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工場ルポ №272 自動車用ワイパーの粉体塗装 株式会社東海理機

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工場ルポ №272 自動車用ワイパーの粉体塗装 株式会社東海理機
工場ルポ
№272
自動車用ワイパーの粉体塗装
〒470-2102
株式会社東海理機製作所
東浦工場
愛知県知多郡東浦大字緒川字葭狭間 3-3
TEL(0562)83-2288
1.会社の概要
株式会社東海理機製作所の設立は 1959 年 6 月、㈱東海スプリング製作所よりワイパー事業部門を分
離独立し、長根本社工場の竣工(しゅんこう)から始まる。その後、横根工場、東浦工場、相生工場を立
ち上げて事業を堅実に伸展させてきているが、各工場における主な業務内容を簡単に紹介する。
長根本社工場:1959 年設立。プレス,アルマイト処理。
横根工場:1966 年新設。4 工場の中で最も規模が大きく、ウォーターバルブ,ウインターブレードの
一貫製造のほか無酸化ロー付け,樹脂成型,工機部門。
東浦工場:1978 年新設。今回の取材工場。ワイパーアーム&ブレードの一貫製造,粉体塗装工場。
相生工場:2001 年購入。樹脂成型および樹脂製品の組み付け。
なお、ISO9001,ISO14001 を認証取得。
2.200 品種のワイパーを生産
トヨタ車はじめ国産の代表的な車種に搭載されているワイパーが、ここ東浦工場で生産されている。
その部品構成は大きくアームとブレードに分けられるのだが、種類は約 200 品種あり、車に換算すると
100 タイプに対応していて、寸法も 300∼700mm まで 25mm 刻みで揃(そろ)えられている。最盛期ともな
ると月産 50 万本、通常でも約 400 万本が製造されている。
そのため、塗装工場のライン設計は前処理と塗装ラインを分離するなど、大規模な設備構成にもかか
わらず随所で柔軟な生産態勢が工夫されている。今回は、最新鋭の 5L 粉体塗装ラインを取材させてい
ただいた。
3.塗装工場の概要
はじめに塗装工場の設備概要を紹介する。
①前処理設備:パワー&フリーコンベヤーによるタクト搬送。浸漬(しんせき)方式で処理される。ラ
イン長さ:58m。
工程:着荷→湯洗→脱脂→第一水洗→第二水洗→表面調整→化成処理→第一純水洗→第二純水湯洗→
水切り乾燥→脱荷
②カチオン電着塗装:ドラゴンタクトコンベヤー方式。6t 槽。ライン長さ:53m。
③粉体塗装ライン(2 ライン)
5L ライン:塗装装置は固定式 6 ガン+1 レシプロ 4 ガン(ガンはコロナ型 X-2a)。ハンドガン:
XR1-100STm1 台,サイクロンバッグフィルター方式 2 基,定量供給装置(超音波揺動式),塗料回収装置
等。ポリエステル樹脂粉体塗料を使用。ライン長さ:172m。
工程:ハンガー掛け→エアブロー→自動静電粉体塗装→焼き付け乾燥(210℃×20min)→セッティング
→取り外し→検査
T-2 ライン:塗装装置は固定式 5 ガン+1 レシプロ 2 ガン(ガンは摩擦帯電型)。エポキシ樹脂粉体塗料
を使用。ライン長さ:121m。
④ショットブラスト工場:ハンガーの塗膜剥離(はくり)処理を行う。
焼き付け乾燥炉
塗装ブース
5L 粉体塗装ラインの概要
4.粉体塗装の特徴
かつてワイパーの塗装では、エポキシ粉体塗装 1 コートであったが、品質向上のため電着+溶剤系塗
装の 2 コート仕上げが主流となった。それは電着塗装で耐食性を、また溶剤系塗装で耐候性を付与させ
るというように、それぞれの塗膜特性を生かした塗装仕様が求められていたからである。
しかし、現在のように再び粉体塗装がワイパーに導入されるようになったのは、粉体塗料の性能が向
上し、耐食性と耐候性の両特性を兼ね備えるようにできたからである。その陰では塗料メーカーの塗料
改質,粉体機器システムの高精度化、東海理機製作所の塗装ノウハウの蓄積など、いわば三位一体とな
った協力体制を見逃せないであろう。
従来の 2 回塗りから粉体 1 回塗り仕上げと進化したことは、コストダウンへの寄与もさることながら、
環境保全の維持という現代社会の抱える課題に対し企業責任を果たしていることになる。
5.環境とコストダウン達成のノウハウ
車を購入する時にワイパーまでチェックすることは皆無であろうが、その製造に携わる塗装現場の担
当者にとっては、息つく暇もないくらいの神経を遣っている。すなわち、黒色粉体の 3 分艶(つや)仕上
げの状態、微細なゴミブツの付着がないか、アーム部品の裏側まで隈(くま)なく塗料が入り込んでいる
か、細長い部品だけに塗膜厚にバラツキが生じていないか、さらには設備稼働率や生産性等々、ワイパ
ーの高品質を維持するうえでの留意点は数多くある。
こうした問題点を順次解消した工夫の一端を終わりに挙げる。
同社における最大の特徴は、塗料使用量を g 単位で管理できているということであろう。すなわちア
ナログ的で曖昧模糊(あいまいもこ)とした塗装条件を数値化し、デジタル管理を実現したのである。
その具体例としては、①粉の回収効率は約 98%を達成,②超音波振動篩(ふるい)を採用した省スペー
ス設計と篩能力向上により 150 メッシュ(104μ)の細かいブツを除去し(繊維系のゴミまで取ることが
できる)、無駄の排除に努めていること,③2 基のサイクロンバッグフィルター設置によって微粉をカッ
トし、新粉と回収粉を一定割合に調整する,④固定式ガンとレシプロケーターを組み合せた塗料吐出量
精度の維持(塗膜仕上げの均一化),⑤アーム部品における裏側までの入り込み性の確保,⑥ハンガー冶
具の独自設計と設備稼働率アップなど、近い将来には「素人でも塗装できる」稼動体制が想定されてい
る。
同社の取材に当たり製造部総括・森下高英取締役、生産技術 G・宇野勝仁主任、山崎浩司主任補佐の
方々にお世話になりました。厚く御礼を申し上げます。
▲最新鋭の 5L 自動粉体静電塗装ラインにおける
塗装室の入り口(手前側)
▲粉体ブースは稼動状況が確認できる透明
壁面の設計
▲粉体ラインの塗装制御盤
▲ハンドガンユニット
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