携帯電話を利用した野外観察学習用検索システムの開発

2003 年　電子情報通信学会総合大会
D-15-33
携帯電話を利用した野外観察学習用検索システムの開発
Development of the Search System for Fieldwork using the Cellular Phone
*1
榎本聡*1
山本朋弘*2
森田裕介*3
藤木卓*3
Satoshi Enomoto
Tomohiro Yamamoto
Yusuke Morita
Takashi Fujiki
国立教育政策研究所
National Institute for
Educational Policy Research
*2
熊本県人吉市立東間小学校
Hitoyoshi Municipal
Toukan Elementary School
1. まえがき
平成 14 年度から小・中学校で新しい学習指導要
領が実施されている。この中で、情報活用能力育
成のための学習活動や、体験的学習を積極的に取
り入れることが求められている。また、総合的な
学習等では、学校外での観察学習が効果を上げて
いる。
本報告では、携帯電話で表示可能な野外観察学
習用のディジタルコンテンツライブラリを構築し、
その検索システムを開発した。これにより、観察
学習時に即座に検索ができるようになった。
2. ディジタルコンテンツの作成
野外観察学習に利用可能なディジタルコンテン
ツは、すでにいくつか存在する。しかし、表示端
末としてコンピュータ画面を前提としたものであ
り、画像サイズ等の理由から携帯電話で表示する
ことはできない。
そこで本報告では、携帯電話で利用可能なディ
ジタルコンテンツを作成するために、現在市場に
出ている携帯電話の仕様を元に、画像サイズ等を
規定した。
画像フォーマットは、JPEG を採用した。JPEG
は比較的新しい機種でのみ対応しているが、普及
しているディジタルカメラとの整合性を考えると、
JPEG が適当であると考える。
表示画像サイズは、120×120 ピクセルとした。
2002 年 6 月の調査時点では、機種による表示可能
サイズの最小が 96×76 ピクセル、最大が 163×
182 ピクセルであった。最小の機種では表示が難
しいが、大画面化が進んでいること、あまり小さ
なサイズでは観察学習に不適であるとのことから、
このサイズを選んだ。ただし、将来表示画像サイ
ズを変更できるようにするために、データベース
には 360×360 ピクセルの画像を登録することとし、
携帯電話への表示時に、自動的に縮小して表示す
るようにした。
この仕様に基づき、ディジタルコンテンツを作
成した。野外観察学習ではさまざまな分野が考え
られるが、本報告では、特に小学校理科の植物野
外観察学習に絞り、花の写真を中心に約 50 点のコ
ンテンツを作成した。
*3
長崎大学教育学部
Faculty of Education,
Nagasaki University
3. 携帯電話用検索システムの開発
システムの特徴は次の 2 点である。
z Web サーバと RDBMS による検索システム。
ImageMagick を利用し、360×360 ピクセルの画
像を 120×120 ピクセルに自動縮小する。
z アクセスしている携帯電話のキャリアを判定し、
キャリアに応じたページ記述言語を用いて、ペ
ージを自動生成。
本システムは、携帯電話用のものであるが、コ
ンピュータでのアクセスも可能とした。その際の
表示画像サイズは 240×240 ピクセルとした。
RDBMS に登録するデータは、教育情報ナショ
ナルセンターで定めた学習オブジェクトメタデー
タ[1]に準拠するようにした。
4. 実証実験
2002 年 10 月 10 日及び 11 日に、熊本県人吉市立
東間小学校の 4 年生児童を対象に実証実験を実施
した。
12 台の携帯電話を利用し、校庭周辺の観察学習
を実施し、その際に携帯電話による検索を行った。
携帯電話による検索操作が難しいのではないかと
懸念していたが、児童に対する口頭質問では、コ
ンピュータのマウス操作より簡単であるとの回答
もあり、操作性に問題はなかったと考えられる。
5. まとめ
本報告では、携帯電話を利用した野外観察学習
用検索システムを開発した。
最新の携帯電話では動画像の表示が可能であっ
たり、ディジタルカメラ機能が備わっていたりす
るものがある。今後は、動画像への対応や、児童
が携帯電話で撮影した画像のデータベースへの登
録機能の開発等、本システムの機能改善を図って
いく予定である。
参考文献
[1]
清水康敬、榎本聡「NICER における学習オブジェクト
メタデータ LOM と検索システム」日本教育工学会第
18 回全国大会講演論文集、pp.845-846、2002
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