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ヘッジホッグシグナル伝達経路を標的とした 天然物の探索

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ヘッジホッグシグナル伝達経路を標的とした 天然物の探索
ヘッジホッグシグナル伝達経路を標的とした
天然物の探索および変形菌の成分に関する研究
2008 年
細谷 孝博
目次
目
次
ヘッジホッグシグナル伝達経路を標的とした天然物の探索
および変形菌の成分に関する研究
序論
癌と天然物そして分子標的治療薬へ・・・・・・・・・・・・・・・・3
ヘッジホッグシグナル伝達経路と癌・・・・・・・・・・・・・・・・6
変 形 菌 に つ い て ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 11
本論
第一章
第二章
第三章
ヘ ッ ジ ホ ッ グ シ グ ナ ル 伝 達 経 路 を 標 的 と し た ア ッ セ イ 系 の 構 築 13
第一節
ア ッ セ イ 系 に つ い て ・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・ ・・ ・ ・・ ・・ 13
第二節
pGL4-GLI BS の 作 成 ・ ・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・ ・・ ・ ・・ ・・ ・ 17
第三節
HaCaT-GLI1-luc 細 胞 の 樹 立・・・・・・・・・・・・・・・・ 21
第四節
ア ッ セ イ 法 の 確 立 ・・ ・ ・・ ・ ・ ・・ ・ ・・ ・ ・・ ・ ・ ・・ ・ 22
第五節
小 括 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 28
構 築 し た ア ッ セ イ 系 を 用 い た ラ イ ブ ラ リ ー の ス ク リ ー ニ ン グ ・29
第一節
化 合 物 ラ イ ブ ラ リ ー( KKC)の ス ク リ ー ニ ン グ ・・・・・・・29
第二節
植 物 抽 出 物 ラ イ ブ ラ リ ー( KKP)の ス ク リ ー ニ ン グ ・・・・・33
第三節
放 線 菌 抽 出 物 ラ イ ブ ラ リ ー( CKK)の ス ク リ ー ニ ン グ・・・・33
第四節
依 頼 サ ン プ ル ( ich) の ス ク リ ー ニ ン グ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 33
第五節
小 括 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 49
Physalis minima か ら の GLI1 転 写 阻 害 活 性 成 分 の 単 離・・・・・50
第一節
GLI1 転 写 阻 害 活 性 を 指 標 に し た Physalis minima の 分 画 ・ ・ ・ 51
第二節
単 離 化 合 物 の 構 造 解 析 お よ び 同 定 ・・・・・・・・・・・・・ 55
第三節
化 合 物 17 お よ び 18 の GLI1 転 写 阻 害 活 性 評 価 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 56
第四節
小 括 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 57
1
目次
第 四 章 放 線 菌 CKK32 の 成 分 お よ び 生 薬 ich77 の 活 性 画 分・・・・・・・58
第五章
第六章
第七章
第一節
GLI1 転 写 阻 害 活 性 を 指 標 に し た CKK32 の 分 画 ・・・・・・・58
第二節
CKK32 よ り 得 ら れ た 化 合 物 の 同 定 お よ び 転 写 阻 害 の 考 察 ・・61
第三節
GLI1 転 写 阻 害 活 性 を 指 標 に し た ich77 の 分 画 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 63
第四節
ich77 の 活 性 画 分 の 分 離 お よ び 考 察 ・・・・・・・・・・・・ 69
第五節
小 括 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 70
GLI 転 写 阻 害 活 性 化 合 物 の 評 価 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 71
第一節
転 写 因 子 GLI2 に 対 す る 転 写 阻 害 活 性 の 評 価 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 71
第二節
HaCaT 細 胞 に お け る GLI1, PTCH, BCL2 タ ン パ ク 発 現 の 評 価・73
第三節
PANC1 細 胞 に お け る 評 価 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 77
第四節
活 性 化 合 物 の 考 察 ・・ ・ ・・ ・ ・ ・・ ・ ・・ ・ ・・ ・ ・ ・・ ・ 80
第五節
小 括 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 83
変 形 菌 Lycogala epidendrum か ら の ビ ス イ ン ド ー ル 化 合 物 ・ ・ ・ 84
第一節
Lycogala epidendrum か ら の ビ ス イ ン ド ー ル 化 合 物 の 単 離・・・85
第二節
新 規 ビ ス イ ン ド ー ル 化 合 物 の 構 造 決 定 ・・・・・・・・・・・ 87
第三節
ビ ス イ ン ド ー ル 類 の 細 胞 毒 性 評 価 ・・・・・・・・・・・・・ 94
第四節
ビ ス イ ン ド ー ル 類 の キ ナ ー ゼ 阻 害 の 評 価 ・・・・・・・・・・ 95
第五節
小 括 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 97
変 形 菌 Fuligo aurea の 成 分 ・・・・・・・・・・・・・・・・・98
第一節
Fuligo aurea か ら の 成 分 の 単 離 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 98
第二節
新 規 ト リ プ ト フ ァ ン 誘 導 体 化 合 物 の 構 造 決 定 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 101
第三節
細 胞 毒 性 試 験 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 108
第四節
小 括 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 109
総括・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 110
実験 の 部・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 113
参考 文 献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・142
謝辞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 147
主論 文 目録・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 149
学位 論 文審 査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・150
2
序論
序
論
癌と天然物そして分子標的治療薬へ
近年の日本における死亡率は,悪性新生物(癌)や心疾患,脳血管疾患などの
生 活 習 慣 病 が 上 位 を 占 め て お り ,特 に 癌 疾 患 に 関 し て は ,1981 年 に 死 亡 率 が 一 位
と な っ て 以 来 ,現 在 も 増 加 し 続 け ,2004 年 の 癌 に よ る 死 亡 率 は 全 体 の 31%を 占 め
る よ う に な っ た ( Fig. 1). 今 後 も 癌 疾 患 は 増 加 す る と 予 想 さ れ て お り , 医 学 的 に
も社会的にも深刻な疾患の一つである.現在まで多数の検査法や治療法,治療薬
が開発されてきたにもかかわらず,癌の完全征服には未だ至っていないのが現状
であり,これからも癌と人類の闘いは続いていくであろう.
Rate per million
400
悪性新生物
300
心疾患
脳血管疾患
200
肺炎
肝疾患
100
結核
0
1954
Fig. 1.
1964
1974
1984
1994
2004
Increase in the death rate of malignant neoplasm in Japan
Source: Vital Statistics of Japan, Statistics and Information Dept., Minister ’ s Secretariat, Ministry of Health,
Labor and Welfare
現在用いられている医薬品は,天然物由来の薬剤や,天然物よりヒントを得て
合 成 さ れ る 薬 剤 が 多 い [1 ] . 天 然 由 来 の 医 薬 品 に は , 1806 年 , 薬 剤 師 の Sertűrner
に よ り ア ヘ ン か ら morphine が 単 離 さ れ , ま た 19 世 紀 後 半 に は , 日 本 の 天 然 物 化
学 者 で あ る 長 井 長 義 博 士 に よ り ,麻 黄 か ら l-ephedrine が 単 離 さ れ ,そ れ ぞ れ 鎮 痛
剤 ,鎮 咳 剤 と し て 用 い ら れ て き た( Fig. 2).ま た ,taxol ®( paclitaxel)は ,太 平 洋
イ チ イ Taxus brevifolia, ヨ ー ロ ッ パ イ チ イ T. baccata な ど か ら 単 離 さ れ , チ ュ ー
ブリンの解重合を阻害して抗腫瘍活性を示し,臨床試験でも良好な結果を得たこ
3
序論
と に よ り , 現 在 医 薬 品 と し て 利 用 さ れ て い る ( Fig. 2). ま た , 微 生 物 由 来 の 医 薬
品 も 多 数 存 在 し ,Penicillium 属 の 青 カ ビ が 産 生 す る 抗 生 物 質 penicillin が 登 場 し た
ことにより,微生物における二次代謝産物の重要性が認識されるようになった.
以 降 , 抗 生 物 質 の み な ら ず 抗 癌 剤 ( doxorubicin, 別 名 adriamycin) や 高 脂 血 症 治
療 剤 ( lovastatin) な ど が 見 出 さ れ , 現 代 で も 医 薬 品 リ ー ド 化 合 物 の 資 源 と し て 有
望 視 さ れ て い る ( Fig. 2). ま た , 海 洋 由 来 生 物 か ら も 有 用 な 医 薬 品 の リ ー ド 化 合
物 が 見 出 さ れ て お り ,bryostatin は コ ケ ム シ よ り 単 離 さ れ た 抗 癌 剤 候 補 の 天 然 物 で
あ る [2 , 3 ] .
HO
H
N
OH
O
H
H NMe
O
NHMe
O
H
S
N
COOH
HO
morphine
l-ephedrine
AcO
O OH
penicillin G
O
OH
O
O
OH
OH
O
O
O
HN
OH OH
O
OAc
O
OMe O
O
H
O
NH2
OH
O
taxol
OH O
O
O
doxorubicin (adriamycin)
lovastatin
Fig. 2. Chemical structures of medical drugs from natural resources
このように,天然資源から,これまで有用な化合物が発掘されており,また,
今 ま で に 手 が け ら れ た 天 然 物 探 索 素 材 は ,地 球 上 の 全 生 物 の う ち 10% に も 満 た な
い と い わ れ て い る こ と よ り , 新 た な 有 用 化 合 物 の 発 掘 に は 適 し た 素 材 で あ る [4 ] .
し か し 現 在 ,コ ン ピ ュ ー タ 支 援 の ド ラ ッ グ デ ザ イ ン ,イ ン シ リ コ ス ク リ ー ニ ン グ ,
ハイスループットスクリーニング,コンビナトリアルケミストリー等の手法を駆
使した医薬品の研究や開発が行われており,大手メガ製薬企業などは,天然物か
らの創薬探索のような研究は時間と手間がかかるため,撤退する傾向にあること
が事実である.しかし今までにも天然からユニークな骨格を持った化合物や強力
な生物活性を有する有用化合物が発見されてきたことも事実であり,そういった
期待から,最近では天然物探索を行う創薬ベンチャーが登場し,そこにメガ製薬
企業が投資するという構図が生まれている.今なお天然物化学の重要性,また研
究者の天然物化学への熱意や魅力性は薄れていない.
4
序論
近年,癌細胞で特異的に変化している分子を標的とした“分子標的治療薬”の
開発が進んでおり,この癌細胞のみに発現している標的分子,例えば癌細胞が増
える要因になるタンパク質を阻害することで,癌細胞を選択的に死滅させること
が で き る と し て お り , 現 在 , 活 発 な 研 究 開 発 が 行 わ れ て い る [5 ] . 細 胞 内 の タ ン パ
ク質の働きが詳細に解明されてきたここ数年で飛躍的に進歩した方法である.一
般的な抗癌剤は,もともと同じ体からできた細胞の正常細胞と癌細胞の両方に作
用し,吐き気や脱毛といった副作用が起こることが多かった.しかし,分子標的
治療薬は,その癌遺伝子のみに効果がある薬剤のため,従来よりも副作用が少な
くてすむという利点がある.
これまでの研究で様々な分子標的治療薬が開発されており,小分子では
Imanitib( Glivec Ò ) が 慢 性 骨 髄 性 白 血 病 に お い て Bcr-Abl/チ ロ シ ン キ ナ ー ゼ を 標
的 と し [6 ] , ま た Gefitinib( Iressa Ò ) は 非 小 細 胞 肺 癌 に お い て EGFR/チ ロ シ ン キ ナ
ー ゼ を 標 的 と す る 薬 剤 [7 ] が 開 発 さ れ た ( Fig. 3). ま た Trastuzumab( Herceptin Ò )
は , 乳 癌 に お け る HER2 を 標 的 と し た 抗 体 で あ り [8 ] , 近 年 抗 癌 剤 と し て の 分 子 標
的治療薬が承認されている.
N
F
H
N
N
N
O
N
N
HN
N
HN
O
・ CH SO H
3
3
N
MeO
Imatinib
Cl
N
Gefitinib
Fig. 3. Chemical structures of Imatinib and Gefitinib as molecular targeted drugs
著者は,社会的にも医学的にも深刻化している“癌治療”に興味を抱き,近年
活発に研究開発が行われている分子標的型抗癌剤のリード化合物を,天然資源か
ら得ることをテーマに選んだ.現在,膨大な数の天然物または合成化合物が見出
さ れ て お り ,そ の 中 か ら“ い か に し て ”活 性 化 合 物 を 釣 っ て く る か が 重 要 で あ る .
また,地球上に存在する未利用天然資源は数知れず,大量のサンプルの山から宝
物を探す手段を開発することは,これまでに眠っていたサンプルや化合物が目覚
めるときがくるかもしれない.著者は,癌細胞で特異的に亢進しているシグナル
伝達経路に作用する抗癌剤の創薬研究をテーマに掲げ,目的にあったアッセイ系
の構築,天然資源からのリード化合物の探索およびその作用の確認を行い,シグ
ナル伝達阻害剤のリード化合物を提案するための研究を行った.
5
序論
ヘッジホッグシグナル伝達経路と癌
数多くの癌の中でも,胃癌や大腸癌などはその検査法や治療法の劇的な進歩に
より治癒率が上昇しているが,すい臓癌に関しては,目立った自覚症状もないま
ま進行していき,発見された時には手遅れとなるため,完全治癒が困難な癌の一
つである.一般的には,癌組織の外科的切除が行われているが,完全に取り除く
こ と が で き な い こ と か ら , 再 発 の 可 能 性 が 高 い 難 治 性 癌 の 代 表 で あ る . Fig. 4 に
示 す よ う に ,各 癌 部 位 の 5 年 生 存 率 も ,す い 臓 癌 に 関 し て は 数 % に 留 ま っ て お り ,
“完治が困難な癌”として名高い.近年の医療の発展をもってしても,有効でか
つ的確な治療法が確立されていないのが現状であり,外科的切除による治療には
現時点では限界がある.そこで,化学療法や放射線療法による治療が行われてい
るが,副作用や薬剤耐性などの問題もあり,新たな治療薬の開発が期待されてい
る.
100
膀胱癌
前立腺癌
Five-year survival rate
75
胃癌
結腸癌
食道癌
50
気管支癌
乳癌
子宮癌
25
すい臓癌
0
1962
1967
1972
1977
1982
1987
1992
Fig. 4. Five-year survival rate of each cancer cell in Japan
6
1997
序論
2003 年 Nature 誌 に , 胚 発 生 段 階 で の 分 化 や 増 殖 に 重 要 な 役 割 を し て い る ヘ ッ
ジホッグシグナル伝達経路がすい臓癌細胞で異常亢進し,ヒトのすい臓癌でも重
要 な メ デ ィ エ ー タ ー で あ る 可 能 性 が 報 告 さ れ た [9 ] . ま た , 基 底 細 胞 癌 [1 0 ] , 前 立 腺
癌 [11 ] ,胃 癌 な ど の 消 化 器 癌 [1 2 ] や 小 肺 癌 [1 3 ] な ど の 癌 細 胞 で も ヘ ッ ジ ホ ッ グ シ グ ナ ル
伝達経路は異常亢進しており,これら腫瘍の発生や拡大に寄与しているとの報告
がある.
ヘ ッ ジ ホ ッ グ シ グ ナ ル 伝 達 経 路 は ,も と も と Drosophila の 研 究 か ら 明 ら か と な
っ た シ グ ナ ル 伝 達 経 路 で , そ の 構 成 因 子 は , Drosophila の 胚 発 生 に お け る 前 後 軸
決 定 に か か わ る segment polarity gene に コ ー ド さ れ て い る . ヘ ッ ジ ホ ッ グ 遺 伝 子
の機能を失った変異体の表現型の胚は,小さな歯のような突起物に覆われること
より,ヘッジホッグ(ハリネズミ)と名付けられた.脊椎動物では,三種のホモ
ロ グ が 同 定 さ れ て お り ,Sonic hedgehog( Shh),Desert hedgehog( Dhh)お よ び Indian
hedgehog( Ihh) が 存 在 し , こ れ ら は 異 な る 臓 器 形 成 の パ タ ー ン を 制 御 し て い る .
中 で も Shh は 最 も よ く 研 究 さ れ た 経 路 で あ り ,発 生 期 の 中 枢 神 経 ,四 肢 ,肺 ,胃 ,
歯 , 毛 嚢 な ど 広 範 囲 に 発 現 し て い る . Dhh お よ び Ihh は , そ れ ぞ れ 生 殖 細 胞 の 発
生 と 骨 格 系 の 発 生 に 関 係 す る こ と が 知 ら れ て い る [1 4 -1 6 ] .
こ こ で , ヘ ッ ジ ホ ッ グ シ グ ナ ル 伝 達 経 路 の 概 略 を 説 明 す る ( Fig. 5). ヘ ッ ジ ホ
ッ グ シ グ ナ ル 伝 達 経 路 は , ヘ ッ ジ ホ ッ グ 産 生 細 胞 で 45 kDa の hedgehog 分 泌 タ ン
パ ク が 産 生 さ れ , 自 己 触 媒 的 に 切 断 さ れ た 後 , Hh リ ガ ン ド で あ る 20 kDa の N 末
端 断 片 が 生 じ る [1 7 ] . こ の と き , C 末 端 に コ レ ス テ ロ ー ル 分 子 の 修 飾 が さ れ ,細 胞
外 に 分 泌 さ れ る . 分 泌 し た Hh リ ガ ン ド は , ヘ ッ ジ ホ ッ グ 受 容 細 胞 表 面 に 存 在 す
る 12 回 膜 貫 通 型 Ptch( Patched)受 容 体 に Hip( Hedgehog interaction protein)と 相
互 作 用 し な が ら 結 合 し , 7 回 膜 貫 通 型 Smo( Smoothened) 受 容 体 へ の 抑 制 を 解 除
す る [1 8 ] . 通 常 , Hh リ ガ ン ド が な い 状 態 で は , Ptch は Smo と 相 互 作 用 し て , Smo
を 不 活 性 化 し , シ グ ナ ル を 止 め て い る . Hh リ ガ ン ド の Ptch 受 容 体 へ の 結 合 に よ
り ,Smo へ の 抑 制 が 解 除 さ れ る と ,細 胞 内 に シ グ ナ ル が 伝 わ り ,微 小 管 上 で 複 合
体 を 形 成 し て い る Cos-2( kinesin-like protein costal-2),Fu( serine/threonine kinase
fused),Su(Fu)( suppressor of fused),GLI( zinc finger transcriptional glioblastoma)
か ら 転 写 因 子 GLI が 解 離 し た 後 ,転 写 因 子 と し て 核 内 に 移 行 し ,胚 発 生 段 階 に お
け る 分 化 や 増 殖 に 必 要 な 標 的 遺 伝 子 の 発 現 を 正 ま た は 負 に 調 節 す る [1 9 ] .
7
序論
H
Smo
Hh
Ptch
Sm
smoothened
patched
receptor
receptor
Su(Fu)
Cos-2
Fused
Pt
ch
GLI
GLI
Cos-2
H
Hh
HI
P
H
Hh
H
H
hedgehog
interaction protein
H
H
H
HO
Su(Fu)
cholesterol
Fused
N
nucleus
GLI
H
release
H
H
o
H
gene expression
nucleus
Hedgehog Receiving Cell
signaling
catalytic C
hedgehog
Hedgehog Sending Cell
Fig. 5. Hedgehog signaling pathway in a normal cell
一方,癌細胞におけるヘッジホッグシグナル伝達経路について,基底細胞癌
( Basal cell carcinoma : BCC) を 例 に 述 べ る と , BCC は ケ ラ チ ノ サ イ ト の 増 殖 制
御 の 異 常 か ら 生 じ る 皮 膚 腫 瘍 で あ り , ヒ ト の 皮 膚 腫 瘍 の 約 70% を 占 め て い る .
BCC に は ヘ ッ ジ ホ ッ グ シ グ ナ ル 伝 達 経 路 に お け る Patched1 遺 伝 子 の 変 異 が 報 告
さ れ て い る .BCC の 発 生 と 増 殖 に は ,ヘ ッ ジ ホ ッ グ シ グ ナ ル 伝 達 経 路 の 恒 常 的 活
性 化 ,特 に ,Smo 因 子 か ら 下 流 経 路 の 活 性 化 が 重 要 で あ る と さ れ て い る [2 0 ] .こ の
ように,癌とヘッジホッグシグナル伝達経路の関係が明らかとなり,ヘッジホッ
グシグナル伝達経路が異常亢進している癌において,シグナル伝達内の分子を標
的とすることで,シグナル伝達を阻害する治療薬の開発が行われている.これま
での研究において,ヘッジホッグシグナル伝達経路を阻害する天然物として,ユ
リ 根 の 成 分 で あ る cyclopamine( Fig. 6a)が 見 出 さ れ て お り ,Smo に 直 接 結 合 す る
こ と で ,そ の 作 用 を 阻 害 し ,下 流 の シ グ ナ ル 伝 達 を 遮 断 す る [2 1 ] .cyclopamine は ,
in vitro で は ヘ ッ ジ ホ ッ グ シ グ ナ ル 伝 達 経 路 が 異 常 亢 進 し て い る 細 胞 増 殖 を 抑 制
し ,ま た in vivo で は そ の 腫 瘍 退 縮 を 引 き 起 こ し た .jervine( Fig. 6a)も cyclopamine
と 同 様 に ,Smo に 作 用 し て , ヘ ッ ジ ホ ッ グ シ グ ナ ル 伝 達 経 路 を 阻 害 す る 天 然 物 と
し て 単 離 さ れ た 化 合 物 で あ る [2 2 ] .ま た ,2007 年 PNAS 誌 に ,ヘ ッ ジ ホ ッ グ シ グ ナ
ル 伝 達 経 路 の 中 で も ,最 下 流 に 位 置 す る 転 写 因 子 GLI に よ る 転 写 活 性 を 阻 害 す る
]
合 成 化 合 物( GANT61 お よ び GANT58)が 見 出 さ れ た [2 3 (
Fig. 7).現 在 ,英 国 Curis
社もヘッジホッグシグナル伝達経路を標的にした薬剤の研究開発を進めており,
8
序論
現 在 臨 床 段 階 の 薬 剤 も あ る ( Fig. 6b). 例 え ば , Cur-61414 は , aminoproline 誘 導
体 で ,Smo に 直 接 結 合 す る こ と で ヘ ッ ジ ホ ッ グ シ グ ナ ル 伝 達 経 路 を 阻 害 し , そ の
EC 5 0 ( 50% Efficient Concentration) は , 100~ 200 nM で あ る [2 4 ] . 現 在 , Cur-61414
は ,BCC の 患 者 に 対 し ,Phase I 段 階 に お け る 臨 床 実 験 が 行 わ れ て い る .ま た ,Fig.
6b に 示 す よ う な 様 々 な ヘ ッ ジ ホ ッ グ シ グ ナ ル 伝 達 経 路 の 低 分 子 ア ン タ ゴ ニ ス ト
が 報 告 さ れ て お り ,現 在 ,ヘ ッ ジ ホ ッ グ シ グ ナ ル 伝 達 経 路 を 阻 害 す る 薬 剤 の 研 究 ,
開 発 が 盛 ん に 行 わ れ て い る [2 5 ] .
HN
H
HN
H
O H
O H
O
H
H
H
H
H
H
HO
HO
cyclopamine
jervine
Fig. 6a. Selective hedgehog pathway inhibitors from natural products
O
N
Cl
N
N
H
N
O
N
N
O
N
N
S
NH
NH2
N
CN
EtO
N
EtO
SANT1
OEt
MeO
SANT2
Pent
SANT3
SANT4
N
F
tBu
O
HN
N
N
F3C
NH
NH
Compound 5
NH
N
HN
O
N
O
O
O
Cl
O
Cl
N
O
MeO
O
Compound Z
Cur-61414
Fig. 6b. Selective hedgehog pathway inhibitors
9
O
序論
N
O
HO
Smo
Cos-2
Su(Fu)
Fused
Ptch
cyclopamine
Sm
o
Pt
ch
GLI
GLI
GLI
Cos-2
GLI
Hh
HI
P
Su(Fu)
Fused
nucleus
Oncogene expression
GLI
N
N
N
N
S
N
N
N
N
GANT61
N
GANT58
Fig.7. Hedgehog signaling pathway in a cancer cell and previously reported some
selective hedgehog pathway inhibitors
本研究では,様々な癌細胞にて異常亢進しているヘッジホッグシグナル伝達経
路を遮断する阻害剤を得ることを目的とするが,特に標的分子をシグナル伝達最
下 流 に 位 置 す る 転 写 因 子 GLI と し ,こ れ ま で に 報 告 の あ る Smo ア ン タ ゴ ニ ス ト で
はない新たなタイプのシグナル伝達阻害剤を提案することを目的とした.特に,
す い 臓 癌 細 胞 株 PANC1 で は , Smo の 変 異 が 報 告 さ れ て お り , Smo よ り も 上 流 で
シ グ ナ ル を 阻 害 す る 化 合 物 で は ,対 応 で き な い 可 能 性 が あ る .ま た ,cyclopamine
は,正常細胞の発生段階に作用すると,単眼症を引き起こすことが知られている
[2 6 ]
.従 っ て ,シ グ ナ ル 伝 達 の 上 流 を 阻 害 す る の で は な く ,よ り 下 流 に て 作 用 す る
阻害剤を得る必要性があると考える.
本 研 究 で は ,ヘ ッ ジ ホ ッ グ シ グ ナ ル 伝 達 経 路 の 最 下 流 に 位 置 す る GLI に よ る 転
写活性を阻害する化合物を得ることを目的とした.
10
序論
変形菌について
変 形 菌( myxomycete)は ,別 名 真 性 粘 菌 と 呼 ば れ ,最 も 下 等 な 真 核 生 物 と し て
位置づけられており,生物五界説ではプロチスタ界に分類されている.変形菌の
生 活 環 ( lifecycle) を Fig. 8 に 示 す [2 7 ] . 変 形 菌 は , ユ ニ ー ク な 生 活 環 を も ち , 変
形体と呼ばれる栄養体が移動しつつ微生物を摂食する“動物的”性質を持ちなが
ら,子実体を形成し,胞子により繁殖する“植物的”あるいは“菌類的”性質を
あわせ持つ生物である.変形体の活動には湿り気が必要で,森林内に生存し,子
実体は朽ち木や枯葉の表面に存在する.森林に足を踏み入れる際には,足元に注
意したいものである.
Fig. 8. Lifecycle of a myxomycete
これまでの変形菌の成分に関する研究において,興味深い二次代謝産物が含ま
れ て い る こ と が 明 ら か と な り つ つ あ る . 当 研 究 室 に て 変 形 菌 Fuligo cinerea よ り
単 離 さ れ た cycloanthranilylproline 誘 導 体 で あ る fuligocandin B [2 8 ] は , Hasegawa ら
の 研 究 に よ り , 白 血 病 細 胞 に お い て 15d-PGJ 2 の 産 生 を 介 す る こ と で TRAIL 誘 導
ア ポ ー ト ー シ ス の 感 受 性 を 高 め る と 報 告 さ れ た [2 9 ] . ま た , arcyriaflavin C は ,
Arcyria 属 よ り 単 離 さ れ た ビ ス イ ン ド ー ル ア ル カ ロ イ ド 化 合 物 [3 0 ] で ,ヒ ト 培 養 癌 細
胞 パ ネ ル に よ る ス ク リ ー ニ ン グ に お い て ,arcyriaflavin C は ,脳 腫 瘍 細 胞 株 ,肺 癌
11
序論
細胞株で選択的に顕著な細胞毒性を示し,また,今までにないフィンガープリン
ト パ タ ー ン を 示 し た こ と に よ り ,“ The most interesting” い う 評 価 が さ れ , 今 後 の
研 究 に 興 味 が 持 た れ る ( Fig. 9).
このように変形菌の成分研究は,あまり報告例のないこと,またこれまでの成
分研究において,特異な骨格を有し,興味深い生物活性を有する化合物が単離さ
れていることより,未知の化合物を発掘するのには適した材料である.
O
N
H
N
O
N
H
O
HO
N
H
NH
O
N
H
OH
arcyriaflavin C
fuligocanidn B
Fig. 9. Chemical structures of fuligocandin B and arcyriaflavin C from myxomycetes
結語
以下本論において,ヘッジホッグシグナル伝達経路を阻害する天然物を探索す
るため,目的と合致したアッセイ系の構築,シグナル伝達阻害化合物の同定およ
び 天 然 資 源 か ら の 単 離 , 得 ら れ た 阻 害 化 合 物 の in vitro に お け る 評 価 と し て , 細
胞 を 用 い た mRNA レ ベ ル お よ び タ ン パ ク レ ベ ル で の 評 価 を 行 い ,ヘ ッ ジ ホ ッ グ シ
グナル伝達経路を阻害する天然リード化合物を提案する.
第 一 章 で は , ヘ ッ ジ ホ ッ グ シ グ ナ ル 伝 達 経 路 に お け る 転 写 因 子 GLI1 に よ る 転
写活性を阻害する化合物を得るためのアッセイ系の構築について述べ,第二章で
は ,千 葉 大 学 大 学 院 薬 学 研 究 院 活 性 構 造 化 学 研 究 室 保 有 の 天 然 物 ラ イ ブ ラ リ ー( 天
然有機化合物,熱帯植物抽出物,放線菌抽出物)および依頼サンプル(生薬抽出
物 )の ス ク リ ー ニ ン グ に つ い て ,第 三 章 お よ び 第 四 章 で は ,GLI1 転 写 阻 害 成 分 の
単 離 , 構 造 解 析 に つ い て , 第 五 章 で は , 得 ら れ た GLI 転 写 阻 害 化 合 物 の in vitro
における評価について述べる.また,未利用資源の天然物の探索の一環として,
第 六 章 お よ び 第 七 章 で は そ れ ぞ れ 変 形 菌 Lycogala epidendrum( マ メ ホ コ リ ) お よ
び Fuligo aurea( ム シ ホ コ リ )の 野 外 採 取 子 実 体 よ り 得 た 化 合 物 に つ い て 述 べ る .
12
第一章 ヘッジホッグシグナル伝達経路を標的としたアッセイ系の構築
本
第一章
論
ヘッジホッグシグナル伝達経路を標的としたアッセイ系の構築
本 章 で は , ヘ ッ ジ ホ ッ グ シ グ ナ ル 伝 達 経 路 に お い て , 転 写 因 子 GLI に よ る 転 写
活性を阻害する化合物をスクリーニングするため,細胞を用いたレポーターアッ
セイ系の構築について述べる.今回,本研究目的と合致した既存のアッセイ系は
市販されていないため,スクリーニングに適したアッセイ系を構築する必要があ
った.そのアッセイ系の構築およびスクリーニングの際のプロトコル条件につい
て検討を行ったことを述べる.
第一節
アッセイ系について
ヘッジホッグシグナル伝達経路において,シグナル最下流に位置する転写因子
GLI を 標 的 と し , 転 写 因 子 GLI に よ る 転 写 活 性 に 影 響 を 与 え る 化 合 物 を 得 る た め
の ア ッ セ イ 系 と し て , Fig. 1-1 に 示 す tetracycline-regulated system( Tet-On system)
を組み合わせたレポーターアッセイ系を構築することにした.
HaCaT cell (human keratinocytes)
PCMV
Tc
AmpR
pcDNA6/TR
TetR
BlaR
PCMV 2´TetO2
AmpR
pcDNA3.1-GLI1
GLI1
GLI binding site
PuroR
ZeoR
pGL4-GLI BS
AmpR
Luciferase
GLI1
GLI1 protein
Fig. 1-1. Constructed cell-based reporter assay system of measuring GLI1-mediated
transcriptional activity using T-REx system
Tc, tetracycline; TetR, tetracycline repressor; TetO, tetracycline operator; CMV,
cytomegalovirus promoter; GLI1, transcriptional factor of Hh/GLI signaling pathway
13
human
第一章 ヘッジホッグシグナル伝達経路を標的としたアッセイ系の構築
転 写 因 子 GLI1 を 選 ん だ 理 由
本 系 は , tetracycline-regulated system( T-REx system, Invitrogen) を 用 い , 転 写 因
子 GLI1 の 発 現 を tetracycline( Tc) に よ り 制 御 し , 転 写 因 子 GLI1 に よ る 転 写 活 性
をレポーター遺伝子であるルシフェラーゼにて測定する系である.ヘッジホッグ
シ グ ナ ル 伝 達 経 路 に お け る 転 写 因 子 ( GLI1, GLI2 お よ び GLI3) の 中 で も , GLI1
は 癌 遺 伝 子 の 一 つ と し て の 報 告 が あ る こ と か ら ,癌 治 療 薬 の 開 発 と い う 観 点 よ り ,
標 的 と す る 転 写 因 子 を GLI1 に 選 ん だ .
分子標的型阻害剤を目指したアッセイ系
今回,ヘッジホッグシグナル伝達経路を阻害する天然物の探索において,シグ
ナ ル 伝 達 経 路“ 全 体 ”を 検 出 す る 系 で は な く ,転 写 因 子 GLI1 に よ る 転 写 活 性“ の
み”を検出する系を提案した.シグナル伝達経路全体を検出する系では,ヘッジ
ホ ッ グ シ グ ナ ル 伝 達 経 路 が 働 い て い る 細 胞( PANC1,DU145,C3H10T1/2 な ど )に
GLI 結 合 領 域( GLI binding site)を 有 す る レ ポ ー タ ー プ ラ ス ミ ド( Fig. 1-3, pGL4-GLI
BS)の み を 遺 伝 子 導 入 す れ ば ,細 胞 内 の シ グ ナ ル 伝 達 に よ る 内 在 性 の 転 写 因 子 GLI
に て 転 写 活 性 は 測 定 で き る . し か し , pGL4-GLI BS の み が 導 入 さ れ た 細 胞 に お い
て,レポーター活性を下げた化合物は,ヘッジホッグシグナル伝達経路の“どこ
か ”を 阻 害 し た の で あ っ て ,GLI に よ る 転 写 を 阻 害 し た と は 言 え な い .つ ま り ,Smo
の 阻 害 , あ る い は GLI の 核 内 移 行 の 阻 害 に よ っ て も , レ ポ ー タ ー プ ラ ス ミ ド 上 の
GLI 結 合 領 域 に 結 合 す る GLI が 減 少 し , レ ポ ー タ ー 活 性 は 下 が る . 本 研 究 の 目 的
は ,ヘ ッ ジ ホ ッ グ シ グ ナ ル 伝 達 経 路 の 中 で も ,最 下 流 に 位 置 す る 転 写 因 子 GLI1 に
よ る 転 写 活 性 を 阻 害 す る 化 合 物 の 探 索 で あ る た め , ア ッ セ イ 系 の 段 階 に て , GLI1
に よ る 転 写 活 性 の み を 検 出 で き る 系 を 構 築 し た .そ の た め ,細 胞 内 に 外 因 性 の GLI1
を 過 剰 発 現 さ せ る こ と に よ り ,そ の 過 剰 発 現 し た GLI1 に よ る 転 写 活 性 の 増 加 を レ
ポータープラスミドにて検出する方法とした.
Tet-On シ ス テ ム を 用 い た 理 由
外 因 性 GLI1 は , そ の プ ロ モ ー タ ー 領 域 に CMV を 有 す る 発 現 プ ラ ス ミ ド に て 過
剰 発 現 す れ ば よ い が ,ア ッ セ イ を 行 う 時 の テ ス ト サ ン プ ル が GLI1 を 発 現 す る CMV
プ ロ モ ー タ ー を 阻 害 し て し ま う と ,本 来 誘 導 さ れ る 外 因 性 GLI1 の 発 現 量 が 減 少 し
てしまい,見かけ上の転写阻害が観測されてしまう.そのために,テストサンプ
ル を 処 理 し て い る 間 は ,GLI1 を 発 現 す る コ ン ス ト ラ ク ト( pcDNA3.1-GLI1)の CMV
プ ロ モ ー タ ー を 不 活 性 化 さ せ て ,外 因 性 GLI1 の 誘 導 を 止 め る べ き で あ る .そ こ で ,
外 因 性 GLI1 を 発 現 す る シ ス テ ム に , 発 現 の On/Off が 制 御 で き る Tet-On シ ス テ ム
( Invitrogen で は 別 名 T-REx シ ス テ ム ) を 用 い る こ と に し た .
14
第一章 ヘッジホッグシグナル伝達経路を標的としたアッセイ系の構築
Tet-On( T-REx) シ ス テ ム に つ い て
Tet-On シ ス テ ム は ,tetracycline( Tc)に よ り 発 現 コ ン ス ト ラ ク ト の 発 現 を 制 御 で
き る シ ス テ ム で あ る . す な わ ち , Tc を 添 加 し た 場 合 , 発 現 コ ン ス ト ラ ク ト の プ ロ
モ ー タ ー 領 域 に あ る 2×Tet オ ペ ロ ン に 結 合 し て い る TetR( Tetracycline Repressor)
と 相 互 作 用 を 起 こ し , TetR が 外 れ て 下 流 の 遺 伝 子 発 現 が 活 性 化 す る ( Fig. 1-2).
Tc を 取 り 除 け ば ,再 び TetR が TetO2 に 結 合 し ,下 流 の 遺 伝 子 発 現 を 抑 制 す る こ と
が で き , Tc に よ り 発 現 さ せ た い 時 期 や 量 を 調 節 で き る .
normal
addition of Tc
Tc
Tc
TetR TetR
transcription
TetR TetR
CMV prom
2´TetO2
transcription
gene
CMV prom
2´TetO2
gene
Fig. 1-2. T-REx system
ア ッ セ イ 系 の 説 明 ( Fig. 1-1)
細 胞 内 に は , TetR を 誘 導 す る pcDNA6/TR, TetR に よ り GLI1 の 発 現 が 制 御 さ れ
て い る pcDNA3.1-GLI1, お よ び GLI 結 合 領 域 を 有 し , 転 写 因 子 GLI に よ る 転 写 活
性 を ル シ フ ェ ラ ー ゼ に よ り 検 出 で き る レ ポ ー タ ー プ ラ ス ミ ド pGL4-GLI BS が 安 定
発現導入されている.
通 常 は , pcDNA6/TR に よ り 誘 導 さ れ た TetR が pcDNA3.1-GLI1 の TetO2 に 結 合
し ,転 写 因 子 GLI1 の 発 現 を 抑 制 し て い る .こ の 状 態 で は , 内 在 性 の 転 写 因 子 GLI
によりルシフェラーゼが発現しているが,その発現量はわずかである.
Tc を 添 加 す る こ と で , TetR に 作 用 し , 構 造 変 化 を 起 こ す こ と で , TetR が TetO2
か ら 外 れ ,pcDNA3.1-GLI1 の CMV プ ロ モ ー タ ー が 活 性 化 さ れ ,下 流 の 遺 伝 子 で あ
る 転 写 因 子 GLI1 の 発 現 が 誘 導 さ れ る . 過 剰 発 現 し た 外 因 性 GLI1 は , レ ポ ー タ ー
プ ラ ス ミ ド 上 に あ る GLI 結 合 領 域 に 結 合 す る こ と で 転 写 が 始 ま る が , 下 流 に は レ
ポ ー タ ー 遺 伝 子 で あ る ル シ フ ェ ラ ー ゼ が コ ー ド さ れ て お り , GLI1 の 転 写 活 性 に よ
り誘導されたルシフェラーゼが細胞内に蓄積する.細胞を溶解後,ルシフェラー
ゼ の 基 質 で あ る ル シ フ ェ リ ン を 添 加 す る と , ル シ フ ェ ラ ー ゼ /ル シ フ ェ リ ン 反 応 に
よ る 化 学 発 光 が 生 じ , そ の 化 学 発 光 量 を ル ミ ノ メ ー タ ー で 測 定 す る こ と で , GLI1
による転写活性を定量する.
本アッセイ系の特徴
15
第一章 ヘッジホッグシグナル伝達経路を標的としたアッセイ系の構築
1) T-REx system に よ り ,tetracycline( Tc)の 添 加 に よ り 外 因 性 の GLI1 の 発 現 を 制
御 で き る た め ,必 要 な 時 に 必 要 な 量 の GLI1 を ア ッ セ イ 細 胞 に 発 現 さ せ る こ と が
で き る .細 胞 を 継 代 し な が ら 維 持 す る 場 合 ,細 胞 に は 不 必 要 な 外 因 性 GLI1 の 発
現をとめておくことができる.
2) ヒ ト 正 常 皮 膚 細 胞 ( HaCaT 細 胞 ) を 用 い て い る た め , ア ッ セ イ を 行 っ た 時 に ,
正 常 細 胞 の 生 存 に 影 響 を 与 え ず GLI1 に よ る 転 写 活 性 に 影 響 を 与 え る サ ン プ ル
を得ることができる.
3) レ ポ ー タ ー プ ラ ス ミ ド に Promega 改 良 型 pGL4 を 用 い た こ と と ,GLI binding site
が 直 列 に 12 個 つ な が っ た プ ロ モ ー タ ー を 用 い た こ と か ら ,感 度 の 向 上 に 成 功 し ,
96-well plate で の ア ッ セ イ が 可 能 で あ る .ま た ,測 定 に 用 い る 試 薬 量( 細 胞 溶 解
液,ルシフェリン試薬など)を節約することができる.
16
第一章 ヘッジホッグシグナル伝達経路を標的としたアッセイ系の構築
第二節
pGL4-GLI BS の 作 成
多数のサンプルのスクリーニングを行うにあたり,アッセイ系の感度を上げる
こ と は 重 要 で あ る . Promega 社 よ り 新 た に 開 発 さ れ た レ ポ ー タ ー プ ラ ス ミ ド pGL4
に , GLI binding site を 有 す る 領 域 を 組 み 込 む こ と に し た . 転 写 因 子 GLI( GLI1,
GLI2 お よ び GLI3) は , 同 じ DNA 配 列 ( -GACCACCCA-) を 認 識 し て 結 合 す る こ
と が 知 ら れ て い る [ 5 6 ] . 今 回 , こ の GLI 認 識 配 列 -GACCACCCA-を プ ロ モ ー タ ー 領
域 に 組 み 込 ん だ レ ポ ー タ ー プ ラ ス ミ ド を 作 成 し た ( Fig. 1-3)
Luciferase
TK prom
PuroR
12 ´ GLI binding site
Fig. 1-3. Constructed reporter plasmid having 12´GLI binding sites and a TK
promoter (pGL4-GLI BS plasmid)
Dr. Rune Toftgård 氏( Karolinska Institutet, Sweden)よ り 譲 与 頂 い た 12GLI-RE-TKO
プ ラ ス ミ ド は ,12 個 の GLI 結 合 領 域( 12×GACCACCCA)お よ び TK( tymidine kinase)
プロモーターを有し,ルシフェラーゼをレポーター遺伝子に持つプラスミドであ
る [3 1 ] . し か し , ル シ フ ェ ラ ー ゼ /ル シ フ ェ リ ン 反 応 に よ る 化 学 発 光 量 の 感 度 が 悪 い
と い う 問 題 点 が あ っ た た め ,GLI 結 合 領 域 を 有 す る プ ロ モ ー タ ー 領 域 を pGL4 に 組
み 換 え る 操 作 を 行 っ た ( Fig. 1-4).
12GLI-RE-TKO plasmid の DNA 配 列 情 報 が な か っ た た め ,ル シ フ ェ ラ ー ゼ 遺 伝 子
中の配列の一部をプライマーに選び,プロモーター領域のシークエンス解析を行
っ た . そ の 後 , 12GLI-RE-TKO plasmid に 存 在 す る GLI 結 合 領 域 と TK プ ロ モ ー タ
ー 領 域 ( 449 bp) を PCR に て 増 幅 し た . プ ラ イ マ ー に は , Nhe I( forward) と Bgl
II( reverse)の 制 限 酵 素 サ イ ト を 付 加 し た .PCR に よ る 増 幅 後 ,pGL4.20 [luc2/Puro]
の マ ル チ ク ロ ー ニ ン グ サ イ ト( MCS)に 挿 入 し ,GLI 結 合 領 域 を 有 す る レ ポ ー タ ー
プ ラ ス ミ ド ( Fig. 1-3, pGL4-GLI BS plasmid) を 作 成 し た .
17
第一章 ヘッジホッグシグナル伝達経路を標的としたアッセイ系の構築
M
PCR amplification
GACCACCCA
Luciferase
TK prom
12GLI-RE-TKO
plasmid
12 ´ GLI binding site
Nhe I
I
500
insert (449 bp)
from Dr. Rune Toftgård
M; 50bp DNA ladder
I; insert (449 bp)
Bgl II
insert (449 bp) by PCR amplification
Ligation
pGL4.20 [luc2/Puro]
(Promega)
Luc2
PuroR
MCS
Nhe I
Bgl II
Fig. 1-4. PCR amplification of insert (449 bp) and ligation of 12´GLI binding site
region into pGL4
作 成 し た レ ポ ー タ ー プ ラ ス ミ ド を , Tc に よ り 外 因 性 GLI1 の 発 現 が 制 御 さ れ て
い る 細 胞( HaCaT-GLI1)[3 2 ] に 一 過 性 遺 伝 子 導 入 し ,ル シ フ ェ ラ ー ゼ ア ッ セ イ と GLI1
の Western blotting を 行 っ た 結 果 , Tc 添 加 に よ り 外 因 性 GLI1 の 増 加 に 伴 う ル シ フ
ェ ラ ー ゼ 活 性 の 上 昇 を 認 め た ( Fig. 1-5). こ れ は , Tc を 添 加 し て い な い 状 態 , す
な わ ち 外 因 性 GLI1 が 発 現 し て い な い 状 態 と 比 較 し て ,ル シ フ ェ ラ ー ゼ 活 性 が 12.3
倍 増 加 し た .つ ま り ,Tc を 添 加 す る こ と に よ り 外 因 性 GLI1 の 発 現 が 誘 導 し ,構 築
し た レ ポ ー タ ー プ ラ ス ミ ド ( pGL4-GLI BS) に て , 過 剰 発 現 し た GLI1 に よ る 転 写
活 性 の 増 加 を 検 出 で き た . 構 築 し た pGL4-GLI BS の プ ロ モ ー タ ー 領 域 の 配 列 は ,
シ ー ク エ ン ス に よ り 確 認 し た( Figs. 1-6 お よ び 1-7).Tc に よ り 外 因 性 GLI1 の 発 現
が 制 御 さ れ て い る 細 胞( HaCaT-GLI1)は ,Dr. Fritz Aberger 氏( University of Salzburg)
Luciferase activity (RLU)
よ り 譲 与 い た だ い た [3 2 ] .細 胞 は ,ヒ ト 表 皮 正 常 細 胞 株( HaCaT cell line)を 用 い た .
12.312.3-fold
+Tc –Tc
GLI1
150kDa
b-actin
Fig. 1-5. Increase of the luciferase activity with overexpression of exogeneous GLI1
protein by Tc addition
18
第一章 ヘッジホッグシグナル伝達経路を標的としたアッセイ系の構築
Fig. 1-6. DNA sequences of pGL4-GLI BS promoter region
19
第一章 ヘッジホッグシグナル伝達経路を標的としたアッセイ系の構築
5’-TCAGTGCAGGTGCCAGAACATTTCTCTGGCCTAACTGGCCGGTACCTGAGCTC[ GCTAGC TCATGTCTGGATCCAAGCTCA
Nhe I
GATCCAAGCTTATCGATACCGTCGAG TGGGTGGTCTGGGTGGTCTGGGTGGTCTGGGTGGTCGAGTGGGTGGTCTGGGTG
GTCTGGGTGGTCTGGGTGGTCGAGTGGGTGGTCTGGGTGGTCTGGGTGGTCTGGGTGGTC GACCTCGAGATCCGGCAAAC
1 2´ G L I b i n d i n g s i t e s
CCCGCCCAGCGTCTTGTCATTGGCGAATTCGAACACGCAGATGCAGTCGGGGCGGCGCGGTCCGAGGTCCACTTCGCATA
TTAAGGTGACGCGTGTGGCCTCGAACACCGAGCGACCCTGCAGCGACCCGCTTAACAGCGTCAACAGCGTGCCGC AGATCT]
Bgl II
GGCCTCGGCGGCCAAGCTTGGCAATCCGGTACTGTTGGTAAAGCCACC [ATGGAAGATGCCAAAAACATTAAGAAGGGCC
Luciferase gene
CAGCGCCATTCTACCCACTCGAAGACGGGACCGCCGGCGAGCAGCTGCACAAAGCCATGAAGCGCTACGCCCTGGTGCCC
GGCACCATCGCCTTTACCGACGCACATATCGAGGTGGACATTACCTACGCCGAGTACTTCGAGATGAGCGTTCGGCTGGC
Fig. 1-7. Sequence of pGL4-GLI BS promoter region
20
第一章 ヘッジホッグシグナル伝達経路を標的としたアッセイ系の構築
第三節
HaCaT-GLI1-luc 細 胞 の 樹 立
大量のサンプルを簡便にスクリーニングできるように,得られたレポータープ
ラ ス ミ ド ( pGL4-GLI BS) を tetracycline( Tc) に よ り 外 因 性 GLI1 の 発 現 が 制 御 さ
れ て い る 細 胞 ( HaCaT-GLI1) [ 3 2 ] に 安 定 発 現 さ せ る た め に , puromycin 耐 性 遺 伝 子
が 組 み 込 ま れ て い る pGL4-GLI BS( Fig. 1-3)を HaCaT-GLI1 細 胞 に 遺 伝 子 導 入 し ,
puromycin に よ る セ レ ク シ ョ ン を 行 っ た .
HaCaT-GLI1 細 胞 を 6 cm dish に 播 種 し ,翌 日 pGL4-GLI BS を Lipofectamine 2000
( Invitrogen)を 用 い て 遺 伝 子 導 入 し た .2 日 後 ,10 cm dish に 継 代 し ,そ の 翌 日 に
終 濃 度 1 mg/mL の puromycin を 添 加 し ,セ レ ク シ ョ ン に か け た .同 時 に ,blasticidin
( pcDNA6/TR resistant) お よ び zeocin( pcDNA3.1-GLI1 resistant) も 添 加 し , 3 つ
の プ ラ ス ミ ド に 対 し て セ レ ク シ ョ ン を 行 っ た .10 cm dish 中 に ク ロ ー ン( コ ロ ニ ー )
が 形 成 し た 後 , そ れ ぞ れ の ク ロ ー ン 細 胞 を 24-well plate に 移 し , 46 の ト ラ ン ス フ
ェ ク タ ン ト を 得 た . そ れ ぞ れ を 個 別 に 培 養 し , 生 育 が よ い も の に つ い て , Tc 添 加
も し く は 非 添 加 状 態 に て ル シ フ ェ ラ ー ゼ 活 性 の 測 定 を 行 っ た .最 終 的 に ,Clone# 2
に つ い て , Tc を 添 加 し た 時 の ル シ フ ェ ラ ー ゼ 活 性 に よ る 発 光 量 が 高 い こ と , ま た
+Tc/−Tc の 比 が 大 き い こ と よ り , 目 的 と し て い た ア ッ セ イ 細 胞 ( HaCaT-GLI1-luc)
と し た .Clone# 2 は ,Tc 添 加 に よ る 外 因 性 GLI1 の 発 現 を 確 認 し ,そ れ に 伴 う ル シ
フ ェ ラ ー ゼ の 誘 導 の 増 加 を 確 認 し ,そ の 比( +Tc/−Tc)は ,9.3 倍 で あ っ た( Fig. 1-8).
transfect
seed cells
5´105cells
Day 1
pGL4-GLI BS
transfer
Lipofectamine 2000
to 10cm dish
Day 2
Day 4
add puromycin
1 mg/mL of Puro
Day 5
Luciferase activity (RLU)
clone# 2
9.39.3-fold
+Tc –Tc
GLI1
150kDa
b-actin
Fig. 1-8. Procedure of a stable cell line construction of HaCaT-GLI-luc cell and
increase of the luciferase activity with overexpression of exogeneous GLI1 protein.
21
第一章 ヘッジホッグシグナル伝達経路を標的としたアッセイ系の構築
第四節
アッセイ法の確立
目 的 と し て い た ア ッ セ イ 細 胞( HaCaT-GLI1-luc)の 樹 立 に 成 功 し た の で ,得 ら れ
た ア ッ セ イ 細 胞 に て , GLI1 転 写 阻 害 活 性 サ ン プ ル を 得 る た め の 最 適 化 条 件 の 検 討
を行った.
1) Tetracycline( Tc) の 濃 度
T-REx system( Invitrogen) に お い て tetracycline の 濃 度 は , 終 濃 度 が 1 mg/mL
に な る よ う に 推 奨 さ れ て い る . Tc に よ る GLI1 発 現 の 最 適 化 を 行 う た め に , Tc
の 濃 度 変 化 に 対 す る ル シ フ ェ ラ ー ゼ 誘 導 の 変 化 を 確 認 し た .そ の 結 果 ,終 濃 度 が
0.1 mg/mL で ,ル シ フ ェ ラ ー ゼ 誘 導 が 起 こ り ,10 mg/mL ま で ル シ フ ェ ラ ー ゼ の 活
性 化 に 変 化 が な い こ と が 判 明 し た ( Fig. 1-9). 従 っ て , T-REx system 推 奨 の 1
mg/mL の tetracycline を 用 い る こ と に し た .
Luciferase activity (RLU)
200
150
100
50
0
0
0.1
0.5
1
2
5
10
mg/mL
Fig. 1-9. Luciferase activity with different concentrations of tetracycline (final
concentration)
2) 細 胞 数
ア ッ セ イ に 用 い る 細 胞 数 を 検 討 す る た め ,24-well plate で 2´10 4 ,5´10 4 ,1´10 5
お よ び 2´10 5 細 胞 で , ル シ フ ェ ラ ー ゼ 活 性 の 測 定 を 経 時 的 に 行 っ た . tetracycline
を 添 加 し た 場 合 ( +Tc) と 添 加 し な い 場 合 ( −Tc) の 比 を Fig. 1-10 に 示 す . そ の
結 果 , 2´10 4 , 5´10 4 お よ び 1´10 5 細 胞 で , +Tc/−Tc の 値 に 同 じ 傾 向 が 観 察 さ れ ,
22
第一章 ヘッジホッグシグナル伝達経路を標的としたアッセイ系の構築
24 時 間 後 ,そ の 比( +Tc/−Tc)は 約 10 倍 を 示 し た .96-well plate に て 活 性 評 価 を
行 う た め の 細 胞 数 と し て ,2´10 4 細 胞 と し ,こ の 条 件 で ル シ フ ェ ラ ー ゼ /ル シ フ ェ
リ ン 反 応 に よ る 十 分 な 発 光 量 が 見 ら れ た こ と ,ま た +Tc/−Tc の 値 が 約 10 倍 を 示 し
た こ と よ り , 96-well plate で の ア ッ セ イ が 可 能 と 判 断 し た .
Ratio of Luciferase activity (+Tc/-Tc)
30
25
20
15
2´10
4
5´10
4
1´10
5
2´10
5
10
5
0
6
12
24
30
36
hr.
Fig. 1-10. Ratio of luciferase activity (+Tc/-Tc) of each cell number
3) GLI1 誘 導 の 時 間
tetracycline( Tc) 添 加 に よ る 外 因 性 GLI1 タ ン パ ク の 誘 導 を 確 認 す る た め , Tc
を 添 加 後 ,6,12 お よ び 18 時 間 後 の ア ッ セ イ 細 胞 内 の GLI1 タ ン パ ク 量 を Western
blotting に よ り 確 認 し た . 外 因 性 GLI1 は Tc 添 加 後 6 時 間 で 誘 導 し て お り , そ の
後 の GLI1 タ ン パ ク 量 の 増 加 傾 向 は な く ,ほ ぼ 飽 和 に 達 す る こ と が 判 明 し た( Fig.
1-11). 従 っ て , Tc 添 加 に よ る 外 因 性 GLI1 タ ン パ ク の 発 現 時 間 は , 12 時 間 と 決
定した.
0
6
12 18
h
150kDa
GLI1
b-actin
Fig. 1-11. Exogenous GLI1 expression by addition of tetracycline
4) tetracycline に よ る luciferase 誘 導
23
第一章 ヘッジホッグシグナル伝達経路を標的としたアッセイ系の構築
tetracycline( Tc) 添 加 後 , 6 時 間 で 外 因 性 GLI1 の タ ン パ ク 発 現 が 観 察 さ れ る
こ と が 判 明 し た の で ,外 因 性 GLI1 の 増 加 に 伴 う ル シ フ ェ ラ ー ゼ 活 性 の 増 加 を 時
間 と と も に 確 認 し た .ル シ フ ェ ラ ー ゼ 活 性 の 測 定 は ,6,12,18,24,30 お よ び
48 時 間 と し , 細 胞 当 り の ル シ フ ェ ラ ー ゼ 活 性 を 測 定 す る た め に , 1´10 5 cells と
統 一 し た . ル シ フ ェ ラ ー ゼ 活 性 は , Tc 添 加 後 , 時 間 と と も に 増 加 す る が , Tc を
添 加 し て か ら 24 時 間 付 近 よ り 飽 和 に 達 す る ( Fig. 1-12). 従 っ て , 活 性 評 価 は ,
ル シ フ ェ ラ ー ゼ 活 性 が 上 昇 し て い る 間 , す な わ ち , 24 時 間 ま で に 行 う 必 要 が あ
ると結論付けた.
250
Luciferase activity (RLU)
200
150
+Tc
-Tc
100
50
0
6
12
18
24
30
48
hr.
Fig. 1-12. Time-dependently increase of luciferase activity per 1´10 5 cells
5) GLI1 を 発 現 す る プ ラ ス ミ ド 上 の CMV の 影 響
外 因 性 GLI1 は , tetracycline( Tc) の 添 加 に よ り , pcDNA3.1-GLI1 プ ラ ス ミ ド
上 の TetR が は ず れ ,CMV プ ロ モ ー タ ー( cytomegalovirus promoter)の 活 性 化 に
に よ り 発 現 誘 導 す る . そ の た め , CMV プ ロ モ ー タ ー を テ ス ト サ ン プ ル が 阻 害 し
て し ま う と , 本 来 誘 導 さ れ る べ く 外 因 性 GLI1 の 量 が 減 少 し て し ま い , GLI1 に
よ る 転 写 を 阻 害 し て い な い の に も 関 わ ら ず ,ル シ フ ェ ラ ー ゼ 誘 導 が 減 少 し ,見 か
け上の阻害が観測されてしまう.
Fig. 1-13 に , Tc に よ る GLI1 誘 導 と サ ン プ ル 処 理 を 同 時 に 行 っ た 実 験 を 示 す .
今 回 擬 陽 性 と し て 見 出 し た kaempferol お よ び naringenin は ,本 ア ッ セ イ 系 に て ル
シフェラーゼ活性の減少を認めた.
( kaempferol:Luc, 44 %; Viab., 96% at 1 mg/mL,
24
第一章 ヘッジホッグシグナル伝達経路を標的としたアッセイ系の構築
naringenin: Luc, 45 %; Viab., 98% at 50 mg/mL) し か し , 細 胞 内 の 外 因 性 GLI1 タ
ン パ ク 量 を Western blotting に て 調 べ た 結 果 , そ の 発 現 が 抑 え ら れ て い る こ と が
判 明 し た( Fig. 1-13).ま た ,CMV を プ ロ モ ー タ ー に 持 ち ,下 流 に ル シ フ ェ ラ ー
ゼ 遺 伝 子 を コ ー ド し た プ ラ ス ミ ド ( pCMV-luc plasmid ) を 一 過 性 導 入 し ,
kaempferol を 作 用 さ せ た と こ ろ , ル シ フ ェ ラ ー ゼ 活 性 の 減 少 を 認 め ( Luciferase
activity, 11% at 10 mg/mL),こ れ ら 化 合 物 が CMV の プ ロ モ ー タ ー 活 性 を 阻 害 す る
こ と が 判 明 し た .従 っ て ,kaempferol お よ び naringenin の 作 用 は ,pcDNA3.1-GLI1
プ ラ ス ミ ド 上 に 存 在 す る CMV プ ロ モ ー タ ー を 阻 害 す る こ と で 外 因 性 GLI1 タ ン
パ ク の 発 現 を 抑 制 し ,細 胞 内 に 存 在 す る 外 因 性 GLI1 を 減 少 さ せ た こ と に よ る ル
シフェラーゼ誘導の抑制である結論づけた.
kaempferol
Tc
– –
+
– + +
150kDa
GLI1
b-actin
OH
HO
OH
HO
O
O
OH
OH O
OH O
kaempferol
naringenin
Fig. 1-13. Decrease of exogenous GLI1 protein by inhibiting CMV promoter.
Chemical structures of kaempferol and naringenin which were inhibitors of CMV
promoter activity.
25
第一章 ヘッジホッグシグナル伝達経路を標的としたアッセイ系の構築
以 上 の こ と よ り , テ ス ト サ ン プ ル を 処 理 す る 間 は , CMV プ ロ モ ー タ ー に よ る
影 響 を な く す た め ,Tc を 取 り 除 き CMV プ ロ モ ー タ ー を 不 活 性 化 さ せ る 必 要 が あ
る . 本 ア ッ セ イ 系 は , T-REx system を 用 い て い る の で , Tc を 取 り 除 く こ と で ,
CMV を 不 活 性 化 で き る .Fig. 1-14 に 示 す 手 順 ,す な わ ち Tc を 12 時 間 作 用 さ せ
た 後 ,一 方 は Tc を 取 り 除 き ,も う 一 方 は ,続 け て Tc を 添 加 す る 実 験 を 行 っ た と
こ ろ ,Tc を 加 え 続 け る こ と で 外 因 性 GLI1 が 発 現 し 続 け ,ル シ フ ェ ラ ー ゼ の 経 時
的 な 活 性 増 加 が 見 ら れ る が ,Tc を 取 り 除 く こ と で ,CMV プ ロ モ ー タ ー の 不 活 性
化 に よ り ,外 因 性 GLI1 の 発 現 が 止 ま り ,ル シ フ ェ ラ ー ゼ 誘 導 の 上 昇 が 鈍 く な り ,
CMV に よ る 影 響 が 抑 え ら れ る こ と が 判 明 し た .
従 っ て , Tc 添 加 に よ り 外 因 性 GLI1 の 発 現 誘 導 を 行 い , Tc を 取 り 除 い た 後 ,
テ ス ト サ ン プ ル を 処 理 す る こ と で ,テ ス ト サ ン プ ル に よ る CMV プ ロ モ ー タ ー へ
の影響を排除することができるとした.
removal of Tc
add Tc
- 12 h --GLI1 expression--
non-removal of Tc
0h
6h
12 h 24 h 30 h
Luciferase activity (RLU)
800
600
400
200
0
6
12
24
30
Fig. 1-14. Protocol and luciferase activity after removal of Tc or non-removal of Tc.
26
第一章 ヘッジホッグシグナル伝達経路を標的としたアッセイ系の構築
6) 決 定 し た プ ロ ト コ ル
以 上 の 検 討 に よ り ,ヘ ッ ジ ホ ッ グ シ グ ナ ル 伝 達 経 路 に お け る 転 写 因 子 GLI1 に
よる転写活性を阻害するサンプルをスクリーニングするためのアッセイプロト
コルとして,以下の様に決定した.
Day 1
21:00
HaCaT-GLI1-luc 細 胞 の 播 種
2´10 4 cells/well in white 96-well plate for luciferase assay
2´10 4 cells/well in black 96-well plate for FMCA
Day 2
Day 3
9:00
tetracycline( final conc. 1 mg/mL) の 添 加
21:00
テ ス ト サ ン プ ル の 添 加 ( Tc は 取 り 除 く )
9:00
Luciferase assay お よ び FMCA
ル シ フ ェ ラ ー ゼ ア ッ セ イ を 行 っ た 際 , ル シ フ ェ ラ ー ゼ 活 性 の 減 少 は , GLI1 に よ
る転写活性を阻害した場合と,テストサンプルの細胞毒性で細胞が死滅する場合
がある.それらを区別するため,ルシフェラーゼアッセイと同時に細胞毒性試験
( FMCA : Fluorometric Microculture Cytotoxic Assay) [3 3 ] の 手 法 を 用 い て 細 胞 の 生 存
率を確かめることにした.
高 い 細 胞 生 存 率 を 示 し ,ル シ フ ェ ラ ー ゼ 活 性 を 下 げ た サ ン プ ル を“ 陽 性 ”と 判 定
し , GLI1 転 写 阻 害 サ ン プ ル と し た ( Fig. 1-15).
%
Cell viability
Luciferase activity
100
50
0
sample
–
+
+
Positive Negative
Fig. 1-15. The positive sample of GLI1-mediated transcriptional inhibitory activity
27
第一章 ヘッジホッグシグナル伝達経路を標的としたアッセイ系の構築
第五節
小括
本章では,ヘッジホッグシグナル伝達経路において,シグナル最下流に位置す
る 転 写 因 子 GLI1 に よ る 転 写 活 性 を 阻 害 す る サ ン プ ル を 得 る た め に ,細 胞 を 用 い た
レポーターアッセイを構築した.分子標的治療薬のリード化合物探索を目指し,
ヘッジホッグシグナル伝達経路全体を測定するアッセイ系ではなく,転写因子
GLI1 に よ る 転 写 活 性 を 特 異 的 に 測 定 す る ア ッ セ イ 系 と し た . ア ッ セ イ 系 に は ,
T-REx シ ス テ ム( Tetracycline-Regulated Expression system)を 採 用 し ,外 因 性 の GLI1
を 過 剰 に 発 現 さ せ ,GLI binding site を 有 す る レ ポ ー タ ー プ ラ ス ミ ド に て GLI1 の 転
写 活 性 を 測 定 す る . そ れ ぞ れ が 安 定 発 現 し て い る 細 胞 HaCaT-GLI1-luc( HaCaT 細
胞;ヒト正常皮膚細胞)を作成し,目的のアッセイ細胞の樹立に成功した.
樹立したアッセイ細胞を用いて,スクリーニングを行うためのプロトコルの条
件 検 討 を 行 っ た .細 胞 数 ,tetracycline の 濃 度 お よ び 作 用 時 間( GLI1 発 現 時 間 ),サ
ンプルの作用時間等を検討し,以下の条件を決定した.また,同時に細胞毒性試
験 法( FMCA)を 用 い て 細 胞 生 存 率 を 調 べ ,ル シ フ ェ ラ ー ゼ 活 性 を 下 げ ,細 胞 生 存
率 の 高 い サ ン プ ル を GLI1 転 写 阻 害 サ ン プ ル と 判 定 し た .
Day 1
21:00
HaCaT-GLI1-luc 細 胞 の 播 種
2´10 4 cells/well in white 96-well plate for luciferase assay
2´10 4 cells/well in black 96-well plate for FMCA
Day 2
Day 3
9:00
tetracycline( final conc. 1 mg/mL) の 添 加
21:00
テ ス ト サ ン プ ル の 添 加 ( Tc は 取 り 除 く )
9:00
Luciferase assay お よ び FMCA
28
第二章 構築したアッセイ系を用いたライブラリーのスクリーニング
第二章
構築したアッセイ系を用いたライブラリーのスクリーニング
本章では,第一章にて構築したアッセイ系を用いて,千葉大学大学院薬学研究
院活性構造化学研究室保有の天然物ライブラリー(天然有機化合物,熱帯植物抽
出物および放線菌抽出物)および会社依頼サンプル(生薬抽出物)についてスク
リ ー ニ ン グ を 行 っ た こ と を 述 べ る .細 胞 生 存 率 が 高 く ,ル シ フ ェ ラ ー ゼ 活 性( GLI1
転 写 活 性 ) が 低 い も の を “陽 性 ”と 判 定 し , GLI1 転 写 阻 害 サ ン プ ル と し た .
第一節
化 合 物 ラ イ ブ ラ リ ー ( KKC) の ス ク リ ー ニ ン グ
当 研 究 室 保 有 の 天 然 有 機 化 合 物 ラ イ ブ ラ リ ー ( 92 種 ) に つ い て , 25 mg/mL お よ
び 2.5 mg/mL の 2 点 濃 度 に て ス ク リ ー ニ ン グ を 行 っ た .当 研 究 室 保 有 の 天 然 有 機 化
合 物 に は ,terpenoids, flavonoids, bisindole alkaloids な ど が あ り ,熱 帯 植 物 ,海 洋 植
物および変形菌より得られた天然化合物が含まれている.
本 ス ク リ ー ニ ン グ に て ,活 性 を 示 し た 化 合 物 を ,Figs. 2-1 お よ び 2-3 に 示 す .全
て の 天 然 有 機 化 合 物 の ス ク リ ー ニ ン グ 結 果 は Table 2-1 に 示 す .
1) sesquiterpenes
zerumbone( 1) [3 4 ] お よ び zerumbone epoxide( 2) [3 5 ] は , 当 研 究 室 の S. K. Sadhu
博 士 に よ り ,Zingiber spectabilie よ り 単 離 さ れ た 化 合 物 で あ る [ 3 6 ] .そ の 他 ,zerumbone
の 誘 導 体 と し て , humulene( 3) [3 7 ] , buddledone A( 4) [3 8 ] , humulene epoxide III
( 5) [ 3 9 ] , 6-methoxy-2E,9E-humuladien-8-one( 6) [ 4 0 ] , humulene epoxide II( 7) [ 4 1 ]
お よ び humulene 2,3;6,7 diepoxide( 8)[4 2 ] を 単 離 し て い る( Fig. 2-2).zerumbone( 1)
お よ び zerumbone epoxide( 2)は ,GLI1 転 写 阻 害 活 性 を 示 し た が( Fig. 2-1),化 合
物 3~ 8 は 25 mg/mL の 濃 度 で GLI1 転 写 阻 害 活 性 を 示 さ な か っ た .
29
第二章 構築したアッセイ系を用いたライブラリーのスクリーニング
8
9
7
6
10
2
3
1
%
%
100
100
75
75
50
50
25
25
0
0
0.73
H
2
O
3
2
1.5
3.0
6.0
11.4
23.0 mM
%
%
100
100
75
75
50
50
25
25
0
Cell viability
GLI1 transcriptional activity
O
Cell viability
GLI1 transcriptional activity
O
0
2.3
5.6
10.7 21.3 42.7 85.4 170 mM
Fig. 2-1. Chemical structures of 1 and 2, and their GLI1-mediated transcriptional
activity and cell viability at each concentration
O
8
H
7
O
6
H
3
5
4
O
7
7
OMe
6
6
H
7
6
O
O
HH
O
6
7
8
Fig. 2-2. Chemical structures of 3-8 which were inactive to GLI1-mediated
transcriptional inhibitory activity at 25 mg/mL
30
第二章 構築したアッセイ系を用いたライブラリーのスクリーニング
2) bisindole alkaloids
ビ ス イ ン ド ー ル 化 合 物 は ,変 形 菌 よ り 得 ら れ た 化 合 物 で ,staurosporinone( 9)[4 3 , 7 7 ] ,
6-hydroxystaurosporinone ( 10 ) [ 4 3 ] お よ び 5,6-dihydroxyarcyriaflavin A ( 12 ) [4 3 ] は
Lycogala epidendrum( マ メ ホ コ リ ) の 野 外 採 取 子 実 体 よ り 単 離 さ れ た 化 合 物 で ,
arcyriaflavin C( 11)[3 0 ] は ,Arcyria 属 の 野 外 採 取 子 実 体 よ り 得 ら れ た 化 合 物 で あ る .
ま た , L. epidendrum よ り 単 離 さ れ た ビ ス イ ン ド ー ル 化 合 物 で , C2-C2'の 結 合 が な
い 化 合 物 lycogarubin C( 13) [4 4 ] ,lycogarubin B( 14) [4 4 ] ,lycogaric acid A( 15) [4 5 ]
お よ び lycogarubic acid methylester( 16) [4 6 ] は 25 mg/mL の 濃 度 に て GLI1 転 写 阻 害
N
H
9
O
HO
N
H
N
H
%
100
100
75
75
50
50
25
25
0
0
0.25 0.51
1.0
2.3
4.2
8.0
16.0
%
mM
%
100
100
75
75
50
50
25
25
0
0
1.2
10
2.4
4.8
9.5
19.3
Cell viability
H
N
%
Cell viability
N
H
GLI1 transcriptional activity
H
N
O
GLI1 transcriptional activity
活性を示さなかった.
mM
Fig. 2-3a. Chemical structures of 9 and 10, and their GLI1-mediated transcriptional
activity and cell viability at each concentration
31
H
N
O
N
H
OH
N
H
%
100
75
75
50
50
25
25
1.5
O
HO
HO
N
H
N
H
3.1
6.3
12.5
25
50
100
%
mM
%
100
100
75
75
50
50
25
25
0
0
12
Cell viability
GLI1 transcriptional activity
O
0
0
11
H
N
%
100
Cell viability
HO
O
GLI1 transcriptional activity
第二章 構築したアッセイ系を用いたライブラリーのスクリーニング
2.2
4.5
8.7
17.6
mM
Fig. 2-3b. Chemical structures of 11 and 12, and their GLI1-mediated transcriptional
activity and cell viability at each concentration
MeOOC
H
N
H
N
ROOC
COOMe
COOH
R
N
H
13
N
H
N
H
R=H
14 R=OH
N
H
15
R=H
16
R=Me
Fig. 2-4. Chemical structures of 13-16 which were inactive to GLI1-mediated
transcriptional inhibitory activity at 25 mg/mL
32
第二章 構築したアッセイ系を用いたライブラリーのスクリーニング
第二節
植 物 抽 出 物 ラ イ ブ ラ リ ー ( KKP) の ス ク リ ー ニ ン グ
当 研 究 室 保 有 の タ イ 産 熱 帯 植 物 抽 出 物 ラ イ ブ ラ リ ー ( 192 種 ) に つ い て , 100
mg/mL, 50 mg/mL お よ び 10 mg/mL の 濃 度 に て GLI1 転 写 阻 害 ス ク リ ー ニ ン グ を 行
っ た 結 果 , 15 種 の サ ン プ ル に , GLI1 転 写 阻 害 活 性 を 認 め た ( Fig. 2-5). 詳 細 な ス
120
%
120
%
100
75
75
50
50
25
25
0
0
KK
P0
01
0
KK
P0
05
8
KK
P0
07
3
KK
P0
09
3
KK
P0
09
8
KK
P0
09
9
KK
P0
10
5
KK
P0
14
8
KK
P0
15
2
KK
P0
15
7
KK
P0
16
8
KK
P0
17
0
KK
P0
18
5
KK
P0
18
8
KK
P0
20
0
100
Cell viability
GLI1 transcriptional activity
ク リ ー ニ ン グ 結 果 は , Table 2-2 に 示 す .
■; 100 mg/mL GLI1 transcriptional activity, ■; 100 mg/mL Cell viability
■; 50 mg/mL GLI1 transcriptional activity, ■; 50 mg/mL Cell viability
Fig. 2-5. Hit samples from plant extracts library
第三節
放 線 菌 抽 出 物 ラ イ ブ ラ リ ー ( CKK) の ス ク リ ー ニ ン グ
当 研 究 室 に て 独 自 に 採 集 し た 放 線 菌 の 抽 出 物 ラ イ ブ ラ リ ー ( 180 種 ) に つ い て ,
100 mg/mL お よ び 50 mg/mL の 2 点 濃 度 に て ス ク リ ー ニ ン グ を 行 っ た . 細 胞 毒 性 を
示 し た サ ン プ ル に つ い て は ,25 mg/mL お よ び 10 mg/mL の 濃 度 に て 再 度 検 討 を 行 っ
た . そ の 結 果 を Table 2-3 に 示 す .
第四節
依 頼 サ ン プ ル ( ich) の ス ク リ ー ニ ン グ
共 同 研 究 会 社 に て 構 築 さ れ た 生 薬 抽 出 物 ラ イ ブ ラ リ ー ( 252 種 ) に つ い て , 50
mg/mL お よ び 25 mg/mL の 2 点 濃 度 に て ス ク リ ー ニ ン グ を 行 っ た . 細 胞 毒 性 を 示 し
た サ ン プ ル に つ い て は , 10 mg/mL お よ び 1 mg/mL の 濃 度 に て 再 度 検 討 を 行 っ た .
そ の 結 果 を Table 2-4 に 示 す .
33
第二章 構築したアッセイ系を用いたライブラリーのスクリーニング
Table 2-1. Screening of natural products library at 25 mg/mL and 2.5 mg/mL
GLI1, GLI1-mediated transcriptional activity; Viab., cell viability
KKC
化合物名
1
2
3
4
5
6
7
8
parviflorene A
parviflorene B
parviflorene D
4’-methoxy-taxifolin
7,4’-dimethoxy-taxifolin
diphlorethohydroxycarmalol
cryptomeridiol
5’-methoxynobiletin
23S,25R,5α-spirostane-3β,6α,23β-triol
3,6-di-O-glucopyranoside
furcreastatin
lindbladione
(FC-1)
4-aminobenzotryptophan
lycogarubin C
lycogarubin B
staurosporinone
LE-5
lycogaric acid A
arcyriaflavin C
5,7,4’-trimethoxyflavone
5,7 -dimethoxyflavone
3,3’,4’,5,7 -pentamethoxyflavone
3,4-di-O-caffeoyl quinic acid
quercetin
caffeic acid
quercetin-3-O-β- glucosid
3,5-di-O-caffeoyl quinic acid
causiaroside I
quercetin-3-O-α- L -arabinopyranosyl
(1-2)-α- L -rhamnopyranoside
mangiferin
quercetin-3-O-α- L -rhamnosid
kaempferol-3-O-α- L -rhamnoside
engeletin
kehokorin A
kehokorin B
1,3,4,5-tetra-O-caffeoyl quinicacid
3,4,5-tri-O-caffeo yl quinicacid
quercitrin
luteolin
luteolin 7-O-b-glucoside
lyoniside
nudiposide
olysachyol
ergosta-4,6,8(14),22-tetraen-3one
lyoniside
nudiposide
5-methoxy-9-b- D -xylopyranosyl-(-)-isolariciresinol
icariside
b-sitosterol glucoside
(-)-epicatechin
schizandriside
epiafzelecin-(4b→8)-epicatechin
procyanidineB 2
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
22
23
24
25
26
27
28
29
30
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
42
43
44
45
46
47
48
49
50
51
52
53
54
55
56
34
25 mg/mL
GLI1
Viab.
0%
3%
0%
3%
0%
3%
109%
101%
80%
83%
96%
91%
132%
91%
68%
72%
2.5 mg/mL
GLI1
Viab.
69%
84%
73%
83%
77%
86%
104%
96%
104%
98%
105%
100%
110%
95%
158%
92%
113%
90%
108%
89%
0%
109%
119%
158%
60%
108%
3%
95%
92%
41%
79%
89%
103%
95%
55%
114%
104%
98%
0%
3%
83%
86%
86%
64%
83%
2%
79%
78%
87%
58%
62%
72%
89%
91%
92%
79%
77%
1%
104%
118%
108%
112%
98%
109%
28%
99%
99%
85%
71%
81%
86%
87%
92%
67%
79%
76%
231%
220%
108%
92%
107%
101%
93%
98%
78%
78%
82%
86%
93%
88%
85%
76%
77%
71%
115%
81%
108%
84%
108%
81%
89%
87%
22%
20%
74%
73%
99%
26%
124%
99%
87%
100%
14%
88%
101%
94%
97%
102%
112%
111%
111%
67%
85%
97%
87%
82%
45%
26%
76%
82%
94%
60%
89%
85%
89%
81%
2%
87%
92%
99%
95%
91%
90%
88%
87%
90%
99%
78%
79%
75%
75%
128%
83%
80%
93%
110%
134%
104%
85%
87%
96%
85%
98%
101%
95%
95%
106%
102%
99%
84%
92%
95%
85%
84%
70%
78%
82%
90%
95%
95%
92%
89%
87%
86%
82%
85%
93%
106%
98%
97%
95%
98%
98%
99%
第二章 構築したアッセイ系を用いたライブラリーのスクリーニング
KKC
57
58
59
60
61
62
63
64
65
66
67
68
69
70
71
72
73
74
75
76
77
78
79
80
81
82
83
84
85
86
87
88
89
90
91
92
zerumbone
humulene
humulene epoxide-II
humulene epoxide-III
6-methoxy-2E,9E-humuladien-8-one
buddledoneA
zerumbone oxide
kaemmpferol-3-O-(4-O-acetyl
-a- L -rhamnop yranoside
kaempferol-3-O-(3-O-acetyl
-a-rhamnopyranoside
kaempferol-3-O-(2-O-acetyl
-a-rhamnopyranoside
kaemp ferol-3-O
-a- L -rth mnopyranoside
humulene2,3,6,7-diepoxide
kobusone
polyalthic acid
(+)-hardwickiic acid
(-)-(5S,8S,9S,10R)-cleroda-3,13E-dien-15-oic acid
(+)-eperua-7,13-dien-15-oic acid
quercitrin
linolenic acid
SS-12
tagitinin A
hispidulin
brandisiomin A
brandisiomin B
brandisiomin C
(+)-eperua-7,13-dien-15-oic acid
quercitrin
BG-3
isoquercitrin
ZS-8
ZS-9
ZS-10
ZS-11
myricitrin
quercitrin
35
25 mg/mL
Viab.
GLI1
0%
2%
0%
5%
85%
96%
85%
95%
94%
88%
92%
84%
25%
72%
2.5 mg/mL
GLI1
Viab.
27%
88%
86%
95%
101%
97%
91%
107%
107%
100%
114%
91%
88%
88%
95%
77%
91%
90%
98%
79%
99%
91%
97%
78%
103%
88%
98%
115%
97%
114%
99%
96%
96%
0%
49%
112%
92%
94%
110%
34%
31%
26%
82%
0%
64%
81%
66%
95%
69%
72%
70%
61%
86%
94%
92%
109%
106%
87%
3%
83%
110%
120%
122%
120%
90%
103%
115%
100%
2%
98%
109%
101%
126%
107%
118%
116%
101%
102%
95%
100%
105%
103%
101%
70%
113%
120%
105%
104%
110%
96%
137%
93%
85%
102%
98%
80%
69%
102%
106%
97%
95%
81%
94%
90%
96%
114%
103%
84%
88%
111%
114%
114%
119%
122%
111%
110%
109%
91%
99%
104%
107%
99%
96%
108%
109%
111%
109%
108%
103%
99%
第二章 構築したアッセイ系を用いたライブラリーのスクリーニング
Table 2-2. Screening of plant library at 100 mg/mL, 50 mg/mL and 10 mg/mL
GLI1, GLI1-mediated transcriptional activity; Viab., cell viability
KKP No.
学 名
KKP0001
KKP0002
KKP0003
KKP0004
KKP0005
KKP0006
KKP0007
KKP0008
KKP0009
KKP0010
KKP0011
KKP0012
KKP0013
KKP0014
KKP0015
KKP0016
KKP0017
KKP0018
KKP0019
KKP0020
KKP0021
KKP0022
KKP0023
KKP0024
KKP0025
KKP0026
KKP0027
KKP0028
KKP0029
KKP0030
KKP0031
KKP0032
KKP0033
KKP0034
KKP0035
KKP0036
KKP0037
KKP0038
KKP0039
KKP0040
KKP0041
KKP0042
KKP0043
KKP0044
KKP0045
KKP0046
KKP0047
KKP0048
KKP0049
KKP0050
KKP0051
KKP0052
KKP0053
KKP0054
KKP0055
KKP0056
Anacardium occidentale
Thevetia peruviana
Mangifera odorata
Mangifera caesia
Curculigo latifolia
Laportea stimulans
Merremia umbellata
Merremia mammosa
Aporosa frutenscens
Bridelia monoica
Claoxylon polot
Claoxylon polot
Costus speciosus
Semecarpus anacardium
Pterocarpus macrocarpus
Centella asiatica
Gliricidia sepium
Alstonia scholaris
Nauclea orientalis
Nauclea orientalis
Adenium obesum
Wrightia religiosa
Vallaris glabra
Hura crepitans
Adenanthera pavonina
Adenanthera pavonina
Afgekia sericea
Milletia brandisiana
Blumea lacera
Gluta reughas
Catimbium speciosum
Ageratum conyzoides
Allamanda catharthca
Beaumontia murtonii
Aganosma marginata
Ichnocarpus frutescens
Eurycoma longifolia
Eurycoma longifolia
Cryptolepis buchanani
Cryptolepis buchanani
Nelumbo nucifera
Wrightia javanica
Buchanania reticulata
Ardisia colorata
Allamanda cathartica
Butea superba
Swietenia mahogani
Baccaurea sapida
Ichnocarpus frutescens
Baccaurea sapida
Gymnopetalum quinquelobum
Pluchea indica
Cassia bakeriana
Cassia fistula
Cassia occidentalis
Cassia siamea
100 mg/mL
GLI1
Viab.
50 mg/mL
GLI1
Viab.
104%
136%
102%
114%
64%
68%
115%
78%
84%
99%
87%
97%
133%
85%
69%
110%
88%
45%
100%
104%
94%
65%
103%
104%
79%
100%
90%
100%
80%
107%
122%
46%
107%
93%
90%
111%
128%
65%
108%
102%
97%
97%
107%
106%
86%
78%
88%
81%
81%
87%
87%
88%
96%
93%
99%
103%
78%
118%
95%
87%
93%
139%
120%
73%
1%
127%
88%
98%
93%
147%
174%
24%
31%
96%
108%
93%
126%
131%
95%
98%
84%
97%
90%
138%
129%
90%
97%
97%
50%
103%
96%
8%
105%
103%
96%
90%
81%
94%
59%
42%
100%
91%
100%
92%
89%
97%
97%
99%
82%
76%
68%
75%
90%
74%
72%
90%
74%
3%
108%
90%
89%
8%
91%
125%
95%
88%
99%
99%
67%
93%
80%
166%
117%
89%
76%
97%
93%
90%
79%
67%
60%
71%
89%
63%
36
10 mg/mL
GLI1
Viab.
106%
105%
62%
103%
114%
107%
27%
108%
97%
102%
101%
208%
139%
107%
110%
108%
104%
97%
96%
99%
第二章 構築したアッセイ系を用いたライブラリーのスクリーニング
KKP No.
学 名
KKP0057
KKP0058
KKP0059
KKP0060
KKP0061
KKP0062
KKP0063
KKP0064
KKP0065
KKP0066
KKP0067
KKP0068
KKP0069
KKP0070
KKP0071
KKP0072
KKP0073
KKP0074
KKP0075
KKP0076
KKP0077
KKP0078
KKP0079
KKP0080
KKP0081
KKP0082
KKP0083
KKP0084
KKP0085
KKP0086
KKP0087
KKP0088
KKP0089
KKP0090
KKP0091
KKP0092
KKP0093
KKP0094
KKP0095
KKP0096
KKP0097
KKP0098
KKP0099
KKP0100
KKP0101
KKP0102
KKP0103
KKP0104
KKP0105
KKP0106
KKP0107
KKP0108
KKP0109
KKP0110
KKP0111
KKP0112
KKP0113
KKP0114
Cassia tora
Neptunia oleraceae
Delonix regia
Antidesma ghaesembilla
Cassia alata
Glochidion daltonii
Eryngium foetidum
Anethum graveolens
Oenanthe javanica
Hydrocotyle sibthorpioides
Eupatorium odoratum
Hornstedtia metriocheilus
Momordica charantia
Terminalia chebra
Ehretia microphylla
Ipomoea pes-caprae
Kaempferia galanga
Citrus hystrix
Citrus hystrix
Parkia speciosa
Blumea napifolia
Kopsia fruticosa
Passiflora laurifolia
Millingtonia hortensis
Curcuma domestica
Melienta suavis
Telosma minor
Brassica juncea (Thai)
Brassica juncea (China)
Curcuma zedoaria
Boesenbergia pandurata
Erechtites hieraciifolia
Helianthus annus
Blumea hymenophylla
Bidens pilosa
Tiliacora triandra
Cissampelos pereira
Cuscuta reflexa (Cassia)
Cuscuta reflexa (Ceiba)
Sesbania grandiflora
Cratoxylon formosum
Hypericum garrettii
Wolffia globosa
Eleutherine palmaefolia
Zygostelma benthamii
Hibiscus sagittifolius
Acacia insuavis
Dolichos lablab
Crotalaria bracteata
Erythrophleum succirubrum
Sindora siamensis
Xylia kerrii
Zizyphus oenoplia
Zizyphus cambodiana
Colubrina asiatica
Gouania obtusifolia
Ventilago cristata
Leonotis nepetifolia
100 mg/mL
Viab.
GLI1
96%
92%
64%
95%
102%
77%
22%
28%
98%
85%
67%
74%
81%
96%
85%
81%
79%
65%
75%
40%
45%
66%
85%
76%
51%
71%
58%
80%
37%
51%
112%
51%
23%
69%
136%
66%
90%
64%
50 mg/mL
GLI1
Viab.
100%
89%
80%
100%
95%
85%
55%
77%
105%
79%
77%
72%
85%
71%
104%
65%
86%
59%
85%
33%
72%
61%
108%
62%
106%
57%
100%
83%
43%
51%
99%
42%
43%
77%
134%
77%
108%
76%
81%
128%
115%
129%
77%
108%
91%
109%
84%
99%
98%
103%
107%
102%
119%
133%
109%
146%
13%
106%
95%
109%
111%
1%
73%
106%
1%
127%
109%
93%
81%
104%
103%
117%
90%
75%
75%
54%
99%
95%
109%
116%
66%
1%
81%
67%
89%
89%
91%
149%
79%
95%
94%
95%
122%
108%
84%
69%
101%
100%
113%
75%
45%
58%
95%
94%
101%
113%
120%
107%
87%
90%
92%
101%
99%
102%
110%
127%
52%
121%
93%
111%
72%
105%
87%
28%
86%
56%
84%
94%
68%
78%
96%
43%
104%
92%
94%
74%
93%
89%
37
83%
100%
89%
107%
69%
101%
81%
107%
99%
3%
74%
83%
4%
90%
95%
96%
114%
113%
100%
86%
91%
97%
86%
70%
113%
92%
106%
77%
95%
5%
99%
83%
119%
114%
104%
100%
107%
88%
10 mg/mL
GLI1
Viab.
87%
75%
87%
118%
92%
94%
50%
138%
72%
37%
94%
147%
62%
59%
第二章 構築したアッセイ系を用いたライブラリーのスクリーニング
KKP No.
学 名
KKP0115
KKP0116
KKP0117
KKP0118
KKP0119
KKP0120
KKP0121
KKP0122
KKP0123
KKP0124
KKP0125
KKP0126
KKP0127
KKP0128
KKP0129
KKP0130
KKP0131
KKP0132
KKP0133
KKP0134
KKP0135
KKP0136
KKP0137
KKP0138
KKP0139
KKP0140
KKP0141
KKP0142
KKP0143
KKP0144
KKP0145
KKP0146
KKP0147
KKP0148
KKP0149
KKP0150
KKP0151
KKP0152
KKP0153
KKP0154
KKP0155
KKP0156
KKP0157
KKP0158
KKP0159
KKP0160
KKP0161
KKP0162
KKP0163
KKP0164
KKP0165
KKP0166
KKP0167
KKP0168
KKP0169
KKP0170
KKP0171
KKP0172
Coleus amboinicus
Ipomoea vitifolia
Luffa acutangula
Luffa cylindrica
Trichosanthes anguina
Abutilon indicum
Bridelia siamensis
Lycium chinense
Thumbergia laurifolia
Barleria prionitis
Barleria prionitis
Abroma augusta
Clerodendron serratum
Barringtonia acutangula
Eugenia collinsae
Monochoria hastata
Pithecollobium dulce
Eupatrium capillifolium
Melastonia polyanthum
Adenia viridiflora
Melientha suavis
Mangifera foetida
Pethecellobium jilinga
Achyranthes bidentata
Alternanthera sessilis
Basella rubra
Averrhoa bilimbi
Averrhoa carambola
Impatiens balsamina
Lagerstroemia flos-reginae
Lagerstroemia loudonii
Zizyphus cambodiana
Ardisia colorata
Hibiscus pungens
Punica granatum
Boerhavia chinensis
Vallaris glabra
Zizyphus cambodiana
Xylia kerrii
Ipomoea pes-caprae
Ardisia colorata
Cratoxylon formosum
Hydnocarpus kurzii
Schima noronhae
Schima noronhae
Benincasa hispida
Bryonopsis laciniosa
Citrullus vulgaris
Coccinia indica
Coccinia indica
Cucumis sativa
Lagenaria leucantha
Sechium edule
Curuma parviflora
Emilia sontifolia
Gouania obtusifolia (Leaf)
Gouania obtusifolia (Branch)
Uvaria rufa
100 mg/mL
Viab.
GLI1
116%
95%
73%
71%
94%
110%
141%
94%
100%
92%
96%
90%
95%
90%
107%
93%
93%
78%
101%
70%
99%
95%
65%
64%
70%
60%
97%
59%
31%
67%
115%
96%
78%
117%
80%
81%
88%
116%
104%
84%
107%
78%
106%
87%
74%
112%
62%
106%
66%
116%
71%
93%
51%
32%
88%
85%
48%
57%
90%
61%
73%
94%
62%
106%
39%
97%
104%
84%
99%
106%
103%
77%
27%
31%
57%
64%
59%
88%
82%
86%
91%
93%
110%
60%
36%
87%
61%
62%
38
50 mg/mL
GLI1
Viab.
117%
117%
93%
72%
93%
119%
125%
107%
99%
100%
100%
78%
113%
83%
107%
93%
105%
89%
103%
83%
52%
71%
114%
73%
105%
72%
99%
76%
105%
81%
125%
82%
56%
74%
109%
81%
55%
85%
116%
84%
114%
113%
78%
91%
89%
79%
105%
83%
94%
106%
99%
89%
119%
94%
114%
97%
0%
3%
89%
106%
61%
101%
88%
110%
47%
40%
81%
115%
92%
1%
85%
86%
107%
90%
5%
100%
70%
59%
104%
74%
0%
104%
112%
35%
110%
97%
102%
107%
109%
85%
56%
69%
75%
79%
83%
75%
92%
4%
95%
99%
47%
97%
94%
95%
98%
99%
97%
76%
72%
94%
67%
72%
10 mg/mL
GLI1
Viab.
73%
45%
85%
94%
91%
104%
94%
89%
98%
13%
90%
46%
82%
93%
104%
96%
136%
86%
32%
58%
103%
96%
50%
54%
第二章 構築したアッセイ系を用いたライブラリーのスクリーニング
KKP No.
学 名
KKP0173
KKP0174
KKP0175
KKP0176
KKP0177
KKP0178
KKP0179
KKP0180
KKP0181
KKP0182
KKP0183
KKP0184
KKP0185
KKP0186
KKP0187
KKP0188
KKP0189
KKP0190
KKP0191
KKP0192
KKP0193
KKP0194
KKP0195
KKP0196
KKP0197
KKP0198
KKP0199
KKP0200
KKP0201
KKP0202
KKP0203
KKP0204
KKP0205
KKP0206
KKP0207
KKP0208
KKP0209
KKP0210
KKP0211
KKP0212
Garcinia mangostana
Bryonopsis laciniosa
Hyptis suaveolens
Calamus rotang
Eugenia polyantha
Eugenia sp
Eucalyptus citriodora
Sapindus emarginatus
Coccinia indica
Hyptis suaveolens
Xanthium strumarium
Uvaria rufa
Physalis minima
Terminalia catappa
Calophyllum inophyllum
Mammea siamensis
Kijelia pinnata
Excoecaria indica
Rhus succedanea
Aglaia roxburghiana
Semecarpus anacardium
Baliospermum montanum
Leonurus sibiricus
Calamus insignis
Grewia paniculata
Leptonychia heteroclita
Portulaca oleraceae
Hibiscus mutabilis
Hibiscus rosa-sinensis
Sida cordifolia
Sida acuta
Anacardium occidentale
Bombax malabaricum
Ceiba pentandra
Picrorrhiza kurrooa
Perilla ocymoides
Clerodendron fragrnce
Glochidron obscurum
Codiaeum variegatum
Euphorbia neriifolia
100 mg/mL
Viab.
GLI1
88%
97%
16%
11%
49%
84%
75%
88%
0%
95%
77%
97%
17%
12%
61%
86%
58%
74%
3%
68%
6%
102%
18%
75%
24%
19%
6%
72%
50%
84%
4%
4%
0%
67%
82%
115%
69%
112%
72%
55%
85%
101%
86%
48%
91%
79%
104%
141%
102%
111%
110%
125%
3%
81%
67%
86%
53%
69%
94%
108%
79%
81%
67%
55%
50%
86%
84%
92%
64%
89%
87%
75%
39
50 mg/mL
GLI1
Viab.
15%
5%
35%
47%
93%
84%
104%
99%
60%
66%
46%
53%
70%
75%
96%
102%
100%
81%
104%
93%
1%
3%
107%
93%
14%
34%
41%
19%
114%
85%
31%
69%
87%
94%
78%
54%
52%
20%
0%
79%
105%
104%
104%
118%
83%
84%
95%
104%
94%
71%
127%
87%
90%
137%
108%
108%
112%
121%
2%
83%
93%
91%
101%
76%
106%
111%
81%
89%
75%
73%
71%
90%
84%
86%
80%
85%
84%
69%
10 mg/mL
GLI1
Viab.
95%
98%
50%
54%
34%
97%
第二章 構築したアッセイ系を用いたライブラリーのスクリーニング
Table 2-3. Screening of actinomycete library at 100 mg/mL, 50 mg/mL, 25 mg/mL and 10 mg/mL
GLI1, GLI1-mediated transcriptional activity; Viab., cell viability
CKK No.
102
105
120
127
15
18
25
28
30
32
33
38
39
60
61
64
68
84
91
95
99
101
102
(no.2)
103
105
(no.2)
109
112
113
114
115
116
117
118
119
120
(no.2)
121
122
125
126
127
(no.2)
128
130
131
133
136
137
146
148
150
161
166
175
179
182
190
192
100 mg/mL
GLI1
Viab.
118%
68%
119%
76%
115%
89%
124%
91%
45%
71%
37%
71%
38%
64%
118%
96%
132%
91%
86%
85%
128%
97%
104%
105%
86%
100%
84%
101%
144%
97%
114%
99%
77%
90%
79%
93%
60%
94%
34%
85%
74%
105%
88%
103%
82%
110%
169%
101%
91%
96%
107%
104%
84%
108%
71%
102%
78%
102%
97%
97%
96%
100%
96%
97%
97%
107%
28%
45%
96%
100%
91%
100%
79%
110%
85%
109%
82%
110%
43%
75%
93%
102%
90%
111%
92%
109%
90%
100%
70%
101%
71%
105%
44%
74%
125%
101%
73%
87%
109%
105%
16%
61%
30%
68%
95%
90%
78%
96%
16%
53%
115%
95%
50 mg/mL
GLI1
Viab.
120%
91%
112%
93%
107%
109%
111%
109%
94%
105%
36%
76%
38%
74%
110%
106%
127%
103%
83%
98%
135%
105%
121%
101%
106%
104%
103%
95%
167%
95%
139%
90%
89%
87%
85%
97%
84%
87%
38%
80%
74%
103%
101%
98%
98%
100%
157%
96%
97%
103%
104%
102%
99%
101%
80%
96%
80%
98%
97%
94%
105%
98%
101%
92%
104%
84%
56%
67%
101%
94%
95%
96%
84%
97%
87%
98%
94%
92%
58%
71%
94%
93%
98%
93%
95%
97%
96%
106%
77%
94%
81%
103%
45%
76%
123%
99%
125%
100%
107%
104%
23%
70%
36%
77%
105%
100%
85%
103%
22%
62%
126%
98%
40
25 mg/mL
GLI1
Viab.
10 mg/mL
GLI1
Viab.
29%
100%
25%
103%
75%
126%
65%
121%
34%
90%
29%
93%
31%
89%
29%
92%
第二章 構築したアッセイ系を用いたライブラリーのスクリーニング
CKK No.
193
195
200
203
204
208
210
214
217
220
225
226
227
229
231
236
237
238
240
245
246
248
249
252
255
257
258
264
267
269
277
278
280
285
334
335
346
355
358
365
367
368
369
370
371
372
373
374
375
376
377
378
379
380
381
382
383
384
100 mg/mL
Viab.
GLI1
77%
94%
62%
92%
86%
95%
88%
100%
107%
103%
114%
100%
104%
92%
156%
98%
126%
97%
90%
93%
105%
93%
99%
102%
100%
95%
57%
74%
43%
73%
71%
85%
107%
102%
100%
96%
93%
91%
98%
93%
97%
99%
62%
92%
84%
70%
107%
95%
114%
87%
99%
90%
35%
76%
86%
99%
97%
101%
104%
96%
133%
98%
110%
99%
123%
94%
88%
95%
87%
104%
90%
98%
112%
99%
101%
96%
50%
75%
70%
86%
62%
79%
71%
108%
96%
90%
75%
99%
105%
103%
95%
96%
88%
98%
92%
93%
104%
93%
97%
102%
75%
96%
97%
97%
111%
100%
111%
90%
102%
93%
137%
98%
105%
96%
73%
97%
50 mg/mL
GLI1
Viab.
84%
97%
89%
103%
70%
106%
92%
109%
95%
104%
106%
106%
93%
95%
135%
102%
100%
102%
74%
104%
88%
102%
95%
103%
89%
99%
48%
75%
49%
67%
93%
98%
98%
102%
85%
97%
78%
99%
85%
99%
94%
96%
86%
112%
94%
87%
94%
97%
105%
96%
81%
89%
50%
90%
86%
102%
90%
95%
94%
100%
113%
93%
99%
99%
90%
94%
57%
98%
66%
95%
71%
108%
71%
100%
68%
98%
56%
68%
100%
89%
63%
82%
67%
100%
61%
98%
88%
92%
102%
94%
104%
89%
57%
96%
101%
94%
109%
94%
95%
97%
80%
98%
94%
97%
106%
97%
110%
92%
104%
92%
118%
95%
108%
93%
72%
101%
41
25 mg/mL
GLI1
Viab.
10 mg/mL
GLI1
Viab.
80%
123%
68%
123%
84%
132%
66%
126%
第二章 構築したアッセイ系を用いたライブラリーのスクリーニング
CKK No.
385
386
387
388
389
390
391
392
393
394
395
396
399
405
406
408
409
410
412
413
414
415
417
420
421
422
423
425
427
429
430
431
432
433
434
435
436
470
479
480
481
484
489
505
508
514
515
517
520
526
527
528
529
530
531
532
533
534
100 mg/mL
Viab.
GLI1
84%
95%
87%
93%
82%
91%
105%
100%
98%
93%
96%
97%
81%
100%
91%
96%
108%
96%
87%
97%
105%
96%
99%
95%
61%
120%
97%
95%
114%
109%
115%
117%
144%
112%
110%
117%
81%
112%
87%
118%
151%
111%
66%
114%
89%
100%
99%
100%
168%
90%
168%
97%
126%
98%
93%
104%
89%
107%
95%
93%
94%
87%
99%
87%
106%
84%
105%
81%
114%
74%
121%
79%
108%
86%
101%
85%
102%
99%
92%
95%
114%
88%
116%
84%
116%
80%
107%
82%
140%
81%
81%
79%
66%
67%
77%
104%
43%
69%
88%
96%
89%
91%
46%
83%
89%
89%
89%
94%
76%
106%
77%
99%
95%
97%
18%
86%
50 mg/mL
GLI1
Viab.
85%
94%
87%
94%
87%
90%
101%
99%
94%
98%
92%
99%
76%
100%
89%
99%
100%
97%
89%
96%
99%
97%
97%
98%
65%
119%
62%
99%
128%
106%
118%
108%
166%
102%
115%
103%
100%
102%
99%
108%
159%
115%
69%
107%
93%
101%
101%
93%
144%
89%
143%
94%
112%
104%
86%
102%
77%
104%
86%
95%
89%
87%
116%
96%
129%
91%
123%
85%
124%
81%
122%
78%
117%
91%
122%
94%
102%
101%
109%
96%
124%
94%
126%
92%
122%
91%
117%
89%
163%
89%
117%
94%
61%
78%
80%
101%
94%
95%
102%
91%
107%
95%
72%
88%
112%
93%
105%
88%
86%
100%
79%
93%
99%
102%
30%
83%
42
25 mg/mL
GLI1
Viab.
10 mg/mL
GLI1
Viab.
69%
132%
66%
131%
72%
124%
66%
118%
34%
112%
44%
118%
第二章 構築したアッセイ系を用いたライブラリーのスクリーニング
CKK No.
535
537
538
539
540
541
542
543
544
545
546
547
100 mg/mL
Viab.
GLI1
88%
96%
84%
93%
85%
96%
83%
102%
69%
92%
101%
99%
96%
85%
93%
89%
116%
88%
105%
88%
108%
83%
93%
83%
50 mg/mL
GLI1
Viab.
100%
108%
101%
101%
100%
112%
85%
111%
79%
100%
103%
99%
109%
102%
110%
108%
117%
105%
115%
98%
126%
88%
105%
102%
43
25 mg/mL
GLI1
Viab.
10 mg/mL
GLI1
Viab.
第二章 構築したアッセイ系を用いたライブラリーのスクリーニング
Table 2-4. Screening of plant library (ich) at 50 mg/mL, 25 mg/mL, 10 mg/mL and 1 mg/mL
GLI1, GLI1-mediated transcriptional activity; Viab., cell viability
ich No.
1
2
3
4
6
7
8
9
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11
12
13
14
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16
17
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21
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25
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28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
42
43
44
45
46
47
48
49
50
51
52
53
54
55
56
50 mg/mL
GLI1
51%
10%
75%
36%
63%
65%
84%
66%
94%
75%
60%
92%
87%
76%
92%
0%
74%
99%
95%
122%
84%
68%
87%
104%
73%
57%
103%
0%
63%
100%
66%
81%
95%
63%
77%
74%
34%
119%
118%
77%
74%
67%
50%
84%
133%
91%
99%
115%
88%
69%
39%
88%
141%
109%
90%
Viab.
112%
28%
104%
75%
106%
110%
114%
118%
108%
96%
93%
97%
106%
111%
117%
1%
105%
98%
91%
80%
103%
98%
129%
100%
87%
77%
93%
1%
87%
99%
88%
105%
98%
80%
98%
95%
60%
102%
94%
82%
90%
96%
89%
97%
107%
95%
86%
93%
96%
91%
75%
94%
100%
94%
102%
25 mg/mL
GLI1
66%
52%
87%
43%
72%
71%
56%
74%
92%
74%
80%
102%
98%
79%
88%
0%
76%
110%
111%
118%
77%
101%
84%
107%
89%
80%
98%
0%
97%
106%
82%
106%
90%
81%
80%
77%
66%
110%
110%
85%
110%
63%
69%
80%
107%
119%
90%
104%
69%
73%
76%
95%
141%
100%
85%
Viab.
114%
92%
104%
78%
107%
107%
114%
117%
109%
101%
94%
93%
108%
117%
123%
1%
109%
104%
107%
90%
109%
116%
129%
97%
91%
79%
94%
2%
92%
101%
98%
111%
104%
97%
101%
99%
90%
105%
95%
86%
94%
96%
94%
104%
96%
105%
93%
93%
94%
92%
92%
94%
97%
106%
96%
44
10 mg/mL
GLI1
1 mg/mL
Viab.
GLI1
Viab.
0%
2%
100%
93%
9%
64%
99%
90%
第二章 構築したアッセイ系を用いたライブラリーのスクリーニング
ich No.
57
58
59
60
61
62
63
64
65
66
67
70
71
73
74
75
76
77
78
79
80
81
82
83
84
85
86
87
88
89
90
91
92
93
94
95
96
97
98
99
100
101
102
103
104
105
106
108
109
110
111
112
113
114
115
116
117
118
50 mg/mL
GLI1
129%
114%
86%
96%
94%
90%
94%
101%
105%
125%
87%
105%
101%
59%
63%
61%
81%
28%
91%
95%
93%
87%
106%
183%
105%
92%
106%
104%
103%
98%
110%
108%
84%
63%
82%
37%
93%
89%
84%
100%
80%
90%
88%
107%
82%
95%
72%
88%
72%
97%
22%
85%
81%
109%
89%
90%
114%
98%
Viab.
98%
96%
97%
98%
96%
103%
104%
100%
93%
89%
85%
94%
87%
74%
92%
81%
90%
76%
91%
87%
76%
81%
87%
88%
98%
97%
88%
90%
87%
82%
89%
87%
125%
104%
112%
103%
113%
112%
115%
123%
116%
105%
102%
82%
81%
89%
85%
89%
79%
72%
54%
80%
82%
90%
110%
104%
98%
78%
25 mg/mL
GLI1
Viab.
107%
90%
105%
88%
87%
83%
90%
84%
90%
87%
87%
89%
91%
96%
90%
93%
102%
88%
98%
80%
87%
76%
100%
79%
104%
81%
75%
75%
71%
90%
89%
85%
84%
90%
42%
82%
86%
92%
93%
86%
99%
78%
81%
81%
97%
83%
141%
85%
88%
92%
101%
98%
101%
96%
108%
90%
109%
90%
100%
86%
112%
86%
118%
91%
90%
116%
101%
103%
97%
107%
69%
106%
92%
104%
94%
106%
95%
107%
101%
121%
86%
119%
96%
107%
95%
97%
92%
76%
80%
84%
82%
90%
76%
90%
89%
92%
103%
83%
86%
75%
43%
60%
85%
72%
79%
85%
105%
90%
98%
106%
107%
105%
109%
95%
93%
79%
45
10 mg/mL
GLI1
Viab.
1 mg/mL
GLI1
Viab.
第二章 構築したアッセイ系を用いたライブラリーのスクリーニング
ich No.
119
120
121
122
123
124
125
126
127
128
129
130
131
132
133
136
137
138
139
140
141
142
143
144
145
146
147
148
149
150
151
152
154
155
156
160
161
162
163
164
165
166
167
168
169
170
171
172
173
174
175
176
177
178
179
180
181
182
50 mg/mL
GLI1
103%
10%
94%
100%
76%
117%
77%
115%
107%
92%
94%
94%
81%
101%
91%
94%
96%
97%
7%
134%
118%
78%
101%
88%
73%
102%
104%
103%
89%
19%
23%
80%
93%
103%
30%
107%
26%
85%
34%
73%
89%
119%
70%
59%
142%
53%
91%
8%
102%
84%
104%
87%
93%
42%
85%
67%
89%
34%
Viab.
96%
2%
99%
116%
110%
100%
93%
76%
79%
83%
94%
94%
86%
90%
83%
86%
85%
91%
58%
82%
81%
92%
100%
114%
103%
95%
86%
88%
91%
75%
74%
100%
99%
87%
68%
95%
74%
111%
90%
96%
101%
74%
81%
69%
88%
78%
92%
69%
87%
86%
83%
86%
116%
132%
135%
105%
95%
67%
25 mg/mL
GLI1
Viab.
106%
85%
96%
46%
94%
98%
95%
112%
88%
114%
121%
105%
87%
98%
104%
88%
97%
84%
90%
91%
83%
97%
92%
103%
91%
100%
96%
98%
88%
92%
103%
95%
94%
99%
104%
98%
14%
60%
95%
83%
141%
85%
83%
92%
97%
103%
91%
107%
87%
95%
94%
82%
104%
73%
112%
79%
91%
86%
65%
87%
52%
94%
92%
107%
96%
96%
99%
89%
52%
85%
102%
100%
54%
86%
92%
111%
67%
112%
86%
106%
96%
105%
117%
82%
88%
86%
90%
87%
155%
95%
91%
98%
97%
105%
22%
90%
100%
105%
84%
103%
98%
106%
94%
99%
96%
126%
65%
138%
91%
146%
77%
109%
93%
93%
22%
72%
46
10 mg/mL
GLI1
Viab.
1 mg/mL
GLI1
Viab.
103%
100%
76%
90%
第二章 構築したアッセイ系を用いたライブラリーのスクリーニング
ich No.
183
184
185
186
187
188
189
190
191
192
193
194
195
196
197
198
199
200
201
202
203
204
205
206
207
208
209
210
211
212
214
215
216
217
218
219
220
221
222
223
224
225
226
227
228
229
230
231
232
233
234
236
237
238
240
242
243
245
50 mg/mL
GLI1
114%
93%
93%
104%
86%
102%
1%
121%
108%
131%
107%
76%
99%
34%
129%
113%
86%
111%
47%
78%
63%
95%
106%
99%
105%
94%
75%
98%
133%
134%
93%
94%
103%
83%
68%
90%
70%
90%
54%
84%
32%
67%
84%
101%
99%
92%
83%
41%
115%
97%
136%
6%
112%
140%
1%
123%
0%
99%
Viab.
75%
80%
93%
92%
73%
66%
2%
71%
77%
89%
96%
80%
83%
69%
93%
101%
107%
112%
103%
88%
89%
95%
80%
94%
88%
93%
75%
83%
82%
81%
85%
86%
89%
92%
95%
95%
93%
96%
85%
94%
78%
91%
91%
92%
89%
94%
92%
88%
102%
89%
84%
52%
76%
89%
1%
103%
1%
89%
25 mg/mL
GLI1
Viab.
121%
85%
116%
95%
104%
104%
128%
101%
95%
77%
106%
70%
9%
34%
120%
73%
109%
86%
118%
93%
107%
98%
82%
95%
102%
97%
76%
89%
112%
117%
114%
113%
92%
112%
107%
116%
74%
110%
88%
93%
100%
89%
110%
95%
115%
93%
99%
100%
108%
97%
112%
101%
82%
88%
101%
96%
133%
101%
138%
103%
89%
103%
92%
106%
101%
105%
93%
91%
76%
94%
90%
92%
78%
92%
98%
96%
80%
98%
93%
102%
68%
100%
82%
94%
92%
92%
105%
95%
105%
96%
101%
97%
97%
96%
72%
93%
111%
101%
107%
96%
117%
88%
22%
62%
107%
78%
129%
87%
0%
1%
116%
94%
9%
67%
113%
95%
47
10 mg/mL
GLI1
Viab.
1 mg/mL
GLI1
Viab.
26%
67%
173%
97%
41%
90%
70%
105%
第二章 構築したアッセイ系を用いたライブラリーのスクリーニング
ich No.
246
247
250
252
253
255
256
258
259
260
262
50E
56E
50 mg/mL
GLI1
127%
73%
100%
150%
128%
99%
106%
128%
81%
68%
101%
117%
122%
Viab.
83%
72%
88%
87%
88%
85%
95%
106%
74%
68%
82%
99%
101%
25 mg/mL
GLI1
Viab.
130%
91%
93%
86%
110%
91%
146%
92%
136%
97%
104%
90%
121%
107%
128%
109%
92%
84%
73%
75%
96%
103%
97%
105%
94%
101%
48
10 mg/mL
GLI1
Viab.
1 mg/mL
GLI1
Viab.
第二章 構築したアッセイ系を用いたライブラリーのスクリーニング
第五節
小括
本章では,第一章にて構築したアッセイ系を用いて,千葉大学大学院薬学研究
院 活 性 構 造 化 学 研 究 室 保 有 の 92 種 の 天 然 有 機 化 合 物 ラ イ ブ ラ リ ー( KKC),192 種
の 植 物 抽 出 物 ラ イ ブ ラ リ ー ( KKP) お よ び 180 種 の 放 線 菌 抽 出 物 ラ イ ブ ラ リ ー
( CKK),ま た 252 種 の 会 社 依 頼 生 薬 抽 出 物 ラ イ ブ ラ リ ー( ich)に つ い て ス ク リ ー
ニングを行った結果,天然有機化合物ライブラリーより,セスキテルペン化合物
zerumbone( 1) お よ び zerumbone epoxide( 2), ビ ス イ ン ド ー ル ア ル カ ロ イ ド 化 合
物 staurosporinone( 9),5-hydroxystaurosporinone( 10),arcyriaflavinC( 11)お よ び
5,6-dihydroxyarcyriaflavinA( 12) に 高 い 細 胞 生 存 率 を 保 ち な が ら , GLI1 転 写 阻 害
活 性 を 認 め た . ま た , 植 物 抽 出 物 ラ イ ブ ラ リ ー よ り 15 種 を , 放 線 菌 抽 出 物 ラ イ ブ
ラ リ ー か ら も GLI1 転 写 阻 害 活 性 サ ン プ ル を 見 出 し た .依 頼 生 薬 抽 出 物 ラ イ ブ ラ リ
ー か ら も GLI1 転 写 阻 害 活 性 お よ び 活 性 化 サ ン プ ル を 見 出 し た .
49
第三章 Physalis minima からの活性成分の単離
第三章
Physalis minima か ら の GLI1 転 写 阻 害 活 性 成 分 の 単 離
本章では,第二章において植物抽出物ラ
イブラリーのスクリーニングで,低濃度に
て GLI1 転 写 阻 害 活 性 を 示 し た Physalis
minima( KKP0185)に つ い て ,GLI1 転 写 阻
害活性を指標に活性化合物を単離したこと
について述べる.
Physalis minima に つ い て
Physalis minima L. は ,ナ ス 科 ホ オ ズ キ 属
に属し,日本名でヒメセンナリホオズキと
呼 ば れ て い る . こ れ ま で Physalis 属 に お け
Fig. 3-1. Physalis minima
る成分研究は盛んに行われており,特異的
な骨格をもつ化合物が多数報告されている.
中 で も physalins [4 7 ] ,withaphysalins [4 8 ] ,withaminins [4 9 ] や physanolides [5 0 ] は ,様 々 な
生 物 活 性 を 有 す る こ と が 研 究 さ れ て い る ( Fig. 3-2).
O
O
O
O
O
H
HO
H
H
H O
O
O
H
O
OH
OH
physalin A
withaphysalin D
H
O
HO
O
OH
H
O
O
HO
O
O
OH
H
O
O
OAc
H
OH
H
HO
withaminimin
physanolide A
Fig. 3-2. Chemical structures from Physalis minima
50
O
H
H
O
第三章 Physalis minima からの活性成分の単離
第一節
GLI1 転 写 阻 害 活 性 を 指 標 に し た Physalis minima の 分 画
P. minima の メ タ ノ ー ル 抽 出 物 ( 2.7 g) を ヘ キ サ ン , 酢 酸 エ チ ル ,( ク ロ ロ ホ ル
ム ) と 水 で 分 配 し た 後 , そ れ ぞ れ の 抽 出 物 の GLI1 転 写 阻 害 活 性 を 測 定 し た と こ
ろ , へ キ サ ン , 酢 酸 エ チ ル お よ び ク ロ ロ ホ ル ム 抽 出 物 に GLI1 転 写 阻 害 活 性 が 移
行 し た ( Fig. 3-3). TLC 分 析 に よ る 各 抽 出 物 の 成 分 の 比 較 に よ り , へ キ サ ン , 酢
酸エチルおよびクロロホルム抽出物には,同じ成分が含まれていることが判明し
た の で , こ れ ら 抽 出 物 を 合 わ せ て , 以 降 の 分 離 を 行 っ た ( Fig. 3-3).
120%
100%
80%
Luciferase 10ug/mL
Viability 10ug/mL
Luciferase 1ug/mL
Viability 1ug/mL
60%
40%
20%
0%
HEC
HEC
PMM
PMH
PME
PMC
PMW
Fig. 3-3. TLC analysis, and GLI1-mediated transcriptional activity and cell viability.
H, Hexane ext.; E, EtOAc ext.; C, CHCl 3 ext.; W, H 2 O ext.
TLC, Silicagel; solvent, Left: Hexane/EtOAc 2/1; Right: CHCl 3 /MeOH 4/1;
detection, 10%H 2 SO 4 D
ヘ キ サ ン /酢 酸 エ チ ル /ク ロ ロ ホ ル ム 混 合 抽 出 物 に つ い て , へ キ サ ン /酢 酸 エ チ ル
系 グ ラ ジ エ ン ト 溶 媒 お よ び 酢 酸 エ チ ル /メ タ ノ ー ル 系 グ ラ ジ エ ン ト 溶 媒 を 用 い た
シ リ カ ゲ ル カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー で 分 離 し た 結 果 ,8 つ の 画 分( Frs. 1A~ 1H)
を 得 た . そ れ ぞ れ の 画 分 に つ い て , 10 mg/mL お よ び 1 mg/mL の 濃 度 に て GLI1 転
写 阻 害 活 性 試 験 を 行 っ た 結 果 , Frs. 1C, 1D お よ び 1E に 1 mg/mL の 濃 度 で GLI1
転 写 阻 害 活 性 を 示 し た .ま た ,Frs. 1F,1G お よ び 1H は 10 mg/mL の 濃 度 に て GLI1
転 写 阻 害 活 性 を 示 し た ( Fig. 3-4).
51
第三章 Physalis minima からの活性成分の単離
120%
100%
80%
Luciferase 10ug/mL
Viability 10ug/mL
Luciferase 1ug/mL
Viability 1ug/mL
60%
40%
20%
0%
1A
1B
1C
1D
1E
1F
1G
1H
Fig. 3-4. GLI1-mediated transcriptional activity and cell viability of Frs. 1A – 1H
Fr. 1D( 73 mg) に ク ロ ロ ホ ル ム /メ タ ノ ー ル ( 1:1) 溶 媒 を 加 え た と こ ろ 不 溶 部
が 生 じ た( 不 溶 画 分;Fr. 2F)た め ,可 溶 部 と 分 離 し ,可 溶 部 の み を ク ロ ロ ホ ル ム
/メ タ ノ ー ル 系 溶 媒 を 用 い た Sephadex LH-20 カ ラ ム ク ロ マ ト ー グ ラ フ ィ ー で 分 離
を 行 い , Frs. 2A~ 2F を 得 た . ま た , Fr. 1C( 75 mg) も 同 様 に Sephadex LH-20 カ
ラ ム ク ロ マ ト ー グ ラ フ ィ ー に よ り 分 離 を 行 い , Frs. 3A~ 3E を 得 た .
120%
100%
80%
Luciferase 10ug/mL
Viability 10ug/mL
Luciferase 1ug/mL
Viability 1ug/mL
60%
40%
20%
0%
2A
2B
2C
2D
2E
2F
Fig. 3-5. GLI1-mediated transcriptional activity and cell viability of Frs. 2A – 2F
52
第三章 Physalis minima からの活性成分の単離
120%
100%
80%
Luciferase 10ug/mL
Viability 10ug/mL
Luciferase 1ug/mL
Viability 1ug/mL
60%
40%
20%
0%
3A
3B
3C
3D
3E
Fig. 3-6. GLI1-mediated transcriptional activity and cell viability of Frs. 3A – 3E
そ れ ぞ れ の 画 分 に つ い て ,GLI1 転 写 阻 害 活 性 試 験 を 行 い( Figs. 3-5 お よ び 3-6),
活 性 が 移 行 し た 画 分( Frs. 2D,2F お よ び 3D)に つ い て ,ODS HPLC に よ る 分 離 •
精 製 を 行 っ た ( Figs. 3-7 お よ び 3-8). Frs. 2D お よ び 2F は HPLC に よ る 分 析 の 結
果 , 同 じ 成 分 が 含 ま れ て お り , Fr. 2F の 分 離 を 行 っ た .結 果 , GLI1 転 写 阻 害 化 合
物 と し て ,Fr. 2F よ り 化 合 物 17( Fr. 7B, 5.1 mg)を ,ま た Fr. 3D よ り 化 合 物 18( Fr.
8A, 4.9 mg) を 得 た . ま た , GLI1 転 写 阻 害 活 性 試 験 は 行 っ て い な い が , 類 縁 体 と
し て 化 合 物 19( Fr. 8B, 0.4 mg) を 単 離 し た ( Fig. 3-9).
7B
Column; Develosil ODS-HG-5 f10´250mm
Solvent; H 2 O/MeOH = 1/1
Flow rate; 2.0 mL/min
Chart; 10 cm/h
HPLC; Jasco HPLC
Detection; UV (254 nm)
7A
time
Fig. 3-7. HPLC chromatogram of Fr. 2F
53
第三章 Physalis minima からの活性成分の単離
8A
Column; Develosil ODS-HG-5 f10´250mm
Solvent; H 2 O/MeOH = 1/1
Flow rate; 2.0 mL/min
Chart; 10 cm/h
HPLC; Jasco HPLC
Detection; UV (254 nm)
8B
time
Fig. 3-8. HPLC chromatogram of Fr. 3D
Physalis minima
(whole, 15.0 g)
extracted with 90% MeOH ´ 3
MeOH ext. (2.7 g)
partitioned with n-hexane and H2O
Hexane ext. (585 mg)
H2O lay.
partitioned with
EtOAc and H2O
EtOAc ext. (391 mg)
H2O ext.
(1.4 g)
silica gel C.C. (Hex/EtOAc → EtOAc/MeOH)
sephadex LH-20 C.C. (CHCl3/MeOH)
ODS HPLC (H2O/MeOH)
physalin F (17, 5.1 mg)
physalin B (18, 4.9 mg)
isophysalin B (19, 0.4 mg)
Fig. 3-9. Isolation of compounds from Physalis minima
54
第三章 Physalis minima からの活性成分の単離
第二節
単離化合物の構造解析および同定
25
化 合 物 17 は ,非 結 晶 白 色 固 体 と し て 得 ら れ ,比 旋 光 度 [a] D –11( c 0.5, CHCl 3 )
を 示 し た .エ レ ク ト ロ ス プ レ ー イ オ ン 化 法( ESI)の 質 量 分 析 に お い て ,m/z 527.1917
を 示 し , HR-ESI MS に よ り 分 子 式 を C 2 8 H 3 0 O 1 0 と 決 定 し た .
1D お よ び 2D NMR の 解 析 に よ り , 化 合 物 17 は , 同 植 物 ( Physalis minima) お
よ び Physalis angulata よ り 単 離 報 告 の あ る physalin F と 推 定 し , 文 献 値 と の 比 較
に よ り , 化 合 物 17 を physalin F と 同 定 し た [ 5 1 ] ( Fig. 3-10).
25
化 合 物 18 も ,非 結 晶 白 色 固 体 と し て 得 ら れ ,比 旋 光 度 [a] D –76( c 0.2, CHCl 3 )
を 示 し た . ESI の 質 量 分 析 に お い て , m/z 533.1793 を 示 し , HR-ESI MS に よ り 分
子 式 を C 2 8 H 3 0 O 9 と 決 定 し た .化 合 物 17 と 同 様 の 解 析 に よ り ,化 合 物 18 も physalin
類 で あ る と 推 測 し ,文 献 値 と の 比 較 に よ り ,化 合 物 18 を physalin B と 同 定 し た [5 2 ]
( Fig. 3-10).
化 合 物 19 も 同 様 の 解 析 に よ り ,文 献 値 と 比 較 す る こ と に よ り ,isophysalin B と
同 定 し た [5 3 ] ( Fig. 3-10).
55
第三章 Physalis minima からの活性成分の単離
第三節
化 合 物 17 お よ び 18 の GLI1 転 写 阻 害 活 性 評 価
P. minima よ り GLI1 転 写 阻 害 化 合 物 と し て 得 ら れ た physalin F( 17) お よ び B
( 18) の GLI1 転 写 阻 害 活 性 を 用 量 依 存 的 に 調 べ た 結 果 , 両 化 合 物 と も 高 い 細 胞
生 存 率 を 保 ち な が ら ,GLI1 に よ る 転 写 活 性 を 阻 害 す る こ と が 判 明 し た( Fig. 3-10).
H
H
O
H
O
O
%
100
100
75
75
50
50
25
25
0
0
17
O
H
O
GLI1 transcriptional activity
O
O
O
100
75
75
50
50
25
25
0
0
0.2
1.0
mM
O
H
H
O
HO
H
1.5 mM
100
0.1
H O
1.0
%
18
O
0.5
%
O
H
H
HO
H
H O
0.2
Cell viability
O
0.1
O
O
%
Cell viability
O
HO
H
O
GLI1 transcriptional activity
O
O
H O
O
H
O
O
19
Fig. 3-10. Chemical structures of 17, 18 and 19, and their GLI1-mediated
transcriptional activity and cell viability at each concentration
56
第三章 Physalis minima からの活性成分の単離
第四節
小括
本 章 で は ,第 二 章 の 植 物 抽 出 物 ラ イ ブ ラ リ ー の ス ク リ ー ニ ン グ に お い て ,GLI1
転 写 阻 害 活 性 を 示 し た サ ン プ ル と し て 得 た Physalis minima ( KKP0185) か ら の
GLI1 転 写 阻 害 化 合 物 の 単 離 を ,活 性 を 指 標 に し た 分 離・精 製 を 行 っ た 結 果 ,GLI1
転 写 阻 害 化 合 物 と し て , physalin F( 17) お よ び B( 18) を 得 た .そ れ ぞ れ , 高 い
細 胞 生 存 率 を 保 ち な が ら , GLI1 に よ る 転 写 活 性 を 阻 害 す る こ と が 判 明 し た .
57
第四章 放線菌 CKK32 の成分および生薬 ich77 の活性画分
第 四 章 放 線 菌 CKK32 の 成 分 お よ び 生 薬 ich77 の 活 性 画 分
本章では,第二章において放線菌抽出物ライブラリーのスクリーニングで,
GLI1 転 写 阻 害 活 性 を 示 し た CKK32( 菌 種 は 未 同 定 )に つ い て ,GLI1 転 写 阻 害 活
性を指標に化合物を単離したことを述べる.
ま た 会 社 依 頼 サ ン プ ル ( ich) の ス ク リ ー ニ ン グ で , GLI1 転 写 阻 害 活 性 を 示 し
た サ ン プ ル ( ich77) に つ い て , GLI1 転 写 阻 害 活 性 を 指 標 に 分 離 を 行 っ た が , 活
性画分が高極性に集中し,活性化合物の単離には至っていない.その分離過程に
ついて述べる.
第一節
GLI1 転 写 阻 害 活 性 を 指 標 に し た CKK32 の 分 画
放 線 菌 CKK32 を Waksman 培 地 に て 液 体 培 養
( 500 mL)し ,メ タ ノ ー ル に よ る 抽 出 を 行 っ た
後 ,抽 出 物 を 酢 酸 エ チ ル お よ び n-ブ タ ノ ー ル と
水 で 順 次 分 配 を 行 い , 酢 酸 エ チ ル 抽 出 物 ( 430
mg) お よ び ブ タ ノ ー ル 抽 出 物 ( 3.6 g) を 得 た .
そ れ ぞ れ の 抽 出 物 に つ い て ,GLI1 転 写 阻 害 活 性
試 験 を 行 っ た と こ ろ ,酢 酸 エ チ ル 抽 出 物 に GLI1
転 写 阻 害 活 性 が 移 行 し た ( Fig. 4-2).
Fig. 4-1. CKK32
120%
100%
80%
Luciferase 50ug/mL
Viability 50ug/mL
Luciferase 10ug/mL
Viability 10ug/mL
60%
40%
20%
0%
32-E
32-B
32-W
Fig. 4-2. GLI1-mediated transcriptional activity and cell viability of 32-E, 32-B and
32-W
32-E, EtOAc ext.; 32-B, BuOH ext.; 32-W, H 2 O ext.
58
第四章 放線菌 CKK32 の成分および生薬 ich77 の活性画分
酢 酸 エ チ ル 抽 出 物( 430 mg)を ,ク ロ ロ ホ ル ム /メ タ ノ ー ル 系 グ ラ ジ エ ン ト 溶 媒
を 用 い た シ リ カ ゲ ル カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー で 分 離 し た 結 果 ,8 つ の 画 分( Frs.
1A~ 1H)を 得 た .そ れ ぞ れ の 画 分 に つ い て , GLI1 転 写 阻 害 活 性 試 験 を 行 っ た 結
果 , Fr. 1B に GLI1 転 写 阻 害 活 性 が 移 行 し た ( Fig. 4-3).
180%
160%
140%
120%
luciferase 50ug/mL
viability 50ug/mL
luciferase 10ug/mL
viability 10ug/mL
100%
80%
60%
40%
20%
0%
1A
1B
1C
1D
1E
1F
1G
1H
Fig. 4-3. GLI1-mediated transcriptional activity and cell viability of Frs. 1A – 1H
Fr. 1B( 249 mg) に つ い て , ク ロ ロ ホ ル ム /メ タ ノ ー ル 系 溶 媒 を 用 い た Sephadex
LH-20 カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー で 分 離 し , 5 つ の 画 分 ( Frs. 2A〜 2E) を 得 た .
100%
80%
60%
Luciferase 50ug/mL
Viability 50ug/mL
Luciferase 10ug/mL
Viability 10ug/mL
40%
20%
0%
32E2A
32E2B
32E2C
Fig. 4-4. GLI1-mediated transcriptional activity and cell viability of Frs. 2A – 2C
59
第四章 放線菌 CKK32 の成分および生薬 ich77 の活性画分
GLI1 転 写 阻 害 活 性 は , Fr. 2C に 移 行 し て い た の で ( Fig. 4-4), ODS HPLC に よ
る GLI1 転 写 阻 害 活 性 を 指 標 に し た 分 離 •精 製 を 繰 り 返 し 行 っ た 結 果 ( Fig. 4-5),
活 性 化 合 物 26( Fr. 5F, 2.6 mg) を 得 た .
5F
Sample; 32E4I, preparative (18 mg)
Column; Mightysil RP-18 (f20´250mm)
Solvent; H 2 O/MeOH 53/47
Flow; 5.0 mL/min
Detection; RI (Jasco)
Chart; 10 cm/h
time
Fig. 4-5. HPLC chromatogram of Fr. 4I
60
第四章 放線菌 CKK32 の成分および生薬 ich77 の活性画分
第二節
CKK32 よ り 得 ら れ た 化 合 物 の 同 定 お よ び 転 写 阻 害 の 考 察
化 合 物 26 は ,無 色 非 結 晶 物 質 と し て 得 ら れ ,1D お よ び 2D NMR に よ る 解 析 よ
り ,cycloheximide と 同 定 し た [5 4 ]( Fig. 4-6).cycloheximide は ,ス ト レ プ ト マ イ シ
ン 産 生 放 線 菌 ( Streptomyces griseus) か ら 単 離 さ れ る グ ル タ ル イ ミ ド 系 抗 生 物 質
である.無色針状晶で安定であるが,アルカリ性溶液では不安定である.主とし
て ,酵 母 お よ び 糸 状 菌 に 対 し て 抗 菌 活 性 を 示 す . 真 核 細 胞 リ ボ ソ ー ム 60S サ ブ ユ
ニットに作用し,ペプチド鎖伸長における転移反応を阻害するこによりタンパク
質 合 成 を 阻 害 す る . ま た , リ ボ ソ ー ム か ら の tRNA の 遊 離 を 阻 害 し , ポ リ ソ ー ム
を 蓄 積 す る [5 5 ] .
O
H
OH
NH
O
%
100
100
75
75
50
50
25
25
0
0
Cell viability
O
GLI1 transcriptional activity
%
0.3
0.6
1.3
2.5
5
10 mg/mL
cycloheximide
Fig. 4-6. Chemical structure of cycloheximide (26) and its GLI1-mediated
transcriptional activity and cell viability at each concentration
cycloheximide の 生 物 活 性 に ,タ ン パ ク 質 合 成 阻 害 が 知 ら れ て い る .今 回 ,本 ア
ッ セ イ 系 に て ル シ フ ェ ラ ー ゼ 活 性 を 抑 制 し た が , こ の 抑 制 が GLI1 転 写 阻 害 に よ
る も の か を 確 認 し た .cycloheximide の 作 用 点 と し て 考 え ら れ る の が ,レ ポ ー タ ー
遺伝子であるルシフェラーゼの発現におけるタンパク質合成阻害である.このタ
ンパク質阻害かどうかを確認するため,プロモーター領域の異なるレポータープ
ラスミドによるレポーターアッセイを行った.
1) TOP Flash に よ る 評 価
TOP Flash は ,Wnt シ グ ナ ル 伝 達 経 路 に お け る 転 写 を 検 出 す る レ ポ ー タ ー プ ラ
ス ミ ド で あ り ,プ ロ モ ー タ ー 領 域 に は ,b -catenin/TCF-LEF 転 写 因 子 が 結 合 す る
領域を有し,その下流にレポーター遺伝子であるルシフェラーゼがコードされ
て い る . こ の プ ラ ス ミ ド が 安 定 発 現 し て い る 細 胞 ( STF/293T) に お い て ,レ ポ
ー タ ー ア ッ セ イ を 行 っ た 結 果 ,10 mg/mL の 濃 度 に て ,ル シ フ ェ ラ ー ゼ 活 性 を 阻
害 し た .( Luciferase activity, 1.6%; Cell viability, 77%)
61
第四章 放線菌 CKK32 の成分および生薬 ich77 の活性画分
2) pCMV-luc に よ る 評 価
pCMV-luc プ ラ ス ミ ド は , プ ロ モ ー タ ー 領 域 に CMV( cytomegalovirus) プ ロ
モーターを有し,その下流にルシフェラーゼ遺伝子をコードするプラスミドで
あ る .こ の プ ラ ス ミ ド を PANC1 細 胞 に 一 過 性 導 入 し ,レ ポ ー タ ー ア ッ セ イ を 行
っ た 結 果 ,ル シ フ ェ ラ ー ゼ 活 性 を 阻 害 し た .
( Luciferase activity, 38% at 10 mg/mL
and 63% at 1 mg/mL, 但 し pRL-luc に よ る 補 正 を 行 っ て い な い )
3) pGL4-Bcl2-prom に よ る 評 価
pGL4-Bcl2-prom プ ラ ス ミ ド は ,プ ロ モ ー タ ー 領 域 に bcl2( B-cell Lymphoma-2 :
抗 ア ポ ト ー シ ス ) の 5’-flanking region を 有 す る レ ポ ー タ ー プ ラ ス ミ ド で あ る .
pCMV-luc と 同 様 に ,一 過 性 導 入 に て レ ポ ー タ ー ア ッ セ イ を 行 っ た 結 果 ,ル シ フ
ェ ラ ー ゼ 活 性 を 阻 害 し た .( Luciferase activity, 16% at 10 mg/mL; 25% at 1 mg/mL
お よ び 55% at 0.1 mg/mL, 但 し pRL-luc に よ る 補 正 を 行 っ て い な い )
プロモーター領域の異なるすべてのレポーター活性を阻害したことにより,
cycloheximide は , GLI1 に よ る 転 写 活 性 を 阻 害 し , ル シ フ ェ ラ ー ゼ 活 性 を 抑 制 し
たのではなく,ルシフェラーゼのタンパク合成を阻害したことにより,見かけ上
の レ ポ ー タ ー 活 性 が 下 が っ た も の と 推 測 し , cycloheximide は , GLI1 転 写 阻 害 活
性化合物ではない擬陽性サンプルと結論づけた.
ま た , 放 線 菌 ラ イ ブ ラ リ ー の GLI1 転 写 阻 害 活 性 ス ク リ ー ニ ン グ に お い て ,
CKK166 も GLI1 転 写 阻 害 活 性 を 示 し て い た が ,本 菌 株 か ら も 当 研 究 室 の 会 田 渉 氏
に よ り cycloheximide が 単 離 さ れ て お り , CKK166 に お け る 阻 害 活 性 も ,
cycloheximide の タ ン パ ク 合 成 阻 害 に よ る も の と 結 論 づ け た .
レポーターアッセイを行う上で,今回の事例は十分留意しなければならい点で
ある.
62
第四章 放線菌 CKK32 の成分および生薬 ich77 の活性画分
第三節
GLI1 転 写 阻 害 活 性 を 指 標 に し た ich77 の 分 画
共 同 研 究 中 の 会 社 生 薬 抽 出 物 サ ン プ ル #77( ich77) 44.2 g を 酢 酸 エ チ ル お よ び
n-ブ タ ノ ー ル と 水 で 順 次 分 配 し ,得 ら れ た 抽 出 物 の GLI1 転 写 阻 害 活 性 試 験 を 行 っ
た と こ ろ , 全 て の 抽 出 物 に 活 性 が 見 ら れ た が , 10 mg/mL に て 顕 著 に GLI1 転 写 阻
害 活 性 を 示 し た ブ タ ノ ー ル 抽 出 物 に つ い て , 以 降 の 分 離 を 行 っ た ( Fig. 4-7).
100%
80%
60%
Luciferase 50ug/mL
Viability 50ug/mL
Luciferase 10ug/mL
Viability 10ug/mL
40%
20%
0%
ichi77E
ich77B
ich77W
Fig. 4-7. GLI1-mediated transcriptional activity and cell viability of ich77E, ich77B
and ich77W
ich77E, EtOAc ext.; ich77B, BuOH ext.; ich77W, H 2 O ext.
ブ タ ノ ー ル 抽 出 物( 7.4 g)を 水 /メ タ ノ ー ル 系 グ ラ ジ エ ン ト 溶 媒 を 用 い た Diaion
HP-20 ク ロ マ ト ー グ ラ フ ィ ー に て 5 つ の 画 分 ( Frs. 1A〜 1E) に 分 離 し た と こ ろ ,
GLI1 転 写 阻 害 活 性 は , Frs. 1C, 1D お よ び 1E に 移 行 し た ( Fig. 4-8).
63
第四章 放線菌 CKK32 の成分および生薬 ich77 の活性画分
140%
120%
100%
Luciferase 50ug/mL
Viability 50ug/mL
Luciferase 5ug/mL
Viability 5ug/mL
80%
60%
40%
20%
0%
77B1A
77B1B
77B1C
77B1D
77B1E
Fig. 4-8. GLI1-mediated transcriptional activity and cell viability of Frs. 1A – 1E
Fr. 1C( 1.9 g)を 水 /メ タ ノ ー ル 系 グ ラ ジ エ ン ト 溶 媒 を 用 い た ODS カ ラ ム ク ロ マ
ト ー グ ラ フ ィ ー に よ る 分 離 を 行 い ,4 つ の 画 分( Frs. 2A〜 2D)を 得 た( Fig. 4-9).
100%
80%
60%
Luciferase 50ug/mL
Viability 50ug/mL
Luciferase 5ug/mL
Viability 5ug/mL
40%
20%
0%
77B2A
77B2B
77B2C
77B2D
Fig. 4-9. TLC analysis, and GLI1-mediated transcriptional activity and cell viability
of Frs. 2A – 2D
TLC, ODS; solvent, H 2 O/MeOH 3/2, detection, 10%H 2 SO 4 D
GLI1 転 写 阻 害 活 性 は , Fr. 2D に 移 行 し , 水 /メ タ ノ ー ル 系 溶 媒 を 用 い た ODS
HPLC に よ り 分 離 を 行 っ た が( Fig. 4-10),活 性 画 分 は ,Fr. 5A( 6.0 mg)に 移 行 し
( Fig. 4-11), 主 成 分 の Fr. 5B に は GLI1 転 写 阻 害 活 性 は 見 ら れ な か っ た . Fr. 5A
64
第四章 放線菌 CKK32 の成分および生薬 ich77 の活性画分
の更なる分離は,量が少ないこと,また多数の成分が存在することから,ここで
断 念 し た .ま た ,Frs. 2C お よ び 2D( GLI1 転 写 阻 害 活 性 な し )の 主 成 分 に も GLI1
転 写 阻 害 活 性 が な い こ と を 確 か め た .従 っ て ,Fr. 1C の GLI1 転 写 阻 害 活 性 化 合 物
は , Fr. 5A に 集 約 さ れ て い る こ と が 判 明 し た .
Column; Mightysil RP-18 (f20´250mm)
Solvent; H 2 O/MeOH 55/45
Flow; 5.0 mL/min
Detection; UV (254 nm)
Chart; 10 cm/h
5B
5A
5C
5D
time
Fig. 4-10. HPLC chromatogram of Fr. 2D
120%
100%
80%
Lufirerase 50ug/mL
Viability 50ug/mL
Lufirerase 10ug/mL
Viability 10ug/mL
60%
40%
20%
0%
77B5A
77B5B
77B5C
77B5D
Fig. 4-11. GLI1-mediated transcriptional activity and cell viability of Frs. 5A – 5D
65
第四章 放線菌 CKK32 の成分および生薬 ich77 の活性画分
Fr. 1D( 1.4 g)を 水 /メ タ ノ ー ル 系 グ ラ ジ エ ン ト 溶 媒 を 用 い た ODS カ ラ ム ク ロ マ
ト ー グ ラ フ ィ ー に よ る 分 離 を 行 い ,6 つ の 画 分( Frs. 6A〜 6F)を 得 た .GLI1 転 写
阻 害 活 性 は , 全 て の 画 分 に 分 散 し た ( Fig. 4-12).
100%
80%
60%
Lufirerase 50ug/mL
Viability 50ug/mL
Lufirerase 10ug/mL
Viability 10ug/mL
40%
20%
0%
77B6A
77B6B
77B6C
77B6D
77B6E
77B6F
Fig. 4-12. TLC analysis, and GLI1-mediated transcriptional activity and cell
viability of Frs. 6A – 6F
TLC, ODS; solvent, H 2 O/MeOH 1/1, detection, 10%H 2 SO 4 D
量 の 多 い Fr. 6B( 1.1 g)に つ い て ,水 /メ タ ノ ー ル 系 溶 媒 を 用 い た ODS HPLC に
よ り 主 成 分 の 分 取 を 行 い ,GLI1 転 写 阻 害 活 性 試 験 を 行 っ た と こ ろ ,主 成 分( Frs. 7D
お よ び 7G) に は GLI1 転 写 阻 害 活 性 が 見 ら れ ず , Fr. 7A に GLI1 転 写 阻 害 活 性 が
移 行 し た ( Figs. 4-13 お よ び 4-14). そ こ で , Fr. 7A を ODS HPLC に て 細 か く 分 離
し , GLI1 転 写 阻 害 活 性 試 験 を 行 っ た 結 果 , さ ら に 初 め の 画 分 ( Frs. 8A〜 8C) に
活 性 が 移 行 し た ( Figs. 4-15 お よ び 4-16). し か し 現 在 , 活 性 画 分 に 含 ま れ る の 活
性化合物の単離には至っていない.
66
第四章 放線菌 CKK32 の成分および生薬 ich77 の活性画分
Column; Mightysil RP-18 (f20´250mm)
Solvent; H 2 O/MeOH 63/37
Flow; 5.0 mL/min
Detection; UV (254 nm)
Chart; 10 cm/h
7G
7D
7F
7C
7E
7H
7A
7B
7I
time
Fig. 4-13. HPLC chromatogram of Fr. 6B
140%
120%
100%
Luciferase 50ug/mL
Viability 50ug/mL
Luciferase 10ug/mL
Viability 10ug/mL
80%
60%
40%
20%
0%
7A
7B
7C
7D
7E
7F
7G
7H
7I
Fig. 4-14. GLI1-mediated transcriptional activity and cell viability of Frs. 7A – 7I
67
第四章 放線菌 CKK32 の成分および生薬 ich77 の活性画分
Column; Mightysil RP-18 (f20´250mm)
Solvent; H 2 O/MeOH 65/35
Flow; 5.0 mL/min
Detection; UV (254 nm)
Chart; 10 cm/h
F E
D
C
B
A
time
Fig. 4-15. HPCL chromatogram of Fr. 7A
120%
100%
80%
Luciferase 50ug/mL
Viability 50ug/mL
Luciferase 10ug/mL
Viability 10ug/mL
60%
40%
20%
0%
77B8A
77B8B
77B8C
77B8D
77B8E
77B8F
Fig. 4-16. GLI1-mediated transcriptional activity and cell viability of Frs. 8A – 8F
68
第四章 放線菌 CKK32 の成分および生薬 ich77 の活性画分
第四節
ich77 の 活 性 画 分 の 分 離 お よ び 考 察
今 回 ,生 薬 ich77 の GLI1 転 写 阻 害 活 性 化 合 物 の 単 離 を 目 的 に ,活 性 を 指 標 に し
た 分 離 を 行 っ た が ,そ の 活 性 化 合 物 は ,TLC や HPLC な ど で 分 離 可 能 な 主 成 分 で
は な く ,ODS HPLC に よ る 分 離 の 際 に ,初 め に 出 て く る 高 極 性 の 画 分 に 集 中 し た .
ODS HPLC で は , ピ ー ク に な ら ず ブ ロ ー ド し て し ま う こ と , ま た , 極 性 が 高 い 画
分であることより,今後の分離の方法として,画分のアセチル化を行い,分離を
進めていく方法をとりたいと考えている.
69
第四章 放線菌 CKK32 の成分および生薬 ich77 の活性画分
第五節
小括
本 章 で は ,放 線 菌 CKK32 の 活 性 成 分 お よ び 生 薬 ich77 の 活 性 画 分 の 分 離 に つ い
て述べた.
放 線 菌 CKK32 の GLI1 転 写 阻 害 活 性 を 指 標 に し た 分 離 ,精 製 に よ り ,活 性 化 合
物 と し て cycloheximide( 26) を 得 た . し か し , cycloheximide の 作 用 点 は , GLI1
転写阻害ではなく,ルシフェラーゼタンパクの翻訳におけるタンパク合成阻害で
あることが判明した.レポーターアッセイの注意点として,留意しなければなら
ない点である.
ま た ,会 社 依 頼 サ ン プ ル で あ る 生 薬 ich77 を ,GLI1 転 写 阻 害 活 性 を 指 標 に 分 離
を 行 っ た 結 果 ,ich77 に 含 ま れ る 主 成 分 に 活 性 が あ る の で は な く ,ODS HPLC に て
最初に出てくる高極性画分に活性が移行した.現在,活性化合物の単離には至っ
ておらず,分離や単離に工夫をしなければならない.
70
第五章 GLI 転写阻害活性化合物の評価
第五章
GLI 転 写 阻 害 活 性 化 合 物 の 評 価
本 章 で は , 化 合 物 ラ イ ブ ラ リ ー お よ び Physalis minima よ り 得 ら れ た GLI1 転 写
阻害活性化合物を用いて,細胞での作用を詳細に調べるために,ヘッジホッグシ
グ ナ ル 伝 達 経 路 が 関 与 し て い る 遺 伝 子 発 現 の 影 響 を HaCaT 細 胞 お よ び ヘ ッ ジ ホ
ッ グ シ グ ナ ル 伝 達 経 路 が 亢 進 し て い る す い 臓 癌 細 胞 株 ( PANC1) に て 検 討 し た こ
とを述べる.
第一節
転 写 因 子 GLI2 に 対 す る 転 写 阻 害 活 性 の 評 価
ヘッジホッグシグナル伝達経路において,シグナル最下流に位置する転写因子
に は ,GLI1,GLI2 お よ び GLI3 が 存 在 す る .そ れ ぞ れ の 転 写 因 子 は ,構 造 的 に 高
い 相 同 性 が 知 ら れ て お り , Zn-フ ィ ン ガ ー ド メ イ ン を 有 し , 同 じ DNA 結 合 配 列
( -GACCACCCA-)を 認 識 し て 転 写 を 調 節 す る [5 6 ] .GLI1 は 転 写 を 活 性 化 す る 作 用
を 持 ち , GLI2 は 転 写 を 活 性 化 お よ び 抑 制 の 両 方 の 作 用 を 持 つ . ま た , GLI3 は 転
写を抑制する作用を持ち,胚発生における形態形成,分化および増殖などでそれ
ぞ れ の 転 写 因 子 が ,そ れ ぞ れ の 転 写 調 節 に 作 用 し て い る [5 7 ] .一 方 ,癌 細 胞 に お い
て , ヘ ッ ジ ホ ッ グ シ グ ナ ル 伝 達 経 路 が 異 常 亢 進 し て い る 細 胞 で は , GLI1 お よ び
GLI2 の 過 剰 発 現 が 報 告 さ れ て お り ,こ れ ら 転 写 因 子 が ,癌 遺 伝 子 の 一 つ と し て 作
用 す る [5 8 ] .
まず,化合物ライブラリーより同定したセスキテルペン類とビスインドールア
ル カ ロ イ ド 類 お よ び P. minima よ り 単 離 さ れ た physalin 類 に お い て , GLI1 に よ る
転 写 を 阻 害 す る 化 合 物 が , GLI2 に よ る 転 写 も 阻 害 す る か を 調 べ た .
GLI2 の 発 現 が tetracycline( Tc)に よ り 制 御 さ れ て い る 細 胞( HaCaT-GLI2 細 胞 ,
T-REx system) [3 2 ] に , 第 一 章 に て 作 成 し た pGL4-GLI BS レ ポ ー タ ー プ ラ ス ミ ド
( 12´GACCACCCA−TK−luciferase)を 一 過 性 導 入 す る こ と で ,GLI2 に よ る 転 写 へ
の 影 響 を 調 べ た . 用 い た 化 合 物 は GLI1 転 写 阻 害 活 性 を 示 し た , zerumbone( 1),
zerumbone epoxide( 2), staurosporinone( 9), physalin F( 17) お よ び physalin B
( 18) で あ る . そ の 結 果 , Table 5-1 に 示 す よ う に , GLI1 転 写 阻 害 活 性 を 示 し た
化 合 物 に お い て , GLI2 に よ る 転 写 も 阻 害 し , こ れ ら に は 相 関 が 見 ら れ た .
71
第五章 GLI 転写阻害活性化合物の評価
Table 5-1. IC 5 0 values [mM, (mg/mL)] of GLI1 and GLI2-mediated transcriptional
inhibitory activity
Compounds
1
2
GLI1
GLI2
mM
(mg/mL)
7.1
(1.5)
55
(13.0)
mM
0.91
90
(mg/mL)
(0.23)
(21.3)
9
1.8
(0.57)
2.7
10
3.6
(1.2)
n.d.
11
11.3
(4.0)
n.d.
12
6.9
(2.5)
n.d.
17
0.66
(0.35)
1.4
(0.80)
18
0.62
(0.32)
1.5
(0.80)
cyclopamine
>40
n.d.
n.d., not determined
72
(0.84)
第五章 GLI 転写阻害活性化合物の評価
第二節
HaCaT 細 胞 に お け る GLI1, PTCH, BCL2 タ ン パ ク 発 現 の 評 価
そ れ ぞ れ の GLI 転 写 阻 害 化 合 物 の 細 胞 で の 影 響 を 調 べ る た め に , GLI1 ま た は
GLI2 を 過 剰 発 現 さ せ た HaCaT 細 胞 に お い て , ヘ ッ ジ ホ ッ グ シ グ ナ ル 伝 達 経 路 が
制 御 し て い る 遺 伝 子 発 現 を , Western blotting に て タ ン パ ク 発 現 量 を 調 べ た . 用 い
た 化 合 物 は , セ ス キ テ ル ペ ン 化 合 物 zerumbone( 1), ビ ス イ ン ド ー ル ア ル カ ロ イ
ド 化 合 物 staurosporinone( 9),16,24-cyclo-13,14-seco-steroid 化 合 物 で あ る physalin
F( 17) お よ び physalin B( 18) で あ る ( Fig. 5-1).
O
H
N
O
N
H
N
H
1
O
O
O
H
O
O
O
H
H
O
HO
H
H O
O
O
H
H
HO
H
H O
O
O
O
9
H
O
O
O
17
18
Fig. 5-1. Chemical structures of GLI1-mediated transcriptional inhibitors ( 1, 9, 17
and 18) from natural resources
1) 細 胞 内 の 外 因 性 GLI1 タ ン パ ク 量 の 確 認
本 レ ポ ー タ ー ア ッ セ イ 系 に お い て ,ル シ フ ェ ラ ー ゼ 活 性 を 下 げ た 理 由 と し て ,
GLI1 に よ る 転 写 活 性 を 阻 害 し た 場 合 , 細 胞 が 化 合 物 の 毒 性 に よ り 死 滅 し た 場
合 , ル シ フ ェ ラ ー ゼ タ ン パ ク の 合 成 阻 害 , ま た , 細 胞 内 の 外 因 性 GLI1 タ ン パ
ク 量 の 減 少 な ど が 挙 げ ら れ る . 今 回 得 ら れ た 阻 害 剤 が , 細 胞 内 の 外 因 性 GLI1
タ ン パ ク 質 を 減 少 さ せ て い な い か ど う か を Western blotting に て 確 認 し た . ア
ッ セ イ 系 の 構 築 の 際 , 外 因 性 GLI1 を 誘 導 す る プ ラ ス ミ ド 上 の CMV プ ロ モ ー
タ ー の 影 響 は 排 除 す る よ う に 検 討 し た が ,こ れ ら 化 合 物 が CMV 等 を 阻 害 し て
細 胞 内 の 外 因 性 GLI1 タ ン パ ク 量 を 減 少 さ せ て い な い か の 確 認 で も あ る . そ の
73
第五章 GLI 転写阻害活性化合物の評価
結 果 ,tetracyclin( Tc)添 加 に よ り 誘 導 さ れ た 外 因 性 GLI1 は 細 胞 内 に 過 剰 に 存
在 し ,化 合 物 1,9,17 お よ び 18 は ,細 胞 内 の GLI1 を 減 少 す る こ と な く ,GLI1
に よ る 転 写 を 阻 害 す る こ と が 確 認 さ れ た ( Fig. 5-2).
compound
Tc
– –
1
10
9
5
8
17
4
4
2
18
4
2
mg/mL
– + + + + + + + + +
150kDa
GLI1
b-actin
Fig. 5-2. Western blotting analysis of exogenous GLI1 protein in inhibitors-treated
HaCaT assay cells
2) GLI1 を 過 剰 発 現 さ せ た 状 態 で の PTCH 量
転 写 因 子 GLI が 制 御 す る 遺 伝 子 と し て , ptch が あ り , ptch の 遺 伝 子 を コ ー
ド す る 上 流 の プ ロ モ ー タ ー 領 域 に は ,GLI 結 合 領 域 が 存 在 す る こ と が 報 告 さ れ
て い る [5 9 ] .今 回 得 ら れ た GLI 転 写 阻 害 化 合 物( 1, 9, 17 お よ び 18)が ,GLI に
よ る 転 写 活 性 を 阻 害 し て ,下 流 の 遺 伝 子 産 物 で あ る PTCH の 発 現 を 抑 制 す る か
ど う か を ,GLI1 を 過 剰 発 現 さ せ た HaCaT 細 胞 を 用 い て ,Western blotting に よ
り タ ン パ ク 発 現 を 調 べ た .そ の 結 果 ,Tc 添 加 に よ る GLI1 の 過 剰 発 現 に よ り 僅
か で は あ る が , PTCH の 発 現 増 加 が 起 こ り , 化 合 物 処 理 群 で は , PTCH の 発 現
を 抑 制 し た .今 回 ,Tc を 添 加 し GLI1 を 過 剰 発 現 さ せ た に も か か わ ら ず ,PTCH
発 現 の 増 大 が み ら れ な か っ た の は , 内 在 性 の GLI に よ り PTCH の 発 現 は 飽 和
に な っ て お り , GLI1 を 過 剰 発 現 さ せ て も , そ の 発 現 は 増 加 し な い も の と 推 測
し て い る が , 化 合 物 の 処 理 に よ り , PTCH の 発 現 は 抑 制 さ れ た ( Fig. 5-3).
74
第五章 GLI 転写阻害活性化合物の評価
compound
Tc
– –
10
1
5
8
9
4
17
4
2
18
4
2
mg/mL
– + + + + + + + + +
PTCH
140kDa
b-actin
Fig. 5-3. Western blotting analysis of PTCH protein
3) GLI2 を 過 剰 発 現 さ せ た 状 態 で の GLI1 お よ び PTCH 量
転 写 因 子 GLI2 も ,GLI1 と 同 様 に ,ヘ ッ ジ ホ ッ グ シ グ ナ ル 伝 達 経 路 関 係 の 遺
伝 子 ( Gli1, Ptch な ど ) を 制 御 し て い る [5 9 , 6 0 ] . Gli1 遺 伝 子 の プ ロ モ ー タ ー は
GLI2 が 制 御 す る 報 告 が あ る こ と か ら [6 0 ] ,今 回 ,GLI2 を 過 剰 発 現 さ せ た と き の
GLI1 お よ び PTCH の タ ン パ ク 発 現 量 を Western blotting に て 確 認 し た . そ の 結
果 , GLI2 を 過 剰 発 現 さ せ る こ と で , GLI1 の 発 現 が 増 大 し , 化 合 物 ( 1, 9, 17
お よ び 18)処 理 に よ り ,そ の 発 現 が 抑 制 し た .ま た ,PTCH も 同 様 に ,化 合 物
処 理 に よ り そ の タ ン パ ク 発 現 を 抑 制 し た ( Fig. 5-4).
compound
Tc
– –
1
10
9
5
8
17
4
4
2
18
4
2
mg/mL
– + + + + + + + + +
GLI1
150kDa
PTCH
140kDa
b-actin
Fig. 5-4. Western blotting analysis of GLI1 and PTCH
75
第五章 GLI 転写阻害活性化合物の評価
4) GLI1 ま た は GLI2 を 過 剰 発 現 さ せ た 状 態 で の BCL2 量
GLI1 お よ び GLI2 は , 抗 ア ポ ト ー シ ス タ ン パ ク で あ る Bcl2 の 遺 伝 子 発 現 を
制 御 し て い る 報 告 が あ る [6 1 , 6 2 ] .つ ま り ,Bcl2 の プ ロ モ ー タ ー 領 域 に ,GLI 結 合
領 域 が 存 在 し , Bcl2 の 発 現 が GLI に よ り 制 御 さ れ て い る . 今 回 , GLI1 ま た は
GLI2 を そ れ ぞ れ 過 剰 発 現 さ せ た HaCaT 細 胞 に て 化 合 物 ( 1, 9, 17 お よ び 18)
の 影 響 を , 前 述 と 同 じ 手 法 に て 調 べ た . そ の 結 果 , Tc 添 加 に よ る 外 因 性 GLI1
ま た は GLI2 の 過 剰 発 現 に よ り , BCL2 の タ ン パ ク 発 現 の 増 加 を 確 認 し た . こ
の 状 態 に て 化 合 物 ( 1, 9, 17 お よ び 18) を 処 理 し た と こ ろ , BCL2 の 発 現 を 抑
制 し た ( Fig. 5-5).
A) GLI1 overexpression
compound
Tc
– –
10
1
5
8
9
4
17
4
2
18
4
2
mg/mL
– + + + + + + + + +
BCL2
26kDa
b-actin
B) GLI2 overexpression
compound
Tc
– –
1
10
9
5
8
17
4
4
2
18
4
2
mg/mL
– + + + + + + + + +
BCL2
26kDa
b-actin
Fig. 5-5. Western blotting analysis of BCL2 protein. A) under GLI1 overexpression;
B) under GLI2 overexpression
76
第五章 GLI 転写阻害活性化合物の評価
第三節
PANC1 細 胞 に お け る 評 価
ヒトのすい臓癌細胞では,ヘッジホッグシグナル伝達経路が異常亢進している
と の 報 告 が あ り [6 3 ] ,今 回 得 ら れ た GLI 転 写 阻 害 活 性 化 合 物 が ,ヒ ト す い 臓 癌 細 胞
株 ( PANC1 細 胞 ) に 及 ぼ す 影 響 を 調 べ た .
1) 細 胞 毒 性 試 験
今 回 の ス ク リ ー ニ ン グ に よ り 得 ら れ た 化 合 物 zerumbone ( 1 ), zerumbone
epoxide ( 2 ), staurosporinone ( 9 ), 6-hydroxystaurosporinone ( 10 ),
5,6-dihydroxyarcyriaflavin A( 12),physalin F( 17)お よ び physalin B( 18)と ,
GLI1 転 写 阻 害 活 性 は 示 さ な か っ た が , 比 較 と し て zerumbone 誘 導 体 ( 3~ 7)
に つ い て , FMCA( Fluorometric Microculture Cytotoxic Assay) [3 3 ] を 用 い て ,
PANC1 細 胞 に 対 す る 細 胞 毒 性 試 験 を 行 っ た . ま た , 比 較 対 照 と し て , マ ウ ス
embryonic mesoderm cell line で あ る C3H10T1/2 細 胞 ( Hh responsive but not
reliant on Hh for survival) に つ い て も FMCA に よ る 細 胞 毒 性 試 験 を 行 っ た . そ
の 結 果 を Table 5-2 に 示 す .そ れ ぞ れ の 値 は ,IC 5 0( 50% Inhibition Concentration,
mM) を 示 す .
Table 5-2. IC 5 0 values of cytotoxicity against PANC1 and C3H10T1/2 cells
C3H10T1/2
PANC1
Compounds
mM
mM
(mg/mL)
(mg/mL)
1
68.8
2
>85.4
3
191
(39)
>123
(>25)
4
>227
(>50)
>113
(>25)
5
144
(32)
>112
(>25)
(15.0)
(>20)
70.7
(15.4)
>85.4
(>20)
6
136
(34)
>100
(>25)
7
>200
(>50)
>105
(>25)
9
40.8
(12.7)
10
43.8
(18.6)
12
>70
(>25)
137
21.0
>70
(42.6)
(7.0)
(>25)
17
2.7
(1.4)
15.0
(7.9)
18
5.3
(2.7)
17.0
(8.7)
77
第五章 GLI 転写阻害活性化合物の評価
GLI 転 写 阻 害 活 性 と PANC1 細 胞 に 対 す る 細 胞 毒 性 を 比 較 す る と , GLI 転 写
阻 害 活 性 が 強 い 17 お よ び 18 は , よ り 低 濃 度 に て PANC1 細 胞 に 対 し て 細 胞 毒
性 を 示 し , GLI 転 写 阻 害 が 弱 い 2 は , PANC1 細 胞 に 対 す る 細 胞 毒 性 は 弱 か っ
た . 概 し て , GLI 転 写 阻 害 活 性 と PANC1 細 胞 に 対 す る 細 胞 毒 性 に は , 相 関 が
見 ら れ た .ま た ,化 合 物 9, 17 お よ び 18 は ,比 較 対 照 の 細 胞 で あ る C3H10T1/2
細 胞 に 比 べ , PANC1 細 胞 の ほ う が , よ り 強 く 細 胞 毒 性 を 示 し た .
2) PANC1 細 胞 に お け る ヘ ッ ジ ホ ッ グ シ グ ナ ル 伝 達 経 路 関 連 遺 伝 子 の 発 現 抑 制
PANC1 細 胞 で は , Gli1,Gli2 や Ptch な ど の 発 現 が 亢 進 し て お り ,ヘ ッ ジ ホ
ッ グ シ グ ナ ル 伝 達 経 路 が , PANC1 細 胞 で の 増 殖 に 関 与 し て い る . 今 回 , GLI
に よ る 転 写 阻 害 を 示 す 化 合 物 が , PANC1 細 胞 で こ れ ら ヘ ッ ジ ホ ッ グ シ グ ナ ル
関 連 遺 伝 子 の 発 現 を 抑 え る か ど う か を , 半 定 量 的 RT-PCR 法 [ 6 4 ] に よ り 確 認 し
た .そ の 結 果 ,そ れ ぞ れ の GLI 転 写 阻 害 化 合 物( 1, 9, 17 お よ び 18)が ,Gli1,
Gli2 や Ptch の 遺 伝 子 発 現 を 抑 制 し た ( Fig. 5-6).
compound
-
1
10
9
5
8
17
4
4
2
18
4
2
mg/mL
Gli1
Gli2
Ptch
Gapdh
Fig. 5-6. Semiquantitative RT-PCR analysis of gene expressions of Gli1, Gli2 and
Ptch
78
第五章 GLI 転写阻害活性化合物の評価
3) PANC1 細 胞 に お け る PTCH タ ン パ ク 発 現 の 抑 制
PANC1 細 胞 に お い て , ヘ ッ ジ ホ ッ グ シ グ ナ ル 関 連 遺 伝 子 の 発 現 抑 制 が 見 ら
れ た こ と か ら ,転 写 因 子 GLI の 標 的 遺 伝 子 で あ る PTCH の タ ン パ ク 発 現 量 を ,
PANC1 細 胞 に て 調 べ た . 用 い た 化 合 物 は , 今 回 得 ら れ た 化 合 物 の 中 で , よ り
強 い GLI 転 写 阻 害 活 性 お よ び PANC1 増 殖 阻 害 活 性 を 示 し た physalin F( 17)
お よ び B( 18) を 用 い た . 結 果 , physalin F( 17)お よ び B( 18) は そ れ ぞ れ 4
mg/mL の 濃 度 に て , PTCH の 発 現 を 抑 制 し た ( Fig. 5-7).
compound
–
17
4
18
2
4
2
mg/mL
140kDa
PTCH
b-actin
Fig. 5-7. Western blotting analysis of PTCH in PANC1 cell
4) PANC1 細 胞 で の pGL3-Bcl2 prom を 用 い た Bcl2 の プ ロ モ ー タ ー 活 性 の 抑 制
PANC1 細 胞 に , 抗 ア ポ ト ー シ ス タ ン パ ク Bcl2 の 5’-flanking region( Bcl2 の
プ ロ モ ー タ ー 領 域 2.8 kbp)を 有 す る レ ポ ー タ ー プ ラ ス ミ ド を 一 過 性 導 入 し て ,
Bcl2 の プ ロ モ ー タ ー へ の 影 響 を 調 べ た . Bcl2 の 5’-flanking region に は , 転 写
因 子 GLI の 結 合 配 列( consensus-GACCACCCA-)が 7 つ 存 在 し ,GLI が 転 写 を
制 御 し て い る [6 1 ] .PANC1 細 胞 で は ,GLI1 お よ び GLI2 が 発 現 し て お り( Fig. 5-6),
pGL3-Bcl2 prom レ ポ ー タ ー プ ラ ス ミ ド を 遺 伝 子 導 入 す る こ と で ,内 在 性 の GLI
に よ り レ ポ ー タ ー 活 性 を 示 す .そ こ に ,今 回 得 ら れ た 化 合 物 を 処 理 し ,転 写 活
性 を レ ポ ー タ ー ア ッ セ イ に て 確 認 し た . pGL3-Bcl2 prom の プ ロ モ ー タ ー 領 域
( 2.8 kbp) は , ゲ ノ ム DNA 由 来 で あ る .
staurosporinone( 9), physalin F( 17) お よ び physalin B( 18) を 処 理 し , そ
の レ ポ ー タ ー 活 性 ,す な わ ち GLI に よ る 転 写 活 性 を 調 べ た 結 果 ,9 が 61%( 16
mM),17 が 74%( 3.9 mM)お よ び 18 が 68%( 3.8 mM)を 示 し ,そ れ ぞ れ の 化
合 物 が Bcl2 の プ ロ モ ー タ ー 活 性 を 30%程 度 阻 害 す る こ と が 判 明 し た .
79
第五章 GLI 転写阻害活性化合物の評価
第四節
活性化合物の考察
今 回 GLI 転 写 阻 害 化 合 物 と 同 定 し た 化 合 物 に つ い て ,文 献 等 の 調 査 に よ り ,以
下のことを考察した.
zerumbone 類
zerumbone( 1)は ,Zingiber zerumbet よ り 単 離 さ れ た セ ス キ テ ル ペ ン 化 合 物 で ,
ア ポ ト ー シ ス を 誘 導 し て 細 胞 死 を 導 く 報 告 が あ る [6 5 ] .Takada ら は ,HepG2 細 胞 に
zerumbone を 作 用 さ せ , anti-apoptosis protein Bcl2 の 発 現 抑 制 と pro-apoptosis
protein Bax の 発 現 上 昇 を 確 認 す る こ と で ,Bax/Bcl2 ratio の 増 加 に よ り ア ポ ト ー シ
ス を 引 き 起 こ す こ と を 報 告 し て い る [6 6 ] . 先 に も 述 べ た よ う に , bcl2 の 5’-flanking
region で あ る プ ロ モ ー タ ー 領 域 に は , GLI 結 合 領 域 が 存 在 す る 報 告 が あ る こ と か
ら [6 1 , 6 2 ] , zerumbone に よ る Bcl2 の 発 現 抑 制 に は , GLI に よ る 転 写 阻 害 活 性 が 関 与
しているのではないかと推測した.
ま た ,Murakami ら の 報 告 に よ り ,zerumbone の 細 胞 毒 性 に 対 す る 構 造 活 性 相 関
の 報 告 が あ り [6 7 ] ,彼 ら は ,交 差 共 役 ケ ト ン が ,標 的 分 子 と 相 互 作 用 す る と 報 告 し
て い る . 今 回 GLI1 転 写 阻 害 活 性 に て 得 ら れ た 結 果 は , 交 差 共 役 ケ ト ン を 持 つ
zerumbone( 1) お よ び zerumbone epoxide( 2) に の み 活 性 を 示 し , 他 の 化 合 物 3
〜 8 は 活 性 を 示 さ な か っ た こ と よ り ,GLI1 転 写 阻 害 活 性 に も ,こ の 交 差 共 役 ケ ト
ン の 存 在 が 必 須 で あ る こ と が 示 唆 さ れ た .ま た ,zerumbone の 2,3 位 間 の 二 重 結 合
が エ ポ キ シ ド に 酸 化 さ れ た zerumbone epoxide( 2) の 活 性 が 減 弱 し た こ と か ら ,
2,3 位 間 の 二 重 結 合 も GLI1 転 写 阻 害 活 性 に 必 要 で あ る こ と が 示 唆 さ れ た .
O
8
H
7
O
6
O
O
8
9
10
H
7
7
2
3
1 IC50=7.1 mM
O
5
O
H
2
4
3
6
7
OMe
3
6
6
H
2 IC50=55 mM
6
7
IC50 > 25 mg/mL
Fig. 5-8. Structure-Activity Relationship of zerumbone analogues
80
7
O
6
HH
O
8
O
第五章 GLI 転写阻害活性化合物の評価
bisindole alkaloids 類
ビ ス イ ン ド ー ル 化 合 物 は ,C2−C2′位 の 炭 素 −炭 素 結 合 を 有 す る 9,10,11 お よ び
12 に GLI1 転 写 阻 害 活 性 が 見 ら れ , C2−C2′位 の 結 合 が な い 13, 14, 15 お よ び 16
に は 活 性 が 見 ら れ な か っ た こ と よ り , GLI1 転 写 阻 害 に は C2−C2'位 の 結 合 が 必 須
で あ る こ と が 示 唆 さ れ た .ま た ,9′位 が メ チ レ ン で あ る 9 お よ び 10 に ,活 性 が 増
強する傾向にあることも示唆された.
最 近 の 研 究 に お い て ,GLI に よ る 転 写 活 性 に は ,protein kinase C-d( PKC−d)が
関 与 し て い る 報 告 が あ る [6 8 ] .ビ ス イ ン ド ー ル 化 合 物 に は ,プ ロ テ イ ン キ ナ ー ゼ の
阻 害 作 用 が 報 告 さ れ て い る こ と か ら [4 3 ] ,今 回 得 ら れ た GLI 転 写 阻 害 化 合 物 が PKC
−dを 阻 害 す る こ と で ,GLI に よ る 転 写 を 阻 害 し て い る 可 能 性 が あ る と 考 え ら れ た .
H
N
O
N
H
2 2’
HO
N
H
9 IC50=1.8 mM
H
N
O
H
N
O
9’
N
H
N
H
10 IC50=3.6 mM
O
H
N
O
O
HO
HO
N
H
OH HO
N
H
11 IC50=11 mM
MeOOC
N
H
H
N
COOMe
N
H
12 IC50=6.9 mM
ROOC
H
N
COOH
R
N
H
N
H
13 R=H
14 R-OH
N
H
IC50 > 25 mg/mL
N
H
15 R=H
16 R-Me
Fig. 5-9. Structure-Activity Relationship of bisindole alkaloids analogues
81
第五章 GLI 転写阻害活性化合物の評価
physalin 類
physalin は ,Physalis minima お よ び Physalis angulata な ど の Physalis 属 よ り 単 離
さ れ る 16,24-cyclo-13,14-seco-steroid 化 合 物 で あ る .こ れ ま で の 単 離 報 告 例 は 多 数
存 在 し , physalin 以 外 に も , Withanolide な ど の 誘 導 体 も 存 在 す る . ま た , 様 々 な
癌 細 胞 に 対 し て 細 胞 毒 性 を 示 す な ど , そ の 生 物 活 性 に は 興 味 深 い も の が あ る [69].
NJ Jacobo-Herrera ら に よ り , physalin が NF-kB の modulator と て 作 用 す る こ と
が 報 告 さ れ た [7 0 ] . 彼 ら は , physalin が , PMA( phorbol 12-O-myristate 13-acetate)
誘 導 の NF-kB 活 性 化 に 対 し て 阻 害 活 性 を 示 す こ と を 報 告 し て い る .PMA は ,PKC
を 活 性 化 す る 化 合 物 で あ り , 以 上 の こ と よ り , 一 つ の 可 能 性 と し て , physalin も
ビ ス イ ン ド ー ル 化 合 物 同 様 に , PKC を 阻 害 す る こ と で , GLI に よ る 転 写 活 性 を 阻
害したのではないかと示唆された.
cyclopamine
cyclopamine は ,ユ リ 根 よ り 単 離 さ れ た ス テ ロ イ ド 性 ア ル カ ロ イ ド で ,ヘ ッ ジ ホ
ッ グ シ グ ナ ル 伝 達 経 路 に お け る Smo 受 容 体 に 直 接 結 合 し ,そ の 作 用 を 阻 害 し て シ
グ ナ ル 伝 達 を 阻 害 す る [2 1 ] . cyclopamine を 今 回 構 築 し た ア ッ セ イ 系 に て 評 価 し た
と こ ろ ,40 mM で レ ポ ー タ ー 活 性 を 抑 制 し な か っ た( Table 5-1).つ ま り cyclopamine
は , GLI1 に よ る 転 写 活 性 を 阻 害 し な い こ と が 判 明 し , 今 回 得 ら れ た 化 合 物 が ,
cyclopamine と は 違 う 作 用 点 に て 阻 害 す る こ と で ,ヘ ッ ジ ホ ッ グ シ グ ナ ル 伝 達 経 路
を 阻 害 す る こ と が 分 か っ た . す い 臓 癌 細 胞 PANC1 な ど は , Smo に 変 異 が 生 じ る
こ と で , シ グ ナ ル 伝 達 が 異 常 亢 進 し て い る .今 回 得 ら れ た 化 合 物 は , Smo よ り も
下 流 で あ る GLI に よ る 転 写 活 性 を 阻 害 す る 阻 害 剤 で あ り ,Smo よ り も 下 流 で 変 異
が起こり,シグナル伝達経路が活性化した癌細胞でも,有用であることが示唆さ
れた.
82
第五章 GLI 転写阻害活性化合物の評価
第五節
小括
構 築 し た ア ッ セ イ 系 で の ス ク リ ー ニ ン グ に よ り ,GLI1 転 写 阻 害 活 性 化 合 物 と し
て , セ ス キ テ ル ペ ン 化 合 物 zerumbone( 1) お よ び zerumbone epoxide( 2) を , ビ
ス イ ン ド ー ル 化 合 物 staurosporinone ( 9 ), 6-hydroxystaurosporinone ( 10 ),
arcyriaflavin C( 11) お よ び 5,6-dihydroxyarcyriaflavin A( 12) を , ま た 天 然 資 源
Physalis minima よ り physalin F( 17) お よ び physalin B( 18)を 同 定 し た .こ れ ら
化 合 物 は , 転 写 因 子 GLI2 に 対 す る 阻 害 も 示 し , 転 写 因 子 GLI に よ る 転 写 活 性 を
阻 害 す る こ と が 判 明 し た . ま た , 化 合 物 1, 9, 17 お よ び 18 に つ い て , ヘ ッ ジ ホ
ッ グ シ グ ナ ル 伝 達 経 路 が 制 御 し て い る 遺 伝 子 発 現 へ の 影 響 に つ い て ,GLI1 ま た は
GLI2 を 過 剰 発 現 さ せ た HaCaT 細 胞 に て 調 べ た 結 果 ,そ れ ら タ ン パ ク 発 現( GLI1,
PTCH お よ び BCL2)を 抑 制 し た .ま た ,ヘ ッ ジ ホ ッ グ シ グ ナ ル 伝 達 経 路 が 亢 進 し
て い る す い 臓 癌 細 胞 株 ( PANC1) に 対 し て , 17 お よ び 18 は 低 濃 度 に て 細 胞 毒 性
を 示 し , 比 較 対 照 と し て 用 い た マ ウ ス 間 葉 細 胞 ( C3H10T1/2) に は , PANC1 に お
け る IC 5 0 濃 度 で は 細 胞 毒 性 を 示 さ な か っ た . 17 お よ び 18 は , PANC1 細 胞 に お
い て , Gli1, Gli2 お よ び Ptch の 遺 伝 子 発 現 を 抑 制 し , PTCH の タ ン パ ク 発 現 も 抑
制した.
83
第六章 変形菌 Lycogala epidendrum からのビスインドール化合物
変 形 菌 Lycogala epidendrum か ら の ビ ス イ ン ド ー ル 化 合 物
第六章
変 形 菌 Lycogala epidendrum は ,マ メ ホ コ
リ 属 ( Genus Lycogala) に 属 し , 和 名 を マ
メ ホ コ リ と 言 う .子 実 体 は ,直 径 3~ 15 mm
の球形をしており,殻は暗褐色,胞子は肌
色をしている.
こ れ ま で Lycogala epidendrum の 成 分 に
関 す る 研 究 に お い て , bisindoles [7 1 ] ,
triglycerides [7 2 ]
polyacetylene
acylglycerols [7 3 ] , fatty
,
Fig. 6-1. Fruit body of L. epidendrum
acids [7 4 ] お よ び
polypropinate lactones [ 7 5 ] な ど L. epidendrum 特 有 の 構 造 を 有 す る 化 合 物 が 単 離 さ れ
ている.
Staurosporin は ,放 線 菌 よ り 単 離 さ れ た 化 合 物 で ,topoisomerase I 阻 害 活 性 ,PKC
( protein kinase C) お よ び CDK( cyclin dependent kinase) な ど の キ ナ ー ゼ 阻 害 活
性 を 有 し [7 6 ] ,L. epidendrum に は こ れ と 同 じ 基 本 骨 格 を 有 す る ビ ス イ ン ド ー ル 化 合
物 が 含 ま れ て い る こ と よ り , そ の 興 味 は 大 き い . 本 章 で は , 変 形 菌 Lycogala
epidendrum( マ メ ホ コ リ ) の ビ ス イ ン ド ー ル ア ル カ ロ イ ド 化 合 物 の 単 離 , 構 造 解
析,細胞毒性およびキナーゼ阻害活性について述べる.
H
N
MeOOC
H
N
O
COOMe
O
OH
HO
N
H
N
H
O
N
H
lycogarubin C
O
O
N
H
O
O
O
O
O
O
lycogalinoside A
O
HO
O
OH
O
H
N
O
O
lycogaride D
OH
O
OH
arcyriaflavin A
O
O
N
OH
O
N
H
H3CO
HOOC
NHCH3
staurosporine
hydroxy-polyenoic branched fatty acid
Fig. 6-2. Chemical structures from a myxomycete Lycogala epidendrum
84
OH
第六章 変形菌 Lycogala epidendrum からのビスインドール化合物
第一節
Lycogala epidendrum か ら の ビ ス イ ン ド ー ル 化 合 物 の 単 離
変 形 菌 Lycogala epidendrum( マ メ ホ コ リ ) の 野 外 採 取 子 実 体 177.6 g を 90%メ
タ ノ ー ル お よ び 90%ア セ ト ン で 室 温 に て 抽 出 し た . 得 ら れ た 抽 出 物 ( 46.4 g) を
酢 酸 エ チ ル , n-ブ タ ノ ー ル と 水 で 順 次 分 配 し , 酢 酸 エ チ ル 抽 出 物 ( 24.8 g), n-ブ
タ ノ ー ル 抽 出 物 ( 5.5 g) お よ び 水 抽 出 物 ( 11.4 g) を 得 た .
酢 酸 エ チ ル 抽 出 物 に つ い て ,へ キ サ ン /ク ロ ロ ホ ル ム 系 グ ラ ジ エ ン ト 溶 媒 お よ び
ク ロ ロ ホ ル ム /メ タ ノ ー ル 系 グ ラ ジ エ ン ト 溶 媒 を 用 い た シ リ カ ゲ ル カ ラ ム ク ロ マ
ト グ ラ フ ィ ー で 分 離 し た 結 果 , 12 の 画 分 ( Frs. 1A~ 1L)を 得 た . Fast Red B 試 薬
に よ る TLC 分 析 に よ り , Frs. 1F~ 1L の 画 分 を 陽 性 と 判 断 し , ビ ス イ ン ド ー ル ア
ル カ ロ イ ド 化 合 物 の 単 離 を 目 指 し た ( Fig. 6-3a).
Fr. 1F( 14.3 g)に つ い て ,へ キ サ ン /ク ロ ロ ホ ル ム 系 グ ラ ジ エ ン ト 溶 媒 お よ び ク
ロ ロ ホ ル ム /メ タ ノ ー ル 系 グ ラ ジ エ ン ト 溶 媒 を 用 い た シ リ カ ゲ ル カ ラ ム ク ロ マ ト
グ ラ フ ィ ー で 分 離 し た 後 , ク ロ ロ ホ ル ム / メ タ ノ ー ル 系 溶 媒 を 用 い た Sephadex
LH-20 カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー に て 分 離 ・ 精 製 を 行 っ た 結 果 , 化 合 物 13( 83.0
mg) を 得 た .
Fr. 1H( 650 mg) に 50%メ タ ノ ー ル を 加 え た と こ ろ , 可 溶 部 と 不 溶 部 に 分 離 し
た . 可 溶 部 ) に つ い て , 水 /メ タ ノ ー ル 系 溶 媒 を 用 い た ODS HPLC に よ る 分 離 ・
精 製 に よ り , 化 合 物 14( 200.6 mg) お よ び 21( 7.5 mg) を 得 た .
Fr. 1I( 2.1 g) に つ い て , 水 /メ タ ノ ー ル 系 グ ラ ジ エ ン ト 溶 媒 を 用 い た ODS カ ラ
ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー に て 分 離 を 行 っ た 結 果 , 11 の 画 分 ( Frs. 6A~ 6K) を 得 た .
Fr. 6E( 460 mg) を 水 /メ タ ノ ー ル 系 溶 媒 を 用 い た ODS HPLC に よ り 分 離 ・ 精 製 を
行 っ た 結 果 , 化 合 物 10( 6.0 mg) を 得 た . ま た , Fr. 6G( 280 mg) は , TLC 分 析
に よ り 単 一 で あ り , 化 合 物 20( 280 mg) と し た . さ ら に , Fr. 6H( 90 mg) を 水 /
メ タ ノ ー ル 系 溶 媒 に よ る 分 離 ・ 精 製 に よ り , 化 合 物 9( 2.1 mg) を 得 た .
Fr. 1J( 3.2 g) に つ い て , 水 /メ タ ノ ー ル 系 グ ラ ジ エ ン ト 溶 媒 を 用 い た ODS カ ラ
ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー に よ り 分 離 を 行 っ た 結 果 , 9 つ の 画 分 ( Frs. 11A~ 11I) を
得 た . Fr. 11B( 286 mg) を , ODS HPLC に よ り 分 離 ・ 精 製 を 行 っ た 結 果 , 化 合
物 16( 2.1 mg)を 得 た .Fr. 11D( 493 mg)は TLC 分 析 に よ り 単 一 ス ポ ッ ト で あ っ
た た め , 化 合 物 15( 493 mg) と し た . Fr. 11H( 195 mg) を 水 /メ タ ノ ー ル を 用 い
た ODS HPLC に よ り 分 離 ・ 精 製 を 行 っ た 結 果 , 化 合 物 10( 2.6 mg), 12( 5.6 mg)
お よ び 22( 0.45 mg) を 得 た ( Fig. 6-3b).
85
第六章 変形菌 Lycogala epidendrum からのビスインドール化合物
CHCl3/MeOH=85/15
M E B W
Fig. 6-3a. TLC analysis of extracts from L. epidendru.
M, MeOH ext.; E, EtOAc ext.; B, BuOH ext.; W, H 2 O ext.
TLC, Silica gel; solvent, CHCl 3 /MeOH 85/15, detection, Fast Red B
Fruit bodies of Lycogala epidendrum (177.6 g)
extracted with 90% MeOH ´3
extracted with 90% acetone ´1
MeOH ext. (46.4 g)
partitioned with EtOAc and H2O
EtOAc ext. (24.8 g)
silica gel C.C. (Hex/CHCl3→CHCl3/MeOH)
ODS open C.C. (H2O/MeOH)
sephadex LH-20 C.C. (CHCl3/MeOH)
ODS HPLC (H2O/MeOH)
10* (8.6 mg)
20 (280 mg)
12* (5.6 mg)
9 (2.1 mg)
14 (200.6 mg) 15 (493 mg)
21 (7.5 mg)
22 (0.45 mg)
13 (83.0 mg)
16 (2.1 mg)
H2O lay.
partitioned with n-BuOH and
H2O
n-BuOH ext.
H2O ext.
(5.5 g)
(11.4 g )
red* : new compounds.
Fig. 6-3b. Isolation of compounds from a myxomycete Lycogala epidendrum
86
第六章 変形菌 Lycogala epidendrum からのビスインドール化合物
第二節
新規ビスインドール化合物の構造決定
化 合 物 10 は ,橙 色 非 結 晶 固 体 と し て 得 ら れ ,高 速 原 子 衝 撃( FAB)法 の 質 量 分
析 に よ り ,m/z 327 [M + ]の イ オ ン ピ ー ク を 観 測 し ,高 分 解 能 FAB MS( HR-FABMS)
に よ り , m/z 327.0981( M + , Δ –2.7 mmu) か ら 分 子 式 C 2 0 H 1 3 O 2 N 3 と 決 定 し た .
赤 外 線( IR)吸 収 ス ペ ク ト ル に お い て ,3282 cm -1 に ヒ ド ロ キ シ 基 お よ び 1646 と
1583 cm -1 に 芳 香 環 に 基 づ く 吸 収 が 観 測 さ れ , ま た 342, 294 お よ び 226 nm に 紫
外 線( UV)吸 収 を 示 し た こ と に よ り ,共 役 系 が 存 在 す る 化 合 物 で あ る と 推 測 し た .
重 水 素 化 ア セ ト ン 溶 媒 ( acetone-d 6 ) 中 に お け る 水 素 核 磁 気 共 鳴 ( 1 H nuclear
magnetic resonace : 1 H NMR)に お い て ,δ H 10.76 に 2 つ の NH 由 来 の シ グ ナ ル が ,
δ H 6.8 か ら δ H 8.0 付 近 に 7 つ の 二 重 結 合 も し く は 芳 香 環 由 来 の シ グ ナ ル が ,δ H 5.02
に 2H の sp 3 メ チ レ ン 水 素 が 観 測 さ れ た .ま た ,炭 素 核 磁 気 共 鳴( 1 3 C nuclear magnetic
resonace :
13
C NMR)に お い て ,δ C 173.6 に カ ル ボ ニ ル 由 来 の シ グ ナ ル が ,δ C 109.9
か ら δ C 157.3 に 二 重 結 合 も し く は 芳 香 環 由 来 の シ グ ナ ル が , δ C 46.2 に sp 3 メ チ レ
ン炭素のシグナルが観測された.
1
H および
13
C NMR の 解 析 に よ り , 化 合 物 10 は ,staurosporinone( 9)と よ く 似
たスペクトルデータを示し,質量分析の結果より,9 より酸素原子が一つ多いこ
と が 判 明 し た た め , 化 合 物 10 は staurosporinone( 9) に ヒ ド ロ キ シ 基 が 付 加 し た
構造であると推測した.
水 素 - 水 素 間 ( 1 H- 1 H COSY) に よ り , H-4( δ H 9.17) お よ び H-5( δ H 6.80) の
2 つ の 芳 香 環 水 素 の つ な が り が ,ま た ,H-4'( δ H 8.00),H-5'( δ H 7.27),H-6'( δ H 7.40),
お よ び H-7'( δ H 7.64)の 4 つ の 芳 香 族 水 素 の つ な が り が 明 ら か と な っ た .H-5( δ H
6.80) は , H-7( δ H 7.64) と meta-coupling( J=1.8 Hz) を し て い る こ と か ら , ヒ
ド ロ キ シ 基 の 結 合 は , C-6( δ C 157.3) で あ る と 推 測 し た .
さらに,遠隔の水素-炭素間のスピン結合を観測する異種間多重結合相関
( heteronuclear multiple bond coherence : HMBC) を 測 定 し 解 析 を 行 っ た 結 果 ,
H-4/C-3, H-4/C-6, H-4/C-7a, H-5/C-3a, H-5/C-3a, H-7/C-3a, and H-7/C-5 に 相 関 が 観
測 さ れ た . ま た , 空 間 を 通 じ て の 核 オ ー バ ー ハ ウ ザ ー 効 果 ( nuclear overhauser
effect : NOE)を 測 定 し た と こ ろ ,C-9'の メ チ レ ン 水 素( H 2 -9', δ H 5.02, 2H, s)か ら ,
H-4'( δ H 8.00) と H-5'( δ H 7.27) に 相 関 が 観 測 さ れ た こ と か ら , イ ン ド ー ル 部 分
に 結 合 し た ヒ ド ロ キ シ 基 は ,sp 3 メ チ レ ン 基 が 存 在 す る 側 で は な く ,カ ル ボ ニ ル 基
が 存 在 す る 側 で あ る こ と が 判 明 し た . カ ル ボ ニ ル 基 ( C-9) が 存 在 す る 側 の H-4
は , メ チ レ ン 基 側 の H-4'よ り 低 磁 場 に 観 測 さ れ た .
従 っ て , 化 合 物 10 の 構 造 を 6-hydroxystaurosporinone と 決 定 し た . 本 化 合 物 は
文 献 未 掲 載 の 新 規 化 合 物 で あ る ( Figs. 6-4, 6-5, Table 6-1).
87
第六章 変形菌 Lycogala epidendrum からのビスインドール化合物
10
H
N
dH 5.02
dC 46.2
9'
NOESY
dH 8.00
4'
dH 7.27
5'
8'
dC 173.6 d 9.17
H
4
8
5
dH 6.80
3
3a' 3'
6'
dH 7.40
7'
dH 7.64
7a'
O
9
2'
N1'
H
d 10.76
2
H
dC 157.3
3a
6
7a
N1
H
d 11.08
OH
7
dH 7.02
H
Fig. 6-4. Structure of 10 and arrows show selected HMBC correlations
88
第六章 変形菌 Lycogala epidendrum からのビスインドール化合物
Fig. 6-5. 1 H and
13
C NMR spectra of 10 in acetone-d 6
89
第六章 変形菌 Lycogala epidendrum からのビスインドール化合物
化 合 物 12 は ,黄 色 非 結 晶 固 体 と し て 得 ら れ ,FABMS ス ペ ク ト ル に お い て ,m/z
357 に [M + ]の イ オ ン ピ ー ク が 観 測 さ れ ,高 分 解 能 FABMS( m/z 357.0762,M + , Δ +1.2
mmu) の 測 定 に よ り , 分 子 式 を C 2 0 H 11 O 4 N 3 と 決 定 し た .
acetone-d 6 中 に お け る
1
H および
13
C NMR の 解 析 に お い て , 化 合 物 12 は ,
arcyriaflavin A( 22) も し く は B( 20)と 類 似 し た ス ペ ク ト ル を 示 し た の で ,同 じ
ビ ス イ ン ド ー ル 骨 格 を 有 す る と 推 測 し た . さ ら に , 質 量 分 析 に よ り , 化 合 物 12
は ,arcyriaflavin A( 22)よ り 32 大 き い( m/z 357 [M + ] for 12 and m/z 325 [M] + for 22)
の で , 12 は 22 に 二 つ の 酸 素 原 子 が 結 合 し た 構 造 で あ る と 推 測 し た . ま た , IR 吸
収 ス ペ ク ト ル に お い て ,3310 cm -1 に ヒ ド ロ キ シ 基 に 由 来 す る 吸 収 を 示 し た こ と か
ら も , 12 に は ヒ ド ロ キ シ 基 が 存 在 す る こ と を 推 定 し た .
1
H NMR お よ び 1 H- 1 H COSY 測 定 に よ る 解 析 に よ り ,4 つ の つ な が り を 持 っ た 芳
香 族 水 素 ( δ H 9.10 (H-4'), 7.31 (H-5'), 7.48 (H-6'), and 7.64 (H-7')) と , そ れ ぞ れ 独
立 し た 芳 香 族 水 素 ( δ H 8.56 (1H, s) and 7.12 (1H, s)) を 帰 属 し た . こ れ ら 2 つ の 独
立 し た 水 素 は ,HMBC 相 関( H-4/C-3, H-4/C-5, H-4/C-6, H-4/C-7a, H-7/C-3a, H-7/C-5,
and H-7/C-7a) に よ り , C-5 お よ び C-6 に 隣 合 せ で 結 合 し て い る こ と が 判 明 し た .
この 2 つの炭素の
13
C NMR の 化 学 シ フ ト 値 は ,δ C 141.4 と 136.9 を 示 し ,こ れ は ,
5,6-dihydroxyindole の 5 お よ び 6 位 の 化 学 シ フ ト 値 ( δ C 142.4 と 140.3) と 類 似 し
ていた.
従 っ て , 化 合 物 12 の 構 造 を , 5,6-dihydroxyarcyriaflavin A と 決 定 し た . 本 化 合
物 は 文 献 未 掲 載 の 新 規 化 合 物 で あ る ( Figs. 6-6, 6-7, Table 6-1).
10
O
5'
dH 7.31
6'
dH 7.48
9'
Hd
N
H
9.62
O
9
dC 171.6
dH 9.10 dC 171.8
4'
8'
8
3a
3a'
OH
dC 141.4
dC 136.9
3
3'
7a'
7'
dH 7.64
dH 8.56
4
5
2'
N1'
H
d 10.73
2
H
6
N 1 7a
H
d 10.96
OH
7 dH 7.12
H
Fig. 6-6. Structure of 12 and arrows show selected HMBC correlations
90
第六章 変形菌 Lycogala epidendrum からのビスインドール化合物
Fig. 6-7. 1 H and
13
C NMR spectra of 12 in acetone-d 6
91
第六章 変形菌 Lycogala epidendrum からのビスインドール化合物
Table 6-1. 1 H and
position
2
3
3a
4
5
6
7
7a
8
9
2'
3'
3a'
4'
5'
6'
7'
7a'
8'
9'
1-NH
10-NH
1'-NH
a,b,c
13
C NMR Data for compounds 10 and 12 in acetone-d 6
10
δ H (J, Hz)
9.17 (1H, d, 8.4)
6.80 (1H, dd, 8.4, 1.8)
7.02 (1H, d, 1.8)
8.00
7.27
7.40
7.64
(1H,
(1H,
(1H,
(1H,
d, 7.8)
t, 7.8)
t, 7.8)
d, 7.8)
5.02 (2H,s)
11.08 (1H, s)
12
δC
126.1
118.2
117.8
127.5
109.9
157.3
97.1
142.3
119.4
173.6
129.2
133.6
124.2
121.7
120.7
125.5
112.7
140.7
114.8
46.2
δ H (J, Hz)
8.56 (1H, s)
7.12 (1H, s)
9.10
7.31
7.48
7.64
(1H,
(1H,
(1H,
(1H,
d, 8.0)
dd, 7.5, 8.0)
dd, 7.5, 8.0)
d, 8.0)
10.96 (1H, s)
9.62 (1H, s)
10.73 (1H, s)
10.76 (1H, s)
Signals may be reversed.
92
δC
129.8 a
118.2
115.5
110.3
141.4
136.9
98.0
147.9
120.2 b
171.6 c
130.0 a
116.4
123.3
125.6
120.9
127.3
112.1
141.5
120.5 b
171.8 c
第六章 変形菌 Lycogala epidendrum からのビスインドール化合物
そ の 他 化 合 物 9, 13, 14, 15, 16, 20, 21 お よ び 22 は , 文 献 値 と の 比 較 に よ り ,
staurosprorinone (9) [7 7 ] , lycogarubin C (13) [4 4 ] , lycogarubin B (14) [4 4 ] , lycogaric acid A
(15) [4 5 ] , lycogarubin A (16) [4 4 ] , arcyriaflavin B (20) [3 0 ] , arcyriarubin A (21) [4 5 ] お よ び
arcyriaflavin A (22) [4 5 ] と 同 定 し た ( Fig. 6-8).
H
N
O
N
H
O
N
H
N
H
staurosporinone (9)
3
R
2
R OOC
H
N
O
N
H
arcyriarubin A (21)
H
N
O
3
COOR
R
N
H
H
N
O
1
R
N
H
lycogarubin B (14) : R1=OH, R2=H, R3=Me
lycogarubin C (13) : R1=R2=H, R3=Me
lycogaric acid (15) : R1=R2=R3=H
lycogarubin A (16) : R1=R2=OH, R3=Me
N
H
N
H
arcyriaflavin B (20) : R=OH
arcyriaflavin A (22) : R=H
Fig. 6-8. Chemical structures of known compounds 9, 11, 13-22 from L. epidendrum
93
第六章 変形菌 Lycogala epidendrum からのビスインドール化合物
第三節
ビスインドール類の細胞毒性評価
今 回 ,L. epidendrum よ り 単 離 れ さ れ た ビ ス イ ン ド ー ル ア ル カ ロ イ ド 化 合 物 に つ
い て , ヒ ト 子 宮 頸 癌 細 胞 ( HeLa 細 胞 ), ヒ ト 白 血 病 T 細 胞 ( Jurkat 細 胞 ) お よ び
ヒ ト 舌 癌 細 胞( KB/VJ300 細 胞 )に 対 す る 細 胞 毒 性 を 評 価 し た .新 規 ビ ス イ ン ド ー
ル 化 合 物 10 お よ び 12 を HeLa 細 胞 に 作 用 さ せ た と こ ろ , IC 5 0 ( 50% Inhibition
Concentration) 5.4 μg/mL お よ び 2.1 μg/mL に て 細 胞 毒 性 を 示 し た . ま た , Jurkat
細 胞 に 対 し て も 化 合 物 10 お よ び 12 は , IC 5 0 1.4 μg/mL お よ び 0.84 μg/mL で 細 胞
毒 性 を 示 し た . 比 較 と し て , 化 合 物 13, 14 お よ び 21 の 細 胞 毒 性 評 価 も 行 っ た .
結 果 を Table 6-2 に 示 す .ビ ス イ ン ド ー ル 化 合 物 の 細 胞 毒 性 の 発 現 に は ,2 お よ び
2'位 の 結 合 が 必 須 で あ る こ と が 示 唆 さ れ た .
ま た , 10 お よ び 12 は vincristine 耐 性 KB/VJ300 細 胞 に 対 し て も IC 5 0 7.6 μg/mL
お よ び 25 μg/mL で 弱 い な が ら も 細 胞 毒 性 を 示 し た が , 比 較 化 合 物 13, 14 お よ び
21 は 25 μg/mL で 細 胞 毒 性 を 示 さ な か っ た ( Table 6-2).
Table6-2. Cytotoxicity against HeLa, Jurkat and KB/VJ300 cells (IC 5 0 values, mg/mL)
Compounds
HeLa
Jurkat
10
5.4
1.3
12
2.1
0.84
14
21
13
48
n.d.
24
18
KB/VJ300
7.6
25
>25
6.3
15
>25
>25
94
第六章 変形菌 Lycogala epidendrum からのビスインドール化合物
第四節
ビスインドール類のキナーゼ阻害の評価
ビ ス イ ン ド ー ル 化 合 物 に は ,種 々 の キ ナ ー ゼ 活 性 を 阻 害 す る 報 告 が さ れ て い る .
今 回 L. epidendrum よ り 得 ら れ た 化 合 物 10,12,13,14 お よ び 21 に つ い て ,eEF2K
( eukaryotic elongation factor-2 kinase),PKC( protein kinase C),PTK( protein tyrosin
kinase ), PKA ( protein kinase A ), VEGFR-1 ( vascular endothelial growth factor
receptor-1 kinase)お よ び EGFR( epidermal growth-factor receptor kinase)に 対 す る
キ ナ ー ゼ 阻 害 活 性 試 験 を 行 っ た [7 8 ] .
化 合 物 10 は ,1 μg/mL の 濃 度 に て ,PTK の リ ン 酸 化 を 阻 害 し ,ま た ,10 μg/mL
に て ,PKC,PKA,eEF2K お よ び VEGFR-1 の リ ン 酸 化 は 阻 害 し た が ,EGFR の リ
ン 酸 化 は 阻 害 し な か っ た . 化 合 物 12 お よ び 21 は , 10 μg/mL の 濃 度 に て PTK お
よ び PKC の 活 性 を 阻 害 し た .ま た ,そ の 他 の キ ナ ー ゼ 活 性 に 対 す る 阻 害 を ,Table
6-3 に 示 す .こ れ ら 化 合 物 に お い て ,化 合 物 10 が よ り 強 い キ ナ ー ゼ 阻 害 活 性 を 示
し た こ と か ら , γ-lactam が こ れ ら 活 性 発 現 を 増 強 し , maleimide を 持 つ 化 合 物 12
お よ び 21 に 次 い で キ ナ ー ゼ 阻 害 活 性 が 見 ら れ ,2,5-dimethoxycarbonylpyrrole を 持
つ 化 合 物 13 お よ び 14 に は キ ナ ー ゼ 阻 害 活 性 を 示 さ な い こ と か ら , γ-lactam>
maleimide> 2,5-dimethoxycarbonylpyrrole の 順 で キ ナ ー ゼ 阻 害 活 性 に 影 響 を 与 え る
−c-AMP
Control
+EGTA
こ と が 示 唆 さ れ た ( Fig. 6-9, Table 6-3).
14
21
13
10 1 0.1 10 1 0.1 10 1 0.1
10
12
10 1 0.1 10 1 0.1 (µg/mL)
eEF2K
PKC
PTK
PKA
alkali
PTK
Fig. 6-9. Protein kinase inhibitory assay
95
第六章 変形菌 Lycogala epidendrum からのビスインドール化合物
Table 6-3. Inhibition specificity of compounds 10, 12, 13, 14 and 21 a
compounds
10
12
14
21
13
a
μg/mL
eEF2K
PKC
PTK
PKA
EGFR
Flt-1
10
+
+
++
+
-
+
1
-
-
+
-
-
-
0.1
-
-
-
-
-
-
10
-
+
+
-
-
+
1
-
-
-
-
-
-
0.1
-
-
-
-
-
10
-
-
-
-
-
-
1
-
-
-
-
-
-
0.1
-
-
-
-
-
10
-
+
+
+
-
-
1
-
-
-
-
-
-
0.1
-
-
-
-
-
10
-
-
-
-
-
-
1
-
-
-
-
-
-
0.1
-
-
-
-
-
The indications “++”, “+”, and “-“ mean >80%, 50-80%, and <50% kinase inhibition in
each kinase assay, respectively.
96
第六章 変形菌 Lycogala epidendrum からのビスインドール化合物
第五節
小括
変 形 菌 Lycogala epidendrum( マ メ ホ コ リ ) の 野 外 採 取 子 実 体 よ り , 2 種 の 新 規
ビ ス イ ン ド ー ル ア ル カ ロ イ ド 化 合 物 6-hydroxystaurosporinone ( 10 ) お よ び
5,6-dihydroxyarcyriaflavin A( 12) を 単 離 し た . ま た , 8 種 の 既 知 ビ ス イ ン ド ー ル
化合物も単離した.
得 ら れ た ビ ス イ ン ド ー ル 化 合 物 に つ い て , HeLa 細 胞 , Jurkat 細 胞 お よ び
KB/VJ300 細 胞 の 癌 細 胞 に 対 す る 細 胞 毒 性 を 調 べ た と こ ろ , 化 合 物 10 お よ び 12
に 細 胞 毒 性 を 認 め た .ま た ,化 合 物 10 は ,種 々 の キ ナ ー ゼ 活 性 を 阻 害 す る こ と が
分 か り , 特 に , 1 mg/mL の 濃 度 に て PTK( Protein tyrosin kinase) を 阻 害 す る こ と
が 判 明 し た . ま た 化 合 物 10 お よ び 12 は , ヘ ッ ジ ホ ッ グ シ グ ナ ル 伝 達 経 路 に お け
る GLI の 転 写 活 性 も 阻 害 す る こ と を 第 三 章 お よ び 第 五 章 で 述 べ た .
97
第七章 変形菌 Fuligo aurea の成分
第七章
変 形 菌 Fuligo aurea の 成 分
変 形 菌 Fuligo aurea は , ス ス ホ コ リ
属 ( Genus Fuligo ) ム シ ホ コ リ 亜 属
( Subgenus Erionema)に 属 し ,和 名 を
ムシホコリと言う.子実体は,擬着合
子嚢体型であり,胞子は黒色で,直径
7~ 8 mm で あ る .
こ れ ま で Fuligo aurea に 関 す る 成 分
研 究 の 報 告 は な い が , 同 じ 属 Fuligo
candida か ら は , Fig. 7-2 に 示 す 化 合 物
Fig. 7-1. Fruit bodies of F. aurea
が 単 離 さ れ て い る [ 2 8 ] .本 章 で は ,変 形
菌 Fuligo aurea( ム シ ホ コ リ ) の 成 分 に つ い て 述 べ る .
O
O
N
N
H
NH2
N
O
H
N
N
H
O
N
H
cycloanthranilproline
O
CO2H
Fig. 7-2. Chemical structures from a myxomycete Fuligo candida
第一節
Fuligo aurea か ら の 成 分 の 単 離
2005 年 高 知 県 に て 採 取 さ れ た Fuligo aurea の 野 外 採 取 子 実 体 47.7 g を 90%メ タ
ノ ー ル ,90%ア セ ト ン お よ び 水 で 順 次 抽 出 し た .得 ら れ た 抽 出 物( 11.0 g)を ヘ キ
サ ン ,酢 酸 エ チ ル ,n-ブ タ ノ ー ル と 水 で 順 次 分 配 し ,へ キ サ ン 抽 出 物( 2.0 g),酢
酸 エ チ ル 抽 出 物 ( 0.3 g), n-ブ タ ノ ー ル 抽 出 物 ( 0.5 g) お よ び 水 抽 出 物 ( 8.2 g)
を得た.
へ キ サ ン お よ び 酢 酸 エ チ ル 抽 出 物 は ,TLC に よ る 分 析 に よ り 同 じ 成 分 が 含 ま れ
て い る こ と が 判 明 し た た め ,こ れ ら を 合 わ せ て ,以 降 の 分 離 に 用 い た .へ キ サ ン /
酢 酸 エ チ ル 混 合 抽 出 物( 2.3 g)に つ い て ,へ キ サ ン /ク ロ ロ ホ ル ム 系 グ ラ ジ エ ン ト
溶 媒 お よ び ク ロ ロ ホ ル ム /メ タ ノ ー ル 系 グ ラ ジ エ ン ト 溶 媒 を 用 い た シ リ カ ゲ ル カ
ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー で 分 離 し た 結 果 , 15 の 画 分 ( Frs. 1A~ 1O) を 得 た .
98
第七章 変形菌 Fuligo aurea の成分
得 ら れ た 画 分 の TLC 分 析 よ り ,Fr. 1D に 10%硫 酸 指 示 薬 に て ,特 徴 的 な ス ポ ッ
ト が 見 ら れ た た め ( Fig. 7-3), Fr. 1D( 19.6 mg) に つ い て , メ タ ノ ー ル 系 溶 媒 を
用 い た Sephadex LH-20 カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー に て 分 離 ・ 精 製 を 行 っ た 結 果 ,
化 合 物 25( 1.3 mg) を 得 た . そ の 他 画 分 ( Frs. 1A~ 1C お よ び Frs. 1E~ 1O) に つ
い て は ,脂 肪 酸 な ど の 炭 化 水 素 化 合 物 と 判 断 し ,以 降 の 分 離 は 行 っ て い な い( Fig.
7-4).
Plate : silica gel, Spray : 10% H2SO4D
CHCl3/MeOH=10:1
CHCl3
25
A B C D E F G H
G H I J K K K K
Fig. 7-3. TLC analysis of Frs. 1A–1K
TLC, Silica gel; solvent, Left: CHCl 3 , Right: /MeOH 10/1, detection, 10%H 2 SO 4 Δ
ブ タ ノ ー ル 抽 出 物( 0.5 g)に つ い て ,水 /メ タ ノ ー ル 系 グ ラ ジ エ ン ト 溶 媒 を 用 い
た ODS カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー に て 分 離 を 行 っ た 結 果 ,7 つ の 画 分( Frs. 3A~
3G) を 得 た . Fr. 3D( 51 mg) を , 水 /メ タ ノ ー ル 系 溶 媒 を 用 い た ODS HPLC に よ
り 分 離・精 製 を 行 っ た 結 果 ,adenosine( 2.3 mg),化 合 物 23( 16.3 mg)お よ び 24a
( 12.0 mg) を 得 た . ま た , Fr. 7E( 108 mg) を , 水 /メ タ ノ ー ル 系 溶 媒 を 用 い た
C30 HPLC に よ る 分 離・精 製 を 行 っ た 結 果 ,化 合 物 24b( 30.2 mg)を 得 た( Fig. 7-4).
99
第七章 変形菌 Fuligo aurea の成分
Fruit bodies of Fuligo aurea (47.7 g)
extracted with 90% MeOH ´6
extracted with 90% acetone ´1
MeOH ext.
(11.0 g)
partitioned with EtOAc and H2O
EtOAc ext.
H2O lay.
(2.3 g)
partitioned with n-BuOH and H2O
silica gel C.C. (Hex/CHCl3→CHCl3/MeOH)
sephadex LH-20 C.C. (MeOH)
25 (1.3 mg)
n-BuOH ext.
H2O ext.
(0.5 g)
(8.2 g)
ODS C.C. (H2O /MeOH)
C-30 HPLC (H2O/MeOH)
23* (19.8 mg)
24a* (15.6 mg)
24b* (30.2 mg)
Fig. 7-4. Isolation of compounds from Fuligo aurea
100
red* : new compounds.
24a and 24b are the same structure.
第七章 変形菌 Fuligo aurea の成分
第二節
新規トリプトファン誘導体化合物の構造決定
化 合 物 23 は , 非 結 晶 固 体 と し て 得 ら れ , 比 旋 光 度 [α] 2D3 +97( c 0.8, MeOH) を
示 し た .エ レ ク ト ロ ス プ レ ー イ オ ン 化 法( ESI)の 質 量 分 析 に よ り ,m/z 350 [M+H] +
の イ オ ン ピ ー ク を 示 し ,高 分 解 能 ESI MS ス ペ ク ト ル( m/z 350.1505, [M+H] + , Δ +0.2
mmu) に よ り 分 子 式 を C 2 0 H 1 9 O 3 N 3 と 決 定 し た .
IR 吸 収 ス ペ ク ト ル に お い て , 3337 cm -1 に ア ミ ノ 基 , 1645 cm - 1 に ア ミ ド 基 に 基
づ く 吸 収 が 観 測 さ れ , ま た , 325, 291 お よ び 222 nm に UV 吸 収 を 示 し た こ と に
より,共役系を持つ化合物であると推測した.
重 水 素 化 メ タ ノ ー ル 溶 媒 ( CD 3 OD) 中 に お け る 1 H NMR に お い て , 7 つ の 二 重
結 合 も し く は 芳 香 環 由 来 の シ グ ナ ル( δ H 7.57, 7.29, 7.23´2, 7.04, 7.00, 6.94, 6.49´2,
6.47, and 5.67),一 つ の sp 3 メ チ ン 水 素 の シ グ ナ ル( δ H 4.68),ま た メ チ レ ン 水 素 の
シ グ ナ ル ( δ H 3.37 と 3.19) が 観 測 さ れ た . ま た , 1 3 C NMR に お い て , 2 つ の カ ル
ボ ニ ル 炭 素 の シ グ ナ ル ( δ C 178.7 と 169.6), 16 の 二 重 結 合 も し く は 芳 香 環 由 来 の
シ グ ナ ル ( δ C 111 – 149), お よ び sp 3 メ チ ン 炭 素 の シ グ ナ ル ( δ C 56.9) と sp 3 メ チ
レ ン 炭 素 の シ グ ナ ル ( δ C 29.1) が 1 つ ず つ 観 測 さ れ た .
さ ら に 平 面 構 造 を 導 く た め , 1 H- 1 H COSY ( H-5/H-6, H-6/H-7 and H-7/H-8;
H 2 -10/H-11; H-2'/H-3'; H-5' (9')/H-6' (8')) お よ び HMBC の 測 定 に よ る 解 析 に よ り ,
ト リ プ ト フ ァ ン の 存 在 ( H-2/C-4, C-9 and C-10; H-5/C-3, C-7 and C-9; H-6/C-4 and
C-8; H-7/C-5 and C-9; H-8/C-4 and C-6; H 2 -10/C-2, C-4 and C-12; H-11/C-3) と パ ラ
位 に 置 換 基 が 結 合 し た cinnamic acid の 存 在( H-2'/C-3' and C-4'; H-3'/C-1', C-2', C-5'
(9'); H-5' (9')/C-3', C-7', and C-9' (5'); H-6' (8')/C-4' and C-8' (6'))が 明 ら か と な っ た .
パ ラ 位 に 置 換 基 の 結 合 し た cinnamoyl 基 は ,HMBC 測 定 に よ る 解 析 に よ り ,δ H 4.68
( H-11)の メ チ ン 水 素 か ら ,δ C 169.6( C-1')の カ ル ボ ニ ル 炭 素 へ の 相 関 が 観 測 さ
れ た こ と か ら , ト リ プ ト フ ァ ン の C-11 位 の ア ミ ノ 基 に ア ミ ド 結 合 を 介 し て
cinnamoyl 基 が 結 合 し て い る と 決 定 し た ( Fig. 7-5).
cinnamoyl 基 に お け る オ レ フ ィ ン 水 素 ( H-2'お よ び H-3') の 配 置 は , 1 H NMR ス
ペクトルにおける化学シフト値および結合定数により決定した.文献による報告
に よ り , 2 つ の オ レ フ ィ ン 水 素 が Z( cis) 配 置 の 場 合 , そ の 結 合 定 数 が 13 Hz 付
近 を 示 し ,E( trans)配 置 の 場 合 は ,15 Hz 付 近 を 示 す .ま た ,そ れ ぞ れ の 配 置 に
よ り , 化 学 シ フ ト 値 が 異 な り , Z 配 置 の 場 合 , δ H ca. 5.6( H-2') お よ び δ H ca. 6.3
( H-3')を 示 し ,E 配 置 の 場 合 は ,δ H ca. 6.5( H-2')お よ び δ H ca. 7.3( H-3')を 示
す [7 9 ] .こ の こ と よ り ,化 合 物 23 の cinnamoyl 基 の 2'お よ び 3'の 配 置 は ,H-2': δ H 5.67
(1H, d, J=13.0 Hz) お よ び H-3': δ H 6.47 (1H, d, J=13.0 Hz) で あ る こ と か ら , Z 配 置
( cis-) で あ る と 決 定 し た ( Fig. 7-7).
101
第七章 変形菌 Fuligo aurea の成分
次 に , cinnamoyl 基 の パ ラ 位 に 結 合 し て い る 置 換 基 に つ い て , CD 3 OD 中 に お け
る C-7'の
13
C NMR の 化 学 シ フ ト が δ C 149.7 で あ る こ と , お よ び HR-ESI MS に よ
る 分 子 式 C 2 0 H 2 0 O 3 N 3 に よ り , C-7'に は , ア ミ ノ 基 ( -NH 2 ) が 結 合 し て い る と 決 定
した.
さ ら に ト リ プ ト フ ァ ン の 11 位 の 立 体 化 学 を 決 定 す る た め に , 化 合 物 23 を 塩 酸
に よ る 加 水 分 解 を 行 っ た 後 ,キ ラ ル TLC に よ る 分 析 を 行 っ た と こ ろ ,L -ト リ プ ト
フ ァ ン ( 11S-configuration) で あ る こ と が 判 明 し た .
従 っ て , 化 合 物 23 を tryptophan cis-4-aminocinnamamide と 決 定 し た . こ れ は 文
献 未 掲 載 の 新 規 化 合 物 で あ る ( Fig. 7-5, Table 7-1).
5
4
6
H
N
10
3
9
8
2
N HO
H
O
1
3'
1'
11
12
7
2'
O
4'
5'
9'
6'
8'
7'
NH2
Fig. 7-5. Chemical structure of 23 and arrows show selected HMBC correlations
化 合 物 24a は , 非 結 晶 固 体 と し て 得 ら れ , 比 旋 光 度 [α] 2D3 +49( c 0.7, MeOH) を
示 し , HR-ESI MS ( m/z 350.1506, [M+H] + , Δ +0.3 mmu ) に よ り そ の 分 子 式 を
C 2 0 H 1 9 O 3 N 3 と 決 定 し た .こ れ は 化 合 物 23 と 同 じ( m/z 350.1505, [M+H] + , Δ +0.2 mmu,
calcd for C 2 0 H 1 9 O 3 N 3 )で あ っ た .ま た ,化 合 物 24a の UV お よ び IR ス ペ ク ト ル は ,
化 合 物 23 の そ れ と 非 常 に 類 似 し て い た .
1
H および
13
C NMR を 化 合 物 23 と 比 較 し た と こ ろ , 化 合 物 24a の 構 造 も
tryptophan 4-aminocinnamamide と 推 定 し た . こ れ は , 1 H- 1 H COSY お よ び HMBC
に よ る 相 関 か ら も 矛 盾 の な い 結 果 で あ る .化 合 物 23 と 24a の 違 い は ,1 H NMR に
お い て , C-2’お よ び C-3’に 結 合 し て い る 二 重 結 合 の 水 素 の 化 学 シ フ ト 値 と そ の 結
合 定 数 で あ る .す な わ ち ,H-2': δ H 6.32( 1H, d, J=15.5 Hz)お よ び H-3': δ H 7.33( 1H,
d, J=15.5 Hz)で あ り ,こ れ ら 化 学 シ フ ト 値 と 結 合 定 数 か ら ,こ れ ら 水 素 が E 配 置
( trans-)で あ る と 決 定 し た .化 合 物 23 と 24a の 違 い は ,4- aminocinnamamide の
102
第七章 変形菌 Fuligo aurea の成分
二 重 結 合 の 配 置 で あ り , こ れ ら は , 1 H NMR の 化 学 シ フ ト 値 お よ び 結 合 定 数 か ら
決 定 し た ( Fig. 7-7).
化 合 物 24a の ト リ プ ト フ ァ ン の 11 位 の 立 体 化 学 の 決 定 も 化 合 物 23 と 同 様 の 手
法 に よ り , L -ト リ プ ト フ ァ ン ( 11S-configuration) と 決 定 し た .
従 っ て 化 合 物 24a を ,tryptophan trans-4-aminocinnamamide と 決 定 し た .こ れ
は 文 献 未 掲 載 の 新 規 化 合 物 で あ る ( Fig. 7-6, Table 7-1).
NH2
H
N
N HO
H
O
O
Fig. 7-6. Chemical structure of 24a
Table 7-1. 1 H and
position
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
1'
2'
3'
4'
5 ', 9 '
6 ', 8 '
7'
13
C NMR Spectral Data for compounds 23 and 24a in methanol-d 4
23
δ H (J, Hz)
7.00 (1H,s )
7.57
6.94
7.04
7.29
(1H,
(1H,
(1H,
(1H,
d, 8.0)
t, 8.0)
t, 8.0)
d, 8.0)
3.19 (1H, dd, 15.0, 6.5)
3.37 (1H, dd, 15.0, 5.0)
4.68 (1H, dd, 6.5, 5.0)
5.67 (1H, d, 13.0)
6.47 (1H, d, 13.0)
7.23 (2H, d, 8.0)
6.49 (2H, d, 8.0)
24a
δC
124.3
111.9
129.4
119.7
119.5
122.0
111.9
137.9
29.1
56.9
178.7
169.6
120.0
138.4
125.8
132.1
115.4
149.7
103
δ H (J, Hz)
7.09 (1H, s)
7.60
6.94
7.03
7.28
(1H,
(1H,
(1H,
(1H,
d, 8.0)
t, 8.0)
t, 8.0)
d, 8.0)
3.24 (1H, dd, 15.0, 6.5)
3.42 (1H, dd, 15.0, 5.0)
4.72 (1H, dd, 6.5, 5.0)
6.32 (1H, d, 15.5)
7.33 (1H, d, 15.5)
7.26 (2H, d, 8.5)
6.63 (2H, d, 8.5)
δC
124.3
112.0
129.4
119.7
119.5
122.0
111.9
137.8
29.2
57.1
178.6
168.7
125.4
142.1
124.3
130.4
115.7
151.3
第七章 変形菌 Fuligo aurea の成分
化 合 物 24b は ,非 結 晶 固 体 と し て 得 ら れ ,比 旋 光 度 [α] 2D3 –2.4( c 0.7, MeOH)を
示 し た .HRESIMS( m/z 350.1514 [M+H] + )よ り そ の 分 子 式 を C 2 0 H 2 0 O 3 N 3 と 決 定 し ,
UV お よ び IR は , 化 合 物 23 お よ び 24a に 類 似 し て い た .
1D お よ び 2D NMR の 解 析 に よ り , 化 合 物 24b は , 化 合 物 24a と 同 じ 構 造
tryptophan trans-4-aminocinnamamide を 推 定 し た .し か し ,ODS HPLC に よ る 保 持
時 間 が 24a は t R 22 min お よ び 24b は t R 40 min と 異 な る た め , 更 な る 検 討 を 行 っ
た ( Fig. 7-7).
H
N
23
HPLC analysis
tR : 15 min.
3’ (dH 6.5,
d,J=13.0)
24a
tR : 22 min.
24b
tR : 40 min.
N HO
H
O
2’
cis
3’
O
2’ (dH 5.6,
NH2
d,J=13.0)
NH2
H
N
3’ (dH 7.3,
2’ (dH 6.3,
d,J=15.5)
d,J=15.5)
N HO
H
O
2’
O
3’
trans
NH2
H
N
3’ (dH 7.3,
2’ (dH 6.3,
d,J=16.0)
d,J=16.0)
N HO
H
O
2’
O
3’
trans
NMR in CD3OD
Fig. 7-7. Comparison of 1 H NMR of 23, 24a and 24b and determination of the
configuration at C2'-C3'
1) ア ミ ド お よ び ア ミ ノ 基 の 水 素 の 有 無 の 確 認
11 位 の NH お よ び 4'位 の NH 2 の 水 素 を 確 認 す る た め ,化 合 物 24a お よ び 24b の
DMSO-d 6 中 に お け る 1 H NMR, COSY お よ び HMBC を 測 定 し た . 11 位 の NH は ,
そ れ ぞ れ δ H 7.26 お よ び δ H 7.65 に 観 測 さ れ ,COSY の 解 析 に よ り 10 位 メ チ レ ン 水
素 と 相 関 が 観 測 さ れ た .ま た HMBC を 測 定 し た と こ ろ ,24a で は δ C 173.5( C-12)
お よ び δ C 165.2( C-1') に , 24b で は 12 位 に HMBC 相 関 が 観 測 さ れ た . 4'位 に 結
合 し て い る NH 2 も , DMSO-d 6 中 で そ れ ぞ れ δ H 5.44( 24a) お よ び δ H 5.48( 24b)
に 観 測 さ れ , HMBC を 測 定 し た と こ ろ , 24a お よ び 24b 共 に C-6'お よ び C-8'に
HMBC 相 関 が 観 測 さ れ た .イ ン ド ー ル 部 分 の NH に つ い て も ,DMSO-d 6 中 に て 両
化 合 物 と も δ H 10.6 に 観 測 さ れ , COSY お よ び HMBC に よ り そ の 存 在 を 確 認 し た
( Fig. 7-8).
104
第七章 変形菌 Fuligo aurea の成分
24a
dH 5.44
H
N
HO
N
H
O
24b
NH2
dH 7.26
O
dH 5.48
H
N
O
HO O
N
H
HRESIMS m/z 350.1506 [M+H]+
calcd for C20H20O3N3 350.1506
dH 10.6
NH2
dH 7.65
dH 10.6
HRESIMS m/z 350.1514 [M+H]+
calcd for C20H20O3N3 350.1506
Fig. 7-8. 1 H NMR in DMSO-d 6 and the HMBC and COSY correlations of NH.
Arrows show HMBC correlations and red bold lines COSY
2) カ ル ボ ン 酸 の 有 無 の 確 認
ト リ プ ト フ ァ ン の カ ル ボ ン 酸 を 確 認 す る た め , 12 位 の カ ル ボ ン 酸 を
TMS-diazomethane を 用 い て メ チ ル エ ス テ ル 化 し た . 24a お よ び 24b の メ チ ル エ ス
テ ル 化 体 の NMR 解 析 に よ り , 両 化 合 物 と も δ H 3.6 の メ ト キ シ 基 よ り δ C 173 に
HMBC 相 関 を 観 測 し た こ と よ り ,カ ル ボ ン 酸 が メ チ ル エ ス テ ル 化 さ れ た 化 合 物 を
確 認 し た .ま た ,そ れ ぞ れ の メ チ ル エ ス テ ル 化 体 を HPLC に よ り 分 析 し た と こ ろ ,
同 じ 保 持 時 間 ( 24a; t R =32 min お よ び 24b; t R =32 min) を 示 し た こ と か ら , 24a お
よ び 24b よ り 生 成 し た カ ル ボ ン 酸 メ チ ル エ ス テ ル は ,同 じ 化 合 物 で あ る こ と が 判
明 し た ( Fig. 7-9).
TMS-diazomethane
r.t., 28 hr
検出器 A-254 nm
FA2-m
060225-FA2-m-30-100
125
メチルエステル化体
125
N dH 3.6
H MeO
100
75
50
50
25
25
0
0
26
28
30
32
min
34
36
38
40
O
24b
r.t., 28 hr
dH 4.8
dC 173
O
検出器 A-254 nm
FA3-m
060225-FA3-m-30-100
250
250
メチルエステル化体
200
200
150
150
mAU
75
TMS-diazomethane
H
N
mAU
mAU
100
NH2
dH 3.2
dH 3.3
HPLC analysis
UV; 254 nm, flow; 0.9 mL/min
solvent; gradient (30% MeOH-100% MeOH / 70 min.)
column; Mightysil (f4.6´250 mm)
mAU
24a
100
100
50
50
0
0
26
28
30
32
min
34
36
38
40
Fig. 7-9. NMR and HPLC analysis of methyl-esterificated 24a and 24b
3) カ ウ ン タ ー イ オ ン の 確 認
こ れ ま で の 実 験 に て , 24a お よ び 24b は 同 じ 化 合 物 で あ る が , そ れ ぞ れ の 化 合
物に存在するカウンターイオンが異なるのではないかと推測した.それぞれの化
合 物 を 酸 条 件 下( 0.1% TFA, trifluoroacetic acid)の HPLC で 分 析 を 行 っ た と こ ろ ,
同 じ 保 持 時 間 t R =22 min の 24c を 与 え た ( Fig. 7-10). 酸 条 件 下 に て , 24c の 分 取
を 行 い , 1 H NMR を 測 定 し た と こ ろ , 24a お よ び 24b と は 異 な る 1 H NMR を 示 し
た ( Fig. 7-11).
105
第七章 変形菌 Fuligo aurea の成分
HPLC analysis
UV; 254 nm, flow; 2.0 mL/min
solvent; 40% MeOH + 0.1% TFA
column; Develosil C30-UG-5 (f20´250 mm)
tR : 22100min.
100
mAU
mAU
23
50
50
0
0
0
5
10
15
min
20
検出器 A-254 nm
FA3-0.1%TFA
060306-FA1-40%MeOH+0001.1%TFAiso1
600
24b
150
25
24c
400
23
400 min.
tR : 22
200
200
0
0
0
30
600
mAU
24a
24c
mAU
検出器 A-254 nm
FA2-0.1%TFA
060306-FA2-40%MeOH+0001.1%TFAiso
150
5
10
15
min
20
25
30
Fig. 7-10. HPLC analysis of 24a and 24b in acidic solvent
24a
24b
24c
Fig. 7-11. 1 H NMR of 24a, 24b and 24c in CD 3 OD
以 上 の 結 果 よ り , F. aurea よ り 単 離 し た 24a お よ び 24b の 構 造 は , tryptophan
trans-4-aminocinnamamide で あ る が ,そ れ ぞ れ が 異 な る カ ウ ン タ ー イ オ ン 状 態 で 存
在 す る こ と に よ り , 逆 相 HPLC で 分 離 さ れ た と 推 測 し た . 24c は , TFA と の 塩 を
形成することにより,同一のイオン状態となったと考えられる.但しそれぞれの
カウンターイオンの種類は同定していない.
106
第七章 変形菌 Fuligo aurea の成分
化 合 物 25 は , 1D お よ び 2D NMR, お よ び EIMS( m/z 448 [M + ]) に よ る 解 析 よ
り , chamaecydin の 構 造 を 導 き 出 し , 文 献 値 と の 比 較 に よ り , 化 合 物 25 は
chamaecydin と 同 定 し た [8 0 ] ( Fig. 7-12). 文 献 調 査 に よ り , chamaecydin( 25) は ,
以 前 Chamaecyparis obtuse の 種 子 [8 0 ] , お よ び Cryptomeria japonica の 松 か さ [8 1 ] よ
り単離された六環性トリテルペンであり,変形菌からの単離は今回が初めてであ
る.
O
HO
O
Fig. 7-12. Structure of 25
107
第七章 変形菌 Fuligo aurea の成分
第三節
細胞毒性試験
F. aurea よ り 得 ら れ た 化 合 物 23, 24a お よ び 25 の Jurkat 細 胞 に 対 す る 細 胞 毒 性
試 験 を 行 っ た が , い ず れ の 化 合 物 も 25 μg/mL で 細 胞 毒 性 を 示 さ な か っ た .
108
第七章 変形菌 Fuligo aurea の成分
第四節
小括
変 形 菌 Fuligo aurea( ム シ ホ コ リ )の 野 外 採 取 子 実 体 よ り ,新 規 化 合 物 cis-お よ
び trans-ト リ プ ト フ ァ ン 4-ア ミ ノ 桂 皮 酸 ア ミ ド ( 23 お よ び 24) を 単 離 し た . ま
た , 既 知 化 合 物 と し て chamaecydin( 25) を 単 離 し た .
化 合 物 23 お よ び 24 の cis-お よ び trans-の 立 体 化 学 は ,1 H NMR に お け る 化 学 シ
フ ト 値 と 結 合 定 数 で 決 定 し た .ま た ,化 合 物 24 は ,カ ウ ン タ ー イ オ ン 状 態 の 違 い
に よ り , ODS HPLC で 2 つ ( 24a お よ び 24b) に 分 離 さ れ た と 推 定 し て い る . 24a
お よ び 24b の ODS HPLC に よ る 保 持 時 間 は ,そ れ ぞ れ 22 分 と 40 分 で あ る .移 動
相 に TFA を 添 加 し , 酸 性 条 件 下 で の ODS HPLC 分 析 に よ り , 24a お よ び 24b は ,
同 じ ピ ー ク ( 24c) を 与 え た . 24c を 分 取 し , 24a お よ び 24b と 1 H NMR を 比 較 し
たところ,それらとは異なるチャートを示した.
ま た ,chamaecydin( 25)は ,Chamaecyparis obtuse の 種 子 ,お よ び Cryptomeria
japonica の 松 か さ な ど の 植 物 よ り 単 離 さ れ た 六 環 性 ト リ テ ル ペ ン で あ り , 今 回 変
形 菌 か ら の 単 離 は 初 め て で あ る .chamaecydin( 25)は F. aurea の 二 次 代 謝 産 物 な
のか,または植物より吸収し変形菌内に蓄積したのか,いずれにせよ興味のある
単離である.
109
総括
総
括
著者は,新たなタイプの癌治療薬のリード化合物を天然資源に求め,近年研究
開発が盛んに行われている分子標的治療薬の創製を基に,種々の癌細胞で異常亢
進の報告があるヘッジホッグシグナル伝達経路を阻害するリード化合物を得るた
め の 研 究 を 行 っ た .ヘ ッ ジ ホ ッ グ シ グ ナ ル 伝 達 経 路 を 阻 害 す る 化 合 物 の 報 告 例 は ,
Smo( Smoothened) 受 容 体 を 標 的 と し た 阻 害 剤 が ほ と ん ど で あ る . そ こ で , 新 た
なタイプのヘッジホッグシグナル伝達経路阻害剤を得るため,シグナル最下流に
位 置 す る 転 写 因 子 GLI に よ る 転 写 を 標 的 と し ,目 的 に あ っ た ア ッ セ イ 系 を 構 築 し
た . 構 築 し た ア ッ セ イ 系 を 用 い , 天 然 資 源 を ス ク リ ー ニ ン グ し , GLI に よ る 転 写
活性を阻害する天然物を得た.得られた化合物について,細胞でのヘッジホッグ
シグナル伝達経路を阻害するかを立証するため,培養細胞においてヘッジホッグ
シグナル伝達経路が制御している遺伝子発現の影響を調べた.その結果,それら
発 現 を 抑 制 し , 天 然 資 源 よ り GLI 転 写 阻 害 剤 を 得 る こ と に 成 功 し た . 本 論 で は ,
GLI に よ る 転 写 を 標 的 と し た 新 た な タ イ プ の ヘ ッ ジ ホ ッ グ シ グ ナ ル 伝 達 経 路 阻 害
剤を得る過程を,第一章から第五章で述べた.
第一章では,ヘッジホッグシグナル伝達経路において,シグナル最下流に位置
す る 転 写 因 子 GLI に よ る 転 写 活 性 を 阻 害 す る 化 合 物 を 得 る た め に ,細 胞 を 用 い た
レ ポ ー タ ー ア ッ セ イ 系 の 構 築 に つ い て 述 べ た .ヒ ト 正 常 基 底 細 胞 株( HaCaT 細 胞 )
に て , T-REx system( Tetracycline Regulated Expression system) を 用 い て 転 写 因 子
GLI1 を 過 剰 に 発 現 さ せ , GLI 結 合 領 域 ( GLI binding site) を 有 す る レ ポ ー タ ー ベ
ク タ ー で GLI1 に よ る 転 写 活 性 を 測 定 す る 系 で あ る . 12 個 の GLI binding site
( -GACCACCCA-) を 有 す る レ ポ ー タ ー プ ラ ス ミ ド を 作 成 し , T-REx system に よ
り 外 因 性 GLI1 の 発 現 が 制 御 さ れ て い る 細 胞 ( HaCaT-GLI1) に 遺 伝 子 導 入 し , 目
的のアッセイ細胞の樹立に成功した.得られたアッセイ細胞を用いて,スクリー
ニングを行うための最適化条件検討を行い,独自のスクリーニングプロトコルを
決定した.
第二章では,第一章で構築したアッセイ系を用いて,当研究室保有の天然物ラ
イブラリー(天然有機化合物,熱帯植物抽出物,放線菌抽出物および会社依頼生
薬 抽 出 )を ス ク リ ー ニ ン グ し ,天 然 有 機 化 合 物 ラ イ ブ ラ リ ー よ り ,zerumbone( 1),
zerumbone epoxide ( 2 ), staurosporinone ( 9 ), 5-hydroxystaurosporinone ( 10 ),
arcyriaflavin C( 11) お よ び 5,6-dihydroxyarcyriaflavin A( 12) が GLI1 転 写 阻 害 活
110
総括
性 を 有 す る こ と を 見 出 し た . ま た , 植 物 抽 出 物 ラ イ ブ ラ リ ー よ り Physalis minima
を , 放 線 菌 抽 出 物 ラ イ ブ ラ リ ー よ り CKK32 を , ま た 会 社 依 頼 生 薬 抽 出 物 ラ イ ブ
ラ リ ー よ り ich77 を 選 び ,以 降 の 章 に て ,GLI1 転 写 阻 害 活 性 を 指 標 に し た 分 画 を
進めた.
第三章では,第二章の植物抽出物ライブラリーのスクリーニングにおいて得ら
れ た Physalis minima に つ い て , 活 性 を 指 標 に , 分 離 ・ 精 製 を 行 っ た 結 果 , GLI1
転 写 阻 害 化 合 物 と し て , physalin F( 17) お よ び physalin B( 18) を 得 た . 得 ら れ
た 17 お よ び 18 は ,よ り 低 濃 度 に て ,高 い 細 胞 生 存 率 を 保 ち な が ら ,GLI1 転 写 阻
害活性を示した.
第四章では,放線菌抽出物ライブラリーおよび生薬抽出物ライブラリーより得
ら れ た CKK32 お よ び ich77 に つ い て , GLI1 転 写 阻 害 活 性 を 指 標 に , 分 画 を 行 っ
た .CKK32 よ り ,活 性 を 指 標 に し た 分 離・精 製 を 行 っ た 結 果 ,cycloheximide( 26)
を 得 た .し か し ,cycloheximide は ,文 献 報 告 よ り ,真 核 生 物 に お い て タ ン パ ク 質
合 成 を 阻 害 す る 報 告 が さ れ て お り ,今 回 ル シ フ ェ ラ ー ゼ 活 性 を 下 げ た 理 由 と し て ,
レ ポ ー タ ー で あ る ル シ フ ェ ラ ー ゼ タ ン パ ク 質 の 合 成 阻 害 と 結 論 付 け ,26 を 擬 陽 性
サンプルとして結論付けた.
ま た , ich77 の 抽 出 物 を , GLI1 転 写 阻 害 活 性 を 指 標 に 分 画 し た が , そ の GLI1 転
写 阻 害 活 性 は ,ich77 の 主 成 分 で は な く ,ODS HPLC に て 最 初 に 出 て く る 画 分 に 集
中した.極性が非常に高いこと,また収量が少ないことより,現在分離検討につ
い て 行 っ て お り , ich77 か ら は , GLI1 転 写 阻 害 化 合 物 の 単 離 に は 至 っ て い な い .
第 五 章 で は , ス ク リ ー ニ ン グ に よ り 得 ら れ た GLI1 転 写 阻 害 化 合 物 に つ い て ,
細 胞 で の 影 響 を 明 ら か に す る 実 験 を 行 っ た . ま ず , 転 写 因 子 GLI2 に 対 す る 影 響
を 調 べ た 結 果 , GLI1 転 写 阻 害 活 性 と GLI2 転 写 阻 害 活 性 に は 相 関 が 見 ら れ た .次
に , GLI1 ま た は GLI2 を 過 剰 に 発 現 さ せ た 細 胞 で , そ れ ぞ れ の 阻 害 剤 zerumbone
( 1), staurosporinone( 9), physalin F( 17) お よ び B( 18) の 影 響 を 調 べ た .
GLI1 を 過 剰 に 発 現 さ せ る と , GLI1 の 標 的 遺 伝 子 で あ る PTCH の タ ン パ ク 発 現 が
多 少 増 加 し , そ の 状 態 に て そ れ ぞ れ の 阻 害 剤 を 添 加 し た と こ ろ , PTCH の タ ン パ
ク 発 現 を 抑 制 し た .ま た ,こ れ ら 阻 害 剤 は ,GLI2 に 対 し て も 転 写 を 阻 害 す る が 判
明 し た の で ,GLI2 の 標 的 遺 伝 子 で あ る GLI1 お よ び PTCH の タ ン パ ク 発 現 を 調 べ
た . そ の 結 果 , GLI2 の 過 剰 発 現 に よ り GLI1 お よ び PTCH の タ ン パ ク 発 現 は 増 加
し , 阻 害 剤 は そ れ ら タ ン パ ク 発 現 を 抑 制 し た . ま た , GLI1 お よ び GLI2 の 標 的 遺
伝 子 の 一 つ に 抗 ア ポ ト ー シ ス タ ン パ ク BCL2 が あ る .同 様 の 実 験 に よ り ,GLI1 ま
た は GLI2 を 過 剰 に 発 現 さ せ る と ,BCL2 の 発 現 が 増 加 し ,そ の 状 態 に て 阻 害 剤 を
添 加 し た と こ ろ , BCL2 の タ ン パ ク 発 現 を 抑 制 し た .
今 回 ,転 写 因 子 GLI1 お よ び GLI2 の 転 写 活 性 を 阻 害 す る 化 合 物 は ,ヘ ッ ジ ホ ッ グ
111
総括
シ グ ナ ル 伝 達 経 路 が 亢 進 し て い る ヒ ト す い 臓 癌 細 胞 株( PANC1 細 胞 )に 対 し て 細
胞 毒 性 を 示 し ,GLI 転 写 阻 害 と PANC1 細 胞 に 対 す る 細 胞 毒 性 に は 相 関 が 見 ら れ た .
ま た ,physalin F( 17)お よ び B( 18)は ,比 較 対 照 と し て 用 い た マ ウ ス 正 常 細 胞
( C3H10T1/2 細 胞 , Hh responsive but not required for survival) と 比 較 し , PANC1
細胞の方が,より強く細胞毒性を示した.
また,未利用資源の成分研究の一環として,変形菌の野外採取子実体の成分に
関する研究を行った.
第 六 章 で は , マ メ ホ コ リ ( Lycogala epidendrum) か ら , 2 種 の 新 規 ビ ス イ ン ド
ー ル 化 合 物 ( 10 お よ び 12) と 8 種 の 既 知 ビ ス イ ン ド ー ル 化 合 物 も 単 離 し た . 10
お よ び 12 は , HeLa, Jurkat お よ び KB/VJ30 の 癌 細 胞 株 に 対 し て , 細 胞 毒 性 を 示
した.ビスインドール化合物には,様々なキナーゼ活性を阻害する報告があり,
10 お よ び 12 は ,Protein Tyrosine Kinase( PTK)に 対 し て 阻 害 を 示 す こ と が 明 ら か
となった.
第 七 章 で は ,ム シ ホ コ リ( Fuligo aurea)か ら ,2 種 の 新 規 化 合 物 tryptophan cis( 23) お よ び trans-4-aminocinnamamide( 24) を 単 離 し た . 24 は , カ ウ ン タ ー イ
オ ン 状 態 の 違 い か ら ,ODS HPLC に て 2 つ に 分 離 さ れ た( 24a お よ び 24b).ま た ,
既 知 化 合 物 と し て ,ヒ ノ キ の 種 子 や 松 か さ か ら 単 離 報 告 例 の あ る chamaecydin( 25)
を単離した.
以上,ヘッジホッグシグナル伝達経路の中で,シグナル最下流に位置する転写
因 子 GLI に よ る 転 写 活 性 を 阻 害 す る 天 然 物 を 得 る こ と に 成 功 し た こ と を 述 べ た .
特 に ,physalin F( 17)お よ び B( 18)は ,今 回 GLI 転 写 阻 害 化 合 物 と 同 定 し た 中
で も よ り 低 濃 度 に て 作 用 を 示 す こ と が わ か り , 今 後 , GLI の 転 写 活 性 に お け る イ
ベントの中で,どの部位で作用するかを明らかにしていきたい.また,アッセイ
系の構築に成功したことにより,様々な天然物におけるスクリーニングを行い,
更 に 新 た な タ イ プ の GLI 転 写 阻 害 化 合 物 を 求 め て い き た い .天 然 に は ,様 々 な 骨
格を持った小分子が存在することから,今までにない新たなタイプの阻害剤を得
ることができると期待する.こうした研究から,天然物をリード化合物とし,ヘ
ッジホッグシグナル伝達経路阻害剤が,癌治療薬として用いられること願うばか
りである.
112
実験の部
実験の部
1. 使 用 器 機 お よ び 試 薬
各種機器分析データを得るため,次の装置および試薬を用いて測定した.
1-1. 化 合 物 の 単 離 , 構 造 決 定
旋 光 度 計 は , P-1020 polarimeter( JASCO) を , 赤 外 吸 収 ( IR) ス ペ ク ト ル は ,
FT-IR230 spectrometer ( JASCO ) を , 紫 外 吸 収 ( UV ) ス ペ ク ト ル は , UVmini
spectrophotometer( SHIMADZU) を 使 用 し た . 赤 外 吸 収 ス ペ ク ト ル の 測 定 に は ,
film 法 ( NaCl 板 に 試 料 溶 媒 を 塗 布 し , 溶 媒 を 蒸 発 さ せ 測 定 ) お よ び ATR 法
( DuraScope 装 置( SensIR Technologies)を 用 い ,全 反 射 法 に て 測 定 ,ATR: Attenuate
Total Reflectance) で 行 っ た .
核 磁 気 共 鳴( NMR: nuclear magnetic resonace)は ,ECP 600 spectrometer( JEOL,
1
H : 600 MHz,
13
C : 150 MHz), a 500 spectrometer( JEOL, 1 H : 500 MHz,
13
C : 125
MHz) お よ び a 400 spectrometer( JEOL, 1 H : 400 MHz) を 用 い た .
1
H- 1 H シ フ ト 相 関 ス ペ ク ト ル( 1 H- 1 H COSY; correlation spectroscopy),異 核 間 多
量 子 コ ヒ ー レ ン ス ( HMQC; heteronuclear multiple quantum coherence) お よ び 異 核
間 多 重 結 合 相 関( HMBC; heteronuclear multiple bond coherence)の 2 次 元 NMR( 2D
NMR) は ECP 600 型 お よ び a 500 型 ス ペ ク ト ロ メ ー タ ー を 用 い , そ れ ぞ れ の 装 置
の標準的なパルスシークエンスで測定した.
NMR の 化 学 シ フ ト( chemical shift) δ は ppm で 示 し ,結 合 定 数( coupling constant)
J は Hz で 示 し た . ま た , 開 列 様 式 は , s( singlet), d( doublet), t( tripret), m
( multiplet) お よ び br( broad) と そ れ ぞ れ 示 し た .
測 定 溶 媒 は ,重 水 素 化 ク ロ ロ ホ ル ム( CDCl 3 ),重 水 素 化 ア セ ト ン( Acetone-d 6 ),
重 水 素 化 メ タ ノ ー ル( CD 3 OD)お よ び 重 水 素 化 ジ メ チ ル ス ル ホ キ シ ド( DMSO-d 6 )
を 用 い , 内 部 標 準 物 質 と し て , ク ロ ロ ホ ル ム ( 1 H : 7.26 ppm,
1
セ ト ン( H : 2.04 ppm,
13
1
13
C : 77.0 ppm), ア
C : 29.8 ppm),メ タ ノ ー ル( H : 3.31 ppm,
ま た は ジ メ チ ル ス ル ホ キ シ ド ( 1 H : 2.50 ppm,
13
13
C : 49.0 ppm)
C : 39.5 ppm) を 用 い た .
質 量 分 析 に は , JMS GC-Mate mass spectrometer ( JEOL) お よ び JMS-AX 500
spectrometer( JEOL)を 用 い ,高 分 解 能 FABMS( HRFABMS)に は JMS-HX 110A mass
spectrometer( JEOL) を , 高 分 解 能 ESIMS( HRESIMS) は Micromass ス ペ ク ト ロ
メ ー タ ー ( Manchester UK) を 用 い た .
113
実験の部
有 機 溶 媒 メ タ ノ ー ル ,ア セ ト ニ ト リ ル ,ア セ ト ン ,ク ロ ロ ホ ル ム ,酢 酸 エ チ ル ,
へ キ サ ン ( 関 東 化 学 ) は , 試 薬 一 級 品 を 素 蒸 留 し て 用 い た . ま た n-ブ タ ノ ー ル ,
2-プ ロ パ ノ ー ル お よ び ジ メ チ ル ス ル ホ キ シ ド ( Wako) は , 試 薬 特 級 品 を 用 い た .
薄 層 ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー は ,順 相 は Kieselgel 60F 2 5(
を ,逆 相 は RP 18F 2 5 4
4 Merck)
( Merck) を 用 い た . ま た , キ ラ ル TLC は HPTLC-Fertigplatten CHIR( Merck) を
用いた.
オ ー プ ン カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー に は , Diaion HP-20( 三 菱 化 成 ), Sephadex
LH-20( Amersham Pharmacia Biotec),Silica Gel 60N( Nacalai tesque Inc.), Wakogel
100C18( Wako)お よ び Amberlite ® IRA-400 (CI) ion exchange resin( ALDRICH)を
用いた.
高 速 液 体 ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー( High Performance Liquid Chromatography : HPLC)
装置は,分析用として,島津製作所製のものを用い,システムコントローラー
( SCL-10Avp), フ ォ ト ダ イ オ ー ド ア レ イ 紫 外 可 視 検 出 器 ( SPD-M 10Avp), 送 液
ユ ニ ッ ト( LC-10ADvp),低 圧 グ ラ ジ エ ン ト ユ ニ ッ ト( FCV-10ALvp),オ ン ラ イ ン
デ ガ ッ サ ー( DGU-12A)お よ び LC ワ ー ク ス テ ー シ ョ ン( CLASS-VP<ver. 5.032>)
に て 行 っ た .ま た ,分 取 用 と し て ,日 本 分 光( JASCO)を 用 い ,ポ ン プ( PU-2080)
お よ び 検 出 器 ( UV-2075 お よ び RI-2031) に て 行 っ た .
高 速 液 体 ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー の カ ラ ム に は , 分 析 用 と し て Mightysil RP-18 GP
( f4.6 × 250 mm,関 東 化 学 )を 用 い ,分 取 用 と し て Mightysil RP-18 GP( f20 × 250
mm,関 東 化 学 ),Develosil ODS UG-5 ( f10 × 250 mm,野 村 化 学 ),Develosil ODS
HG-5( f10 × 250 mm,野 村 化 学 ),Develosil C-30 UG-5( f10 × 250 mm,野 村 化 学 )
お よ び Inertsil ODS-3( f10 × 250 mm, GL sciences) を 用 い た .
1-2. 遺 伝 子 実 験
PCR ( Polymerase Chan Reaction ) 装 置 は , TaKaRa PCR Thermal Cycler Dice
( TaKaRa ) を 用 い , UV に よ る DNA 濃 度 の 測 定 は , UVmini 1240 UV-VIS
Spectrophotometer( SHIMADZU) に て OD 2 6 0 お よ び OD 2 8 0 を 測 定 し 計 算 し た .ア ガ
ロ ー ス ゲ ル 電 気 泳 動 後 の DNA の 確 認 は , Ethidium bromide 溶 液 ( Nacalai tesque
Inc.) に よ る 染 色 を 行 っ た 後 , ト ラ ン ス イ ル ミ ネ ー タ ー TCP-15M( コ ス モ バ イ オ )
を 用 い て 紫 外 線 ( 312 nm) で 確 認 し た .
114
実験の部
生 化 学 実 験 で の 有 機 溶 媒 エ タ ノ ー ル , 2-プ ロ パ ノ ー ル , ク ロ ロ ホ ル ム , イ ソ ア
ミ ル ア ル コ ー ル , フ ェ ノ ー ル ( Wako) は 全 て 試 薬 特 級 品 を 用 い た .
マ イ ク ロ プ レ ー ト リ ー ダ ー は , 蛍 光 測 定 に は Fluoroscan Ascent( Thermo) を ,
化 学 発 光 測 定 に は Luminoscan Ascent( Thermo) を 用 い て 測 定 を 行 っ た .
1-3. タ ン パ ク 実 験
SDS-PAGE は , BE-210( BIO CRAFT) 装 置 に て タ ン パ ク 泳 動 を 行 い , メ ン ブ レ
ン へ の 転 写 は ,BE-310( BIO CRAFT)も し く は BE-351( BIO CRAFT)を 用 い た .
SDS-PAGE の ゲ ル , Running Buffer お よ び CAPS
Buffer の 組 成 は , 以 下 の も の
を用いた.
SDS-PAGE gel
running gel
stacking gel
12.5%
7.5%
5%
H2O
2.2 mL
3.9 mL
3.4 mL
30% acrylamide
4.2 mL
2.5 mL
0.83 mL
Tris-HCl (pH 8.8)
3.4 mL
3.4 mL
--------
Tris-HCl (pH 6.8)
--------
--------
0.63 mL
10% SDS
0.1 mL
0.1 mL
0.05 mL
10% ammonium persulfate
0.1 mL
0.1 mL
0.05 mL
TEMED
7 mL
7 mL
5 mL
10´ Running Buffer
Tris-HCl
30.3 g (0.25 M)
glycin
144 g
(1.92 M)
SDS
10 g
(1% (w/v))
---------------------------------------------------dH 2 O
up to 1 L
100 mM CAPS Buffer
CAPS 8.84 g を 350 mL の dH 2 O に 溶 か し , 5 N 水 酸 化 ナ ト リ ウ ム で pH を 11.0
に 合 わ せ , 400 mL に メ ス ア ッ プ 後 , オ ー ト ク レ ー ブ ( 121°C, 20 分 ) し た . 使 用
時 は , 10 mM CAPS で 用 い た .
115
実験の部
2. 細 胞 お よ び 大 腸 菌 培 養
2-1. 細 胞 培 養
それぞれの細胞における細胞培養条件は,以下に示す条件にて行った.
・ HaCaT 細 胞 ( HaCaT-GLI1 お よ び HaCaT-GLI2, gifted by Drs. Frits Aberger and
Gerhard Regl); Dulbecco’s modified Eagle Medium ( DMEM, high glucose, Wako)+
5% fetal bovine serum( FBS, biowest)
・HaCaT 細 胞( HaCaT-GLI1-luc,ア ッ セ イ 細 胞 )
;DMEM( high glucose, Wako)+ 5%
FBS and Penicillin (200 unit/mL)/Streptomycin (200 μg/mL) ( Gibco)
・ PANC1 細 胞 ( provided from RIKEN BRC); RPMI-1640( Wako) + 10% FBS
・C3H10T1/2 細 胞( provided from RIKEN BRC)
;DMEM( high glucose, Wako)+ 10%
FBS
・HeLa 細 胞 ;Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium( IMDM,SIGMA)+ 5% FBS +
L -glutamine( 0.3
g/500 mL, 日 水 製 薬 )
Fetal Bobine Serum( FBS,Biowest)は ,補 体 を 失 活 さ せ る た め ,56°C,30 分 間
の 加 熱 処 理 を 行 い , 非 動 化 を 行 っ た も の を 使 用 し た . 細 胞 の 剥 離 に は , Trypsin
EDTA( 0.25% Trypsin-EDTA,Gibco)を 用 い た .細 胞 計 測 に は Trypan blue 溶 液( 0.4%
(w/v) trypan blue, Nacalai tesque Inc.) を 用 い , 顕 微 鏡 下 で 行 っ た .
抗 生 物 質 は ,Penicillin( 10,000 unit/mL)/Streptomycin( 10,000 μg/mL)
( Gibco),
Blasticidin S HCl( Invitrogen), Zeocin( Invitrogen), Puromycin( SIGMA) お よ び
Tetracycline( Invitrogen) を 用 い た .
PBS (–)は , 以 下 の 組 成 を 用 い た
KCl( Nacalai tesque Inc.)
0.2 g
KH 2 PO 4 ( Nacalai tesque Inc.)
0.2 g
NaCl( Nacalai tesque Inc.)
8.0 g
Na 2 HPO 4 ( Nacalai tesque Inc.) 1.11 g
------------------------------------------------dH 2 O
1 L ( autoclaved; 121°C, 20 min)
細 胞 の 培 養 は ,CO 2 イ ン キ ュ ベ ー タ ー( MCO-17A1C,SANYO)に て 37°C,5%CO 2
に て 行 っ た . ま た , 細 胞 培 養 の 操 作 は , ク リ ー ン ベ ン チ ( Bio Clean Bench
MCV-B1313S, SANYO) 内 で 行 っ た .
116
実験の部
2-2. 大 腸 菌 培 養
大 腸 菌 E. coli. JM109( TaKaRa)お よ び DH5a( TaKaRa)は ,以 下 の 培 地 に て 培
養を行った.
・液 体 培 地;LB 培 地( LB broth base,Invitrogen)+ ampicillin( final conc. 50 μg/mL),
37°C, 120 rpm
・平 板 培 地;LB 培 地 + agar( Taiyoa agar GP-600,清 水 食 品 )+ ampicillin( final conc.
50 μg/mL), 37°C,
2-3. 放 線 菌 の 培 養
放線菌の培養は,以下の培地にて培養を行った.
Waksman medium
Glucose
10 g
20 g
Peptone
2.5 g
5g
Yeast extracts
1.5 g
3g
Meat extracts
2.5 g
5g
NaCl
2.5 g
5g
CaCO 3
1.5 g
3g
( Agar
7.5 g
15 g)・ ・ ・ ・ ・ ・ 平 板 培 地 の み 添 加
-----------------------------------------------dH 2 O
500 mL
1L
( autoclaved; 121°C, 20 min)
・ 液 体 培 養 ; 25°C, 135~ 145 rpm
・ 平 板 培 養 ; 25°C, 放 置
117
実験の部
3. 実 験 操 作
各章における実験操作について以下に示す手順にて行った.
3-1. 第 一 章 の 実 験 ( ア ッ セ イ 系 の 構 築 )
3-1-1. pGL4-GLI BS の 作 成
Rune Toftgård 博 士 ( Karolinska Institutet, Sweden ) よ り 譲 与 い た だ い た
12GLI-RE-TKO プ ラ ス ミ ド の GLI binding site を 含 む プ ロ モ ー タ ー 領 域 の DNA 配
列 を 明 ら か に す る た め に ,luciferase 遺 伝 子 中 の -CTAGAGGATAGAATGGCGCC-( 20
mer.) を プ ラ イ マ ー に し , DNA sequencing を 行 い , プ ロ モ ー タ ー 領 域 の 配 列 を 明
らかにした.
CCTCNCATGNTTNNTAGGGTATNGANNNNNNNNNNNNTTCCNTTTTTNNNCAGTACCGGAATGCCAAGCTC[ AGATCT GCG

BglII
GCACGCTGTTGACGCTGTTAAGCGGGTCGCTGCAGGGTCGCTCGGTGTTCGAGGCCACACGCGTCACCTTAATATGCGAA
GTGGACCTCGGACCGCGCCGCCCCGACTGCATCTGCGTGTTCGAATTCGCCAATGACAAGACGCTGGGCGGGGTTTGCCG
GATCTCGAGGTC GACCACCCAGACCACCCAGACCACCCAGACCACCCACTCGACCACCCAGACCACCCAGACCACCCAGA
CCACCCACTCGACCACCCAGACCANCCAGACCACCCAGACCACCCA CTCGACGGTATCGATAAGCTTGGATCTGAGCTTG
12xGLI binding sites
GATCCAGACATGATAAGATACATTGATGAGTTTGGACAAACCACAACTAGAATGCAGTGAAAAAAATGCTTTATTTGTGA
AATTTGTGATGCTATTGCTTTATTTGTAACCATTATAAGCTGCAATAAAACAAGTTAACAACAATTGCATTCATTTTATG
TTTCAGGTTCAGGGGGAGGTGTGGGAGGTTTATNTAACCNANTNANNACTTCTCTNATGTGANATGGGTTGANCTNANNT
NATAANATANTTTGNTNAATTTNGACAATCCCNCTCTAGANATGCGGTGGAGAANAANGNTTTNTTTNGGGAANATTNTG
TANGNNANTGGGNTNANTTGTNACCCNTNTTNNGCTGGCGNTAACANAGGNGNTNACANANANNTTGGNAGCNNNTGTNN
AGGGTNCNGGGNTCCACGGNGNGANGTGGNGGNNAATATCTACGTTATNANNTANNAACNCNTNANTCATAGCGTTNTTN
TNNNATNGTNCGNGNNTAGNCTNCTANTATNGTGCTAGNNGTGNANANGTGNANATNACGCNANATAAA
Fig.I. DNA sequencing of 12GLI-RE-TKO promoter region
こ れ を 基 に , 12×GLI binding site お よ び TK promoter 領 域 ( 449 bp) を 増 幅 す る
た め , Primer3( http://frodo.wi.mit.edu/) を 用 い て 以 下 の プ ラ イ マ ー を 設 計 し た .
forward primer, -AGGCTAGCTCATGTCTGGATCCAAG- (25 mer.)
reverse primer, -AGTACCGGAATGCCAAGCTCAGATCT- (26 mer.)
作 成 し た プ ラ イ マ ー を 用 い て , 449 bp 領 域 ( GLI binding site + TK promoter) を
増 幅 す る た め ,PCR を 行 っ た .DNA Polymerase は ,TOYOBO KOD-Plus-( TOYOBO)
を 用 い , PCR は , 以 下 に 示 す サ イ ク ル で 行 っ た . PCR 産 物 ( 449 bp) は , 1.2%
agarose-TAE gel に て 電 気 泳 動( 100V)し ,ethidium bromide に て 染 色 し た 後 , UV
照射下にて確認した.
118
実験の部
PCR condition
1) initial denaturation
94°C
5 min.
2) denaturation
94°C
30 sec.
3) annealing and elongation
68°C
30 sec.
4) final elongation
68°C
5 min.
2)〜 3), 30 cycles
得 ら れ た PCR 産 物( 449 bp)お よ び pGL4-2.0( Promgega)を ,Nhe I( TaKaRa)
お よ び Bgl II( TaKaRa) で 制 限 酵 素 処 理 ( 37°C, 1 h) し た 後 , Wizard Ò SV Gel and
PCR Clean-Up System( Promega) を 用 い て そ れ ぞ れ の DNA を 精 製 し た .
51 ng の insert( 449 bp)お よ び 48 ng の vector( 5.4 kbp)を DNA Ligation Kit <Mighty
mix>( TaKaRa) を 用 い て ラ イ ゲ ー シ ョ ン 処 理 ( 16°C, 1h) を し た . ラ イ ゲ ー シ ョ
ン 溶 液 を E. coli( JM109) に ト ラ ン ス フ ォ ー メ シ ョ ン し , LB/amp. ager プ レ ー ト
で 培 養 ( 37°C, overnight) し た と こ ろ , 多 数 の コ ロ ニ ー を 得 た . そ の う ち , 20 個
の コ ロ ニ ー ( colonies #1~ #20) に つ い て , プ ラ ス ミ ド を 単 離 し , Mlu I, Bgl II,
Nhe I お よ び Bgl II に よ る 制 限 酵 素 処 理 後 の DNA 産 物 を 電 気 泳 動 に て 確 認 し た
( mapping に よ る 確 認 ). colony #5 つ い て , 良 好 な 結 果 を 得 た た め , QIAGEN Ò
Plasmid Mdi Kit( QIAGEN)に よ り プ ラ ス ミ ド を 精 製 し ,DNA sequencing に て DNA
配 列 を 確 認 し , 目 的 の レ ポ ー タ ー プ ラ ス ミ ド pGL4-GLI BS を 得 た .
3-1-2. Transient transfection
Frits Aberger 博 士 お よ び
Gerhard Regl 博 士 よ り 譲 与 い た だ い た
Tetracycline-regulated HaCaT 細 胞 ( HaCaT-GLI1) に , 作 成 し た レ ポ ー タ ー プ ラ ス
ミ ド pGL4-GLI BS を Lipofectamine 2000( Invitrogen) を 用 い て 一 過 性 遺 伝 子 導 入
し ,ル シ フ ェ ラ ー ゼ 活 性 と 細 胞 内 の GLI1 タ ン パ ク 量 を Western blotting で 調 べ た .
ル シ フ ェ ラ ー ゼ 活 性 の 測 定 は , 24-well plate に HaCaT-GLI1 細 胞 ( 1´10 5
cells/well)を 播 種 し ,24 時 間 培 養 後 ,各 well 当 た り 1 mg の pGL4-GLI BS を 2 mL
の Lipofectamine 2000 を 用 い て 遺 伝 子 導 入 し た .4 時 間 後 ,培 地 を 除 き ,tetracycline
( Tc, 終 濃 度 1 mg/mL) を 添 加 し た 培 地 ( 500 μL) を 加 え た ( +Tc). ま た コ ン ト
ロ ー ル と し て ,Tc を 加 え て い な い 培 地( 500 μL)を 加 え た( –Tc).24 時 間 培 養 後 ,
そ れ ぞ れ の ル シ フ ェ ラ ー ゼ 活 性 を 測 定 し た .ル シ フ ェ ラ ー ゼ 活 性 は ,+Tc が 524.4
を , –Tc が 42.8 で , そ の 比 ( +Tc/–Tc) は , 12.3 倍 で あ っ た .
ま た ,細 胞 内 の 外 因 性 GLI1 タ ン パ ク 発 現 は ,10 cm dish に HaCaT-GLI1( 2´10 6
cells)を 播 種 し ,12 時 間 後 に Tc( 終 濃 度 1 mg/mL)を 添 加 し た( +Tc).ま た コ ン
ト ー ル と し て ,Tc を 添 加 し な い 細 胞 も 用 意 し た .Tc を 添 加 し た 24 時 間 後 に ,GLI1
の タ ン パ ク 発 現 を Western Blotting に よ り 調 べ た ( –Tc).
119
実験の部
3-1-3. 安 定 発 現 細 胞 株 の 樹 立
Tetracycline-Regulated HaCaT 細 胞( HaCaT-GLI1)を 6 cm dish に 5´10 5 cells( 90%
confluent) 播 種 し , 24 時 間 ( 37°C, 5% CO 2 ) 培 養 し た 後 , 12 mg の pGL4-GLI BS
を 20 mL の Lipofectamine 2000 を 用 い て 遺 伝 子 導 入 し た . 2 日 後 , 10 cm dish に 継
代 し , 翌 日 に puromycin( 終 濃 度 1 mg/mL) を 添 加 し た . ま た , pcDNA6/TR お よ
び pcDNA3.1-GLI1 に 対 す る セ レ ク シ ョ ン も 行 う た め ,の Zeocin( 終 濃 度 0.5 mg/mL)
お よ び の Blasticidin S HCl( 終 濃 度 1 mg/mL) も 添 加 し た . 3 日 お き に 3 種 の 抗 生
物 質( Puro, Zeo, Bla)が 添 加 さ れ た 培 地 に て 培 地 交 換 を 行 い ,15~ 20 日 後 ,10 cm
dish 中 に ク ロ ー ン( コ ロ ニ ー )が 形 成 し た 後 ,そ れ ぞ れ の ク ロ ー ン 細 胞 を 24-well
plate に 移 し , 46 の ト ラ ン ス フ ェ ク タ ン ト を 得 た . そ れ ぞ れ を 個 別 に 培 養 し , 生
育 が よ い も の に つ い て ,Tc 添 加( +Tc)も し く は 非 添 加 状 態( –Tc)に て ル シ フ ェ
ラ ー ゼ 測 定 を 行 っ た .最 終 的 に ,Clone# 2 が Tc を 添 加 し た 時 の ル シ フ ェ ラ ー ゼ 活
性 に よ る 発 光 量 が 高 い こ と , ま た +Tc/−Tc の 比 が 大 き い こ と よ り , こ れ を 目 的 と
し て い た ア ッ セ イ 細 胞 ( HaCaT-GLI1-luc) と し た .
3-2 ス ク リ ー ニ ン グ プ ロ ト コ ル
HaCaT-GLI1-luc 細 胞 を 24-well plate で は 2´10 5 cells/well, ま た は 96-well white
plate で は 2´10 4 cells/well 播 種 し ,12 時 間 培 養( 37°C,5% CO 2 )し た .12 時 間 後 ,
外 因 性 の GLI1 タ ン パ ク を 発 現 さ せ る た め に , そ れ ぞ れ の well に tetracycline( 終
濃 度 1 mg/mL) を 添 加 し た . 12 時 間 外 因 性 GLI1 タ ン パ ク を 発 現 さ せ た 後 , 培 地
を 取 り 除 き ,tetracycline を 含 ま な い 培 地 を 用 い て ,そ れ ぞ れ の 濃 度 に 希 釈 し た テ
ス ト サ ン プ ル を 作 成 し ,24-well plate/well に は 500 mL,96-well plate/well に は 100
mL を 加 え た . 12 時 間 テ ス ト サ ン プ ル を 作 用 さ せ た 後 , ル シ フ ェ ラ ー ゼ 活 性 の 測
定を行った.
ル シ フ ェ ラ ー ゼ 活 性 の 測 定 は ,培 地 を 取 り 除 き ,24-well plate/well に は 80 mL,
96-well plate/well に は 30 mL の Bright-Glo™ Lysis buffer( Promega) を 加 え , 室 温
に て 10 分 放 置 し た . 細 胞 が 溶 解 し た 後 , 24-well plate/well に は 50 mL, 96-well
plate/well に は 30 mL の Bright-Glo™ Luciferase Assay System( Promega)の luciferin
を 添 加 し , Luminoskan Ascent( Thermo) を 用 い て 化 学 発 光 量 を 測 定 し , GLI1 に
よる転写活性を評価した.
ま た 同 時 に , 細 胞 毒 性 試 験 ( FMCA ) も 行 い , 細 胞 の 生 存 率 を 調 べ た .
HaCaT-GLI1-luc 細 胞 を 96-well black plate に 播 種( 2´10 4 cells/well)し ,24 時 間 培
養( 37°C,5% CO 2 )し た .ル シ フ ェ ラ ー ゼ 活 性 用 の サ ン プ ル 添 加 と 同 時 に ,同 じ
濃 度 の テ ス ト サ ン プ ル を 加 え , 12 時 間 作 用 さ せ た 後 , fluorometric microculture
120
実験の部
cytotoxicity assay( FMCA) の 手 法 を 用 い て Fluoroskan ascent( Thermo) に て そ の
蛍 光 量 を 測 定 し ( Ex: 485 nm, Em: 538 nm), 細 胞 生 存 率 を 評 価 し た .
そ れ ぞ れ の 活 性 評 価 は , サ ン プ ル を 添 加 し て い な い コ ン ト ロ ー ル の 値 を 100%
とし,テストサンプル群の値がどれだけ変化したかを割合で計算し,ルシフェラ
ー ゼ 活 性 で は GLI1 転 写 活 性 を , FMCA で は 細 胞 生 存 率 を 算 出 し た .
GLI転写活性(%)=
細胞生存率(%)=
サンプルの発光強度
´100
コントロールの発光強度
サンプルの蛍光強度
コントロールの蛍光強度
´100
FMCA( Fluorometric Microculture Cytotoxicity Assay) に つ い て
H3 C
O
O
O
O
CH3
HO
O
OH
O
O
esterase
in living cell
O
O
O
FDA
Fluorescein
Ex: 485 nm, Em: 538 nm
FDA( Fluorescein Diacetate, Wako) は 細 胞 内 に 取 り 込 ま れ る と , 細 胞 内 の 各
種 酵 素 ( esterase) の 働 き に よ り 加 水 分 解 さ れ て , 蛍 光 性 の fluorescein と な る .
す な わ ち , 生 細 胞 が FDA に よ っ て 蛍 光 染 色 さ れ る こ と か ら , 生 細 胞 数 は
fluorescein の 蛍 光 強 度 に 比 例 す る .
【試験方法】
5 mg FDA( Wako) を 500 mL DMSO に 溶 解 し , 10 mg/mL FDA/DMSO 溶 液 を 作
成 し た 後 ,20 mL を 20 mL PBS に 添 加 し ,FDA 溶 液 と し た .テ ス ト サ ン プ ル 処 理
が 終 了 し た 後 , 96-well plate の 培 地 を 取 り 除 き , 100 μL/well の PBS で 2 回 洗 浄
し た 後 , 200 μL/well の FDA 溶 液 を 加 え た . 37°C で 30 分 間 放 置 し た 後 , プ レ ー
トリーダーにて蛍光量の測定を行った.
121
実験の部
3-2. 第 二 章 の 実 験 ( 天 然 物 ラ イ ブ ラ リ ー の ス ク リ ー ニ ン グ )
3-2-1. 天 然 有 機 化 合 物 ラ イ ブ ラ リ ー の ス ク リ ー ニ ン グ
HaCaT-GLI1-luc を 24-well plate に 播 種 ( 2´10 5 cells/well) し , 12 時 間 培 養 後 に
tetracyline( 終 濃 度 1 mg/mL)を 添 加 し ,外 因 性 GLI1 を 誘 導 し た .12 時 間 培 養 後 ,
Tc を 含 ま な い 培 地 を 用 い て ,テ ス ト サ ン プ ル が 終 濃 度 25 mg/mL お よ び 2.5 mg/mL
に な る よ う に 希 釈 し , 500 mL 添 加 し た . さ ら に 12 時 間 培 養 後 , ル シ フ ェ ラ ー ゼ
活 性 測 定 を 行 い , GLI1 転 写 活 性 を 評 価 し た . 同 時 に , 96-well black plate を 用 い
て FMCA を 行 い ,細 胞 生 存 率 を 評 価 し た .テ ス ト サ ン プ ル を 処 理 し て い な い 値 と
比較して,テストサンプル群の値がどれだけ変化したかを算出した.
3-2-2. 熱 帯 植 物 抽 出 物 ラ イ ブ ラ リ ー の ス ク リ ー ニ ン グ
上 記 と 同 様 の 手 法 に て ,終 濃 度 が 100 mg/mL お よ び 50 mg/mL に な る よ う に テ ス
トサンプルを希釈し,ルシフェラーゼ活性および細胞生存率のそれぞれを評価し
た . 抽 出 物 ラ イ ブ ラ リ ー は , 96-well white plate を 用 い て 評 価 を 行 っ た .
96-well white plate に HaCaT-GLI1-luc 細 胞 を 播 種( 2´10 4 cells/well)し ,以 降 の
操 作 は 上 記 と 同 じ で あ る . ま た , 細 胞 毒 性 の 強 い サ ン プ ル は , 低 濃 度 ( 10 mg/mL
お よ び 1 mg/mL) に て 再 度 活 性 試 験 を 行 っ た .
3-2-3. 放 線 菌 抽 出 物 ラ イ ブ ラ リ ー の ス ク リ ー ニ ン グ
上記と同様の手法にて,活性評価を行った.
3-2-4. 依 頼 生 薬 抽 出 物 ラ イ ブ ラ リ ー の ス ク リ ー ニ ン グ
上記の同様の手法にて,活性評価を行った.
122
実験の部
3-3. 第 三 章 の 実 験 ( Physalis minima か ら の 活 性 成 分 の 単 離 )
3-3-1. Physalin minima の 活 性 を 指 標 に し た 分 画
Material
試 料 と し た Physalis minima は , 2001 年 Thailand の Khon Kaen に て 小 谷 野 喬 氏
により採取されたものを用いた.
( A voucher specimen (7-019) is maintained at Facility of Agriculture, Khon Kaen
University.)
Extraction and isolation
Physalis minima の 全 草 を , メ タ ノ ー ル で 抽 出 し , メ タ ノ ー ル 抽 出 物 ( 2.7 g) を
得 た . 得 ら れ た メ タ ノ ー ル 抽 出 物 を 水 ( 50 mL) と ヘ キ サ ン ( 300 mL ´ 3), 酢 酸
エ チ ル( 300 mL ´ 3),ク ロ ロ ホ ル ム( 300 mL ´ 2)で 分 配 し ,へ キ サ ン 抽 出 物( 585
mg),酢 酸 エ チ ル 抽 出 物( 215 mg),ク ロ ロ ホ ル ム 抽 出 物( 176 mg)お よ び 水 抽 出
物( 1.4 g)を 得 た .GLI1 転 写 阻 害 活 性 は ,へ キ サ ン ,酢 酸 エ チ ル お よ び ク ロ ロ ホ
ル ム 抽 出 物 に 移 行 し ,ま た そ れ ぞ れ の TLC 分 析 に よ り 同 じ 成 分 が 含 ま れ て い る こ
と が 判 明 し た の で ,へ キ サ ン ,酢 酸 エ チ ル お よ び ク ロ ロ ホ ル ム 抽 出 物 を 合 わ せ て ,
以 降 の 操 作 を 行 っ た .合 わ せ た 抽 出 物( 0.9 g)を ,へ キ サ ン /酢 酸 エ チ ル 系 グ ラ ジ
エ ン ト 溶 媒( 1/0~ 0/1)お よ び 酢 酸 エ チ ル /メ タ ノ ー ル 系 グ ラ ジ エ ン ト 溶 媒( 1/0~
0/1)を 用 い た シ リ カ ゲ ル カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー( f30 ´ 220 mm)で 分 離 を 行
っ た 結 果 , Frs. 1A~ 1H の 8 つ の 画 分 を 得 た . 8 つ の 画 分 ( Frs. 1A~ 1H) の GLI1
転 写 阻 害 活 性 を 測 定 し た と こ ろ ,Frs. 1C( 75 mg),1D( 73 mg)お よ び 1E( 18 mg)
に 1 mg/mL で 転 写 阻 害 活 性 を 示 し た . ま た , Frs. 1F( 107 mg), 1G( 219 mg) お
よ び 1H( 64 mg) も 10 mg/mL で 転 写 活 性 を 示 し た .
活 性 を 示 し た 画 分 Fr. 1D( 75 mg) を ク ロ ロ ホ ル ム /メ タ ノ ー ル 系 溶 媒 ( 1/4) を
用 い た Sephadex LH-20 カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー( f18 ´ 600 mm)で 分 離 し た 結
果 ,Frs. 2A~ 2F を 得 た .但 し ,Fr. 2F は ,カ ラ ム を 行 う 際 の 不 溶 解 物( 白 色 固 体 )
と し て 分 離 し た . Frs. 2A~ 2F の GLI1 転 写 阻 害 活 性 は , Frs. 2D( 34 mg) お よ び
2F( 23 mg)に 移 行 し た .Frs. 2D お よ び 2F は ,ODS HPLC( Develosil ODS-HG-5 (f10
´ 250 mm), H 2 O/MeOH 1/1)に お け る 分 析 に よ り ,同 じ 成 分 が 含 ま れ て い る こ と が
判 明 し ,よ り 精 製 が 進 ん で い た Fr. 2F を 用 い て 以 降 の 分 離 を 行 っ た .Fr. 2F を ODS
HPLC( Develosil ODS-HG-5 (f10 ´ 250 mm); eluent, H 2 O/MeOH 1/1; flow rate, 2.0
mL/min) に て 主 成 分 を 分 取 し , 化 合 物 17( 5.1 mg, t R 24 min) を 得 た .
Fr. 1C( 73 mg)も Fr. 1D と 同 様 の 手 法 に よ り ,ク ロ ロ ホ ル ム /メ タ ノ ー ル 系 溶 媒
( 1/4) を 用 い た Sephadex LH-20 カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー ( f18 ´ 600 mm) で
分 離 し た 結 果 , Frs. 3A~ 3E を 得 た . GLI1 転 写 阻 害 活 性 は , Fr. 3D( 19 mg) に 移
123
実験の部
行 し た の で ,ODS HPLC( Develosil ODS-HG-5 (f10´250 mm); eluent, H 2 O/MeOH 1/1;
flow rate, 2.0 mL/min) で 分 取 し た と こ ろ , 化 合 物 18( 4.9 mg, t R 30 min) お よ び
19( 0.4 mg, t R 38 min) を 得 た .
Physalis minima MeOH ext. (7-019, KKP0185)
2.7 g
partitioned with n-hexane (300 mL) x3 and H2O (50 mL)
Hexane ext.
584.9 mg
H2O lay.
partitioned with EtOAc (300 mL) x3 and H2O
EtOAc ext.
215.2mg
H2O lay.
partitioned with CHCl3 (300 mL) x2 and H2O
CHCl3 ext.
176.6 mg
Silica gel open C.C. (30 x 220 mm)
Hex/EtOAc - EtOAc/MeOH - MeOH
H2O ext.
1.41 g
1A
1B
1C
1D
1E
1F
1G
1H
157mg
201mg
75mg
73mg
19mg
107mg
219mg
65mg
Sephadex LH-20 open C.C.
(18x700 mm)
CHCl3/MeOH 2/8
5A
5B
5C
Sephadex LH-20 open C.C.
(18x700 mm)
CHCl3/MeOH 2/8
5D
4A
18mg 31mg 89mg 54mg
4B
4C
4D
7mg 53mg 19mg 13mg
Sephadex LH-20 open C.C.
(18 x 600 mm)
CHCl3/MeOH 2/8
Sephadex LH-20 open C.C. (18x600 mm)
CHCl3/MeOH 2/8
Sephadex LH-20 open C.C. (18x700 mm)
CHCl3/MeOH 2/8 - MeOH
4E
4mg
6A
6B
6C
6D
18mg
75mg
108mg
37mg
prep.HPLC ODS-HG-5 (10x250 mm)
H2O/MeOH 3/2
insolved
insolved
3A
6mg
3B
3C
3D
3E
34mg 12mg 19mg 1mg
prep.HPLC ODS-HG-5 (10x250 mm)
H2O/MeOH 2/3
2A
2B
2C
6 mg
6mg
3mg
2D
2E
34mg 7mg
9B
9C
9D
19mg 1.9mg 5.4mg 6.4mg
prep.HPLC ODS-HG-5 (10x250 mm)
H2O/MeOH 1/1
prep.HPLC ODS-HG-5
(10x250 mm)
H2O/MeOH 53/47
8A 8B 8C
7A 7B 7C
4.9mg 0.4mg
18 19
9A
2F
23mg
10A 10B 10C 10D 10E
5.1mg
6.5mg 5.7mg 14mg 1.0mg 6.9mg
17
Fig. II. Separation of MeOH ext. of P. minima
Physalin F (17)
25
amorphous solid; [α] D –11 (c 0.5, CHCl 3 ); 1 H and
13
C NMR data, Table ; HRESIMS m/z
+
527.1917 [M+H] (calcd for C 2 8 H 3 1 O 1 0 , 526.1917).
Physalin B (18)
25
amorphous solid; [α] D –76 (c 0.2, CHCl 3 ); 1 H and
511.1968 [M+H] + (calcd for C 2 8 H 3 1 O 9 , 511.1968).
124
13
C NMR data, Table ; HRESIMS m/z
実験の部
isohysalin B (19)
25
1
amorphous solid; [α] D –173 (c 0.3, CHCl 3 );
H NMR data, Table ; HRESIMS m/z
+
511.1973 [M+H] (calcd for C 2 8 H 3 1 O 9 , 511.1968).
13
Table I.
1
2
δC
205.9
127.7
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
146.3
33.3
61.7
64.8
23.5
37.3
34.2
50.0
32.9
24.7
79.4
106.9
207.4
56.2
79.9
127.1
15.6
80.9
21.4
76.8
25.6
31.0
50.8
60.6
27
28
166.6
26.4
a
C and 1 H NMR chemical shifts of 17, 18 and 19 in CDCl 3
17 b
δ H (J, Hz)
δC
205.7
127.4
6.00 (dd, 10, 2.5)
6.86 (m)
1.9 a , 3.0 a
146.1
33.0
133.8
124.4
24.1
39.9
33.1
52.6
24.7
25.8
80.9
107.5
208.0
56.4
79.6
172.2
17.8
80.1
21.4
76.8
32.6
31.1
50.9
60.6
3.26 (d, 3.5)
2.3 a
2.2 a
2.7 a
1.2 a , 2.1 a
1.5 a , 2.3 a
4.10 (s)
1.30 (s)
1.95 (s)
4.54 (m)
3.74 (dd, 13, 1.0)
4.51 (m)
166.6
26.5
1.25 (s)
18 b
δ H (J, Hz)
19 c
δ H (J, Hz)
5.90 (dd, 10, 3.0)
6.77 (m)
2.2 a , 2.9 a
2.79
2.99
5.60
6.06
5.57 (br)
2.3 a
2.2 a
3.1 a
5.66 (m)
2.45 a , 2.30 a
2.28 a
3.00 a
1.3 a , 2.1 a
1.5 a , 2.3 a
1.29 a , 1.56 a
1.56 a , 2.28 a
4.12 (s)
2.19 (s)
1.26 (s)
1.26 (s)
1.97 (s)
4.51 (m)
1.98 (s)
4.55 (m)
2.04 (m)
3.76 (dd, 13, 1.5)
4.51 (m)
3.79 (d, 13.2)
4.53 (m)
1.21 (s)
1.32 (s)
(dd, 20, 5.0)
(m)
(m)
(dd, 9.9, 2.6 )
Multiplicity was not determined due to overlapping and broadof the signals.
Data were recorded at 500 MHz ( 1 H NMR) b and 125 MHz ( 1 3 C NMR) b , and 600 MHz ( 1 H NMR) c .
H O
21
O
O
20
18
17
12
O
19
11
1
HO
9
2
10
3
4
5
O
H
8
13
14
H
O
7
6
22
23
H
24
H
O
26
17
11
1
HO
9
10
3
5
4
17
19
2
O
20
18
12
28
15
O
O
25
16
O
H O
21
O
27
H
8
13
22
23
H
24
H
O
7
6
H
O
26
125
HO
9
10
3
5
17
11
1
4
18
19
2
O
20
18
12
28
15
O
O
25
16
O
14
H O
21
O
27
H
8
13
14
H
O
7
6
19
22
23
H
24
O
27
25
H
16
O
28
15
O
26
実験の部
3-4. 第 四 章 の 実 験 ( CKK32 お よ び ich77 の 分 画 )
3-4-1. CKK32 の 活 性 を 指 標 に し た 分 画
CKK32( glycerol stock) を Waksman agar media に 白 金 耳 を 用 い て 塗 布 し , 25°C
で 6 日 間 培 養 し た . 生 育 し た 菌 を , 100 mL Waksman 培 地 ( ´1) に 植 菌 し , 25°C
で 3 日 間 培 養 ( small scale) し た 後 , 10 mL の 菌 液 を 500 mL Waksman 培 地 ( ´5)
に 移 し ,25°C で 10 日 間 培 養( large scale)し た .培 養 し た 菌 液 に ,メ タ ノ ー ル( 500
mL)を 加 え ,室 温 で 30 分 抽 出 し た 後 ,遠 心 分 離( 4,000 rpm, 10 min)に て 菌 体 を
取り除き,上清を抽出液とした.抽出液を,エバポレータによりメタノールを除
去 し ,こ れ と 酢 酸 エ チ ル( 200 mL ´ 2)お よ び n-ブ タ ノ ー ル( 200 mL ´ 2)で 順 次
分 配 し ,酢 酸 エ チ ル 抽 出 物( 430 mg)お よ び n-ブ タ ノ ー ル 抽 出 物( 3.6 g)を 得 た .
GLI1 転 写 阻 害 活 性 は ,酢 酸 エ チ ル 抽 出 物 に 移 行 し た の で ,酢 酸 エ チ ル 抽 出 物 の 分
離を行った.
酢 酸 エ チ ル 抽 出 物( 430 mg)を ,ク ロ ロ ホ ル ム /メ タ ノ ー ル 系 グ ラ ジ エ ン ト 溶 媒
( 1/0~ 0/1)を 用 い た シ リ カ ゲ ル ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー( f30 ´ 200 mm)で 分 離 し た
結 果 ,8 つ の 画 分( Frs. 1A~ 1H)を 得 た .GLI1 転 写 阻 害 活 性 は ,Fr. 1B( 249 mg)
に 移 行 し , 続 く ク ロ ロ ホ ル ム /メ タ ノ ー ル 系 溶 媒 ( 1/1) を 用 い た Sephadex LH-20
カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー( f18 ´ 700 mm)で 分 離 し た 結 果 ,5 つ の 画 分( Frs. 2A
~ 2E) を 得 , GLI1 転 写 阻 害 活 性 は , Fr. 2C( 186 mg) に 以 降 し た .
Fr. 2C を ,ODS HPLC( Mightysil RP-18 (f20 ´ 250 mm); eluent, H 2 O/MeOH 43/57;
flow rate, 5.0 mL/min)に よ る 分 離 を 行 い ,Frs. 3A~ 3D を 得 た .Frs. 3A は ,Fr. 3B
( 2.0 mg, peak1, ca. 36 min) ま で の 画 分 で , Frs. 3B お よ び 3C( 0.4 mg) は ピ ー ク
を 分 取 し , Fr. 3D( 71 mg) は , メ タ ノ ー ル に よ る 洗 浄 画 分 と し た . GLI1 転 写 阻
害 活 性 は , Fr. 3A( 60 mg) に 移 行 し た .
Fr. 3A に は ,多 数 の 成 分 が 含 ま れ て い た た め ,ODS HPLC( Mightysil RP-18 (f20
´ 250 mm); eluent, H 2 O/MeOH 67/33; flow rate, 5.0 mL/min) に て 初 め に 出 て く る ピ
ー ク を 分 取 し , Frs. 4A~ 4I の 9 つ の 画 分 を 得 , GLI1 転 写 阻 害 活 性 を 測 定 し た と
こ ろ , Fr. 4I( 18.9 mg) に 阻 害 活 性 が 移 行 し た . Fr. 4I は , メ タ ノ ー ル に よ る 洗 浄
画 分 で あ り , 初 め に 出 て き た そ れ ぞ れ の ピ ー ク ( Frs. 4A~ 4G) に は , GLI1 転 写
阻害活性を示さなかった.
Fr. 4I を さ ら に ODS HPLC( Mightysil RP-18 (f20 ´ 250 mm); eluent, H 2 O/MeOH
53/47; flow rate, 5.0 mL/min) に て 分 離 し た と こ ろ , 6 つ の 画 分 ( Frs. 5A~ 5F) を
得 た .GLI1 転 写 阻 害 活 性 は ,Fr. 5F( 2.6 mg, t R 40 min)に 移 行 し ,か ご う ぶ つ 26
とした.
126
実験の部
CKK32 MeOH ext.
partitioned with EtOAc (200mL x2) and H2O
EtOAc ext.
429.6 mg
H2O lay.
partitioned with n-BuOH (200 mL) x2and H2O
BuOH ext.
3.5 g
Silica gel open C.C. (30 x 200 mm)
CHCl3-CHCl3/MeOH-MeOH
H2O lay.
1A
1B
1C
1D
1E
1F
1G
1H
21.4mg
249.1mg
85.7mg
23.2mg
26.3mg
16.4mg
11.0mg
6.3mg
Sephadex LH-20 open C.C. (18x700 mm)
CHCl3/MeOH 1/1
2D
2E
14mg 36mg 186mg 3mg
2A
2B
2C
1mg
prep.HPLC Mightysil (20 x 250 mm)
H2O/MeOH 43/57
3A
3B
3C
3D
60.4mg 2.0mg 0.4mg 70.9mg
prep.HPLC Mightysil (20 x 250 mm)
H2O/MeOH 67/33
4A
4.9mg
4B
4C
0.8mg 2.5mg
4D
4E
4F
4G
4H
4I
5.6mg
6.0mg
2.7mg
6.0mg
1.1mg
18.9mg
prep.HPLC Mightysil (20 x 250 mm)
H2O/MeOH 53/47
5A
4.2mg
5B
5C
0.9mg 2.5mg
5D
5E
5F
1.1mg
0.5mg
2.6mg
26
Fig. III. Separation of MeOH ext. of CKK32
127
実験の部
3-4-2. ich77 の 活 性 を 指 標 に し た 分 画
会 社 よ り 譲 与 い た だ い た ich77( H 2 O/EtOH 1/1 抽 出 物 , 44.2 g) を 水 ( 500 mL)
と 酢 酸 エ チ ル( 500 mL ´ 2)お よ び n-ブ タ ノ ー ル( 500 mL ´ 2)で 順 次 分 配 を 行 い ,
酢 酸 エ チ ル 抽 出 物 ( 8.4 g), ブ タ ノ ー ル 抽 出 物 ( 7.4 g) お よ び 水 抽 出 物 ( 36.7 g)
を 得 た . GLI1 転 写 阻 害 活 性 は , 10 mg/mL で ブ タ ノ ー ル 抽 出 物 が , 50 mg/mL で 酢
酸 エ チ ル 抽 出 物 お よ び 水 抽 出 物 が 示 し た . 今 回 , 10 mg/mL で GLI1 転 写 阻 害 活 性
を示したブタノール抽出物の分離を行った.
ブ タ ノ ー ル 抽 出 物 ( 7.4 g) を 水 /メ タ ノ ー ル 系 グ ラ ジ エ ン ト 溶 媒 ( 0/1~ 1/0) を
用 い た Diaion HP-20 カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー ( f30 ´ 400 mm) を 用 い て 分 離 を
行 っ た 結 果 ,5 つ の 画 分( Frs. 1A~ 1E)を 得 た .GLI1 転 写 阻 害 活 性 は ,Frs. 1C( 1.9
g), 1D( 1.4 g) お よ び 1E( 655 mg) に 移 行 し た .
Fr. 1C( 1.9 g) を 水 /メ タ ノ ー ル 系 グ ラ ジ エ ン ト 溶 媒 ( 4/1~ 1/4) を 用 い た ODS
カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー ( f45 ´ 200 mm) を 用 い て 分 離 を 行 っ た 結 果 , 4 つ の
画 分 ( Frs. 2A~ 2D) を 得 た . GLI1 転 写 阻 害 活 性 は , Fr. 2D( 34 mg) に 移 行 し ,
Fr. 2A( 390 mg), 2B( 1.1 g) お よ び 2C( 554 mg) は 阻 害 活 性 が な か っ た .
Fr. 2D( 34 mg)を ODS HPLC( Mightysil RP-18 (f20 ´ 250 mm); eluent, H 2 O/MeOH
55/45; flow rate, 5.0 mL/min)を 用 い て 分 析 を 行 っ た と こ ろ ,約 50 分 付 近 に 主 成 分
の ピ ー ク を 与 え , 0~ 50 分 ( Fr. 5A, 6.0 mg), ピ ー ク ( Fr. 5B, 4.7 mg), 小 さ な ピ
ー ク( Fr. 5C, 0.6 mg)お よ び メ タ ノ ー ル に よ る 洗 浄( Fr. 5D, 8.1 mg)を 分 取 し た .
GLI1 転 写 阻 害 活 性 は , Fr. 5A に 以 降 し , 主 成 分 ( Fr. 5B) に は 活 性 が な い こ と が
判 明 し た .Fr. 5A に は ,多 数 の 成 分 が 含 ま れ る こ と ,ま た 収 量 が 少 な い こ と よ り ,
以降の分離を行っていない.
ま た ,Frs. 2B お よ び 2C( そ れ ぞ れ GLI1 転 写 阻 害 活 性 は な い )の 主 成 分 を ODS
HPLC に よ り 分 取 し た が , GLI1 転 写 阻 害 活 性 は 示 さ な か っ た . 従 っ て , Fr. 1C の
GLI1 転 写 阻 害 活 性 成 分 は , Fr. 5A( 6.0 mg) に 集 約 さ れ た こ と が 判 明 し た .
Fr. 1D( 1.4 g) を 水 /メ タ ノ ー ル 系 グ ラ ジ エ ン ト 溶 媒 ( 7/3~ 0/1) を 用 い た ODS
カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー を 用 い て 分 離 を 行 っ た 結 果 ,6 つ の 画 分( Frs. 6A~ 6F)
を 得 た . そ れ ぞ れ の 画 分 の GLI1 転 写 阻 害 活 性 を 測 定 し た と こ ろ , 10 mg/mL で 全
て の 画 分 に 転 写 阻 害 活 性 を 示 し た .収 量 は ,Frs. 6A( 96 mg),6B( 1.1 g),6C( 291
mg), 6D( 90 mg), 6E( 57 mg) お よ び 6F( 40 mg) で あ る .
Fr. 6B( 50 mg / 1.1 g) を ODS HPLC( Mightysil RP-18 (f20 ´ 250 mm); eluent,
H 2 O/MeOH 63/37; flow rate, 5.0 mL/min) で 分 離 し た と こ ろ , 11 の 画 分 ( Frs. 7A~
7K) を 得 た . Fr. 6B に は , 主 成 分 が 2 つ ( Fr. 7D お よ び 7G) だ が , GLI1 転 写 阻
害 活 性 は , Fr. 7A( 3.3 mg) の み に 移 行 し た . Fr. 7A は , ODS HPLC に お け る 0~
30 分 の 主 成 分 が 溶 出 す る ま で の 画 分 で あ る .
128
実験の部
Fr. 7A に 阻 害 活 性 が 移 行 し た が ,ODS HPLC で は ,ピ ー ク が な か っ た の で ,Fr. 7A
を 細 か く 分 取 し ,GLI1 転 写 阻 害 活 性 を 測 定 し た .Fr. 7A を ODS HPLC( Mightysil
RP-18 (f20 ´ 250 mm); eluent, H 2 O/MeOH 63/35; flow rate, 5.0 mL/min)で 分 離 し ,6
つ の 画 分 ( Frs. 8A~ 8F) を 得 た . GLI1 転 写 阻 害 活 性 は , さ ら に 初 め の 画 分 ( Frs.
8A~ 8C) に 移 行 し た が , 現 在 , 活 性 化 合 物 の 単 離 に は 至 っ て い な い .
ich77 H2O/EtOH ext.
44.2 g
partitioned with EtOAc (500mL x2) and H 2O
EtOAc ext.
8.4 g
H2O lay.
partitioned with n-BuOH (200 mLx2) and H 2O
BuOH ext.
7.4 g
H2O ext.
36.7 g
Diaion HP-20 (30 x 400 mm)
H2O/MeOH
1B
1A
1C
1D
1E
1.9 g
1.4 g
655 mg
ODS open C.C. (45 x 200 mm)
H2O/MeOH
2A
2B
2C
ODS open C.C. (45 x 200 mm)
H2O/MeOH
6A
2D
96mg
390mg 1.1g 554mg 34mg
100 mg 100 mg
prep.ODS HPLC C.C. (20 x 250 mm)
H2O/MeOH 66/34
4A
4B
4C
4D
4E 4F 4G
18mg
1mg
3mg
9mg
3mg 15mg 7mg
6B
6C
6D
6E
6F
1.1g 291mg 90mg 57mg 39mg
50 mg
prep.ODS HPLC C.C. (20 x 250 mm)
H2O/MeOH 55/45
prep.HPLC Mightysil (20 x 250 mm)
H2O/MeOH 63/37
5A
5B
6mg
5mg 0.6mg 8mg
5C
5D
prep.ODS HPLC C.C. (20 x 250 mm)
H2O/MeOH 63/37
3A
3B
3C
3D
3E 3F
2mg
5mg
5mg
38mg
2mg 16mg
7A
3.3mg
7B
7C
0.3mg 1.0mg
7D
7E
7F
7G
7H
7I
7H
7I
5.3mg
1.1mg
1.7mg
9.9mg
1.2mg
1.2mg
13mg
0.2mg
prep.HPLC Mightysil (20 x 250 mm)
H2O/MeOH 65/35
8A
Fig. IV. Separation of EtOH ext. of ich77
129
8B
8C
8D
8E
8F
実験の部
3-5. 第 五 章 の 実 験 ( GLI 転 写 阻 害 活 性 化 合 物 の 評 価 )
3-5-1. GLI2 へ の 影 響
HaCaT-GLI2 ( tetracycline-regulated HaCaT ) を 24-well plate に 播 種 ( 2´10 5
cells/well) し た 翌 日 , 1-well あ た り 1.0 mg の pGL4-GLI BS と 0.2 mg の renilla
luciferase( pRL-CMV) を 2 mL の Lipofectamine 2000 を 用 い て 一 過 性 遺 伝 子 導 入
し た .12 時 間 培 養 後 ,外 因 性 の GLI2 を 誘 導 す る た め ,tetracycline( 終 濃 度 1 mg/mL)
を 添 加 し た .12 時 間 GLI2 を 誘 導 し た 後 ,そ れ ぞ れ の 濃 度 の テ ス ト サ ン プ ル を Tc
が 含 ま な い 培 地 で 希 釈 し て 調 製 し , そ の 希 釈 し た 溶 液 を 500 mL 添 加 し た . 12 時
間 サ ン プ ル を 処 理 し た 後 , Dual-Glo™ Luciferase Assay system ( Promega) を 用 い
て評価した.
Dual ル シ フ ェ ラ ー ゼ 活 性 の 測 定 は , 培 地 を 取 り 除 き , 80 mL の 1´Passive Lysis
Buffer( Promega) を 加 え , 室 温 に て 10 分 放 置 し て 細 胞 を 溶 解 後 , pGL4-GLI BS
の ル シ フ ェ ラ ー ゼ 活 性 を 測 定 す る た め ,50 mL の Dual-Glo Luciferase buffer を 加 え ,
pGL4-GLI BS の 化 学 発 光 量 を 測 定 し た .そ の 後 ,50 mL の Stop and Glo Buffer を 加
え pRL-CMV の 化 学 発 光 量 を 測 定 し た .
3-5-2. Western blotting
細 胞 溶 解 液 ( Lysate) の 調 製
10 cm dish に 2 ´ 10 6 cells の HaCaT-GLI1 ま た は HaCaT-GLI2 を 播 種 し , 12 時 間
後 に Tc( 終 濃 度 1 mg/mL)を 添 加 し ,そ れ ぞ れ の 細 胞 で 外 因 性 の GLI を 誘 導 さ せ
た . 12 時 間 GLI を 誘 導 さ せ た 後 , 培 地 を 取 り 除 き , Tc を 含 ま な い 培 地 で 化 合 物
( 1, 9, 17 お よ び 18) を 希 釈 し , 24 時 間 細 胞 に 作 用 さ せ た .
化 合 物 を 処 理 後 , 培 地 を 取 り 除 き , 1 mL の PBS で 2 回 洗 浄 し , cell scraper を
用 い て 細 胞 を 掻 き 取 り ,1.5 mL eppentube に 移 し た .PBS を 取 り 除 い た 後 ,100 mL
の lysis buffer( 20 mM Tris-HCl (pH 7.4), 150 mM NaCl, 0.5% Triton X-100, 0.5%
sodium deoxycholate, 10 mM EDTA, 1 mM sodium orthovanadate, and 0.1 mM NaF)
containing 1% proteasome inhibitor cocktail( Nacalai tesque Inc.) を 加 え , 細 胞 を 溶
解 し た 後 ,氷 上 で 30 分 放 置 し た .そ の 後 で 遠 心 分 離( 13,000 rpm,30 min,4 °C)
を 行 い , 上 清 を SDS−PAGE 用 細 胞 溶 解 液 ( lysate) と し た .
SDS−PAGE お よ び Western blotting
得 ら れ た 細 胞 溶 解 液 ( lysate ) は , GLI1 お よ び PTCH の 検 出 に は 7.5%
polyacrylamide gel を , BCL2 の 検 出 に は 12.5% polyacrylamide gel を 用 い て 分 離 し
た .lysate を ゲ ル に ア プ ラ イ し ,stacking gel( 7.5% PAGE)は 電 圧 10 V で ,running
gel は 電 圧 20 V で 分 離 し た .
130
実験の部
Blotting
GLI1 お よ び PTCH の polyvinylidine difluoride( PVDF) membrane( Bio-Rad) へ
の 転 写 は , wet 法 を 用 い , BCL2 の 転 写 は , semi-dry 法 を 用 い た .
・ Semi-dry 法 は , ろ 紙 に 染 み 込 ま せ た Buffer A( 0.3M Tris, 5% MeOH), Buffer B
( 25 mM Tris, 5% MeOH)お よ び Buffer C( 25mM Tris, 40mM 6-aminohexanoic acid,
5% MeOH) で ゲ ル と メ ン ブ レ ン を 挟 み 込 み , 電 圧 12 V, 60 分 通 電 し た .
・ Wet 法 は , CAPS buffer( N-cyclohexyl-3-aminopropanesulfonic acid, Invitrogen)
で 満 た し た タ ン ク 中 で , 50 V, 100 mA で 16 時 間 通 電 し た .
一次抗体および二次抗体処理
PVDF へ の 転 写 後 , 5% skimmed milk を 含 む TBST( 10 mM Tris-HCl, pH 7.4, 100
mM NaCl, and 0.1% Tween 20)で 1 時 間 ,室 温 に て blocking を 行 い ,blots を TBST
で 3 回 洗 浄 し ,一 次 抗 体 処 理 に 移 っ た .5% skimmed milk を 含 む TBST で そ れ ぞ れ
に 希 釈 し た 一 次 抗 体 を 室 温 に て 1 時 間 反 応 後 ,blots を TBST で 3 回 洗 浄 し ,二 時
抗 体 処 理 に 移 っ た .5% skimmed milk を 含 む TBST で そ れ ぞ れ に 希 釈 し た 二 次 抗 体
を 室 温 に て 1 時 間 反 応 後 ,blots を TBST で 3 回 洗 浄 し ,immunocomplex の 検 出 に
移 っ た . 検 出 は , ECL Advance Western detection system( GE health Care/Amersham
Biosciences)ま た は Immobilon Western( Millopore)を 用 い た .内 部 標 準 の コ ン ト
ロ ー ル と し て , b -acitin を 用 い た .
一 次 抗 体 と し て ,GLI1( 1:200),PTCH( 1:200)
( Santa Cruz Biotechnology),お
よ び BCL2( 1:4000), b-acitin( 1:4000)( Sigma) を 用 い た . ま た , 二 次 抗 体 と し
て , anti-goat IgG( Sigma ), anti-rabbit IgG お よ び anti-mouse IgG ( Amersham
Biosciences) を 用 い た
3-5-3. PANC1 お よ び C3H10T1/2 細 胞 の 細 胞 毒 性 試 験
PANC1 ま た は C3H10T1/2 を そ れ ぞ れ 96-well black microtitre plate に 1×10 4
cells/well 播 種 し , 24 時 間 培 養 ( 37°C, 5% CO 2 ) し た . 24 時 間 後 , 培 地 を 取 り 除
き ,そ れ ぞ れ の 濃 度 の 化 合 物 を 培 地 で 希 釈 し 調 製 し た 溶 液 を 100 μL 加 え た .さ ら
に 24 時 間 培 養 後 , 細 胞 毒 性 を fluorescence platereader を 用 い て fluorometric
microculture cytotoxicity assay( FMCA) に て 評 価 し た .
131
実験の部
細胞毒性(%)= 1 -
サンプルの蛍光強度
コントロールの蛍光強度
´100
3-5-4. 半 定 量 的 RR-PCR
PANC1 細 胞 1´10 6 cells を 10 cm dish に 播 種 し た 24 時 間 後 , そ れ ぞ れ の 濃 度 の
化 合 物( 1,9,17 お よ び 18)を 添 加 し た .24 時 間 作 用 さ せ た 後 ,RNeasy Mini kit
( Qiagen)を 用 い total RNA を 得 た .得 ら れ た total RNA よ り Oligotex-dT30 <Super>
mRNA Purification Kit( TaKaRa)を 用 い て mRNA を 調 整 し ,PrimeSTAR RT-PCR Kit
( TaKaRa)に て cDNA を 合 成 し た .用 い た プ ラ イ マ ー は ,以 下 に 示 す 通 り で あ る .
Gapdh は , 内 部 標 準 コ ン ト ロ ー ル と し て 用 い た .
Primers
Gli1;
Gli2;
Ptch;
forward
5’-GCCGTGTAAAGCTCCAGTGAACACA-3’
reverse
5’-TCCCACTTTGAGAGGCCCATAGCAAG-3’(200 bp product)
forward
5’-TGGCCGCTTCAGATGACAGATGTTG-3’
reverse
5’-CGTTAGCCGAATGTCAGCCGTGAAG-3’ (200 bp product)
forward
5’-TCCTCGTGTGCGCTGTCTTCCTTC-3’
reverse
5’-CGTCAGAAAGGCCAAAGCAACGTGA-3’ (200 bp product)
Gapdh; forward
reverse
5’-ATGGGGAAGGTGAAGGTCG-3’
5’-TAAAAGCAGCCCTGGTGACC-3’
(70 bp product)
PCR condition
1) initial denaturation
94°C
5 min.
2) denaturation
94°C
1 min.
3) annealing
58°C
30 sec.
4) elongation
72°C
30 sec.
4) final elongation
72°C
5 min.
2)〜 4), 25〜 35 cycles
PCR は ,TaKaRa Ex Taq. Polymerase( TaKaRa)を 用 い て 増 幅 後 ,3% agarose-TBE
gel に て 電 気 泳 動 ( 100 V) し , ethidium bromide に よ り 染 色 後 , UV 照 射 下 に て 確
認 し た . 発 現 量 は , 内 部 標 準 コ ン ト ロ ー ル と し て 用 い た Gapdh と 比 較 し た .
132
実験の部
3-6. 第 六 章 の 実 験 ( Lycogala epidendrum の 成 分 研 究 )
3-6-1. Lycogala epidendrum の 分 画
Organism
試 料 と し た マ メ ホ コ リ( Lycogala epidendrum)は ,山 本 幸 憲 氏 に よ り 2004 年 高
知県にて採取されたものを用いた.
( Voucher specimens (#25630-25632) are maintained by Y.Y.)
Extraction and isolation
マ メ ホ コ リ Lycogala epidendrum( 177.6 g) の 野 外 採 取 子 実 体 を , 90%メ タ ノ ー
ル ( 2.5 L × 3) お よ び 90%ア セ ト ン ( 2.5 L × 1) に て 抽 出 し , メ タ ノ ー ル /ア セ ト
ン 抽 出 物 ( 46.4 g) を 得 た . 得 ら れ た 抽 出 物 を 水 ( 1 L) と 酢 酸 エ チ ル ( 1 L × 3)
お よ び n-ブ タ ノ ー ル ( 1 L × 2) で 順 次 分 配 し , そ れ ぞ れ の 抽 出 物 を 得 た .
酢 酸 エ チ ル 抽 出 物( 24.8 g)を ,へ キ サ ン /ク ロ ロ ホ ル ム( 3/7~ 0/1)お よ び ク ロ
ロ ホ ル ム /メ タ ノ ー ル ( 1/0~ 1/1) 系 グ ラ ジ エ ン ト 溶 媒 を 用 い た シ リ カ ゲ ル カ ラ ム
ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー ( f50 × 500 mm) に て 分 離 を 行 い , 12 の 画 分 ( Frs. 1A~ 1L)
を得た.
Fr. 1H( 650 mg) を 水 /メ タ ノ ー ル ( 1/1) で 溶 解 さ せ , 可 溶 部 に つ い て , 水 /メ
タ ノ ー ル 系 グ ラ ジ エ ン ト 溶 媒( 1/1~ 0/1) を 用 い た ODS カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ
ー ( f25 × 400 mm) に て 分 離 を 行 い , 4 つ の 画 分 ( Frs. 2A~ 2D) を 得 た . TLC に
よ る 分 析 に よ り ,Frs. 2B お よ び 2D は 精 製 さ れ た と 判 断 し ,化 合 物 14( 200.6 mg)
お よ び 21( 7.5 mg)を 得 た .
( TLC analysis on ODS plate; solvent, H 2 O/MeOH 1/4; R f ,
0.68 for 14 and 0.61 for 21)
Fr. 1F( 4.2 g / 14.3 g) を さ ら に ク ロ ロ ホ ル ム /メ タ ノ ー ル 系 グ ラ ジ エ ン ト 溶 媒
( 50/1~ 10/1) を 用 い た シ リ カ ゲ ル カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー ( f40 × 400 mm)
を 行 い , 8 つ の 画 分 ( Frs. 3A~ 3H) を 得 た . Fr. 3F を ク ロ ロ ホ ル ム /メ タ ノ ー ル 系
溶 媒 ( 1/1) を 用 い た Sephadex LH-20 カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー ( f20 × 600 mm)
を 用 い た 分 離 に よ り ,4 つ の 画 分( Frs. 4A~ 4D)を 得 ,TLC 分 析 に よ り Fr. 4C が
精 製 さ れ た と 判 断 し , TLC お よ び NMR よ り 化 合 物 13( 83.0 mg) と し た .( TLC
analysis on ODS plate; solvent, 80% MeOH; R f , 0.58)
Fr. 1I( 2.1 g) を , 水 /メ タ ノ ー ル 系 グ ラ ジ エ ン ト 溶 媒 ( 1/1~ 0/1) を 用 い た ODS
カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー( f35 × 400 mm)に て 分 離 し ,11 の 画 分( Frs. 6A~ 6K)
を 得 た .Fr. 6E( 460 mg)を ,水 /メ タ ノ ー ル 系 溶 媒( 3/7)を 用 い た ODS HPLC( Inertsil
ODS-3, f10 × 250 mm; eluent, H 2 O/MeOH 2/3; flow rate, 2.0 mL/min) を 用 い て 精 製
し , 化 合 物 10( 6.0 mg, t R 45 min) を 得 た . ま た , Fr. 6G( 280 mg) は , TLC に よ
る 分 析 よ り 単 一 化 合 物 と し ,化 合 物 20( ODS plate; solvent, H 2 O/MeOH 3/7; R f , 0.35)
133
実験の部
と し た .Fr. 6H( 90 mg)の 一 部( 30 mg)を 水 /メ タ ノ ー ル 系 溶 媒( 3/7)を 用 い た
ODS HPLC( CAPCELLPAK C18 MG II, f10 × 250 mm; eluent, H 2 O/MeOH 3/7; flow
rate, 1.8 mL/min) に よ り 精 製 を 行 い , 化 合 物 9( 2.1 mg, t R 26 min) を 得 た .
Fr. 1J( 3.2 g)を ,水 /メ タ ノ ー ル 系 グ ラ ジ エ ン ト 溶 媒( 4/1~ 0/1)を 用 い た ODS
カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー( f50 ´ 250 mm)に て 分 離 を 行 い ,9 つ の 画 分( Frs. 11A
~ 11I)を 得 た .Fr. 11B( 286.2 mg)を 水 /メ タ ノ ー ル 系 溶 媒( 1/1)を 用 い た ODS HPLC
( Inertsil ODS-3, f10 × 250 mm; eluent, H 2 O/MeOH 1/1; flow rate, 2.0 mL/min) に よ
る 分 離 を 行 い ,3 つ の 画 分 を 得 ,保 持 時 間 12 分 の ピ ー ク を 化 合 物 16( 2.1 mg, t R 12
min)と し た .ま た , Fr. 11D( 493 mg)は ,TLC 分 析 に よ り 化 合 物 15 が 含 ま れ て
い る こ と が 明 ら か と な っ た( solvent, H 2 O/MeOH 7/3; R f , 0.38).Fr. 11H( 195.4 mg)
は ,水 /メ タ ノ ー ル 系 溶 媒( 32/68)を 用 い た ODS HPLC( Inertsil ODS-3, f10 × 250
mm; eluent, H 2 O/MeOH 32/68; flow rate, 2.0 mL/min)に よ り ,化 合 物 10( 2.6 mg, t R
22 min)お よ び 12( 5.6 mg, t R 27 min)を 与 え ,更 な る ODS HPLC( Inertsil ODS-3,
f10 × 250 mm; eluent, H 2 O/MeOH 22/78; flow rate, 2.0 mL/min) に よ る 精 製 に よ り ,
化 合 物 22( 0.45 mg, t R 34 min) を 得 た .
134
実験の部
Lycogala epidendrum fruit bodies (177.6 g)
extracted with 90% MeOH and 90% acetone (x3)
MeOH ext. (46.4 g)
partitioned with EtOAc and H2O
H2O lay.
partitioned with n-BuOH and H2O
EtOAc ext.
24.8 g
Silica gel open C.C. (50 x 500 mm)
Hex/CHCl3 - CHCl3/MeOH - MeOH
1A
1B
150 mg
1.1 g
n-BuOH ext.
5.5 g
1C
1D
1E
1F
260 mg
1.55 g
1.75 g
14.33 g
1G
590 mg
1H
1I
650 mg
2.12 g
1J
H2O ext.
11.38 g
1K
3.23 g
1L
3.3 g
1.58 g
ODS open C.C. (50 x 250 mm)
H2O/MeOH-MeOH
Silica gel open C.C. (40 x 400 mm).
Hex/CHCl3 - CHCl3/MeOH - MeOH
3A
3B
3C
3D
3E
3F
3G
22.8mg 765.6
340.8
791.3
410.1
1.29g
28.1
Sephadex LH-20 open C.C.
(20 x 600 mm)
CHCl3/MeOH 1/1
50% MeOH
soluble in
50% MeOH
3H
30.6
11A
2
1
270 mg
Sephadex LH-20 open C.C.
(20 x 600 mm)
CHCl3/MeOH 1/1
11B
11C
11D
11E
11F
11G
11H
117.4 mg 286.2
86.6
493.3
253.1
532.2
379.0
195.4
15
prep.HPLC ODS
(10x 250 mm)
H2O/MeOH 1/1
380 mg
ODS opne C.C.
(25 x 400 mm)
H2O/MeOH
712.5mg 32.3 83.0 1.5
13
2B
2D
200.63
7.53
14
21
12A 12B 12C 12D 12E 12F 12G
2.1mg 226.2
16
prep.HPLC ODS
10 x 250 mm
H2O/MeOH 2/3
6C
6D
6E
6F
6G
6H
6I
180mg
350
10
50
460
190
280
90
10
20
prep. HPLC
48% MeOH
6J
110
1.00
10 12
1.33 0.45
22
14A 14B 14C 14D
1.7 mg 2.8
6B
0.96mg 2.61 5.55 0.13
100Mwash
ODS open C.C. (35 x 400 mm)
H2O/MeOH
6A
11I
prep.HPLC ODS
10 x 250 mm
H2O/MOH 32/68
13A 13B 13C
5A 5B 5C 5D 4A 4B 4C 4D
335.5mg 37.9 20.3 0.96
pellet
8.8
6K
390
prep. HPLC
H2O/MeOH 3/7
7A
2.1 mg
8A 8B 8C 8D 8E
2.0mg 1.2 1.0 1.1
19
LH-20 open C.C.
(30 x 600)
MeOH
9
prep. HPLC
H2O/MeOH 2/3
pellet
9B 9C 9D 9E
291mg 5.19
6.4
7.6
10A10B 10C 10D
0.2 mg
1.5
6.0
8.3
10
Fig. V. Separation of MeOH ext. of Lycogala epidendrum
6-hydroxystaurosporinone (10)
light brown amorphous solid; UV (MeOH) λ ma x nm (log ε) 342 (9.8), 294 (10.9), 226
(10.2); IR (ATR) ν ma x 3282, 1646, 1583, 1453, 1402 and 1327 cm -1 ; 1 H and
13
C NMR
+
data, Table 6-1; FABMS m/z 327 [M] ; HRFABMS m/z 327.0981 (calcd for C 2 0 H 1 3 O 2 N 3 ,
327.1008).
5,6-dihydroxyarcyriaflavin A (12)
yellow amorphous solid; UV (MeOH) λ ma x nm (log ε) 330 (10.5), 284 (9.8), 230
(10.5); IR (ATR) ν ma x 3307, 1733, 1637, 1565, 1475, 1404 and 1320 cm -1 ; 1 H and
+
13
C
NMR data, Table 6-1; FABMS m/z 357 [M] ; HRFABMS m/z 357.0762 (calcd for
C 2 0 H 11 O 4 N 3 , 357.0750).
135
実験の部
3-6-2. 細 胞 毒 性 試 験
HeLa 細 胞 を 96-well plate に 6×10 3 cells/well 播 種 し ,24 時 間 培 養( 37°C,5% CO 2 )
し た .24 時 間 後 ,培 地 を 取 り 除 き ,そ れ ぞ れ の 濃 度 に 希 釈 し た サ ン プ ル を 加 え た .
24 時 間 サ ン プ ル を 作 用 さ せ た 後 , Fluorometric microculture cytotoxicity assay
( FMCA) を 行 い , 細 胞 毒 性 の 評 価 を 行 っ た . 細 胞 毒 性 の 評 価 は , サ ン プ ル を 添
加 し て い な い 値 を 100%と し , そ の 比 を 取 り 評 価 し た .
ま た , Jurkat 細 胞 ( 3.5×10 5 cells/mL) を 96-well plate に 95 μL/well 加 え , そ れ
ぞ れ の 濃 度 の 化 合 物 を 5 μL の 培 地 で 希 釈 し た も の を 添 加 し た .そ の 際 ,0.5 μg/mL
の TRAIL 添 加 と 非 添 加 群 を 作 成 し た . 72 時 間 化 合 物 を 作 用 さ せ た 後 , 細 胞 生 存
率 を alamer blue を 用 い た 比 色 測 定 で 評 価 し た .
KB/VJ-300 細 胞( 1.2×10 4 cells/mL)を 96-well plate に 195 μL/well 加 え ,そ れ ぞ
れ の 濃 度 の 化 合 物 を 5 μL の 培 地 で 希 釈 し た も の を 添 加 し た . 72 時 間 化 合 物 を 作
用 さ せ た 後 , 細 胞 生 存 率 を alamer blue を 用 い た 比 色 測 定 で 評 価 し た .
( Jurkat 細 胞 お よ び KB/VJ-300 細 胞 の 細 胞 毒 性 は ,北 里 研 究 所
小宮山寛機博士,
林正彦博士により評価していただいた.
3-6-3. キ ナ ー ゼ 阻 害 活 性 試 験
本実験は,文科省がん特定領域研究における抗がん剤スクリーニングの一環と
して,国立感染症研究所・生物活性物質部の上原至雅博士により行われた.
実 験 系 1( PKA, PKC, PTK お よ び eEF2K)
NIH3T3 細 胞 の v-src ト ラ ン ス フ ォ ー マ ン ト を 低 張 バ ッ フ ァ ー 中 で 破 砕 し ,遠 心 ,
除 核 し 酵 素 液 と し た . こ れ に DMSO に 溶 解 し た 検 体 , cAMP, ホ ル ボ ー ル エ ス テ
ル , [g- 3 2 P] ATP を 加 え , 25°C で 20 分 間 反 応 さ せ た . 反 応 停 止 後 , リ ン 酸 化 さ れ
た タ ン パ ク を SDS-PAGE で 分 離 し ,オ ー ト ラ ジ オ グ ラ フ ィ ー で 解 析 し た .こ の 方
法 に よ り ,A キ ナ ー ゼ( PKA),C キ ナ ー ゼ( PKC),src フ ァ ミ リ ー の チ ロ シ ン キ
ナ ー ゼ( PTK)お よ び 真 核 生 物 延 長 因 子 2 キ ナ ー ゼ( eEF-2 kinase;カ ル モ ジ ュ リ
ン 依 存 性 プ ロ テ イ ン キ ナ ー ゼ III)の 少 な く と も 4 種 の プ ロ テ イ ン キ ナ ー ゼ 活 性 が
同時に検出できる.
136
実験の部
実 験 系 2( EGFR)
ヒ ト 扁 平 上 皮 癌 A431 細 胞 を 蔗 糖 バ ッ フ ァ ー で 破 砕 し , 除 核 後 , 超 遠 心 に よ り
膜 画 分 を 集 め ,酵 素 液 と し た .こ れ に 検 体 ,EGF を 加 え ,25°C で 30 分 間 保 温 後 ,
[g- 3 2 P] ATP を 加 え て 0°C で 10 分 間 反 応 し た .酸 沈 殿 を 行 な い 洗 浄 後 ,酸 不 溶 性 の
リン酸化レベルを測定した.
実 験 系 3( VEGFR( Flt-1))
Flt-1 遺 伝 子 を 組 み 込 ん だ バ キ ュ ウ ロ ウ イ ル ス( 東 大 医 科 研 ,渋 谷 教 授 作 成 )を
昆 虫 細 胞 Tn5 に 感 染 さ せ ,EGF レ セ プ タ ー と 同 様 の 方 法 で 膜 分 画 を 調 整 し た .こ
れ に , 検 体 と [g- 3 2 P]ATP を 加 え , 25°C で 10 分 間 反 応 し た . 反 応 停 止 後 , リ ン 酸
化 さ れ た Flt-1 を SDS-PAGE で 分 離 後 , オ ー ト ラ ジ オ グ ラ フ ィ ー で 解 析 し た .
活 性 の 評 価:検 体 は 最 終 濃 度 0.1 μg/ml に な る よ う に 加 え ,リ ン 酸 化 阻 害 の 有 無
と阻害パターンを判定した.
137
実験の部
3-7. 第 七 章 の 実 験 ( Fuligo aurea の 成 分 研 究 )
3-7-1. Fuligo aurea の 分 画
Organism
試 料 と し た ム シ ホ コ リ ( Fuligo aurea) は , 山 本 幸 憲 氏 に よ り 2005 年 高 知 県 に て
採取されたものを用いた.
( Voucher specimens (#28680-28683) are maintained by Y.Y.)
Extraction and isolation
ム シ ホ コ リ Fuligo aurea( 47.7 g)の 野 外 採 取 子 実 体 を ,90%メ タ ノ ー ル( 600 mL
× 6), 90%ア セ ト ン ( 600 mL × 1) お よ び 水 ( 600 mL ´ 6) で 抽 出 し , メ タ ノ ー
ル /ア セ ト ン /水 抽 出 物( 11 g)を 得 た .得 ら れ た 抽 出 物 を ,水( 500 mL)と へ キ サ
ン ( 500 mL ´ 3), 酢 酸 エ チ ル ( 500 mL × 4) お よ び n-ブ タ ノ ー ル ( 500 mL ´ 2)
で順次分配した.
へ キ サ ン お よ び 酢 酸 エ チ ル 抽 出 物 の TLC 分 析 に よ り ,同 じ 成 分 が 含 ま れ て い る
と 判 明 し ,こ れ ら を 合 わ せ て( 2.3 g)以 降 の 分 離 を 行 っ た .へ キ サ ン /酢 酸 エ チ ル
抽 出 物( 2.3 g)を ヘ キ サ ン /ク ロ ロ ホ ル ム( 1/1~ 0/1)お よ び ク ロ ロ ホ ル ム /メ タ ノ
ー ル( 10/1~ 0/1)系 グ ラ ジ エ ン ト 溶 媒 を 用 い た シ リ カ ゲ ル カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ
ィ ー ( f30 × 400 mm) で 分 離 を 行 っ た 結 果 , 15 の 画 分 ( Frs. 1A~ 1O) を 得 た .
Fr. 1D( 19.6 mg)に つ い て ,メ タ ノ ー ル 系 溶 媒 を 用 い た Sephadex LH-20 カ ラ ム
ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー( f10 × 600 mm)に て 分 離・精 製 を 行 っ た 結 果 ,化 合 物 25( 1.3
mg) を 得 た .
ブ タ ノ ー ル 抽 出 物 ( 0.5 g) を , 水 /メ タ ノ ー ル 系 グ ラ ジ エ ン ト 溶 媒 ( 9/1~ 0/1)
を 用 い た ODS カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー ( f30 × 150 mm) を 行 っ た 結 果 , 7 つ の
画 分 ( Frs. 3A~ 3G) を 得 た . Fr. 3D( 51 mg) を ODS HPLC( Develosil ODS-HG-5
(f10 × 250 mm); eluent, H 2 O/MeOH 4/1; flow rate, 2.0 mL/min) に て 分 離 を 行 っ た 結
果 , 化 合 物 23( 16.3 mg, t R 21 min) お よ び 24a( 12.0 mg, t R 30 min) を 得 た . ま
た , Fr. 3E( 108 mg) を ODS HPLC( Develosil C30-UG-5 (f10 × 250 mm); eluent,
H 2 O/MeOH 7/3; flow rate, 2.0 mL/min)に て 分 離 を 行 っ た 結 果 , 化 合 物 23( 3.5 mg,
t R 15 min), 24a( 3.6 mg, t R 22 min) お よ び 24b( 30.2 mg, t R 40 min) を 得 た .
138
実験の部
Fuligo aurea fruit bodies (47.7 g)
extracted with 90% MeOH (x6) 90% Acetone(x1) H2O (x6)
(11 g)
MeOH-acetone ext.
partitioned with Hexane and H2O
Hexane ext.
2.0 g
H2O lay.
partitioned with EtOAc nd H2O
EtOAc ext.
0.3 g
H2O lay.
partitioned with
n-BuOH and H2O
H2O ext.
8.2 g
n-BuOH ext.
0.5 g
Silica gel open C.C
(30 x 400 mm)
Hex/CHCl3 - CHCl3/MeOH
1A
1B
1C
1D
1E
1F
1G
1H 1I
74.2
7.8
25.7
19.6
42.1
246.1
21.2
24.4
205.1
1J
187.9
1K
1L
1M
681.2 92.9
353.2
1N
15.9
1O
56.2 mg
Sephadex LH-20 (10 x 600 mm)
MeOH
2A
2B
2C
7.2
0.6
1.3 mg
ODS open C.C. (30 x 150 mm)
H2O/MeOH
3A
3B
116.0 35.2
3C
3D
3E
16.0
51.4
108.0 35.4
Prep.HPLC ODS-HG-5
(10x250 mm)
H2O/MeOH 4/1
3F
3G
37.2 (mg)
Prep.HPLC C30-UG-5
(10 x 250 mm)
H2O/MeOH 7/3
4A
4B
4C
5D
5E
2.3
16.3
12.0
3.6
30.2 (mg)
23
24a
24a
Fig. VI. Separation of MeOH ext. of Fuligo aurea
139
5A
5B
5C
24b
実験の部
Tryptophan cis-4-aminocinnamamide (23)
23
amorphous solid; [α] D +97 (c 0.8, MeOH); UV (MeOH) λ ma x nm (log ε) 325 (3.9), 291
(3.9), 222 (4.3); IR (film) ν ma x 3337, 1645, 1597, 1517 and 1399 cm -1 ; 1 H and
13
C NMR
+
data, Table 7-1; HRESIMS m/z 350.1505 [M+H] (calcd for C 2 0 H 2 0 O 3 N 3 , 350.1505).
Tryptophan trans-4-aminocinnamamide (24a)
23
amorphous solid; [α] D +49 (c 0.7, MeOH); UV (MeOH) λ ma x nm (log ε) 325 (3.8), 291
(3.8), 222 (4.2); IR (film) ν ma x 3338, 1647, 1590, 1517 and 1397 cm -1 ; 1 H and
13
C NMR
data, Table 7-1; HRESIMS m/z 350.1506 [M+H] + (calcd for C 2 0 H 2 0 O 3 N 3 , 350.1505).
Tryptophan trans-4-aminocinnamamide (24b)
23
amorphous solid; [α] D –2.4 (c 0.7, MeOH); UV (MeOH) λ ma x nm (log ε) 325 (3.8), 291
(3.8), 223 (4.2); IR (film) ν ma x 3384, 1645, 1586, 1519 and 1417 cm -1 ;
1
H NMR
(CD 3 OD) 7.08 (1H, s, H-2), 7.57 (1H, d, J=6.6 Hz, H-5), 6.93 (1H, t, J=6.6 Hz, H-6),
7.03 (1H, t, J=6.6 Hz, H-7), 7.27 (1H, d, J=6.6 Hz, H-8), 3.19 (1H, br d, J=13.5 Hz,
H-10), 3.23 (1H, dd, J=13.5 and 5.8 Hz, H-10), 4.71 (1H, m, H-11), 6.29 (1H, d, J=15.5
Hz, H-2'), 7.34 (1H, d, J=15.5 Hz, H-3'), 7.22 (2H, d, J=6.5 Hz, H-5' and H-9'), and
6.59 (2H, d, J=6.5 Hz, H-6' and H-8');
13
C NMR (CD 3 OD) δ C 122.9 (C-2), 111.9 (C-3),
127.9 (C-4), 118.2 (C-5), 118.2 (C-6), 120.8 (C-7), 110.7 (C-8), 137.9 (C-9), 27.5
(C-10), 55.9 (C-11), 178.7 (C-12), 168.1 (C-1'), 115.1 (C-2'), 141.4 (C-3'), 123.9 (C-4'),
129.1 (C-5' and C-9'), 114.4 (C-6' and C-8'), and 150.1 (C-7'); HRESIMS m/z 350.1514
[M+H] + (calcd for C 2 0 H 2 0 O 3 N 3 , 350.1505).
24a お よ び 24b の メ チ ル エ ス テ ル 化
methylation of 24a and 24b with TMSCHN 2 afforded an identical methyl ester: 1 H NMR
(CD 3 OD) δ H 7.08 (1H, s, H-2), 7.53 (1H, d, J=7.0 Hz, H-5), 7.00 (1H, t, J=7.0 Hz, H-6),
7.08 (1H, t, J=7.0 Hz, H-7), 7.32 (1H, d, J=7.0 Hz, H-8), 3.23 (1H, dd, J=14.4, 6.4 Hz,
H-10), 4.84 (1H, dd, J=9.2, 6.4 Hz, H-11), 6.38 (1H, d, J=15.6 Hz, H-2'), 7.39 (1H, d,
J=15.6 Hz, H-3'), 7.29 (2H, d, J=8.4 Hz, H-5' and H-9'), 6.65 (2H, d, J=8.4 Hz, H-6' and
H-8'), and 3.66 (3H, s, -COOMe); HRESIMS m/z 364.1673 [M+H] + (calcd for
C 2 1 H 2 2 O 3 N 3 , 364.1661)
140
実験の部
23 お よ び 24 の 酸 加 水 分 解 お よ び chiral TLC 分 析
化 合 物 23( 1.2 mg)を 6N HCl( 2 mL)に 加 え ,110°C で 8 時 間 処 理 し た .室 温
に 戻 し た 後 ,Amberlite IRA96SB AG カ ラ ム を 通 し ,酸 を 取 り 除 き ,溶 媒 を エ バ ポ
レ ー タ に て 取 り 除 い た . 加 水 分 解 物 を chiral TLC( Merck HPTLC plate CHIR Art.
1410; solvent, MeOH/H 2 O/CH 3 CN 1:1:4; detection, ninhydorin) に て 分 析 し , 化 合 物
23 の tryprophan は L -Trp( R f -values: D -Trp, 0.50; L -Trp, 0.58) と 決 定 し た . 化 合 物
24( 2.5 mg) も 同 様 の 手 法 に よ り , L -Trp と 決 定 し た .
3-7-2. 細 胞 毒 性 試 験
Jurkat 細 胞 ( 1.0×10 4 cells/mL) を 96-well plate に 195 μL/well 加 え , そ れ ぞ れ
の 濃 度 の 化 合 物 を 5 μL の 培 地 で 希 釈 し , 添 加 し た . 72 時 間 化 合 物 を 作 用 さ せ た
後 , 細 胞 生 存 率 を alamer blue を 用 い た 比 色 測 定 で 評 価 し た .
141
参考文献
参考文献
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146
謝辞
謝
辞
本研究に際し,終始御指導御鞭撻を賜りました千葉大学大学院薬学研究院
石
橋正己教授に厚く御礼申し上げます.
貴 重 な 御 助 言 ,御 指 導 を 賜 り ま し た 千 葉 大 学 大 学 院 薬 学 研 究 院
荒井緑准教授,
大槻崇博士に心より感謝申し上げます.
本研究を行うにあたり,初期の段階にて貴重な御助言,御指導を賜りました佐
藤昌昭博士に深く感謝申し上げます.
ア ッ セ イ 系 の 構 築 に 際 し , 細 胞 ( HaCaT-GLI1 お よ び HaCaT-GLI2) を 提 供 し て
い た だ い た Dr. Fritz Aberger 氏 お よ び Dr. Gerhard Regl 氏 ( University of Salzburg)
に深く感謝申し上げます.
レ ポ ー タ ー プ ラ ス ミ ド の 作 成 に 際 し , 12GLI-RE-TKO プ ラ ス ミ ド を 提 供 し て い
た だ い た Dr. Rune Toftgård 氏 ( Karolinska Institute, Sweden) に 深 く 感 謝 申 し 上 げ
ます.
レ ポ ー タ ー プ ラ ス ミ ド pGL3-2.8 bcl2 を 提 供 し て い た だ い た Dr. Timothy J.
McDonnell 氏 お よ び Kevin B. Spurgers 氏 ( The University of Texas M. D. Anderson
Cancer Center) に 深 く 感 謝 申 し 上 げ ま す .
成分研究を行うにあたり,熱帯植物の入手に御協力いただきましたテムコ株式
会社
小 谷 野 喬 博 士 ,コ ン ケ ン 大 学 農 学 部
Thaworn Kowithayakorn 教 授 に 心 よ り
感謝申し上げます.
変形菌の採取,同定に協力していただき,野外採取子実体を提供していただい
た山本幸憲先生,松本淳博士に深く感謝申し上げます.
プロテインキナーゼ阻害試験および細胞毒性試験を行っていただいた国立感染
研究所
上原至雅博士,北里研究所
小宮山寛機博士,林正彦博士に深く感謝申
し上げます.
千葉大学での研究を勧めていただき,終始暖かい御激励を賜りました東京薬科
大学薬学部
一柳幸生助教授に心より感謝申し上げます.
ま た ,千 葉 大 学 で の 研 究 に お い て ,終 始 力 に な っ て い だ き ,ま た ESIMS の 測 定
を快く行っていただいた東京薬科大学生命科学部
上げます.
147
尹永淑博士に心より感謝申し
謝辞
3 年間共に学び,喜びや苦労を分かち合った同志,花澤修和氏に心からの感謝
と,共に卒業できる喜びを申し上げます.
また,本研究を行うにあたり,多大なる御協力を頂きました千葉大学医学薬学
府
舘野史氏,加藤由衣氏並びに活性構造化学研究室の皆様に感謝いたします.
本 研 究 の 一 部 は , 日 本 学 術 振 興 会 特 別 研 究 員 ( DC2) の 支 援 を い た だ き 感 謝 申
し 上 げ ま す .ま た ,千 葉 大 学 な の は な コ ン ペ 2006( 学 生 版 )の 支 援 を い た だ い き ,
関係者に深く感謝申し上げます.
最 後 に ,研 究 へ の 理 解 と い つ も 陰 で 支 え 続 け て く れ た 私 の 父・和 良 ,母・孝 子 ,
姉・和恵,そして私の友人に深く感謝します.
148
主論文目録
主論文目録
本学位論文の内容は,下記の発表論文による.
1. Hosoya, T.; Arai, M. A.; Koyano, T.; Kowithayakorn, T.; Ishibashi, M.
Naturally
occurring
small-molecule
inhibitors
of
hedgehog/GLI-mediated
transcription
ChemBioChem, in press.
2. Hosoya, T.; Yamamoto, Y.; Uehara, Y.; Hayashi, M.; Komiyama, K.; Ishibashi, M.
New cytotoxic bisindole alkaloids with protein tyrosine kinase inhibitory activity
from a myxomycete Lycogala epidendrum
Bioorg. Med. Chem. Lett. 2005, 15, 2776-2780
3. Hosoya, T.; Kato, Y.; Yamamoto, Y.; Hayashi, M.; Komiyama, K.; Ishibashi, M.
Tryptophan 4-aminocinnamamides from a myxomycete Fuligo aurea
Heterocycles 2006, 69, 463-468
149
学位論文審査
学位論文審査
本学位論文の審査は,千葉大学大学院薬学研究院で指名された下記の審査委員
により行われた.
主査
千葉大学大学院教授(薬学研究院)
薬学博士
高山
廣光
副査
千葉大学大学院教授(薬学研究院)
薬学博士
斉藤
和季
副査
千葉大学大学院教授(薬学研究院)
薬学博士
山口
直人
審査をして頂き,種々の貴重なご助言賜りました諸先生方に深く感謝申し上げ
ます.
150
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