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南筑高校・久留米大学合同模擬選挙の総括と課題について (PDFファイル)
南筑高校・久留米大学合同模擬選挙の総括と課題について 法学部模擬選挙チーム 久留米大学法学部と地域連携センターは 2015 年 11 月 18 日に御井キャンパス において南筑高校と合同で大阪ダブル選挙を題材とした模擬選挙を実施し、25 日には振り返り会を行いました。模擬選挙に参加したのは、南筑高校三年生3 0名と久留米大学一年生51名、学生スタッフ(二~四年生)28名です。大 学生は法学部と経済学部の学生です。 対象が政治に関することであったので、法学部が進行と分析を担当いたしま したが、地域連携センター(センター長:大矢野栄次教授、松下愛学長特命講 師)と武井良範広報担当部長のご協力とご尽力がなければ今回の企画は実現で きませんでした。地域連携センターにはとくに企画・渉外・運営・事務的作業・ 学生の動員に多大のご貢献をしていただきました。深く感謝いたします。 おかげさまで南筑高校、久留米商業高校、三井中央高校、福岡工業大学附属 城東高校、久留米市教育委員会、久留米市選挙管理委員会などの多数の視察の 先生方にご来校していただき、新聞社(朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、西日 本新聞)やテレビ局(TNCテレビ西日本、FBS福岡放送、TVQ九州放送) の報道機関の方々にも取材していただきました。社会的反響も大きかったよう です。この場を借りて厚く御礼を申し上げます。 大阪のダブル選挙も終了しましたので、模擬選挙の投票結果について公表し、 今回の企画の成果を振り返って検証してみたいと思います。分析を行ったのは 法学部模擬選挙チームで、今回は国際政治学科の前田俊文、佐々木拓雄、松田 光司、土肥勲嗣の4名が担当しました。 まずは模擬投票の結果からです。今回の模擬投票は全国規模で企画され、そ の呼びかけに応じて久留米大学も参加しました。事務局の早稲田大学マニフェ スト研究所、模擬選挙推進ネットワークから投票結果の最終結果が発表されま した。http://www.maniken.jp/pdf/151126pr_osakamogi_kekka.pdf 参加したのは全国の高校・大学合わせて20校です。このレポートによると、 「1.実際の投票結果と比べて、得票順で同じ傾向が見られた、2.大学では 高校と比べ、当選者・次点以外の候補への得票が少ない傾向があった、3.若 干の差はあるが、メディアの出口調査と同様に、若年層の維新支持の傾向がう かがえる」、とのことです。 さて、南筑高校・久留米大学合同の模擬投票の結果発表に移りたいと思いま す。事務局からは具体的な票数は公表しないようにとの指示が来ていますので、 大体の割合だけを公表したいと思います。ちなみに棄権はいませんでした。無 効票は大阪市長選で2票出ています。 実際のダブル選挙の結果と同様に模擬投票でも大阪維新の候補が優勢でした が、市長選の柳本候補の票が模擬投票では伸びなかったのが大きな違いとなっ ています。 まず大阪府知事選ですが、高校三年生では栗原候補と松井候補がほぼ同数で した。大学一年生では松井候補が栗原候補を大きく引き離し、倍以上となって います。大学一年生では美馬候補への票も全体の6分の1ほどあり、大阪維新 と自民党の対立に対する批判票も多かったのではないかと推測されます。全体 では松井5、栗原3、美馬1の割合でした。 市長選では4人の候補がいて生徒や学生には判断基準がわかりにくかったの かもしれませんが、大阪維新の吉村候補が高校三年生・大学一年生とも圧倒的 に優勢でした。自民党の柳本候補は高校三年生では6分の1、大学一年生では 5分の1ほどで票が伸びませんでした。柳本候補とほぼ同じ票数を獲得したの が中川候補でした。第三の道などのスローガンが好意的に受け止められたよう です。全体では吉村6、柳本2、中川2、高尾0.5の割合でした。投票結果 については以上です。 さて、今回の模擬選挙の最大の目的は、受講した生徒・学生の選挙や政治へ の関心を高め、有権者としての責任と自覚を持ってもらうことにありました。 模擬選挙を行うことが果たしてその目的のためにどれだけ効果があるのか検証 したいと思います。終了後のアンケート結果では、模擬選挙に参加する前と後 で彼らの意識が大きく変化していることが確認できました。 まず政治的関心では、参加した高校三年生、大学一年生、学生スタッフ(二 ~四年生)をすべて合わせた110人(※参加人数は計109名ですが、アン ケートは110名分回収しました。原因については現在のところ不明です)で は、模擬選挙前の政治に対する関心度は50.9%でした。内訳を見ると、高 校三年生は43.3%、大学一年生は44.2%でした。あまり高いとは言え ない数字です。模擬選挙に参加することで政治的関心が高まったと答えた割合 は学生スタッフを含む全体では88.2%、高校三年生では76.7%、大学 一年生では92.3%でした。とくに大学一年生では90%以上というきわめ て高い数字になっています。 次に投票行動についてです。来年の参議院選挙に投票に行くかどうかという 質問については、学生スタッフを含む全体で67.3%から90.0%に上昇。 高校三年生では60.0%から90.0%に上昇し、大学一年生では57.7% から86.6%に上昇しました。高校三年生、大学一年生とも30ポイントほ どの上昇になっています。 今回は高校三年生と大学一年生を同時に模擬選挙の対象とするという全国的 に見ても珍しい取り組みですが、この方式が若者の政治意識を高め、投票所に 向かわせるためにきわめて効果的であることが数字の上では確認することがで きました。 さらに投票基準についてです。どのような点を重視して投票をするかについ てですが、投票をした高校三年生と大学一年生に限定して質問しました。全体、 高校三年生、大学一年生を通じて政策や実績を重視すると答えた学生が多く、 それぞれ79.3%、60.0%、90.4%でした。高校三年生では人柄を 重視する傾向が強く20.0%でした。 政策や実績を重視するのであれば、選挙期間中に各候補者の政策を読み、訴 えを聞くだけでは不十分です。告示関係の新聞記事や選挙公報を全員に配布し ましたが、争点については「大阪都構想がわからない」などの声も聞かれまし た。日頃から新聞を読み、ニュースを見るなどの積み重ねが必要です。そうい った教育も忘れてはなりません。 最後に模擬選挙に対する評価ですが、評価すると答えた割合が学生スタッフ を含む全体で84.5%、高校三年生では83.3%、大学一年生では84. 6%でした。いずれも今回の模擬選挙を高く評価していることがうかがえます。 今回のアンケートでは感想を記入する欄はなかったのですが、多くの学生や 生徒さんが記入してくれましたので紹介いたします。 高校生では、 「多くのことを学べた」、 「いい経験ができた」、 「詳しくわかりや すく大変よかった」、「いろいろな意見を聞くことができてよい取り組みだと思 った」、などの感想が書かれていました。 大学一年生では、 「今まで政治についてこのように真剣に考える機会がなかっ たのでいい経験になった」、「もう少し選挙について学ぶ必要があると思った」、 「毎年やってもいいと思う」、「班の人の候補者を選ぶ基準が違っていたので参 考になった」、 「大学、高校と関係なくお互いの意見が聞けてよかった」、などで す。 学生スタッフからは、 「高校生と大学生の意見が交換できる機会でもありよか った」、「若者の投票率を上げることができるのではないか」、「高校生も勉強し たらしっかりした考えを持つことができる」、「大学一年生の方が考えていない と思った」、などです。 最後に、今回の模擬選挙の総括と課題を指摘したいと思います。アンケート 結果を見る限り、大学という場を使って高校生と大学生を合同で主権者教育を することの効果はかなり期待できることが確認されました。主権者教育の新た なモデルとして検討するに十分値すると思われます。しかも、高校生の主権者 教育だけでなく大学一年生、学生スタッフの主権者教育も同時に実施できると いうメリットがあります。今後も継続して実施していくだけの価値は十分にあ ると思います。 課題といたしましては、南筑高校はお隣ですぐに来ていただけましたが、遠 方の高校との連携には移動時間がかかるという難点があります。こちらから出 向くという方法もありますが、受け入れ側の準備など高校側の重荷になるかも しれません。 18日の模擬選挙でグループ討議の後、ひとつの班からA候補●票、B候補 ●票などの発表がありました。これは公職選挙法で禁じられている「人気投票 の公表」に抵触する恐れがあります。公職選挙法には細心の注意を払わなけれ ばなりません。 グループ討議の時に学生スタッフが高校生を特定の方向に誘導しないように 注意する必要もあります。高校生の判断にバイアスをかけないように細心の注 意を払わなければなりません。学生スタッフに対する事前の周知徹底が不可欠 となります。 今後、市選管、市教育委員会、高校などと実現可能な実施方法を協議したい と思います。ご協力をよろしくお願いします。外部の方々のご意見をお寄せい ただければ大変参考になりますのでよろしくお願いします。 今回は大学生に関しては、法学部と経済学部の一年生を対象としましたが、 今後は文系学部と医学部も含めた全学的な取り組みに拡大できればより大きな 成果が期待できるのではないかと考えております。主権者教育は学部の垣根を 越えているからです。 最大の課題である政治的中立性については、模擬選挙チームが考える政治的 中立性を守るための4原則を提示させていただきました。ご参考にしていただ けると幸いです。政治的中立性については、模擬選挙や模擬投票を実施する中 で、試行錯誤を繰り返し、経験的に確立されていくものと考えています。今後 の大きな課題であり、さらに探求を続けていきたいと考えています。 1. 教員の個人的な意見を絶対に学生・生徒に押しつけない。 2. 政治的に論争のあるテーマを扱う際には、必ず複数の異なる意見とそ の根拠を提示する。 3. 複数の異なる意見を説明する際には、偏らない多様な資料をできうる 限り収集する(新聞記事であれば全国5紙とブロック紙など)。 4. ディベート等を通じて意見の違いを認め合い、主体的に判断する能力 を学生・生徒に身に付けさせる。 主権者教育を実施する上で、これからさまざまな問題点や課題が出てくると 予想されます。準備にかけられる時間的、人的制約もあるでしょう。それを乗 り越える主権者教育の「久留米モデル」をみなさんとともに作り上げていきた いと考えています。さまざまな意見、提案をお出しいただきますようお願い申 し上げます。 お問い合わせ等があれば、以下にお知らせいただければ幸いです。 久留米大学法学部模擬選挙チーム [email protected]