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H21 - 道都大学

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H21 - 道都大学
倫
理
=コ
降 番号 1∼ E至
)
第 1問
己点 8)
次 の文章 を読 み,下 の 問 い (問 1∼ 3)に 答 えよ。 (酉
青 年期 は , 自 我 に 目覚 め, 生 きる意 味 を巡 って 悩 み 始 め る時期 で ある と言 われ
る。 しか し, 果 た して' ④ l 肖
んで いるのは青年だけなのだろうか。
例 え ば , 成 人 期 にあた る親世代 について考 えてみよう。 成人期 にお いて, 人 は家
庭 生活 や 職 業 生 !活 の うえで様 々な役割 の変化 を経験 し, そ こで遭遇す る様 々な 問題
へ の 対 応 を迫 られる。そ して, これ らの問題 に対 して, 時 に葛藤 を覚 え, ま た時 に
現 在 確 立 して い る 自身 の 自我 同一 性 ( アイデ ンテ ィテ ィ) の危機 を感 じる こ ともあ
る。
この よ うに, 青年期が, 「 自分 自身を見 つ め, 自己 を確 立 して い く」初 めて の時期
だとすれば, ⑤ 成 人期 は, これ まで の 自分 の あ り方 に危機 を感 じた ときに, い っ
たん確 立 した 自己 の問 い直 し,再 確立が求 め られ る時期 で ある。
このように考 えると, ◎ 人生 は,常 に 自分 と向 き合 いなが ら,成 長 し続 け る 旅
だと言うこともできる。
十- 40 -一
(2603--40)
倫 理
問 1 下線部④ に関 して, 次 の図は 2 0 歳以上の男女を対象にした, 1 悩みや不安 を
感 じる内容 についての調査結果である。 この図の説明 として適当でな いもの
を,下の0∼④のうちから一つ選べ。 1
図 性 ・年齢層別 にみ た悩みや不安 の 内容 (複数回答)
家族 ・親族 間 の
人間関係
勤務先 での仕事や
人間関係
自分 の 生活
( 進学 ・就職 ・結婚)
家族 の生活
( 進学 ・就職 ・結婚)
現在 の収入や
資産 の見通 し
今後 の収入や
資産 の見通 し
家族 の健康
自分 の健康
7080(%)
(%)8070605040302010 0
□20∼ 29歳
圏30∼ 39歳 賜40∼ 49歳 田50∼ 59歳 圏60∼ 69歳 □70歳 以 上
国民生活 に関す る世論調査』(平成 19年 )よ り作成。
内閣府 『
① 「収入や資産 の見通 し」に関 しては, 男 女 を問わず, 現 在 よ りも今後 に不安
や悩み を感 じている人 の割合が高 い。
② 「勤務先 での仕事や人間関係」に関 しては, 男 性 では 3 0 代 が, 女 性 では 2 0
代が, 他 の年齢層 と比 べ て 高 い値 を示 している。
③ 「自分 の 生活 ( 進学
・就職 。結婚) 」に関 しては, 男 女 を 問 わず , 2 0 代 で 1 尚
んで い る人の割合が, 他 の年齢層 と比 べ て高 い。
④ 「健康」に関 しては, 男 女 を問わず , 自分 につ いて も家族 について も, 年 齢
層が高 い ほど, 悩 みや不 安 をもつ 人 の割合が高 い。
- 4 1 -
-41)
(2603-―
倫 理
問 2 下線部⑤に関して, 自 我同一性を見失っている心理状態の例として最も適当
なものを,次の0∼④のうちから一つ選べ。 2
0 定 年 で, 仕 事 を辞め, 空 虚 さを感 じて いた時 もあ りました。 今, これ まで
の 人生 を振 り返 って 自分史 を書 き始 めて い ます。思 いの ほか, た くさん の 人
にお 世話 になってきた 自分 を改 めて感 じています。
② 結 婚 を前提 に特定 の人 と付 き合 って いる友だちがお り, す ご く生活が充実
して い るよ うにみえます。 結婚 を焦 る気持 ち も正 直あ りますが, 今 , 仕 事が
充実 してお り, しば らく仕 事 をがんばろうかな と思 って い ます。
③ 小 学 生 の子 どもが い ます。 学校 に行 った り行か なか った りで, 友 だち と ト
ラブルがあった ので はな いか と心 配 です。 自分 の会社 での仕事 も忙 しく, 大
きな仕事 の責任者 となって い ます。 い ろ い ろと考 える ことが多 いです。
④ 子 どもも大学 に入 り, 家 を出ていきました。心 の 中 にぽっか りと穴が空 い
た感 じが続 いてい ます。 自分 の人生っていった い何だ ったのだろうか, 自分
の存在意義 って 何 な のだろ うか, い ろ いろと思 い悩 んで い ます。
一- 42 -一
(2603--42)
倫 理
問 3 下 線部⑥ に関連 して, エ リクソンは, 人 生を八つの発達段階に分けて, そ れ
ぞれの特徴 について記述 している。そのうち次の青年期以降の四つの発達段階
ア ∼ 工 とそ の特徴 A ∼ D と の 組 合 せ として 最 も適 当な もの を, 下 の0 ∼ ⑥ の う
ちか ら一 つ 選 べ 。 3
ア 青 年期
イ プ レ成人期 (成人前期)
ウ 成 人期 (成人中期)
工 老 年期 (成人後期)
A こ れ まで培 ってきた 自分 自身 に対す る認識 を基盤 として,特 定 の人 との友
情,愛 ,性 的親密 さを得 る こ とが求 め られ る。
B 自 分 は何者 な のか,何 をなす べ きな のか とい う自己 についての ゆれ を克 服
し,自 己確立 についての確信 を得 ることが求 め られ る。
C い ろ い ろな ことがあった これ まで の人生 のす べ て を, 自分 の もの として,
受 け入れ る ことが求め られ る。
D 次 の世代 を支 えて い く子 どもたちを生み,育 ててい く ことに対 し,積 極的
に関与す る ことが求 め られ る。
O ア ーB
② アーA
③ アーA
④ アー B
⑤ アーA
⑥ アー B
イ
イ
イ
イ
イ
イ
ーA
ーC
ーB
ーC
ーB
ーA
ウ
ウ
ウ
ウ
ウ
ウ
ーD
ーB
ーD
ーD
ーC
ーC
-43-
エ
エ
エ
エ
エ
エ
ーC
ーD
ーC
ーA
ーD
ーD
(2603--43)
倫 理
第 2問
次 の文章を読み,下 の問い(問1∼ 8)に 答えよ。(配点 24)
人間は喜怒哀楽 の 感情 をもつ動物 で ある。ただ, 喜 びや楽 しみの感情 を分 か
④
ちあって平安 を期待する ことはできるが, 怒 りや哀 しみの感情は他者へ の憎悪や怨
恨へ と変 わ り, 時 に復 讐 心を生み, 復 讐 の連鎖を引き起 こす ことさえある。そ し
て, そ こには単 に個人の問題ではすまされな い現実がある。古来, 人 間は このよう
な現実 といかに向き合ってきたのだろうか, 先 哲 の思索を見 てみよう。
古代社会 では, 復 讐 はある種 の 正義 と考 え られた。例えば, ⑥ 旧約聖書 にも
⑤
「
み られる 目には 目を, 歯 には歯 を」は, 制 限つきではあるが, 復 讐 を認める考え方
として知 られる。 しか し, この言葉 に対 して, イ エスは 「
だれかがあなた の右 の類
を打 つ な ら, 左 の頬 をも向けなさい」と教 え, ① クル アー ン ( コー ラン) には, 「そ
の報復 を控えて許すな らば, そ れは 自分 の罪 の償 い となる」とある。 いずれ も復讐
の抑止を説 いてお り, そ こに寛容 の心をみる ことができる。
ギ リシアでは, 「大切 にしな ければな らな いこ とは, た だ生きる こ とではな く
て, よ く生きる ことなのだ」とい う言葉で知 られる 4 が
, 「不正をなす こと,
不 正 をし返す こ と, … ……これ らは いずれ もいついかなる時 にも間違 って い る」と
言 って いる。 また, イ ン ドでは, ◎ ブ ツダが' 「怨みは怨みによって鎮まる ことは
な く, 怨 みを捨 てることによってのみ鎮まる」と言 い, 復 讐 につながる怨みや1曽
`し
みを抱 くことの非 を説 いている。
中国 にあっては, ① 老子は, 「怨み に報 いるに徳 を以 てす」と, 怨 み のある者に
報復 した い と思っても, 人 間 としての徳 をもって対応 したい ものだと言 う。また,
他者 に対す る思 いや りを 5 と
位置づ けた孔子は, 「直 を以 て怨み に報ゆ」と
言ったが, これ もまた 自分 に怨みを抱 く者 に対 しても公平無私な態度で対応すべ き
であると解釈する ことができる。 いずれも, 復 讐を肯定す る当時の社会 に警鐘を鳴
らして いる。
このよ うに, 先 哲たちは憎悪や怨恨を乗 り越える方途 を模索 し, 人 間の うちにあ
る寛容 の心を喚起 しようとした。 しか し, 復 讐 は 2 1 世紀 の今 も消滅 して いな い。
私たちは現代社会 のこの現実を深刻 に受け止 め, 一 人ひとりの心 に芽生える復讐心
か ら目をそ らさずに根気強 く克服 して い く努力が求められる。
―- 44 -一
(2603--44)
倫 理
間 1 文 章中の 4 ・
匡 5 : コに入れるのに最 も適当なものを, 次 のそれぞれ
の0∼④のうちから一つずつ選べ。
□ □
0 ク リトン
③ ソクラテス
② ゴルギアス
④ プロタゴラス
① 敬
③ 仁
② 恕
④ 忠
問 2 下 線部④ に関連 して,エ ピクロスが提唱した生活信条として最も適当なもの
を,次の0∼④のうちから一つ選べ。 6
0 感 情 を乱す原因 を避 けて 隠 れて生きる ことによって アタラクシアを求め,
安 らか に暮 らす。
ー
② 極 端 な感 情 を避 けて適切 に選択 できる メソテ スの獲得 と保持 を求めて暮
らす。
ー
③ 美 にあ こがれ るエ ロ スの感情 に突 き動か されて, ひ たす ら美 を求 めて 暮
らす。
④ 欲 望 を抑えて いかなる感 情 にも心 を動揺 させ ることのないアパ テイアを目
指 して暮 らす。
-45-
(2603--45)
倫 理
の説明と
調整的正義( 矯正的正義) 」
問 3 下線部⑤に関連 して, ア リス トテレスの「
して最も適当なものを,次の①∼④のうちから一つ選べ。 7
0 各 人 の業績 を精査 し, そ れぞれ の成果 に応 じて報酬│ を配分す る こと
② 加 害者 を裁 いて 罰 を与 え, 被 害者 に補償 を与えて公平 にす る こと
③ 知 性的徳 を備えた人が習性的徳 を備え, 完 全 に正 しい人 になる こと
④ 法 的秩序 を保ち, 人 間 として正 しい行為 をす る状態 に市民を導 く こと
問 4 下 線部◎ に関連 して, 次 の文章は旧約聖書の言葉 「
復讐するは我にありJ をパ
ウロが解説 したものである。これを読んで, パ ウロが理解 したこの旧約聖書の
言 葉 の 意 味 と して 最 も 適 当 な も の を, 下 の 0 ∼ ④ の う ち か ら 一 つ 選 べ 。
だれ に対 して も悪 に悪 を返 さず , す べ ての人 の前 で 良 いことを行 うよ うに心
がけなさ い。できれば, せ めてあなたがたは, す べ ての人 と平和 に暮 らしな さ
『
い。 ……次 のよ うに書 いて あ ります。 「
復讐す るは我 にあ り。 ……』と主 は言
われ る」。 「
む しろ, あ なた の敵が飢 えて いた ら食 べ させ , 渇 いていた ら飲 ませ
な さい。そ うすれ ば, 燃 える炭火 を彼 の頭 に積 む ことにな る」。悪 に負 けな い
で, 善 をもって悪 に勝ちな さい。
ロー マ 人 へ の手紙」)
( 新約聖書 「
① 復 讐 して もよ いのは, 正 当な理 由の ある場合だけである。
② 復讐すれば,後で必ず自らも復讐される。
③ 自 ら復讐す る こ とも, 他 人 に復讐 を依頼す る ことも禁 じられ る。
0 自 ら復警せず,神に任せなければならない。
―- 46 -一
(2603--46)
倫 理
問 5 下線部①を聖典とするイスラームについての記述として適当でないものを,
次の①∼④のうちから一つ選べ。 9
0 ア
ブラハム と同 じようにムハ ンマ ドもア ッラー か ら遣わ された。
一
ー
② ア ッラ とは全知全能 で, 子 をもたな い唯 絶対 の存在 で ある。
③ 財 産 に応 じて行 う喜捨 は, 為 政者 へ の献 金 として重 要 である。
④ メッカヘの巡礼は, ムスリムたちがあこがれる務めである。
問 6 下 線部◎ に関 して, ブ ッダの教えとして最 も適当な ものを, 次 の0 ∼ ④ の う
ちか ら一つ選べ。 1 0
0 心
を入 れ 替 えて 自分 を低 くし, 子 どもの よ うに無 垢 な心 とな って 天 の 国 に
入 れ。
② 社 会 的規 範 と して の 礼 儀 を身 につ け, 自 らを律 して 道徳 的 人格 を完 成 させ
よ。
③ 不 殺 生 な どの 道 徳 的戒 め を守 り,出 家 して 無所有 を徹底 し恒 常不 変 の 創造
神 を直 観 せ よ。
・
④ 無 常 無我 の 真 理 を悟 り, こ の 世 へ の 執着 を捨 てて 心 の 平 静 を実 現 して 安
らえ。
-47-
(2603--47)
倫 理
争いを避ける生き方」の説明として最も適当
問 7 下線部①に関して, 老 子が説く「
なものを,次の0∼④のうちから一つ選べ。 11
0 万 物 を利 し, 常 に人が嫌 う低 い地 に行 き, い かよ うにも対応す る こ とので
きる水 のよ うな生き方
② 絶 えず生滅 変化 し, あ らゆるもの を受 け入れ , 煩 悩 にまみれた ものを浄化
す る川のよ うな生き方
③ 人 為 をさしはさまず , 無 為 自然 の世界 に遊 び, 何 ものに も囚われな い真人
にな らう生き方
④ 四 季 の循環 をつ か さどり, す べ ての人にそ の努力 に応 じた恵みを もた らす
天 の命 に従 う生き方
問 8 本 文 の趣 旨 に合致す る記述 として最 も適 当な ものを, 次 の0 ∼ ④ の うちか ら
一 つ 選 べ。 1 2
0 人
間が復讐心 を克服す るには個 人 の意志 だ け では 限界が ある。だか ら こ
そ ,人 間 の知恵 の限界 を認め,寛 容 な絶対的存在 に復讐 を委ねて 平和 を実現
す る努 力が求 め られ る。
② 人 間 は感 情 に流 され やす い動物 で ある。だか らこそ ,い かな る不 正 に対 し
て も怒 りや憤 りを感 じる こ とな く,寛 容 な心 を発揮す る ことので きる社会 を
実現す る努力が求 め られ る。
③ 人 間 の心 には復讐心が 生 まれ ることがある。だか ら こそ,た だ復讐 を非 難
した り寛容 の心 を唱 えた りす るだ けではな く, 自分 自身 の復讐心 と向き合 う
努 力が求 め られ る。
④ 人 間 は 復讐心 と寛容 の心 との葛藤 に1酋み続 け今 に至 って い る。だか ら こ
そ ,葛 藤 して も意 味がな い ことを認識 し,復 讐心 か寛容 の心か のいずれか を
選 び取 る努 力が求 め られ る。
一- 48 十 一
(2603--48)
倫 理
第 3問
次 の文章を読み,下 の問い(問1∼8)に答えよ。(配点 24)
人が死 ぬ ことを他 界す るとい う。 この世を去 って他 の 世界 へ移 る とい う意味であ
る。 日本 で他界 は どの よ うに語 られてきた のだろうか。
『
古事記』によれ ば, 国 土 を生んだ伊邪那美 命 は火 の神 を生んで 傷 つ き, この 世
を去 る。 1 3 へ
妻 を追 った伊邪那岐 命 は, 妻 の変 わ り果 て た姿 に驚 いて 逃 げ
人間 を一
帰 り, そ こへ の道 を大 岩 で 塞 いで しまう。 伊邪那美命 は岩 の 向 こ うか ら「
日に千人殺 してや ろ う」と叫ぶ。 つ ま りこれは, 神 だけではな く人 間 の死 につ いて
の物語 で もある。ただ し, 他 界 は単 なる死 の国 ではな く, 神 々の生 々 しい力が生き
て いる本源的 な世 界 ともみなされ る。その場合 , 他 界 か ら神 を招き, 幸 を授か ろう
とする営みが祭祀である。折口信夫は, そ のように 幸をもたらす神や鬼をまれ
③
び とと呼 んだ。
仏教 では, 煩 1 酋の海 で ある この 世 に対 して, 悟 りの 世界 を彼岸 と呼 ぶ。 平安時
代, 末 法 の世 の到来 を間近に して, 源 信は 『
往 生 要集』とい う書物 を著 した。すなわ
ち, 彼 岸た る浄土 に 往 つて生まれ るための修行方法を説 いた ので ある。
⑤
江戸幕府 に仕えた 1 4 の
唱えた上下定分の理 という言葉か らも分かるよう
に, 当 時, 学 問の主流では, 現 世に関心がおかれていた。 荻生徊徐の経世済民
◎
も同様である。もっとも, 他 界の思想が消えたわけではない。今 日墓参の行事 と考
え られて い るお 彼岸 は, 沈 む太陽 を拝 み, 逮 かな極楽浄 土 を想 い観 る修行が 一 つの
起源 であった と言 われ る。 つ ま りお彼岸 の他界観 は, 伝 統的 な祖霊祭祀 と浄土思想
が 習合 したものであると言える。例えば近世に成立 した 古典落語か らも, こ
①
◎
れと同じ他界観の習合が, この時代に生きていた ことを読み取ることができる。
明治 にな り, 文 明開化 の機運 が高 まる と, ① 啓蒙思想や 民権思想が盛 ん に議 論
された一 方 で, 他 界 に関す る思想は, 公 的な議論か らます ます 閉 め 出 された。 日本
の近代化 とは, こ の 世 の合理化 を意味 したか らである。
しか し, 今 日もお 彼岸や お盆の行事 は営 まれて いる。柳田国男 によれば, 祖 霊 は
里か ら遠 くな い 山な どに とどまる と考 え られ た。それ な ら, 日本 人 は 多様 な 他 界
を, 身 近な 自然 のなかにそれ とな く意 識 して い る こ とになろう。 つ ま り, 他 界 は単
なる死後 の世界 ではな く, 自然は単なる自然 ではない。両者は輝然 として, 我 々の
命や魂 の在 り方 と関わ って, 今 もそ こか ら, 我 々の在 り方 を問 うて い るので ある。
一- 50 -一
(2603-50)
倫 理
間 1 文 章中の 1 3 ・
匡 1 4 ] に 入れるのに最 も適当なものを, 次 のそれぞれ
□□
のO∼④のうちから一つずつ選べ。
0 常世国
0 新井白石
② 黄泉国
② 熊沢蕃山
問 2 下 線部④ に関 して,次 の文章 を読 み,匡
を,下の0∼④のうちから一つ選べ。 15
③ 高天原
③ 林羅山
④ 章原中国
④ 山崎闇斎
の
玉コ に入れ るのに最 も適 当な も
狂言 『
節分』は, 蓬 蒸 とい う他界 か ら日本 に渡 ってきた鬼が, あ る屋 敷 の留守
居 の女性 に一 目惚 れ して しまい, 言 われ るままに隠 れ 表や隠れ笠 , 打 出 の小槌
な どの宝 を渡 して しまう, といった話 で ある。 もらえる限 りの宝 を受 け取 った
女性 は, 「福 は内 へ, 福 は内 へ。鬼 は外 へ」と囃 しなが ら豆 を投 げ, 鬼 を追 い
払 って しまう。 このよ うに見 ると, 節 分 の行事 において, 「福 は 内」と叫ばれ る
そ の福 とは A で
ある こ とが分 かる。
① 他 界 の鬼がそ れ を目当て に訪 れ る, この世 にある豊か さ
② 贅 呈 の鬼がそれ によって 人間を誘惑す る, 見 せか け の宝
③ 人 間が扮 した鬼が儀礼的 に人 々に分 け与え る村 の豊か さ
④ 人 々か ら豆 を投 げつ け られ る鬼が他界か ら運んできた宝
- 5 1 -
(2603-51)
倫 理
問 3 下線部⑤に関 して, 『往生要集』が重視した修行として最 も適当なものを,
次の0∼④のうちから一つ選べ。 16
0 -切
の 自力の修行を放棄 し,ひ たす ら阿弥陀仏 の慈悲 の力にすがる。
② 他 力にたよらず,ひ たす ら坐禅 に打ち込む ことを通 して悟 りを得 る。
③ 仏 や浄土の姿 に心を集中させ,そ れをありあ りと思 い浮かべ る。
④ 他 の教 えを排 し,妙 法蓮華経への帰依 を意味する題 目を唱 える。
問 4 下 線部⑥ に関 して,荻 生往徐についての説明 として最 も適当なものを,次 の
①∼④のうちから一つ選べ。 17
0 聖 人 の言葉 に直接触 れ るために古代 中国 の言語 を研究す る必 要 を訴 え, 後
の 国学 の方法論 にも影響 を与えた。
② 孔 子以来 , 儒 教が重要視す る孝 を, 人 倫 のみな らず万物 の存在根拠 とし,
近江聖人 と仰がれた。
③ 実 践 を重ん じる立 場か ら朱子学 を批判 し, 直 接孔子 に学 ぶ こ とを説 き,
『
聖教 要録』を著 した。
孟子』の原典 に立ち返 る ことを訴 え, 真 実無偽 の心 として 誠 の重要
④ 『論語』『
性 を主 張 した。
―- 52 -一
(2603-52)
倫 理
問 5 下 線部③ に関 して, 神 仏習合の説明として適当でないものを, 次 の0 ∼ ④の
うち か ら一 つ 選 べ 。 1 8
0 神 道 と仏教が重な り合 う ことを意味 し, そ れぞれ の要素 は変質 しつつ も消
滅 は しない。 神社 に神宮寺が おかれるな どはその例 で ある。
② 神 道 と仏教が重な り合 う ことを意 味 し, 神 道 または仏教 いずれかが支配的
に理 解 され る こと もある。 本地 垂述説な どはその例 で ある。
③ 神 道 と仏教が重 な り合 う ことを意 味 し, 神 と仏が同体 である とみな され る
こ ともある。 権現信仰な どはその例 である。
一
④ 神 道 と仏教が 重な り合 う ことを意 味 し, そ の ことで 両者は つの教 えへ と
昇華 され る。 近代 の国家神道な どはその例 で ある。
―- 53 -一
(2603-53)
倫 理
問 6 下線部◎に関して, 次 の引用はある古典落語の一部である。場面は, とある
事 情 か ら死地 に赴 く ことに 同意 して しまったお 人好 しの金 蔵 が , 世 話 にな って
い る親 分 に対 して , 「 田舎 へ 旅 に 出 る」と嘘 をつ きなが ら別 れ の あ い さつ を しよ
う と して い る と こ ろで あ る。 B に
入 れ る の に 最 も適 当 な も の を, 下 の
0∼④のうちから一つ選べ。 19
親 分
「で, 田 舎 とい って, ど っちへ い くんだ ? 」
金 蔵
「ええ,
親 分
「目あて があってい くんだろうが, い つ ごろ帰 るつ もりだ ? 」
金 蔵
「盆 の十 三 日には帰 ります」
親 分
「ふ ― ん, そ んな に長 くかか るのか。 す ると, だ いぶ遠 いな」
金 蔵
「ひ との うわさで, な んで も十万億土 とか ……」
B へ
まい ります」
(「
品川心 中」興津要編 『
古典落語 ( 続) 』
所収)
① 束のほう
② 西のほう
③ 南のほう
④ 北のほう
-54-
(2603--54)
倫 理
問 7 下線部①に関連 して, 中 江兆民から唯物論的な思想を学んだ幸徳秋水につい
て の 説 明 と して 最 も適 当 な も の を , 次 の 0 ∼ ④ の うち か ら一 つ 選 べ 。 2 0
0 国
は人 民 によってできた もので あると平易 に民権思想 を説 き,主 権在民 を
謳 い抵抗権 を認める私擬憲法 を起 草 した。
② 国 を支 える農業 と農 民 を大切 に考 え,農 民が苦 しむ公 害問題 を解決す る運
動 に身 を投 じ,そ の解決 の必 要性 を説 いた。
③ 東 洋 の学問 を実 生活 に役 立たな い虚学 ,西 洋 の学問 を実生活 に役立 つ実学
と呼 び,後 者 を学 ぶ ことの必 要性 を説 いた。
④ 社 会 主 義 の 立場 か ら,当 時 の帝 国主 義 を,愛 国心 を 経 と し軍 国主 義 を
孫
尋 とす る 20世 紀 の怪物 と呼び,批 判 した。
問 8 本 文 の趣 旨 に合致す る記述 として最 も適 当な ものを,次 の0∼ ④ の うちか ら
一 つ 選 べ。 2 1
① 他 界 は, 死 後 の 世界 として意 識 され るだ け でな く, 命 の本源や神 との 関
係, 魂 の行方 な い しは死生観 に関す る種 々の考 えが重 層的 に含 まれ る世界 と
して, 今 も身近な と ころに存在 している。
② 他 界 は, 死 後 の世界 として意 識 され るだけでな く, 人 間 と人 間を取 り巻 く
自然 との理想的な関係 として, ま たそれ に基 づ く人 間 の あるべ き未来 を映 し
出す鏡 として, 今 も大切な もの とみな されて い る。
③ 他 界 は, 死 後 の世界 で あるばか りでな く, 我 々の 目を この世 の現実か ら背
けさせ る 力を実際 にもつので, 祖 先へ の敬意は大事 に しつつ も, この世 の 問
題 と区別 し, 日 常 には もち込 まな い ことが大切 で ある。
④ 他 界 は, 死 後 の世界 であるばか りでな く, 現 実 にこの世 の 出来事 を左右す
る大 きな力をもって い るので, 寺 社 に参詣 し, ま た, お 彼岸や お盆 を大切 に
す る ことによ って , 他 界か らの問 いに正 しく答 える こ とが必 要 である。
十- 55 -―
(2603-55)
倫 理
第 4問
己点 2 4 )
次 の文章 を読み, 下 の問い ( 問1 ∼ 8 ) に 答えよ。 ( 酉
この世界 にお ける確実な ことを見通す困難 さは, 闇 に讐 え られる。闇の中を生き
ていくため には光が要 る。 西洋近代哲学は そ の光 を理性 に求 め, そ れ によって
③
世界を隈な く照 らしだそ うとした。 ここでは, 西 洋近代 にお ける理性 の歩みを振 り
返 り, 現 代 にお ける理性 の意義を考えてみよう。
デカル トは, 確 信 をもって人生を歩 むために真偽 を識別する新 しい原理 を探求
コギ ト( 私は考える) 」
し, 哲 学 の第 一原理 となる 「
を探 り当てた。 いわば 闇 を照
⑤
らす光 で ある。 この光 としての理性 の能力を吟味したカン トは, 現 実 の人間が いか
に欲望に流されやすくとも,⑥ 人間 の意志 は道 徳法則 を義務 として 受 け止め,か
つ それ に従 い うるので あ り,そ こに理性的存在 として の人間 の 自由があ るとした。
これ に対 して ヘ ー ゲルは,カ ン トにお ける理性 と 自由 との関係がな お 22 な
も
のにとどまるとした。彼は歴史 を精神 の 自己展開 の過程 と把握 し,そ こで精神 の本
質 である 自由が実現 され ると考 えた ので ある。 この よ うに,西 洋近代哲学 にお いて
理性は,世 界 を光 の王国 につ くりかえる自由の原理 と考 え られた ので ある。
しか し,ガ ス 灯や電灯 で 闇 を追 い払 った 近代文明が様 々な 問題 を抱 えて いたよ う
に, 理 性による光の王国も多 くの問題を卒んでいた。キルケゴールは, ① 倫理的
で あ ろ う とす る と絶望 せ ざるを得 な い 人 間 の現 実 を直視 した。 そ こか らみれ ば , 理
性 を通 じた 自由の実現 とい う構想 は, 人 間 の現実 を無視 した空論 にす ぎな い。 この
よ うなキルケ ゴール の考 え方 は, 後 の E 2 3 コ な どに影響 を与え, 実 存主義 の道 を
切 り開 いた。他 方, ヘ ー ゲル哲学 を事実か ら切 り離 され た空論 に陥 って い ると批判
したパー スは, 行 動 に立ち返って 思考 を明晰にす る方法 を発展させ, プ ラグマ
◎
テ ィズムを提唱 した。 両者は理性を人間の生の営みのなかに位置づけて世界 を捉 え
直 し, そ れぞれ の立場か ら現代 にお ける哲学 の課題を明 らかにしたのである。
戦争や環境破壊 の危機 に直面す る現在, 近 代文明を推進 した理性 の見直 しはます
ます差 し迫 った課題 となって いる。現代では, 光 としての理性 の有す る特権的な位
置づ けは失われ, ① 人間理性は人 々の 日常 の行為や言語 の働きか ら理解 され るよ
うになってきた。理性に対す るこのような反省は, 近 代理性 の光 の及ばぬ暗が りを
探 り出 し, 人 間社会 のあ り方 に対 して 型 たな展望 を与 えようとす る試み と言え
③
よう。
- 56 -
(2603-56)
倫 理
間 1 文 章中の 2 2 ・
の
匡 2 3 ] に 入れるのに最 も適当なものを, 次 それぞれ
の0∼④のうちから一つずつ選べ。
22
0 具
23
体的
()
由夕
R白匂
チ
ハ
ア
ウ
18
軍
全
東
景
妥
③ 客観的
④ 主体的
② ベルンシュタイン
④ フッサール
問 2 下 線部④ に関連 して, 人 間の理性という光をもって世界を照らし出そうとし
た西洋近代の思想を啓蒙思想という。フランス啓蒙思想家の説明として最 も適
一つ選べ。E王
当なものを
,次の0∼④のうちから
互
コ
ー
① モ ンテスキ ュ は, 人 民 の革命 によって絶対王政 を転覆す べ きだ とした。
ー
② ヴ ォルテ ルは, ロックの経験論 に学 び宗教的 な迷 信や偏見 を批判 した。
百科全書』を編纂 した。
③ デ ィ ドロは, 王 政 の保護 の もと, 宗 教 を擁護す る 『
= シ モ ンは, 資 本主義 の科学的分析 に基 づいて 理想社会 を構想 した。
④ サ ン
コギ ト」
から出発して精神を理解 した。精神
問 3 下 線部⑤に関して,デ カル トは「
に 関す るデ カル トの 見解 と して 最 も適 当な もの を, 次 の 0 ∼ ④ の うちか ら一 つ
選 べ。 2 5
0 精 神 は,人 間 の根源 にある欲望 を統御す る良心 で あ り,教 育 を通 じて社 会
の規範が内面化 された ものである。
② 精 神は,誠 実な る神 によって 人間 に与 え られた良識 であ り,信 仰 に応 じて
各人 に配分 されて い るものである。
③ 精 神は,思 考 を属性 とす る実体 であ り,延 長 を属性 とす る物体 である身体
か ら明確 に区別 され るものである。
④ 精 神は,客 観的 な真理 を追究 しよ うとす る高通 の心 で あ り,情 念 との関 わ
りをもたず に存在す るものである。
一- 57 -一
(2603-57)
倫 理
問 4 下 線部⑥のように道徳を捉えたカントに対 して, 功 利主義者ベンサムは行為
の判断基準として行為の結果を重ん じた。後者の考え方による発言 として最 も
適 当 な も の を,次
の ① ∼ ④ の う ち か ら一 つ 選 べ 。
E至 亘コ
0 「 私 は, ど んな状 況下 で も聴 をつ くべ きではな い と考 えて い るので, 自分
に不利益が及 ぶ として も, 正 直 に話 をす ることにしている。」
② 「私 の行動原則 は, そ の時 々の 自分 の快楽 を最大 にす る ことだか ら, 将 来
を考 えて今 を我慢す るような ことは しな いこ とに している。
」
③ 「社会 の幸福 の総和が増大す る として も, 不 平等が拡大す るのはよ くな い
か ら, ま ずは個 々人 の平等 を実現す べ きだ と, 私 は考 える。」
④ 「自分 の行動が 正 しいか どうか に不安 を覚 えるとき, 私 は, そ の行動 を と
る こ とによって人 々の快楽 の量が増えるか どうかを考 える。
」
問 5 下 線部①に関して, キ ルケゴールはどのように考えたか。その説明として最
も適 当 な も の を , 次 の O ∼ ④ の うち か ら一 つ 選 べ 。
E王 =コ
0 本 来 の 自己 を見失 って絶望す る人 間は,理 性 によっては根拠 づ け られ る こ
とのな い信仰 へ の決断 によって,本 来 の 自己 を回復 できる。
② 現 世 の悪 に絶望す るキ リス ト者 は,神 か ら与 え られた現世 の務 めに専心す
る ことによって,人 間 として の本来 の あ り方 を獲得 で きる。
③ 超 越的な神が もはや存在 しな い現実 に絶望す る人 間は, 自 ら覚悟 をもって
価値創造 に挑 む こ とで,本 来 の力を獲得す る こ とができる。
④ 肉 体 を支配す る悪 の原理 に絶望す るキ リス ト者 は,信 仰 による決断を通 し
て,魂 を肉体か ら解放 し,本 来 の改郷 に帰 る ことができる。
一- 58 -―
(2603-58)
倫 理
問 6 下線部◎に関して, パ ースにおいて思考を明晰にするとは, 行 動を導 く信念
の 意 味 内容 をは っき りと捉 え る ことで あ った。 これ に 関す る次 の 文 章 を読 み ,
パ ー ス の考 え 方 の 説 明 と して 最 も適 当な もの を, 下 の0 ∼ ④ の うちか ら一 つ 選
べ。
2
8
信 念 の 本 質 は , 習 慣 を確 立 す る とい う ことで あ る。 そ して ,信 念 の 違 い は ,
そ の 信 念 によ って 生 み 出 され る行 動 の仕 方 の相 違 によ って 区別 され る。 も しも
信念 が , 行 動 の仕 方 と い う点 で 異 な って い るので な けれ ば …… ,そ れ らの 信 念
の 意 識 の仕 方 が 異 な って いて も, そ れ らを異 な った 信念 だ とす る こ とはで きな
い。 そ れ は , あ る 曲 を異 な った 調 で 演奏 して も,異 な った 曲 を演 奏 して い る こ
とにはな らな いの と 同 じ こ とで あ る。 表現 の仕 方 で 異 な って い るだ け の 信念 は
しば しば 異 な った もの とされ るが , そ の 区別 は 架 空 の ものな ので あ る。
い か に してわれ われ の 観念 を 明晰 にす るか 」)
( パー ス 「
0 思
考 を 明晰 にす るた め には , 同 じ習慣 的 な 行 動 で あ って も,異 な った 信 念
に導 かれ て い る こ とに注 意 す べ きで あ る。
② 思 考 を 明晰 にす るた め には , 主 観 的 な 信念 の違 いにで はな く,客 観 的な行
動 を導 く意 識 の違 い に注 意 す べ きで あ る。
③ 思 考 を 明晰 にす るた め には , 信 念 の 表現 の 違 い にで はな く,信 念 が 生み 出
す 行 動 の 仕 方 の違 い に注 目す べ きで あ る。
④ 思 考 を 明晰 にす るた め には , 人 間 の 内面 に 隠 れ て い る意 識や 信念 の 相違 を
言 い 表す 表現 の違 い に注 目す べ きで あ る。
十- 59 -一
(2603-59)
倫 理
問 7 下 線部①のあり方を批判的に検討した現代の思想家フーコーについての記述
として最も適当なものを,次の0∼④のうちから一つ選べ。 29
0 西 洋哲学 を成 り立たせ て きた主体 な どの概念が覆 い隠 してきた 問題 を, 歴
史 のなか で新た に問 うために脱構築 を主張 し, 理 性 の概念 を捉 え直 した。
② 理 性 と狂気 とが 区別 され るようになってきた 西洋 の歴史 を分析 し, 確 固 と
した理 性 とい う考 えが歴 史 の過程 の産物 で ある ことを明 らかに した。
③ 非 西洋 の未開社会 の実地調査 を通 して, 西 洋社会 とは異 なる独 自の思考体
系 を見 いだ し, 西 洋 の理性的思考 を特権化す るような考えを斥 けた。
顔」とい う言葉で表現
④ 自 己意識 のな か に取 りこめな い他者性が現 れ る場 を 「
し, そ のよ うな他者 に向き合 えな い理性 の暴力性 に照明を当て た。
問 8 本 文の趣旨に照らして, 下 線部③の「
新たな展望」とはどのようなものである
と考 え られ る か 。 そ の 記 述 と して 最 も適 当 な も の を , 次 の 0 ∼ ④ の うち か ら一
つ 選 べ。 30
0 近 代理性 は,具 体的 な 日常 のなかで生きるため の知恵を提供 できなか った
ために,戦 争や環境破壊 を招 いた。今後は, 日常 の知恵を教える権威 に従 っ
て,知 恵 に基 づいて 生きる道 を模索す べ きで ある。
② 近 代理性 は,社 会的存在 であることに伴 う義務 を軽視 してきたために,社
会 を不安定 に し,人 間疎外 を招 いた。今後 は,伝 統的 な社会的規範 の意義 を
見直 し,義 務 を 自覚す る道 を模索す べ きである。
③ 近 代理性 は,未 開 の 間 を克服 して光 の文明社会 を建設 しようとしたが,自
然破壊 な ど新 たな野蛮 に陥 った。 今後 は,理 性 の みな らず 感情 に も 目を向
け,内 なる自然 に従 う道 を模索す べ きである。
④ 近 代理性 は,自 由を実現す る主 体 として優越 的な地位 を与 え られて きた
が ,様 々な 問題 の源 ともなって い る。 今後 は, 自由の主体 としての理 性 を捉
え直 し,対 話 によって生きる道 を模 索す べ きである。
一- 60 -一
(2603-60)
倫 理
第 5問
次 の文章を読み,下 の問い(問1∼ 7)に 答えよ。(配点 20)
正 しい行 為 とは何か。 この 問 い は, 誰 が, ど の よ うな状況で発す るのか によっ
て, 答 えが 変 わ り得 る 問 いで ある。だか ら こそ, 先 哲 は現代 に至 るまで, ④ 誰 の
立場か ら見 て も正 しい と思える行為 の原理や ル ール を発見 しようとしてきた。
しか し, 既 存 のル ールが本 当に正 しい行為 を命 じているのか どうか を反省す る こ
な事態 が
とな く, た だル ー ル に従 う ことが正 しい と考 え られ て しまった とき, 悲 1 参
生 じる こ とがある。 例 えば, ナ テス ・ドイツ のフ ァシズム体制 のもとで, ユ ダヤ人
を強制収容所 に送 る任務 についていたアイ ヒマンは,第 二次世界大戦後,⑤ 人道
に対す る罪などが問われた裁判のなかで, 自分 は法律 に忠実 に従 い, 自分 に課せ ら
れた義務 を果た して いるとい うことに疑 いを抱かなかったと述べた。
大戦 を経験 した後,⑥ 個人 を平等 に尊重する社会 の構成原理 を見 いだそ うとす
る従来 の試みのなかか ら,新 たな傾向が現れた。それは,私 たち一人ひとりが具体
的な状況 に 目を向け,人 々が 現 に感 じて いる苦 しみを和 らげるために何が でき
①
るのかを考 えようとするものである。心理学者のキャロル ・ギ リガンは,人 と人 と
の間 にすでに存在 して いる関係性 のなかで他者 を気遣 うことや,他 者 との間に新 し
い関係 を築 こうとする ことの道徳的重要性 を説 き,そ のような倫理観 を ケアの
◎
倫理 と呼んだ。
ケアの倫理 は,① 家族 にお ける子 どもと親 といった,身 近な関係 のみにふ さわ
しい倫理 と考え られがちである。 しか し,私 たちは,そ うした関係 を越え, 自分 と
は異なる状況におかれている人々の存在 を想像す ることができる。皆が正 しい と考
えるルールに従 って いるとしても,そ れだけでは,他 者か らの必要な配慮が得 られ
ず に苦 しみ続ける人が いるかもしれない。そ のように問い直す ことは,よ り広 い社
会 のなかで様 々な状況 におかれた私たち一人ひとりに目を向ける ことの大切 さを気
づかせて くれる。だとすれば,EA]。
十- 62 -一
(2603-62)
倫 理
問 1 下 線部④ に関 して, こ のようなルールを確立しようとした第二次世界大戦後
の哲学者の一人にハーバーマスがいる。ハーバーマスの考え方についての説明
として最も適当なものを,次の0∼④のうちから一つ選べ。 31
① 他 者 の権利 を侵 害 しな い限 り, 私 たち の 自由は平等 に尊 重 されるべ きであ
る。ただ し, 自由競争 によって生 じる不平等 につ いて は, 社 会 において 恵 ま
れな い立 場 にある者たち の生活 を改善す る限 りで許 され る。
② 人 は, 互 いに合意 に至 る ことを可能 にす るような理 性 をもって い る。 した
が って, そ のよ うな理性 を対等 な立場が保障 された うえで使用す るな らば,
万人が同意す る こ とができる社会 のル ール を発見 できる。
ー
③ 人 は, 互 いの 自由や財産 を権利 として尊重す るべ きだ とい うル ル を理 解
できる理性 をもっている。そ して, 各 人 の 自由や財産 をよ り確実 に保障す る
ため に, 合 意 の もとに政府 を設立す る。
一
④ 自 己利益だけでな く, 万 人 に共通す る利益が第 に考 え られ るべ きだ とい
う一般意志 が存在す る。そ して, そ れ を強 制す るル ー ル に基 づ く社会 を築 け
ば, 個 人 の権利 と 自由は保障 され る。
問 2 下 線部⑤ に関連 して, 第 二次世界大戦後, 国 家や軍の非人道的な行為を防 ご
うとする努力が重ね られている。そのような国際社会の試みに関する記述 とし
て最も適当なものを,次の0∼④のうちから一つ選べ。 32
ー
0 1990年 代 に地雷禁止国際キ ャ ンペ ンが 始 ま り,オ タ ワ条約が結 ばれた
が,軍 事大国 の アメ リカ合衆国や ロシア連邦 な どは批准 して いな い。
② 1990年 代 にル ワンダ 内戦な どで 犯 され た罪 を裁 くた め に,臨 時 の 国際刑
事裁判所 が設 置 されたが,常 設 の国際刑事裁判所はまだ設置 されて いな い。
`
③ 非 人道的な兵器 の使用 を防 くため に国際社会は努力 して い るが,化 学兵器
については 同意が得 られず ,国 際条約はまだ採択 されて いな い。
④ 束 西冷戦下 では,核 を保有す る ことで戦争 を抑止できるとす る議論が盛ん
で あったが,現 在 では保有国 にお け る核兵器製造 は禁止 されて い る。
- 6 3 -
(2603-63)
倫 理
問 3 下 線部⑥ に関して, あ らゆる人びとが平等に尊重されるための取組の例 とし
て適当でないものを,次の0∼④のうちから一つ選べ。 33
0 国
際連合教育科学文化機関憲章 (ユネス コ憲章)は,第 二次世界大戦 にお い
て被災 した子 どもを救援す る ことを 目的 とし,児 童 と青年 が個人 として生活
す るための十分 な社会 整備がなされ るべ きだ と宣言 している。
② 世 界人権宣言 は,第 二次 世界大戦後 に諸国民 の友好関係 の発展 を奨励 し,
世界 のす べ ての人が,人 種,皮 膚 の色,性 ,宗 教な どによって差別 を受 ける
こ とな く,生 まれなが らに平等である ことを主張 して いる。
③ 児 童 の権利 に関す る条約 (子どもの権利条約)は,子 どもたちの完全 で調和
の とれた発達 を促すた めに特別 な保護 を与 える必 要性 を認識 し,子 どもへ の
差別 を禁 じ,そ の 自由 と権利 を実現す ることを宣言 している。
④ 女 性 に対す るあ らゆる形態 の差別 の撤廃 に関す る条約 (女子差別撤廃条約)
は,社 会 と家庭 にお ける伝統的な性別役割 を変更す る ことも,男 女 の完全な
平等 を達成す るためには必 要 で あると主張 して い る。
一- 64 -一
(2603--64)
倫 理
間 4 下 線部① に関連 して, 世 界保健機関( W H O ) は , 次 のように緩和ケアを定義
した。その定義 における苦痛 については, 図 のような説明が考えられる。定義
と図を踏まえたうえで, 緩 和ケアの考え方として適当でないものを, 下 の0 ∼
④のうちから一つ選べ。 34
定 義
緩和ケ ア とは, 生 命 を脅かす疾患 による問題 に直面 して い る患 者 とその家族
に対 して, 疾 患 の苦痛 , 身 体的問題 , 精 神的問題, 社 会的問題 , ス ピリテ ュア
ルな ( 霊的 な, 魂 の) 問題 に関 して, 早 期か らきちん とした評価 を行 い, そ れが
障害 とな らな い ように予防 した り, 対 処 した りす る ことで, ク オ リテ ィー ・オ
ブ ・ライ フ ( 生活 の質, 生 命 の質) を改善す るためのアプ ロー チ である。
( 世界保健機関 W e b ペ ー ジ)
図
社 会 的苦痛
仕事 上の問題, 経 済的な問題,
家庭内の問題など
精 神 的 苦痛
不安, うつ状態, 恐 れ,
孤独感, 怒 りな ど
全 人的苦痛
( トータル ・ベイ ン)
身体 的 苦痛
痛 み ,治 療 の 副 作 用,
日常生活 の支障な ど
ス ピ リチ ュアル ・ベ イ ン
人生の意味や苦 しみの意味 に対す る悩み,
死の恐怖な ど
0 緩 和 ケ アは, 末 期 治療 に限定 され る もので はな く, 治 療 の過程 に生 じる
様 々な苦痛 を和 らげよ うとす るアプ ロー チである。
オブ・ライフには, 患者
② 緩和ケアが改善しようとしているクオリティー・
本人 だけでな く,患 者 をとりま く家族 の生活 の質 も含 まれ る。
・
③ 緩 和 ケア とい う考え方 は,患 者が感 じて いる苦痛 を分類 し,ケ ア スタ ッ
フが,患 者 の身体的苦痛 に集 中 して治療 できるようにす る。
ー
④ 緩 和ケ アとい う考え方 は,治 療 の間 に変化す る患 者 のエ ズ にこたえるた
めに医療従事者 と患 者 のコ ミュニ ケー シ ョンを重視 している。
-65 -
(2603-65)
倫 理
女) とジェイク
問 5 下線部◎ に関 して, 次 の文章は, ギ リガンがエイミー ( 1 1 歳
( 1 1 歳男) の二 人 に行 った イ ンタ ビュー を分析 した もので ある。そ の分析 の な
か で, ギ リガンは, エ イ ミー の責任感 にケアの倫理が典型的 に表 れて い ると考
えた。次 の文章 も参考 にしつつ, ケ アの倫理 の説明 として最 も適 当な もの を,
一つ
ち
から
。E35コ
選べ
下の
0∼
④のう
ジェイ クにとっての責任は,他 の人 の ことを考えて, 自分 が した いこ とは我
慢す る こ とを意 味 しています。それ に対 して,エ イ ミー にとっての責任 は,他
の人が彼女か らされた い と願 って いることをす る ことを意味 して い ます。 二 人
とも,人 を傷 つ け る ことを避 けよ うとしているのですが,異 なる仕方 で 問題 を
見 て い るのです。 ジェイ クは,攻 撃的 な ところを見 せ ると人は傷 つ くと考える
ので すが,エ イ ミー は,応 答 されな い ことで 人は傷 つ くと考 える のです。
(キャ ロル ・ギ リガ ン『もうひ とつの声』)
0 ケ
ア の倫理 によれば,私 たちには他者 との関係性が大切 なので,他 者に対
す る危害 を禁止す るような 一般的なル ールが存在す る。
② ケ ア の倫理 によれば,人 は生きるためにお互 いに配慮 し合 うべ き存在であ
るか ら,積 極的 に他 の人 々 を気遣 わなければな らな い。
③ ケ ア の倫理 によれば,私 たちは 自分 の行為 が人を傷 つ ける ことがあ り得 る
ことを認識 し,他 者 に干渉す ることは避 けなければな らな い。
④ ケ ア の倫理 によれば,私 たちが他者 を頼 りにす るのは当然であ り,そ の こ
とによって他者 が傷 つ くか もしれな い とまでは考 えな くともよ い。
―- 66 -一
(2603-66)
倫 理
間 6 下 線部① に関連 して,現 在の日本社会における家族のあり方に関する記述 と
して最も適当なものを,次の0∼④のうちから一つ選べ。 36
0 ラ
イ フスタイル に関す る考 え方 が多様化 し,家 族構成員同士が性別 にとら
われず世話 し合 う傾向が高 まった ので,一 世帯あた りの家族構成員数 は増加
傾 向 にある。
② 「人は女 に生 まれな い。女 になるのである」とい う言葉 に表 れて い る意 識が
広 く浸透 し反省 を促 したので,夫 も妻 と同 じように家事 ・育児 を担 うよ うに
なって い る。
③ 男 性 に比 べ 女性は,結 婚や育児 を理 由に仕事 を辞める者 の割合が依然高 い
が,子 が成 長す るにつれ て,パ ー トタイム労働者 として 再就業す る者 が多
い
。
が増加 した結果 , 夫 婦
④ 男 女共同参画社会基本法 の施行以降, 女 性 の労l S J 者
どち らか の親 と同居 し, 親 に家事 な どを分担 して も らう傾 向が高 まって い
る。
問 7 本 文 の趣 旨 を踏 まえて,
A に
入れ る記述 として最 も適 当な ものを, 次
の0∼④のうちから一つ選べ。 37
0 正
しい とされて いる行為 のル ールは, 私 たち の 身近 な人 間関係 を問 い直す
機会 を与 えて くれ , よ り公 平 な家族関係 を築 く可能性 をもって いる
ー
② 正 しい とされて い る行為 のル ルは, 公 平 な社会 という原理 には 問題 があ
る として, 社 会 をよ り親 密 な 関係 へ と作 り変 える可能性 をもっている
③ ケ ア の倫理 は, 私 たちが現在築 いている関係 には 問題 がある として, 人 と
人 の密接 な関係 を批判的に問 い直す可能性 をもって い る
ー
④ ケ アの倫理 は, 私 たちが正 しい行為 のル ル に従 って い るだ けでは不十分
で あるとして, 社 会 を批判的に問 い直す可能性 をもって いる
-67 -一
(2603--67)
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