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世界の金利「水没」マップ、金融機関はどう生き残るか

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世界の金利「水没」マップ、金融機関はどう生き残るか
リサーチ TODAY
2015 年 1 月 27 日
世界の金利「水没」マップ、金融機関はどう生き残るか
常務執行役員 チーフエコノミスト 高田 創
下記の図表は、「世界の金利の『水没』マップ」と題した一覧表である。基本的に国別・年限別の国債利
回り、イールドカーブ状況を示す。ここでは、マイナスになった「水没した」ゾーンを濃く示しており、さらに
0%以上0.5%未満、0.5%以上1%未満、1%以上と徐々に色を薄くして示している。こうした濃淡を示した
図表はリスク管理などで「ヒートマップ」として示されることが多いが、これはむしろ「フローズンマップ」であり、
金利機能が喪失してあたかも「麻酔」がかかったような状態を示すものだ。具体的に、スイスでは、今月中銀
が極端なマイナス金利策をとったことで14年ゾーンまで水没している。日本は概ね5年前後まで水没した。
欧州はドイツを中心に5年ゾーンまで水没していたが、1月22日にECBが国債購入を中心とした量的緩和
策を決定したことで、水没する範囲がより広がった。欧州の水没はECBによる量的緩和の決定を先駆けて
織り込まれていたが、実際にECBの国債購入が始まり需給が締まることで今後も水没地域が拡大する可能
性が高い。こうした状況は、昨年10月31日の日銀の追加緩和以降にも見られた。
■図表:世界の金利の「水没」マップ
スイス
日本
ドイツ
フィンランド
オランダ
オーストリア
フランス
ベルギー
アイルランド
イタリア
スペイン
ノルウェー
英国
カナダ
米国
ポルトガル
ギリシャ
1年
-1.08
-0.01
-0.16
-0.13
-0.18
-0.12
-0.13
-0.14
0.01
0.16
0.14
0.80
0.29
0.60
0.15
0.22
2年
-1.09
-0.01
-0.17
-0.11
-0.11
-0.13
-0.10
-0.08
0.07
0.32
0.26
0.73
0.34
0.54
0.49
0.30
3年
-1.16
-0.01
-0.14
-0.06
-0.07
-0.08
-0.07
-0.02
0.15
0.46
0.40
0.65
0.54
0.54
0.85
0.72
10.08
4年
-1.03
0.01
-0.10
-0.02
-0.04
-0.05
-0.01
0.04
0.21
0.59
0.52
0.69
0.76
0.66
1.08
1.21
9.55
5年
6年
7年
8年
9年 10年 11年 12年 13年 14年 15年 20年
-0.86 -0.75 -0.61 -0.52 -0.36 -0.26 -0.23 -0.20 -0.11 -0.02 0.07 0.18
0.02 0.01 0.05 0.10 0.17 0.23 0.30 0.37 0.44 0.51 0.58 1.04
-0.02 0.01 0.06 0.14 0.26 0.36 0.41 0.46 0.51 0.57 0.62 0.82
0.03 0.03 0.10 0.23 0.28 0.37 0.44 0.51 0.58 0.65 0.72 0.83
0.00 0.03 0.11 0.21 0.31 0.40 0.44 0.49 0.53 0.57 0.62 0.82
-0.01 0.02 0.10 0.23 0.31 0.41 0.44 0.47 0.49 0.52 0.55 0.74
0.07 0.14 0.23 0.34 0.40 0.54 0.63 0.72 0.81 0.90 0.99 1.18
0.08 0.16 0.31 0.40 0.52 0.64 0.67 0.71 0.74 0.78 0.81 1.15
0.43 0.48 0.63 0.77 0.91 1.07 1.15 1.23 1.31 1.39 1.47
0.71 0.91 1.17 1.30 1.39 1.53 1.65 1.77 1.89 2.01 2.13 2.47
0.72 0.81 1.01 1.16 1.24 1.38 1.47 1.57 1.66 1.76 1.86 2.04
0.73 0.83 0.92 1.03 1.14 1.23
0.94 1.05 1.15 1.29 1.38 1.48 1.54 1.61 1.67 1.73 1.80 1.97
0.79 0.86 0.95 1.09 1.21 1.45 1.50 1.55 1.60 1.65 1.70 1.96
1.31 1.45 1.60 1.67 1.73 1.80 1.83 1.85 1.88 1.91 1.94 2.09
1.41 1.65 1.90 2.06 2.21 2.45 2.56 2.67 2.78 2.89 3.00 3.33
9.02 8.90 8.78 8.66 8.53 8.41 8.53 8.65 8.78 8.90 9.02 8.36
0%未満
0%以上0.5%未満
0.5%以上1.0%未満
1.0%超
(資料)Bloomberg よりみずほ総合研究所作成
図表には、色の薄い部分が残っており「麻酔」がまだかかっていない、すなわち金利機能が残存した地域
がある。それは、大きく2つのカテゴリーに分類される。①米国を中心に英国・カナダなど経済の比較的堅調
1
リサーチTODAY
2015 年 1 月 27 日
な国々と、②ギリシャを筆頭に欧州債務危機を一部引きずったポルトガルなどに分けられる。今回、ECBは
欧州各国の国債を出資比率に応じて購入することから、PIIGSと言われる欧州債務問題を抱えた国々もギリ
シャ以外は水没の方向に向かいやすい。堅調とされた国々のなかで、カナダは今月急な利下げを行った。
英国では金融政策の決定会合で、従来緩和に反対の票を投じた委員が2名いたが、今月は一転して全員
据え置きに転じたことで、量的緩和の出口観測が後退している。残るのは利上げを視野に入れている米国く
らいだが、周辺の国々の水没が続く中では米国の金利上昇の圧力は限られたものとなりやすい。
図表では先進国を中心に中央銀行の金融緩和マネーの拡大が浸水地域を拡大させていることが分か
る。今月のTODAYでは、日本の債券市場の金利機能が低下し「麻酔」がかかったような状況では3つの方
向、つまり①長くするか、②海外か、③異質性の濃いものかという選択肢の中から運用を考えるしかないと
した1。具体的に前ページの「水没マップ」で考えれば、①「長く」は、図表の右側の水没していない色の薄
いゾーン、②「海外」は、図表の自国以外で色の薄いゾーン、③「異質性の濃いもの」は、そもそも図表以外、
デット以外の次元にある運用商品を狙うことを意味する。すなわち、リスク性運用に資金を向けることで、株
高やクレジット市場へ資金が流入する世界的なポートフォリオ・リバランス効果が期待される。ただし、実体
経済への期待が低いなかでは、資金が新たな投資機会を創出する本来の信用創造に向かうよりも、既に
あるコモディティ化された先進国の株式市場を中心とした分野に向かう歪な状況が続くと展望される。
一般的に銀行の収益性は長短金利差に依存する。すなわち銀行の収益は、短期で調達コストの低い資
金を長めの運用に振り向けることで得られるが、こうした収益機会が確保しにくくなる。ここで挙げた3つの
選択肢のなかにおいて収益機会の確保が求められるが、それは難しい。昨今の米国の大手銀行の株価の
低迷は金利の低下による面もあるという。同時に、保険や年金の運用を巡る環境も運用難の状況になりや
すい。下記の図表は、日本の生保の予定利回りと10年国債の推移を示す。金利水準が低下するなかで、
標準利率も低下を余儀なくされている。世界的にも資産運用の難しい状況が生じている。
■図表:予定利回りと日本の10年国債利回り推移
4.0
(%)
標準利率
3.5
10年国債
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
96
97
98
99
00
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
(年)
(注)2015 年の標準利率は 4 月以降の予想値
(資料)みずほ総合研究所作成
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「『債券市場の死』、金融機関はどうするか、運用はどうするか」(みずほ総合研究所 『リサーチ TODAY』 2015 年 1 月 15 日)
当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに基づき
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