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平成23年度 新産業創出研究会「研究成果報告書」

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平成23年度 新産業創出研究会「研究成果報告書」
平成23年度
新産業創出研究会「研究成果報告書」
「サンドイッチパネルを用いた水平機構を付加した屋根用仮設軽量足場材の開発」
[ 徳山工業高等専門学校 ・ 教授 ] [ 原
隆
]
1.はじめに
地球温暖化防止用のための外断熱・防水等施工時の、屋根の塗装・改修工事中に、毎年 250-300
名の死傷事故とその数倍の災害が発生している。また、屋根上は電線、送電中も多く、軽量で剛
性があり、絶縁性のある軽量足場板が必要とされている。さらに、屋根は波板で構成され勾配が
ついているため、作業効率を向上させるためにはこれらに対応した構造特性を持つ部材が要求さ
れている。
以上の観点から、①軽量で剛性のある足場板の開発。②勾配のある波板上で水平足場を構成す
る緩衝材の開発。③足場板の屋根材への固定法の開発。④屋根上の作業の効率化、自動化のため
の検討。を主目的として足場材の開発を行った。
2.概要
地球温暖化防止用のための外断熱・防水等
施工時の、屋根の塗装・改修工事中に、毎年
250-300 名の死傷事故とその数倍の災害が発
パネル材
パネル材
生し、工場の操業停止に追い込まれる例が後
緩衝材
を絶たない。本課題は GFRP の表面板と発泡
緩衝材
芯 材から なるサ ンドイッ チ構造 を用い て
図-1 開発対象部材
GFRP の局所座屈を防止し、力学的性能の向
上と軽量化とを共に満足できる構造を構成した。また、凹凸のある屋根材専用の、軽量(従来比
1/2 目標)で、作業性がよく移動可能で絶縁性の足場板とした。さらに、足場板と屋根材の間に緩
衝材を設け、足場板の水平も保持できる構造とした。
3.研究成果および今後の課題
開発項目に従って、以下に研究成果を述べる。
① 軽量で剛性のある足場板の開発
サンドイッチパネルの表板に補剛リブを付け、発泡ポリスチレンの芯材の中に固定する方法
で必要な強度(スパン 90cm で 2kN の荷重を指示する)を得ることをすでに確認できていた。
本研究会では、製作工程を単純化するため、補剛材は用いず、硬質の発泡剤ナビセル(JFC㈱)
を用いる方法でサンドイッチパネルを構成し、必要な強度が得られることを確認した。また、
製品コスト低減のため、ナビセル Q80 から Q60 にグレードダウンを行い、所要の強度が得ら
れることを確認した。以後ナビセル Q60 を使用することとした。
② 勾配のある波板上で水平足場を構成する緩衝材の開発
試作品として、波板材への付着性、密着性および防水性を考慮して、緩衝材として PE ライト
(イノアック㈱)を使用して試作を行った。しかし、①加工コストが高いこと。サンドイッ
チ板との接合において、圧着を行う際に PE ライトが収縮して波板断面に密着することが難し
い。ことが分かり、代替案として、発泡ポリスチレンにウレタン加工をしたもの(㈲環境造
形)を選択し、強度並びに使用性の検討を行った。
引張りの付着強度に関しては、ウレタン皮膜ポリスチレン(PS)が PE ライト(PE)に対して
1.43 倍の強度を示し、同様にせん断試験では PS が PE の 1.69 倍の強度を示した。
また、PS は加工が容易であり、付着時の変形が小さく、波板との付着もよいため、緩衝材と
しては適当であると結論付けた。
ここで足場板は 2 種類用意し、完成した桁行方向、梁間方向のパネル材をそれぞれ図-2 に示す。な
お、サンドイッチパネルには滑り止めの処理がなされている。
① 桁行方向の足場板は、母屋の上に設置するため、直接に母屋で支持されるため曲げによる影響
は小さく、サンドイッチ板の代わりに 6mm の合板を用いた単純な構造とした。
② 梁間方向の足場板は、母屋の間隔が 90cm であるのでサンドイッチ板と緩衝材を合成した 115cm
の部材を製作した。
(a)梁間用
(b)桁行用
図-2 開発した足場材
③ 足場板の屋根材への固定法の開発
足場板の屋根材への固定は屋根材に残っているフックボルト(母屋材と波板の接合に使用す
る)を利用する。図-2 に示すスリットは接合の目的とフックによる接合の困難さを避ける目
的で設置されている。検討の結果ゴム製の脱着容易な接合材を開発した。
④ 屋根上の作業の効率化、自動化のための検討
作業性の検討については株式会社カシワバラコーポレーションにおいて実証試験を行っている。広
島県における実証試験においては水平床が確保でき、作業性が向上されたことが報告されている。
なお、自動化については実証試験ののちに種々の提案を行う予定である。
⑤ 今後の課題
製品としては完成されているが、現状ではすべての部材が試作品であり、コスト高である。また、研究
会参加企業はいずれも、大量生産を行っていない企業であるので、量産化のための企業選択、委託
先の調査が必要である。
4.おわりに
開発したサンドイッチパネルをもとに、素材組み立て企業、使用企業が共同して、屋根工事用の仮設足
場材の開発を行った。製品としてはすべての項目を満足できるものが出来上がった。今後は量産可能な
企業を見つけ、コストダウンを行い、製品として市場に投入したい。また、現在も実証試験を継続しており、
様々な意見をもとに改良を行ってゆきたい。屋根工事作業は危険を伴うため、広く使用されることを期待
している。
5.本研究の今後の計画
今後の研究計画は以下のとおりである。
①実証試験の意見をもとにした製品の改良。
②自動化、半自動化作業のための可能性の検討。
6.その他
(1)出願特許(タイトル・出願番号・発明者・特許権者など)
なし
(2)投稿論文(タイトル・学会名等)
なし
(3)本研究会の参加企業・団体名
株式会社カシワバラコーポレーション
新栄テクノ株式会社
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