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カリフォルニア工科大学短期滞在報告

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カリフォルニア工科大学短期滞在報告
2006.3.6
海外先進教育研究実践支援プログラム報告
-教育改善とファカルティディベロップメント-
カリフォルニア工科大学短期滞在報告
筑波大学
システム情報工学研究科
構造エネルギー工学専攻
笠原次郎
Jiro Kasahara(University of Tsukuba)
Key Words: Detonation, PDE, California Institute of Technology, Naval Postgraduate School
1.はじめに
は283人(ポスドク、訪問研究者まで入れた研究スタ
文部科学省の平成16-17年度海外先進教育研究実
践支援プログラムにて、平成17年3月27日から6月30
ッフとしては1268人)であり、学生2に対して研究ス
タッフ1の比率である。MITでは学生4に対して研究ス
日まで、米国パサデナ市にあるカリフォルニア工科
大学1)(California Institute of Technology, Caltech)の爆
タッフ1となり倍の開きがある。Caltechの授業料・入
学金等収入は全予算の4%たらずで、寄付金が26%、
発力学研究室2)(Explosion Dynamics Laboratory, EDL)
に滞在し、教育システムの視察及びパルスデトネー
外部資金(Grant)が57%、他収入が13%となってい
る9)。年間予算総額は$477,400,000=約500億円強であ
ションエンジン3-6)(Pulse Detonation Engine, PDE)に
り、東京大学の年間歳入額634億円(2001年)に迫る
関する基礎研究を行った。また、引き続き平成17年7
10)
月1日から7月23日まで、米国モントレー市にある海
軍大学院7) (Naval Postgraduate School, NPS)のロケ
研究面に39%が支出されている。また、大学の基本的
な財は1兆円規模だそうである。航空学専攻(Graduate
Aeronautical Laboratories of California Institute of
ット推進研究室(Rocket Propulsion Laboratory, RPL)
に滞在し、教育システムの視察及びPDEの開始過程実
。なお、学生へのサポートも含めた教育面に39%、
Technology, GALCIT)では、教官公募に期限が設け
験や実験施設(Bld.217)の見学を行った。PDE研究
のこれまでの発展に関連して、Caltechは基礎面で、
られていないと聞いた。つまり、一流の適任者が現
れるまで、いつまでも待つようである。一般的な
NPSは応用面で重要な役割を果たしてきた大学であ
る。本稿では、両大学で現在行われているPDE研究・
Caltechでの公募には、世界中から200名あまりの応募
があるそうである。また、清掃・塗装・剪定が学内
教育・研究環境についてふれる。
各所で毎日行われ、観光客が多数訪れる美しい環境
を維持している。この洗練された小さな環境が
2.Caltechでの3ヶ月の滞在
Caltechは、Los Angelsのダウンタウンから北東に約
Caltechの最大の利点であるようだ。「比較的少数の
優秀な学生に対し、比較的多くの一流の教官が小規
15 km, Freeway110号を利用すると20分のPasadena市、
San Gabriel山脈の南の麓、海抜約200mにあり、平均
模環境=接触しやすい環境で指導を行う」のである11)。
的な大気圧は99kPaである(毎日実験で確認していた
値である)。Caltechは、ノーベル賞受賞者を29人(内
究・講義等の選択肢が少なく最大のデメリットでも
ある」との声もあった。
卒業生は19人)輩出している。極めて大きな科学的
・工学的業績のある大学であるが、規模は小さく、
学部生・大学院生の多くはCaltechの敷地内に居住
している。多種あるが、たとえば4人住まいのアパー
敷地は東西800m南北1000mの長方形に全て入り、5分
も歩くとすぐ敷地境界から出てしまう。現在、米国
トメントでは1人あたり月額$437、1人住まいだと
月額$899ドルかかる11)。近くにはアメリカ横断鉄道建
本土内は衛星写真を利用することができるのででき
れば直接確認して頂きたい8)。学生数も理学系工学系
設のビッグ4の1人であるHenry Huntington氏による
広大な庭園Huntington Libraryがある。そのため大学一
全て合わせて1学年191人(2003年9月入学者)と、
極めて少数である。ちなみにCaltechのライバルMIT
帯は高級住宅街となっていて、近年かなり家賃が高
騰しているとのこと。大学から離れて住む人も増え
の1学年の入学者は1083人である。Caltechの教官数
たためか、車での通勤者が増加し、新しい地下駐車
ただし、小規模であることに対して、学生から「研
場が建設中である。Caltech設立準備時(1926年)に
決定的な影響を与えるとのこと。この際の評価は世
Huntington氏の協力があったわけであるが、これは同
界でトップないしは数番以内でなければならないと
じく鉄道王の1人Leland Stanford氏によるStanford
Universityの創設を連想させる。20世紀を代表する二
の話を耳にした。当然これらの評価は「研究」にお
ける能力と成果によって行われる。この審査の時点
つの西海岸の私立大学は19世紀のカリフォルニアゴ
で、議論としては候補者の教育的能力について言及
ールドラッシュが生んだ大富豪の協力の下誕生した
されることもあるが、tenureの指標には決してならな
わけである。GALCITでは大学院生は全員、TAまた
はRAを行なっており、授業料($25,335, 2004-2005
いそうだ。評価以外でも、大学側から教員本人に対
する教育能力に関する話し合いやアドバイス等は一
academic year)分プラス年間2万ドルの給与を得てい
切ない。しかし、これらは、Caltechが特別なのであ
る。また、この給与は、指導教授が獲得した研究費
って、アメリカの他の一般的な大学がそうというわ
から支出されることが基本だそうだが、万一予算が
途中で打ち切られた場合でも、大学院在学5年間は大
けではなく、逆に教育は大変重要な評価点となると
学側がこの給与を保証している。このような給与の
保証は必ずしも全米の大学院にあるわけではないそ
うだ。
のこと。
GALCITの名前は世界的に有名である。US News
の全米大学院ランキング12)(2006年版)によると、航
大学院ではコースワークとして138単位以上の単
空 宇 宙 工 学 / 航 空 工 学 / 宇 宙 工 学 分 野 で MIT 、
Stanford Univ.と並び同率1位である。初代GALCIT長
位取得を要求される。Aeronauticsのプログラムを選択
した場合、流体力学(27単位)、固体力学(27単位)、
のTheodore von Karman教授によって南カリフォルニ
アが世界的な航空宇宙産業の中心地となり、Karman
実験技術とラボ研究(27単位)、数学と応用数学(27
単位)が必修。その他、選択科目で27単位が要求さ
教授の教え子が現在のJet Propulsion Laboratory, JPL
を設立するといった歴史がある。1930-1940年にかけ
れる。たとえば流体力学(27単位)の場合、1学期9
単位を3学期分取得しなければいけないので、最低で
てGALCITの10 Foot Wind Tunnelでは、試作航空機模
も1年の在学年が必要。1学期分の9単位は、週3時間
(3単位)の授業と6時間の自習時間(6単位)の合計
である。週3回(1回1時間)の授業が5科目分、1年間
(3学期)続くわけである。毎週決まった曜日に宿題
が出され、翌週の同じ曜日に提出となる。平均する
と、毎日なんらかの宿題の提出があることになる。
学期中は完全に勉強漬けとなるらしい。期末試験も
ある。特に決まった場所で試験を行うのではなく、
持ち帰って自宅、または研究室で問題を解いて提出
となるらしい。博士課程の場合は、上記の要求(+大
学院専門科目45単位の取得等)を満たした後、博士
候補者試験を在学2年目または3年目に受け、在学5年
以内に学位論文提出及び最終試験を受けパスする必
要がある11)。なお、流体力学については、最初は基本
図1 Caltech-EDLメンバー、後列左から二人目
がShepherd 先生
型
事項からスタートし、半年は無理なくついていける
とのこと。
が250種類にわたって試験されている。中には第2次
大戦で活躍した航空機の模型らしい名前が多数見受
Caltechでの教育活動の評価はどのようになってい
るのであろうか。実は、教育評価は行っていないと
けられる(PX-38等)。
いうのが、答えだそうだ。せいぜい、教育ワークシ
ョップや非公式新人教員研修がある程度である。学
Aeronautics)率いる研究室である(図1)。私の滞在
中の他のEDLメンバーは、講師1名、秘書1名、ポス
期末に学生から事務局側に授業内容の評価やコメン
トは提出されるが、この内容は昇任や昇級には無関
ドク1名、大学院生5名、学部夏期研究生1名、訪問学
生1名であった。学生を含め皆1~3人用のオフィスが
係である。教員が評価される機会自体も少なく、赴
任5年目が終了した時点で行う、tenureのための評価
与えられている。実験室は地下2階、地下1階、屋
上階にそれぞれ1カ所ある。EDLはデトネーション
または、7-15年後にあるfull-professorになるための評
価のみである。世界中から選ばれた有力研究者にpeer
研究で世界的に有名であり、PDE研究に関しては、弾
道振子を用いたシングル作動の研究 13-15) やtoroidal型
reviewをお願いし、その評価がfull-professorの採否に
のinitiatorの研究16)において重要な成果がある。また、
EDL は 、 Joseph E. Shepherd 先 生 ( Professor of
定常デトネーションエンジンに関連した理論研究17)
せる。NPSは、宇宙飛行士を世界一多く輩出してい
も行われていた。PDEの研究の他に、デトネーション
る大学として有名である。海軍パイロット-NPSで
発生に伴う構造物の破壊現象、PLIF等を用いたデト
宇宙工学のMaster of Scienceの学位を取得-テスト
18)
ネーション構造や爆発現象の可視化解析 にも力を
パイロット-宇宙飛行士というのが代表的な宇宙
入れている。PDE、デトネーション研究者の間では有
名であるが、研究室のホームページには世界中のデ
飛行士(パイロット)養成コースなのである。また
NPS独自の人工衛星を開発・運用していることでも
トネーションデータをまとめたDetonation Database19)
知られる。大学院の授業でも、衛星設計(デザイン)
が公開されている。また汎用性のある実験装置とし
がある。15人一クラスで、学生の専攻分野に応じて、
て各種衝撃波管を所有している。
姿勢制御、推進機構、構造など、異なったテーマが
さて、Caltechでの私の研究テーマは訪問直後に
Shepherd 先生と相談して決まった。日本で我々が進
与えられる。学生同士密接なコミュニケーションを
とりながら、衛星設計を進めるらしい。
めていた研究テーマであり、かつEDL出身のCooper
私が滞在したRPLは、キャンパスから車で5分ほ
博士の研究とも関連が深い、部分充填効果の限界値
について調査することとなった。図2に示すような、
ど行った米海軍所有のゴルフコースの敷地内にあ
る。RPLは4つのエンジンテストセルを有していて、
弾道振子を製作した。これは延長管が附属した衝撃
波管を天井にワイヤーでつり下げたものである。衝
滞在中は3つのセルが稼働していた。第1セルでは
デトネーション開始装置に関する実験、第2セルで
撃波管内にヘリウムを充填して撃針にて破膜し、延
長管内をヘリウムが膨張することで推力を得る。つ
はNASAがスポンサーのP&WのPDE実験、第3セルで
は多気筒ロケット推進に関する実験が行われてい
まりPDEと類似作動を行う。実験の結果比インパルス
に上限値が存在することが示された。多くの助言と
た。第4セルでは固体燃料PDEの実験が予定されて
いた。RPL専属のスタッフは3人で、Chris Brophy先
献身的な支援のお陰で、なんとか2ヶ月で装置完成
にこぎ着け、残り1ヶ月でデータを取得すること
生(Research Associate Professor、図3)、Jose O.
Sinibaldi先生(Research Assistant Professor)、George
Hageman氏(Aerospace Technician)である。学生は
修士課程のBrent Channell君(Lieutenant Commander,
宇宙飛行士志望の海軍パイロット)、他博士課程の
図2 弾道振子型の比インパルス限界測定装置
ができた。データは現在解析中である。最後の1週
間は残りのデータ取得とNPSへの移動の準備で慌た
だしく、メンバーとの別れをゆっくり惜しむ間もな
かったのが心残りである。
図3 NPS-RPLのBrophy先生
なお、Joseph E. Shepherd先生は、日本学術振興会の
学生1名であった。また、P&Wからは常時3人が滞
在していた。P&WとGEが交互に試験セルを使用し
外国人招聘研究者(短期)制度にて、筑波大学に平
成18年の10月から2ヶ月滞在して頂くことになって
ているそうだ。実験の役割分担も明確で、周辺環境
整備はNPSが行っていた。Vitiated Airを供給する所
いる。
まで、毎ショットNPS側が管理・担当していた。
NASA(国家)予算による実験であるならば、この
3.NPSでの3週間の滞在
NPSはカリフォルニアの中でも観光地として有名
ように企業が海軍施設を使用することが可能らし
い。なお企業が試験費用を全学負担する実験はでき
なモントレー市にある。サンフランシスコから南に
220km、Freeway 101号で約2時間の距離にある。深
ないとのこと。政府間の共同研究であれば、日本か
らでも本施設を使用可能とのことであった。
い緑と美しい海岸線があり、思わず日本を思い出さ
3週間で行った私の仕事は、図4に示すデトネー
ション開始装置の実験研究20)のお手伝いである。
研究としてはVTOL用クロスフローファンの研究、
NPSのPDE研究において、最大の特徴の一つはバル
カタパルトからの高温水蒸気吸気によるエンジン
ブレス技術であるが、この開始過程の実験において
ストールに関する研究、超小型市販ガスタービンエ
も、バルブレス機構が使われており、大変勉強にな
ンジン(日本のSophia Precision製)を改造した超音
った。使用している気体はエチレンと空気であった。
速エンジンの研究、世界最大のカスケード風洞を用
いた可視化などがあった。
これらを当量比0.8~1.4程度で混合・使用していた。
バルブレスシステムでは、空気は貯気槽から一定流
量で流し続け、燃料のエチレンのみバルブにて供給
している。バルブは航空機用のもので高価(1個約
4.おわりに
優れた研究教育機関が生まれる要因について、何
50万)らしく、バルブ作動の最大許容時間は1秒で、
度も考えた4ヶ月であった。Caltechについては、科
フィルターを2重に配置し、破壊を防いでいた。試
験装置と配管は防振台の上に設置されていた。空気
学技術という大木の芽が出始めた今世紀初頭に、新
は2インチのステンレス配管で、防振台の上まで供
給されていた。TTL信号のみで高速スイッチングが
る3人の研究リーダー(R. A. Millikan, A. A. Noyes,
and G. E. Hale)を招聘して大学の基礎を作ったわけで
可能な固体リレーを使用していた。TTL信号の制御
は、遠隔操作可能なパルスジェネレーターと
ある。そして、小規模のメリットを生かして成功し
ている。これらの要素からは、挑戦的、先見性、個
LabViewによって行われていた。流量計測は基本的
にチョーク流を生成することによって行われてい
性的といった言葉が思い浮かぶ。
た。また、バルブ操作は、ほぼ全部を計測室からの
遠隔操作によって行われていた。よどみ点圧設定の
いった独自技術をもち、環境の整った複数の試験セ
ルを有して、企業・NASA・大学と連携して研究を展
ためのレギュレーターも遠隔操作可能であった。30
分ほどで、10ショットが可能である。計測室とテス
開している。これらの要素からは、挑戦的、洗練、
開放的といった言葉が思い浮かぶ。
トセルは20 cmほどの障壁で隔てられていて、この
障壁には一つのセルにつき二つの観測窓があった。
大きな可能性を秘めた未踏の分野に、環境(研究
インフラ)整備を心がけ、独自の勝機を見いだしつ
天地カリフォルニアに、強いリーダーシップを有す
NPSのRPLは、PDEにおけるバルブレスシステムと
つ、オープンに連携しながら進むといったところで
あろうか。また、優秀な人材(世界的に著名な研究
者)を集めることに対して、容赦はない(ドライな
手段で選ぶ)ことも印象的であった。
本滞在の成果を日本での教育研究活動に積極的に
活用していきたいと思う。
参考文献
1) http://www.caltech.edu/
2) http://www.galcit.caltech.edu/EDL/
図4 NPSのデトネーション開始実験装置
3) 松尾亜紀子,パルスデトネーションエンジンの研
究の背景,日本燃焼学会誌,第47巻,140号, pp.
81-83,2005.
Transient Plasma Ignition システムを使用した開始
4) 笠原次郎,パルスデトネーションロケットと部分
装置の性能試験が行われていた。1J 程度の放電エネ
ルギーで格段に開始性能を向上させる装置と期待
充填効果による推力増大法,日本燃焼学会誌,第
47巻,140号, pp.84-89,2005.
されている。エチレン-空気の実験で、点火タイミ
ングをtuneしなくても、安定したデトネーション波
5) 八房智顕,遠藤琢磨,滝史郎,液体燃料パルスデ
トネーションエンジンの推力特性,日本燃焼学会
の生成に成功していたと聞いた。私の滞在中は、対
照実験として、1Jのエネルギーが投入可能なガスタ
ービン用の点火プラグを使用した実験が行われて
いた。
誌,第47巻,140号, pp.90-96,2005.
6) 桜井毅司,吉橋照夫、小原哲郎、大八木重治,埼
玉大学におけるパルスデトネーションエンジン
の研究,日本燃焼学会誌,第47巻,140号, pp.
同じゴルフコース内に他にTurbopropulsion
Laboratoryがあり、ここのGarth V. Hobson先生
97-104,2005.
7) http://www.nps.edu/
(Professor)に詳しく施設を案内して頂いた。主な
8) http://maps.google.co.jp/
9) Caltech Visitor's Guide 2004, California Institute of
Technology, p.3, March 2004.
10) 大学ランキング2004年版,朝日新聞社,2004.
11) Caltech Catalog 2004-2005, California Institute of
Technology, March, p.9, 2004.
12) America's Best Graduate Schools 2006, U.S. News
and World Report, 2005,
http://www.usnews.com/usnews/edu/grad/rankings/ra
nkindex_brief.php
13) M. Cooper, S. I. Jackson, J. M. Austin,
E. Wintenberger, and J. E. Shepherd., Direct
Experimental Impulse Measurements for Detonations
and Deflagrations, Journal of Propulsion and Power,
18(5), pp.1033-1041, 2002.
14) E. Wintenberger, J. M. Austin, M. Cooper, S. Jackson,
and J. E. Shepherd, An Analytical Model for the
Impulse of a Single-Cycle Pulse Detonation Tube,
Journal of Propulsion and Power, 19(1), pp.22-38,
2003.
15) M. Cooper, J. E. Shepherd, and F. Schauer., Impulse
Correlation for Partially-Filled Tubes, Journal of
Propulsion and Power, 20(5), pp.947-950, 2004.
16) S. I. Jackson and J. E. Shepherd, Detonation Initiation
via Imploding Shock Waves., AIAA 2004-3919,
2004.
17) E. Wintenberger and J. E. Shepherd, The Performance
of Steady Detonation Engines, AIAA-2003-0714,
2003.
18) F Pintgen, C. A. Eckett, J. M. Austin, and J.
E. Shepherd, Direct Observations of Reaction Zone
Structure in Propagating Detonations, Combustion
and Flame, 133(3), pp.211-229, 2003.
19) http://www.galcit.caltech.edu/detn_db/html/db.html
20) J. O. Sinibaldi, J. Rodriguez, B. Channel, and Chris
Brophy, Investigation of Transient Plasma Ignition for
Pulse Detonation Engines, AIAA 2005-3774, 2005.
海外先進教育研究実践支援プログラム報告会
-教育改善とファカルティディベロップメント-
カリフォルニア工科大学EDL短期滞在報告
筑波大学
大学院システム情報工学研究科
構造エネルギー工学専攻
笠原次郎
平成17年12月20日
筑波大学
総合B棟1階公開会議室
文部科学省 平成16-17年度 海外先進教育研究実践支援プログラムにて、
カリフォルニア州の2大学に、計4ヶ月滞在した
平成17年3月27日から6月30日(約3ヶ月)
米国カリフォルニア州パサデナ市
カリフォルニア工科大学
(California Institute of Technology, Caltech)
爆発力学研究室
(Explosion Dynamics Laboratory, EDL)
平成17年7月1日から7月23日(約3週間)
米国カリフォルニア州モントレー市
海軍大学院
(Naval Postgraduate School, NPS)
ロケット推進研究室
(Rocket Propulsion Laboratory, RPL)
NPS
Caltech
1
Caltechは、Los Angelsのダウンタウンから北東に約15 km, Freeway110号を
利用すると20分のPasadena市、San Gabriel山脈の南のふもと、海抜約200m
にあり、平均的な大気圧は99kPa
Caltechでは、小規模(接触しやすい)の環境下で指導を行う
Caltechのノーベル賞受賞者は
29人(内卒業生は19人)
敷地は
東西800m南北1000m
5分も歩くとすぐ敷地境界から出る
1000 m
800 m
Googleマップを利用する
と衛星写真で見ることが
できる。(米国内)
2
Caltechでは、小規模(接触しやすい)かつ美しい環境下で指導を行う
R. Millikan の
記念ホール
(唯一のモダン建築?)
いつも良い香りのするキャンパス
日中は清掃
とメンテ
Noyes, Hale,
Huntington
Segway
も警備に
利用
Caltechでは、少数の学生に対し、多くの教官が、小規模(接触しやすい)かつ
美しい環境下で指導を行う
Caltechの1学年は191人(MITの1学年の入学者は1083人)
Caltechでは学生2に対して研究スタッフ1(MITは学生4:研究スタッフ1)
Caltechの教官数は283人(研究スタッフは1268人)
小規模であることに対
して、学生から「研究・
講義等の選択肢が少
なく最大のデメリットで
もある」との声あり
EDLでは、研究スタッフ(教授、講師、ポスドク)3人に対して、
学生6人(院生4人、学部生1人、訪問学生1人)
3
Caltechでは、少数の優秀な学生に対し、多くの一流教官が、小規模(接触しや
すい)かつ美しい環境下で指導を行う
GALCITでは大学院生は全員、TAまたはRAを行う
授業料($25,335, 2004-2005 academic year)分プラス年間2万ドルの給与
指導教授の研究費が打ち切られても、在学5年間は大学側がこの給与を保証
(給与保証は必ずしも全米の大学院にあるわけではない)
教官を公募する場合、一流の適任者が現れるまで、いつまでも待つ
Caltechの年間予算
$477,400,000=約500億円強
(東京大学の年間歳入額634億円(2001年))
収入
授業料・入学金等
4%
寄付金
26%
外部資金(Grant)
57%
他収入
13%
支出
教育面
39%
研究面
39%
(財産は1兆円を超す)
カリフォルニアの気候の良さも、大きなメリットである
表
裏
大学の売店の人気商品
4
寄付の文化:Graduate Aeronautical Laboratories of California Institute
of Technology=GALCITのGは、元は寄贈者のGuggenheim氏の頭文字
GALCITはUS News の全米大学院ランキングの航空宇宙工学分野で1位
Theodore von Karman教授の指導の下、南カリフォルニアの航空宇宙産業の
発展に大きく貢献。1930-1940年にかけてGALCITの10 Foot Wind Tunnelで
250種の航空機を試験
Karman教授の
学生がJPLを設立
5
EDLは、Joseph E. Shepherd先生(Professor of Aeronautics)率いる研究室
実験室は地下2階、地下1階、屋上階にそれぞれ1カ所ある。
EDLはデトネーション研究で世界的に有名
PDE関連の研究
弾道振子を用いたシングル作動の研究
toroidal型のinitiatorの研究
定常デトネーションエンジンの研究
デトネーション発生に伴う構造物の破壊現象
PLIF等を用いたデトネーション構造や爆発現象の可視化解析
世界中のデトネーションデータをまとめたDetonation Database
大学院生には1~3人用のオフィスが与えられる
6
5”衝撃波管実験室にて、PDEの部分充填に関する実験的研究を行った
5”衝撃波管実験室
弾道振子
アルミ管を切断して部分充填率を変化させる
部分充填による推力増大効果に限界が存在することが
実験的に確かめられた
7
お隣の実験室(T5実験室)のメンバーのみなさん
(再突入物体周りの熱伝達を計測)
卒業式では、学長より全員に学位記が直接授与される。多数のご父兄が出席
お世話になったスージー秘書
8
学部生・大学院生の多くはCaltechの敷地内に居住
アパートメント
4人住まい:1人あたり
月額$437
1人住まい:月額$899
大学院生用
大学から離れて住む人も増
えたためか、車での通勤者
が増加
新しい地下駐車場が建設中
学部生用
大学院の概要
6 Divisions: Biology; Chemistry and Chemical Engineering;
Engineering and Applied Science; Geological and Planetary Science;
Humanities and Social Science; and Physics, Mathematics and Astronomy.
23 Graduate Options: Aeronautics; Applied and Computational Mathematics…
願書と推薦書で入学判定(GREも提出必要)
留学生は、TOEFL(250, 600以上、+TWE, +TSE)
IELTS(7以上)のスコアの提出が必要。
入学前の夏期ELSプログラムあり。(慶應卒の留学生が7月に渡米)
Special Student (6ヶ月, Florian君も)、
Visiting Student Researchers(他大学学生の受け入れ)
最短の在学期間, 最小単位数
修士課程で1年 (各term 最低36unit,visaのためにも必要)
博士課程で3年
20近い賞が大学院生に対して用意されている
9
大学院(修士・博士過程)でのコースワークは相当ハード
大学院ではコースワークとして138単位以上の単位取得を要求
Aeronauticsのプログラムを選択した場合、
必修科目 流体力学(27単位)、
固体力学(27単位)、
実験技術とラボ研究(27単位)、
数学と応用数学(27単位)が必修
選択科目 27単位が要求
流体力学(27単位)の場合、
1学期9単位を3学期分取得しなければならない
最低でも1年の在学年が必要
1学期分の9単位は、
週3時間(3単位)の授業と6時間の自習時間(6単位)の合計
週3回(1回1時間)の授業が5科目分、1年間(3学期)続く
毎週決まった曜日に宿題が出され、翌週の同じ曜日に提出
つまり、平均すると、毎日なんらかの宿題を提出
期末試験有り。特に決まった場所で試験を行うのではなく、
持ち帰って自宅、または研究室で問題を解いて提出
博士課程の場合は専門科目の受講、博士候補者試験にパス、学位論文の提出が必要
前ページの要求+大学院専門科目45単位の取得
博士候補者試験を在学2年目または3年目に受ける(筆記or口頭試問)
在学5年以内に学位論文提出及び最終試験を受けパスする必要あり
(5年を越える場合は請願書必要)
10
Caltechでは、公式的には、教育活動の評価はない
・教育ワークショップ・非公式な新人教員研修はある
・学期末に学生から事務局側に授業内容の評価やコメントは提出
しかしこの学生からの評価は昇任や昇級には無関係
・教員の評価自体2回のみ(研究のみによる評価)
(1)赴任5年目が終了した時点で行う、tenure評価
(2)7-15年後にあるfull-professorになるための評価
・full-professorへの評価は、厳しい
世界中から選ばれた有力研究者にpeer reviewをお願いする。
その評価が決定的な影響を与えるとのこと。
(世界でトップないしは数番以内?)
・この審査の時点で、議論としては候補者の教育的能力について言及される
こともあるが、tenureの指標には決してならない
・大学側から教員本人へ、教育に関する話し合いやアドバイス等はない。
・アメリカの一般的な大学では教育は大変重要な評価点となるとのこと。
Caltechは「超一流の研究者のリーダーシップ」を最重要視している?(戦略)
ゴールドラッシュ・良い気候
歴史は比較的浅い大学
超一流の研究者
接触しやすい小規模環境
=各分野の一流を集めやすい
シビアな外部審査
莫大な財源
美しい環境の維持
寄付
きめの細かな指導
(教員に対して
学生数は少ない)
手厚い経済的なサポート
優秀な学生
教育評価は行わない
多くのポスドク研究者
学生の選抜にはあまり力をかけていない
推薦書と願書のみで審査
学生への教育は
プラスαか?
研究者が主役
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NPSはカリフォルニアの中でも観光地として有名なモントレー市にある。
サンフランシスコから南に220km、Freeway 101号で約2時間の距離。
NPS Campus
RPL
(Bldg. 217)
NPSは、宇宙飛行士を世界一多く輩出している大学として有名
海軍パイロット-NPSで宇宙工学のMSの学位を取得-テストパイロット-宇宙飛行士
独自の人工衛星を開発・運用
衛星設計(デザイン):15人一クラスで、姿勢制御、推進機構、構造など、異なったテー
マが与えられる。密接なコミュニケーションをとりながら、衛星設計を進める。
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RPLは、キャンパスから車で5分の米海軍所有のゴルフコースの敷地内にある
RPLは4つのエンジンテストセルを有していて、滞在中は3つのセルが稼働
第1セル:デトネーション開始装置に関する実験
第2セル:NASAがスポンサーのP&WのPDE実験
第3セル:多気筒ロケット推進に関する実験
第4セル:固体燃料PDEの実験を予定
スタッフ:Chris Brophy先生、Jose O. Sinibaldi先生、George Hageman氏
学生:修士課程のBrent Channell君、他博士課程の学生1名
Chris Brophy先生
Jose O. Sinibaldi先生
Brent Channell君
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P&Wからは常時3人が滞在。P&WとGEが交互に試験セルを使用
Vitiated Airを供給する所まで、毎ショットNPS側が管理・担当
NASA(国家)予算による実験であるならば、企業は海軍施設を使用可能
企業が試験費用を全学負担する実験はできない
政府間の共同研究であれば、日本からでも使用可能
デトネーション開始装置の実験研究を手伝う
開始過程の実験にバルブレス機構を使用
気体はエチレンと空気(当量比0.8~1.4程度)
バルブレスシステムでは、空気は貯気槽から一定流量で供給
燃料のエチレンのみバルブにて供給
バルブは航空機用(1個約50万)で最大許容作動時間は1秒
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Transient Plasma Ignition システムを使用した開始装置の性能試験が行われていた
1J 程度の放電エネルギーで格段に開始性能を向上させる装置
エチレン-空気の実験で、点火タイミングをtuneしなくても、安定
したデトネーション波の生成に成功。
私の滞在中は、対照実験が行われていた。
=1Jのエネルギーが投入可能なガスタービン用の点火プラグを使用
した実験。
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