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柏崎市陸上競技場(柏崎市)
第5章第7節(都市施設等の復旧) 第7節 1 都市施設等の復旧 都市施設等の復旧事例 柏崎市陸上競技場(柏崎市) 柏崎市教育委員会生涯学習・体育課 都市局都市整備課 原 沢村 剛 直紀 1 地域の概要 図 5-7-1 位 置 図 柏崎市陸上競技場は、市の主要施 設が集積している市内の中央部に 位置し、都市公園である海岸公園に 隣接する市民のレクリエーション 及び健康・福祉の中核的な拠点施設 海岸公園 柏崎工業高校 として広く利用されている。また、 柏崎市陸上競技場 周辺の学校などとも連携を図り、教 育活動においても効果を上げてい る。 柏崎高校 本陸上競技場は大正 12 年に建設、 昭和5年に日本で最初となる(財) 日本陸上競技連盟による第2種公 認陸上競技場として認定され、日本 の陸上競技勃興期には数多くの著 名選手が本施設で練習に励み世界の舞台へと羽ばたいた、日本最古の伝統と歴 史ある施設であり、幾多の改修を経ながら、当県内の重要な公認陸上競技場と して現在も広域的に利用されている。 2 被災の状況 柏崎市陸上競技場は、中越沖地震の震源 となった海岸沖に近接していたことから、 地震の影響を直に受け、地盤の液状化によ る影響と推察される沈下及び隆起などによ り、施設全体が大きく歪み、トラック舗装 に亀裂が発生(写真 5-7-1)し、競技場の外 構についてもブロック積が崩壊(写真 5-7-2)するなど、施設全体に大規模な被害 を受け、公認陸上競技場としての施設機能 アウトフィールド 部の舗装亀裂 写真 5-7-1 5-143 第5章第7節(都市施設等の復旧) を著しく失った。 また、地震により周辺の施設も被害を受 け、特に隣接する県立柏崎アクアパークは 外構の崩壊や給排水設備の破断等、本施設 同様、甚大な被害を受けた。 なお、地震発生当日は祝日であったこと から、多数の学生が本施設で練習を行って いたが、幸い怪我等の人的被害は無かった。 競技場周りの ブロック積の崩壊 写真 5-7-2 3 復旧計画 都市災害復旧事業は、公共土木施設(公園・下水道)及び都市計画区域内の 都市施設(街路・都市排水施設等)等の復旧事業が対象であるが、柏崎市陸上 競技場は、都市計画区域内にある運動場で都市公園法施行令第31条に規定か つ地方公共団体の維持管理に属している施設であることから、都市排水施設等 に該当する。なお、都市施設等における都市災害復旧事業については、災害査 定前に国土交通省都市・地域整備局まちづくり推進課都市防災対策室(現在、 都市・地域安全課都市・地域防災対策推進室、以下「本省」)と事前打合せを実 施し、了解を得た箇所のみ災害復旧の申請を行うことが可能となっており、陸 上競技場についても、被災状況報告や施設概要などを本省へ説明し了解を得た 上で申請を行った。 地震により壊滅的な被害を受けた陸上競技場については、 (財)日本陸上競技 連盟へ被害調査依頼を行い、この調査の結果、陸上競技場の第2種公認基準で ある「距離の公差」や「許容傾斜度」などが基準値を大幅に超過していたこと から、大規模な施設復旧が必要であると判断した。特に被害が大きくその復旧 費用に多大な額を要するトラック舗装については、全面的な打換を行い原形復 旧するものとして復旧計画を検討し、災害査定に望んだ。 陸上競技場の災害査定については、決定見込金額が1億円以上となるため「保 留」扱い(公共土木施設(公園・下水道)は4億円以上が保留であるが、都市 施設等の場合は1億円以上で保留)となり、災害査定実施後の翌週より本省と の保留協議が開始された。 この保留協議において本省とは、復旧にあたり高価で全面的な打換工法を申 請したトラック舗装の復旧工法を中心に協議を行った。幾度の協議の結果、舗 装の全面打換を行い従前の舗装高に復旧する計画ではなく、従前の陸上競技場 施設の効用回復(ここでいう効用回復とは復旧により再度、第2種陸上競技場 公認基準を満足)を図るものとし、被災後の舗装高を考慮した上で、復旧にあ たりコントロールされる周辺施設の高さなどを基に、舗装復旧高を5mm単位 とした複数パターンの経済比較を行い、従前施設の効用回復を図るために最も 安価となる計画を復旧工法として決定した。このため、査定申請内容について は大幅な見直しを行うものとなった。 5-144 第5章第7節(都市施設等の復旧) なお、保留協議は本省側の配慮により早期解除に向けた集中的な協議であっ たにも係わらず、大幅な内容見直しとなったことから、保留解除までには約1 ヶ月半もの期間を要した。 4 復旧工事の概要 陸上競技場の災害復旧工事は、最終的に地震発生前と同様に第2種公認基準 を満足することをもって工事完了とするが、保留協議により、トラック舗装の 復旧は復旧計画高に応じ、全面打換・切削オーバーレイ・オーバーレイの各工 法を走路レーン毎かつ一定距離毎に分類 して復旧範囲を決めたことから、結果とし て施工範囲は非常に細かく区分されるも のとなった。 しかしながら、公認基準の規格を満たす ためにミリ単位での厳しい出来形管理を 行う必要がある本工事について、早期の供 用開始を図る観点から施工の効率性を考 慮し、確実に公認基準を満足するため、査 写真 5-7-3 工事写真①(舗装撤去) 定決定範囲外の箇所については、本工事に 併せて市単独による災害復旧工事を発注 し、一体的な施工を行うこととした。(都 市災害復旧事業に併せ市単独事業を施行 することについては、合併施行には該当せ ず、設計変更協議は不要である) 復旧工事は夏季に及んだため、トラック 舗装の施工時には、激しい降雨(夕立)に 見舞われ、工事の急遽中断など非常に天候 に左右されたことから、工程管理において は良質な品質の確保を目指すために施工 写真 5-7-4 工事写真②(舗装施工) 時の天候に配慮し、時間毎の管理を行った。 なお、今回の復旧工事は大規模な工事であり、施工期間が約1年近くかかる ことから、工事に伴う施設の利用休止について陸上競技関係諸団体及び学校等 に対し、工事工程や竣工後の利用再開の目途などの説明を行い、理解と協力を 得て施工を行った。 5 復旧を終えて 地震発生から竣工に至るまで幾多の課題があったが、平成 20 年 11 月2日に (財)日本陸上競技連盟による検定実測調査が行われ、無事、第2種公認陸上 競技場の認定を受けることができ、現在では竣工を待ちわびた多くの市民が、 復興へ向けて活力溢れる笑顔で陸上競技場を利用している。 5-145 第5章第7節(都市施設等の復旧) 最後に、地震発生前には都市災害復旧事 業の施行経験が殆ど無かったため、その事 業対応や施工にあたり、苦慮した面もあっ たが、今回の災害復旧工事で貴重な経験を 得ることが出来たことから、本経験を生か し、今後の都市災害復旧事業に役立ててい きたい。 写真 5-7-5 5-146 第 6 回柏崎マラソン