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2000年度<世界学>実践報告

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2000年度<世界学>実践報告
Nara Women's University Digital Information Repository
Title
2000年度<世界学>実践報告
Author(s)
落葉, 典雄; 加藤, 勇; 塩川, 史; 森田, 昌利; 吉田, 信也
Citation
落葉典雄ほか:研究紀要(奈良女子大学文学部附属中等教育学校),
2002, Vol.43, pp. 29-64
Issue Date
2002-03-06
Description
URL
http://hdl.handle.net/10935/1938
Textversion
publisher
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http://nwudir.lib.nara-w.ac.jp/dspace
奈 良女 子 大学 文 学 部 附属
1
3免
中等教育学校研究紀 要第 I
2
0
0
2年 3月
20
00
年度<世界学>実践報告
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塩
●
勇 也
信
藤 田
加 吉
●
雄 利
典 昌
葉 田
落 森
史
は じめに
世界学は、
社会の国際化がすすむ中、
本校の国際教育を充実 させ るプ ログラムのひ とつ として 1
999年
2001
) に詳 しい。本稿 では、2000年度
度に創設 された。その理念や創設の経線 は、本校紀要第42集 (
世界学の実践について紹介す るとともに、その成果 と課題 を明 らかに して、今後の国際教育や総合学
習の充実 ・発展 に役立てたい。 なお、第 1章お よび第 2章でその概要を示 したあ と、第 3章で2000年
フ
度の特徴的な取 り組みである 「
ひ ょうたん島問題」、第 4章では、本校の総合学習の中心になる活動 「
評価」、第 6章では NGOや 「
現代社
ィール ドワー ク」、第 5章で2000年度の課題 として取 り組んだ 「
生徒アンケー ト」について詳 しく述べ る。
会」 と連携 した 「
難民問題」、第 7章では 「
第 1章
2
0
0
0年度 「
世界学」のね らい
1 基本的な考え方 とねらい
2000年度でまだ創設 2年 日であるため、その内容 と方法において基本的に昨年度 を踏襲 し、その総
括に基づいて手を加えることに した。2000年度は、「
多様な価値観の認識」 と 「
相互依存関係の理解」
を通 して、世界の さま ざまな状況の人 々に対す る共感的理解 がすす めることを年間のね らい としたO
日本、特に奈良で生活 してい ると、世界には多様 な文化 とそれに基づ く多様な価値観があることに
気づきに くい。 しか し、これか らの社会で生活 してい く上で、この よ うな認識 は不可欠である。その
ため、異 なった文化や価値観 を知 る必要があるが、それ を深 く理解す ることは極 めて高い レベルの こ
とであ り、世界学の時間で成 し得 るのは、多様 な価値観の認識の レべ/
レである。
次に、世界の国々やそ こに生 きる人 々の生活は相互依存関係で成立 してい ることを理解 させ ること
であるC高度成長を成 し遂げた後に生 まれ育った生徒たちは、発展途上国 ・地域 に対 して無理解で冷
たい態度 を とる場合がある。 しか し、今 日の 日本の繁栄は、第 2次世界大戦直後に多 くの国に助け ら
れてこそあるのだ とい うことを知 るこ とで、態度が変容す るかもしれない。いつの時代でもどこの社
会でも、構成員は相互依存関係 によって成立 してお り、相互扶助が重要であることを認識す ることは
国際教育のみな らず、社会の構成員 として も必要なことであろ う。
999年度の年間テーマであった 「
豊か さとは何か」についても、上記のね らいを持 って授 業
また 、1
を進 めていく中で気づかせ、 さらに 「
幸せ とは何か」 とい うことについて 自問 させたい と考えた。 つ
ま り、貧 しくて も生き生き と日々暮 らしている発展途上国の子 どもたちよ り、経済的に豊かであると
い う理 由で日本の子 どもたちが幸せ なのか とい う命題 を持つ ことで、常識 を疑 うこと、懐疑を持つ こ
との大切 さを知 ることができると考えたのである。
999年度 はテーマ を外国人労働者問題 に焦点を絞 った ことで、フィール ドワー クな どが
ところで、1
しづ らかった とい う反省があった。そ こで、「
ひ ょうたん島問題」著作者の藤原孝華氏からも示唆をい
ただき、2000年度は、も う少 し範囲を広 げて 「
人の移動」を通 して世界を見ることとした。
-2
9-
スキルの面か らは、下記の力が育成できるようにカ リキュラムを編成 したO
(1)広義のコミュニケーシ ョン能力 (
聴解、文化的背景を見 とる力、表現、議論)
(2) 研究 ・調査能力 (
テーマ設定、聞きとり調査、考察 と分析)
(3) 情報活用能力 (
さまざまなメデ ィアによる情報の収集 、選択、加工、伝達)
(4) 批判的思考 と、論理に基づく建設的な意志決定
(5) 班活動による協力 と参加
2 授業形態
(1)金曜 5 ・6隈の連続授業で実施
本校総合学習の中心であるフィール ドワークを実施す る上で、公立図書館が休館の月曜 日と官庁な
どが休業の土曜 日を除 く午後の 2時間連続授業をとい う要望が実現 した。
(2) 少人数 クラス (
24-25人 ×5クラス)
A∼C)か ら男女比 も考慮 して均等にクラス分けを した。
生徒の所属 クラス (
(3) 教員の関わ り方
英語科 (
2名)・地歴科 ・数学科 ・音楽科の 5名の合議で内容を決定 し、常に相談 しあって同一の内
容を 5つのクラスで実施 した。特に教科色を出す ことはせず、教科の専門家 としてではなく、一市民
として関わった。 - この形態を 「フラッ ト5」 と呼ぶ。
(4) 多様な方法の導入
さまざまな参加型の授業形態を多く取 り入れた。また、それ らを各教科- フィー ドバ ックすること
にも取 り組んだ。
3 ポー トフォリオ評価の導入
1
999年度は、世界学初年度 とい うこともあ り、評価についてあま り深 く検討す ることはできず、従
来の本校総合学習の評価を基本的には踏襲 した。 さらに、総合学習における評価はいかにあるべきか
とい う問題については、重点的に取 り上げるべきだと考えた。
2000年度は、生徒の評価 とともに、世界学のカ リキュラムや各アクティビティの評価 について、重
環境学」における
点を置 くことを担当者で合意 した。 しか し、本校のこれまでの総合学習了奈良学」「
評価についての研究の蓄積はなく、それ らの評価に必要な材料は何かとい うところか ら始めた。
まず、
従来の教科 と異な り、
学習の過程 を評価す ることに重点を置 くことで担当者の意見は一致 し、
それに必要な材料を 「
質問シー ト」 とい う形でそろえることに した。 これにより、教員による評価 と
ともに、自己評価 ・相互評価 が容易にできるよ うになった。生徒が 自らの学習過程 を評価できるよう
ファイルに閉 じさせ、いわゆるポー トフォリオ評価の試行を行 った。
これ らの実践の具体的な内容 と成果については、第 6章に詳述する0
第 2章
2
0
0
0年度 「世界学」実践の概要
1 年間授業内容
次の表は2000年度世界学の実施内容 と手法、および年間テーマ 「
人の移動」 とどのような関わ りを
意図 したものであったか、な どをま とめたものである。
-30-
2
0
0
0年度授業内容 と手法およびテーマとの関係
回
内
容
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1
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ブラジル .ペルー .ボ リビア .バ ングラデシュ .台湾)
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判保
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「
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シ ミュレー ション
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係に移赦 せ ざるを得ない人 もい る」
6月3
0日 1
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シェア リング
「
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9月 BF
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「
自分の.
考えが どの よ うに変化 したか」
フィール ドワー ク準備 (
ウエ ビング)
9月2
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2 フィール ドワー クオ リエ ンテーシ ョン、B扮 け
フ ィール ドワー ク
1
0月 6日 1
3 テーマ決定、内容 .(
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2 各教材のね らい
次の表は、世界学で実施 した主な内容 とその手法、お よび生徒に認織 させたい内容をま とめた もの
である。2000年度のテーマ 「
人の移動」を鍵に して各教材をどの ように組み立ててあるか とい う、今
年度世界学前半の構造がわかっていただけると思 う。後半部は、この学習成果を受けてのフィール ド
ワークである。
教
材
貿易ゲーム
生徒に認織 させたい内容
中心概念
人は豊かなところ-移動す る
相互依存
人の移軌 羊より異文化が接触 して問題 が起 こる
異文化理解
在 日外国人の講演
実際に在 日外国人は困っている
多文化共生
映画 「
Pi
ct
urebri
de」視聴
日本 も発展途上国だった
相互依存
難民ワー クショップ
やむをえない事情の 「
人の移動」もあ り、援助が 紛争 .公正
NGOスタッフの講演
必要な人々がいる
「
ひ ょうたん島問題」 (1)
国際協力
*「ひ ょうたん島問題」(1):∼あい さっがわか らない∼
∼カーニバルがやってきた∼
「
ひ ょうたん島問題」(2):∼ リ トルカーニバルは許 され るか (
第 3章参照)
3 各活動の概要
今年度の実践について、以下に簡単にまとめる。なお、お もな活動の詳細については第 3章以降を
ご覧いただきたい。
3- 1 質問シー トとダイヤモ ン ドランキング
3-2
第 6章参照
「
貿易ゲーム」と 「ひょうたん島問題」
第 3章参照
3- 3 在 日定住外国人による講暴およびスキッ ト
(1)在 日外国人の講演
1
999年度に引き続き、 日本に定住 している外国人 4人に本校で生徒約30人ずつを対象に講演を して
もらった。 1
999年度は植原市のNGO 「まちづ くりセンター」に講師を紹介 してもらったが、2000年
度は奈良市のNGO 「
地球市民フォーラムなら」に依頼 した。その際に、以下のよ うな要望を出 した。
○ さまざまな地域の人-・
多様 な文化 ・
価値観 とい う観点から異なった地域か らの人が望ま しい こと、
われわれが属する東アジア∼東南アジアか らの方を必ず入れてほ しい とい うこと
○ さまざまな宗教-上 と同 じ理由か らであるが、 日本人に とって最 も心理的距離が遠 く、価値観が
異なるために理解 しづ らいイスラム教徒を入れてもらうこと
○定住外国人-地域での生活者 と
としての実感が聞きたいので、できるだけ留学生は避けてもらうこ
O 「見世物的異文化理解」にならない こと・-単に日本 とは違 った文化や価値観があることの紹介に
終わらず、文化摩擦や生活上の問題点などにまで突っ込んだ話を してもらうこと
その結果、中国 (
台湾)・タイ ・フィリピンからの在 日定住者、バングラデシュからは留学生 を連れ
てきてもらうことになった。事前に各国について調べ る時間を 2時間取 り、調べた内容を各講師にN
-32-
GOを通 じて伝 えて もらったO これ については、その国についての生徒の誰鈍をわかってもらえる反
面、各国文化紹介の比重が大きくな り、 こちらの意図 した講演の内容か ら離れ るな ど、結果的に一長
一短であったc
Lか し、このよ うなことはNGOの手 を借 りて こそできるものであ り、NGOな ど外部団体 との連
携をはかつてい くことが、総合学習 を成功 させ るひ とつのカギであろ う。 ただ し、そのための予算措
置 とともに、学校はもっ と開かれた文化 を持つべきである し、教員にはもっ と物理的 ・精神的余裕 が
必要であろうと思われ る。
(2)スキ ッ ト
生徒の希望を尊重 しつつ各 クラスを 4分割 して講演を聴いた翌週、各 クラスに帰 ってきた生徒たち
が、それぞれ聞いてきた話を簡単な劇 (
スキッ ト)に仕立てた。描演の翌 々過には、各 クラスでそれ
を発表 し4つの話を共有 した。 それぞれ工夫を凝 らし、印象 に残 った話や要点を台本にす ることか ら
は じめ、劇の練習 ・発表 とうまくこな したのは 、 2年時に学園祭で必ず全員演劇 を経験す ることや英
語科の授菜で取 り組んだ経験な どが生きたのであろ う。
3-4 難民問題 (ワークシ ョップと講演会)
3-5 フィール ドワーク
第 5章参照
第 4章参照
3-6 レポー ト (
テーマ 「
世界学 で学んだ こと」)
フィール ドワー クは、 自分が興味 ・関心のあるテーマを選んでい るが班単位 での活動である。その
ため、フィール ドワー クを終えて一年間の学習を振 り返 らせ 、個人 として何を学んだか とい うテーマ
で レポー トを番かせた。 これによ り、世界学で実施 した内容をいかに個人的に消化できているかが、
生徒 自ら認織できたであろ う。
317 スクラップノー ト
新聞を読んで、世界に関す る記事を 1週間に最低一つ ノー トにスクラップ し、コメン トをつけさせ
た。 これにより、生徒が新聞を読む習慣 、特に国際面を読む習慣が付いたよ うである。 (
第 7章参照)
第 3章
世界学 と参加型学習
1 参加型学習教材の導入
1- 1 世界学 と参加型学習
世界学では、講義 ・講演 ・討論 ・フィール ドワー クをは じめ多様な教育方法を取 り入れ ることをひ
とつの柱 に している。その 中で、これ までの学校教育、特に高等学校における教科教育活動において、
あま り取 り入れ られてこなかった参加型学習に注 目した。参加型学習 とは、学習者が主体的に参加 し
ながら学ぶ学習方法であ り、従来の方法でいえば、社会科の討論や理科の実験、英語科にお ける会話
の授業な ども参加型 といえる。また、
本校の総合学習にお けるフィール ドワー クもその一例であろ う。
しか し、近年、開発教育の場な どで、従来の方法 とは異なった新 しい参加型学習教材 が数多 く開発 さ
-33-
れてい るO これ らのね らいは、実感 を持 って事柄 を理解 しよ うとす るものであ り、世界学のね らい と
も合致す る。
1-2 参加型学習 とは
新 しい参加型学習は、開発教育な どさまざまな場で行 われてお り、近年 は教員研修な どで も取 り入
れ られてい る。世界学で取 り入れ る と有効だ と思われ るものには、以下の よ うな種類 がある。
○ ランキング :ある課題 について用意 された選択肢 をよい と思 う順 に並べ、その過程 で学習者 同士
意見を交換 した り、あるいは個人で実施後で他の学習者 と話 し合いをす る。 多様 な見方、考 え方
に気づ く。
○デ ィベー ト:ある特定のテーマについて 「
反対派」 と 「
賛成派」の 2チー ムが相互 に論争 を繰 り
広げ、「
審査員」が勝負 を判 定す るO しか し勝 ち負 けよ りも、それぞれの立場 で とことん考え、発
言す る過程が重要。
○ フォ ト・ランゲー ジ :写真 を観察 し、感 じ、読み解 き、学習者 とその気づきゃ発 見を分 かち合 う。
○ シ ミュ レーシ ョン :ある事象をモデル化 し、学習者 がそれ を擬似的 に体験す る。
○ ロール プ レイ ング :ある特定の (自分 とは違 う)立場 になったっ も りで、あ る問題 について考 え、
行動す る。
1-3
(
『「開発教育」ってなあに』開発教育協議会
よ り)
「
貿易ゲーム」と 「ひ ょうたん島問題 J
世界学では、生徒 に従来の教科活動 と違 う教科 であることを理解 させ る目的 もあ り、1
9
9
9年度の最
初の時間に参加型学習教材 である 「
貿易ゲー ム」 (,n)を実施 した。 これ に対す る評価 は、生徒 ・教員
ともに高かったため、2
0
0
0年度 も最初の時間に実施 した。 さらに、多文化共生 を考 えるシ ミュ レー シ
ョン教材 「
ひ ょうたん島問題 」 (牲 2) CD-ROM版 を使用す るこ とに した。 その開発者 である藤原孝
幸富山大学助教授 に、その使用許可 と 「世界学」のカ リキュラムの 中でいかに有効 に使用す るかな ど
について指導 ・助言を得た。「
ひ ょうたん島問題」は、移民や外国人労働者 が増 えつつあ る現代社会の
課題 を多文化共生の観点か ら体験的 に理解 しよ うとす るシ ミレー シ ョン教材である。 ロール プ レイ ン
グで特定の立場の人 を疑似体験す るこ とによ り、知織 中心ではな く実感 を持 って理解す ることをね ら
い としてい る。
r
ひ ょうたん島問題」は 5つの レベルのアクテ ィビテ ィで構成 され るが、世界学ではその うち、 レ
あい さつを しよ う」とレベル 2 「
カーニバルがや ってきた」、レベル 4 「リ トルパ ラダイスは
ベル 1 「
認 め られ るか」を実施 した。
注
1
)「貿易ゲー ム」:1982年 にイ ギ リスの NGOによって開発 されたシ ミュ レー シ ョン教材 で、現
在世界各地の国際教育の場 で使用 され てい るO先進E
g・中進国 ・途上国に分かれ て、原料や
生産手段 を設定 して工業製 品の製造 と貿易に関す る疑似体験 をす るものである。
注 2) 「
ひ ょうたん島問題 」:富山大学助教授 の藤原孝華氏が報徳学園中 ・高教諭時代 に実践 した国
際理解教育の授業の経験を基 に開発 した参加型教材 である。 多文化共生のジ レンマを解決す
るために、異なった文化 を持 っ 3つの島々に暮 らす人 々の立場 に立つ ロール プ レイ ングであ
る。
(
詳細は車乗の <資料 >を参照)
-34-
2
「ひょうたん島問題」の実践 と考察
2-1
「
ひ ょうたん島問題」の実践
(1) 「
あいさつがわか らない」
「
貿易ゲーム」:
=続 く 2つ 目のアクテ ィビティ
として実施 したo r
ひ ょうたん人」「
カチ コチ人」
「
パラダイス人」 とまった く言語が異なる集団に
分かれ、それぞれのあい さつをす ることで、異文
化が接触す ることはどうい うことかを楽 しく身を
もって学べた,「世界学」とは何かを、不安 と期待
を持っている生徒に対 し、最初の 「
貿易ゲーム」
に続いてアイスブ レーキングの役割 を果たせたC
(2)「カーニバルがや ってきた」
外国人労働者である 「カチコチ人」が この国の伝統的祝祭であ る 「
ひ ょうたんカーニバル」に参加
しない ことをめぐるロールプ レイングであるC 異文化が接触す ると文化摩擦が起 こることを、架空の
出来事 とはいえ具体的な事象によ り理解 させ ることができた。 ロールプ レイングは初 めての経験 とい
う生徒 も多くは じめは とまどったよ うだが、す ぐに慣れて活発な議論ができた ところが多かったC
自分 と異なる意見を持つ人になって意見を述べ ることによ り、
問題 を相対化す ることが可能にな り、
その力は 日常生活の中で生か され ると考え られ る。
(3) 「リ トルパラダイスは認め られ るか」
世界学の締めくくりのア クテ ィビテ ィ として、 3月に実施 したC さまざまな学習を した後、文化摩
擦 を起 こ している場面で、 どの よ うに問題 を解決 していけばよいかをロールプ レイングを通 じて探 る
とい う高度な作業で難航す るグループが多かったG しか し、問題の解決策を合意す ることの難 しさや
利害が対立す る場合の調整役の大切 さを学ぶ ことができたであろ う また、異文化が接触 して問題 が
G
発生す る場面において、文化の多様性 と普遍性が矛盾す ることがわか り、「
相互の文化を尊重す る」こ
との困難 さもあわせて学べたであろ う。
2-2 分析 と考察
本稿において、「
ひ ょうたん島問題」にお けるすべての質問 シー トの結果お よび分析 を載せることは
できないので、「カーニバルがや ってきた」の質問シー トの結果を示 し、若干の考察を加えてみたいC
「
カ-ニパルがやってきた」の授業の流れは以下の通 りであるG
(1)各 クラス内で 5人 1組の班に分かれ る。
(2)各班 ごとにパ ソコンで 「
ひ ょうたん島問題」の状況設定お よび、「
カーニバルがや ってきた」
の ス トー リーの説明を見るO (<資料 >参照)
(3)各 自 「
質問シー ト2」 (<資料 >参照)に回答す る。
(i
I)それぞれの役割 をア トランダムに決定す るC
(5) 「
カチコチ人はカーニバルに参加すべきか」 とい う論点で、 ロールプ レイングを実施す るC
(6) ロールプ レイング後、「
質問シー ト3」 (<資料 >参照)に回答す るO
(7)役割 を離れて、 ロールプ レイングにおいて感 じたことを話 して共有す るC
,(
シェア リング)
(
8
)各班で どの ような話が出たかを報告 し、 クラスで共有す る
C
- 35 -
このような流れの中で、生徒たちは最初 とまどいを見せなが らも、真剣 に各役割 にな りきって議論
をすすめていた。ただ、与えられた役割が、自らの意見 とよく似た場合には話 しやすいが、そ うでな
い場合はかな りス トレスがかかるよ うである。
下記のグラフは、質問シー トの集計結果であ り、概ね以下のようなことが言 えるのではないだろ う
か。ただ し、これ らは学年全体の結果 を集計 したものであ り、厳密には個人の意見の変化をとらえる
ことはできない。なお、図中凡例の 「
実施前」が質問シー ト2、「
実施後」が質問シー ト3の回答であ
り、数値は回答実数 (
実施前93、実施後92) である。
く
ア)
参加すべきだ
ロールプ レイングの実施前後で 4と 5の回答比が逆転 してい る
のは、参加 を強制すべきでないと考えていた生徒がその思いを強
くして、4か ら 5に回答が変化 したもの と考えられ る。 しか し、
4と 5の総数はほぼ同 じで、 1と 2についてはほとん ど変化がな
いことか ら、ロールプレイング前後での大きな意見の変化は見ら
れない。
・三
+
乗施前 一骨 一実施後
(
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参加しなくてもよい
(
ア) と同様に、実施前後における 1・2の総数 と4 ・5の総
数はほぼ同 じであることから、肯定否定についての大幅な変化は
見 られない。 しか し、 1が増加 して 2が減少 していることか ら、
ロールプ レイングにより r
参加 しな くてもよい」 とい う意見に確
信を持った生徒が 2か ら 1に変わったもの と考 えられ る。
+
央施前 +
央施政
ロールプ レイングの実施前後において大きな変化 はなく、個人
の問題であると考えない生徒 は少ない。 しか し、わずかではある
が、 4と 5の回答が増加 してお り、ロールプ レイングを通 じて、
社会の構成員である個人の権利は制約 されることがあることを強
く感 じたのではないだろうか。
-36-
(
エ)の回答は 5つの設問の中で最 も変化が激 しく、内容 として
は 1・2の肯定的意見が倍増 している。 これは、問題の理 由に経
済的側面があることや、その解決方法 として収入の保証が必要で
あることが、各班の話 し合いの中で出てきたか らであろ う。最初
からこの理由を予測できないのが 4年生段階の特徴 と言えるかも
しれない。
(
オ)
一番近い立場
(
オ)の回答についてはほとん ど変化がない。個別に見ても、同
様である。 しか し、個人の意見を重視する 5の回答でも、ロール
プ レイングによって、かな り揺れはあるもの と考えられる。
・毒
+
央施前 一・
昏一重施後
ところで、は じめに断ったよ うに、これ らの結果の分析は個人の意見の変遷 を追跡 したものではな
いCも う少 し、詳細な分析ができれば、演 じる役割 によって特徴があることがわかるであろう。また、
役割を変えて再度 ロールプ レイングを してみれば、もっとさまざまな立場が理解できるのではないだ
ろうか。
3 総合学習 と参加型学習
世界学では、「
貿易ゲームJ 「
ひ ょうたん島問題」の他にも、ロールプレイングや ランキングなどを
取 り入れてきた。生徒は 「
世界学 とはどうい うものだろう」
「
何をす るのだろ う」と不安に思っているO
そこで最初の時間に 「
貿易ゲーム」を経験 し、「
他の教科活動 とは違 うぞJとい うことを認織 させ興味 ・
関心を持たせ ることができた。 これにより、従来の教科活動において力を発揮できず 、学校での学習
に興味を示せない生徒 に対 しても効果があるのではないだろ うか。
ただ し、各教材を使用す るのに適 した発達段階や事前学習内容な どがあ り、 どの教材でもどこでも
誰でもとい うわけにはいかない。今回の実践で 「リ トルパラダイスは認め られ るか」は、 4年生には
難 しく、外国人労働者問題の学習が必要であったことな どがその例である。
これ ら参加型学習は、知織注入型ではなく、さまざまな問題 に対応する技能や態度を育成す るとい
う総合学習の理念にも合致 したものである. さらに、ここで得 られた成果 を教科活動にもフィー ドバ
ックさせ ることにより、
今後の教育活動全体を活性化 させ る力が、
参加型学習にはあると考えられる。
新 しい教材 も次々に開発 されているが、これ らがより多 くの場で実践が積み重ねられ ることにより、
よりす ぐれた教材になることを願 うものである。
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37 -
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下の 1-5の問いについて.自分の考えを次の 1-5で開祖の右の欄に答えなさい。
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すごくそう思 う」なら- - --1
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幸手1
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イ そう思わない」なら
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i.カーニバルに参加すべきだ。
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(
イ)ひ上うたん畠に住んでいるからといって.カーニ′tJ
レに参加する必要はない。
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ウ)ひょうたん島の住民がか一二JlJ
レに参加するしないは.個人の脚色である。
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ったくそう思わない」なら-・
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】
【
(1) ひょうたんカーニJtルに参加すべ きだ.
【
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(21 ひ上うたんカーニJt
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レに参加する必軍はない。
【
】
(3) カーニ′17
レに参加する しないは個人の開祖である。
【
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日 ) ま・
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【
1
(5) あなたの考えは. どの人鞄の立場に一番近いですか ?
【
】
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(
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舌鼓別する前に、
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オ)あなたの考えは、とd
)人物の立場l
二一番近いですか ?
1.ひょうたんカーニバル来行垂月
3.カナコチ文化協会代袈
5.ひょうたん大学教授
【
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【
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2.ひ上うたん文化保存会会長
4.カナコチ人労働者協会代未
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∝桝 28) を配入し、ん]
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1 あなたの投郷 土何でしたか。
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2 自分の役を揖じて感 じたことを書 きなさい。
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=自身の意見をまとめなさい。
1.ひょうたんカーニバル英行垂且
2.ひ上う1
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3.カナコチ文化性食代衣
4.カナコチ人労働者協会代来
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5.ひ上うたん大学叔授
第 4章
フィール ドワーク
1 概要
フィール ドワー ク (
以下 FW) は、本校が総合学習
の大きな柱 としてきた活動であ り、世界学 もこれ を引
国際
き継いでいるO今年度の FW は共通のテーマを 『(
)
間の)人の移動 (
に関す ること 』 とい う設定で、各班
が写真の ように ウェビングな どによって独 自に大テー
マ ・小テーマを設定 し、調査活動 を進め させた。大テ
ーマ とは、
各班の調査す る分野であ り、
小テーマ とは、
その分野 において矧 こ注 目す る内容である。生徒個人
の興味 ・関心を埠垂 して班の編制 を したため、班員の
数は 2名 ∼8名 と少 し幅ができたO また、夏休みには、 FW のテーマ決定の準備段階 として、新聞記
事のスクラップをさせた。調査期間は、ま とめの時間を含んで 9過分 とし、各回の活動計画書 と活動
報告書を作成 し提出 させた。
事前にはオ リエ ンテー シ ョンを 1回持 ち、情報収集について (
特にインターネ ッ トの活用法)やア
機材や形式)
ンケー ト・訪問時の注意事項な どの説明を した0 5つのクラス ごとでの発表の際、方法 (
は各班に任せ ることし、発表に際 してA 3の レジュメ (
資料 1) と補助資料 を作成 させた。発表の後
に、各班 に対す る評価 と自己評価 (
資料 2)も所定の様式で させ ることとした。
2 テーマ設定
い組
麺について ・医療援助 ・自衛隊 ・国際結婚
ろ組
密輸 ・亡命 ・ボランテ ィア ・オ リンピック ・外国人選手
は組
旅行 ・難民 ・外国人労働者 ・宇宙旅行 ・難民
に組
外国人労働者 ・観光 ・難民 ・移民 ・コソボ紛争
は組
移住 ・オ リンピック ・人身売買 ・国際結婚 ・観光
3 フィール ドワーク先一覧
○妨間
アジア料理店『
RAHOTSU』・フランス料理店 『ビス トロ ・ムスタッシュ』・カ レーシ ョップ 『ミ
リアム』・自衛隊奈良地方連絡部 ・興福寺 ・奈良観光協会 ・天理 シャープ ・な らシル クロー ド博記念 国
際交流財団 ・関西国際交流団体協議会 ・大阪国際交流センター国際結婚を考える会 ・国際観光サー ビ
スセンター ・国際観光振興会 ・近鼓 日本ツー リス ト ・JTB ・海外安全相鉄セ ンター ・アジア太平洋
観光交流センター ・奈良県立図書館 ・奈良市立図書館
○電話取材
青年海外協力隊企画部国際課 ・Japan Emergency Ngos
Oアンケー ト
ミズノ株式会社 ・プ ロ野球各球団 ・国連難民高等弁務官事務所 ・大阪入国管理局 ・なら NPOプラザ ・
外務省
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○アンケー ト例
2
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0
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年 1月 1
5日
奈良女子大学文学部附属中学校
4年ろ組 1班のみ な さま2
年1
2月27日付の フィール ドワー クについてのご質問にお答 え致 したい と存 じます。
平成 1
当球団では、それぞれ家族構成や 出身地の異なる複数の外国人選手を採用 してお り、色々な答 えが
あって しかるべきだ と思いますが、本年度の外国人選手は未だ来 日してお りませんので、-担 当者 の
一般的な情報を差 し上げますのでご容赦 くだ さい。
☆練習について☆
・練習の取 り組み方について
個人差の問題であると思います。 日本人 とアメ リカ人に関わ りなく、其剣に構 えるタイプ、リラッ
クス してや るタイプ、楽 しみ なが らや るタイプなどがあ ります。
☆食事について☆
・文化により食べ るもの と食べない もの
野球の選手のみに当てはまる とは思いませんが、お しなべて、 日本独特のもので、梅干 、納豆、コ
ンニャク、等 は食べません。 これを文化の違い と見るか どうかは分か りません。
・日本の食事について面 白い こと
野球選手だか ら特に面 白い ことと感 じる事 はあ りませ んが、一例 として、麺類 (うどんやそば)を
食べ る時に音 を出 しても不作法でない事 は面 白い と思います。
☆住居について☆
・母国の家 との比較
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☆言葉について☆
・日本人選手 とのコミュニケーシ ョンの方法
片言の 日本語 と日本人選手の片言の英語。それにジェスチャー。大事 なことは通訳 を使 います。
☆野球の価値感について☆
・価値観 の決定的な違い
何れの国でも職業 としてい る限 り価値観に大きな隔た りはあ りませ んが、アメ リカ人の場合 、一般
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野球) に優先 していると思います。
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4 活動を終えて
まず時間的制約が厳 しかったよ うである。アンケー トや取材 も 1度ではなく、帰ってきた返答に対
して考察を加え、焦点を絞った後、再度調査できるような時間的余裕が無かった。そのためもう少 し
つつこんだ調査が必要だった班が多かったようである。それに加え、教師側の対応 も十分な時間が と
れていた とは言えず、単に活動時間の問題だけではなく、指導体制 も今後の裸題であると思われ る。
またテーマ設定が適切 とはいえなかった班があったようである。調査に行 き結まった り、大テーマに
なかなか結びつかずに苦労 Lf
=班 もあったo Lか し、いろいろな調査を していく上で、思いもかけな
かったような発見や成果 もあ り、それはそれで意義があった とい うべきであろう。
生徒は、活動を進めていくうちにさまざまな問題や新たな探題 、そ して思いもけない事びや疑問を
見つけだ したようである。調査方牡の問題 、発表方法について、・
実際の活動などのいろいろな場面で
その都度、工夫や協力をし成果をまとめることができた と思われる。
5 フィール ドワークを終えて (
生徒の感想の例)
・調査の段階でいろいろなマナーや社会的常織がわかった。
・メンバーの役割分担が適切にでき、 うまく機能 した. (3年の環境学 との比較)
・現場の生の声は鋭得力が大きかった し、丁寧な対応が うれ しかった。
・普段の興味にそった調査ができた。
・発表方法に工夫があった。 (
いろいろな機材の使用、演劇化、紙芝居)
・調査をして行 くにつれて、付帯状況や周辺事情がよく分かるよ うになった。
・日本 と緒外国の違いがよくわかった。
・計画や事前準備が不十分だった。 (
取材の焦点、調査方法など)
・テーマの設定に問題があった。 (
大テーマ との関係、調査困難)
・調査の時間に問題があった。 (
取材 内容の掘 り下げや発表の練習時間の不足、選手の帰国)
・調査が困難だった。 (
インターネ ッ ト検索、内容の精選、資料の古 さ)
-47-
第 5章
難民問題の学習
1 は じめに
1
9
91
年にクロアチア とスロベ ニアが独立を宣言 して以来、旧ユー ゴスラビアでは内戦が長 い間続 い
た。 クロアチア国軍 と連邦人民軍 (
セル ビア人系)の武力祈突、ボスニア ・ヘル ツェゴ ビナ共和国で
のクロアチア人、セル ビア人、モス レム人の r
民族浄化」の名の も とでの隣人同士の殺敬 、セル ビア
共和国コソボ 自治・
J
Mこおける、独立をめざして武力闘争を続けるアルバニア人系 コソボ解放軍 とそれ
999年 3月 2
4
を阻止 しようとす るセル ビア瞥察部隊 との対立の激化、な どがその主な ものであった。 1
日には N〟r
Oによるユー ゴスラビア-の空爆が行われ 、旧ユー ゴスラビアでの内戦は一応終結を見た。
しか し、この内戦で多数の死者 、370万人にものぼると言われ る難民が生 じ、改 めて旧ユー ゴスラビ
アの民族間題の複雑 さが世界的 に認織 されることになった。 また、内戦に ともなって世界 中で生 じて
いる難民問題の深刻 さも浮き彫 りになった。
「
世界学」の担 当者は、難民問題が世界が抱える重要問題の一つになってい ることか ら、今年度は
ぜひ これを取 り上げよ うとい うことに決 めたC
この取 り組みは以下の形で行われた。
(1) 「
世界学」の担 当者を含 めた有志の教師による 「
難民問題」の学習会。
ここでは、旧ユー ゴスラビアの歴史、民族構成、「
難民」とい う語 の定義 、世界の難民の状況、空爆
の行われたユー ゴの人々の様子、な どを学びあった。
(2) ワー クシ ョップ形式の紙義 (
2時間)
1年間セル ビアでNGOとして難民救援活動に従事 した経験 をもとに した授業。
(3)京都のNGOの方を通 じて、クロアチアのNGOで難民支援 の活動 に取 り組んでい るマル レ-
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)さんに講演を依頼 し、事前に 「
世界学」担 当者が会 って打ちあ
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わせをす る。
(4) クロアチア内戦の簡単な学習 と、班単位 でのマル レ-ナ さん-の質問事項の作成
(1時間- 「
現代社会」の時間に実施)
(5) マル レ-ナ さんの純演会 (
2時間)
2 ワークシ ョップ形式の講義
-48 -
捕轟は以下のよ うに行われた
★プ リアンケー ト。
★
世界地図を見なが ら、世界の どこに難民がいるのか、発生 しているのかを見る。
☆
事前に行ったアンケー トの結果をもとに、"
難民 とば 'を条約 を通 して見る。
★
難民に関わるファクターを紹介。 (
出身国、庇護国等)
。
★
地図を見ながらユーゴスラビアを紹介。
★
ユーゴスラビアに何が起こったかを簡単に説明。
★アルバニア系コソボ難民のこれまでの経線。
*実際に接 した難民たちとそこで感 じたことDパ ワーポイン トを使用O
★ポス トアンケー ト・・・6人 ごとのグループに分かれ、簡単なワークシ ョップ
A :あなたは、これ らの人々を難民認定すべきだと思いますか ? (
資料 1)
B:
認定すべきだとする弁礎士側 と、認定すべきではないとする入国管理官側 とに分かれ、歳給 し
てみま しょう。
★
質疑応答
主なものは以下の通 りである。
Q :難民として認められればどうなるのか ?
A :追啓などから逃れて、その国に入っていい とい うこと。 ビザなどの許可な しで入国できる.
Q :難民になる理由が理不尽だが、それについて先生 自身はどう思われますか ?
A :迫事状況にあれば、基本的には、国を超えて保礎すべきだと思 う。
Q :青年海外協力隊負になるには ?
A :困っている人たちが何を してもらいたがっているかを考えて技術を身に付けるのが基本。J
I
C
A
が募集 している.
Q :難民 として認められなければどうなる?
A :ユーゴでもそ うだが、国内避難民 として国境でとどめるのが多いo
Q :日本は難民に対 して援助 しているの ?
A:
U
H
H
C
Rにお金は出 しているが,
難民の受け入れにはあま り積極的ではないようだ。その理由は、
社会治安が悪くなった り、労働力 としてもあま り期待できそ うにない し、教育面でもいろいろ
な問題が起きてきそ うだか ら。
反省点 として、ワー クシ ョップ形式についての世界学担当者の認故不足か ら、学年全員(
1
23名)
を
対象に実施 したため、思ったような成異が得 られなかったことがあげられ る。
3 難民問題の講演会
(1)クロアチア内戦の簡単な学習と、班単位でのマル レーナ さんへの質問事項の作成 く1時間)
マル レ-ナ さんは、クロアチアのザグレブ大学の大学院で生物人類学を学ぶかたわ ら、スンツオク
レッ トとい うNGO組織に入って、難民支壇の活動を している女性だった。 日本での国際 NGO会議
で京都に来てお られて、そのついでに本校に来ていただくことができた。
せっかくの機会なので、粥演だけでなくいろいろな質問を生徒に考えさせ よう、とい う趣 旨で、ク
ロアチアの国のことを落葉が簡単に脱明 した後、
班 ごとに質問事項を考えた.質問はたくさん出たが、
-49-
その主な内容は下記の通 りである。
A.スンツオクレッ トの活動内容に関す る疑問
B.「民族浄化」の名 の下になぜ殺 し合いをす ることになるのか とい う素朴な疑問あるいは旧ユー ゴ
スラ ビアがなぜ長い間内戦を続 けてきたのか とい う疑問
C. 日本人が どうい う援助ができるのか とい う疑問
D.クロアチアの国家、国民、生活習慣に関す る疑問
E.マル レ-ナ さんに対す る個人的な質問
これ らの質問事項は和文、英文 (
教師が英訳) とも 「
世界学」担当者 が整理 し、英文をマル レ-ナ
さんにも前 もって渡 し、生徒 たちの疑問に答えなが ら話 を進 めてもらう依櫛 しておいた。
(2)マル レーナ さんの講演会
スンツオクレッ ト
1
9
92年に設 立 されたク ロアチアの NGO組織。難 民 キャンプ
で、特に子 どもと老人の精神的ケアを中心に活動 してい る。
マル レ-ナ ・プラブヴィッチ さん
クロアチアのザ グレブ大学で生物人類学の修 士課程 で学び な
が ら、スンツオクレッ トのスタッフの 中の リー ダー としての役割
講演す るマ レーナ さん
を果た している。
最初にマル レ∼ナ さんを紹介 し、旧ユーゴスラビアの難民の状況や スンツオ ク レッ トの活動の簡単
な紹介が書かれたプ リン トを生徒に配布を した。講演は英語で行われ、
塩川 と加藤 、
福 田が通訳を した。
まず、クロアチア とスンツオクレッ トとい うNGOの紹介がお こなわれ、その後はスライ ドを見な
が ら空爆後の コソボ市内の よ うす、スンツオク レッ トの活動の よ うすが紹介 された。
難民問題 と聞 くとす ぐに私たちは食料、水、医療のことを考えるが、精神的な痛手を克服 し、 自立
してい く援助が極めて重要であること、また、民族の偏見を超 えるとい う意味で、世界の各地か らや
って来ているNGOの取 り組みが大 きな教育的意味を持 っていることが報告 された。
講演の後 、
マル レ-ナ さんは生徒たちの質問に答えるために各 グルー プを回って くだ さった。また、
解散後 に質問に来る生徒にもていねいに対応 して くだ さったO
(3)生徒たちは難民問題の学習をどう受け止めたのか
難民問題 に絞って感想 を書かせ ることは しなかった。しか し、「
世界学」の取 り組み全体 を振 り返 る
中でこの間題 に言及 している生徒がた くさんいた。そのい くつかを紹介 したい。
。調べにくいテーマだったけれ ど、本やパ ソコンで資料 を
*私の班の (FW の)テーマは "医療援助"
集 めた。援助 している側の国は、や は り、アメ リカやアジアの国々だった。 そこで必ず上がって く
難民は大変だ。一番援助を受 けなければな
るのが難民の問題だった。福 田先生 とかの話 を聞いて、「
らないのか」 と思っていたけ ど、難民 よりも難民 と認 め られず、戦地に残 された人々がいっぱいい
るとい うことを知 りま した。現場 には人手 も機器 も薬品も足 りません。 でも、 どう考えても援助が
必要な国なのに政府 が援助 を受け入れ なかった り、 とい う問題 もあ ります。 そ うい う国はなかなか
立ち直 ることはできません。発展途上国は、技術や医療や教育の援助 を行っている人 々のおかげで
-50-
だんだん発展 してきていると思います。 でも、その反対で、先進国では, IT革命 とか、クロー ン
人間 とか、どん どん進化 していって、先進国 と途上国の間は開いてい くばか りだ と思いますC国際
社会 と言 っても、相手はパ ソコンのある先進国ばか りで、国際社会 と言 うか らには、もっと広い 目
で世界を見ていかなけれ ばな らない と思 うQだか ら、世界学では. こうい うアメ リカ とか普段思い
浮かぶ外国のことではなく、普段忘れ かけていた発展途上国の こと、難民の ことについても学べて
よかった と思 う。
*同 じよ うに、授業でや った難民について も、 どこか らどこまでが難民だかは人によって当然意見は
遊 うだろ うし、命まで左右 しかねない問題 であるので、安易に判定す ることもできない。重要にな
るのは、難民であろ うが、難民でなか ろ うが、困っていて助けを求 める声があれ ば、その人たちを
受け入れてあげるよ うな意織 を持 っていることである.前の外国人の間周 に して も、難民の問題 に
しても、人々が助け合お うとい うことに関 して、問題 について理解 し、そ して自分の考えを持つ と
い うことが解決-の近道 であ り、第一歩 であると思 う。 そ うい う意味で も、世界学の時間は資重な
時間であった と言えるのではないだろ うか。
*阪神大喪災の時、私たちよ りまず しい発展途上国の子供たちが、 自分たちが働いて得たお金を募金
して くれた とい う話を聞きま した。 困った ときには互いに国な ど関係な しに助け合 う時代 になって
いるのではないで しょうか。(
中略)何でも与えるとい う援助ではな く、その地域の人たちが 自立 し
て生活できるよ うな援助をす る、これが一番だ とい うことがわか りま した。
*NGOの人たちが語 るその現実は どこか私 たちの くらしか らかけ離れていて、信 じがたい よ うな も
のだったけど、これを私たちが受 け入れ ないことには始ま らないo E
l
本で今までずっとものに囲ま
れ る豊かな暮 らしを してきた。 日本 しか興味がなかった。 で も世界の現状 を 目の前に突きつけられ
て、私たち日本人は、物質的にはこんなに恵まれているのに、感受性に少 し欠け過 ぎだったのでは
ないか、 と不安に思った。歴史にばか りこだわっていてもいけないけ ど、忘れてはいけない ことが
ある。今のこの物質的 に豊かな 日本 は、過去にいろんな国の人たちを傷つけて、いろんなものを奪
って存在 してい るのだ。彼 らの傷は未 だにいえない。在 日韓国 ・朝鮮の人たちは特に複雑な気持 ち
であろ う。
【
資料 1】ワー クシ ョップでの質問
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、これ らの人々を灘民 と組定すべきだと思いますか ?
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-
51
-
第 6章
評価
1 総合教科の評価
「
総合的な学習の時間」においては数値による評価は しない とい うことであるが、生徒が客観的に
自己の学習成果を把握 して評価することは必要なことであ り、それを助ける意味か らも、外部か らの
評価は必要である。 しか し、総合学習は従来の教科学習 とは異な り、学習の過程の評価 を重視す るこ
とから評価方法の工夫が要求 される。 また、生徒のモチベー シ ョンを高める理由か らも、点数で評定
するのではない、適切な評価 が必要であろう。 さらに、た とえば大学の推薦入試の際 も、客観的な評
価 も残っていない と、総合学習での成果が推薦要件に加味 されない とい うこともおこって くる。
これまで本校では、総合教科においては、フィール ドワー クでの活動の状況を中心に、 さま ざまな
活動における学習のようすを総合的に見て、ABCの 3段階で評価を してきた。
2 2
0
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0年度の 「世界学」の評価
(1)ポー トフォリオ評価
2
0
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年度の r
世界学」においては、自己評価や相互評価が可能なポー トフォリオ評価を取 り入れたO
総合学習においては、自己評価がよ り大きな意味を持つからである。
具体的には、生徒達は次のよ うな活動 、自己評価を行 ったO
●生徒一人ひ とりが、自分のクリアファイルを持つ。
●生徒は、配布 されるプ リン トや 自分たちでの調査結果、その時間の感想な ど、授業 に関係 あるも
●
1
のすべてをファイル した。
●各学期の終わ りに、生徒が 自分の考えでファイルの中身を並べ替 え、「
振 り返 り」を行った。
年間の最初 (4/1
4
)
、中間 (
6/3
0
)、最後 (3/1
3
)の 3回、同 じ質問項 目に答え、それ ら
をファイル しておいた。
●それ らを 「
振 り返 り」の ときに比較することで、自分の認識の変化 をたどることができた。
(2) 「
振 り返 り」
各学期の終わ りに、生徒は各 自のポー トフォ リオの中身を並べ替える。その際の視点は、生徒各 自
内容別」「
種類別」な どである。この並べ替えを行 うことで、
で考えさせた。例えば、「
時間順のまま」「
その学期に学習 したことが再び 目の前に現れて、生徒 は学習 した内容を再確認す ることができる。
また、教師が質問事項を書いたシー トを用意 し、生徒がそれに番き込む ことで、その学期に学習 ・
体験 した内容を整理す る事 も行ったO生徒はポー トフォ リオの中身を確認 しながら、質問シー トに書
き込んでいた。
以上のよ うにして、生徒がそれぞれのスタイルで学習内容を再確認 しながら、自分の学習の流れ、
意識の変化をとらえていくことを 「
振 り返 り」 とよんだ。
(3)質問シー トとデータの分析
2
0
0
0
年度は様々な質問シー トを用いたが、前述 したように、学年の最初に実施 した質問シー トとダ
イヤモン ドランキングは 3回繰 り返 して意識の変化をたどれ るように した。そのシー トは、以下のよ
うなものである。
-52-
<質問 シー ト 1>
「l
g
_
非苧 」
[
日 下の 1- t
丁の剛 、
について、(
1分の 考えを次の 1-5で何題の右の輔に答えなさい
Z
r
X
)
L
.
4
.
1
4
。
くダイヤモ ン ドランキ ング>
一「そう盟 う」なら.----.日..
・rどちらでもないJな ら..-.日.
・rそう思わないJ なら .......
・rすご くそう.
思 う」な ら-..-...I
日3
-2
-4
・.
5
1
問い :日本が国際的な社会L
=なるためには.あなたは何が虎男であると恐いますか。
g_
ぺ、下のロの巾に番l
,
Iを入れなさい。
次の 1-9を虫垂であると思う願轟に上か ら_
(
砧もaI
柴なものを lつ、次のランクを 2つ、その次の ランクを 3つというように
口の政に合 うように入れなさい)
1.英語学胃をすすめる。
l
一つの国には、た くさんの文化が兆存 している方が望ましい○
2
-つの円には、国民J
t通の文化があ る方が よい.
3
4
5
6
7
8
国内の少放民掛 よ、同拭兆適の文化 を淀める必掛 まない○
9
民族 文化 よりも偶人の 自由 .平等などの人轍の方が大切であ る.
文化は多価であ り、その価也に優尖があ ってはな らない○
環境問也 など性粋的な規模の甜雌解決については個人の舞力は無慮味である.
)
2.外同についての学習をすすめた り、外国の人と受戒をしたりする。
3.回内に外国人をもっと受け入れる。
4.自己の点兄を持ち、発言する力をつける。
5.少政派の人擬 を大切にする。
6.市中力で国瞭平和にii献する.
7.井 しい国への担助をすすめる。
8.日本文化について涙 く理解する。
9.国迎の辞任理申L
gになる。
世界各国はお互いに助け合 .で生 きてい <べきである.
先進国は、糊児冷,
J
=
円に対 して蛾助 を強化すべ きである○
●●◆●●●●●●●●●●●●●■●
■ ■ ■ ■ ■ ■ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ■ ● ●
日本は外別人にと>て住みやすい国であ る○
1
0 価仇桝の迎う人々はHiL合つて も確解 し合えない○
ll
すべての怖細はインターネッ トで典め られる○
1
2 怖 Wは多け九は多いほ ど良い.
1
3
1
4
1
5
1
6
1
7
閃 き取 り羽衣は古い手法なので,横軸の収典方法 としては適切でない○
世界平和のためには、価鍋DZ
を共遇 に した方がよい.
宗丑上の確d
)による対立や紛争が起 こるのは仕方がない.
人権 .平和 .民主主軌 ま人類浄遍の価也である.
軽満的に丑かな生縞が幸せな生塙につながる○
l
ZI 次のl
削 、
に苔えなさい。
(A)あなたに とって良も身近に感 じられるL
gの
名前 をひ とつ7
Sえなさい。
(B)あなたは どの擢虹、新聞の同時耐 こE
lを通 しますか。次か ら選び轟号で答えなさい。
1 :全 く碇 まない
2 :ほ とんど読まない
4 :ほぼ晦日訣む
5 :必ず軸口説む
3:2日に 1回程度読む
□
ロ ロ
⊂
□
□
]
これ ら3回のデー タはすべて収集 してあるが、すべてをのせ ることはできないので、全体 として大
きな変化が見 られた項 目について提示 し、考察するD
2
0
0
0
年度の世界学で、生徒たちは 「
ひ ょうたん島問題」に取 り組んだ り、難民に関す る終演をきく
など、「
多文化共生」について考える機会が多かった。そのため、「
文化は多様であ り、その価値に優
劣があってはならない」ことに肯定的になっていった と考えられ る。
9 日本は外国人にとって住みやすい国である
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そう
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世界学の後半では、生徒たちはグループに分かれてフィール ドワー クを行 った。そこでの調査 ・ま
とめにおいては、常に r
世界 と日本を関連 させて考える」よ うに指導 した。その結果、フィール ドワ
ークを通 じて、「日本は外国人に とって住みやすい国である」か どうかについて感 じ・考える機会が多
かったため、上のグラフのよ うな変化が現れた と考える。
-5
4-
目 すベての情軌 まインターネットで集められる
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本校は、インターネ ッ ト環境が整っているので、生徒たちはフィール ドワークにおいてインターネ
ッ トで情報収集 を行 うことが多かった。 しか し、望みの情報が得 られないことも多々あった。その結
果が、上のグラフの変化の原因の 1つである。また、インターネ ッ トで収集 した情報の真偽 を確認す
る必要性 を、ことあるごとに指導 してきた結果でもあると考える。 このことは、聞き取 り調査に関す
る次の結果にも現れている。
1
3 聞き取り調査は古い手法なので、情報の収集方法としては適切でない
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田すごく
「そう思う
そう思う
次に、「(
A) あなたに とってあなたに とって最 も身近に感 じられる国の名前をひ とつ答えな さいO」
とい う質問に対す る回答の変化は、次のよ うになった。
ー
55
-
この結果 を見ると、第 2回の調査結果 には第 1回にはない国がた くさん回答 されてい る。 その理 由
ブラジル ・ペルー ・ボ リビア ・バ ングラデ シュ ・台湾)
は、 5月26日に実施 した、在 日外国人詐演会 (
にあると考えられ る。
次に、「(B) あなたは どの程度新聞の国際面に 目を通 しますか。」の変化 は、次の ようになった。
どれくらい新聞の国際面に目を通すか
1
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全 く読まない J屑が減少 してい る。 これは、新聞の切 り抜 き
最初 に比べて、r
ほ とん ど改まない 」「
をノー トに貼 り、それに関 してコメン トをつけて提出す るよ うに指導 したか らだ と考え られ る。 しか
し、後半になるとこの指導 も徹底 しな くなってきた。 それは、第 2回か ら第 3回の変化、お よび 「
必
ず読む」「
ほぼ毎 日読む」とい う層の増加 がほ とん どない点に現れていると思われ る。指導上で、反省
すべき点である。
(4)まとめ
ポー トフォ リオを用いることで、生徒 は各 自の学習について振 り返 りなが ら、自己評価す ることが
できた。 さらに、教師の方 も、蓄倒 されたデー タを分析 ・考察す ることで、指導内容や指導方法が適
切であったか どうかを評価す ることができたO
-5
6-
3 今後の課題
2
0
0
0
年度 よ り、ポー トフォ リオ評価 を取 り入れたが、次の よ うな点が今後の課題 として残 った と考
える。
(1) 目標の提示
2
0
0
0
年度の世界学の 目標 は、
「
人の移動」を通 し、世界 にお ける多様な価値 と相互依存関係 を認識す ること
であったQ
本来な らば、この 目標 を生徒 にはっき りと提示 してや らなけれ ば、生徒 は正確 な 自己評価 をする事
はできない。 しか し、上記の 目標 をはっき りと示す ことで、生徒が世界学の学習を進 める際に 自由に
感 じ、 自分の頭 で 自由に考えるこ とができなくなるのではないか と考えて、はっき りと示す ことは し
なかった。 この点をどのよ うに考 えてクリア してい くかが課題である。
(
2)評価基準の確立
2
0
0
0
年度の世界学では、授業や フィール ドワー ク-の参加態度 、 レポー ト、フィール ドワー クの内
容や発表 な どを総合 して、A BCの 3段階で生徒の評価 を行 った。 しか し、それぞれの評価 を行 う際
の観点を整理 して統一 し、評価の基準 を確立す るところまではいかなかった。
今後は、従来か ら行 っている 3段階の評価が適切であるか どうかを検討す るところか ら始 めて、評
価基準を確立 しなけれ ばな らないC そ して、その評価基準を生徒 に示す必要 もあると考える。
第 7章
アンケー ト
本年度世界学のまとめ として、 3月 1
2・1
3日に (1) レポー ト 「
世界学 で学んだ こと」、 (2)アン
3)質問シー ト&ダイヤモン ドランキングを実施 した。(1)については、前時に 1年間を振
ケー ト (
り返 る時間を設けた。 (2)については、最終の時間に書かせて、担 当者で今年度世界学の総括の資料
とし、翌年度に反映 させ ることとした。以下は、その詳細である。なお 、(3)に関 しては、第 6章に
詳 しい。
1 生徒の作文か ら 「
世界学を学んで」
(
前略)
難民が発生 している限 りこの間題 は決 してな くな りませ ん。ひ ょうたん島問題 も難民問題 も、人の
価値観 が関わってきます。その価値観 を一つにま とめることは不可能です。互いにい ろいろな考え方
を持っているか らこそ、新たな共通理解ができることもあ ります。 同 じ国に住む異なった民族同士が
お互いを認 めあい、助 け合 って行 くことが必要ですO簡単にできることではあ りませんが、世界の人 々
が共存す るためには自分たちの国の考え方や文化 な ども守っていかなければならない し、ある種犠牲
を払 うところも出てきます。たぶん、解決す ることはできない と思います。文化や価値観 だけでなく、
現実の経済状況や政治の在 り方 な ども無視 できません。それだけ多 くの ことが絡んで くるのだか ら解
決 しない と思います。 ただ、少 しでも良い関係 に持 ってい く努力は必要です。難民だけでな く普通に
移住 してきた外国人に とっても住み易い環境 を作れた らいいです。 それは、一つの国だけが行 って も
仕方あ りません。世界全体で考えなければな りませ ん。 これ か ら先 、多 くの民族が共存 してい くため
には一番 にお互いを理解す ることが大切 です。理解 し、認 めあわなければ無理です。(
岸
-
57
-
本
佑
子)
世界学を通 して私は色んな事 を学んだ。 と同時に 自分の視野の狭 さに気づか され た。私は世界 を全
今の世界 を知 る」とい
く知 らなかった。スクラップノー トを作成す るのは想像以上に大変 だったが、「
う点でいい機会 にもなった。世界か らの視点で 日本 とい う国を見てみ ると今まであま り意識を してい
なかったけれ ど本当に 「
豊かだ」 と思 った。世界には宗教の違いや 国家間での争い、また民族の違 い
による戦争な どに巻き込まれ住む ところをな くし、飢 えに苦 しむ人 々がた くさんい る。彼 らは本当に
物質的に乏 しい。感情だけでは どうにもできない現実をた くさん知 った.NGOの人たちが語 るその
現実は どこか私たちの暮 らしか らかけ離れていて、少 し信 じがたい よ うなものだったけれ ど、これ を
私たちが受 け入れない ことには何 も始 ま らない。 日本で今までず っ と物 に囲まれ る豊かな暮 らしを し
てきたC 日本に しか興味がなかった。 でも世界の現状 を目の前に突きつけ られて、私たち 日本人 は、
物質的にはこんなに恵まれてい るのに、
感受性 に少 し欠けすぎだったのでは ?と不安 に思った。(
後略)
(
池
堂
歩)
(
前略)
考える頭 、これ こそが、私たちが世界学か ら学んだ最大のものだ と思います。 もちろん他の教科だ
って知識だけでなく考える力 を育てているものだ とは思いますが、世界学は考えることがメイン とい
う気が します。 また環境学よ り人が関係するので感情が入ってきて難 しいけれ ど、ある意味想像力 も
使 えるので、一人一人が参加 できるし深いです。世界学を通 してわた しは考える力 と広い視野を身 に
つけま した。そ して、一番大切だけ ど難 しい難民を調べた ときの班 での協力 も、相互依存や ゆず り合
い、助け合いについて考えただけあって、 うま く分担 し、話 し合 って発表 を作 り上げることができま
した。大進歩です !世界を通 して 日本の姿を見たように、世界学を鏡の よ うに して 自分 とい うものを
この一年間写 していたような気 が します。
(
川
本
智 子)
私は 1年間世界学 とい う授業 を通 して 4つの大事なことを学んだ と患います。まず第一に何度 も言
ってきた と思 うけれ ど、「
フィール ドワー クの重要性」です。環境学や他の授業 はテキス トがあった り
実験を通 じて学んだ りと、ある程度知識 を学べば考察 を導 くことが可能です。 しか し世界学において
は最初何について考えれば世界について考えると言 うことなのかもわか らなかった し、学問 と言 うよ
り人 と人について研究す るとい う内容 なので、イ ンターネ ッ トや本だけに頼 ることができません。 だ
か ら、最 も信頼できて 自分の知 りたい内容をポイ ン トを押 さえて深 く得 ることができるのがインタビ
ューや アンケー トだ と学びま した。 しか し、専門家に話 を伺 ったか ら、一回 どこかにみんなで出かけ
たか らといってそれはフィール ドワー クではな くただの遊びだ と言 うことも同時 に教 え られた気が し
ます。 日的設定をして事前に何のためにお話を うかがい どう活かすのかを話 し合 ってみんなで理解 し
ていかなければ意味があ りません。 ア ンケー トを行 うときも同様 です。常に何のためのアンケー トな
のか先を見越 して行わなけれ ば意味 はないのです。つま りフィール ドワー クは計画が命 なのだろ うと
考えさせ られま した。
インタビューに臨む方法」だと思います。世界学は人間同士の秤 を大切 にす る
第 2に学んだのが 「
学習です。協力 していただ くときは、 自分たちが どうい うことについて調べてい るのかをちゃん と相
手に伝 え、 自分たちも質問 ・意見交換 ができるよ うに基本的な知識 は事前に学習 しておかな くては失
礼だ と言 うことを学びま した.それまではメモを取 りとり、
後でま とめればいいや と思っていま した0
だけ ど、狭いテーマで研究を進 めてい るのだか ら、よ り深い結果を得 るために心か らの話 し合い、討
藷 をせねばな りません。理解 しつつ話 に参加せねば意味がないのです。相手 と価値観が違 うか らとか
-5
8-
英語ができないか らと言って話 し合いができない とあきらめるのではなく正 しい知織 と深い尊敬を持
ってねぼ り強くチャレンジしてみることが世界学だけに止ま らず、交流 ・話 し合いの上でも成功の秘
訣なのだなあと感 じま した。
人の移動において価値観 と文化の差異が問題を引
そ して第 3に学んだことがあ りま したCそれが 「
き起こすJ と言 うことです。 まず、ひ ょうたん島ロールプ レイや在 日外国人の方々の話から文化を認
め理解すると言 うことが非常に大切だ と学び、 自分の狭い考え (日本に住んでいるから?)に世界的
な意粒を持てる幅ができま した。 ロールプ レイでは簡単で遊びのよ うだけれ ども以外 と深い内容を分
か りやす くつかめてとても良かった と思います。現実的な問題 としてとらえた とき、交流においても
難民など政治的な間眉においても、ひ ときわ 目に付 くのはエスニ ックな価値観 ・生活習餌な どの文化
差異を認 められない人々が多いことです。本当に世界のコミュニケーションシステムは大きく、簡単
になったけれ ども矧 こ統一 ・協調をはかるならマイ ノリティーを誰 めるべきです。文化の多様を絡 め
つつ、共通の文化を持つことで差別や対立をなくせるのではないか と考えさせ られま した.国際化指
向に伴い、世界的な活動(
NCO,
環境保護活動 e
t
c
)
を推進 し、一見私たちには愚かに感 じて しま う中東
などの宗教観閑をなくすためにも、ある程度の基本的な価値観の統一は必要なのではないで しょう
か?
そ して、第 4に学んだのが、「
周囲に目を向け関心を持つ重要性」で した。本当に見逃 して しま うく
らい当た り前なことなのだけれ ども、世界学の新聞切 り抜きをしてか ら改めて納得 させ られた と思い
ます。私たちは国際人でなければな らない し、その前にひ とりの見習い社会人です。 これか らの日本
はさらに世界 と迎映 して発展 して行 かねばな りません。なぜなら少子高齢化や経済的な理由から日本
にはもっと多くの外国人の働 き手が必要だからです。いつも争いや問題は金銭的理 由か ら生 じます。
現に、今の 日本の不当な外国人扱いは数え切れない くらい起 こっているのに、人々の関心が低いため
に、特別機関がないために多くの労働者が涙をのんでいます。難民を受け入れ ると言 うことについて
も、大間越であるとい うのに、多くの 日本人は関係ない、機 関で さえも規畔がはっき りしないからわ
からない、知 らないとい う状況があ ります。移住者、国籍取得者であっても外国人お断 りとい う店が
あって差別を受 けているとしても仕方がない、わからない と関心を持たず 自分たちさえよければよい
と言 う日本人 もいるのです。世界学でそ うい う現状を知る機会があったのですが、今 こそ私たちが外
国人居住者に関心を持ち、意見を交わす ことが求められています.少数を無視 して良い 日本の将来は
ないに決まっていると学びま した。
(
中 J
l
I みずき)
(
前略)
「
世界学なのに世界のことよ りも情報収集 、分析、友達 との協力、ものの考え方 といった世界以外
のことを多 く学習できた。」 とい うことに とても驚いている。
もちろん、世界の問題についても全 く学ばなかったわけではなく、たくさんのことを知ってそれに
も深 く考えさせ られたが、最初に思い浮かべていた 「
先生が世界の ことについて長々 としゃべって教
わる」 といった先入観 とのギャップのおかげで強 く印象に残 る結果 となった。 このこと、つま り授業
が受け身ではなく自分から積極的に参加す るような形態になってい るとい うことは、この学校の特性
上、世界学だけでなく他の教科にも当てはまっているのかもしれないが、 とりあえず ここで学習 した
ようなことはいつまでも大切に したい と思っている。
-5
9-
(
藤
本 祐太郎)
2 アンケー ト集計
(1)世界学 で一番良かった ものは何 ですか ?
授業の最後にとったアンケー トで、最 も良かったプログラムをたずねた ところ、次の よ うな結果
になった。
57
A 貿易ゲーム
B ひ ょうたん島問題
あい さつ
7
C ひ ょうたん島問題
カーニバル
1
2
D 在 日外国人の講演
2
8
E 在 日外国人講演のスキ ッ ト
3
F 映画 「ピクチャープライ ド」視聴
9
G
1
7
コソボ難民の レクチャー
H クロアチア難民 NGO スタッフの講演
1
5
Ⅰ フィール ドワーク
39
J ひ ょうたん島問題
1
6
リ トルパ ラダイス
1
0
K スクラップノー ト
貿易ゲームが トップであったのは予想通 りであ り、授業開きをこのゲー ムで行 ったの も、その予想
か らであるO授業に対するステ レオ タイプを うち破 り、参加型学習のお も しろさを知 らせ るには適切
な教材だった と患 う。
FW がひ ょうたん島問題や、講演を抜いて次に来たのは、やや意外 であった。後の世界学に対す る
提言でも、FW に対す る言及 が多 く、関心の高 さを感 じた。 シ ミュ レーシ ョンのお も しろさもさるこ
となが ら、実際の問題 を自分 たちで調査す ることに魅力を感 じている生徒 も多い。
その他 、 3つの異なる講演は、総 じて印象が強 く、当事者が直接語 りかけることばは強いイ ンパ ク
トを与えることがわかる。
(2) 後輩に 「
世界学 って何 ですか ?」と聞かれた ら、どのよ うに説明 しますか ?
1年間取 り組んだ世界学を生徒が どの よ うに とらえたかがよ くわか る。
(
数字のない項 目は、すべて 1名の意見である。)
最 も多かったのは、文字通 り 「
世界についての学習」 と、大まかに とらえてい るものであった。 そ
の具体的な内容 としては以下の通 りである。
・世界 (
の問題)についていろいろ学ぶ (
認識 を深 める)
2
8
・世界で共通 して起きている問題 について考える授業
3
・世界について知れ るいい機会、世界の知織が増 える
2
・世界の人々の ことをもっ とよく知 るための学習
・外国や 日本の ことを学ぶ
・外国の文化に直に触れ る授業
次に、世界の何について学ぶのか、詳 しく述べているほか、学び方 についても言及 しているものに
ついては、次のよ うなものがある。
・世界について 自分たちで考えた り調べた り話 し合 う教科
4
・世界で抱えている問題 、い ろいろな国、民族、文化の交流 によって どんな問題 が起 こるのかそれ
2
ぞれの立場の考えを知 るための もの
-6
0-
・世界の人々や問題 について考え自分な りの意見を持つもの
2
・世界で何が起 こっているかを知 りそれに対 して自分ができることを考える ・世界での問題 を実際
に授業でやって どう解決す るかを考える授業
・世界について主体的に学んでいく
・世界について自分の興味のある部分 を学習できるいい機会である
・世界のことをシミュ レーシ ョンを交えて理解 してい く
・世界を見ること、人 と人 とのつなが りを知 り、多種多様な価値観があ り、それを認められ るよう
にすること
・ある国について調べた り、講演を聴いた り映像を見た りす るもの
・世界に目を向けると言 うことの難 しさを体験する
・世界の他の人のことを考える
3番 目には、
国同士の関係、あるいはネ ッ トワー クとしての世界について言及 したものが多かった。
・世界の中での 日本の立場を考える
5
・世界のことを調べていって最終的に 日本を知 るとい う科 目
2
・世界 と日本 との関わ りを学ぶ
2
・世界のつなが りについて学ぶ
2
・身の回 りにある組織、物品、地理が どんなところで海外 と関わっているかを調べ る
・依存って 日本人にとっては ・・・
・日本 と世界の関係や国同士の関係について考えて学ぶ総合学習
・人 と人、国 と国を知 るための学習
ついで、自らの視野が広がるもの、 とい う捉え方をしているものには次のよ うなものがある。
・世界-の関心を広げるもの
3
・視点を日本か ら世界に広げるもの
・自分の考えをいろいろな方向-広げ られる
・社会を知 るための大切な授業。受けることによって視野が広が ります
・教科書に書かれていないよ うな世界に対す る知織 と見方が変わる
・自分の視野や情報が狭いものだと感 じるもの
次に学び方のスタイルについて言及 しているものが多かった。
・自分でや らないと何 もできない
・ちゃんとやったらお もしろい
・自分で動 く (
参加す る)授業
・よくものを書かされ る
・最初の方は楽やけど気を抜いていた らめちゃ苦労するから気をつけなあかん、 とりあえず話を聞
いて論文をしょっちゅ う書か される教科
・トピックをしぼって 自分たちの力で調べる
・学ぶ意義を兄いだせない と楽 しむ ことは難 しい
・甘 く見ていた ら痛い 目に遭 う、一番頭を使った教科、かも知れない
-61-
3年生の ときに受 けた環境学の授業 と比較 して述べてい るものは次の通 りである。
・環境学 とあま り変わ らない (
環境学は環境 について、世界学は世界について)
4
・環境学 と基本 は同 じだけれ ど、違 っているのは講演 とかが多い
・環境学の方がお もしろかった
・環境学に似てい る、環境学 よ りいいが、お もしろくない (2学期まではお も しろかった)
・環境学の進化版
・環境学のテーマを世界に縮 めて考えを発展 させてい く時間
・環境学 よ りもいろんな行事がある
最後に、授業を受けた気持 ちで伝 えよ うとしているもの としては、以下の よ うなものがある。
2
・す ぐには理解できないもの
・あま りお もしろくな くて、たまにお もしろい ときがある学習だ
・しん どいが割 とや りがいのあるもの
・や る気のない人は退屈
・けっこ う重い
少数ではあるが、国際化 との関連では、
・真の国際化になるためには何 をすべ きかを考えてい く学習
・国際化になるに したがって起 きて くる問題 をたくさん学べ るもの
とい う意見 もあった。
その他、具体的に行った活動 を羅列す ることで紹介 しよ うとしているものもあったが省略す る。
(3) 今年の経験か ら、来年度以降の 「
世界学」に対 して提言 ・提案を して下 さい。
世界学で扱 う内容については、テーマが大 きす ぎて身近でな く、具体的な世界の問題 のひ とつに絞
って扱 うことを述べている生徒が多かった。身近でない との指摘に対 しては、身近な問題 として とら
え られなかった結果を表 してい る。 あ くまで、 自己と関わ りのない遠い世界のこととしか とらえ られ
なかった生徒 もいたのは残念だ。
年間指導計画か らわかるよ うに、内容は盛 りだ くさんで変化 に富んだ。 この ことに対 して、
テーマが次々変わ りす ぎてわか りに くい、一つのテーマについて もっ と時間をかけて欲 しかった、
一つ一つの内容について個人が本当に考えられ る時間が欲 しかった とい う要望があ り、担 当者 として
も良 く理解できる点であるOひ とつには、 5つのクラスで歩調 をそ ろえて進んできたため、クラスに
よっては未消化 なままでも、次のテーマに移 る必要が生 じやすかった とい う理 由があろ う。
具体的な提言の中で、最 も多かったのは FW についてである。
・時間を増や して欲 しい
23
・ま とめに時間が欲 しい
・発表に時間が欲 しい
な どの時間の問題 が一番多かった。次に、FWのテーマについては、
・漠然 としている
3
・あやふやで難 しい
2
とい う意見がある一方、
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・しぼ らないで欲 しい
・好きなテーマで調べたかった
等の意見があった。
前年度は、FW後にデ ィスカ ッシ ョンす る意図で、FWのテーマは外国人労働者に放 り込んで行 っ
たが、今年は 「
人の移動」 とい うものだった。放 り込んだ方が FW は し易 く、問題 についても深ま り
やすい。担当者にとっての負担もやや少なくなる。本来、絞 り込む作業は FW の過程で早い時期に行
ってい くものであろうが、その作業が生徒には難 しかったよ うだ。絞 り込む ときに、興味 ・関心 ・テ
望ま しい方向Jを探 ろ うとしていたグループも
ーマに対する理解などが必要だと思 うが、FW中に r
あ り、FWの入 り口でどうやってスパークさせるか、テーマの与え方 と共に検討する必要があろう。
その他、FWについては、環境学のよ うに、
・中間発表を入れ るな どしてお互いの研究内容を知 り、自分たちの内容を深 めた方がよい
2
・クラス内で代表を選び学年で発表会 を したかった
2
とい う意見があった。時間不足がここでも問題 となった.
FWについては、情報の梅の中でおぼれる危険性 と、人の話を聞くことの重要性 と難 しさを指摘 し
た意見もあったo
その他、
・外国人 とふれあ う機会を増やす
・外国の人の話を聞きたい
・講演を増や して欲 しい
等も目立った。
ゲーム、シミュ レーシ ョンをもっと増加 して欲 しい とい う声が大きい一方で、
・シミュレーシ ョン- リア リティの結びつきを強めることが大切
・質問シー トにある問題について実際に学習 したい、何度 もやったが最後までわか らない問題が多
かった
とい うものもあった.現実の問題 について、「
知識」として学ぶのは世界学のね らい とするところで
はない。 「
態度」を学ぶには良い方法のシミュレーシ ョンであっても、バランスを考え、知的好奇心を
満たす内容を考える必要があるC 自分たちが動 く授業 (
参加型授業)の継続を求める声もあ り、合わ
せて、引き続き方法についても検討 を続 ける。
最後に、
・これを して どうい うことに役 に立つかをきっち り教えて欲 しい。それか らじゃない となぜやって
いるか と考えて しまい、や る気がお こらない。
・先生はもっとア ドバイス して欲 しい
などとい う意見があ り、テーマを小 さくして方向性 を示 して欲 しい とい う FW についての意見とも
わせて、考えさせ られた。
「
意味があ りそ うなこと」でない と、取 り組めない生徒がい くらかお り、生徒に とっての 「
意味」
は、往々に して 目に見えた即効性のあるものであることが多いのでないか。また、具体的で細分化 さ
れた課題 を与えられるとい う受動的な学び方に慣れて しまった生徒が多いのではないか。そ して.そ
れ らの生徒達の数は、増える債向にあるのではないか と、日々の学校生椿の中で感 じることが多い。
だか らこそ、「
練合」に意味があるのかもしれない。
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第 8章
成果と課題
総合学習 「
世界学」の実施によ りあげ られた成果は、第 6章
評価
と 第 7章
ア ンケー トにあ
げたが、それぞれ を簡単にま とめる と次の通 りである。
1 成果
1- 1 生徒 に関すること
・従来の教科活動 と異なった学習 目標の理解
・学習における自主的活動の重要性 の再認識
・異文化間コミュニケーシ ョンの道具である共通言語の重要性の再認級
・異文化間 コミュニケー シ ョンにお ける非言語の重要性の認識
・「国際化」にお ける伝達内容充実の重要性の理解
・共感的理解の重要性の認織
・新聞を読む習慣の獲得
1-2 教員に関す ること
・他教科の教員 との共同作業 による教員間コ ミュニケー シ ョンの円滑化
・多様な視点で見ることによるカ リキュラム内容の質の向上
・スキ ッ トや ロールプ レイ ングな ど世界学で実施 した教育方法の各教科 な ど-のフィー ドバ ック
・各教員の視野の拡大 と他教科-の理解
2 課題
1年間の実践の結果における課題 についても前章までに述べ られているが、主なもの としては、以
下のような現題 があげ られ る。
・いかに切実に問題 をとらえさせ られ るか、また、行動に移せ るか く
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)
・他の価値観 を持つ文化圏 との交流 とその継続
・フィール ドワー クにお ける安全面 と経済面の保証
・「
総合学習」の評価の検討
・他教科 ・科 目との連携 (
社会 ・英語 ・情報な ど)
・地域社会や NGOな どとの連携 (
人材バ ンクや人的ネ ッ トワークの整備)
・情報教育 との連携 (
情報の収集 とプ レゼンテーシ ョン方法の工夫)
・教員の資質向上 と専門性の活用
(
FWを支援 ・指導できる力 を)
・小学校で 「
総合の時間」を経験 した子 どもたちへの対応
・他の学校でも総合学習が始 まった時のフィール ドワークの工夫
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