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記念講演[不平等・格差社会と女性労働]
WWV総会第 1 回記念講演 記念講演[不平等・格差社会と女性労働] 総会後、「不平等・格差社会と女性労働―― 改正均等法はカンフル剤となるか!」と題して 福岡大学教授林弘子氏より記念講演を受けま した。概要は以下のとおりです。 改正均等法は、間接差別を明確に禁止するも のにならず、格差社会是正のカンフル剤とはな りえないこと、そしてより重要なことは、今起 こっている「労働ビッグバン」といわれる経済 界の意向に沿った労働市場の自由化の動きで あり、労働法制の改正であると問題提起された。 不平等格差社会の実情として、日本は先進諸 国のなかで所得分配不平等度(ジニ係数)は第 6位、貧困率はメキシコ、アメリカ、トルコ、 アイルランドについで第5位であり、OECD 26ヶ国の中でもトップクラスの不平等格差 社会といえる。生活保護世帯は100万を突破 したといわれるが、若い世代、母子家庭、障害 者の世帯に貧困層が広がっているのが特徴。女 性の過半数は非正規で、80年代以降の非正規 雇用比率の変化をみると20歳代の増加が著 しい。20歳代の年収は50万~150万が 2002 年までの10年間で大幅に増え、50 0万~699万もわずかに増えていて、若い世 代内での格差拡大もうかがえる。 さて本題の労働ビッグバンであるが、内閣総 理大臣を議長とし11人のメンバーから なる「経済財政諮問会議」が大きな役割を果 たしている。 2006 年10月には、民間議員4人が「労 働ビッグバンと再チャレンジ」を提言、複線型 でフェアーな働き方の実現のためというのだ が「労使自治に基づく多様な雇用契約で雇用機 会の拡大」「時間に縛られない働き方」などが 具体的に提唱されている。また、2006 年 12 月より労働市場改革専門調査会(矢代尚宏会 長)が今後の雇用政策のあり方の検討を始め、 2007 年4月 6日に第1次 報告書「働き方 を変える、日本 を変える」―ワ ークライフバ ランス憲章の 策定を出して いる。労働政策 審議会には労 働者の代表も入っているが、この専門調査会に は入っていないという重大な問題があるが、会 長は「労働組合の今の組織率からいって労働者 の代表として審議会に入るのはおかしい」と発 言したそうだ。 そして現在の通常国会には、①労働契約法案 ②労働基準法改正法案③最低賃金法改正法案 ④パートタイム労働法改正法案がだされてい る。それぞれの内容や問題点にもふれられたが、 特に労働契約法では、労働組合の関知しない就 業規則を中心に契約ルールを規定するものと なっていることなど問題点が多い。 労働者側の反対が強かったいわゆるホワイ トカラーエグゼンプションは参院選を考慮し て見送られたが、今の国会勢力が続けば、また でてくるのは間違いない。 この労働ビッグバンの狙いは何か、労働組合 労働団体ではなく、労働者個人を単位として労 働基準を設定していこうとするもので、労働者 が無力であった工場法制定の時代に逆戻りす る動きが、この経済財政諮問会議の方向だと提 起された。 その後活発な質問意見がだされ、国会の役割 は何か、私たち働くものはなにをするべきなの かなど本当にいろいろ考えさせられる講演会 であった。