% 45.3% 48.3% 44.4% 38.1% 46.3% 38.0% 45.4% 50.4% 44.4% 44.4% 44.8% P値 0.503 0.743 0.774 0.773 0.0497 0.188 0.384 0.749 がって、歯科疾患は、他の全身疾患に比べて、教育 歴に影響されやすい疾患であることが示唆されまし た。8020 達成率と現在の経済状況との間に、有意 な関連がみられなかったのは、日本の歯科における 国民皆保険制度の成果であるかもしれません。また、 現在の居住地域による差は、地域による歯科医療環 境の格差を示唆している可能性があります。 喫 煙 に つ い て は、 現 在 も 喫 煙 し て い る 人 は、 8020 達成率が有意に低かったが、過去に喫煙し ていた人、言い換えれば、禁煙した人は、喫煙経験 がない人と有意な差がみられませんでした。何年喫 煙し、何歳から禁煙したかも興味深いところです。 8020 達成者は、砂糖の摂取量が少なく、唾液分泌 が多かったのは、う蝕や歯周病の原因を考えると、 合理的な結果であると言えます。 5.結 論 8020 達成者は、教育年数の長い人、学習意欲の 旺盛な人、非喫煙者、砂糖摂取の少ない人、唾液分 泌の多い人に、より多くみられました。本研究結果 を、国民の歯科保健意識の向上、若年期から高齢期 まで、生涯を通じてのオーラルヘルスプロモーショ ンに活用していただければと考えています。 文献 1)Ikebe,K., Sajima,H., Kobayashi,S., Hata,K., Morii,K., Nokubi,T., et al.: Association of salivary flow rate with oral function in a sample of community-dwelling older adults in Japan. Oral Surg .Oral Med. Oral Pathol. Oral Radiol. Endod., 94:184-190, 2002. 2)Iwasa,H., Masui,Y., Gondo,Y., Inagaki,H., Kawaai,C., Suzuki,T.: Personality and all-cause mortality among older adults dwelling in a Japanese community: a fiveyear population-based prospective cohort study. Am. J. Geriatr. Psychiatry., 16 : 399-405, 2008. 3)Kobayashi,S., Honda,S., Murakami,K., Sasaki,S., Okubo,H., Hirota, N. et al.: Both comprehensive and brief self-administered diet history questionnaires satisfactorily rank nutrient intakes in Japanese adults. J. Epidemiol., 22:151-159, 2012. 4)Thorstensson,H., Johansson,B.: Why do some people lose teeth across their lifespan whereas others retain a functional dentition into very old age? Gerodontology, 27:19-25, 2010. 8020 No.14 2015-1 135 8020推進財団研究調査報告 4.考 察 糖尿病 あり なし あり なし あり なし あり なし あり なし あり なし あり なし あり なし 歯数 1-19 本 389 40.2% 41.5% 39.0% 41.0% 40.7% 42.0% 39.8% 41.4% 40.5% 48.8% 38.3% 38.0% 40.0% 34.8% 40.7% 42.2% 39.9% C 他の性格傾向については、8020 達成率と有意 な関連はみられませんでした(表2) 。 ④刺激時唾液分泌速度 8020 達成者は、その他の者に比べて、唾液 分泌速度が大きかった。 ⑤全身疾患 心臓病の既往のある人は、ない人に比べて、 8020 達成者が少なく、無歯顎者も多くなりま した。他の全身疾患については、8020 達成率 と有意な関連はみられませんでした(表3)。 ⑥食品摂取 8020 達成者は、砂糖の摂取量が少なかった。 また、8020 達成者は、魚介類の摂取量が、残 存歯1~ 19 本の者に比べて高かったが、無歯 顎者とは有意な差はみられませんでした。その 他の食品については、歯数と有意な関連はみら れませんでした。 高血圧 0本 144 15.0% 13.8% 16.3% 17.1% 14.5% 15.0% 14.9% 10.3% 15.0% 13.1% 15.4% 24.0% 14.6% 14.8% 14.9% 13.3% 15.3% 8020 推進財団の幅広い研究活動をご紹介します 5 市町村行政が行う歯周病健診の受診率を うまく上げる方法をご存知ありませんか? 静岡県歯科医師会 会 長 柳川忠廣 理 事 太田義隆 顧 問 飯嶋 理 静岡県東部健康福祉センター 技 監 中村宗達 多くの市町村は、歯周病健診の受診率が低いという悩みをかかえています。受診率を向上させる 妙法はないものか? と工夫を凝らし事業を実施してみましたが、得られた結果は、住民に対して、 歯周病健診の受診を促す「それなりの動機を持たせること」が非常に大切であるという(何の変哲 もない?しかしまっとうな)結論となりました。 1.はじめに <アイデア 3 >夜の時間や休日にも健診を行う: 平成 7 年に、当時の老人保健事業の中に歯周疾患 たための対策です。 検診が加えられましたが、当初より受診率は低迷し 65 歳でも、まだ仕事を持っている人も多いと考え <アイデア 4 >申し込み方法を簡略化する: ました。以来、今日に至るまで、この状況が続いて はじめに行った事業では、まず自記式アンケート います。私たち静岡県でも同じで、市町村行政は受 に答えて送ってもらうなど、健診の申し込みをする 診率の低さに悩んできています。 のに随分手間がかかったための改善策です。 そこで、どうしたら受診率を上げることができる のか、いくつかのアイデアを作り、8020 推進財団 C や 3 つの市の協力を得ることによりそれらを実行し てみました。 8020推進財団研究調査報告 2.事業内容 これらのアイデアを、図 1 の組み合わせにより事 業化し、S 市、F 市、A 市において実施しました。 3.結 果 以下、図 1 中の①~⑧についてです。 市町村事業ですから、基本型は「集団健診」とし、 対象年齢は定年を迎え健診に参加しやすいだろうと 考えられる「65 歳」としました。 ①②のケースについて: 今回の調査をするに至ったきっかけは、既存の歯 周疾患健診が歯科医師による診査であることに疑問 <アイデア 1 >自記式アンケートによるスクリーニ ング型健診にする: 口の中を見られたくないという要望や、はじめか を感じ、スクリーニング型の健診を試してみたかっ たのです。ということで自記式アンケートによるス クリーニング型健診をやってみましたが、人は集ま ら歯科医師の診査ではなく、まずはスクリーニング りませんでした。「健診で口の中を見られたくない」 することが本筋であると考えたための対策です。 という要望も耳にはしていましたが、口の中を見な <アイ デア 2-1 >市販価格 2,000 円相当の歯科保 い健診に変えても、受診率は上がりませんでした。 健グッズ ( 歯ブラシ、歯磨剤、歯間ブラシ、マ ウスリンス ) を無料プレゼントする。そして、 スクリーニング型健診で人が集まらないことを補 2,000 円を前面に出し PR する: うために、無料プレゼントを企画しました。市販価 健診の魅力を高めるための対策です。 格 2,000 円相当の歯科保健グッズを提供するとの <アイデア 2-2 >同上。ただし、金額は強調しない: アイデア 2-1 と同じながら、行政事業なので露骨 な表現は慎むこととなり、やむなくこのようになり ました。 136 ③④のケースについて: 8020 No.14 2015-1 PR は、明確な受診率アップにつながりました。 ⑤⑥のケースについて: ⑤⑥⑦⑧は③④の後で実施しましたが、当初は③ ④と同様の PR を予定していましたが、行政内部で 8020 研究事業公募課題の概要報告 ● 24.5 受 ・集団健診 17.5 14.5 15.0 14.2 診 基本型 (%) 20 10 ・対象年齢 65 歳 8.1 率 4.2 1.7 0 付 加 し た 対 策 <アイデア 1> アンケートによるスクリーニング型健診 S 市 F 市 S 市 F 市 S 市 F 市 S 市 A 市 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ○ ○ ○ ○ ○ ○ <アイデア 2-2> プレゼントグッズ提供 金額強調せず ○ ○ ○ ○ <アイデア 3> 夜の時間や休日での実施 ○ ○ ○ ○ <アイデア 2-1> プレゼントグッズ提供 2,000 円強調 ○ ○ ○ ○ <アイデア 4> 申し込み方法の簡略化 図 1 付加した対策による受診率のちがい ゼントでは「無料で物がもらえる」 「自分が得をする」 額を示すというわかりやすい表現にはなりませんで という動機が働きました。そして、受診行動が起こ した。また、夜の時間や休日にも健診を行ってみま りました。その他の工夫については、いずれも動機 したが、利用者は少なかったです。 を作っていません。すなわち、普遍的に受診率を上 ⑦⑧のケースについて: げるためには、まず、何らかの動機付けが必要とい ので、簡単に申し込めるようにしてみましたが、反 応はいまいちでした。 うことです。 しかしながら、無料プレゼントは効果はあります が、常にこのような事業費を用意することは、市町 村行政にとってそう簡単なことではありません。恒 どの事業ともに、スクリーニングに用いるアン ケート結果を歯科衛生士が説明し、問題点について 指導しましたが、これは大好評で大変喜ばれました。 4.まとめ 市町村行政が行う歯周病健診の受診率を向上させ 常的な動機づくりの方法としては、やや無理があり ます。 結局、原点に戻って、本人の歯周病健診を受ける 動機になり得るものとは何かを考えると、それは、 自分にとって歯周病健診が大切である、得である、 受けた方がよいという理解と気持ちを持たせること、 るために比較的簡単に取り組める工夫を実行してみ のようです。その点、歯周病と糖尿病との関係 ( 歯 ました。その結果、歯科保健グッズの無料プレゼン 周病があると糖尿病を増悪させる ) に代表されるよ ト以外は、大きな影響を認めることはできませんで うに、歯・口の健康と全身の健康とのつながり、歯・ した。また、無料プレゼントの影響にしても、せい 口の健康の大切さが近年次々と科学的に解明されて ぜい受診率を 1 桁から 2 桁に上げる程度と思われま きていますが、このことは動機付けにとっては心強 す。 い追い風と言えるでしょう。 「何故、受診率を上げられないか?」の最大の答 このように歯科保健の啓発が歯周病健診受診の動 えは、 「住民に受診するための動機が欠落している 機付けとなるわけですので、ここに地域歯科保健活 ため」だと思われます。住民に行動(受診行動)を 動の重要性も大いに強調されていいのではないで 起こさせるためには動機が必要なのです。無料プレ しょうか。 8020 No.14 2015-1 137 8020推進財団研究調査報告 申し込み手続きが面倒で受診しない人もいました C 自粛の動きがでたため、2,000 円という具体的な金 8020 推進財団の幅広い研究活動をご紹介します 6 がん検診の受診状況から探る 「おとなの歯科検診」受診率向上策 江東区健康部 椎名惠子 国立保健医療科学院 安藤雄一 健診等の施策の充実には、事業を利用している住民の特性を知ることが必要です。住民基本台帳 情報と歯周疾患検診等の各種健診データをリンケージして検討したところ、歯周疾患検診受診者は がん検診受診率も高いことがわかりました。歯周疾患検診の受診率の改善には、女性に対するアピー ルとともに、健診事業全体の受診率向上策が有効だと思われます。 1.はじめに 江東区は、健康増進法に基づく歯周疾患検診を平 成 17 年度に開始後、対象年齢を 20 歳から 70 歳ま での節目年齢に拡大し、事業名「おとなの歯科検診」 として独自に実施しています。事業の拡充につれ受 診者数は増加していますが、受診率は平成 19 年度 の 12.9%をピークに減少傾向にあります(表1)。 一方、国の指針に基づくがん検診 1)の受診率につい ては、国の目標を下回っていることから改善が課題 となっています。健・検診受診率の改善には、受診 者の状況をより科学的に評価する必要があります。 そこで今回、住民基本台帳情報に、がん検診デー タとおとなの歯科検診データをリンケージしたデー タを用いて受診の状況を評価するとともに、相互の 関連性を検討しました。 C 2.分析方法 8020推進財団研究調査報告 1)分析に用いたデータ 本分析に用いたデータは、平成 24 年 3 月現在に 江東区住民基本台帳データを基に、平成 24 年度に 行われた各種検診・健診データをリンケージしたも ので、住民基本台帳の基本的な情報に各種検診・健 診の受診記録などが加わった個票データです。 2)分析方法 おとなの歯科検診は胃・肺・大腸・子宮頸・乳の 5 種のがん検診の受診状況について、各検診の対象 年齢に絞り込んだ受診率を性・年齢階級別に算出し ました。おとなの歯科検診の対象年齢(20 歳から 70 歳の節目年齢)について、5 種のがん検診の受 診率を、おとなの歯科検診受診有無別に算出し、性・ 年齢階級の層別に比較しました。 なお、平成 25 年度第 3 回江東区個人情報保護審 議会において、データの利用目的の説明を行い使 用の了承を得ました。また、分析には統計ソフト Stata132,3) を用いました。 3.結 果 1)おとなの歯科検診の受診状況(図1) 受 診 率 は 8.55 % で、 男 性 5.96 %、 女 性 11.24%と男女差が大きい結果でした。 138 8020 No.14 2015-1 年 齢 別 の 特 徴 と し て は、20 歳 か ら 40 歳 で は、 年齢とともに受診率が上昇しますが、45 歳で落ち 込み、そして 45 歳から 70 歳で、再び年齢ととも に受診率が高まる結果でした。 2)各 種がん検診とおとなの歯科検診の受診状況の 比較(図2) が ん 検 診 受 診 率 は、 国 お よ び 東 京 都 の 目 標 値 50%(ただし、胃・肺がん検診については当面の 目標値は 40%)を下回っていました。 男女共通のがん検診である胃・肺・大腸がん検診 の受診率の比較では、いずれも女性の方が男性より も高い結果でした。 がん検診の年齢階級別の比較では、特に大腸がん 検診において、高齢になるにつれ受診率が高くなっ ていました。 お と な の 歯 科 検 診 と が ん 検 診 の 比 較 で は、 受 診 率 は、 肺 が ん 検 診(2.05 %)、 胃 が ん 検 診 (2.18%)、おとなの歯科検診(8.55%)、乳がん 検診(14.62%)、大腸がん検診(15.67%)、子 宮頸がん検診 (16.28% ) の順番で、おとなの歯科 検診は、胃・肺がん検診より高く、大腸・子宮頸・ 乳がん検診より低い結果でした。 3)お となの歯科検診受診の有無によるがん検診受 診率の違い(図3) おとなの歯科検診の受診者は、未受診者に比べて 5 種すべてのがん検診受診率が高い結果でした。 また、おとなの歯科検診の受診者の方が未受診者 に比較して、2.89 から 5.24 倍がん検診の受診率 が高い結果でした。 4.受診率向上は「女性へのアプローチ」、 「健診事業全体のアピール」で 本区における歯周疾患検診の受診状況(おとなの 歯科検診のうち、該当する年齢のみで算出)につい ては、平成 24 年地域保健・健康増進事業報告 4) の 歯周疾患検診の受診者数の対人口比は東京 23 区内 では上位 3 分の 1 に位置しています。都の歯周疾患 検診受診者数の対人口比は全国都道府県の第 3 位と 高いので、本区の歯周疾患検診の受診状況は全国的 8020 研究事業公募課題の概要報告 ● 表1 歯周疾患検診の沿革と実績 ◇沿革 ◇実績 平成17年度 事業開始 対象年齢 40・50・60・70歳(4区分) 年 度 平成20年度 年齢対象拡大 30・35・45・55・60追加(9区分)、実施期間の延長 受診者数 平成23年度 年齢対象拡大 20・25追加(11区分)、実施期間の延長 受 診 率 平成24年度 名称変更 歯周疾患検診⇒「おとなの歯科検診」、実施期間の延長 16% 15% 6% 4% 2% 25歳 6,835 9.1% 9.2% 35% 女 30% 25% 20% 15% 5% 5% 40-44 45-49 50-54 55-59 60-64 65-69 70-74 0% 年齢階級 図1 おとなの歯科検診の受診状況 20歳 6,715 10% 年齢階級 70% 6,716 10% 0% 20-24 25-29 30-34 35-39 40-44 45-49 50-54 55-59 60-64 65-69 70-74 6,801 受診率 受診率 20% 8% 7,170 おとなの歯科検診 胃がん検診 肺がん検診 大腸がん検診 乳がん検診 子宮頸がん検診 25% 10% 7,058 12.9% 11.7% 11.0% 11.2% 10.0% 男 30% 12% 0% 2,902 35% 男 女 14% 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 40-44 45-49 50-54 55-59 60-64 65-69 70-74 年齢階級 図2 各種がん検診とおとなの歯科検診の受診状況の比較 30歳 35歳 40歳 45歳 50歳 55歳 60歳 65歳 70歳 60% 50% 40% 30% 20% 10% C 子宮頸がん検診 図3 おとなの歯科検診受診の有無によるがん検診受診率の違い にみても高い状況であり、特に、受診率をリードし ているのは女性の受診率の高さでした。 がん検診の受診率も、男女共通の健診である胃・ 肺・大腸がんいずれも女性の方が高い結果でした。 がん検診は、歯周疾患検診同様に健康増進法に基づ き、区市町村の努力義務で実施するものです。職域 でも、職員の健康管理の一環もしくは福利厚生施策 として実施する場合があり、がん検診の受診状況と 健康保険の種別の関連等については、さらに検討す る必要があります。 おとなの歯科検診の受診の有無と、がん検診の受 診の状況には関連性があり、歯科検診を受診する区 民は、がん検診も受診していることが今回の検討で 初めて明らかになりました。おとなの歯科検診は、 大腸・子宮頸・乳がん検診の受診率より低いことか ら、これらのがん検診の受診者に、歯科検診の受診 勧奨が有効と考えられます。 以上から、おとなの歯科検診の受診者増には、 「女 性へのアプローチ」、「各種健診事業全体のアピール」 が重要と思われます。例えば、「8 ~ 9 割と驚異的に 高い受診率を示す母子保健事業利用者である母親に 対し、家族への波及効果もねらって事業のアピール をする」、「がん検診・特定健診・おとなの歯科検診 をひとつの封筒で送る」、「医師会が歯科検診を歯科 医師会ががん検診を相互に勧奨する」等、さまざま な工夫が考えられます。 今後は、さらに分析を進めるとともに、研究の成 果を生かし、事業を充実させていく予定です。 文献 1)厚 生 労 働 省 が ん 検 診 に つ い て:http://www.mhlw.go.jp/ bunya/kenkou/dl/gan_kenshin01.pdf 2)Stata13: http://www.stata.com/(Stata 社ウェブサイト) 3)Stata13: http://www.lightstone.co.jp/stata ( ラ イ ト ストーン社ウェブサイト) 4)e-Stat( 政 府 統 計 の 総 合 窓 口 ): 平 成 24 年 地 域 保 健・ 健 康 増 進 事 業 報 告 http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/ GL08020103.do?_toGL08020103_&listID=000001 117912&requestSender=dsearch 8020 No.14 2015-1 139 8020推進財団研究調査報告 おとな歯科︵+︶ 乳がん検診 おとな歯科︵−︶ おとな歯科︵+︶ 大腸がん検診 おとな歯科︵−︶ おとな歯科︵+︶ 肺がん検診 おとな歯科︵−︶ おとな歯科︵+︶ 胃がん検診 おとな歯科︵−︶ おとな歯科︵+︶ おとな歯科︵−︶ 0% ●トピックス トピックス 第65回「保健文化賞」歯科分野から受賞 「保健文化賞」は 戦後の衛生環境が悪化していた中、わが国の保健衛生の向上に取り組む人々に 感謝と敬意を捧げる賞として 1950 年に創設されました。第一生命保険株式会社が主催、厚生労働 省ほかの後援を得て毎年実施されています。保健医療,生活環境,高齢者および障がい者保健福祉, 少子化対策等の多岐分野において著名な実績を残した団体および個人を表彰するものです。 第 65 回「保健文化賞」では、歯科の分野から1個人が受賞されました。受賞への感想をお寄せ いただきました。 ◇塩見 聰 氏 歯科医師 <兵庫県> ● 塩見 聰 氏 歯科医師 < 受賞業績 > 姫路市歯科医師会の要職を歴任し、障がい者・休日歯科診療の充実のため、口腔保健センターの改修を実現させ、より安 全で高度な医療を提供しました。また、地域住民の歯科疾患の予防と治療に努め、地域歯科医療の充実と口腔保健の啓発に 貢献しています。 第 65 回保健文化賞を受賞して 姫路市歯科医師会 塩見 聰 歯科医師だった父の背中を見ながら、歯科医師を 志し、歯科医師となり、開業し、歯科医療に従事。 そして、父の薫陶を受けて歯科医師会の役員を拝命 し、当然のこととして地域歯科保健充実発展と地域 住民のデンタルIQ向上に努めてきた自分に、なぜ かこのたびの栄誉を頂きました。青天の霹靂との思 いはありましたが、この栄誉は、姫路市歯科医師会 の先達や諸先輩、そして朋輩や後輩の先生方の地域 姫路市歯科医師会口腔保健センター 全身麻酔下歯科治療 歯科医療保健へのたゆまぬご尽力に対して、組織を 代表して頂いたものと理解しました。 超高齢社会を迎えた日本で、歯科が果たす役割は はっきりしています。三度の食事がしっかり摂れる 口腔環境をつくり、一人でも多くの高齢者の方々が 自立した日常生活を送ることができるようにするこ とです。その一助となるべく、この受賞を励みにさ らなる精進を続けて参りたいと、気持ちを新たにし ております。 140 8020 No.14 2015-1 プロフィール しおみ・さとし 兵庫県歯科医師会副会長、歯学博士、日本歯 科保存学会専門医。1971 年大阪歯科大学卒 業、 71 年大阪歯科大学副手(口腔治療学講座) 、 74 年大阪歯科大学助手(口腔治療学講座) 、 78 年大阪歯科大学講師(口腔治療学講座) 、 80 年姫路市にて開業、大阪歯科大学・福岡歯 科大学非常勤講師。06 年姫路市歯科医師会会 長。1946 年7月生まれ、兵庫県姫路市出身 Essay ちょっとひと息■ Essay ちょっとひと息 東京オリンピック 会誌「8020」編集委員長 池田保之 44 年から 45 年頃は 3 歳児で 80%、 三宅さんが、シニア大会でまだ重量 定 し て 以 来、 日 本 の ス ポ ー ツ 界 の 5 歳児 6 歳児では 98%というむし歯 挙げに挑戦している姿を拝見しまし 若い主役たちにスポットを当てた の罹患率でした。1964 年の東京オ た。感動するとともに三宅さんの歯 番組をよく目にします。 リンピックは「むし歯の洪水」と呼 の健康管理に興味を持ちました。 2020 年の東京オリンピックが決 現 在 の 小 学 生、 中 学 生、 高 校 生 たちが東京オリンピック出場を目 ばれた時代の真っ只中で開催された オリンピックだったんですねえ。 ■歯科にとって半世紀の軌跡 指しているとテレビでコメントし 私もこの時代に子ども時代を過ご て い る の を 見 る と、 日 本 と い う 国 しましたが、ニカッと笑う友人の前 1964 年の東京オリンピックから の活気にこれからの数年間が期待 歯はむし歯で欠けていたのを思い出 半世紀以上が経ちます。あの頃、歯 できると感じています。 します。そんな中にあっても、スポー の治療で半年待ちという状況があり ツが得意な友人にはむし歯がありま ましたが、歯科の態勢も大きく変化 せんでした。スポーツをする者にとっ してきました。また、家庭での歯に て歯は重要なアイテムで、その噛み 対する認識も確立されてきて、予防 しめる力がパワーの源になります。 歯科としてのブラッシングや歯科医 ■「むし歯の洪水」 さて、1964 年、昭和 39 年の東京 院でのケアによって、むし歯は 3 歳 オリンピックの頃、東京周辺は大き く変貌を遂げていました。新幹線が ■東京オリンピックのヒーロー 児では 20%をきるまでになりまし た。8020 達成率も大きく前進しま 開通し、高速道路ができ、3種の神 器(テレビ、冷蔵庫、洗濯機)も家 東京オリンピックのぼくらのヒー 庭に揃い始めていました。東京周辺 ロー、三宅義信さんは重量挙げで見 2020 年の東京オリンピックの頃 には大型団地が建ち並び、規格化さ 事に金メダルを獲得しました。オリ には、若者の口の中にはほとんどむ れた同じ建物に住む子どもたちの元 ンピックのプレシーズンに世界記録 し歯が見当たらない状況になってい 気な声があふれていました。地方の を樹立して、金メダル確実と報道さ るのかもしれません。力一杯そのパ 若者は都会の生活にあこがれて上京 れたときに、三宅さんにかかるその ワーを発揮してほしいものです。ス して、東京周辺に住むというステー プレッシャーは大変なものだったと ポーツ用のマウスピースで歯の保護 タスがありました。 思います。 も行われています。 一方この頃、昭和 30 年代後半か 三宅さんはオリンピックまでに、 した。 再びやってくる東京オリンピック ら 40 年代半ばまでは、子どもたち これ以上はないというまでの過酷な は、歯科にとっての半世紀の軌跡を の口の中は、すべてむし歯があると トレーニングを積んで、自分に自信 確認するよい機会となってくれてい 言っていいほどの「むし歯の洪水」 をつけてオリンピックに臨んだそう るようです。 と呼ばれる時代にありました。昭和 です。先日テレビ番組で 70 歳代の 8020 No.14 2015-1 141 8020 推進財団からの報告 8020推進財団からの報告 公益 財団法人 公益財団法人 8020 推進財団 1.平成 25 年度一般会計収支決算 財 産 目 録 平成 26 年 3 月 31 日現在 貸借対照表科目 (円) 金 額 (流動資産) 現金預金 19,954,114 11,725,812 流動資産合計 公益財団法人 8020 推進財団 収 支 計 算 書 基本財産 定期預金 平成 25 年 4 月 1 日から平成 26 年 3 月 31 日まで 科 目 31,679,926 (固定資産) (円) 決算額 投資有価証券 7,000,063 380,761,612 特定資産 運営基金積立資産 870,201 Ⅰ 事業活動収支の部 退職給付引当資産 6,196,487 1.事業活動収入 公募研究助成基金積立資産 事務所移転準備積立資産 ①基本財産運用収入 3,851,747 ②特定資産運用収入 5,544,587 ③会費収入 113,400,000 ④事業収入 3,662,047 ⑤寄付金収入 ⑥雑収入 事業活動収入計 100,000 36,696 ①事業費支出 89,811,603 ②管理費支出 36,583,369 事業活動支出計 事業活動収支差額 48,434,754 その他固定資産 740,517,868 (流動負債) 預り金 退職給付引当金 10,789,167 2.投資活動支出 ①基本財産取得支出 0 ②特定資産取得支出 1,749,831 1,749,831 9,039,336 Ⅲ 財務活動収支の部 6,196,487 負債合計 6,239,702 正味財産 734,278,166 公益財団法人 8020 推進財団 正味財産増減計算書 平成 25 年 4 月 1 日から平成 26 年 3 月 31 日まで (円) 金 額 一般正味財産増減の部 (1)経常収益 ①基本財産運用益 ②特定資産運用益 ③受取会費 3,851,747 5,741,779 113,400,000 A 会員(歯科医師会)受取会費 38,720,000 B 会員(団体・企業)受取会費 73,150,000 C 会員(個人)受取会費 1,530,000 ④事業収益 3,662,047 ⑤受取寄附金 ⑤雑収益 経常収益計 100,000 36,696 126,792,269 (2)経常費用 ①事業費 ②管理費 当期経常増減額 90,076,833 27,303,760 117,380,593 9,411,676 2. 経常外増減の部 0 2.財務活動支出 (1)経常外収益 経常外収益計 0 (2)経常外費用 財務活動支出計 0 財務活動収支差額 0 退職給付費用会計基準変更時差異 経常外費用計 当期経常外増減額 当期一般正味財産増減額 0 0 0 9,411,676 0 一般正味財産期首残高 339,218,228 一般正味財産期末残高 348,629,904 9,239,441 Ⅱ 指定正味財産増減の部 前期繰越収支差額 22,397,270 次期繰越収支差額 31,636,711 ※)当期収支差額= (事業活動収支差額+投資活動収支差額+財務活動収支差額) −予備費支出 ※)次期繰越収支差額=当期収支差額+前期繰越収支差額 8020 No.14 2015-1 5,279,820 経常費用計 1.財務活動収入 142 916,667 職員退職引当金 1. 経常増減の部 10,789,167 当期収支差額 役員退職引当金 固定負債合計 Ⅰ ②特定資産取崩収入 Ⅳ 予備費支出 43,215 (固定負債) 科 目 0 財務活動収入計 43,215 流動負債合計 200,105 ①基本財産取崩収入 投資活動収支差額 152,880 708,837,942 126,394,972 1.投資活動収入 投資活動支出計 178,490 電話加入権 資産合計 Ⅱ 投資活動収支の部 投資活動収入計 什器備品 固定資産合計 126,595,077 1.事業活動支出 168,198 265,075,257 基本財産運用益 一般正味財産への振替額 当期指定正味財産増減額 4,320,932 -3,850,000 470,932 指定正味財産期首残高 385,177,330 指定正味財産期末残高 385,648,262 Ⅲ 正味財産期末残高 734,278,166 8020 推進財団からの報告 2.役 員 (平成 27 年 1 月現在) 役 職 氏 名 所属団体等 (3)第3回理事会の開催 11 月 12 日 ( 水 ) 午後3時、第3回理事会を開催した。 本財団では公益法人化の対応として4か月を超える期 間に理事会を開催し、代表理事および執行理事が全理 事に執務状況等を説明することとなっている。 理 事 長 大久保満男 (公社)日本歯科医師会会長 副理事長 濱田 和生 サンスター(株)代表取締役会長 常務理事より会計報告が行われた。また、深井専務理 副理事長 山科 透 前(公社)日本歯科医師会副会長 事より 26 年度後期の業務について、平成 27 年度の事 専務理事 深井 穫博 (公社)日本歯科医師会理事 業計画の予定等、詳しく説明がなされた。 常務理事 高橋 秀直 (公社)日本歯科医師会常務理事 常務理事 佐藤 徹 (公社)日本歯科医師会常務理事 常務理事 河合 克美 (株)ロッテ常務取締役 会議室において、平成 26 年度歯科保健事業報告会・公 常務理事 松尾 一彦 サンスター(株)役員 医科歯科営業担当 募研究事業発表会を開催した。 理 事 倉治ななえ (公社)日本歯科医師会常務理事 理 事 佐藤 保 前(公社)日本歯科医師会常務理事 理 事 和田 啓二 ライオン(株)事業開発部部長 理 事 滝口 俊男 (株)ロッテ中央研究所所長 理 事 田岸 弘幸 パナソニック(株)アプライアンス社事業部長 理 事 鈴木久美子 サンスター(株)広報室室長 理 事 清水 惠太 (一社)日本学校歯科医会会長 理 事 金澤 紀子 (公社)日本歯科衛生士会会長 理 事 山中 通三 (一社)日本歯科商工協会会長 理 事 住友 雅人 日本歯科医学会会長 理 事 井上 栄 大妻女子大学名誉教授 理 事 井上 修二 桐生大学学長 理 事 小野塚 實 神奈川歯科大学名誉教授 理 事 鴨井 久一 日本歯科大学名誉教授 常務監事 村岡 宜明 (公社)日本歯科医師会常務理事 トヨタ記念病院 歯科口腔外科 医長 監 事 末髙 武彦 日本歯科大学名誉教授 理事長挨拶の後、深井専務理事より総括報告、高橋 (4)歯科保健事業報告会・公募研究発表会の開催 8月9日(土)午後1時から、歯科医師会館1階大 この報告会・発表会は、今年度で3回目の開催となる。 平成 24 年度の歯科保健活動助成事業報告、同 8020 公 募研究事業研究報告の中から関係の各委員会において 精査の上、優れたもの各3題を選択し発表した。参加 者は約 70 名であった。 ●プログラム □開 会(公財)8020 推進財団 専務理事 深井 穫博 □挨 拶(公財)8020 推進財団 副理事長 山科 透 □平成 24 年度歯科保健活動助成事業報告から ①「7つの習慣」による歯科保健教育推進事業 (一社)長野県歯科医師会 常務理事 井口 光世 ②当院における包括的口腔ケアシステムを利用し た老人介護施設への介入 町田純一郎 ③重度要介護高齢者に対する摂食支援カンファレ ンスと多職種への連携啓蒙活動 3.平成 26 年度の活動状況 (1)第1回理事会(書面による決議) 第7回評議員会の開催について、本財団定款第 42 条 (公社)東京都町田市歯科医師会 副会長 小川 冬樹 □質疑応答 <司会> (公財)8020 推進財団 常務理事 の規定により、全理事より同意書、監事より確認書を 受理し、第1号議案・第7回評議員会議事次第につい □休 憩 て理事会の決議があったものとみなされた。 □平成 24 年度 8020 公募研究事業研究報告から ・理事会の決議があったものとみなされた日 平成 26 年6月 17 日 佐藤 徹 ④歯周病と大動脈瘤発症の関連を解明する臨床疫 学研究 東京大学大学院医学系研究科 特任准教授 (2)第2回理事会・第 7 回評議員会の開催 6月 25 日(水)午後2時から第2回理事会、同3時 から第7回評議員会を開催した。 「平成 25 年度事業報告及び収支決算報告並びに監査 報告」「評議員辞任に伴う後任評議員の選任」 「理事の 鈴木 淳一 ⑤口腔 Quality Of Life(QOL) の評価と全身の QOL への影響に関する疫学研究 京都大学大学院医学研究科 助教 浅井 啓太 選任」等について審議を行い全議案が了承された。 8020 No.14 2015-1 143 8020 推進財団からの報告 ⑥歯の保存に対する Supportiveperiodontaltherapy の効果 大阪大学大学院歯学研究科 准教授 北村 正博 □質疑応答 <司会> (公財)8020 推進財団 専務理事 深井 穫博 □閉 会 (公財)8020 推進財団 専務理事 深井 穫博 (5)第 12 回フォーラム 8020 の開催 11 月 29 日(土)午後1時から歯科医師会館1階大 会議室において、学術集会「第 12 回フォーラム 8020」 を開催し、「保健と医療のベストミックス 〜 8020 運 ②「平成 25 年度 8020 推進財団歯科保健活動助成事 動における歯科医療の役割〜」をテーマに講演、シン 業報告書」を作成し、平成 26 年 8 月に賛助会員は ポジウムを行った。参加者は約 100 名であった。 じめ関係方面に配布した。 ●プログラム 【総合司会】 (公財)8020 推進財団 地域保健活動 推進委員会副員長 岡田 寿朗 □開会・挨拶 (公財)8020 推進財団 副理事長 山科 透 □基調講演 「健康長寿に向けた医療政策」 参議院議員 武見 敬三 □講 演① 「歯科医療の歯の喪失防止効果」 東京都開業 宮地 建夫 □休 憩 □講 演② 「患者の声〈ナラティブ〉とエビデンス: 期待される口腔保健情報」 京都大学大学院教授 中山 健夫 □講 演③ 「地域歯科保健と歯科医療をどうつなげ 指定研究事業として 8020 研究事業の振興を一層推進 するため本財団が指定した研究題目について研究を依 るか」 日本歯科医師会常務理事 < 調査・研究の実施 > 佐藤 徹 □講 演④ 「データの蓄積をどう図るか」 頼している。平成 26 年度は、下記の2つの指定研究を 選定した。 (公財)8020 推進財団 専務理事 深井 穫博 連に関する研究(平成 17 年度開始) □シンポジウム 研究者名:若井 建志 「保健と医療のベストミックス 〜8020運動に (名古屋大学大学院医学系研究科 予防医学 / 医学推計・判断学 教授) おける歯科医療の役割〜」 ②多目的コホート研究(JPHC study)における口腔と 【座 長】深井穫博 全身の健康に関する研究(平成 16 年度開始) 【出席者】宮地建夫、中山健夫、 研究者名:川口 陽子 佐藤 徹、山科 透 □閉 会 (公財)8020 推進財団 常務理事 (東京医科歯科大学大学院医歯学総合 研究科 教授) 高橋 秀直 (6)調査・研究 < 調査・研究の報告書作成 > 144 ①歯科医師を対象とした歯と全身の健康、栄養との関 □休 憩 (7)平成 26 年度 8020 公募研究事業 9月2日(火)午後3時より 8020 調査研究委員会を ①「平成 25 年度 8020 公募研究報告書」を作成し、 開催し、7月 31 日の締切りまでに応募のあった 53 題 平成 26 年8月に賛助会員はじめ関係方面に送付し の公募研究申請について審査を行い、下記の 15 題の採 た。 択を決定した。 8020 No.14 2015-1 8020 推進財団からの報告 < 公募研究課題 > 研究 1.口腔保健に関する疫学調査 4.オーラルヘルスプロモーションおよび歯の喪失防 2.8020 とQOL・ADLおよび医療・介護・終末 止に関する研究 期医療に関する研究 5.自由研究課題 3.高齢者の摂食・嚥下機能および口腔ケアに関する <採択された公募研究> 申請者 所 属 東京大学大学院医学系研究科 先端臨床医学開発講座 職 名 研 究 課 題 名 特任 准教授 日本および中国の循環器疾患における歯周病の関与を解明する臨床研究 1 鈴木 淳一 2 吉野 浩一 東京歯科大学衛生学講座 客員 准教授 10 年間メインテナンス受診者の歯の喪失状況について 3 星 旦二 首都大学東京 教 授 かかりつけ歯科医師の存在とその後の QOL、生存維持との因果構造 4 町田純一郎 トヨタ記念病院歯科口腔外科 医 長 大規模コホートに基づく歯科口腔関連要因を軸とした口腔と全身の疾患 予防に関する疫学研究 5 山口 昭彦 講 師 高齢者における葉酸の摂取および血中ホモシステインの状態と歯周病と の関連に関する研究 6 松尾浩一郎 藤田保健衛生大学医学部歯科教室 教 授 緩和ケア患者の口腔機能低下の標準的評価方法と介入方法の確立 7 佐藤 遊洋 8 井上 誠 藤新潟大学(医歯学系) 9 泉 繭依 京都大学大学院医学研究科 感覚運動系外科学講座口腔外科学分野 大学院 博士課程 1年 東北大学大学院歯学研究科 国際歯科保健学分野 高齢者の日常生活動作(IADL)に対する口腔の健康の影響の前向き コホート研究 教 授 要介護高齢者の口腔環境改善に対する経口摂取の重要性 助 教 誤嚥性肺炎の予防に繋がる咳喇力の維持・向上を目指した口腔ケアの 検討 10 齊藤 恭平 東洋大学ライフデザイン学部 教 授 8020 推進員など口腔保健を推進する住民グループの組織化に関する 研究 11 入江浩一郎 愛知学院大学歯学部口腔衛生学講座 講 師 歯周病の進行と職業階層間との関連性について 九州看護福祉大学看護福祉学部 口腔保健学科 12 市橋 透 公益財団法人 ライオン歯科衛生研究所 主 任 勤労者を対象とした質問紙法によるスクリーニングの妥当性に関する 研究 ~効率的な産業歯科保健プログラムの開発を目指して~ 13 栗田 浩 信州大学医学部歯科口腔外科学教室 教 授 周術期口腔機能管理に果たす歯科医師・歯科衛生士の役割の調査 14 斎藤英生 一般社団法人 千葉県歯科医師会 会 長 医科歯科連携(糖尿病)糖尿病重症化予防 15 椎名惠子 江東区健康部(保健所) 歯科保健・ 住民基本台帳情報とリンケージした各種データを用いた歯周疾患検診 医療連携 担当課長 受診者の特性に関する分析(第二報) (8)平成 26 年度歯科保健活動事業への助成交付 7月 30 日(水)午後2時 30 分より 8020 地域保健活 動推進委員会を開催し、6月 30 日の締切りまでに応募 区 分 申請団体名 事 業 名 1 一般 社団法人 北海道歯科医師会 お口のケア“チェック&アドバイス” 2 一般 社団法人 岩手県歯科医師会 特別支援学校就業支援歯科保健推進事業 3 一般 社団法人 福島県歯科医師会 被災地口腔ケア推進事業 のあった 44 題の歯科保健活動事業助成交付申請につい て審査を行い、下記の 31 題を採択し、各事業に対して 助成交付を行った。事業名と申請団体名は次のとおり。 実 施 組 織 (一社)北海道歯科医師会 事業主体: (一社)岩手県歯科医師会 事業協力:岩手県、岩手県教育委員会、 岩手医科大学歯学部 (一社)福島県歯科医師会 8020 No.14 2015-1 145 8020 推進財団からの報告 区 分 申請団体名 事 業 名 実 施 組 織 4 一般 社団法人 千葉県歯科医師会 糖 尿 病と歯周 病の関 係 の明 確 化と医 科歯 科連 (一社)千葉県歯科医師会地域保健医療委員会 携・医療と介護の連携構築への活用の検討 日本大学松戸歯学部歯周治療学講座 ~血中グルコースと歯周基本治療の治療効果に 東京歯科大学歯周病学講座 ついて~ 5 一般 社団法人 山梨県歯科医師会 食物栄養科学生に対する歯の健康と食育普及事 (一社)山梨県歯科医師会 業 6 一般 社団法人 長野県歯科医師会 長野県学校歯科保健研修会 7 一般 社団法人 新潟県歯科医師会 (一社)新潟県歯科医師会が事業主体となり、住民活動支援組織 NPOとの協働による住民参加型歯科保健推進 である「NPO 法人まちづくり学校」、新潟県福祉保健部、新潟市 事業(はーもにープロジェクト) 保健所、新潟大学、自治会を加えた企画運営組織(通称:はーもにー プロジェクト)を形成し事業を実施してきた。 8 一般 社団法人 静岡県歯科医師会 8020 推進ネットワーク等整備事業 9 一般 社団法人 愛知県歯科医師会 愛知県がんセンター中央病院との口腔管理医療 (一社)愛知県歯科医師会 連携モデル事業 10 公益 社団法人 三重県歯科医師会 学齢期喫煙防止対策事業 11 一般 社団法人 奈良県歯科医師会 奈良県下自治体の医療費分析から考察する歯科 (一社)奈良県歯科医師会 口腔保健事業 奈良県立医科大学公衆衛生学教室 12 一般 社団法人 大阪府歯科医師会 糖尿病と歯周病に関わる医科歯科連携推進事業 主催: (一社)大阪府歯科医師会 13 一般 社団法人 徳島県歯科医師会 糖尿病フォーラム徳島における歯科からの糖尿 病重症化予防の取り組み 主催:徳島大学糖尿病臨床研究開発センター 共催: (一社)徳島県歯科医師会、徳島市歯科医師会、日本糖尿 病協会徳島県支部 他 14 公益 社団法人 香川県歯科医師会 地域住民と歯科医療従事者とが共に考える新し い学校作り 主催: (公社)香川県歯科医師会、 香川県歯科医師会立香川県歯科医療専門学校 15 一般 社団法人 沖縄県歯科医師会 沖 縄 県 版 歯 科 健 診 プ ロ グ ラム『Do チェック』 (一社)沖縄県歯科医師会 リーダー研修会 16 一般 社団法人 仙台歯科医師会 (一社)仙台歯科医師会、仙台市、 市民参加型で実施される多職種連携による歯科 (一社)宮城県歯科衛生士会、歯と口の健康づくりネットワーク会 保健啓発活動 議、歯と口の健康週間「市民のつどい」実行委員会 富岡甘楽歯科医師会 フロリデーション(水道水フッ化物濃度調整)に ついての啓発活動 公益 17 社団法人 (一社)長野県歯科医師会 長野県学校保健会養護教諭部会 静岡県 8020 推進住民会議 (一社)静岡県歯科医師会 (公社)三重県歯科医師会 (公社)富岡甘楽歯科医師会、富岡市、下仁田町、南牧村、甘楽町、 下仁 田 町健 康 づくり推 進 協 議 会、下仁 田 町保 健 推 進 員協 議 会、 下仁田町フロリデーション推進会議、住民組織等、日本口腔衛生 学会(学術支援) 18 一般 社団法人 習志野市歯科医師会 「ならしの生涯健口チェック」事業 19 公益 社団法人 口腔機能増進のための歯科健康診査「歯周病予 (公社)東京都港区芝歯科医師会、学識検査指導:鶴見大学歯学 東京都港区芝歯科医 防のための新唾液検査事業~だ液でカンタン歯 部探索歯学講座花田信弘教授、後援:港区、協力:新橋愛宕一之 師会 周病チェック!あなたの歯ぐきは大丈夫?~」 部連合町会、会場提供:新橋商事(株) 20 公益 社団法人 東京都町田市歯科医 重度要介護高齢者に対する摂食支援カンファレ (公社)東京都町田市歯科医師会、 師会 ンスと多職種への連携啓蒙活動 日本歯科大学附属病院 口腔リハビリテーション多摩クリニック 21 公益 社団法人 川崎市歯科医師会 川崎商工会議所会員事業所 (公社)川崎市歯科医師会 井田満夫、 生活習慣病巡回検診における歯科健診・歯科保 川崎商工会議所(会員数 5,130)、 健相談 鶴見大学歯学部探索歯学講座 野村義明 22 一般 社団法人 厚木歯科医師会 高 齢 者よい歯 のコンクール 応 募 者 の口 腔 内と 健康状態 (一社)厚木歯科医師会 8年の統計 23 一般 社団法人 甲府市歯科医師会 24 公益 社団法人 長野市歯科医師会 障害者施設での歯科健診の実施 25 一般 社団法人 広島市歯科医師会 特 別 支 援学 校におけるTEACCH プログラムを (一社)広島市歯科医師会 応用したオーダーメイドの口腔清掃法指導シス 広島大学病院障害者歯科 テムの構築 26 一般 社団法人 長崎市歯科医師会 長 崎 市における成 人の 歯 科 保 健 状 況に関する (一社)長崎市歯科医師会 調査・研究事業 27 一般 社団法人 佐世保市歯科医師会 歯科医院 通院中の高齢 者(80 歳 以 上)におけ (一社)佐世保市歯科医師会 るアンケート調査 146 8020 No.14 2015-1 (一社)習志野市歯科医師会 「食」と「健康」にかかわる多職種の連携・協働 (一社)甲府市歯科医師会、山梨県歯科衛生士会、山梨県栄養士会、 による食育推進事業(その2)小学生への味覚 山梨県調理師会、中北保健所、昭和大学歯学部口腔衛生学教室 教育の取り組み (公社)長野市歯科医師会 8020 推進財団からの報告 区 分 公益 28 財団法人 申請団体名 事 業 名 実 施 組 織 ライオン歯科衛生研 子どもの口腔の健康から 健康な地域づくり Ⅲ 究所 公益財団法人ライオン歯科衛生研究所、八重山地区歯科医師会、 石垣市教育委員会、沖縄県八重山地区養護教諭研究会 吉川市、吉川歯科医師会、吉川市母子愛育会、吉川市栄町三区町 会、フッ素利用をすすめる女性の会、日本大学松戸歯学部 ( 学術・ 技術支援 )、日本口腔衛生学会 ( 学術支援 )、吉川市フロリデーショ ン推進協議会 トヨタ記念病院歯科口腔外科、トヨタ記念病院感染症科、豊田加 茂歯科医師会 29 行政 吉川市役所 吉川 市 水 道 水 フロリデ-ション 普 及 啓 発 活 動 事業 30 病院 トヨタ記念病院 歯科口腔外科 当 院 にお ける包 括 的 口 腔 ケアシステムを 利 用 した老人介護施設への介入 31 団体 湖南地域障害者通所 コラボにこにこ障害者歯科保健事業 施設歯科保健連絡会 湖南地域障害者通所施設歯科保健連絡会 草津栗東守山野洲歯科医師会 石川県、福井県、滋賀県、奈良県、京都府、大阪府、 (9)平 成 26 年度調査研究事業「歯科医療による健康増 鳥取県、広島県、島根県、山口県、徳島県、香川県、 進効果に関する調査研究」の実施 愛媛県、高知県、福岡県、長崎県、大分県、熊本県、 本財団では、都道府県歯科医師会等の協力を得て、 沖縄県の 38 都道府県より申請があり賞状を授与した。 健康長寿社会の実現に寄与する歯科医療・口腔保健を 一層充実させることを目的に、「 歯科医療による健康 (11)8020 運動ポスターの募集 増進効果 」 について全国の歯科医院において、平成 26 年 10 月 27 日以降の1週間で来院したすべての初診患 財団では、 「8020 運動をより一層国民の方々に知っ 者および再初診患者を対象とした調査研究事業を実施 ていただき、歯の健康について理解していただく」こ した。今回調査対象となった患者様には、年1回(5 とを目的に「8020 運動ポスター」の募集を行ってい 年間)の郵送による追跡調査を予定している。今後、 るが、平成 26 年 9 月 30 日に締切り、11 月 18 日 ( 火 ) に 集計作業を行い、平成 27 年3月に概要報告、6月に報 8020 運動ポスター審査会を開催した。 320 件という多数の応募の中、厳正な審査が行われ、 告書を提出する予定である。 柳沼貴明氏ら 12 人の方々の作品が選出された。委員に は武蔵野美術大学教授・丸山直文氏、同大学元教授・ (10)8020 推進財団理事長賞の贈呈 柳澤紀子氏らの専門委員が加わり審査が行われた。 8020 運動の積極的な普及啓発を目的に、8020 を達 成しているお年寄りに対して 8020 推進財団理事長賞を やぎぬま たかあき 贈呈した。被表彰者の推薦は、都道府県歯科医師会会 <最優秀賞(1 名)> 柳沼 貴明 長が 10 名以内を推薦し、表彰は都道府県歯科医師会が <優 秀 賞(3 名)> 松原 加奈、川村 陽子、 行っている表彰事業の際に行っている。 田中 雄大 まつばら たなか か な かわむら ようこ ゆうだい たなか み ほ かわばた ゆ い ひろせ な お さとう はるか <入 選(8 名)> 田中 美帆、川端 由衣、 平成26年度( 平成27年1月31日現在)は、北海道、 青森県、岩手県、秋田県、宮城県、山形県、福島県、 廣瀬 菜生、佐藤 遥、 茨城県、栃木県、千葉県、埼玉県、東京都、長野県、 家泉 明花、五十嵐 有芽、 新潟県、静岡県、愛知県、三重県、岐阜県、富山県、 常木 菜津子、岩﨑 瞳 <最優秀賞> やぎぬま たかあき 柳沼 貴明 氏 いえいずみ つねき <優秀賞> まつばら か な 松原 加奈 氏 はるか な つ い が ら し こ いわさき ありな ひとみ <優秀賞> かわむら ようこ 川村 陽子 氏 8020 No.14 2015-1 147 8020 推進財団からの報告 <優秀賞> たなか ゆうだい たなか み ほ 田中 雄大 氏 田中 美帆 氏 <入選> <入選> ひろせ な お さとう はるか 廣瀬 菜生 氏 佐藤 遥 氏 <入選> <入選> い が ら し あ り な 五十嵐 有芽 氏 148 <入選> 8020 No.14 2015-1 つねき な つ こ 常木 菜津子 氏 <入選> かわばた ゆ い 川端 由衣 氏 <入選> いえいずみ はるか 家泉 明花 氏 <入選> いわさき ひとみ 岩﨑 瞳 氏 8020 推進財団からの報告 (12) 「噛むカムチェックガム」について 株式会社ロッテの協力を得て製作している噛むカム (15)歯 科口腔保健法の制定および歯科保健条例の制定 マップについて チェックガムは、平成 26 年 4 月 18 日(金)より、春期 歯科口腔保健法が平成 23 年 8 月 10 日に公布され、ま 分 5 万セットについて本財団HPにて申込み受付を開 た各都道府県においても「歯科保健条例」が次々と制 始したところ、4 月 25 日(金)までにすべて配送済み 定され、平成 26 年 12 月現在、41 道府県で制定済である。 となった。 また、10 月 1 日(水)午前 10 時より、秋期分 5 万セッ 本財団ではホームページにおいて、都道府県・市区 町村の歯科保健条例の制定状況を案内している。 トについて申込み受付を開始したところ、利用者が多 く、当日の正午までにすべて配送済みとなった。 (13)2015 年カレンダーを作製 賛助会員のメットライフ生命保険株式会社のご厚意 により、2015 年カレンダーを作製した。平成 25 年度 の 8020 ポスター受賞者の作品 12 点を利用して作製し、 12 月に賛助会員はじめ関係方面に送付した。 (16)会誌「8020」の発行 会誌「8020」第 14 号を平成 27 年 1 月に発刊し、賛 助会員はじめ関係方面に送付した。 (14) 8020 運動・プレゼント・アンケートキャンペ-ンⅤ 平 成 26 年 12 月 1 日 ( 月 ) か ら 同 27 年 2 月 28 日 ( 土 ) ま での 3 か月間、本財団のホームページにおいて、一般 の方を対象とした 8020 運動等に関するアンケートを実 施し、抽選で 120 名様にライオン株式会社の協力商品 をプレゼントする。アンケート調査結果は財団ホーム ページにおいて公開する予定。 (17)会員レターの発行 5 月と 12 月(第 16 号・第 17 号)の会員レターを発 行し、関係方面に送付した。 (18)賛助会員証の発行 本年度入会者の方に賛助会員証を発行し、送付した。 8020 No.14 2015-1 149 8020 推進財団からの報告 賛助会員を募集しています ◆どなたでも入会できます ◆賛助会員・賛助会費 公益財団法人 8020 推進財団では、広く賛助会員の呼 びかけを行っています。 賛助会員:A会員(歯科医師会) 、B会員(歯科医師会以 外の団体・会社)、C会員(個人)制度を設けています。 どなたでも入会できますが、歯科医師会、歯科医師、 歯科に関係ある団体・企業の皆さまには、ぜひとも賛助 賛助会費:賛助会員籍のある間、毎年会費(4 月〜翌年 3 月)を納めていただきます。 会員としてご入会いただけることを、心よりお願い申し あげます。 賛 助 会 員 賛 助 会 費 A 会員(歯科医師会) イ . 日本歯科医師会 ロ . 都道府県歯科医師会 ハ . 郡市区歯科医師会 B 会員(団体・企業) 歯科医師会以外の団体・企業 5 万円 /1 口 C 会員(個人) イ . 歯科医師 ロ . 歯科衛生士、歯科技工士、一般国民等どなたでも 1 万円 /1 口 1 千円 /1 口 ◆入会の手続きは簡単です ・入会をご希望の方は、所定の申込書に必要事項をご記 入のうえ、当財団事務局までお申し込みください。 100 万円 /1 口 50 万円 /1 口 2 万円 /1 口 1 口以上 ◆退 会 賛助会員は、退会届(様式は定めていません)を提出 して、任意に退会することができます。 ・賛助会費は、下記の金融機関にお振り込みください。 ◆住所が変更された場合 公益財団法人 8020 推進財団 〒 102-0073 転居・住所表示が変更となったときは、必ず当財団事 務局にご連絡ください。 東京都千代田区九段北 4-1-20 歯科医師会館 TEL(03)3512-8020 FAX(03)3511-7088 ◆賛助会員へのサービス 取引金融機関 三菱東京 UFJ 銀行市ヶ谷支店 普通 1078253 ① 小冊子・パンフレット等の配布 口座名 公益財団法人ハチマルニイマル推進財団 ② 会誌の配布 ③ 8020 デ-タ、調査研究等の情報提供 ④ その他、本財団が行う諸事業の利用 150 8020 No.14 2015-1 公益財団法人8020推進財団 賛助会員の申込みについて 下記の申込書に直接ご記入のうえ、FAXまたは郵送でご送付ください。 後日、納入依頼書を郵送させていただきます。 財団FAX番号:03-3511-7088 キリトリ線 公益財団法人8020推進財団 団体賛助会員(A会員・B会員)申込書 平成 年 月 日、賛助会員となることを申し込みます。 フ リ 団 フ ガ 体 リ ナ 名 ガ ナ 代 表 者( 担 当 者 ) 役 職 ・ご 氏 名 ( 団 体 / 会 社の場 合 ) 〒 − ご 住 都道 府県 所 電 市区 郡 話 F A X 口 円 賛 助 会 費 口 数 キリトリ線 公益財団法人8020推進財団 個人賛助会員(C会員)申込書 平成 年 月 日、賛助会員となることを申し込みます。 フ リ ご フ ガ 氏 リ ナ 名 ガ ナ ご 職 業 ご 住 所 〒 − 電 F 都道 府県 市区 郡 話 A X 賛 助 会 費 口 数 口 円 8020 No.14 2015-1 151 Journal of The 8020 Promotion Foundation No.14 January 2015 CONTENTS Mitsuo Okubo 1 Yoshiro Takano 6 Hiroshi Ogawa/Mitsuo Okubo 8 A Greeting Current Oral Health Information Trend Watching A lesson from the shark: How fluoride strengthens teeth A conversation with the president of the foundation Japan in the world: Toward the 2015 world congress Round table discussion World Congress 2015: Dental care and oral health for healthy longevity in an aging society 18 Akira Tomino/Shinya Nakajima/Masahito Sumitomo/Toru Yamashina/Kakuhiro Fukai Topics Patient narratives make a difference in medicine: DIPEx projects in UK and Japan Rika Sakuma Sato/Takeo Nakayama 32 Explanation What is the integrated community care system? − Financial support system newly established in the 47 prefectual governments for integrated community care system and reform of medical supply system − Hideyuki Kamijo 38 Topics Towards a more accurate understanding of dental implant therapy Fumihiko Watanabe 44 Takako Sato/Morio Tonogi 50 Makoto Araki 56 Masaki Kambara 62 Takumi Ogawa/Tomoko Ikawa 64 Focus The role of dentistry in sleep disorder: Stop the snoring Topics In-home dental care: A case report World Topics WHO draft guidelines: Sugar intake for adults and children, and response from FDI Science 3D printing and the new Industrial Revolution in dentistry 152 8020 No.14 2015-1 A Current Oral Health Information 68 Interviews with active elderly people who have maintained at least 20 teeth at age 80 ① Yamagata Dental Association Takashi Goto 68 ② Fukui Dental Association ③ Mie Dental Association Terutaka Tsukima/Tatsuko Yano 69 Yoshiro Kanazawa/Hisako Kanazawa 70 ④ Tottori Dental Association Susumu Adachi 71 Information Hiroyasu Aoyagi 72 Etsuko Motegi 76 Hirohiko Hirano 82 Nobuhiro Hanada 88 Morito Hane 93 Survey research on the effectiveness of dental care for promoting general and Kakuhiro Fukai oral health in Japan 98 Introduction to “8020 JDA(Nisshi)TV” B Research Articles Research To be an independent senior citizen with keeping good occlusion Terminal Dentistry The role of dentistry in terminal care Healthy Life Healthy eating supports a life worth living Nutrition, diet, and mastication to extend healthy life expectancy for the elderly population Topics Adult dental examination and health instruction program: internet version Current research from The 8020 Promotion Foundation C Reports on the Research Projects of the 8020 promotion foundation Forum Report 12th 8020 Forum Morito Hane Reports on Foundation-commissioned research ① Associations among oral health, general well-being, and nutritional status in dentists: Frequency of tooth brushing and risk of cardiovascular disease ② Japan public health center-based (JPHC) oral health study: Association between parity and dentition status 102 106 Kenji Wakai and collaborators 106 Masayuki Ueno/Yoko Kawaguchi 109 ③ The relationship between oral health and medical expenditures among older adults Masanori Iwasaki/Akihiro Yoshihara/Hideo Miyazaki 112 8020 No.14 2015-1 153 C Reports on the Research Projects of the 8020 promotion foundation 116 Community-based dental health promotion ① Hokkaido Dental Association Oral care check and advice koji Baba 116 ② Fukushima Dental Association Oral health care promotion project in tsunami-affected areas in Fukushima Prefecture Joji Ikeyama 118 ③ Gifu Prefecture Dental Association Dental checkup with metabolic syndrome medical examination in Ogaki City: Periodontal disease survey of 2008-2012(Diabetes medicine and dentistry cooperation project) Yoshikazu Abe/Yasumasa Matsumura/Masafumi Katano/Katsuji Sugiyama/Yasuhiro Hayano 120 ④ Tokyo Minato-ku Shiba Dental Association Oral health promotion by saliva tests Naoyuki Nishitsuji 122 ⑤ Hiroshima Dental Association Development of a customized oral cleaning system applied to TEACCH program for a special support school Kenya Doe/Yuji Ueda/Mitsugi Okada/Yuki Oda 124 ⑥ The Lion Foundation for Dental Health Promoting a healthy community through the oral health of elementary and junior high school students in Ishigaki City Akiko Kurokawa/Takashi Inaba 126 128 Reports on Selected Research 1.Oral health of older people in Japan and England : An international comparative study Jun Aida/Kanade Ito/Ken Osaka/ Shihoko Koyama/ Katsunori Kondo 128 2.Tooth loss and kidney disease: Nagahama study Keita Asai/Junya Sonobe/Toru Yamazaki/Masashi Yamori/Akihiko Yamaguchi/ Katsu Takahashi/Kazuhisa Bessho/Takeo Nakayama 130 3.Does oral care contribute to brain activation? Wataru Fujii/Chisato Nagata/Kiyomi Sakaguchi/Risa Watanabe 132 4.Risk factors for 8020 Kazunori Ikebe/ Yusuke Mihara/Ken-ichi Matsuda/Sayaka Tada/Yoshinobu Maeda 134 5.Four trials to increase the percentage of participants of a dental check-up for adults Tadahiro Yanagawa/Yoshitaka Ota/Osamu Iijima/Munetou Nakamura 136 6.A comparison of dental examination and cancer examination participation state in Koto Ward: Recommendation on how to increase participation Keiko Shiina/Yuichi Ando 138 154 8020 No.14 2015-1 会誌「8020」のバックナンバーを公開! 会誌「8020」は平成14年1 月に第1号を刊行し、毎年1月に 発行してきました。このたび、全 号のバックナンバーの電子書籍 (Ebook)を公開いたしました。 PCからもタブレット端末から でも無料で誰でも閲覧することが できます。 i Pad、i Phone やスマートフォ ン、Android 端末からも閲覧する ことができます。PC からは財団 ホームページ内から閲覧できます (3 月頃開設予定) 。 公益財団法人 8020 推進財団会誌 No.14 第 1 号表紙 ●閲覧方法● Journal of The 8020 Promotion Foundation 第 14 号 平成 27 年 1 月 31 日発行 ▶PC:「8020推進財団ホームページ」内からバックナ ンバーサイトへ(3月頃開設予定) 。 ▶iOS端末:AppStoreより「Wisebook Openviewer」 アプリをダウンロード→アプリを開いて「カテゴリ」→ 「会報誌・広報誌」→「会報誌」より閲覧できます。 ▶Android端末:Google Playストアより「Wisebook Openviewer」アプリをダウンロード→アプリを開いて 「カテゴリ」→「会報誌・広報誌」→「会報誌」より閲 覧できます。 公益財団法人 8020 推進財団 会誌編集委員会 委 員 長 池田 保之 副委員長 片倉 朗 委 員 花田 信弘 小林 慶太 羽根 司人 編集後記 青柳 裕易 (担当役員) 世界に先駆けて超高齢社会となった我が国では、国民の健康 副理事長 山科 透 維持はもちろん財政的な観点からもさまざまな医療・介護の施 専務理事 深井 穫博 策が立てられています。歯科医療はむし歯と歯周病の 2 大疾患 の予防と対応から、要介護高齢者の抑制を目的として「食べる」 ための口腔機能の維持と回復の責務が求められています。その 新たな目的を具現化するためには、 「 『口から食べることが健康 長寿に繋がること』の国民への周知」 、 「医療・介護に歯科が介 入するための地域ごとのシステム作り」 、 「歯科医師・歯科衛生 士等の歯科医療従事者の教育」の 3 つが大きな柱となります。 要介護状態となる起点の多くは医科疾患による入院から始ま ります。病院から在宅に至る医療提供の質の変化が、病気を持 つ患者さんへの歯科医療について認識を一変させ、医科歯科連 理 事 倉治ななえ ■編 集 公益財団法人 8020 推進財団 会誌編集委員会 ■発行人 大久保満男 ■発 行 公益財団法人 8020 推進財団 〒 102-0073 東京都千代田区九段北 4-1-20 TEL 03-3512-8020 携の必要性が高まっているのが 2015 年です。今号は歯科医療 FAX 03-3511-7088 がこれからの 10 年間にどのように展開するべきかをこれら 3 つ ホームページ の視点から、医療を受ける国民の皆さんにも、提供する歯科医 http://www.8020zaidan.or.jp/ 療関係者にも知っていただくことを中心にした記事で構成され ています。歯科の新たな切り口が見えますのでまずは目次を見 ていただき、興味があるところから是非お読みください。どの ■印刷所 一世印刷株式会社 東京都新宿区下落合 2-6-22 国も経験のない超高齢社会で展開する歯科医療は世界から注目 されています。皆さんの口のライフサイクルを担う「かかりつ け歯科医」が今まで以上に重要な時代がやってきました。 会誌編集副委員長 片倉 朗 禁 無断転載 ©2015 公益財団法人 8020 推進財団 8020 No.14 2015-1 155