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∼材料工学コース(旧:金属工学科)が,JABEE認定を受ける!∼
仰岳会会報 第36号 学校だより ∼材料工学コース (旧:金属工学科)が,JABEE認定を受ける!∼ 物質生命システム工学科 教 授 寺 山 清 志(JABEE担当) (金属工学専攻 昭和47年度修了) 日本技術者教育認定機構 (JABEE: Japan Accreditation Board for Engineering Education)は、国、産業界、 学会で組織する非政府団体で あり、統一的基準に基づいて 高等教育機関における技術者 教育プログラムの認定を行い、 その国際性を確保するとともに、技術者教育の向上 と国際的に通用する技術者の育成を通じて社会と産 業の発展に寄与することを目的に、 (アメリカのABET をモデルとして)1999年11月に発足したものです。 この審査は、申請した大学等がその独自の教育プ ログラムに関する自己点検書を提出し、審査委員会 の書類審査と実地審査によってなされます。認定プ ログラムの修了者は、 国際水準の技術者教育を受 けた者 として認定され、未来社会を託すことので きる想像力に富み人間性豊かな技術者として専門分 野の教育のみならず、コミュニケーション能力や技 術者倫理を含めた人文社会学等の必要不可欠な教育 を受けていることが保証されます。 工学部物質生命システム工学科の材料工学コース (旧:金属工学科)では、1990年度及び1997年度に学 科改組を行ったが、その際基礎科目と専門科目を着実 に習得し、それらを学際的に融合した応用能力や社会 的責任感を有する豊かな人間性と自主性を持った学生 を育てるために、さまざまな特徴ある工夫をカリキュ ラムにとり入れる教育改善を進めてきました。今回の JABEE発足を機にその認定に取り組み、2003年11月9 -11日の実施審査をへて、材料工学関連分野では前年 度認定の3大学に次いで全国で四番目(国立大学法人 としては、東北大学のマテリアル・開発系に次ぐ二番 目)の大学として認定されたものです。 今回の認定を受けたことにより、2003年度以降の 材料工学コースの卒業生にはプログラムを終了した ことを証明する修了書が交付され、また国家資格 「技 術士」の第1次試験を免除される「修習技術者」と して実務修習に入ることが可能になりました。 この栄誉を受けるにあたり、同窓会諸兄、大学関 係者など多くの方々のご支援・ご協力を戴きました ことを感謝申し上げます。今後、材料工学系卒業生 の皆様から戴きました企業アンケートの結果をさら なる教育改善に役立てると同時に、材料工学コース の教職員・学生自らの努力で更なる教育の改善を続 け、より良い技術者教育を継続してまいります。是 非とも同窓会諸兄の変わらぬ積極的な協力をお願い 申し上げます。 −8− なお、本工学部の機械知能システム工学科では 2002年度に機械分野での同様の認定を受けています。 さらに、工学部の他学科ならびに他講座ではそれぞ れの分野におけるJABEE認定にむけた努力が行われ ております。 材料工学コースのJABEE認定プログラムの詳細に 関しては、工学部物質生命システム工学科材料工学 講座のホームページを参照下さい。 富山大学材料工学講座 URL:http://epic.eng.toyama-u.ac.jp/matlife/material/top.htm JABEEホームページ: http://www.jabee.org/ 【富山大学工学部物質生命システム工学科 材料工学コースのJABEEプログラムの概要】 富山大学材料工学講座URL:工学部物質生命シス テム工学科の材料工学講座では、国際的に通用する 技術者の基礎教育、創造性豊かで材料工学に関する 専門知識と応用力を有する技術者の養成を目標とし て、日本技術者教育認定機構(JABEE)の国際基準 を授業に取り入れた「材料工学コースプログラム」 を実施しています。 以下は、JABEEの国際基準をふまえて材料工学講 座が設定している学習・教育目標(学生向け)とプ 仰岳会会報 第36号 ログラムの概要です。その詳細については、ホーム ページを参照下さい。 ・熱処理により加工組織から再結晶が生ずることを 説明できる。 B3 鉄鋼材料や非鉄金属材料の性質や、材料試験 法、破壊や腐食等、材料の機能と設計・評価につい て理解する。 【具体的な達成目標】 対応する授業科目:機能材料工学1など ・鉄鋼材料の状態図を説明できる。 ・固体表面のガス吸着の原理を説明できる。 ・材料表面における電子、イオンの挙動を理解し、 センサの基礎的原理を説明できる。 ・熱的分析法の応用等により温度変化に伴う化学反 応、相変態を説明できる。 ・材料の脆性、延性および疲労等の破壊形態を説明 できる。 ・全面腐食あるいは応力腐食割れなどの腐食形態を 説明できる。 B4 講義、演習などで修得してきた材料工学に関 する基礎的知識を生かし、実験の実行とデータ解析 能力の基礎的事項を身につける。 対応する授業科目:材料工学の5つの実験と5つの 演習、材料工学卒業論文など 【具体的な達成目標】 ・実験装置の原理を説明できる。 ・測定したデータの意味を説明できる ・データを解析することで材料の諸特性を説明できる。 ・レポートの作成方法を修得する。 教育目標の特徴 伝統に基づき,地域・社会に広く受け入れられ, TeachingからLearningへの教育改善による 主体性を志す,金属を中心とした材料工学技術 者を養成する. 学習・教育目標(学生向け,2004) 基礎学力 A.数学、自然科学などの学問分野において、材料 工学の専門科目の授業を理解できる程度の基礎学力 を身につける。とくに力学を理解するための基礎物 理、反応や相変態に関する熱力学を理解するための 微分積分の基礎、波動関数を理解するための線形代 数の基礎等を広く修得する。 対応する授業科目:物理学1、物理学2、微分積分 1、微分積分2、線形代数1、線形代数2など 【具体的な達成目標】 ・物理学においては運動方程式をたてて解くことが できる。 ・微分積分では、一変数関数の微分と積分が計算で きる。 ・線形代数では2行2列以上の行列式の計算ができる。 等の能力を身につける。 応用力とそのスキル B.材料工学の専門科目を理解するための基礎学力 を修得する。 B1 金属、半導体、絶縁体の本質をバンド構造お よび結晶構造から知ることで、材料の物性を理解す る。材料の状態が温度と化学組成の違いで変化する ことを状態図から知る。 対応する授業科目:量子工学序論、材料組織学など 【具体的な達成目標】 ・一次元の調和振動子のシュレディンガー方程式を 解くことができる。 ・金属、半導体、絶縁体の区別をバンド構造から説 明できる。 ・全率固溶、共晶などの2元系状態図を説明できる。 B2 金属の生まれから、鋳造凝固に至る製造の理 論と方法を理解し、さらに材料の加工・再結晶に至 る一連の過程の知識を身につける。 対応する授業科目:材料製錬工学、材料強度学、素 形材工学など 【具体的な達成目標】 ・鉱石から金属への還元反応を説明できる。 ・平衡・非平衡凝固を説明できる。 ・鋳造組織の制御法を説明できる。 ・加工による組織の変化が機械的性質を支配するこ とを説明できる。 C.材料工学技術の早い進歩により、専門の奥行き が日々深くなる。例えば、測定装置の進歩により、 測定対象が原子にまで至る。また、材料にフラーレ ンあるいは導電性プラスチックの新機能材料が生ま れ、順次対象が広がる。工学では、各種の材料に対 し、とくに社会的要求を理解し、それを考慮して研 究開発を行うことが必要である。ここでは、先ずそ のための最新資料を収集してまとめる能力を養う。 対応する授業科目:材料工学輪読、先端材料工学など 【具体的な達成目標】 ・必要とする事柄に対して、それに最適な最新学術 雑誌や文献の収集ができる。 ・関連の専門書籍等を探すことができ、さらにそれ らの中から必要な部分を理解することができる。 ・内容を把握してその発表を行い、質疑に応答できる。 D.社会人・職業人として十分な知識と技能を修得 する。 D1社会事例に対して技術者として自主的な思考がで きる倫理を身につけるために、最低限の素養として、 安全管理や環境管理等の基礎的知識を身につける。 対応する授業科目:工学倫理 【具体的な達成目標】 ・技術が社会に及ぼす影響を具体的に事例を挙げて −9− 仰岳会会報 第36号 説明できる。 ・企業がもつべき倫理を具体的に事例を挙げて説明 できる。 ・企業における個人がもつ知的財産権の範囲を説明 できる。 ・労働災害の事例等を知り、安全管理や環境管理か ら対策を立てることができる。 D2・人文科学を通し人間個人の素養を身につけて 技術を見直し、社会科学によって社会的共同生活か ら技術を見直す等の一般教養的観点から技術を位置 づける能力を養う。また、機械、電子、電気、プロ セス工学概論等の他分野から材料工学を多面的に解 釈できる能力を身につける。 対応する授業科目:教養教育科目、総合科目、プロ セス工学開講の授業、電子・電気・機械工学概論など 【具体的な達成目標】 ・感性を芸術等で、人生観を倫理・哲学等で、ある いは世界観を歴史を通し養うことにより、新たな 目で科学技術を観ることができる。 ・社会的規範を経済、法律、政治等から学び、科学 技術の在り方を考える能力を養う。 ・各工学の専門分野においては、図面の設計手法を 身につけ、材料を評価する能力を養う。電気及び 電子の観点から回路を理解し、電気・電子回路に 必要な材料を設計する目を養う。プラント設計の ための構成要素を理解し、その観点から材料を見 る目を養い、多面的に材料工学を評価できる能力 を身につける。 D3 技術者・研究者として情報収集のために英語 の技術資料が読め、一般企業人として国際的な交流 のために自己紹介ができる程度の英語を主とした語 学を修得する。 対応する授業科目:英語コミュニケーション、工業 英語、教養教育(英語)など 【具体的な達成目標】 ・英字新聞、原文小説等を読める語学力 ・初歩的英語によるディスカッションやプレゼン テーション ・材料に関する最先端の論文が読解できる能力 等の能力を身につける。 D4 インターネットを利用して情報を集め、企業 人として企画書や報告書を作成するための情報処理 能力を養う。 対応する授業科目:情報処理、プログラミング及び 演習、教養教育(情報処理) 【具体的な達成目標】 ・Wordや一太郎などに代表される文書作成ソフト ・ExcelやLotus123に代表される表計算ソフト ・E-mail、インターネット等の情報閲覧 以上の3項目をコンピュータを用いて行える能力を養う。 創造性 E.もの作りと創造性ならびにプレゼンテーション 能力を身につける。 E1・研究能力または問題解決能力を養うため、課 題を設定しそれを遂行するための実行計画をたて、 実行する能力。自ら実行することの意義を理解する ために、自分にあった課題を選択し、その遂行計画 を立てる。 対応する授業科目:自由演習、材料工学卒業論文、 総合的開発学 【具体的な達成目標】 ・課題やテーマの社会的意義を理解し、そのテーマ の背景を把握できる。 ・自由な発想の元に、個人もしくはグループでテー マを設定し、解決するために参考書ならびに情報 等を集めて実験を行い、結果をまとめて発表できる。 E2・自ら選択した課題の遂行過程を理解し、定期 的な経過報告会で発表を行うと同時に、自ら問題を 提起して教官と討論することを通じて、課題を自主 的・継続的に遂行する能力を養う。 対応する授業科目:材料工学卒業論文 【具体的な達成目標】 ・卒業論文中間発表会で、卒業論文テーマに対する 実験の途中経過を定期的に報告し、指導教官と討 論の上、自主的に実験を遂行する。 E3・継続してきた研究の結果をまとめて日本語で の記述を行い、課題に関する調査結果を、口頭発表 を通してプレゼンテーションできる能力を養う。 対応する授業科目:材料工学卒業論文 【具体的な達成目標】 ・ 卒 業 論 文 の 発 表 準 備( 発 表 概 要 の 執 筆、 PowerPointもしくはOHPによる発表資料の作 成)、発表練習、発表会での公聴を通して、一連 の発表作業ができる。 ・4年生1年間という期間内で、卒業論文のテーマ 設定と卒業論文の執筆を完了する。 プログラム内の主要なシステム 1.教育手段・カリキュラム 本コースの学習・教育目標と開講講義科目との対 応、それぞれを達成する科目群、主要科目が設定さ れ、いずれも詳細はシラバスに明示されています。 また、各授業科目間の連携をとるため、学習・教 育目標の分野別に連携をとる「科目間連絡ネット ワーク」が組まれています。 2.教育点検・改善 5つの委員会からなる 「教育点検・改善システム」 を立ち上げています。在学生自らが教育目標の達成 度を自己集計して自分の現状を把握できるとともに、 「在校生に対する評価アンケート」や「卒業生・さ らには企業の上司などからの卒業生に対する評価ア ンケート」を集計して学習・教育目標の点検と改善 − 10 − 仰岳会会報 第36号 に継続的に反映させています。さらには、 「目安箱」 をホームページに設置し、学生はもとより広く学内 外からの意見や要望をくみ上げるシステムになって います。 「教育点検・改善システム」の各委員会の構成 1.教育目標検討委員会(Plan) 主に教育目標を検討し設定。 真島教授、松田助教授、砂田助手 2.シラバス検討委員会(Make) 主にシラバスを検討。 池野教授、川畑教務職員 3.教育実施検討委員会(Do) 主に具体的に教育の実施を検討。 寺山教授、佐伯助教授、橋爪助手 4.教育点検・評価委員会(Check) 主に教育効果を検討。 穴田教授、佐貫助教授、西村助教授 5.教育改善委員会(Action) 主に教育改善を検討。 森教授、古井助手 教育 点検・ 改善 システ ム − 11 − 仰岳会会報 第36号 学校だより 新講義科目の開設 物質生命システム工学科 教 授 池 野 進 (金属工学科 昭和43年度卒業) 物質生命システム工学科材料 コースでは、本年度より卒業 生による講義を開設する。特 筆すべきは講師たちのボラン ティア・スピリットであり、 交通費は勿論、手弁当で一切 無料で開講する講義である。 昨年、独立法人化されて以 来、そうでなくても苦しかった台所事情が極端に辛 くなった。我がコースにおいても全体で購入する雑 誌を一部(Acta Materialia)のみとし、後は一切、 購入をやめた。学生の教育ができなくなるのを少し でも軽減するため、教官各位が個人的及び相互補助 で給料から支出して購入し、雑誌を研究室に揃えて 学生の閲覧に供することした。 そのような状況なので、新しく開講する講義の講 師に支払う手当は逆さにしても出ない事態に立ち至 っている。幸いにも我が同期生はケチなことは言わ ない太っ腹の先輩揃いである。今の社会に出て最も 求められるもの、最も大切なものは何かを後輩に叩 き込みたいとの切なる思いから講義をかって出ても らった。 一昨年、米国の私立の雄スタンフォード大学と州 立第一位のバージニア大学を訪問した際、卒業生の 愛校心で大学が存続すると嫌と言うほどレクチャー された。我が大学の卒業生にどのような愛校心があ るかと問われても今なら胸を張って答えられる。後 輩へのメッセージを伝えるため、 県内は勿論、栃木、 名古屋からはたまた中国からと馳せ参じたO.B.が 無料で講義をする。非常にうれしい。 講 義 名 が「 社 会 人 へ の 心 構 え 」 で あ る。「 材 料 ̶̶̶特論」といった通例もしくは堅い講義名から 脱却している。我々の意気込みを感じて欲しい。以 下がその内容である。 平成17年度開講講義 特論 講義名: 「社会人への心構え」 単位:2単位 開講時期:3年生 前期 講師:笹木、山本、山田、茂松、吉久、横田 Ⅰ.技術と経営 ・「企業に役立つ技術者」 ・「企業における特許の役割 Ⅰ」 ・「企業における特許の役割 Ⅱ」 ・「企業ブランドを守る品質管理と技術者のあ り方 Ⅰ」 ・「企業ブランドを守る品質管理と技術者のあ り方 Ⅱ」 ・「経営の立場から見た技術者に必要な素養に ついて」 ・「技術は経営に役立つか?」 ・「技術者が経営に参加するためには」 Ⅱ.世界における日本の技術者 ・「中国における技術者」 ・「これからの中国で活躍するための技術者の 考え方」 ・「東南アジアの現状」 ・「グローバル化時代に技術者が海外で活躍す るために」 ・「USAで起業化するためには」 − 12 − 以上13週を組んでおき、2週をレポート 作成に当てる。