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「窰洞(ヤオトン)レポート」 Yao Dong Report

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「窰洞(ヤオトン)レポート」 Yao Dong Report
FOR A SUSTAINABLE DEVELOPMENT
ON THE LOESS PLATEAU OF CHINA
Yao Dong Report
「窰洞(ヤオトン)レポート」
― 伝統技術の発展的継承と太陽エネルギー利用の国家的プロジェクト ―
吉田 燦(日大側代表・建築学科教授)
関口 克明(夏季団長・建築学科教授)
川西 利昌(冬季団長・海洋建築工学科教授)
吉野 泰子(夏冬派遣・短大助教授〈文責〉)
島宗淳一郎(夏冬派遣・大学院 1 年)
浅見 幸子(夏冬派遣・建築学科 4 年)
加藤 未佳(冬季派遣・建築学科 4 年)
車窓から眺めた黄土高原
「駿建」1999.1 学期末号「窰洞(ヤ
測定対象住戸外観
オトン)
と UIFA(国際女性建築家会
広がっています。平均標高 1200 m,
議)」に引き続き,今回は革命の聖
面積 60 万㎡の大地に暮らす民は約
地,中国延安の窰洞で実施した夏・
6000 万,そのうち 4000 万人が窰洞
冬の測定結果も含め,日中学術交流
を住みかとしています。窰洞はもと
の一端を紹介させて頂きます。
もと,黄土を切りとり,掘ってつく
なお,本プロジェクトの一環とし
られた生土の洞穴を居住空間とした
て,派遣された標記2名の女子学生
もので,母親の胎内を思わせるぬく
は,現在,西安建築科技大学に短期
もりややすらぎに,言い知れぬ安堵
留学中であり,研究活動や実施設計
感,親近感を覚え,住居の本質や,
作業に鋭意取り組んでいます。西安
sustainable development〈持続的
から投稿された E-mail により,彼女
発展可能な開発)について自問せざ
達の充実したキャンパスライフをご
るを得ませんでした。
覧下さい。学術交流に資する二人に
○環境調査結果 概要
熱いエールを送りたいと思います。
測定対象住戸内観
○日中共同調査の背景
改革開放政策により農民の経済水
準が向上する一方,青年層の都会へ
の流出が危惧されることから,農村
の生活環境を若者に魅力あるものに
改善するため,中国政府は国家プロ
ジェクトとして「窰洞の近代化」を
推 進 し ,独 自 の 伝 統 技 術 に よ り ,
「地球にやさしい快適空間」を実現
排熱を利用したカン
夏,甘粛の 4 省に渡って黄土地帯が
しようとしています。劉先生他,中
夏・冬の調査結果からヤオトンの
特徴を簡単にまとめると,
①屋外の日較差は大。室内は,夏涼
しく,冬暖かい
②開口部の熱遮断性能が悪い(敷地
条件の影響大)
③自然換気量が少なく,換気性能
は,不良
④室内外粉塵量は多いが,CO2 濃度
は低い
これらは,当該地域で初めて実施
国西安建築科技大学が当課題を担当
し,日大理工グループは地域と地球
の環境保全のモデルをアジアから実
証していくべく,当プロジェクトを
日中の国際共同作業として受け入れ
ることとなりました。
○黄土高原と窰洞(ヤオトン)
窰洞内部(水がめ)
2
黄河の中流域,陝西,山西,寧
窰洞ファサード
・換気性能の改善
・太陽熱の活用
日大理工・中国西安建築科技大学 ヤオトン共同調査隊(夏)
新型窰洞の断面図(設計者 Wei Qin(院生))
されたアンケート調査結果とも一致
する傾向が確認されました。
○窰洞住区改造の方向
研究開発の基本姿勢は,以下の通
○学術交流とキャンパスライフ
(浅見さんと加藤さんによる西安か
らの E-mail です)
私たちは今,西安建築科技大学に
りです。
て新しい窰洞の設計を行っていま
①冬暖かく,夏涼しい基本的な熱性
す。窰洞の環境特性をふまえた上
能を保持すること。
②ヤオトン建築の建設費の安さを保
持すること。
所を克服する設計ができればと思っ
ています。
③現代生活への要求を満足させなが
3月1日から,中国では後期が開
ら,伝統的居住様式の長所をも保
始になりました。冬休み中は人もま
持すること。
ばらだったのですが,今はたくさん
④自然エネルギー利用で,居住環境
性能の向上を図る。
⑤乏しい水資源の再利用方法を確立
する。
⑥現地産の煉瓦や石材を基本的な建
材とすること。
〔具体的構想〕→上図新型ヤオトン
できます。こちらの学生は,大学内
7∼8人,修士生は4人,博士生は
2人で一部屋だそうです。学生に寮
を与えるのは大学側の義務だそうで
すが,利用するか利用しないかは学
生の自由で,特に学校の近くに家の
ある人は利用しないことが多いそう
3.家屋的形態の保持+ヤオトンの
特色
4.緑化技術の応用・太陽エネルギ
空間温度測定
に寮を与えられています。学部生は
1.ソーラーハウスとヤオトンの結
2.多層ヤオトン
銅板
の学生をキャンパス内で見ることが
の断面図参照
合体
検知管による CO2 濃度測定
で,現在の窰洞の長所を残しつつ短
です。
80 歳の老夫婦
こちらの学生と接してみて印象に
残ったのは,皆が皆自分のやりたい
ことや目標,それに将来の自分像と
いうものをしっかりと持っていて,
ーの活用・土地の蓄熱(冷)性
それに向かって着実に努力をしてい
能の活用・最新の構造技術・排
っている,ということです。私たち
水の再利用・固形廃棄物のリサ
日本の学生の方が,いつもあくせく
イクル
とパソコンに向かっていて,見た目
アンケート調査
はすごくがんばっているように見え
ことをしているという印象を受けま
ますが,こちらの人は自分のペース
した。私たちはまだ授業には出させ
で確実に,やるべきこととやりたい
てもらっていませんが,今後帰国す
現在,プロトタイプの熱計算が検
討されています。
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