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I-25 - 日本大学理工学部

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I-25 - 日本大学理工学部
I-25
銭湯の空間変移に関する研究
銭湯とスーパー銭湯の考察から
Study on the Transition space sento
○西島慧子1
山中新太郎2
Satoko Nishijima1, Shintaro Yamanaka2
1. はじめに・研究目的
銭湯は、自宅に風呂がある生活が一般的になったことにより年々減少傾向をたどっている。だが、銭湯は裸の付き合
いという言葉もできたほど親密な人間関係を生んできた。初めて銭湯に訪れた、見知らぬものに気軽に声をかける行為
を触発するような貴重な公共施設の空間である。
実家の改修の為銭湯を一時期利用していた際、利用していた人に「何が魅力で銭湯に通うのか?」と聞いたところ返
ってきた回答が、一人暮らしのため人と話す機会が欲しい・天井が高く開放的な空間が心地良いためというのが多かっ
た。公共施設としてだけではなく、銭湯の空間を味わう為に通う利用者もいることを知った。そのような体験から、公
共空間としての魅力以外での銭湯の空間要素の魅力はなにか気になった。
現在は戦前後に建てられた木造の銭湯は減少し、浴場と飲食場が一体となっている銭湯スーパー銭湯が増加している。
生活の一部であった銭湯からレジャー施設の要素を持つ空間となってきた。銭湯が出来てから明治期までは文献などか
ら研究が進んでいるが、木造の銭湯からスーパー銭湯空間の考察はされていない。生活の一部であった銭湯の空間から
どのように変移しているのか考察する。
2.研究方法
風呂や銭湯の研究は民族学で多く取り上げられている。しかし、戦前・後に多く建てられた銭湯図面がほとんどない
ため空間の変移について述べているものがない。そのため、1980年代後半に多く建てられたスーパー銭湯に至変移
を実測による調査をした銭湯空間のプランや図面から空間の形状を見ていくことによって変移を調査していく。また、
歴史・文化と大衆浴の変化の流れを整理し空間の変移をビジュアルで確認する。
3.公衆浴場史から銭湯空間の再考
浴場の歴史は 7∼8 世紀と古くからあり、現在ある銭
湯の空間になるまで文明の発展生活の変化によって進
化している。
始め浴場は、大衆での入浴は営利目的の場があった
わけではなく身を清める宗教的、もしくは治療目的の
場であった。
天正 18 年(1590 年) 大阪に金銭を徴収し営利目的の
風呂屋が現れ、翌天正 19 年(1591 年)に江戸に始めて
銭湯が出来る。営業目的の町湯が出来てからの風呂の
つくりの流れは、蒸風呂→戸棚風呂→柘榴風呂のよう
図1 柘榴風呂
に変化していく。
図2 戸棚風呂
「入浴・銭湯歴史」
浴・銭湯の歴史」
湯船に浸かる風呂が出てきたが、開放的な空間という
よりは蒸気を逃がさないようにする工夫をしていることが入浴の様子[1]からわかった。
1:日大理工•学部•建築 2:日大理工•教員•建築
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明治に入ると改良風呂と呼ばれる天井が高く番台・脱
衣場・湯場という空間になる。ただ、現代と違う点はガ
ラスによる間仕切りが脱衣場と湯場の間になっているこ
とである。
その後、モダン湯という名称でタイルを使い、湯船を
丸く、浴槽の周りを歩けるようになった。
明治の改良風呂の天井が高いのは、現在も残っている木
造の銭湯に繫がっていることが分かった。
図3 改良風呂 「入浴・銭湯の歴史」
4.木造の銭湯と銭湯の現状について
各自宅に風呂があるようになり、原油高騰など経営不振から閉業となる銭湯が多くなった。銭湯の中には、木造から
ビルに建て替え、地下や 1・2階で銭湯を、その階以上ではマンションなどの借家業を行うところも出てきている。建
物の形状から浴場の空間は大きく変化している。
本章では、建物の形状の変化から天井高さや壁画・浴槽・インテリアなどの浴場空間の構成要素の違いを考察する。
調査対象は、東京・神奈川の銭湯である。
5.まとめ
調査した銭湯10件中4件がビル又は平屋に改装しており、
木造の銭湯が減少していることが明らかとなった。
理由としては、銭湯だけでは経営が厳しいためマンションなどの借家業をおこなうため。若い年齢層にも来ても
らうため。だが、ビルにすることで天井が低くなり、銭湯特有の開放的な雰囲気を損なったとの経営者の意見を
聞いた。また、ビルの銭湯は、番台ではなくフロントに移行していた。
天井が低いということで湯気が多く停滞し天井が高い銭湯に比べると、じめじめとしており開放的な空間とは
言えなくなる。採光も天井の高いところからではない為、隣接した建物陰も入り込む為暗く感じた。
文献調査からはなぜ天井は高くなり、いつどのような発展から天井が湯気抜き屋根の形状になったのかが解明
されてない。今後、この点とスーパー銭湯との比較調査を実施し銭湯空間の変容を明らかにしたい。
6.参考文献
[1] 中野 栄三著「入浴・銭湯の歴史」1994年11月
[2] 「公衆浴場史」全国公衆浴場業環境衛生同業組合連合会発行
[3] 「東京における銭湯建築の調査研究−銭湯の建築様式の変遷及び分布状況など−」都立大学
都市研究報告二四号
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