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洗剤使用量低減を目的とする洗濯機の改良
洗剤使用量低減を目的とする洗濯機の改良 工学部機械システム工学科 文部科学技官 萱場龍一 1.はじめに 人間生活を行ううえで一日も欠かさず行われている衣類の洗浄は、多量の界面活性剤や 燐酸塩基等のビルダ-を廃液として排出し、河川や湖沼、沿岸海域の水質汚染、富栄養化 の-因となっているoこのように環境問題の面から見ても洗剤使用量を減少させていくこ とは重要である。 本研究では、流体工学的見地から洗濯洗浄に関する研究を実験的に行い、洗剤使用量低 減を目的とした最良の洗浄条件を見出す○そこで、従来の旋回流型洗濯機において、旋回 流の他にポンプによる循環流を加えて洗浄効率の向上を図るための実験装置を作製した。 本報告では、市販の洗濯機に循環流を加えるべくポンプ等の設置をするなど実験装置の改 良、その結果について報告するo 2.装置の改良 実験装置の概略図をFig.1に示す。市販の洗濯機ASW-EC801は、比較実験のために 特に変更を行わず実験を行うoまた、洗濯機ASW-EC801 (改)は、流量を変えた実験 を行うために市販のASW-EC801を改良したものであるo市販の洗濯機を改良するにあ たってまず、洗濯機の構造を理解するためにサ-ビス技術資料をもとに-度、洗濯機の分 解を行い、組み立てを行ったoその後、洗濯機の改良を行った。 市販の洗濯機の中には既存の循環ポンプが取り付けてあるが、少しでも循環流の流量を 多くするために既存の循環ポンプを取り外し、テフロンマグネットポンプを洗濯機の外側 に取り付けたoマグネットポンプからの水を洗濯槽に入れるためにポンプにプレ-ドホスをつなぎ、洗濯上蓋に穴を開けることによって洗濯中の水を循環させた。 ASW-EC801 .:'t't ̄  ̄ ≧∋1 ≦妻墓 。..蒜。 。萱≧≦主 Q3;>o mst テフロンマグネットポンプ ・型式IFP611 ・口径 ホ-ス20mm ネジ3/4 ・性能 4-20 ・出力100 ・電圧100 水の流れ r: --≡ ASW-EG801 (改) ポンプ 洗濯機 I [ ■L l ー..二== Fig.1実験装置の概略図 -86- 3 人 工 汚姓 布 . 人 工 汚典 布 は 開発 され 使用 され 、 られ 種類 や 繊維 基質 の ている 我が国では 。 付着方法な ど の 異 な る 様 々 なも の が 世界各国 で 、 油 化学 協会法 に よ る 標 準人 こ れま で 最 近 ま で 家庭用 洗 濯機 の 機械力判定 の J I S 法 に も採 用 され く用 い こ の 汚敷 布 は 性に問題 汚れ 、 、 カ 、 ボン ブラ ー が 生 じる こ とか ら ッ ク 、 鉱油 油脂 の 、 3 成分 系 で あ る た め 工 汚染布 が 広 て いた しか し o 、 天 然汚れ と の 相関 、 よ り 天 然汚れ に 近 づ け た 組 成 に よ る 汚典布 の 開 発 が 進 め られ 、 l た また近年 o うに なり され て 調男削 こ 使用 す る 塩素 系 有機溶剤 の 環境 の て っ い るo 年 か ら電 気洗濯機 の 1993 、 F ig 2 は . 陰に 採用 され JIS 湿 式 人 工 汚染布 の 汚 垢 組 成 を示 す 、 工 汚 免 布 の 詳 細】 銘 称 湿 式 人 工 汚 典布 素 材 綿 1 0 0 寸 牡 5 c 汚 垢成分 % 5 X m コ c イ ン 酸 トリオ レ イ 4 0 土 た ん ばく 質 レ ス テ ゼ ラチ ン カ 湿 式人 F ig 2 . ー ロ % ン 酸 15 6 % ル オ 12 2 % . レ ト ー . 2 5 % 2 5 % 1 6 % 7 0 % 29 8 % 0 3 % ィ ン . . / レ - . . . ボ ー ン ブラ ク ッ 0 2 . 工 汚典布 の 汚垢 組 成 - . ( %) 実験 方法お よび手順 . 湿 式 人 工 汚 染 布 に そ れ ぞ れ 汚炎布 番 号 を け そ の 汚 染布 の 表 、 ず つ 測 定 し 用意 し い つ 裏 の 表 面反 射 率を 3 ・ 平均 をと る 、 枚に 1 、 糸 で縫 つ o 次に け ( F i g 3) , 洗剤液 を投入 した 浄 を 行う 洗濯機 、 せ 、 の 表 そ の 平均 を と る 測定 し 出す る . 、  ̄ で洗 助 ー ス 最後 ケ 所ず - E3 - - て] 1 - 布 汚 漁 布 を自 然乾燥 さ 3 Er 50 oo 設 a 捕 コ : 1 00 50 つ つ 一 汚 染布 E7 90 E7  ̄ - に 洗浄 効 率を算 Fig 3 o . 汚 染布 の 縫 い 付方 測 定方 法 測 定方 法 と 後 。 枚ず 5 洗剤を と か し 裏 の 表 面反 射率 を 汚 典布 ・ 、 9 00 ケ所 に投入 する 、 つ 枚 の 補助 布 を ち 洗 濯機 の 標 準 の 洗浄終 了後 は o 2 き 湿 式 人 工 汚 姓布 を 定 条件 に あ わ せ て水 量を測定 し 5 ロ 28 3 . 泥 無機 質 成 分 4 テ レ ス コ % 5 レ ス クア レ ン m 油 性 成 分( 6 種) 衆 面 反射率 ( 財) 洗 濯 科学協会 か ら 市販 、 流動 パ ラ フ 油性成分 有 機 質成 分 こ の 標準 人 工 汚 染 、 . オ [人 の 影響 も 問 題 視 さ れ る よ - ラ イ オ ン 株 式 会社 で 開 発 され た水 分散 媒湿 式 人 工 汚 典布 が 、 布 に 代わ 汚鞄 布 、 の それ ぞれ して は の 、 反 射 率 測 定 機 器 を使 用 し て 洗 浄 資料布 ( 汚 染 布 表 面反 射率 を Y 値と し て測 定 した - 87 - 。 、 綿 白 布) の 洗浄前 6 評価方 法 . 洗 浄力 の 評 価 6 1 - 本来 汚れ 洗浄力 、 の評価 は、 畳 か ら 計 算す る の重 あ る 着色成分 ( 主 に カ 変化 す る こ 布の 色 濃淡 の が でき の 、 ベ ル ク な ど の 無 機 成 分) ッ 色 差 計 を用 、 価方 法 で 布 、 を 測 かざ る - 布上に 、 色 の 凍淡 が の い る。 こ の こ とで表わす 氏 : 表 面 反 射率 K : 吸 光度係 数 こと 。 ( 汚 染布 ( 汚典布 - 卜( 洗浄布 卜( 原 白布 の K / S の K /S 00 S ト R / 1 0 0) ( の : 散乱 係 数 評価 っ て H F ル マ イク ス ロ 汚 姓 布 の 洗 浄 具合 の 観察 を 行 い 剛毅上 で 、 視覚 上 の 繊 維 の す き 間 、 の K / S) ×1 2 R /lo o こと によ は の K / S) レ ベ ル まで 洗 浄評 価を確 認 する コ - プ ( Ⅴ 打- 8 0 0 0) - の 比 較 を行う o こ とがで き る こ の 評 。 実験 結果 . 実 験種 類 別 の 洗 濯機 比 較実験 横軸 に 実 験 示す の 種 類 をと る。 - の 結 果 を F ig A F ig 5 では . 縦 軸 に 洗 浄効率 ( % ) 。 洗濯実験 + A ≠ ASW SW - o e r g e n c y) (%) 、 洗 濯機 内 部 の 水 盛 を 変 化 さ せ た 比 較 実 験 の 結 果 を 、 横軸 に 水 量 ( L) 、 に 示 す 縦 軸 に 洗 浄効率(I) e t をと る 。 E C 8 01 1 40 - E C 8 0 1( 改) ′ 20 、 S 30 ヽ J とか ら こ 箆出立崖 - K /S 画 像観察 で を使用す る 言 多 少 に応 じ て の ( Y 値) い て 表面 反射 率 洗 濯 洗浄 前後 の 汚典布上 に あ る瀞色 成分 をデ ジ タ 7 大変 手 間 の か か る 、 い る カ ム ン ク法 こ こ で、 ・ らの 分析 は 重 畳 と洗 浄 後 の 布 に 残 留 して 色 調 の 変 化 で 洗 浄 力 を評 価 す る 方 法 が 良く 利 用 さ れ て 由 洗 浄効 率 ( % ) 6 2 い る汚 れ の 以 下 に 示 す 算 出方 法 に よ り 洗 浄 力 の 計 算 が で き る 逸逸塾登+ 旦 ク 着し て これ 、 ボン ブ ラ 、 変化は しか し 。 ー と を利 用 し 予 め 布 に付 ) > ヽ O ⊂ 4) b L) L _ 4) JJ 4) 3 邑1 0 A S W E C 8 01 - 0 L 4) 2  ̄ 5 3 6 ×1 0 A S W E C 8 0 1( 改) 盲 . T * ⊂〕 - ^ 脚4 洗剤投入 L 慧誌 入 7 63 . ×10 ヽ O 循環水丑( m ) 10 ⊂〕 15 > 20 2 - 5 0 1 実 験の 種板 F ig 4 AS W . ※ AS W た - - ( 改) 循環水 量 は ポ ン 。 によ っ て 求めた 23 29 水 量 ( L) E C 8 0 1 と E C 8 0 1( 吹) と の 比 E C 80 1 4 の 実験 で洗浄 較 F ig 5 最中 ( 約 の 水 量 を変え た場 合の 比 較 . 8 分 間) は 、 ポ ン プ を 連続 的 に 運 転 し プ か ら 出 る 流 量 に ポ ン プ が 作 動 し て い る 時 間 を掛 け 合 わ せ る こ と 。 - 88 - 洗 軌 拭験織(J ) l/j 独 和 の 観筆削大悦 恕 ' ' れ が 付都 L / て い る 糾却1 を ホ す F i 官6 . F ig 7 、 Fig 8 、 . 、 . F ig 9 に示 す . o 図 中の 丸 は 、 汚 = u A S W ll;(^ 泊0.1 で a F i昏6 ・ . 洗 軌 財像 ) F ig 7 A S W l W 8 0 1 で の 洗押 倒象( 洗剤使 用) Fig 8 Fig 9 ・ ・ } . AS W . A S W ・ ・ E C 8 0 1( 吹) で の 洗浄 画 像 洗浄画 像( 洗 剤使 用) E C 8 0 1 ( 改) で の 8 まとめ . 実 験結 果 か ら避 榔 勺に 循環流 を 加 え る こ と に よ ( 改) E C 801 - っ て 、 市販 の A S W - E C 8 01 よりも A S 廊 ガ が 若干 で は あ る が洗 浄効 率 の 向 上 が 確 許 さ れ た 今後 の 課 題 と し て は 条件 で の 実 験 を行 ポ ン プ よ り も 大■掛 こ 流盈 を 多く し た 洗 濯機 に 改 良 し 同 の 、 o 一 市販 の 洗 織機 てみる っ o の また 、 ホ - ス 漸 削こ 循 環 さ せ て か ら洗 放後 に 本 報 告 を 終 え る に あ た り 前教 授 な ら び に研 究蜜 官 の 鰭様 に お 礼 を 申 の 学生諸君 し上 げます 、 、 い る出 口の 改 良も行 し た 本 学 部機械 シ 御指導頂 き ま ス っ てみる テ ム 工 o 学科 長 谷 川 富 ま た 実 験 裟置製作 に ご 協力 し て 頂 き ま し た 機 械 工 場 技 。 参 考文 献 1 2 3 . . . ( 1 9 9 5) 1 2 16 阿部 華子 洗曜 の 科 学 40 西尾 宏 洗濯 の 科 学 38 落合 綾 お 茶 の 水 大 学卒業論文 「 洗浄 に お け る 機械作用 - ( 3) ( 1 9 9 3) 33 3 7 - - 89 - の 研 究+ ( 2 0 0 1)