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エスニック・ビジネスと宗教ネットワーク

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エスニック・ビジネスと宗教ネットワーク
エスニック・ビジネスと宗教ネットワーク
―韓国人ニューカマー女性起業家を事例として―
法政大学 柳 蓮淑
1.目的
本報告の目的は、韓国人ニューカマー女性(以下、韓国人女性)のエスニック・ビジネス起業を可
能にする社会的ネットワークの形成過程を把握する一つの手がかりとして、韓国人女性の起業におけ
る宗教団体(主に、韓国人が運営するプロテストタント教会)の役割とその機能について、ジェンダ
ーの視点から明らかにすることである。
2.方法
調査対象者は単身来日し、来日後にエスニック・ビジネスを起業した韓国人女性 15 名である。調
査方法は、2000 年 5 月から 05 年 9 月までの間に複数回の半構造インタビュー調査と参与観察を実施
してデータを収集した。筆者は調査期間中に信者として教会の礼拝に参加したり、女性が経営する店
の顧客になったりしてラポールを形成したのちに、調査に対する協力を得ることができた。調査場所
は、協力者の通う教会と彼女たちが経営する店舗及び自宅が中心である。インタビューは主に韓国語
で行い、1 回平均 2~3 時間をかけた。半数の女性とは複数回にわたり調査を実施した。
3.結果
本報告では、韓国人女性のエスニック・ビジネスの起業と運用過程における社会的ネットワークの
一つとしての宗教団体の機能について、
「宗教的機能」
「経済的機能」
「社会・心理的機能」に分けてそ
の役割を明らかにした。第 1 に、「宗教的機能」として、日本での安定した生活を可能にする精神的
な援助や、日本における布教を目標とするトランスナショナルなネットワーク作りの機能を担ってい
る。第 2 に、「経済的機能」として、信者の生活を支援するためのさまざまな情報提供や交換の場と
なっている。また牧師夫妻や教会幹部が、就労から転職に至るまで全面的な相談や斡旋の役割を担い、
起業を企図した女性に対して店舗探しから設立資金、従業員の雇用、顧客の確保などにおける全面的
な後援者として機能している例が見られた。第 3 に、「社会・心理的機能」として、韓国との頻繁な
交流を通じて母国文化を享受できる機会を与えており、信者は宗教施設を「ホーム」として認識して
いる場合が多い。しかも教会内での責任ある地位を獲得することが、信者の社会的威信の回復機能の
役割を担っていることが明らかになった。
本報告では、調査方法や事例数の限定性を踏まえつつ、韓国人女性のエスニック・ビジネスにおけ
る宗教団体が形成する社会的ネットワークの機能とその役割について試論的に提示し、今後の他地域
との比較研究の基盤としたい。
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