...

ホロコース ト学習の意義と教材構成の原理

by user

on
Category: Documents
11

views

Report

Comments

Transcript

ホロコース ト学習の意義と教材構成の原理
岡山大学附属教育実践総合セ ンター紀要,第 9巻 (
2
0
0
9
),p
p.
31
4
0
原
著
ホ ロコース ト学習 の意義 と教 材構 成 の原理
井上 昌善 (岡山大学大学 院教育学研 究科) ・桑原敏 典 (
岡山大学 )
本研 究 は、ア メ リカ合衆 国 で 開発 され た教材 『
THEHO
LOC
AUS
T』の指導 書 で あ る 『
THEHOLOC
AUS
TATE
AC
HE
R'
S
G
UI
DE』の 内容 編 成 及 び授 業 構 成 を分析 し、ホ ロ コー ス ト学 習 の意 義 と方 法 を明 らか に しよう とす る もので
ある
。
現 在 、 わが 国 にお い て は社 会科 地理 、歴 史、公 民 の 各分野 にお い て民 族 問題 の学 習が行 われてい る
が 、 問題 の追 究 の仕 方 や解 決 策 の検 討 の させ 方 な どに問題 を抱 えてい る。 その ため、民族 間題 を取 り上 げ
た授 業 にお い て、生徒 の認識 形 成 や意思 決定 は必 ず しも科 学 的合理 的 な もの とな ってい る とは言 えない。
よって、本研 究 で は 『
T
HEHO
LOC
AUS
T』 を分析 して内容編 成 や授 業構 成 の原理 を解 明 した上 で、我 が 国の社
会科 にお け る民 族 問題 学 習 の改 善 に対 す る示唆 を得 たい と考 えて い る 0
キー ワー ド :社 会科 、 ホ ロ コース ト学 習 、民族 問題 、社 会認識
明 らか に してい る 日。児 玉氏 が 開発 した単 元構 成 は、
Ⅰ. は じめ に- 問題 の所 在一
現 在 、世界 各地 で民族 や 人種 の違 い を原 因 と した
生徒 自身が持 つ 「日本 人」 とい う民 族概 念 の解 釈 に
紛 争 が起 こってい る 。 現 在 の社 会科 の教 科書 にお け
注 目 し、社 会科諸 科学 の成 果 と して の い くつ かの解
る民族 問題 につ い て の記 述 は、 その原 因 を主 と して
釈 を比 較 し、批 判 的 に吟味 させ る こ とで民 族概 念 の
民 族 の違 いか ら紛 争 に発 展 した とい う解釈 のみが記
本 質 を捉 え させ よう とす る もので あ る。児 玉氏 が主
されてお り、多数 の 人 々が悲劇 的 な死 を遂 げた こ と
張 す る学 習 は、民族 概 念 を科 学 の成果 で あ る解 釈 と
を数値 化 して提 示 す る よ うな生徒 の感 情 に訴 える学
して捉 え させ よ う とす る もの であ るが 、 「
社 会 的概
習が な され て い る こ とが 多 い。 しか し、 これで は、
念 は一定 の社 会 的歴 史 的文脈 の 中でつ くられ る」2)
なぜ 民族 間題 が起 こっ たの か、 なぜ 民 族 の違 い だけ
もので あ る とい う構 築 主義 の考 え方 を踏 まえて民 族
で紛 争 が激 化 し、大量 虐 殺 が行 われ るほ どの事 態 に
概 念 を捉 え させ る学 習 も考 え られ るので は ないか 。
なるのか とい うこ とまで捉 え させ る こ とはで きない 。
よって 、本研 究 で は、 ア メ リカ合 衆 国 で 開発 され
また、この よ うな学 習 で は、
生徒 は民族 が 異 な る人 々
た 教 材 『T
HE HOL
OC
AUS
T』 の 指 導 書 で あ る 『T
HE
が共 に暮 らす こ とは困難 で あ り、 共 に生活 す れ ば争
HOLOC
AUS
TATE
AC
HER'
SG
UI
DE』 を分 析 し、 内容 編 成
い は避 け られ ない とい う一面 的 な見方 ・考 え方 を身
や授 業 構 成 の原理 を解 明 した上 で、我 が 国 の社 会科
につ け て しま うこ と も懸 念 され る。世 界 を見 れ ば異
にお け る民族 問題 学 習 の改 善 に対 す る示唆 を得 たい
なる民族 が 共 に生 活 してい る社 会 が む しろ一般 的 で
と考 えてい る。
あ り、 それ らの社 会 にお い て争 い が絶 えず生 じて い
るわ けで は ない。民族 の違 いが紛 争 につ なが るの は、
Ⅱ.教 科 書 記述 に見 る民 族 間題 の取 り扱 い
そ の違 いが他 の要 因 に よって憎 悪 の感 情 と結 びつ き、
特 定 の民 族 の排 除 を正 当化 す る イデ オ ロギ ーが 生 み
わが 国 の社 会科 の教 科 書 に記載 され てい る民 族 問
題 、 中で も 「
紛 争」 や そ れ に類似 す る 「内戦」 な ど
出 され るか らで はない か。わが 国の社 会科 にお い て、
につ い ての記 述 内容 は、原 因探 究 の観 点 か らみ る と
この よ うな問題 を含 む民 族 問題 の学 習 の あ り方 を改
問題 が あ る。本研 究 で は、比 較 的採択 数 の 多 い以 下
善 してい くこ とが求 め られ てい るので あ る 。
の 4社 を検 討 した。
民 族 間題 の原 因 を探 求 させ 、生徒 の認識 を 目指 す
授 業 につ い て は既 に多 くの研 究成果 が報告 され て い
(
教科書)
① 帝 国書 院『中学校 の公 民 』平 成 17年検 定 済 み
る。例 えば、児 玉康 弘氏 は、民 族 間題 の原 因 を探 究
本 美彦
江 口勇 治
谷
他 5名
させ る こ とで 、高校 生 が持 つ 「日本 人 」とい う民族
② 第一 出版 社 『
改訂 版 現 代 社 会』平 成 18年検 定 済
概 念 を科学 的 な ものへ と成長 させ る授 業構 成原 理 を
み
㧙㧙
坂 上順 夫
田辺 裕
他 8名
井上
昌善 ・桑原
③ 大 阪書 籍 『中学社会歴 史 的分 野 』平 成 17年検 定
済み
鈴木 正幸
泉拓 良
伊藤正 直
他 10名
④ 東京書 籍 『新 しい社 会公民』平 成 17年度検 定済
み
五味 文彦
斉藤功
高橋進
敏典
け離 れ た解 決策 を教 える こ とは、生徒 の 目を複雑 で
解決 困難 な現 実 か らそ ら して しま うこ とにつ なが る
だろ う。
他 45名
Ⅲ.分析 の枠 組 み一 民族学 習改 善 の ための視 点一
前節 で整理 した問題 を克服 す る学 習 の論 理 を明 ら
ここで は、特 徴 が際立 ってい る① と② を取 り上 げ
て具体 的 にみ てい くこ とにす る。 まず 、① では 「内
か にす るため に、教材 の分析 の視点 を① どの よ うな
戦」 や 「国境 紛争」 とい う形 で民族 問題 が取 り扱 わ
学習過程 を経 て どの ように民 族概念 が生徒 に認識 さ
れ てい る。その記述 につ い て は、
以 下の通 りで あ る。
れ てい るのか (
学 習方 法論 ) 、② 民族概念 が どの よ
うな もの と して取 り扱 われてい るか (
内容論 )の二
民族 や宗教 の ちが い に よる不信 感 が、戦争 を起 こす
点 と したい 。 尚、① につ いて は森分孝 治氏 の社 会科
こ ともあ ります。 ソマ リアで は、民族 の ちが いの た
授 業構 成論 を、(
釦 二つ い て はアー ネス ト ・ゲ ルナ-
め 内戦 が続 き、 また カシ ミー ルで は、宗教 の ちが い
な どの民族概 念 に関す る論 を参考 に検討 してい く。
森分氏 は、社 会認識 を社 会認識体 制 、感情 、意志
の ため隣 国 どう しの国境 紛争 が続 い てい ます 3) 0
力 か ら構成 され、社 会認 識体 制 は価 値認 識 と事 実認
この記 述 は、世界 でお こる第四部 「
地球市 民 と し
識 か ら成立 してい る と述べ てい る 6) 。その上 で社 会
て生 きる」 第-章 「世 界で起 こる戦争 」 の部分 に記
科 の役 割 は社 会認識体制 の中で も事 実認識 を科 学 的
載 され てい る。戦争 の形態 の変化 を説 明 し、現代 の
な もの に してい くこ とにあ る と主張 す るOつづ い て、
戦争 が発 生 す る原 因 を示 した もの で ある。 この記述
氏 は事 実認識 を科 学 的 に してい くため には科学 的知
は内戦 や紛争 が発 生す る真 の原 因 を示 した もの とは
識 の習得 が不 可 欠で あ り、科学 的知識 を習得 させ る
言 い難 い。硯 在 で は、内戦 や紛 争 の原 因 は民族 や宗
ため には子 ど もが持 つ 「理論」 を批 判 的 に吟味 ・検
教 の違 いが直接 的 な原 因で は ない こ とが社 会諸 科学
証 してい く必 要が ある と述べ る。 よって、 この論 に
の成果 に よって証 明 され てお り、民族 の相 違 を紛 争
基づ く授 業 で は 「なぜ」 とい う問い を中心 と して構
の原 因 とす る主 旨の記述 は紛争 の結 果 と して理屈 づ
成 され、問い に対 す る回答 を論 理 実証 的 に吟味 ・検
け られ る 4)0
討 しなが ら知識 の成長 が 目指 されてい くのであ る 。
次 に、② で は民族 的差 別 の最 も悲惨 な事例 と して
この こ とか ら授 業分析 にお い ては、学習過程 に設定
第二次 世 界大戦下 にお けるナチ ス ・ドイツに よるユ
されてい る 「問 い」 や子 ど もの意見 を批判 的 に検証
ダヤ人の大量 虐殺 (
ホ ロ コー ス ト)が取 り上 げ られ
させ る取 り組 み に注 目す る必 要が あ る と言 える。
また、 アー ネス ト ・ゲ ルナ-は民 族 につ いて 「人
ているが 、その原 因 につい て は民族 の違 い に よる と
い う記述 が記 されてい るだけで あ る
さ らに、 「私
間 を分類す る 自然 で神 与 の仕 方 としての民族 、ず っ
たちは、お たが い に異 なる文化宗教 を尊 重 し、人種
と遅 れ てや って きたが生得 の政治 的運命 と しての民
や民族 に対 す る偏 見 や差 別 をな くす こ とが大切 で あ
族 、それ は神話 で あ る」
る」
5) とい
。
う記 述 で この節 は終 わ ってい る
7)
と述べ る
。
さ らに、国際
この よ
政治学者 の塩 川信 明氏 は、 「民族」概 念 に対 してす
うな記述 で は、ホ ロ コー ス トの原 因 を捉 える こ とは
で に規定 され てい た とい う本 初主義 的 な捉 え方 と社
で きない し、 「差 別 や偏 見 を してはい け ない」 とい
会 的歴 史的文脈 の 中で 「つ くられ る」 もの とす る構
う道徳 的価値 観 だ けが 強調 され る こ とになる。
築主義 的 な捉 え方 が あ り、後者が現 在 の社 会科 学 の
。
以上 の教科書記 述 につ い て問題点 を整理 す る と次
世界 で は主流 とな ってい る捉 え方 で あ る 8)と指摘 す
の よ うにな る。 第一 の問題 は、民族 間題 の原 因 を科
る。 この こ とか ら、民族概 念 は人間集 団 を分類 す る
学 的 に捉 え させ てい ない点 であ る。教 科書 の記 述 に
ため に社 会的文脈 の 中で作 られた ものであ り、変化
基づ い て学 習が行 われ るな らば、子 どもは 「
紛争 は
しうる相対 的 な もの とす る捉 え方が社会諸科学 の成
民族 の違 い に よって発生 す る」とい う科 学 的 とは言
果 と言 える 。 この よ うな民族概 念 に対す る考 え方 を
えない ご く常 識 的 な知識 しか捉 え られ ない。
踏 まえ、民族 問題 の学 習 につ いて検 討す る と、民族
第二 の問題 は、 「差別 や偏 見 をな くす」 とい うご
の違 い は以前 か ら存 在 してい た もの とす る考 え方 で
く常識 的 で、且 つ理想 的 な解 決策 しか考 え させ ない
はな く、我 々が作 り出 した ものであ る とい う考 え方
もの とな ってい る点 であ る。 この よ うな現 実 か らか
に立 って学 習 を進 め るこ とが重要 で あ る と言 える。
㧙㧙
ホロコース ト学習の意義 と教材構成の原理
r
EH
O
L
O
C
A
U
S
T』 の全体構成
【
表 1】 『TI
小単元
① ア ドル フ .ア イヒマ ン :死 の生産者
具体 的 な学習内容
・当時の ドイツ社会の状 態
捉 え させ たい概念
責任
② ジ ヨセ フ .ゲ ソベ ルス :ナチス宣伝
相
新聞
・当時の社会 にお ける情 報 メデ ィア (
記事 や雑誌 による)の影 響
プロパ ガ ンダ
③ ヘ ルマ ン .ゲー リング
治の特徴
一
ー国民
当時 の意見
ドイツが行
を受 け入れ
った侵 略や外交
ない とい う独裁政
独裁政治
④ ア ドルフ .ヒ トラー
敬
事例
・ユ ー
として当時
ゴス ラヴ イアで行
ドイツで行
われた大量虐殺
われた政策の特
を
ジェノサ イ ド
⑤ オスカー .シン ドラー
物
ーに対す
ジ ョンブ
る評価
ラウの相違
ンや ロビンフ ソ ドな どの人
善人 と悪人の基準
⑥ ハ ンス とソフ ィア :ドイツ人の抵抗
者
ーアフガニス タンの社 会情勢や 夕 リバ ンの
思想 の存在
抵抗
② ラウル ーワ レンバ ー グ
B
・
l
北大西洋条約機構が果
家の権利 の特徴
たす役割 か ら中立
中立 国家
⑧ エ リ .ウ イーゼル
起源
の
ー生
きる上 で果 たす責任 とユ ダヤ人の迫害
人権
⑨
た少年兵
解放 :強制収容所 の青年 :解放 され
・自由 を求 め る運動 や活動
自由
⑲
ち ホ ロコース トの危機 を逃 れた青年 た
ーナチスの統制 か らの逃亡方法
脱出
⑪
へ の経緯
ヒ トラーの時代 に生 きた青年 :殺 人
体が行
・今
当時の子
日の紛争
った活動
ども運が所属
に子
やユ
どもが参加す
ダヤ人が受
していた集
けた差別
る原 団や団
因に
⑫
チザ
ナチスの統制
ンとゲ リラ に抵抗 した人 々 :パ ル
・善悪 を決定す る基準 と勇敢 な行動
⑬ 強制収容所 :強制収容所 を生 き抜 い
た青年 たち
・
「
記憶」 が形成 されてい く過程
日 吉用 された風 刺 画 の影 響
帰属意識
善悪 の基準
価値
⑪ ゲ ッ トーの中で :生 き抜 いた青年
容所が作
ーゲ ッ トーや拘置所
られたエ ピソ
、収容所
ー ドを活用)
(日本 人の 収
制約
⑮ 隠 れ た子ども達 :ナチスの危 機 か ら
逃 れたた青年
ードイツ人以外 の人種 の人 々は差別 的 な扱
い を受 けたナチ ス統制化 の社会状況
統制
(
Ro
b
bi
eB
utl
er
,meHol
o
c
au
st-A 花 a
c
j
Z
e
r'sG
ul
'
de
,
S
A
D
D
L
E
B
A
C
K,
P
U
B
LI
S
HI
N
G,
I
n
c,
2
0
0
2.よ り筆者作 成)
Ⅳ.ホ ロコース ト学習 の構成原理
1.
『T
H
EH
O
L
O
C
A
US
T』 の全体構成 を表 1と して示 し
『T
iE H
O
L
O
C
A
U
S
T』 の概 要
てい る。 表 1には、各小単元 の表題 、学習 内容 、捉
I
i
EH
O
L
O
C
A
U
S
TATE
A
C
f
i
E
R'
S
本研 究 で取 り扱 う 『T
え させ たい概念 を示 してい る 。
d
dl
e
b
a
c
k
G
UI
D
E』 は、 カ リフ ォルニ ア州 にある Sa
『T
H
EH
O
L
O
C
A
US
T』 で は、第 1課 か ら第 8課 にお
E
d
u
c
ati
o
n
alP
u
bl
i
s
hi
n
g 9 )が 中 ・高等学校 の教 員
いて 「ホ ロ コース ト政策 に関わ った人物 ・ユ ダヤ人
を対 象 に、 2002年 に開発 した指導書 であ る。 ま
を放 出す るため に活動 を行 った人物」、第 9課 か ら
ず、 この指導書 に明記 されてい るホ ロコース ト教材
第 16課 で は 「ホ ロコース トの危機 を逃 れ た青年 」
であ る 『T
H
EH
O
L
O
C
A
U
S
T』 の概 要 について述べ てい
とい った 2つの タイプの読 み物資料 を活用す る こ と
きたい。 『T
ii
EH
O
L
O
C
A
U
S
T』 は、社会科 においてホ
で学習が進 め られ る。 各課 は、一時 間の小 単元 とな
ロコース トや民族 間題 を扱 う際 に使 用 される。具体
6課全 て を網羅 的 に学習す るので は な く、
ってお り、1
的 には、歴 史的分野 にお けるナチ スの社会体制 、 も
次節 にて説 明す る各展 開部 の 中か ら小単元 を選択 し
しくは公民 的分野 の民族 間題 についての単元 で利用
て学習が進 め られ る。 各小単元 で は、 ホ ロコー ス ト
され る。本教材 は学習 を通 して民族 問題 の内容面 だ
を生 き抜 い た人 々の体験談 な どの内容 を含 む読 み物
けで はな く、読解力 や問題解決能力 な どの学習 の方
資料 の活用 を通 して、実際 に被 害 を受 けた人 々 に対
法面 での能力 の育成 も目指 されてい る 1
〔
))0
して共感 的 に理解 させ る活動 も行 われてい る。 また、
㧙㧙
井上
昌善 ・桑原
敏典
各小 単 元 か らは、学 習 を通 して捉 え させ たい概 念 を
の社 会体 制 につ い て学 習 す る こ とで、 その背景 には
抽 出す る こ とが で きる 。 学 習 内容 には政治 的、文化
差 別 を容 認 す る民族概 念 が反 映 され て い る とい うこ
的分野 な どが設定 され てお り、概 念 につ い て は社 会
とを捉 え させ て い る。 よって、 この段 階 で は、 当時
に存 在 す る価値 や 人 間 の規 範 に関連 す る ものが 多 く
の社 会政 策 は差 別 を容 認 す る価 値 に基づ い て行 われ
見 られ る 。 よって、単 元全 体 を通 して ホ ロ コー ス ト
てお り、社 会 には偏 った民族 概 念 が イデ オ ロギ ー と
の原 因 を社 会 に存 在 す る規 範 や価 値 に注 目させ る こ
して存在 してい た こ とを、把 握 させ る こ とが ね らい
とで捉 え させ てい る こ とが わ か る。
とされ てい る。
第 Ⅱ段 階 の 「社 会 的行 為 ・制度 を支 え る民族概 念
2. 『T肥 HO
LO
C
A
US
T』 の全 体構 成 原理一 社 会規範
の分析 」 に相 当す るのが 第 5課 か ら第 8課 で あ る。
と しての民 族概 念 の総 合 的把 握-
各課 に は、政 治 、文化 、社 会 、歴 史 的分野 に関す る
『T
H
EHO
L
O
C
A
US
T 』 の全 体構 成 は、 ホ ロ コー ス ト
学 習 内容 が設定 され てお り、 主 と してユ ダヤ 人 に対
の問題 を人 々が持 つ民 族概 念 が変 貌 してい くこ とで
す る放 出活動 につ い ての学 習 を通 して 、人 々が持 つ
生 み 出 され た もの と して捉 え させ 、 当時 の社 会制度
民族概 念 を捉 え させ る こ とをね らい と してい る。 第
や人 々の行 為 を分析 させ る こ とで 、 問題 の原 因の解
5課 で は、 シ ン ドラーの リス トにつ い て学 習 す る こ
明 と解 決 策 につ い て考 え させ る構 成 になってい る
とで 、ユ ダヤ人 を放 出す る行 動 は平等 な価値 を重 視
。
『T
H
EH
O
L
O
C
A
U
S
T』 の全体 構 成 を整理 した ものが 表
す る民族観 に基 づ い て行 われ た こ とを捉 え させ る。
2で あ る 。 表 2には、 『T
iE HO
L
O
C
A
US
T』 の学 習 を
第 6課 で は、 ア フガニ ス タ ンの タ リバ ンにつ い ての
通 して形 成 され る民族概 念 につ い ての単 元展 開、予
学 習 を通 して、世 界 には多様 な価値 が存在 してお り、
想 され る事 実 の解釈 、各課 の教 育 内容 と小 単元 で捉
その 中で も人情 や博 愛 、平等 は普遍 的 な価値 性 を有
え させ たい概 念 を示 してい る 。 左 の二 つ の欄 は分析
す る もの で あ る こ とを捉 え させ てい る 。 また、 ナチ
した結 果 で あ る
ス に対抗 した活 動 は、平 等 な価 値 を重視 す る民族 観
。
学 習 は、第 Ⅰ段 階 「社 会現 象 に見 られ る民族 概 念
に基づ い て行 われ た こ とにつ い て捉 え させ る こ とで 、
の把 握 」 、 第 Ⅱ段 階 「
社 会 的行 為 や制 度 を支 える民
人 間 は一 定 の思 想 や価 値 に基 づ い た行動 を行 うこ と
族概 念 の分 析 」 、 第 Ⅲ段 階 「反社 会 的行 為 や制度 を
を捉 え させ る。 第 7課 で は、争 い や問題 を解 決す る
支 え る民族 概 念 の分析 」 、 第 Ⅳ段 階 「
民 族概 念 の検
ため の活動 は平 等 な民 族 観 に基 づ い て行 われ る こ と
討」とい う 4段 階 の構 成 にな ってい る 。 尚、 こ こで
を学 習す る。 第 8課 で はユ ダヤ人 に対 す る差 別 の起
表記 してい る社 会 的行 為 は、ユ ダヤ人 に対 す る救援
源性 は歴 史 的 な もので あ る こ とを学 習 す る
活動 全般 と定義 し、反社 会 的行為 はユ ダヤ 人 に対 す
人 間 と して生 きる上 で果 たすべ き責任 につ い て考 え
る人種 主 義 的行為 全般 と定 義 す る。
させ る こ とで、他 者 の 人権 を尊 重 す る こ との大切 さ
。
また、
第 Ⅰ段 階 の 「
社 会硯 象 に見 られ る民 族概 念」 には、
につ い て気 づ かせ 、他 者 の人権 を尊 重 してい く行 為
第 1課 か ら第 4課 までが相 当す る。 こ こで は、政 治 、
は平等 な民族 観 に基づ い て行 われ る こ とを捉 え させ
文 化 、社 会 的分 野 に関す る学 習 内容 が設定 されてお
る。 よって 、 この段 階で は、社 会 的行 為 や制度 に存
り、 ア イ ヒマ ン、 ゲ ッベ ルス 、 ゲ - リング、 ヒ トラ
在 す る民 族概 念 につ い て分斬 す る こ とで、民族概 念
ー とい う当時 の ドイツ社 会 の政権 を握 った人物 が行
を 「社 会 的行為 や制度 を支 える価値 」 と して認識 を
っ た政策 につ い て学 習 す る こ とで 、社 会現 象 に反 映
形 成 させ て い る こ とが わか る 。
され てい る民族概 念 を捉 え させ てい る。 第 1課 で は 、
現 在 で は英 雄 とみ な され てい る人物 が 当時 の社 会 で
第 Ⅲ段 階 の 「反社 会 的行 為 ・制度 を支 える民族概
念 の分析」 に相 当す るのが 第 9課 か ら第 15課 で あ
は違 法 者 と してみ な され てい た こ とにつ い て学 習 す
る。 ここで は、社 会 、文化 、 政治 的分 野 に関す る学
る こ とで 、 当時 の法律 は民族 や人種 の優 越 が反 映 さ
習 内容 が設定 され てお り、ユ ダヤ人 に対 す る反社 会
れ てお り、差別 を容認 す る もの にな ってい た こ とを
的行 為 や制度 に存在 す る民族 概 念 につ い ての学 習 を
捉 え させ てい る。 第 2課 で は、 ゲ ッベ ルスが行 った
通 して、 ホ ロ コース トの原 因 を捉 え させ る こ とをね
プ ロパ ガ ンダ活動 な どの反ユ ダヤ 人思 想 を普 及 させ
らい と してい る。 第 9課 で は、 「法律 は 自由 を認 め
る活 動 につ いての学 習 を通 して、 この活動 は差 別 を
てい る もの か制 限す る ものか」 とい う問 い を設 定 し
容 認 す る民 族概 念 に基 づ い て行 われ てい た こ とを捉
生徒 に考 え させ る こ とで 、法律 を守 る こ とを前提 と
え させ てい る。 第 3課 と第 4課 にお い て も、 ドイ ツ
して 自由が認 め られ る こ とを捉 え させ る。 また、 人
㧙㧙
ホロコース ト学習の意義 と教材構成の原理
君
急
も
舶温君+
L
O
E
A
B
P
k』豊吉抜管薦把握
_
_社豪
単元展 開
て
行
法
存
新
人
の
る
書
義
巻
蓋
の
『T
ⅧH
O
Ⅰ
DC
A
U
S
T』 の 教 育 内 容
事 実 の解 釈
い
為
律
在
聞
思
社
差
る行
とみ
に は
した
や 宣
想 が
会 に
別 が
為
な
民
o
伝
普
は
存
則
罪
雄
た
に背 くよ うな
を行 っ た 人 、
と考 え られ た
o
2 課 「ジ ヨ ゼ 7
時 の 社 会 で は 、
o ゲ ツベ ル ス は
した o 物 語 や 歴
容 や 解 釈 は変 化
3 課 「ヘ ル マ ン
時 の ドイ ツ 社 会
だ
っ た「ア
o ド
イ ツ
1課
ドル
フ
活 動 を行 っ た場 合 に責 任 を問 わ れ る の は
命 令 を 出した 人 の 両 者 で あ るo 現 在 で は
人 々 が 以 前 は 法 律 違 反 者 だ と批 判 さ れ て
当 時 の ドイ ツ社 会 は 、 民 主 主 義 社
会 と相 反 す る 独 故 社 会 で あ り民 族
の在
違 の
い 社
に会
よで
る差
しめ
た o
現
合 別
法 が
と存
し在
て認
られ
規
犯
英
い
第
当
た
脳
内
第
当
制
第
た
生
民
政
く さん
した独
族 の 違
策 が 行
第
_
士
ヒ
な
エ
4大
課
拡
トラ
っ た
ノサ
,ヒ
○
んの
ラ ヴ
れ た
る
作
基
世
が
は
て
争
や
反
o
成
づ
の
、
平
行
い
制
映
ス カ ー ーシ ン ド ラ ー は ユ ダ ヤ 人 労 働 者 を
成 功 しユ ダ ヤ 人 を 放 っ た o 多 くの ドイ ツ
よ う にユ ダヤ 人 を放 出 す る活 動 を行 わ な
6 課 「ハ ン ス と ソ フ ィ ア : ド イ ツ 人 の 抵
フ ガニ ス タ ンの 夕 リバ ンは 、 宗 教 の 教 え
て行 動 す る○ 世 の 中 に は 多様 な価 値 観 が
情 や博 愛 、 平 等 は不 変 的 な価 値 性 が あ る
7 課 「ラ ウ ル . ワ レ ン バ ー グ 」
大 西 洋 条 約 機 構 の 活 動 に 見 られ る よ う に
序 の 維 持 の た め に果 た す 役 割 が あ るo 関
扱 うた め に リス ク を負 う こ とに は価 値 が
8
リカ
.ー
ウ イ
5 課 「エ
「オ ス
.シゼ
ンル
ド」
ラー」
の
数
い
わ
が 当 時 の 社 会 で は違 法
され て い た た め 当 時 の
族 の 違 い に よ る差 別 が
活
及
民
在
動 に
した
族 や
した
ドイ
者 ヒ
に よ
れ た
よ っ て 反 ユ ダヤ
こ とか ら、 当時
人 種 の 違 い に よ
o
ツ 人 が 支 持 して誕
トラ ー に よ っ て 、
る差 別 を公 認 す る
o
:ナ
よ っ
活 動
考 え
チ
て
を
や
ス
情
行
視
宣 伝 相」
報 が 普 及 して い つ
う こ とで 市 民 を洗
点 に よ っ て 、 そ の
グ」
見 を聞 き入 れ な い 独 裁 政 治 体
交
積 極
的 産
に行
う こ とで 、 領
ンを
:死
の 生
者 」
-」
トラ
ドイ ツ人 に よ っ て支 持 され 、 首相 と
イア で は 、政 治 指 導 者 主 導 の 下 で ジ
ロ
要
質
基
る
ユ
ダヤ
人 す
に対
す価
る差
は歴
人物
に対
る評
は 別
多 面
的 史
で 的
あ な
秦
たす 役 割 は、他 者 の 人 権 を尊 重 す
る
こで
とで
り、
人権
を認
る行
もの
あ あ
る0
人 間
が 生
きめ
る上
で動
呆
あ るo ユ ダヤ 人 に対 す る差 別 は歴 史 的 な もの で あ る ○ ア フ
]
)
カ系
人 で
団 果
体 や
マ べ
イ き
ノ責
リ任
テ ィと者
され
少 数
々
は他
の る
人権
を民
敬 族
うの
こ 人
とで
「生
き黒
る上
た す
に対 抗 す る活 動 は、 平 等 な民 族 観
第 9 課 「解 放 : 強 制 収 容 所 の 青 年 .解 放 さ れ た 少 年 兵 」
自 由 は 法 律 の 存 在 を 前 提 に し て 存 在 す る も の で あ り、 様 々
ユ 人
や
ダ種
ヤ 観
人 に基
対 づ
す い
る差
て行
別 行
わ為
れ の
るo
背 景
に は 、 差 別 を認 め る排 他 的 な民 族
社 会 は 、差 別 を容 認 す る法 律 が 存 在 す るo
第
な 人
の 活「ホ
動 や
に よ
っ危
て 獲
され た青
o 差
別 が 存 在 す る
1々
0課
ロ犠
コ牲
ー ス
トの
機 得
を逃
年 」
ユ ダヤ 人 の 移 送 の 方 法 や 移 送 に か か っ た 時 間 につ い て o 逃
ユ が
観
ダ存
ヤ 在
人差
す 別
るo
を徹 底 す る た め に行
わ れ た子 ど も を洗 脳 す る活 動 は 、
差 別 を公 認 す る民 族 観 に基 づ い て
習
亡
第
当
れ
を制 限
1た
1課
し
ユ
時 の 子
たo 特
され たo
「ヒ
トの
ラ思
- 時
に生
き人
た青
年 彼
:殺
人信
ま仰
で 生
の 経
ダ
ヤ 人
い代
○ ユ
ダヤ
は 、
らの
活 緯
や 」
慣
ど も達 は 、 ユ ダ ヤ 人 は 劣 っ た 者 で あ る と教 え 込 ま
定 の 集 l
f
]
]や 団 体 で は ユ ダ ヤ 人 に 対 す る 虐 待 や 差 別
民
れ
は
行
善
決
を
た
脳
は
行
物
れ
認
さ差
れ
、
為 を
事 の
るo
め る
幼
や
っ
悪
時
度
畳
京
の
i
垂
昇
Ⅳ
氏
読
族
、
る
悪
わ
定
容
め
平
o 等
や
人
れ 基
の
る
され
認 す
に民
種
な
準
O
る
る
族
差
民
は
o
価
概
ー
は
れ
様
抵
普
が
平
た
な
抗
遍
た リ ス トを
民 族 概 念 に
フ
た
さ
ス
わ
ス
に
ダ
の
オ
に
の
第
ア
つ
人
第
北
秩
を
第
シ ン ドラ
す る行 為
い て行 わ
中 に は 多
ナ チ ス に
等 な どの
わ れ た o
や 問題 を
度 に は平
され て い
行 っ
等 な
o
価 値
した
的 価
「ア
ドル
を
ね ら
っ
ー は た く
O ユ ー ゴ
イ ドが 行
.ゲ ツ ベ ル
新 聞 や 雑 誌
プ ロパ ガ ン
史 を 書 く人
す る○
.ゲ ー リ ン
は 国民 の 意
は
.侵
ア略
イや
ヒ外
マ
が 存 在 す る
人 々 の 行 為
値 に基 づ い
解 決 す る た め の 行 動
等 な民 族 や 人種 観 が
るo
別
族
人
独
値
念
観
を
々
裁
を
が
正
に
の
者
人
使
基
当 化
づ す
い
に
の 決 定
々 に形
用 され
価値
て
る
よ
は
成
た
法
行
っ
差
す
o
律
わ
て
別
る
雇
人
か
抗
に
存
o
う
は
っ
者
従
在
こ とで事 業
シ ン ドラ ー
たo
」
っ て 命 を絶
して お り、
中立 国 家 は 国 際
係 性 の 無 い 人 々
あ る○
」
た
別
行
善
当
制
い
迫
た
は
、
に
子
害
o
人
善
対
ど
を
今
々
悪
抗
もが
受
け
日の
の 価
の 決
して
参
て
紛
値
定
い
加
きす
た
争 に
に よ
を行
く行
る
o
は
っ
う
為
o
争
て
の
は
う こ
決 定
は独
勇 敢
とは
され
裁 者
な行
い
、
だ
動
い
社
っ
と
こ と だ と洗
会 に 反 映 さ
たo 差 別 を
言 え るo
ナ チ ス が 作 り上 げ た ユ ダ ヤ 人 」 の
定 義 は 批 判 可 能 な も の で あ り 「ユ
第 1 3 課 「強 制 収 容 所 」
に抗
つ い
て の
人 々
ダヤ
1の
2 課「ユ「ナ
チ 人
ス」
に対
した
人記
々憶 は事 実 とは異 な る もの
第
定 す る民 族 観 が 存 在 す る
る も の で あ り、 偏 っ た 見 方 で 認 識 さ れ る こ と が あ る ○ 風 刺
画 や 資 料 は 誤 っ て 解 釈 さ れ う る o 「ユ ダ ヤ 人 」 の 条 件 は 、
○
」
異
と」
み な
され
た者
別 別
の 対
象
ダ質
ヤ 人
とい
う表
記 は
に差
は差
を肯
祖
第
が 信
仰
る
るo
1母
4認
課
ッて
ト宗
ー 教
に で
お
い
て
:生
き抜
い は
た 青
年 」
と父
し
て
識「ゲ
さす
れ
い
る
こあ
とが
あ
るo
記 憶
、 作
り上 げ ら れ
め る民 族 観 に基 づ い た政 策 が 実 行
な どの 差 別 的 な政 策 が 行 わ れ た 0 1
9
41年 1
2月 真 珠 湾 攻 撃 後
当
の 社
会 で
わ れ
わ か
た 活
る動
o は 、差
さ時
れ て
い た
こ行
とが
別 を正 当化 す る民 族 観 に基 づ い て
所 が 建 設 され たo
第
の ア
1メ
5課
リカ
「隠
西 海
さ岸
れ た
に、
子 ど
日本
も達
人 の
:移
ナ民
チ や
ス先
の危
住 民
機 か
の た
ら逃
め れ
の 収
た容
青
_
生⊥
に生
な社
っ 会
こ 目
と指
か す
ら、
を認
行
共
わ
れ
た O
を
た 差
め 別
に行
は為
、 民
族
概 念 の 指 標 の 根 拠 を批 判 的 に捉 え
る必 要 が あ るo
種 に属 す る 人 々 に対 して 差 別 的 な扱 い が な され たo
ゲ
ッ
ト課
や「ナ
拘
置所
、
を設
る
こ族
と者
で外
、(行
の
第
ナ チ
の 統
制 す
る
会 容
で 所
は
、
ゲ置
ル
マ 人
ン救
民
以
の 動
民 族
や 約
人
1ス
6
チ
ス社
に収
対
抗
した
ユ
ダす
ヤ
済
非
ユ
ダ制
ヤ
込 」⊥
ユ ダヤ 人 放 出 の た め に活 動 した 人 々 に つ い て 学 習 す るo 大
(
R
o
b
bi
eB
u
t
l
e
r
,
乃 eH
o
l
o
c
a
u
s
t-An
e
a
c
h
e
r'sG
u
l
'
de
,
S
A
D
D
L
E
B
A
C
K
,
P
U
B
L
I
S
H
I
N
G
,
I
n
c
,
2
0
0
2
.よ り筆 者 作 成 )
㧙㧙
井上
昌善 ・桑原
敏典
種差 別 が行 われ る社 会 で は、差 別 を認 め る法律 が制
って い った点 にあ る 11 ㌦
定 され てお り、 その法律 には反社 会 的行 為 を認 め る
うに人 々が持 つ 民族観 を変容 させ て い ったのか とい
第 10
うこ とを、権 力 者 の政 策 や活動 に よる影響 力 につ い
民族 観 が 反映 され てい る こ とに気 づ かせ る
。
よって、権 力者 が どの よ
課 で は、差 別行 為 を認 め た法律 の ため に、ユ ダヤ人
て批 判 的 に見 てい くこ とで、 ホ ロ コース トの原 因 に
が受 け た虐待 や苦 しみ につ い て学 習 させ る。ユ ダヤ
つ い て捉 え させ て い る。 そ して、第 四段 階 で は民族
人 に対 して行 われ た反社 会 的行 為 は、差別 を認 め る
問題 の解 決策 と して共 生社 会 を支 え る価値 と して の
民族観 に基 づ㌧
いて行 われ た こ とに気づ かせ る。 第 1
民族概 念 につ い て検 討 させ て い る と言 える。
1課 で は、反ユ ダヤ思想 を子守 もた ち に教授 し、洗
以上 の こ とか ら、本教 材 で は、人 々が持 つ民 族概
脳 して い く活動 が行 われ てい た こ とにつ い て学 習 し、
念 が権 力 者 に よって変 化 して い くこ と、変 化 した民
ユ ダヤ 人 に対 す る差 別 の徹底 化 が な されてい た こ と
族概 念 が 普 及 し、 それ に よって社 会 の あ り方が 規 定
につ い て捉 え させ る。 第 12課 で は、生徒 に 「善悪
され る こ とを認識 させ る よ うな内容 が構 成 されて い
は何 に よって規 定 され るか」 と問 い、善悪 の判 断 は
る と言 える。 また、 その際 に、多様 な側 面 か ら民族
人 間の価値 に よって行 われ る こ とを確 認 す る。 人 間
概 念 の操 作 の実 態 を捉 え させ てい るのが本 教材 の特
の価 値 は社 会 や時代 に よって変動 す る もので あ り、
徴 で あ る。
行 為 や制度 に反 映 され る もので あ る こ とを捉 え させ
る。 第 13課 で は、 「
ユ ダヤ人」 と規 定 され る条件
3 . 『T
iE HO
LOC
AUS
T』 の授 業構 成原 理一 行 為 ・制
につ い て確 認 し、風 刺 画 には 人 々の考 えや価 値 が 反
度 にお ける民 族概 念 の探 求-
映 され てい る こ とを捉 え る こ とで 、 「
ユ ダヤ人」 の
『THEHOLOC
AUS
T』 は、 当時 の ドイツ社 会 に存在
定 義 は人 間が作 り出 した もので あ り、作 り出 され た
して い た制度 や活動 を把 握 し、 これ らに反 映 され て
民族概 念 は人 々の行 為 や価値 に影響 を与 え る もの に
い る民族概 念 につ い て分析 す る こ とに よって、反映
第 14課 で は、 194
され た民族概 念 が人 々の考 えや行動 の決定 と関連 を
な る こ とを捉 え させ てい る
。
1年 に起 こった真 珠 湾攻 撃 後 、 ア メ リカ西 海岸 に先
持 ってい る こ とを捉 え させ る構 成 とな って い る 。 授
住 民 や 日本 人の移 民 用 の収 容所 が建 設 され た こ とを
業構 成 につ い ての分析結 果 を示 した ものが表 3と表
学 習 し、第 15課 で ゲ ルマ ン人以外 の人種 や民族 は
4で あ る
差 別 的 な扱 い を受 けてい た こ とを学 習す る こ とで、
理 し、表 4は概 念 の認識 過程 を示 した。展 開過程 は、
戦 時 には民 族 や人種 の相 違 を理 由 と して、 自分 た ち
第 Ⅰ段 階 「行為 ・制度 の把握 」 、 第 Ⅲ段 階 「
行為 ・
。
表 3は授 業展 開 を指導 書 の形式 と して整
とは 「異 質 な もの」 を差 別す る政策 が行 われ た こ と
制 度 の形 成過程 の分析 」 、 第 Ⅲ段 階 「行 為 ・制 度 の
を捉 え させ る。 この段 階 で は、当 時 の ドイツ社 会 で
意義 の解 明」 とい う 3段 階の構 成 にな って お り、取
行 われ た行 為 や制 度 につ い ての学 習 を通 して、 「反
り上 げ た行 為 や制度 につ い て の子 どもの意見 を吟味
社 会 的行 為 や制度 を支 え る価 値」 と して民族 概 念 を
し、検 討 してい く学 習 が行 わ れ てい る。
こ こで は、全体 構 成原理 を検 討 した第 Ⅲ部 の第 1
捉 え、 この民族概 念 が 形 成 され る過程 を分 析 す る こ
とで人 々が持 つ民 族概 念 の変動 に よって多 くのユ ダ
3課 「強制 収容所」 を取 り上 げて、具体 的 に授 業構
ヤ人が虐殺 され てい った こ とを認 識 させ てい る。
成 原理 につ い て検 討 して い く. 尚、本教材 は ワー ク
第 Ⅳ段 階 の 「
民 族概 念 の検 討 」 には第 16課 が相
シー トを活用 し、授 業 の予 習 を行 わせ てい る。 この
当す る。 こ こで は、ユ ダヤ人 を放 出 した非 ユ ダヤ人
ワー クシー トは、事 実 を確 認 す る問 い を中心 に構 成
の社 会 的活 動 につ い て学 習す る こ とで 、 これか らの
され てお り、問 い の最 後 には当時 の人 々の気持 ち を
社 会 で他 者 と共 生 してい くため に必 要 な民族 観 につ
共感 的 に理 解 す る こ とをね らい とす る学 習活動 が設
い て検 討 させ 、問題 の解 決策 につ い ての 自己 の考 え
定 され てい る 。
を ま とめ させ授 業 を終 了 してい る。
展 開過程 の第 Ⅰ段 階 に相 当す る 「行 為 ・制 度 の把
『THEHOLOC
AUS
T』 の単 元展 開 につ い て整理 す る
握」 で は、主 と して 「ユ ダヤ 人」 の定義 につ い て学
と次 の よ うにな る。 第一段 階 で ホ ロ コー ス トとい う
習 してい くこ とで 、制 度 に存 在 して い る価 値 と して
民族 問題 の実態 につ いて捉 え させ 、つ ぎに第二段 階 、
「ユ ダヤ人」 概 念 を把握 させ る こ とをね らい と して
第三段 階で は主 と して問題 の性 質 や原 因 につ い て分
い る。 まず 、強 制収容所 が作 られ た 目的 につ い て考
析 させ てい る。 ホ ロ コース トの原 因 は、 人 々が持 つ
え させ 、ユ ダヤ人 や病 弱者 た ち を抹 殺 す る こ とをね
民族 観 が変 容 させ られ る こ とで大量虐 殺へ とつ なが
らい と して い た こ とを捉 え させ る。 次 に、 「
ユ ダヤ
㧙㧙
ホロコース ト学習の意義 と教材構成の原理
人 なのか どうか は何 によって規定 され るのか」とい
次 に、 この よ うな行 動 や制度 が行 われ た理 由 につ い
う問い につい てニ ュル ンベ ル ク法 に明記 されてい る
て考 え させ 、 目的 を果 たす ため に権 力者 は 自身が持
「
ユ ダヤ人」 の定義 につい て学習 す る こ とで 、ナチ
つ民族概念 を何 らかの形 で社 会 に反映す る こ とで、
ス は血統 を基準 とす る 「人種」概念 を用 い て 「
ユダ
人 々の価値 や規 範が規 定 され てい くこ とを捉 え させ
ヤ人」 であ るか否 か を判 別す る と主張 したが 、実際
てい る。 こ こで は、権 力者 に よるか価 値 の普及 に よ
には宗教 とい う精神 文化 を指標 とす る 「
民族」概念
って、人 々が持 つ民族概 念が操作 され る こ とで、 ホ
を用 い て 「ユ ダヤ人」 を規定 してい る こ とを捉 え さ
ロ コース トが発 生 した こ とを捉 え させ てい る。
せ 、 ナチスが定義 づ けた 「
ユ ダヤ人」概念 の規定 基
H
EH
O
L
O
C
A
U
S
T』の授 業 で は、
以上 の ように、 『T
準 はあい まい な ものであ った こ とに気づ かせ る。 そ
行 為や制 度 には権 力 者が持つ民族観 が反映 されてお
して、 「なぜ 、 この よ うな法律 が制定 され たのです
り、 それ に よって人 々の行為 や価値 が影響 を受 け操
か」 とい う問い につ いての仮 説 を立 て させ 、制度 が
作 されてい る こ とを学習 させ てい る。 よって、民族
作 られ た理 由 につい て考 え させ てい る。 ここで は、
概念 を人 々の規 範意識 を規定 し、権 力者 の政策 を正
制度 に明記 されてい る 「ユ ダヤ人」 の定義 につ い て
当化す るための手段 と して探 求 させ る構成 になって
の学 習 を通 して、 「
ユ ダヤ人」概 念 はナチ ス に よっ
い る こ とが わか る 。
て作 り出 され た ものであ り、 ナチ ス に規定 された
「
ユ ダヤ人」概念 が絶対 的 な もの と して人 々 に記憶
されてい た こ とを捉 え させ てい る段 階 と言 える 。
第 Ⅲ段 階の 「
行為 ・制 度 の形 成過程 の分析」 にお
いて は、人 間が持 つ記憶 と しての 「
ユ ダヤ人」概 念
が どの よ うに操作 され、過激 な もの にな ってい った
のか とい うこ とにつ いて学習 してい く。 まず 、ユ ダ
ヤ人が描 かれ てい る風刺 画 を提 示 し、 その風 刺 画 か
ら読 み取 れ る こ とを書 かせ る こ とで、ユ ダヤ人 に対
す るイ メー ジが風 刺画 に よって作 り上 げ られ た こ と
を捉 え させ る。 つ ぎに、 「
一般 のユ ダヤ人 は、残酷
な民族 なのか 」 と問 い、別 の風 刺 画 を提示 す る こ と
で風刺 画 は見 る人 に対 して強い影響 力 を持 ってお り、
誤 った固定観念 を抱 かせ る こ とが あ る こ とを学 習す
る。 さ らに、風 刺 画 は書 き手 の主観 的 な解釈 や考 え
に基づ いて描 かれ る こ とを捉 え させ 、措 かれ てい る
ものか ら直感 的 に事象 を理解 す る こ との危 険性 につ
いて捉 え させ る 。 ここで は、権 力者 が行 った活動 や
制度 に反映 されてい る思想 に よって、人 々が持 つユ
ダヤ人概念 が操作 され、変容 してい く過程 につ い て
の学 習が行 われてい る 。 この段 階 で は人 々が持 つ民
族概 念 は社 会 や権 力者 が持 つ価値 に よって影響 を受
け、変動す る こ とを捉 え させ てい る 。
第 Ⅲ段 階の 「
行為 ・制度 の意 義 の解 明 」 で は、法
律 や風 刺画 の背後 に潜 む問題 点 につい ての学習 を通
して、行為 や制度 の意義 につい て解 明 してい くこ と
をね らい と してい る。 まず 、 「
ユ ダヤ人の定 義 や イ
メー ジは誰 に よって決定 され てい るのですか 。」と
問 うこ とで、 ナチ スの決定 に よって規 定 され た もの
であ る こ とを学 習 し、法律 や風 刺 画 にはナチ スが持
つ偏 った思想が 反映 され てい る こ とを捉 え させ る。
㧙㧙
井上
昌善 ・桑原
敏典
【表 3】 第 13課 「強 制 収 容 所 :強 制 収 容 所 を生 き抜 い た 青 年 た ち 」の 教 授 学 習 過 程
過程
教 師 に よ る指 示 .発 問
教授 学 習過 程
生 徒 の 反 応 .獲 得 させ た い 知 識
・ユ ダ ヤ 人 ○ 病 気 を患 っ て い る 人 々 ○ 身
展
・強 制 収 答 所 に は どの よ う な
T:
発 間 す る○
開
行
為
皮
刺
Ⅰ
人 々 が 連 行 され ま した か ?
・なぜ
復
ち
る
ま
られ
習
で
た
:ワ
す
)
、
た強
す
の
か
ー制
○
は
ク
ぐに
収
シ
どの
(
容
資
ー
ガ所
料
ス
よ
トの
室
は作
を清
う問
な
に入
題
掃
人
られ
す
の
れ
た
T
P:
答間
発
えす
る Oる o
握
把
の
展
開
る
・ユ
体障
ダ害
ヤ者
人や
な障
ど〇
害 を持 つ 人 々 な ど を抹 殺
o)
・強
人(
制
々収
が
殺所
され
では
また
した
くさ
が、
んの
そ
読
み容
物
資
料
を活
用
す
もそ も 「ユ ダヤ 人」 な の か
ど うか は何 に よ っ て規 定 さ
れ る の で す か o (ニ ユ ル ン
ベ ル ク人 種 法 に明 記 され て
い る条 文 を活 用 す る ○)
たので
かよ
? う な法 律 が 制
・なぜ
、す
この
志 され た の で す か o
・風 刺 画 は物 事 を表 現 す る上
で
T
T
P:
:
答間
発
えす
るO
O
る○
o
P:
答 える
○
T:
発 間 す るo
・祖
す父
る母
ため
の信
〇 仰 す る宗 教 に よ っ て 決 定 さ
れ る ○ 「ユ ダ ヤ 人 」と規 定 さ れ る 基 準
は 宗 教 で あ り、 「人 種 」 で は な い こ と
か ら、 こ の 法 律 に明 記 さ れ て い る 「ユ
ダ ヤ 人 」 の 判 断 基 準 は 、 あ い ま い な民
族 概 念 に基 づ く もの で あ る こ と に気 づ
かせ る○
・ユ ダ ヤ 人 を差 別 す る た め ○
・事 実 で な い こ とが 広 ま っ た りす る か も
T
P:
考間
発
答
えす
るo
るo
T:
発 問す る
形
の
行
為
皮
刺
Ⅱ
・実
を活
際用
に一
す般
る)
の ユ ダヤ 人 は 、
性
便
が
に思
この風
どの
利
否
が定
あ
い
な
よ刺
的
ます
う
もの
ります
画
に悪
に描
か
に
を見
用
か
な
?れ
て
され
ります
?
(ユ
た風
どの
る可
ダヤ
刺
が
よ能
画
、
人
う
程
析
分
過
の
成
・風
が
や
た(
刺
ユ
デ
め
出画
の
ー
た
に戦
ダヤ
絶
は
こ
タ村
、
い
人
を示
と物
的
、
は祖
を示
事
多
す
な手
)
国
を理
した風
くの
段
ドイ
犠
解
とな
牲
刺
す
ツ者
画
の
る
り
ます か ?
そ刺
の画
よ は何
う な民
族づ
です
?か
・風
に基
いか
て描
れ
ているのですか ?
T
P:
答問
発
えす
るo
O
るo
P:
答 え る○
・絶
ヤ対
人的
は誠
な実
もの
な民
と族
は言
でい
ある
きれ
〇
ない○
物 事 を性 格 に理 解 す る た め に は根 拠 の
正 当 性 を 明 らか にす る必 要 が あ る D
・書 き手 の 主 観 的 な解 釈 や 考 え に基 づ い
て描 か れ るo
展
1ユ ダヤ 人 」 の 定 義 や イ メ
T:発 間す る○
・ナ チ ス が 持 つ 反 ユ ダ ヤ 思 想 が 反 映 され
・これ
れ
や風
-て
ジ刺
い
は
まで
画
、
っ誰
学
た
に習
の
は何
にで
よ
しが
す
て
っ反
か
て規
き映
た法
?定
され
律
さ
・なぜ
動
てが
い行
、
まわ
こ
した
れ
のか
た
よの
う
?だ
な制
ろ度
うか
や活
?
T
P:
答問
発
間
えす
る Oる ○
O
P:
答 える
行
為
皮
刺
の
開
Ⅲ
意
義
o
・ユ
・そ
しれ
ん
ダヤ
な人
い
こ〇
は残
と は酷
ない
な民
の族
でで
はあ
ない
る〇
かo ユ ダ
O
○
・人
てい
々の
る規
〇 範 意 識 を規 定 す る こ とで ナ チ
ス の 政 策 を認 め させ 、 正 当 化 す る た
(R
o
b
bi
eB
u
t
l
e
r
,7
Y
I
eHoJ
o
c
au
st-AT
e
ac
b
e
z
'sG
u
l
'
d
e
,
S
A
D
D
L
E
B
A
C
K
,
P
U
B
L
I
S
H
I
N
G
,
I
n
°,
2
0
0
2
.pp,2
6
2
7
,よ
り筆 者 作 成 )
な カ贈
あ トを
に スド
とポ 一
こ のカ
な そ卜
運 、
ス
幸 しポ
ヽ
■
○
カ 、
すし は
ま Oに
し た際
としの
るま そ
い得 ,
:
.
にを い
所会 さ
春機だ o
収 る- い
制 け てさ
ま
定
強 苦 いだ
族
o
規
はを 書 家 る て る所 た ド を て
一ド え
の- れ つれ 容
た か ら よ さ収
一考
、
ト カを
な す 送 に定 制
あ で に何 規 強 て スト て
る誰 室 、
て 、 し ボ ス立
いは スは つは と にポ 章
て のガ か よ 女 人 人 Oに
れ る にう に少
一るす う
> さ れ ぐ ど 教 た Oの いで よ
容 人 ら す か 宗 いた 々 て いる
内 記 送 は の る てし 人 つさ す
間 に に外 な す い害 る 思 小 明
質 ト ぐ 以」 仰 働 妨 す と も 説
ト スす 母入 信 でを 場 い て て 々
一リ にと ヤ が 場 造 登 た と い楳
シ の室 弟 ダ 母 工 製 に- 、つは
ク 下 ス兄 ユ父 器 器 料 送 は に答
一以 ガ 従 「 阻 武 武 資 が ド 人 解
ワ .
..
た 一る
< - ① 2② 3③ 4
.全 て ア ウ シ ュ ヴ ィ ッ ツへ 連 行 さ れ ま した 。
され る か
。
か ら友 人 を助 け る た め に何 を し ま した か
あな
カ
㧙㧙
。
ホロコース ト学習の意義 と教材構成の原理
T
iEH
O
L
O
C
A
U
S
T』の授 業 構 成 原 理
[表 4】 『
一 行 為 ・制 度 にお け る民 族 概 念 の探 求授業展 開
学 習 活動
Ⅰ 行 為 .制 度 の把 撞
こ度
とで
、概
は何
らか 念
の一
定い
の基
に義
よっ
て規
さ
制
に存
在念
して
い る概
につ
て準
の定
を把
握定
する
れ うる もの で あ る こ とを捉 え るo
Ⅱ 行 為 .制 度 の形 成 過 程 の分 析
行
よ って
どの
よ に認
う に識
、変容し
つ念
たが
の制
か度
を捉
学為
習に
を通
して 、
人々
され てて
いい
た概
や
えるo概念の解釈の変動によって人 間 の運 命 が左 右
されることについて捉えるo
や価値が反映さ
れており、人間の行
の決思
定
今ま
での学習を踏まえ、行動や制
度動
にや
は政
人策
間 の意
Ⅲ 行 為 .制 度 の意 義 の解 明
(R
o
b
bi
eB
u
t
l
e
r
,乃eHo
l
o
c
a
u
st-A7:
ea
c
Ae
z
'sG
u
l
'
d
e
,
S
A
D
D
L
E
B
A
C
K
,
P
U
B
L
I
S
H
I
N
G
,
I
n
c
,
2
0
0
2
.よ り筆 者 作 成 )
Ⅴ.『TI正HOLOCAUST』が 示 唆 す る もの
方 法 学 会 紀 要 』第
本 教 材 で は 、 ホ ロ コー ス トとい う民 族 問題 の
25巻 , 1999年 .
2) 塩 川伸 明 『民 族 とネ イ シ ョ ンー ナ シ ョナ リ
原 因 につ い て学 習 す る こ とで 、 人 々が 持 つ 民 族
ズ ム とい う難 問 』岩 波 新 書 , 2008年 ,p .
概 念 、 つ ま り社 会 の 規 範 や 人 々 の価 値 は 社 会 的
30.
歴 史 的文 脈 の 影 響 を受 け続 け る もの で あ る こ と
3) 帝 国書 院 『中学 校 の 公 民 』 平 成 17年 度 検
を捉 え させ て い た。 こ の こ とか ら、民 族 概 念 を
定 済 み ,谷 本 莫 彦 他 5名 , p . 155 .尚 、
構 築 主 義 の考 え方 を反 映 した もの と して捉 え さ
他 の教 科 書 にお い て も民 族 や 宗 教 の 違 い が 紛
せ 、 自己 の民 族 に対 す る認 識 につ い て考 え させ
る きっか け を与 え る もの に な って い る と言 え る。
争 の 原 因 とな っ た とい う記 述 が 見 られ た 。
4) ア ジ ア経 済研 究 所 の 武 内進 一 氏 や ジ ェ ノサ
『
T
I
i
EH
O
L
O
C
A
U
S
T』にお け る授 業 で は、 ホ
イ ド研 究 で 著 名 な石 田勇 治 氏 な ど多 数 の研 究
ロ コー ス トの 原 因 を人 々が 持 つ 民 族 概 念 の 変 容
者 が 以 下 の 著 書 で 主 張 して い る。 武 内進 一 編
また 、
と して捉 え させ 、 そ の 変 容 過 程 を事 実 に基 づ い
『国 家 ・暴 力 ・政 治
ア ジ ア ア フ リカの紛 争
て捉 え させ る学 習 活 動 が 行 わ れ て い た 。 この こ
をめ ぐっ て 』 ア ジ ア経 済研 究 所 , 2003年 .
とか ら、生 徒 の認 識 を科 学 的 な もの にす る た め
城 山英 明 ・石 田勇 治 ・遠 藤 乾 『紛 争 現 場 か ら
に民 族 概 念 を実 証 的 に捉 え させ て い る こ とが わ
の平 和 構 築 』 東 信 堂 , 2 007年 .
5) 第 一 出版 社 『改 訂 版 現 代 社 会 』 平 成 18年
か る。
『
T
H
EH
O
L
O
C
A
U
S
T』が わ が
検定済み
国 の民 族 学 習 の改 善 の た め に示 唆 を与 え て い る
212 .
以 上 の論 を受 け て 、
もの と考 え る点 は以 下 の二 点 で あ る 。
① 民 族 概 念 を構 築 主 義 の考 え方 を踏 ま え て捉 え
田辺 裕
他 8名 ,p.
6) 森 分 孝 治 『現 代 社 会 科 授 業 理 論 』 明 治 図書 ,
1984年 .
7) ア ー ネ ス ト ・ゲ ル ナ - 『民 族 とナ シ ョナ リ
ズ ム』 岩 波 書 店 , 2000年 ,p.82,
させ て い る 。
② ホ ロ コ ー ス トの 原 因 を民 族 概 念 に注 目 して 実
証 的 に捉 え させ て い る 。
本 研 究 で分 析 した
坂 上順 夫
『
T
H
EH
O
L
O
C
A
U
S
T』は 、民 族
間題 の原 因 を事 実 に基 づ い て探 求 させ る実 証 的
学 習 と して構 成 され て い る こ とか ら、 わ が 国 の
8) 塩 川伸 明 『民 族 とネ イ シ ョ ンー ナ シ ョナ リ
ズ ム とい う難 問 』岩 波 新 書 , 2008年 .
9)S
a
d
d
l
e
B
a
c
k社 につ い て は次 の ア ドレス を参
t
t
p:
/
/
W.
s
d
l
b
a
c
k
.
c
o
m
/
照 され た い o h
1
0) R
o
b
bi
eB
u
t
l
e
r
,
乃eHo
l
o
c
a
u
stA7
:
e
a
c
J
b
e s
G
u
l
'
d
e
,
S
A
D
D
L
E
B
A
C
K
,
P
U
B
L
I
S
H
I
N
G
,
I
n
c
,
2
0
0
2
,
p
.
3.
lノ
民 族 学 習 の改 善 に向 け た示 唆 を与 え る もの と し
にお け る記 載 内 容 を ま とめ る と、次 の五 つ の
て評 価 す る こ とが で きる 。
能 力 の 育 成 が 目的 と され る 。 ① 読 む ・書 く以
上 の 高 度 な知 識 活 用 能 力② 読 解 力③ 問題 解 決
【
注】
能 力 ④ 問題 を選 択 し探 求 しま とめ る 能 力⑤ 事
1) 児 玉康 弘 「社 会 認 識 教 育 にお け る科 学 的
実 に基 づ い て 発 表 す る能 力
「ネー シ ョン」概 念 の 育 成 方 法 」 『日本 教 育
ll) 芝 健 介 『ホ ロ コー ス ト』 中公 新 書 ,
㧙㧙
200
8$. ~~~-firOO*·.~·~~ 7V
777 1) 7J
fix.
(J)
WiJ$ ~ Ii)
2 0 0 3 $.
~1'fHlJ?{t*Jf.. 1
*?,
('
-J
-c j
~ 515
7 V7
*J~tdiJf1'E
r-=r. ;7" -1;' J\. (:. 1
") AJ
9 9 1 4.
Title: STUDY ON THE PRINCIPLE AND THE ORGANIZATION OF CONTENTS OF THE HOLOCAUST
LEARNING
INOUE MASAYOSHI (Graduate Course of Education Okayama University)
KUWABARA TOSHINORI (Faculty of Education Okayama University)
In this paper I analyzed the contents and the lesson plan of the teaching
materials
"The Holocaust" published In the U.S.to indicate the
principle and the teaching method of the holocaust learning. In the
social studies of Japan, there are some problems about teaching the
issues of ethnic. In Japan teachers fail to make students understand
those issues on the basis of the social sciences. In this study I wi 11
exhibit how to improve the learning of the issues of ethnic in the social
studies of Japan.
Keywords: Social studies, The Holocaust Learning, The Issues of ethnic, Social
recognition
㧙㧙
Fly UP