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より高速なインターネット用の新レーザーを開発 (米国)
NEDO海外レポート NO.1107, 2014.5.27 (1107-2) 【電子・情報通信分野 (ネットワーク/コンピューティング)】 仮訳 より高速なインターネット用の新レーザーを開発 (米国) 2014 年 2 月 19 日 著者:Jessica Stoller-Conrad, California Institute of Technology (CALTECH) カリフォルニア工科大学(California Institute of Technology: Caltech)が新たに開発 したレーザーが、 インターネットの基幹である光ファイバーネットワークにおいてデー タ伝送速度を一桁向上させる可能性がある。 この研究は、米国科学アカデミー紀要 (Proceedings of the National Academy of Sciences: PNAS)の 2 月 10~14 日の週のオンライン版に掲載 されている。同研究は Applied Physics and professor of electrical engineering の Martin and Eileen Summerfield Professor である Amnon Yariv 教授の研究室における 5 年間の努力の成果である。ポスドク 奨学生の Christos Santis (PhD '13)及び大学院生の Scott Steger が、このプロジェクト を率いた。 光は、長距離通信初期の搬送波であったマイクロ波の周波数帯の約 10,000 倍という 大量の情報を伝送することができる。しかし、このポテンシャルを活用するためには、 レーザー光を可能な限り単一周波数に近い高いスペクトル純度にする必要がある。純度 が高いほどより大量の情報を伝送することができるため、科学者らは長年にわたって可 能な限り単一周波数に近いレーザー光を発信できるレーザーを開発しようと試みてき た。 21 NEDO海外レポート NO.1107, 2014.5.27 今日の世界の光ファイバーネットワークは、 1970 年代半ばに Yariv 教授の研究グループが開 発した分布帰還型半導体(distributed-feedback semiconductor: S-DFB)レーザーとして知られる レーザーによって支えられている。光通信におけ る S-DFB レーザーのこのような長い寿命は、当 時のその類い希なスペクトル純度、つまり発光が 単一周波数により近いことによるものであった。 レーザーの周波数の純度が上がれば、レーザー光 線の情報のバンド幅が大きくなり、また光ファイ バー中での情報伝送距離が長くなり、その結果こ れまで以上により遠くにより速く、より多くの情 報を運ぶことが可能となる。 当時のこのような前例のないスペクトル純度 Amnon Yariv 教授の研究室で開発し た新しいレーザーは、レーザー光の純 度に重要なクオリティである、光を吸 収しないシリコン層を含んでいる。 (Credit: Amnon Yariv/Caltech) は、レーザーの多層構造中にナノスケールのコル ゲーション(波形状)を取り入れた結果として得られたものだった。この洗濯板のような 表面が内部フィルターのように機能することで、理想的な波周波数を汚す疑似的な「ノ イズ」波を区別する。旧 S-DFB レーザーは光通信において 40 年の間活躍し、Yariv 教 授が 2010 National Medal of Science を受賞した主な理由とされたが、このレーザーの スペクトル純度、すなわちコヒーレンス(可干渉性)が、増大するバンド幅の需要に見合 わなくなっている。 「このプロジェクトを実施する際の一番のモチベーションは、私たちが開発した S-DFB レーザーを含み、現在のレーザー設計が高スペクトル純度での稼働に不向きな 内部構造を有していることでした。これらのレーザー設計は、大きくて理論的に回避不 可能な光学的ノイズと干渉レーザーを混合させることで、スペクトル純度を低下させて しまいます。 」と Yariv 教授は語る。 旧い S-DFB レーザーは、主としてガリウムヒ素とリン化インジウムのⅢ-Ⅴ族半導体 と呼ばれる材料の連続した結晶層から構成されており、その結晶構造中を流れる電流を 光に変換する。発生した光は同材料中に貯蔵される。Ⅲ-Ⅴ族半導体はまた、強力な光 吸収体であり、これによりスペクトル純度が低下するため、研究者らは新たなレーザー 開発において別の解決策を模索した。 22 NEDO海外レポート NO.1107, 2014.5.27 今回開発したコヒーレンスの高い新レーザーでも、Ⅲ-Ⅴ族半導体を利用して電気を 光に変換するが、S-DFB レーザーとの根本的な相違点は、光を吸収しないシリコン層 に光を貯蔵することである。S-DFB レーザーの波形状の表面の改良型であるこのシリ コン層の空間的な形体がシリコンを集光器として機能させて、光を吸収するⅢ-Ⅴ族半 導体材料から新たに発生する光を引き離し、ほとんど光を吸収しないシリコンに格納す る。 S-DFB レーザーで可能な周波数帯域の 1/20 という狭さの、新たに達成したこの高ス ペクトル純度は、光ファイバー通信の未来にとって特に重要である。元来、光ファイバ ーのレーザー光は光パルスに情報を乗せて運んでいた。つまり、レーザーを急速にオ ン・オフすることで、データ信号が光に乗せられ、その結果できた光パルスが光ファイ バーを通じて運ばれる。しかし、増大するバンド幅の需要に応えるため、情報通信シス テムエンジニアらは、現在この「オン・オフ」技術の必要が無いレーザー光にデータを 乗せる新たな方法を採用している。この方法はコヒーレント位相通信(coherent phase communication)と呼ばれる。 コヒーレント位相通信では、波形が到達する時間において、一秒間のわずか何分の一 (10-16)ほど遅れたところにデータがあり、その遅れにより数千マイル超離れた距離でも 情報を正確に伝達できる。通常は安定した光波において、動画、データや他の情報を運 ぶデジタル電子ビットは、レーザーでこのようなわずかな遅れに変換される。しかし、 この遅れの可能な数、すなわち経路のデータ運搬能力は、レーザー光のスペクトル純度 の度合いによって根本的に制限されている。物理的な法則の限界からこの純度は絶対に はなり得ないが、Yariv 教授とその研究チームは今回の新たなレーザー開発において、 絶対純度に限りなく近づけようと試みた。 これらの新しい発見は、High-coherence semiconductor lasers based on integral high-Q resonators in hybrid Si/III-V platforms と題される論文で発表された。Yariv 教授、Santis 及び Steger の他に、Caltech の他の共同著者には、大学院生である Yaakov Vilenchik、及び元大学院生である Arseny Vasilyev (PhD, '13)が含まれる。本研究は米 国陸軍科学研究局(Army Research Office: AOR)、国立科学財団(National Science Foundation: NSF)、そして国防高等研究計画局(Defense Advanced Research Projects Agency: DARPA)により資金提供を受けた。レーザーは、Caltech の Kavli Nanoscience Institute にて作成した。 23 NEDO海外レポート NO.1107, 2014.5.27 連絡先: Brian Bell (626)395-5832 [email protected] 翻訳:NEDO(担当 技術戦略研究センター 松田 典子) 出典:本資料は米国・ カリフォルニア工科大学(California Institute of Technology (CALTECH))の以下の記事を翻訳したものである。 “A New Laser for a Faster Internet” http://www.caltech.edu/content/new-laser-faster-internet (Used with Permission of the California Institute of Technology) 24