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Title 不意移動ストーリーの読みなおしによる幼児の誤信念理 解の促進

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Title 不意移動ストーリーの読みなおしによる幼児の誤信念理 解の促進
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不意移動ストーリーの読みなおしによる幼児の誤信念理
解の促進 : ワーキングメモリとの関連から
小川, 絢子
京都大学大学院教育学研究科紀要 (2010), 56: 401-410
2010-03-31
http://hdl.handle.net/2433/108465
Right
Type
Textversion
Departmental Bulletin Paper
publisher
Kyoto University
京都大学大学院教育学研究科紀要 第56号2010
不意移動ス トー リーの読みなお しによる幼児の誤信念理解の促進
一 ワー キ ング メモ リとの 関連 か ら一
小川 絢子
問題 と目的
自己や 他者 へ の 心的帰 属(Premack&WoodrufE,1978)の
能 力 を検討す る 「
心 の理論(theoryofmind)」
研 究 は,国 内外 で非 常 に盛ん に行 われ て きた 。 「
心 の理 論 」 とは,広 義 には 自己や 他者 へ の心 的帰 属 で あ り,自
己や 他者 の行 動 を予 測 した り,説 明 した りす る為 の,心 の働 きにつ い ての知 識 や原理 の こ と(信 念,意 図,願 望,
感情 な ど様 々 な心 的状態 の推 論 を含 む)で あ る。ただ し,狭 義 に は,自 分 の考 え とは異 なる他 者 の誤 った 考 え(誤
信念)や 行動 を推測 す る能 力 の こ とを意 味 してお り,幼 児 の誤信 念理 解 の能 力 は,他 者 の心 的状 態 を質 問す る誤
信念 課題(Wimmer&Perner,1983)を
使 用 して,検 討 され る こ とが多い。 誤信 念課 題 の多 くは,「 主 人公 の不
在 中 に,対 象 の場 所 が移 動す る」 とい う不意 移 動ス トー リー を,絵 本 や人 形劇 の形 式 で子 ども に呈示 し,そ の後
予測 質 問 と して 「
戻 って きた 主人 公 は,対 象 のた め に どこを探 す か?」 を尋 ね る。多 くの先 行研 究 か ら,子 ども
は4歳 以 降か ら主 人公 の誤 信念 を理解 し,主 人公 は対象 の入 ってい な い誤 った場 所 を探 すだ ろ うと予測 で き るよ
うにな る こ とが示 され てい る。
近年 の研 究 で は,「 心 の 理論 」 を含 む心 的状 態推 論 の能 力 の具 体 的 な内容 を検 討 す るだ けで は な く,そ の 心
的状 態推 論 の発 達 を支 え る言語 な どの認 知 的 要 因に対 す る検 討 が な され て きた 。特 に最 近 で は,幼 児 の心 的状
態 推論 に関連 す る要 因 として,「 心の理 論 」と実 行機 能(executivefUnction)と
の 関連 が指 摘 され て きて い る。
実 行機 能 とは,目 標 に到 達 す るた め に行動 や 思考 の計 画,調 整,コ ン トロール な どを行 う機 能 の総 称 で あ る。
幼児期の 「
心の 理論 」 の よ うな心 的状 態推 論 は,自 己の持 つ 現在 の優 勢 な情 報 を抑 制 し,他 者 の情 報 を活1生化
させ る 「
抑制 制御(inhibitorycontroD」
の機 能や,ス
トー リー 中の 情報 を処 理 しつ つ保持 して お き,必 要 な と
き に情報 を利 用す る 「
ワー キ ング メモ リ(wor㎞gmemOly)」
る(Carlson&Moses,2001;小
川 ・子安,2008;小
の機 能 の発 達 と関連 す るこ とが示 され て きて い
川 ・子 安,印 刷 中)。
特 に,「 心 の理論 」 とワー キ ング メモ リの 関連 につ いてDavis&Pratt(1995)は,数
課 題 の成 績 の相 関 が高 い こ とを示 し,「 心 の理 論 」課 題 に とって は,1つ
逆 唱課 題 と 「
心 の理論 」
の課 題状 況や ス トー リーに対 して,
自己 と他 者,現 実 と誤信 念 とい った複 数 の表象 を保持 してお く必 要 が あ る としてい る。 た だ し,抑 制制 御 な ど
の下位機 能 と比較 した場 合 には,「心 の理論 」との 関連 がそれ ほ ど強 くない こ とが示 され てお り(Carlson,Moses,
&Breton,2002;Hughes,1998),結
果 は一 貫 して いな い。 さ らに,ワ ー キ ング メモ リを実行 機 能の 中の1つ
の下位 機 能 とみ なす か,実 行機 能 に影 響 を与 え る別 の要 因 とす るの か とい う点 や,実 施 され てい る課 題 が ワー
キ ン グメモ リの 何 を測 定 してい るの か とい う点 につ いて は,「 心の 理論 」研 究 の 中で は,ほ とん ど検討 がな さ
れ て こなか った 。従 っ て,ワ ー キン グメモ リの うち何 の機 能 が,他 者 の誤信 念 理解 に 特 に影 響 す るの か を詳細
に検討 して い く必 要 が あ る。例 えば,Picke血g&Gathercole(2001)は,幼
一401一
児 に も遂 行可 能 な ワー キ ングメモ
京都 大 学大 学 院教 育 学研 究科 紀要
第56号2010
リ課 題 の 中で も,中 央実 行 系 の働 き を測定 す る課 題 として,数 逆 唱課 題 を挙 げて い る。 ま た,音 韻 ルー プの働
き を測 定す る課 題 として,数 順 唱課 題,視 空 間 スケ ッチパ ッ ドの働 き を測 定す る課 題 と して,ブ ロ ック位 置再
生 課 題 を挙 げて い る。
小 川 ・子安(2008)は,実
行 機能 の課 題 と誤 信念 課 題の 関連 を検 討 し,誤 信念 課 題 の成績 と実行機 能 の 下位 機
能 で ある ワー キ ングメモ リの課 題,特 に単語 逆 唱ス パ ン課 題 との相 関 が,語 彙 能力や 月齢 を統制 して も高い こ と
を示 した。 そ して,こ の よ うな結 果 にな った のは,誤 信 念課 題 で は,ス トー リー を聞 き,理 解 しなが ら,ス トー
リー 中の さま ざま な 盾報 を保持 した り,1つ
の ス トー リー の 中に,過 去 と現在,自 己 と他 者 な どの複 数 の情報 を
意識 した りしてお く必要 が あ るた め,ワ ー キ ング メモ リ能力 が あ る程度 発達 してい る こ とが,重 要 にな る と考察
してい る。ま た,小 川 ・子安(印 刷 中)やNaito&Koyama(2006)で
は,日 本 の子 どもは,人 の行 動 に対 して,
心 的状態 よ りもそ の場 の状況 や 観察 可能 な過 去 の行 動 を帰属 す る傾 向が,主 人公 の行 動 を理 由づ け して も らう課
題 でみ られ る こ とが示 され てい る。そ して,理 由づ け にお い て,主 人公 の過 去 の行動 に言及 す るか否 か と単 語逆
唱 スパ ン課 題 の成績 との 関連 が強 い こ とが小川 ・子 安(印 刷 中)に おい て示 され た。 以 上の こ とか ら,誤 信 念課
題 にお け る ワー キ ン グメモ リの役 割 は,「 主 人公 は対 象 のた め に どこ を探 す か?」 とい う予 測質 問 が な され た 際
に,ス
トー リー に出 て きた過去 の重要 な情 報 を活性 化 す る こ とで あ る とい える。す なわ ち,「 対 象 が移動 す る際
に,主 人公 は外 出 してい た(そ のた め,対 象 の移 動 を見 てい ない)」とい った 主人公 の過 去 の行 動 に 関す る情報 が,
予測 質 問 を尋ね られ た 際 に,子 どもの 中で活 陸化 され る必要 が あ る とい うこ とであ る。
しか しな が ら,従 来 の課題 は単 に誤信 念課 題 の予 測質 問 の成 績 とワー キン グメモ リ課 題 の成績 との 関連 を検討
してい るだ け であ り,実 際 ワー キ ン グメモ リが どの よ うな役 割 を果 たす の かは 明 らか にな って いな い。本 研 究 の
目的は,誤 信 念 理解 にお け るワー キ ング メモ リの役 割 を明 らかにす る ことで あ る。 小川 ・子安(印 刷 中)で 指 摘
され た よ うに,ワ ー キ ン グメモ リの役割 が過 去 の重 要 な情報 を保 持 してお き,必 要 な場 面 で活 性化す る ことで あ
るのな らば,何 らかの方 法 を用 い て過 去の重 要 な情 報 を活 性化 させ てお くこ とに よ り,ワ ー キ ン グメモ リの負 荷
を減 らす こ とがで きれ ば,子 ど もの誤 信 念理 解 は促進 され るの では ない だ ろ うか。
従 来 の研 究 か ら,誤 信 念 理解 を促 進す る要因 と して様 々 な ものが 挙 げ られ て い るが,そ の 中で も特 にス トー リ
ー 中の 盾報 の保 持 と活性 化 に 関わ る と考 え られ るもの は,Lewis,Freeman,Hagestadt,&Douglas(1994)に
よる誤信 念課 題 の ス トー リーの 読み なお しの要 因で あ る。LeWisetal.,(1994)の
信念 課 題(Thebooktask;絵
実 験 にお いて は,絵 本形 式 の誤
本 課題)に お い て子 どもに ス トー リー を呈示 し,そ の後 子 どもが ス トー リー を読 み
なお しす る こ とで,標 準誤 信念 課 題 には正 答 で きない子 ど もで も,絵 本課 題 で は,主 人 公 の誤信 念 を理 解 でき る
こ とが示 され た。 特 に,読 み なお しの 際,再 生 が流暢 で あ った子 どもの ほ うが,よ り正 答す る傾 向に あ るこ とが
わ か った。た だ し,Lewisetal.,(1994)に
お い て は,読 み なお しの どの よ うな 要因 が子 どもの誤 信念 理 解 を促 進
してい るの か につ いて は具体 的 に検討 され てい ない。読 み なお しよっ て,ス トー リー 中の あ る重 要 な情報 を保 持
してお くこ とが誤 信 念理 解 に影 響す るのか,そ れ と もス トー リー全 体 を読み な お し,実 験者 が 盾報 を補 うこ とが
影響 す るの か につ いて は言及 されて い ない。
以 上 の こ とか ら,本 研 究で は,ワ ー キ ングメモ リの負荷 を減 らし,ス トー リー 中の重 要 な情報 の活性 化 を助 け
るた め,子 どもに不 意移 動 ス トー リー の読 みな お しを して も ら うこ と とす る。仮 説 は以 下 の2点 であ る。
仮 説①
ス トー リー の読 み なお しは,誤 信 念理 解 を促 進す る。
仮 説②
ワー キ ン グメモ リの成 績 と,ス トー リー の読 み なお しの成 績 に は正 の相 関が み られ,ワ ー キ ング メモ
リの成 績が 高 い子 どもは,ス
トー リー の読 みな お しの成 績 も高 い。
一402一
小 川:不
意 移 動 ス トー リ ー の 読 み な お し に よ る幼 児 の 誤 信 念 理 解 の促 進
方 法
対象児
京 都 府 内の 幼 稚 園 に 通 う幼 児58名(男
名(男 児6名,女
児21名;平
4;11,範 囲4;5-5;4)で
手続き
均 年齢3;10,範
児16名,女
囲3;5-4;4),年
児42名)を
対象 と した。 内 訳 は,年 少 児27
中児31名(男
児10名,女
児21名;平
均年齢
あ り,実 験 参加 の意 思 が確 認 で き た幼 児 の み を対 象 と した。
幼稚 園 の一 室で,個 別 実験 で行 った。実 験者 と対象 児 は 向か い合 っ て座 り,園 での生 活 な どの話 しを
して ラポー ル を十分 に形 成 した 後実 験 に進 んだ。課 題 の実 施順序 は,初 め に手 続 きが子 ども に とって理 解 しや す
い語 い発 達 検査(上 野 ・
撫 尾 ・飯長,1991)を
実施 し,そ の後 の課 題 は被 験児 間 でカ ウンター バ ラ ンス を とった。
た だ し,ワ ー キ ング メモ リ課題 であ る単語 逆 唱 スパ ン課 題 とブ ロック位 置 再生課 題 が続 かな い よ うに実施 した。
実験 には,本 論 文 とは 関連 しない他 の課 題 を2課 題 含 ん でい た。 実 施 時 間は1名 につ き約35分
程度 で あっ た。
「
心 の 理論 」課 題
誤 信念 課 題(Wimmer&Pemer,1983)男
の子 と女 の人 の 人形,ロ ッカー が置 かれ た着 替 え をす る部屋 と机
が置 かれ た 教 室の2つ の部 屋 に仕切 られ てい る舞 台 を用意 し,着 替 えをす る部屋 には緑 の箱
教 室 に は赤 い箱 を
置 いた。 ツ ヨシ とい う男 の子 が着 替 えをす る部屋 の緑 の箱 に絵本 を入 れて遊 び に行 くが,男 の子 の 不在 中 に先生
が赤 い箱 に絵本 を移 し,そ の後 男 の子 が帰 って く るとい うス トー リー を実 演 した。そ の後,初 め に予測 質 問 を行
っ た。予 測質 問:「 ツ ヨシ くん はま た絵本 を読 み た いな と思 って い ます。 ツ ヨシ くん はは じめに ど こを探 します
か。 」
絵本 課 題(Lewisetal.,1994の
課 題 を修正)7枚
の文字 の書 か れ てい ない絵 カ ー ドか らな る絵本形 式 の課 題
を用 意 した 。女の 子 がネ コ を寝 室 にお 昼寝 の た め寝 か せ,別 の部 屋 でテ レビをお 昼 の間ず っ と見 て てい るが,そ
の 間 にネ コは寝 室 か ら台所へ 移 動 して しま うとい うス トー リー を,絵 カー ドを呈示 しなが ら実験 者 が話 した 。そ
の後,「 そ れ では,ど ん なお話 しだ った か も う一度00(対
象児 名)ち ゃん が最 初 か ら読 ん で くれ ます か」 と教
示 し,子 どもにス トー リー を読 み 直 して もらった。 対象児 が 自発 的 に語 らない場 合は、あ らか じめ設 定 してお い
た プ ロンプ トを与 えた。語 った と して もス トー リー 中の情報 が 抜 けて い る場 合に は,プ ロンプ トに従 って質 問 し,
情報 を補 った。参加 児 が6枚 まで読 み 終 わった ら,実 験者 が7枚 目の絵 カ ー ドを用 い て,予 測 質 問,記 憶質 問,現
実質 問 の順 に質 問 を行 った。具体 的 な ス トー リー と教 示,読 みな お しの プ ロンプ トにつ い て,Figurelに 示 した。
お 家 の 中に ミキ ち ゃ ん とネ コち ゃん がい ま す 。 こ っ ち のお 部 屋 は
何 の お部 屋 か わ か る か な?ベ ッ ドが あ る寝 る お 部屋 です 。 こ っ ち
の お部 屋 は 何 の お 部 屋 か わか る かな?ご
は ん を食 べ る お部 屋 で す 。
ミキ ち ゃん は テ レ ビを 見 てい ま した
この 女 の子 の お名 前 は何 てい うの?
女 の子 とネ コ ち ゃん は何 を して い るの?
こっ ち のお 部屋 は何 の お部 屋 か わ か るか な?
こっ ち のお 部屋 は何 の お部 屋 か わ か るか な?
し
ミキ ちゃ ん は 、 ネ コ ち ゃん を寝 かせ て あ げ る た めに 、 ベ ッ ドの あ
るお 部屋 に や っ て き ま した 。 そ して ネ コち ゃ ん をカ ゴの 中 に 入 れ
て あげ ま した。
次 のペ ー ジ は ど うか な …
お話 しして くれ る?
この お部 屋 は何 のお 部屋 かな?
ミキ ち ゃん は寝 るお 部屋 に何 を しに きた の かな?
ネ コ ち ゃん は どこに い る の?
一403一
京都 大 学大 学 院教 育 学研 究科 紀要
第56号2010
ミキ ち ゃ ん は テ レ ビを見 る た め に 、 テ レ ビの お 部 屋 に 戻 っ て きま
した 。 そ してお 昼 の 問 ず 一 っ とテ レ ビを見 て い ま した 。
「
次 の ペ ー ジ は ど うか な …
お 話 し して くれ る?」
「ミキ ち ゃ ん は何 を して い るの?」
「ミキ ち ゃ ん は どの く らい の間 テ レ ビを見 てい た の?」
ミ キ ち ゃ ん が テ レ ビを 見 て い る 問 に ネ コ ち ゃ ん は カ ゴ か ら しず
か 一 に 飛 び 出 て 、 ベ ッ ドのお 部 屋 の 窓 か ら外 へ 、 そ 一 っ と出 て
行 っ て しまい ま した。
次 は ど うか な …
お 話 し して くれ る?
こ こ は何 の お 部屋 か な?
ネ コ ちゃ ん は 何 を して るの?
ネ コ ち ゃ ん は 、 お 庭 を 歩 い て 、 ご は ん を食 べ る お 部 屋 へ 窓 か ら
ぴ ょ一 ん と入 っ て き ま した。
次 は ど うか な …
お話 し して くれ る?
こ こは何 のお 部 屋 か な?
ネ コち ゃ ん は何 を して る の?
L
そ して 、 ネ コ ち ゃ ん は 、 ご 飯 を 食 べ る お部 屋 の イ ス の 上 で 眠 っ て
しま い ま した。
次 は ど うか な …
お 話 し して くれ る?
ネ コち ゃ ん は何 を して る の?
」
子 ど も に よ る読 み な お しの後 に質 問
上 手 に お話 しで きま した。 お 姉 ち ゃん が続 き をお 話 しす る ね。
ミキ ち ゃ ん が見 た テ レ ビが終 わ った み た い です 。
ミキ ち ゃ ん は テ レ ビ を 消 し て_ネ コち ゃん に 会 い に 行 く た め に 立
ち上 が りま した 。
遡
ミキ ち ゃ ん は、 は じめ に どっ ちの お 部 屋 に行 き ます か?
ベ ッ ドの お部 屋 か な?そ れ とも ご飯 の お 部屋 か な?
Figure1絵
本 課題 の 呈示 図版,ス
トー リー(実 線 枠)と 読 み なお し時 の プ ロンプ ト(、
点線 枠)
一404一
小 川:不
意 移 動 ス トー リ ー の 読 み な お し に よ る幼 児 の 誤 信 念 理 解 の促 進
ワー キ ン グメ モ リの課 題
単 語 逆唱 スパ ン課 題(Carlsonetal.,2002)実
験者 は,子 ども に逆 の順 番 で 単語 の リス トを復 唱す る よ う教
示 した。逆 唱 す る単語 と同 じ数 の紙 片 を机 に置 き,実 験者 は紙片 の それ ぞれ を指 さ しな が ら,単 語 リス トの単語
を言 った。実 験者 が リス トを読 み 終 えた後,子 どもは,逆 の順 番 で紙 片 を指 さしなが ら,実 験者 の言 った こ とを
復唱 す る よ うに教示 され た。子 どもの 理 解 を確 実 にす るため に,ゾ ウの 手人形 を用 い,ゾ ウに逆 唱 させ る手 本 を
示 した後 で,練 習試 行 を実 施 した。 手本 を示 した後,練 習試 行 に入 った。
「りん ご,い ぬ」 の2単 語 を用 い,練
習 を行 った 。子 どもが間違 えた り,無 反 応 だ った場 合には,フ ィー ドバ ックを与 え,手 順 を再度 教示 して か ら練
習 を繰 り返 した。 練 習試 行 で子 どもが正 答 した ら,本 試 行へ と進 ん だ。
本 試 行で は2単 語 の リス トを2試 行,3単
語 を2試 行,4単
語 を2試 行 … とい うよ うに進 めて い った。 単語
リス トの長 さは2単 語 か ら5単 語 まで あ り,2試 行 の うち1試 行 に正答 した ら,単 語 数 を増や してい っ た。課 題
で用 い た単 語 を表3に 示 した。 単語 は,幼 児 が理解 で き る と考 え られ る もの で,か つ 単語 リス トの 中で,同 じ範
疇(動 物 ・道 具 な ど)の 単 語 が含 まれ な い よ うに選定 した。逆 唱 スパ ンの得 点 は,子 どもが 再生 で き る最 大 の単
語数 で あ り,範 囲 は1点(2単
語 に失 敗)か ら5点 で あ った。
ブ ロ ック位置 再 生課 題(Picke血g&Gathercole,2001を
修正)空
間 的 な ワー キ ン グメモ リの働 き を測 定す
る課 題 と して選 択 した。ボー ドの上 に 同 じ色,形 を した9つ の ブ ロ ックが不 纐r」に並 んだ装 置 を子 どもに呈 示 し
た。ブ ロック には1か ら9ま で数 字 が一 つず つ 書 かれ てお り,対 象児 には数 字 が見 えな い よ うにな って いた。実
験者 は子 ど もに実験 者 が タ ッチ した ブ ロ ック と同 じブ ロ ック をタ ッチす るよ うに教示 した。子 どもは実験 者 が触
るブ ロ ックを位 置情 報 のみ で覚 えて お かな けれ ば な らず,タ ッチす るブ ロ ックの数 が増 え るほ ど視 空間 的 な記 憶
容量 が必 要 と され る課題 で あ った。 練習 試 行 と して,タ ッチ す るブ ロ ック が1個 の試 行,2個
の試 行,3個
の試
行 をそれ ぞ れ1試 行ず つ実 施 した。子 ど もが練習試 行 に失 敗 した 際 には,教 示 を繰 り返 し,フ ィー ドバ ック を与
え,再 度 練 習試 行 を繰 り返 した。2個 以降 の練 習試 行 では,実 験者 が触 っ た順番 通 りにタ ッチ しなけれ ば な らな
い こ とが加 え て教示 され た。練 習試 行 に成 功す るか,同 じ試 行 を3度 繰 り返 して も失 敗 した場 合は,本 試行 へ移
っ た。本 試 行 は,ブ ロ ックが1個 の段 階 か ら9個 の段 階 まで あ り,各 段 階 に3試 行 が用意 され てい た。本 試 行 で
は,1個
のブ ロ ックの試 行 か ら始 め,一 つ の段 階で2試 行 以上 成 功 した場 合 に次 の段 階 に移 った。 一つ の段 階 に
お いて,2試
行 以上 失敗 した場 合には そ こで終 了 した。2試 行失 敗 した 段 階 よ り一 っ前 の段 階 のブ ロ ック の個 数
を スパ ン得 点 とした。範 囲 は0点(ブ
ロ ック1個 の試行 に失敗)か ら9点 で あ った。
言語 課 題
絵 画語 い発 達検 査(上 野 ・撫 尾 ・飯長,1991)絵
画語 い発達 検査 は,3歳
か ら10歳 を対 象 に語 彙の理 解 力 を
測定 す る検 査 であ り,1ペ ー ジに4枚 の色 つ き の描 画 が 印刷 され てい た。 実験 者が言 う単語 に最 もふ さわ しい絵
を対 象児 に選択 させ るもの で あった。
結 果
各年 齢 群 にお け る課 題 の成 績
「
心 の理 論」課 題 の2課 題 の それ ぞれ につ い て,先 行 研 究(子 安 ・郷 式 ・服部,2003)に 従 い,予 測 質 問,記 憶
質 問,現 実 質 問の全 てに正 し く答 え られ た場 含に正答,そ れ 以外 を誤 答 と し,年 齢群 ご との正答 人数 と正答 率 を
Tablelに 示 した 。各 課題 につ い て年齢 群 間 に正答 人数 の 差 がみ られ るか を検 討 す るた めに,κ2検 定 を実施 した
とこ ろ,誤 信 念 課 題は年 齢 に よ る差 が有 意傾 向で あ り,年 少 児群 よ りも年 中児群 で課 題 に正 答す る子 ど もが多 い
一405一
京都 大 学大 学 院教 育 学研 究科 紀要
傾 向 が あ っ た(κ2(1)=3.20,Pt.10)。
第56号2010
絵 本 課 題 で は 年 齢 に よ る 差 が 有 意 で あ り,年 少 児 群 よ り も年 中 児 群 で 課 題
に 正 答 す る 子 ど も が 多 くみ られ た(κ2(1)=6.21,pく.05)。
Tablel誤
信念 課 題 と絵本 課 題 の群別 正答 人数 と正答 率
年 少 児 群(n=27)年
中 児 群(n=31)
誤信念課 題
12(44.4%)
21(67.7%)
絵本課題
17(63.0%)
28(90.3%)
「
心 の 理論 」課 題 の予 測質 問 の比 較
「
心 の理 論」 課題 の 両課題 にお い て,予 測 質 問,記 憶 質 問,現 実 質 問の全 て に正 し く答 え られ た場 合に正答,
それ 以外 を誤 答 と し,両 課 題の 正答 ・誤 答 の関係 をTable2に
示 した。 ここで,ス
トー リー の読 み なお しを行 っ
た絵 本 課題 の ほ うが,標 準 的 な誤 信 念課 題 よ りも誤 信念 理 解 を促 進 す るか ど うか を検 討 す るた めに,絵 本 課題 に
誤答 し,誤 信念 課題 に正答 した子 どもの人 数 と,絵 本 課題 に正答 し,誤 信念 課 題 に誤 答 した子 どもの人 数 につ い
て二 項検 定 を用 い て比較 した。そ の結 果,絵 本課 題 に正 答 し,誤 信 念課 題に は誤 答 した子 どもの人 数 が,絵 本 課
題 に誤答 し,誤 信 念課題 に正 答 した 子 どもの人数 よ り有 意 に多 い こ とが示 され た(二 項検 定 ρ(.02)。 この結果
か ら,絵本 課題 にお ける不 意移 動 ス トー リー の読 みなお しは,誤 信 念理 解 を促進 す る とい う仮説 ① が支 持 され た。
Table2誤
信 念 課題 と絵 本課 題 の正 答 ・誤答 の 関係(人 数)
QU
∩∠
誤答
正答
ρO
-⊥
誤信念課題
QU 4
絵本課題
誤答
正答
絵本 課 題 にお け る子 どもの 読 みな お し
次 に,ワ ー キ ング メモ リと絵本 の読 みな お しの上 手 さとの関連 を検討 す るた め に,絵 本 の読み な お しの指標 に
つ いて検 討 した。 「
問題 と目的 」 にお いて,誤 信念 課 題 にお け るワー キ ン グメモ リの役 割 は,ス
トー リー 中の重
要 な過去 の 盾報 を活 性化 す る とい う仮 説 を立て た。従 って,ス トー リー 中の主 人公 の過 去 の行動 につい て の 盾報
を子 どもが 読み なお しにお いて 自発 的 に語 るか ど うか が,読 み なお しにお け る重 要 な指標 とな って くる。本研 究
で使 用 した ス トー リー にお いて,主 人 公 の過 去 の行 動 につ い ての情 報 は,絵 カー ド3枚 目の 「
主人公 で あ る女 の
子 がネ コ を寝 かせ た後,一 人 でお 昼 の 間ず っ とテ レ ビを見て いた(そ のた め,ネ コが移動 す るの を見 て い ない)」
とい うもの で あ る。そ こで,こ の3枚 目の絵 カー ドに対す る子 どもの発言 を,無 回答 また はテ レビを見 て いた こ
とにの み言 及 した子 ども と,一 人 でテ レビを見 てい た こ と,お 昼 中ず っ と見 て いた ことに 自発 的 に言 及 した 子 ど
もに分類 した。Table3に それ ぞれ の 子 どもの言及 例 を示 した。分 類 の基 準 は,「 ミキ ちゃ んは どの く らい の問テ
レ ビを見て い たの?」 とい うプ ロ ンプ トを与 え る前 に,「 お昼 の 間」や 「(ネコを)寝 か して い る間 に」 とい っ
たネ コが移 動す る問の 時間 の情 報 を含 めて 主人公 の行 動 に言 及 で き るか 否 かで あっ た。主人 公 が一人 で お昼 の 問
ず っ とテ レ ビを見 てい た こ とに 自発 的 に言及 した子 どもの人 数 は,年 少児 群 で は27名 中9名,年
名 中18名
中児 群 では31
で あっ た。 主人公 が 一人 でお 昼 の間ず っ とテ レ ビを見 てい た こ とに言 及 した 子 どもの人数 が年 齢 群 で
差 がみ られ るか をz2検 定に よ って検 討 した ところ,差 は有意 傾 向 で あ り,年 少 児群 よ りも年 中児群 で 自発 的 に
一406一
小 川:不
意 移 動 ス トー リ ー の 読 み な お し に よ る幼 児 の 誤 信 念 理 解 の促 進
言 及 す る 子 ど も が 多 し傾 向 が み られ た(κ2(1)=3.55,〆.10)。
Table3絵
本 課題 にお け る子 どもの読 み なお しの分類 カ テ ゴ リ と回答 例
回答例
カテゴリ
無回答
無回答
テ レビ を見 て い ることに の
「
テレビ」
み 言及
「
テレビみ てる」
「
一 人 でお 昼 中テ レビみ てる」
一 人で お昼 の 間テレビをみ
ていたことに 自発 的 に言 及
「
お 昼 の 間ず っとテレビみてる」
「
寝 かしてい る問 にテ レビをみ てた」
「
心 の 理論 」課 題 の予 測質 問 お よび絵 本課 題 の読 み な お しと ワー キ ン グメ モ リとの 関連 性
予 測質 問 お よび絵 本課 題 の読 み なお しと,ワ ー キ ングメモ リとの 関連 を検 討 す るた めに,各 課 題 の成 績 問の月
齢 と語彙 能力 を統制 した偏相 関係 数 を算 出 した(Table4)。
読 み なお しの得 点化 は,Table3の
基準 に基 づ き,一 人 で お昼 の問 テ レビを見 てい た こ とに 自発 的 に言 及 した場 合 を1点,無
読 み なお しの分類
回答や テ レビを見 て い
るこ とにの み言 及 した場 含を0点 として,得 点 を算 出 した。そ の結果,誤 信念 課 題の 予測 質 問は,月 齢 と語彙 能
力 を統制 して も両 ワー キ ング メモ リ課題 との偏相 関が有 意 で あった 。一方,絵 本 課題 の予 測質 問 は,単 語 逆 唱 ス
パ ン課 題の 成績 とのみ偏 相 関が 有意 で あ った。ま た,絵 本 課 題の 読み な お しは,単 語 逆 歌唱 スパ ン課 題 との偏相
関 が有意 傾 向 であ った。
Table4月
齢 と絵 画語 彙発 達 検査 の成 績 を統 制 した各 課題 問 の偏 相 関
234
絵 本 予測
絵本 読み
単語 逆 唱
ブ ロ ック
FO
O
1.誤 信 念 予 測
5
.20
.46*se
O
9臼
2.絵 本 予 測
.30*
一
.31士
十
3.絵 本 読 み な お し
.23
-
4.単 語 逆 唱 ス パ ン
.08
.20
.03
5.ブ ロック位 置 再 生
注)月
齢,語
彙 検 査 の 得 点 を 統 制 し た 偏 相 関 係 数.+P<.10."P<.05."*P<.01.
考 察
本研 究は,幼 児期 の誤 信 念理 解 にお いて,ワ ー キ ング メモ リが どの よ うな役 割 を果 た す のか を検討 す るこ とを
目的 に,不 意移 動 ス トー リー を子 どもに読 み なお して も ら う絵本 課 題 を実施 した。 ワー キ ン グメモ リの発 達 に よ
り,誤 信念 課題 の ス トー リー 中の 重要 な1静 艮を,質 問時 に活 性化 す る こ とが 可能 に な るので あれ ば,予 測質 問 の
前 に,再 度 不 意移動 ス トー リー を子 どもに読 みな お して も らい,情 報 を補 うことに よっ て,情 報 が活 性化 されや
す くな り,誤 信念 理 解が促 進 され る とい うの が,仮 説① で あ った。予 測質 問 の成 績 を比較 した結果,通 常 の手続
一407一
京都 大 学大 学 院教 育 学研 究科 紀要
第56号2010
き を行 った誤 信 念課 題 と比較 して,子 どもにス トー リー を読 み なお して も らっ た絵本 課題 に正答 す る子 どもが多
く,ス トー リーの読 み な お しが誤信 念 理解 を促 進す る ことが示 され た。 この ことは,ス トー リーの 読み なお しに
よ り,子 ど もの中 でス トー リー に対 す る情報 が よ り明確 に な り,質 問時 に 清報 が活 陸化 され や す くな った こ とを
示 して い る と考 え られ る。
次 に,ワ ー キ ング メモ リがス トー リー 中の過 去 の1青報 を活 性化 させ る役割 が あ るので あれ ば,ワ ー キ ングメモ
リが発達 してい る子 ど もは,読 み なお しの成績 が 高 くな る とい うのが,仮 説② であ った。読 み なお しの指標 と し
て,「 主 人公 で あ る女 の子 がネ コ を寝 かせ た後,一 人 で お昼 の 問ず っ とテ レ ビを見て い た(た め,ネ コが移 動す
るの を見て い ない)」 とい う情 報 を 自発 的に再 生す る ことが でき るか ど うか を検討 した。 その結 果,自 発 的 に再
生す る子 ど もの中 に も,テ レ ビを見た こ とにのみ言 及す る子 ども と,お 昼 の 間ず っ と,ま たは 一人 でテ レ ビを見
て いた こ と も含 め,自 発 的に言 及 す る子 ども とに分類 され るこ とが わか った。 また,こ の よ うな付加 的 な情 報 を
再生 す る子 どもは,年 少児群 よ りも年 中児群 に多 くみ られ る傾 向が あ る こ とも示 され た。
結 果 か ら,絵 本課 題 の読 み なお しに おい て重 要 な1青報 を 自発 的 に再生 で き るか ど うか と,ワ ー キン グメモ リの
課題 で あ る単語 逆 唱スパ ン課 題 の成 績 との偏 相 関 は有意傾 向で あ った。 この結果 か ら,仮 説 ② が完全 に支 持 され
た とい うこ とはで きな いが,ス トー リー 中の重 要 な情報 の活1生化 に ワー キ ン グメモ リの 能力 が 関連 して い る可能
性 が ある とい え る。た だ し,絵 本 課題 の予測 質 問 の成績 と単 語 逆唱 スパ ン課 題 の成 績 との偏 相 関が有 意 で あっ た
こ とか ら,絵 本 課題 に おい て もワー キ ン グメモ リの機 能 の発 達 が予 測質 問 の通過 に影 響 して い る こ とが示 唆 され
た。従 って,絵 本課題 にお いて読 み な お しを して も らい,実 験 者 が 晴報 を補 った として も,全 ての子 ど もが重要
な 盾報 の保 持 に成 功 したわ けで は ない こ とがわ か る。
どの よ うな ワー キ ング メモ リの機 能 が誤信 念理 解 と関連す るのか につ い ては,「 心 の理 論 」課 題 とワー キ ング
メモ リ課 題 の成 績 との偏 相 関の 結果 か ら,単 語 逆 唱 スパ ン課題 は,誤 信念 課 題 の予測 質 問,絵 本 課 題 の予測 質 問
との偏相 関 も有 意 であ る こ とが 示 され た。 この こ とか ら,視 覚的 情報 で はな く,言 葉 の音韻 的 な情 報 を保 持 し活
性化 す る能 力 が誤 信 念理 解 と関連 が あ る こ とが みて とれ る。一方,視 空 間 的な 盾報 の保 持 と活 性化 に関 わ るブ ロ
ック位 置 再 生課 題 の成績 は,誤 信 念課 題 の予 測 質問 とのみ 関連 がみ られ,人 形劇 形式 で 実際 に対 象 が移動 す るよ
うな課 題形 式特 有 の関連 が み られた 可能 性が あ る。
本 研 究で は,誤 信 念理 解 にお け る ワー キン グメモ リの役 割 を検 討 す るた め に,不 意 移 動 ス トー リー を子 ど もに
読み な お して も ら う絵本 課 題 を実施 し,実 行機能 の下位 機能 と され るワー キ ング メモ リの機 能 との 関連 を検討 し
た。 ただ し,実 験場 面で の読 み なお しとい う行 動 自体が子 ど もに とって はな じみ の ない状 況 で あ り,実 際 には ス
トー リー を覚 えて いた として も,再 生 す る こ とに た め らいが あ った子 ども もいた と考 え られ る。従 って,日 常場
面 にお いて 子 どもが 自分 に起 こった 出来 事や 絵本 で 読 んだ こ とな どを,様 々な 心的状 態 を含 め身 近 な大 人 に語 り
なお す よ うな 日常 にお け る 「
心 の理 論」 にワー キ ン グメモ リの能 力 の発 達 がい か に貢 献 す るの か を検 討 して い く
こ とが今 後 の研 究課 題 とい え る。
謝 辞
本論 文 の作 成 に あ た りご指 導 いた だ き ま した京 都 大学 大 学院 教 育学研 究科 の子 安 増生 教 授 に深 く感 謝 い た し
ます 。絵本 課題 の作成 に あた り,イ ギ リス,ラ ンカ スター 大 学の チ ャー リー ・ル イ ス教 授 に課題 材料 を ご提 供 い
た だ きま した。 こ こに明記 す る と ともに,心 よ り感 謝 の意 を表 します。 また,本 研 究 の実験 に ご協力 い ただ い た
一408一
小川
不 意移 動 ス トー リーの読 み なお しによ る幼 児 の誤信 念理 解 の促 進
幼稚 園 の先 生方,園 児 の皆様 に厚 く御 礼 申 し上 げ ます。
文 献
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(受稿2009年9E7日
一409一
、 改 稿2009年11.月30日
博 士 後期 課程3回 生)
、受 理2009年12月11日)
京都大学大学院教育学研究科紀要 第56号 2010
Does Narration of the Unexpected Transfer Story Promote Young
Children’s False-Belief Understanding? :
Relationships between Theory of Mind and Working Memory
OGAWA Ayako
This study examines the effect of young child’s narrations of the story in
the standard false-belief task. We also examined the relationship between
the children’s performance of their recall of the false-belief story and those of
the working memory tasks. If repetition of narration of a false-belief story
can reduce the load of working memory, young children will be able to
answer the protagonist’s behavior more correctly than in the standard
false-belief task. Three- to 5-year-old Japanese preschoolers were given a
standard false-belief task, a book task, a receptive vocabulary task, and two
working memory tasks. In the book task, they were asked to narrate the
false-belief story back to the experimenter before the prediction question was
asked. The performance of the book task was higher than that of the
false-belief task. According to the results of partial correlation in which age
and vocabulary factors were controlled, the performance of working memory
task significantly related to children’s recall of key information of the story
in the narration phase. These findings show that better working memory
enables children to activate the key information of the false-belief story, and
this information then enables them to correctly predict another’s behavior.
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