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慢性頭痛 - せきぐちクリニック
せきぐちクリニック 2009年2月23日 慢性頭痛 頭痛は、おそらく、ほとんどの方が経験したことがある病気だと思います。ひとことで、 「頭痛」といっても原因によって様々ありますので、分かりやすくすると、①日常的な頭 痛:カゼや二日酔いからくる頭痛など、②脳からくるもので、早急な対応が必須の頭痛: くも膜下出血、脳出血、髄膜炎などからくる頭痛、そして、いわゆる「頭痛もち」と言わ れてしまう慢性頭痛:片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛からくる頭痛の3つに分類すること が可能です。今回は、いわゆる「頭痛もち」について取り上げていきたいと思います。 少々、おつきあいください。 片頭痛(migraine) 片頭痛は、下の図をみていただくと8.4%という頻度、つまり、日本では約1000万人くら いの方が片頭痛を経験していることになります。女性に多く、 若いころに発症します。主 に片側性(両側に起こることもあります)で、ズッキン、ズッキンと血管の拍動と同じよう に痛む頭痛を繰り返します。気持ち悪くなったり、吐いたりもします。体を動かしたり、光 や音で痛みは悪くなります。発作がないときには、症状はありません。だいたい30%くら いの方が、頭痛をおこす前に光が眼の前をチカチカと飛んでいったり(視覚異常)や体の 麻痺や感覚障害など、頭痛の前兆と呼ばれるものを経験します。なお、しばしば家族に同じ ような方がいるとされています。誘因としては、空腹、寝不足、寝過ぎ、アルコール、月経 周期、経口避妊薬、運動、入浴、外出(騒音、暑さ、乾燥、日光での誘発)、匂い、性行 為、ストレスなどが挙げられます。痛み止め、吐き気止め、トリプタン系と呼ばれる薬剤な どで治療します。 70 % 60 (4029人中、慢性頭痛の割合) 50 40 30 20 10 0 片頭痛 (全体) 片頭痛 緊張型頭痛 (20 代女性) その他 頭痛なし せきぐちクリニック通信 ページ 1 せきぐちクリニック 2009年2月23日 片頭痛の臨床的特徴(すこし詳しく) 1)発作前に何らかの前ぶれを示す(前兆)。 前兆は片頭痛をおこされる方の20%程度しかみられません。症状は、閃輝暗点というチカチカと光が走るも のに代表されます。しびれが半身全体に時間的な経過とともに広がることがあれば、脳底型片頭痛とされま す。前兆を伴わない片頭痛でも、よく調べると大多数は、頭痛の出現前30分から2時間くらい前に何らかの 前駆症状を示す。多い症状としては、首筋の張り、生あくび、不定の予知感、軽度の頭痛があります。首筋の 張りは緊張型頭痛と間違えやすいのですが、徐々に強くなり片頭痛発作につながるところから、経過をよく みると気づくことができます。 2)発作性である。 3)頭痛は、片側性あるいは両側(左右差あり)の場合あり。 片頭痛は、その名前の通り、片側だけに起こるものと考えがちですが、実際には、決まった片側だけ頭痛を おこすというのは半数に満たないとされております。しかし、発作のたびに左右が入れ代わったり、両側の 頭痛であるが痛みの強さに左右差があるといった場合を含めると、どちらか片側が優位であるということ は、80%の片頭痛の方に当てはまります。 4)ズッキン、ズッキンと拍動感のある痛みがある。 拍動感は、頭痛の全経過ででるものではありませんが、頭痛がおきてから痛みがピークになるまでが最もで やすい時期です。ピーク以後は拍動感が不明確になることが多く、普段に比べて強い頭痛が現れたときなど にも拍動感がはっきりしない場合があります。 5)2∼3日以内に一度改善する。 だいたい25歳くらいまでは、翌日に頭痛が残ることは少ないのですが、年齢とともに消失までの時間が長 くなる傾向があります。日本では、片頭痛の方の過半数は24時間以内に一度頭痛は消失するとされており ます。 6)就業に支障をきたす場合がある。 7)悪心・嘔吐を伴うことがある。 しばしば見られる症状ですが、毎回というわけではありません。 8)発作中は、光、音、においが気になる。 9)発作中は激しい運動動作で頭痛がひどくなる。 10)血管拡張をきたす条件下で頭痛を誘発する。 人ごみや空気の悪い場所にいるとき、アルコール、緊張やストレスから解放されたとき、発熱時、炎天下や 高温時、月経時などには起こりやすいです。アルコール以外のものでは、チョコレート、チーズなどの発酵食 品、柑橘類、油類などで誘発されることもときにはありますが、わが国では、少ないです。 11)痛いところの動脈を圧迫すると頭痛が軽減する。 頭痛は、血管拡張によるところから、拡張した血管を圧迫し収縮させることで、一時的に軽減することがで きます。こめかみで側頭動脈を圧迫すると、圧迫中のみは頭痛が軽くなります。他の頭蓋外血管である前頭 動脈、後頭動脈でも同様です。頭蓋内血管の拡張による痛みが予測されるときには、罹病側の頸動脈を横突 起に向かって圧迫すると同様の軽減効果が確認されております。 せきぐちクリニック通信 ページ 2 せきぐちクリニック 2009年2月23日 片頭痛の臨床的特徴(続き) 12)家族歴に同様の頭痛が存在することが多い。 古くから片頭痛は、遺伝的傾向が示されています。日本での統計結果では、母親が片頭痛の場合に約4 0%、父親が片頭痛の場合に約10%くらい遺伝するとされております。しかし、隔世遺伝例があるなど遺 伝様式ははっきりしていないのも事実です。また、一卵性双生児における片頭痛でも一方にしかでないこと もあるので、遺伝的素因のほかに何らかの外因性要因も関与している可能性があります。 13)主として、10∼20歳代に発症する。 14)妊娠中は、大多数例で頭痛が軽減ないし消失する。 この傾向が、授乳中まで続く方もいます。わが国でのデータでは約30%が消失、約50%が軽減するとさ れています。妊娠悪阻が強かった場合、頭痛の改善がないこともあります。 15)高齢化により頭痛が軽減する。 緊張型頭痛(tension-type headache) 一次性頭痛のなかでも、最も頻度の多い頭痛です。ストレスが誘因となることもあり、ス トレス頭痛とも呼ばれます。 徐々にはじまり、1日中あるいは毎日続きます。頭痛の性状は、頭全体が締め付けられる ような痛みです。頭痛に加え、眼の疲れ、耳鳴り、めまい、肩こり、疲れやすさなどの症 状を伴います。片頭痛が悪心や嘔吐を伴い日常的な動作で症状が悪化するのに対し、緊張 型頭痛の場合には、悪心や嘔吐は伴わず、むしろ動いた方が頭痛がよくなることがありま す。ストレスの対応、ストレッチ、枕を低くするなどの他に、症状が強ければ、痛み止 め、抗不安薬、筋弛緩薬などによる治療を行います。 群発頭痛(cluster headache) 少ない0.08%くらいと頻度は少ないです。20から40歳代の男性に好発する短期持続性 の一側性の頭痛が眼窩部、眼窩上部または側頭部にみられ、頭痛がする側に流涙、鼻漏な どの自律神経症状を伴うのが特徴です。発作は、数週間から数ヶ月間群発します。群発期 間は、年に数回から数年に1回のこともあります。就寝中に多く、飲酒により誘発される ため、生活指導も重要です。片頭痛とは異なり、発作中は、激しい頭痛にも関わらず不穏 と興奮を呈し、多くの方は、横になることができず歩き回ります。頭痛が出現したら酸素 吸入、トリプタン系薬剤などで治療します。 せきぐちクリニック通信 ページ 3