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接触角の温度依存性に関する研究 ∞1ed
福井大学 工学部研究報告 第4 5巻 第 2号 1 9 9 7年 9月 367 接触角の温度依存性に関する研究 一過熱面上の接触角測定の試み一 永 井 二 郎 * 竹 内 正 紀 * 木 村 照 夫 * 金島長規** StudyontheTemperatureDependenceofCo ntactAn g l e s -Attemptsf o rMeasuringContactAn g l e sonSuperheatedWallsN i r o hNAGAI,M a泊n o r iTAKEUCm,T e r u oKIMURA a n dT a k e n o r iKANAS H T h 証A (R e c e i v e dA u g .2 9 ,1 9 9 η I nt h i sr e p o r t , we仕i e dt om伺 s u r e白 et e m p e r a t u r ed e p e n d e n c eo f∞n t a c t a n g 1 e s, e s 肝c i a l l yf o c u s i n gonωn 包.cta n g l e so ns u p e r h e a t e dw a l l s,bytwok i n d so f e 耳児r i m e n t s . One i sl i q u i dd r o p 1 e tm e t h o d也 w h i c h 也e t e m p e r a t u r eo f s u r r o u n d i n gArg a sa t m o s p h 町 ew as∞n 仕 ' O l 1 e de q u a l句 s u p e r h 伺 . t e dw a l l s,a n d白 e ∞n旬 . c ta n g 1 e so fl i q u i dd r o p 1 e tw e r em伺 s u r e d . Theo t h 町 o n ei sh i g h l y s u b c ∞1 e d semi-two-dimension a 1 b o i l i n g e x p ぽ 加e n 恰 , a n d 也e ωn 隊 t a n g 1 e s o f a 1b u b b 1 e sw e r em e a s u r e d . Th eo b t a i n e dr e s 叫t si n d i α t e semi-two-dimension 出a t伺凶l i b r i u m,a d v a n c i n ga n dr e c e d i n g∞n t a c ta n g 1 e ss l i g h t 1 yd 町 ' e a s e swi 白 血e e su n d 町 出e s a 知r a t i o n temperatur~. We ∞ 叫d m e a s u r e t e m p e r a t u r e 泊 ぽ 伺s ∞n包 . c ta n g 1 e sons u p ぽh 伺 . t e dw a l l sb y白 es u b c o o 1 e db o 泊n gm e t h o d,s h o w i n gl i 仕1 e t e m p e r a t u r ed e p e n d e n c e . K e yWor 由 : Co n t a c tAn g l e . We t t : i n g . Bo副n g ,S u r 色偲 C h e m i s 位y 1. 研 究 の 背 景 と 目 的 本報告は、接触角の温度依存性、特に沸点以上の接触角を測定した結果および考 察を報告したものである。 まず、沸点以上の接触角を測定する意義について述べる。 *機械工学科 料大学院工学研究科機械工学専攻 ヨB 沸騰熱伝達は工業的に広〈用いられており、その伝熱特性(沸騰曲線)の予測及 ぴ 制 御 方 法 の 確 立 が 重 要 で あ る が 、 未 解 決 点 の lつ に 国 体 面 濡 れ 性 の 評 価 方 法 の 問 題がある。沸騰曲線に強く影響を及ぼす濡れ性は、今のところ常温で測定された平 衡接触角によって表される場合が多い ( 1 ) が、沸騰現象は沸点以上に過熱された固体 面上でおこる動的な現象であり、常温での平衡接触角により固体面濡れ性を評価す ることは本来は妥当ではない o 従って、沸点以上の(動的な)接触角を常温での平 衡接触角から推算する方法を確立することが重要となる o また、ヒートパイプ、熱交換器、電子部品の冷却機器などに広く用いられる液膜 蒸発伝熱に関しては、液膜が破断しドライパッチが生じると伝熱性能が著しく低下 する事が知られている。これまでの液膜蒸発伝熱に関する研究 ( 2 ) により、その破断 機構解明のため沸点以上の動的な接触角およびその温度依存性を知る事が重要であ ることが知られている。 このように、静的・動的な接触角の温度依存性、特に沸点以上の接触角を知るこ とは重要であることが分かるが、沸点以上では不可避的に液体の蒸発・液体中の発 T a b l e . lは こ れ ま で の 接 触 角 温 度 依 存 泡が発生するため測定が困難とされてきた。 性の測定例(3)-(A)で あ る 。 表 は 左 列 か ら 測 定 者 、 固 体 面 材 料 、 液 体 の 種 類 、 そ し て 平衡・前進・後退接.触角を縦軸に温度を横軸にとったときのグラフの傾き、および 沸点以上の接触角測定の有無を示している o 表からも分かるように、沸点以上の接 触 角 測 定 例 は 1つ あ る の み で あ り 、 沸 騰 熱 伝 達 や 液 膜 蒸 発 伝 熱 で 重 要 な 金 属 国 体 面 T a b l e . lM e a s u r e dv a l u e so ft e m p e r a t u r ed e p e n d e n c eo f conta~t a n g l e s 国体 PetkeandRay ( 3 ) l T adroseta. l( 4 ) 漉体 d8e /dT -0. 11 -0. 04 -0. 14 -0. 06 -0. 14 -0. 05 ポリエチレン 水 ポリスチレン ポリアセタル ポリカーポナイト ポリエステル フルオポリマー 銅 d8ad/dT d8rd/dT +0. -0. 士o . +0. +0. -O . 02 01 00 06 06 04 +0. 408 水 ( S t e a r i ca c i d のコーティング} Pontereta. l( 5 ) 鋼 l Neumanneta. PTF .E(=テフ nーデカン ロン) nーアンデカン n -ドデカン n -トリデカン nーテトラデカン n -ぺンタデカン n -ヘキサデカン 水 -0. 135 -0. 106 -0.057 -0. 012 土o 土o 土o 土o IWhaler 可a ndl a i ( 7 ) ソーダガラス #1 水 ソーダガラス #2 ソーダガラス #3 ソーダガラス #4 ソーダガラス #5 ソーダガラス #6 ソーダガラス #7 +0. 257 +0. 170 +0.006 +0.003 土o +0.458 +o . 306 陣司・慣例 -0. 619 銅 水 -0.563 .0 -1 .2 沸点以上の接触角 G G G G G G 3 6 9 上での測定例は見あたらない。また、沸点以下での接触角温度依存性は固体面と液 体の組み合わせや測定者により異なっており、これらの結果を合理的に説明しうる 解析はなされていない o 以上を背景として筆者らは、種々の固体面上での水滴の平衡・前進・後退接触角 を測定し、その温度依存性、特に沸点以上の接触角測定を試みたけ}。そこでは、沸 点以上の接触角を可能にするため発泡開始温度を高くさせることを目指して、表面 を鏡面仕上げ ( R --O.03μm) し た 面 を 数 種 用 意 し た 。 そ の 結 果 、 鏡 面 仕 上 げ さ れ U1 たテフロン、石英ガラス、単結晶サファイア面上で沸点以上の接触角を測定できた o しかしこの実験は実験室雰囲気中で行ったため、 (A) 液 滴 や 雰 囲 気 温 度 を 固 体 面 温度と等しくなるようにコントロールできていないことや、 (B) 雰 囲 気 の 成 分 が 日によって異なり、固体面表面の化学的性質をコントロールできていないなどの問 題がある。 そこで本報告では、前報の実験を改良し、雰囲気をアルゴンガスで満たし、かっ 液滴と雰囲気温度を固体面温度と等しくなる様にコントロールし、液滴の動的・静 的な平衡・前進・後退接触角を種々の固体面上で温度を変えながら測定した。さら に、特に沸点以上の固体面上での接触角を測定するために、高サプクール疑似二次 元沸騰中の気泡形状から接触角を測定する事を試みた。 2. 液 滴 の 接 触 角 の 測 定 2. 1 実 験 装 置 及 び 方 法 Fig.lに 示 す よ う に 実 験 装 置 は 加 熱 装 置 、 液 滴 供 給 装 置 か ら 構 成 さ れ て い る 。 加 ① ② syringe Kicrogauge ③ Rectangular Enclosure made of Acrylic Plate Test Surface ④ ⑤ Enclosure made of Bakeli七e Plate ⑥Ax is ⑦ Nickel-Chrominum Hea 七er ⑧ ⑨ ⑩ Stopper Volt Slider Thermocouples ⑪ 工ce Box ⑫ Digital Multimeter ⑮ ⑭ ⑮ ⑮ CCD Camera Video Recorder Koni七or Light Fig.l Experimental apparatus o f liquid droplet method 3 7 0 g 8e= 2tan-l(→~) F i g . 2M e t h o do fm e a s u r i n ge q u i l i b r i u m,a d v a n c i n ga n dr e c e d i n gc o n t a c ta n g l e s 熱装置はヒータを組み込んだ銅ブロック、固体面及びベークライト樹脂製容器で構 成され、 6 種類の固体面(銅、アルミニウム、ステンレス鋼 [ S U S 3 0 4 ]、石英ガラス、 単結晶サファイア、テフロン)はシリコン接着剤で銅ブロックに接着した o ブロック内部と固体面表面に熱電対を設置し固体面表面温度を測定した ベークラ イト樹脂製容器上部には軸が挿入してあり傾けることが出来る o o また銅 これにより、容器 が水平であるときの平衡接触角、および容器を傾けるにより液滴が動き始める前の 静的な前進・後退接触角、そらに液滴が動き始めた時の動的な前進・後退接触角を 測定した o 液滴供給装置はマイクロゲージにより固体面上に少量のイオン交換・蒸 2 m mの 正 方 形 板 で あ り 、 テ フロンについては熱伝導性が非常に低いため、銅板の上に厚さ o . 1 m mの テ フ ロ ン シ 留水滴を供給することができる o 固体面は一辺4 0 m m厚 さ ートを接着した物を使用した。また、装置周辺をアクリル板で囲み内部をアルゴン ガスで満たしてヒータを設置して雰囲気温度と国体面温度を等しくなるようにコン トロールした o 実 験 は 固 体 面 温 度 を 常 温 か ら 2 0Cの 間 隔 で 上 昇 さ せ て 、 発 泡 ・ 蒸 発 0 のため接触角の測定が出来なくなるまで測定を行った o 銅、アルミ、ステンレスの 1 2 0 0に よ り 研 磨 金属面については、温度を常温から上昇させる前に、エメリー紙# して表面を仕上げた。また、各温度において測定を行う前にアセトンで表面を洗浄 した。測定方法については、 F i g . 2に 示 す よ う に ビ デ オ カ メ ラ で 液 滴 形 状 を 横 か ら HPシ ー ト を 当 て て 記録したものをテレビモニタ上に再生し、方眼紙をコピーした O 液 滴 形 状 が 球 の 一 部 で あ る と 仮 定 し 液 滴 の 高 さ hと 液 滴 の 直 径 部 分 xを 測 定 し 次 式 に よ り 平 衡 接 触 角 ()eを求めた。 ( ) e = 2 t a n -1 ( 2 h / x ) ( 1 ) こ の 式 (1) に よ る 測 定 方 法 は 、 同 一 条 件 下 で は ば ら つ き が ほ と ん ど 見 ら れ ず (: t1 0 以内)、また測定者の違いによる差異も無く、良好な測定方法である。一方、静的 および動的前進後退接触角の測定は接線を予測し O HPシ ー ト に 分 度 器 を 拡 大 コ ピ ー した計測用紙で測定した。この方法は、同一条件下においてばらつきが見られ、測 定 者 の 違 い に よ る 誤 差 も 含 め る と : t5 0程度の誤差を有している。 371 2. 2 実 験 結 果 及 び 検 討 Fig.3は 各 温 度 に お け る 6種 類 の 国 体 面 に お け る 平 均 平 衡 接 触 角 の 測 定 結 果 で あ る 。 この図より、国体面により平衡接触角の値に違いはあるものの、温度に対する接触 角の依存性については、固体面によらず温度の上昇に伴いわずかに減少する傾向を 有することが分かる o こ の 結 果 と Table.lを 比 較 す る と 、 金 属 面 ( 銅 ) に つ い て は 同様の傾向を示しているが、ガラスについては温度依存性が異なっている o その理 由 と し て は 、 本 実 験 と Table.lの ガ ラ ス の 実 験 と を 比 較 す る と 、 雰 囲 気 温 度 を 固 体 面温度と等しくなるようコントロールしている点では同じであるものの、雰囲気気 体が異なることが考えられる また、この液滴法による測定では、液滴と国体面の o 界面で発泡するため液滴形状が一定にならず、沸点以上では妓触角を測定できなか った。 参考のために雰囲気を制御しなかった場合、すなわち前報 ( 1 ) と同様に雰囲気が実 験 室 雰 囲 気 の 場 合 の 結 果 を Fig.4に 示 す o こ の 図 を 見 る と 明 ち か に 雰 囲 気 を 制 御 し た Fig.3の 結 果 と 温 度 依 存 性 が 異 な る こ と が わ か る 。 こ の こ と は 研 究 の 背 景 と 目 的 で 述 べ た (A)液 滴 や 雰 囲 気 温 度 を 固 体 面 温 度 と 等 し く な る よ う に コ ン ト ロ ー ル で き て い な い た め に 液 滴 表 面 の 表 面 張 力 に 大 き な 分 布 が 見 ら れ る こ と や 、 (B)雰 囲 気 の 成分が日によって異なり、固体面表面の化学的性質をコントロールできていないな どの問題があったことが考えられる o Fig.3の 結 果 か ら 界 面 張 力 の 平 衡 接 触 角 に 対 す る 影 響 を 考 え る 。 実 験 で は 国 体 面 yslが変化している。また、 を取り換える事によって囲気界面張力 Ysv、 固 液 界 面 張 力 系の温度を上昇させると気液界面張力 γlvは 減 少 す る 。 こ こ で 以 下 の ヤ ン グ の 式 COSt 1 e Y Y . . l =← ( 2) 即 yル AY (凶O唱 ) ω QJ (叫 司 ) 。 Z 3 6 3 。 s 凶 t 且 雲 6 0 o 3 。 Fig.3 Equilibrium contact angles Fig.4 Equilibrium contact angles (surrounding temperature controlled) (surroundingtemperatureuncontrolled) 3 7 2 が 成 り 立 つ も の と 仮 定 す る と 、 温 度 上 昇 に 伴 い 平 衡 接 触 角 θeが 減 少 す る に は 、 温 度 上 昇 と と も に 式 (2)の 右 辺 の 分 子 が 一 定 あ る い は 増 加 し な け れ ば な ら な い 。 ま た ysvが 本 実 験 の よ う な 温 度 範 囲 で は あ ま り 変 化 し な い と 考 え ら れ る 面張力 γslが (10) ため、国液界 温度上界とともに一定もしくは減少すると考えられる。固液界面張力 が温度上昇とともに増大するかあるいは減少するかは、沸騰現象における濡れ限界 を決定する際に重要な点である o 今後、沸点以下の温度範囲における接触角の測定 により、沸点以上における濡れ限界温度を推定できるような物理モデルの検討を行 う予定である。 次に、サファイアの場合を例にとり、平衡接触角、動的・静的な前進・後退接触 i g . 5に 示 す 。 こ の 図 よ り 、 前 進 お よ び 後 退 接 触 角 は 平 衡 接 触 角 と 角の測定結果を F ほぼ同じ温度依存性の傾向を示し、また静的・動的接触角の値にあまり大きな差は 見られないことがわかる。この傾向は、その他すべての固体面についても同様であ った。この前進・後退接触角の温度依存性が平衡接触角とほぼ同じであることは、 測定が比較的困難な前進・後退接触角を平衡接触角より予測できる可能性を示して いる。 o: e q u i l i b r i u m ∞ ロ 8 S35 ω - o: S t a t i ca d v a n c i n g ロ :Staticreceding . :D y n a m i c a d v : 臨時 国:D y n amicr e c e d i n g 3 . =ii、佐5 遍 。 F i g . 5E q u i l i b r i u m,a d v a n c i n ga n dr e c e d i n gc o n t a c ta n g l e( S a p p h i r e ) 3. 高 サ プ ク ー ル 沸 騰 気 泡 の 接 触 角 測 定 3. 1 実 験 装 置 及 び 方 法 実験装置の概略を F i g . 6に 示 す 。 実 験 装 置 は ヒ ー タ を 内 蔵 し た 銅 プ ロ ッ ク 及 び 固 体面、ベークライト樹脂製容器及び援水加工を施した側面ガラスで構成され、液滴 法の実験と同様の6 種類の固体面をそれぞれ接着剤で銅ブロックに接着した。固体 面として幅3 m mの も の を 使 用 し 、 こ れ を 援 水 加 工 が ほ ど こ さ れ た ガ ラ ス で は さ み 発 生する気泡が2 次元的に観察できるようにした o また固体面で発生した気泡がなる 373 べ く 上 昇 せ ず 固 体 面 上 で 静 止 す る よ う に す る た め 冷 却 管 に 6Cの 冷 水 を 流 し た o こ 0 うする事により、高サプクール沸騰が実現し、発生した気泡の下部で蒸発、上部で 凝縮が起きて気泡が静止するという状況を目指した o 試験液体にはイオン交換・蒸 0 0Cの 状 態 か ら 5Cの 間 隔 で 上 昇 さ せ 留水を使用した o 実験は固体面下部の温度が 1 0 て行い、表面温度は固体面下部の温度と核沸騰整理式 0 (11) を用いて求めた o 気泡形 状の接触角の測定は液滴の接触角の測定方法と同様にビデオカメラで記録したもの をモニタ上に再生し分度器を拡大コピーした計測用紙で測定した o ① Enclosure made of Bakelite Plate /~ ② Test Surface ③ Hea七er ④ Volt Slider ⑤ Thermocouples ⑥ Ice Box ⑦ Digital Hultimeter ⑧ Pipe of cooling water ⑨ Water Bath with temperature controller ⑩ CCD Camera ⑪ Video Recorder ⑫ Honitor ⑬ Light Fig.6 Experimental apparatus of subcooled boiling experiment 3. 2 実 験 結 果 及 び 検 討 Fig.7, 8に そ れ ぞ れ サ フ ァ イ ア 、 銅 の 測 定 結 果 を 示 す 。 Fig.8に は Fig.7に は プ ロ ットされていない動的な前進・後退接触角の測定結果がプロットされているが、こ れは銅の場合には前進・後退接触角も測定出来きたことを示しており、銅以外の金 属面(アルミ、ステンレス)においても測定された。これらの結果から、まず、平 衡接触角については固体面によらず沸点以上では温度依存性があまり見られないこ とがわかる。また、測定された動的な前進・後退接触角はほぼ平衡接触角測定値の 延長線上にあることもわかる。これらの結果は、従来の沸騰研究においては未確認 の情報であり、今後の検討を必要とするものの以下のことを示唆しているものと思 われる。 (1) 沸 点 以 . 上 で の 接 触 角 は 、 平 衡 ・ 前 進 ・ 後 退 接 触 角 す べ て が 温 度 に よ ら ず ほ ぽ 同じ値を持つことから、固体面表面濡れ性は一つの値で示すことが出来る。 1 0に そ れ ぞ れ サ フ ァ イ ア 、 テ フ ロ ン の 場 合 に つ い て 、 高 サ プ ク ー ル 次に、 Fig.9, 沸騰気泡の接触角測定結果と液滴の接触角測定結果を同時にプロットした結果を示 す。サファイアの結果を見ると、沸点以下の平衡接触角測定値の延長線上に沸点以 上の接触角測定値があることが分かる。他に、銅、アルミ、ステンレスも同様の傾 向を示した o 一方、テフロンの結果を見ると、沸点以上の測定値は沸点以下の測定 3 7 4 値の延長線上にはない 他に、石英ガラスも同様の傾向を示した o テフロンと石英 o ガラスは熱伝導性が低いという共通点があるが、熱伝導性が接触角にどのようにし て影響を及ぼしうるのかは不明であり今後の検討を要する。ここで、熱伝導性の良 い金属面に限定して考えると、これらの結果は以下のことを示唆しているものと思 われる。 (11) 沸 点 以 下 で の 平 衡 接 触 角 の 温 度 依 存 性 が 分 か れ ば 、 沸 点 以 上 の 接 触 角 を 推 算 することができる 、 ~ 0 o 1 2 “ │ 0 :叩 i l i b r i m ハ ツ 6 Q :equilibrium ω︻凶ロ伺︼O何一-ロ00 ω﹃凶回何回Q m w M g o o .-' 。 心 .:D y n amica dvanci .:D 戸1 氾n i お cr α , 〉 渇 eding σ心てP 3 3 I 而 -1 2 0 O c o n t a c ta n g l e (deg) wa l 1tempera畑 町 ( O c ) F i g r 7C o n t a c ta n g l e s( S a p p h i r e ) F i g . 8C o n t a c ta n g l e s( C o p p e r ) d o r o p l e tmethod> ω -凶ロ伺 く method> d: e q u i l i b r i u m (w a l ltemperatur~ くh i g h l y s u b c o o l e d加 i l i n g • :e q u i l i b r i u m ~roplet d: e q u i l i b r i u m ω 1 i h g ち S9 8 ヶ A ¥ か o ( w a l lt e m p e r a t u r e ) h i g h l y 副 恥 ∞l e db o i l i n g > • :e q u i l i b r i u m く 、 ピメ\~ o 3 3 wallt el 1 1 >erature ( O c ) F i g . 9E q u i l i b r i u mc o n t a c ta n g l e ( S a p p h i r e ) F i g . l 0E q u i l i b r i u mc o n t a c ta n g l e ( P T F E ) 375 以上の二つの仮説( 1 ), ( 1 1 )が 正 し い と す れ ば 、 沸 点 以 下 の 温 度 範 囲 に お い て 平 衡 接触角を測定すれば、沸点以上の接触角が推定され、さらに沸騰現象における表面 濡れ性を評価できることになる。これを立証するには、さらに実験データを得ると ともに、これらの結果を表現する物理モデルを構築する必要があるものと思われる。 4. 結 言 液滴法の実験において、沸点以下の温度では平衡接触角は固体面の材質によらず 同じ傾向を示し温度上昇と伴に減少し、前進・後退接触角の温度依存性の傾向は平 衡接触角とほぼ同じであることが分かった o また、沸点以上では平衡・前進・後退 接触角はほぼ同じ値を示し、その温度依存性は小さいことがわかった o さらにこれ らの結果から、沸点以上の固体面表面濡れ性の評価方法について検討した o 次のステップとして、液滴法により沸点以上の接触角を測定するために出来るだ け蒸発・発泡を抑えることを目指しアルゴンガスのかわりに水蒸気を容器内に充満 させ測定することを試みている o また、得られた結果を表現できる物理モデルを検 討している。 参考文献 ( 1 )C h o w d h u r y,S . 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( 8 )庄 司 ・ 張 , 機 論 ( B編), 5 8 5 5 0 ( 1 9 9 2 , ) p p . 1 8 5 3 1 8 5 9 . 5回混相流シンポ講論集, ( 1 9 9 6 ),p p . 3 2 3 3 2 6 . ( 9)永井ら,第 1 ( 1 0 )A d a m s o n,A . W .,P h y s i c a lC h e m i s t r yo fS u r f a c e s, J o h nW i l e y& S o n s,l n c ., ( 1 9 9 0 ) . S ., A E C t r 3 7 7 0,p . 1 2 9 . ( 1 1 )K u t a t e l a d z e,S 謝辞 本研究を行うにあたって、実験装置の製作および測定を行ってくれた卒論生の野々山真人君、 藤川聖君、および内園達也君、小川誠君に対し、ここに御氏名を記し謝意を表します。 376