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1 頭痛の裏に何が隠されているか?

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1 頭痛の裏に何が隠されているか?
1 頭痛の裏に何が隠されているか?
2 背景
G.女児、2001年 出生
2007年7月、6歳時に反復性腹痛と食欲不振を主訴に入院。
2008年9月、夏休み後に突然起きた頭痛を主訴に入院。(週1回)
2011年9月、頭痛頻度の増加。週に4-5回。
2012年春、当診療科で初めての診察
3 臨床記録(6歳時)
はっきりとした原因がなく頻回に腹痛。
体重減少(2kg以下)
食欲不振
顔面蒼白
全ての血液検査と胃内視鏡検査はregular
4 臨床記録(7歳時)
嘔気、嘔吐を伴う頭痛(seldom)
部位:不明瞭
随伴症状:不安
持続時間は4時間/日で、主に午後
M(母)はしばしば学校から患児を連れ帰らねばならなかった。
睡眠できない relieved from sleep
5
頭痛歴のある小児を診る時、データしばしばは不明瞭で、こどものレベルにあわせる必要が
ある。
小児は成人ではないので、強制的に質問を小児の発達レベルに合わせる必要がある
6 皮質の灰白質の発達(赤が高いレベル、青が低下レベル、Gled, 2004)
7 年齢に応じたテーラーメードの質問のしかた
小児からどのように情報が得られたが、そして小児によって情報がどのように受け取られ理
解されたかは、彼らの認知レベルや発達に影響されることは疑いない。
大人が発達的に適当なコミュニケーションと介入アプローチを使った時、小児から得られる情
報の妥当性は増加する。
Marcon & Labbe 1990
8 小児の頭痛について仕事をする時異なった認知要因を考慮する必要がある
病気の因果関係
言語の発達
病気の重症度の知覚
時間の概念化
9 病気の因果関係
認知の発達のPiagetian stageによれば、病気の説明は理解不能なものから明確で外的なも
のになり(たとえば”走り回り熱くなる”)、最終的にはより内的で生理的な説明になる(たとえ
ば、ひとが神経質になり、やりすぎると、そのことにより彼らの体が頭痛として反応する)
10 言語
言葉の配列の発達や概念の獲得は、診断の正確さや精神的な介入に影響する:治療の説明
は、子どもが理解する言葉を取り入れなければならない。
11 言語
頭痛の深刻さや強さを評価するためには、小児が”less(あまりいたくない)”の前に”more(も
っと痛い)”の概念を理解していることを覚えておくこと
小児は彼らの意味的妥当性に従って、ペアになった方向性のある単語を獲得する:はっきりし
た単語(大きいー小さい)は抽象的な単語(前の方ー後ろの方)より前に理解される。
より小さい小児では、指を使ったり絵をかく方が、痛みの位置を言語的に述べるよりもより適
切である。
12 言語
回答形式が自由な形式(open-ended format)は与えられた選択形式(supplied response
format)より、現在進行形や過去の痛みの経験をよりよく評価できる。(Rose & Rose, 1971)
回答形式が自由な形式(open-ended format)は、小児がhow question(どのように、なぜ、い
つ)よりもwh question(どこで、何を、どちら)を理解していることを知るために重要である。
13 重症度の認知
主な結果は治療の成功を決めるために測られるために、頭痛の重症度を正確に計測するこ
とは重要である。
頭痛発作の頻度は通常、頭痛ダイアリーに記録されるが、痛みの強さのを評価する0-5スケ
ールは、主に若い小児で、小児の痛みの感じ方に合わない
14 いかに痛みの強さの自己評価の主観性をうまく扱うか?
数学上の評価スケール(0-10と言語学上の反応スケール(なし、軽度、中等度、重度)は頭痛
発作の強さを評価するうえで密接な関係がある(Hershey et al., 2005)が、それらは幼い小児
には適当でない。
15 特に幼い小児では、フェーススケールが好まれる(Champion et al, 2001)
16 時間の概念
自然な時間の理解は小児期後期に発達し、12歳までは小児は物事の持続時間を評価するこ
とができず、物事が起きたからの時間や起きるまでの時間を評価し、12分以内に現在の時間
を評価することができる(Marcon & Labbe, 1990)。
頭痛のある小児は頭痛の痛みの持続時間を評価するのに、家族的な明らかな出来事(好き
な)テレビ番組の長さなど)がわずかな時間の時間の言葉よりも有用である。
17 頭痛の特徴
部位:左側頭部
拍動性
4時間持続
光および音過敏
嘔気(嘔吐はめったにない)
食欲不振
臀部と背部の痛み
横になる必要がある
主な症状:かなりの不安に対する感覚
18 頭痛の特徴:II
しばしば夜に持続
ストレスにより誘発
動きたがらない(スポーツやダンスをやめるなど)
勉強中に集中力を持続するの難しい。
何時間も暗い部屋で横になる必要がある
19 家族歴
母親:過去6か月にgeneralized anxiety disorder●全般性不安障害
父親:反復性腹痛
姉:16歳、無月経
第1,2親等の親戚に片頭痛・頭痛の家族歴なし
20 病歴I
妊娠経過:望まれたもの、正常
分娩経過:在胎41週、正常
出征体重:2700g
いつも抱いていなければならなかった
人工栄養:食欲旺盛
ミルク後の啼泣(gas colics)が頻回
ベットで頻回にビクっとする
おしゃぶりの使用:4歳半
歯のはえはじめ:8か月
肛門括約筋の調節:2歳8か月
睡眠覚醒リズム:まだ不整
21 病歴II
学校への入学:3歳、高度の分離不安あり
感染症の既往なし
6歳で腹痛と食欲不振を主訴に入院
7歳で頭痛で入院
入学時に分離不安(4つの幼稚園を転校)
学校の成績:悪い
22 赤信号I
不適切な既往歴(頭痛とそれに関係する特徴の記述)
対象は非協力的(神経学的検査を完結することができない)
5歳以下(相対的赤信号)
短期間または超短期間の頭痛発作(これらは小児には一般的でない)
局所的な神経学的症状
頭蓋内圧亢進または低下の神経学的症状や兆候(たとえば姿勢により頭痛の増悪)
人格の変化
23 赤信号III
学業の悪化
後頭部の頭痛
咳や身体活動により頭痛が悪化する
頭痛が睡眠中の小児を覚醒させたり、持続する
朝一番に起きる
首や背部に関連した症状
先行する水頭症やシャント
神経学的兆候
24 質問
あなたの診断は?
どんな情報がもっと必要ですか?
どんな検査をおこないますか?
25 検査
1.一般採血検査:問題なし
2.MNR w and w contrast:異常なし
3.神経学的検査:正常
4.アレルギーテスト:異常なし
5.脳波検査:正常
26 診断:レベルI
腹部片頭痛か機能的な腹痛か(反復性腹痛)?
27 周期性症候群I
このグループの疾患の臨床的特徴の鍵となるのは
一時的で、可逆的な、型にはまった発作の性質である。
小児周期性症候群の患児は
発作間欠期は完全に健康であり、それに対して
発作時には非常に具合が悪い。Cuivillier, 2008
28 周期性嘔吐症1.3.1
A. B およびC を満たす発作が5 回以上ある
B. 1 時間~5 日間続く、強い悪心と嘔吐の周期性発作
(個々の患者で毎回同様の発作)
C. 発作中嘔吐は少なくとも4 回_1 時間の頻度で1 時
間以上続く
D. 発作間欠期には無症状
E. その他の疾患によらない(注1)A. 基準B,Cを完全に満たす少なくとも5回の発作
29 小児良性発作性めまい1.3.3
A. B を満たす発作が5 回以上ある
B. 前触れなく生じ数分~数時間で自然軽快する、頻
回・重度の回転性めまい発作(注1)
C. 発作間欠期には神経所見および聴力・平衡機能は正常
D. 脳波所見は正常
30 良性発作性斜頸A1.3.5
A 以下の全ての症状をともなう、特徴的で、Bをすべて満たす若年小児の一過性発作
1.回転を伴って/伴わず、頭部を片側にねじる(いつも同側ではない)
2.数分から数日の持続
3.自然に軽快し、月単位で反復する
B 発作中に、以下の症状に一つ以上を認める。
1.蒼白
2 易刺激性
3 不快感
4 嘔吐
5 運動失調
C 発作間欠期には神経所見は正常
D その他の疾患によらない
31 腹部片頭痛1.3.2
A. B~D を満たす発作が5 回以上ある
B. 1~72 時間持続する腹痛発作(未治療もしくは治療
が無効の場合)
C. 腹痛は次の特徴をすべて満たす
50 国際頭痛分類第2 版
1.正中部、臍周囲もしくは局在性に乏しい
2.鈍痛もしくは漠然とした腹痛(just sore)
3.中等度~重度の痛み
D. 腹痛中、以下の少なくとも2 項目を満たす
1.食欲不振
2.悪心
3.嘔吐
4.顔面蒼白
E. その他の疾患によらない(注1)
注:
1.特徴的なこととして、病歴および身体所見が胃腸疾
患または腎疾患の徴候を示さないか、またはそれらの疾
患を適切な検査により否定できる。
32 小児の慢性腹痛
腹部片頭痛:片頭痛の特徴をもつ機能的な腹痛(食欲不振、嘔気、嘔吐、蒼白と母親に片頭
痛歴に伴う発作性の腹痛)
機能的腹痛:解剖学的、代謝的、感染性、炎症性、新生生物などの病的条件のエビデンスの
ない腹痛
アメリカ小児科学会、2005
33 反復性腹痛
アメリカ小児消化器学会、2011
臨床的な手がかり と 原因
四半部の腹痛 :へそから痛みが離れれば離れるほど、器質的病気であることが多くなる
早朝の痛み、夜、起こされる痛み:消化器官
すぐに満腹になる、嘔気、酸っぱい息、おくび(ゲップ):消化器官
34 反復性腹痛;原因II
差込む痛み、腹部膨満、肉、乳製品、乳製品を含む食品に関連した消化管ガス:乳糖不耐
症、ランブル鞭毛虫症
慢性的咳嗽、喘鳴、喉頭炎などの呼吸器症状:胃食道逆流
35 反復性腹痛;原因III
頻回でない排便、不完全な排気、遺糞、腹部左下四分の一の腫瘤、直腸vaultの硬い便、食
物繊維が乏しく、澱粉の多い食事、腹部膨満:便秘
36 反復性腹痛;原因IⅤ
便中への血液混入:消化管疾患または腸炎症性疾患
発熱、体重減少、身長が伸びない、関節の訴え、発疹:炎症または感染性疾患の経過
体重減少を伴う/伴わない自己誘導される瀉下行動:摂食障害からの胃食道逆流
37 反復性腹痛;原因Ⅴ
体重減少、制限された食行動、左下四分の一腹部の便の腫瘤:摂食障害による便秘
にきびに対する抗生剤投与などの内服;食道炎
特定の身体活動に伴う痛み、運動時の一次筋肉痛:筋挫傷
38 反復性腹痛;原因ⅤI
子宮頚部の運動痛、付属器の筋肉痛、骨盤運動時の付属器腫瘤:骨盤炎症疾患、卵巣嚢
腫、子宮外妊娠
のどや皮膚(四肢、顔面、生殖器)の一時的な腫脹:遺伝性血管腫
39 反復性腹痛の生理
ストレスで増悪する
中枢神経で惹起され、神経ペプタイドや神経伝達物質を放出し、胃食道の異常調節をおこす
多くの人はストレス下で何らかのタイプの腹部苦悶を経験するが、反復性腹痛の人はストレス
に対し違った反応を示し、対処メカニズムの不適応があるのかもしれない。
Weydert 2003, Cuvellier 2010
40 重度の慢性疼痛に高度に障害された小児の特徴:2249名の小児疼痛患者の5年間後方視的
研究 Boris Zernikow et al 2002
緊張型頭痛(48%),片頭痛(43%)、機能的腹痛(11%)が合併率の高い共存症として最も一
般的な診断で、18%は筋骨格系疼痛の形であった。
55%の小児は一つ以上の疼痛疾患に罹患していた。
41 Zernkow et al 2012, II
臨床的に抑うつと一般的な不安スコアがそれぞれ患児で24%,19%と有意に上昇していた。女
児は13歳をこえると男児に比較して三次治療が求めているようだった。
42 年齢、性別の慢性疼痛の小児の分布
43 反復性腹痛
腹痛の診断:501,22.3%
機能的腹痛:253, 11.2%
心身症的、精神的要因のある慢性疼痛(痛みは腹部):204, 9.1%
機能性腹痛よりは機能的消化管疾患に関連した腹痛:27. 1.3%
44 腹部片頭痛の治療
薬物療法は食欲不振や嘔吐によりしばしば不可能であるが、単純な経口の鎮痛剤、メトクロ
マイドやドンペリドンなどは試みても良い。
鎮痛剤や制吐剤の坐剤もまた有効である。
静脈注射や経鼻のスマトリプタンを上手く用いた研究者もいるが、この治療は正式な審判は
経ていない
ある一つの研究ではバルプロ酸の静脈注射が腹部片頭痛発作治療に有効であったとしてい
る。
45 腹部片頭痛の治療II
pizotifenだけが二重盲検プラセボ対象試験をしている。
プロプラノロールとシプロヘプタジンが支持療法として受け入れられている。
クロニジンやバルプロ酸でいい結果を得ている研究者もいる
46 周期性嘔吐症の治療
うまくいかない治療が続いたり、エピソードが頻回で重症である時、つぎのエピソードを防ぐ毎
日の予防的治療が推奨される。
周期性嘔吐症を治療する予防薬は、抗片頭痛薬、抗てんかん薬、腸蠕動亢進薬(エリスロマ
イシンなど)が含まれる
北アメリカ小児消化器、肝臓、栄養学会はシプロヘプタジンやプロプラノロールを5才以下の
小児に対して第一選択として推奨し、またアミトリプチンやプロプラノールを推奨した。
予防治療はエピソードが月に1回以上の頻度で起き、避ける事ができず、特に重症で、無力
になってしまうときに時正当化される。
47
診断2:本症例を慢性連日性頭痛(CDH; Chronic Daily Headache の症例と考えることができ
るだろうか?(ちなみに診断1は 26 枚目で、本症例は腹部片頭痛あるいは機能性腹痛(RAP;
Recurrent Abdominal Pains)だろうか?)
48
慢性連日性頭痛:診断は、明確な判断ができる質的な指標(明確な発作の症候学的特徴)がな
いことと同等に、ほとんど毎日発作が起こるという頭痛の量的な指標による。
49
慢性連日性頭痛(Hershey AD, Powers SW, Bentti AL, LeCates S, deGrauw TJ. Characterization
of chronic daily headaches in children in a multidisciplinary headache center. Neurology
2001;56:1032–7.)
典型例:月に 15 回程度の頭痛
頭痛は頻回であるが毎日ではない(37.5%)
頭痛は毎日あるが持続性ではない(43.5%)
頭痛は毎日あり持続性である(19.5%)
主に片頭痛型
50
慢性連日性頭痛:Silberstein の分類(1993)
(Silberstein SD. Tension-type and chronic daily
headache. Neurology 1993;43:1644–9.)
第一分類
1. 変容型片頭痛(Transformed Migraine)
2. 慢性緊張型頭痛(Chronic Tension-type Headache)
3. 新規発症持続性連日性頭痛(NDPH; New Daily Persistent Headache)
4. 持続性片側頭痛(Hemicrania Continua)
第二分類
外傷後頭痛(Posttraumatic Headache)、頸椎症(Cervical Spine Disorder)、血管病変に関
連する頭痛、血管病変に関連しない頭痛、そして・・・
51
変容型片頭痛
1. 片頭痛(前兆あり、あるいは前兆なし)の既往
2. 10 代あるいは 20 代に片頭痛を発症し、その後慢性連日性頭痛(CDH)を発症する。片頭痛
と緊張型頭痛両者の特徴を持つ。
3. 頭痛のサブタイプを分類することはしばしば困難
4. 多くの患者で、片頭痛の家族歴、月経による悪化、明確な誘発因子、片側頭痛、がある。
52
慢性緊張型頭痛
1. 繰り返す緊張形頭痛あるいは新規に発症し慢性緊張型頭痛の IHS 基準を満たす。
2. 頭痛は全周性で両側性のことが多い。しばしば前頭部、頸部に頭痛が及び、片頭痛の特徴を
持つこともある。
3. 変容性片頭痛との主な鑑別点は、明確な片頭痛の既往がないことである。
53
新規発症持続性連日性頭痛
1. かなり突発的に発症する。頭痛が始まった日時を覚えていることがしばしば。
2. 頭痛は持続性
3. 片頭痛、あるいは緊張型頭痛の明確な既往がない
4. 本疾患は正確には“片頭痛の特徴をある程度持った慢性緊張型頭痛”と表すのが良いだろう。
5. 変容型片頭痛患者より年齢が若いことが多い。
54
持続性片側頭痛
1. インドメタシンが有効な頭痛症
2. 持続性だが変動する、中等度に重症、サイドが変わる片側性
3. 音・光過敏、嘔気、流涙
4. 首を動かすことで発作は誘発されないが、頸部に圧痛点が出現することがある。
5. 時に自律神経疾患(眼瞼下垂、散瞳、発汗)と関連する。
55
成人の慢性連日性頭痛患者は、頭痛が発症したのは乳児期あるいは思春期であると、しばしば
言及する。
慢性連日性頭痛の臨床的特徴あるいは予後の研究は、一般的な診断基準を欠いている(ため良
くない)。
56
小児期と思春期の慢性連日性頭痛
小児期と思春期の慢性連日性頭痛の症状は年齢による特徴を持っている。
現時点で、成人の特徴と明確な分類はなされていない。
Silberstein モデルを若年症例に適応しても、完全な診断の枠組みにはならない。小児期と思
春期の慢性連日性頭痛に特異的な症候学があるという仮説がある。
57
慢性連日性頭痛の頻度は小児期と思春期でそれぞれ 0.2-0.9%、1.4%である。
成人ではおよそ 2%である。
臨床的特徴
発達の時期(小児期)において、頻回で重症の片頭痛発作が緊張型頭痛の発作にオーバーラッ
プする。発症したときの臨床的特徴は、その後引き続き起こる症状と非常に類似する。
成人では、片頭痛の傾向が徐々に変化し、毎日発症する緊張型頭痛のようになっていくのが、
より典型的な経過である。
58
成人では、鎮痛剤をかなり必要とすることで、頭痛の精査へ続くことが多い。
発達の時期(小児期)では、慢性連日性頭痛と鎮痛薬乱用の関連は、別の観点の議論となる。
原因よりも予防の観点である。Culvillier は成人でも 20%の成人乱用者であるが(多いとい
っているのか少ないといっているのか不明)。
前方視的研究が、鎮痛薬乱用と慢性連日性頭痛の関連という枠組みでなく、成人の慢性連日性
頭痛の予後因子を理解する助けになるだろう。
(以下は著者らの研究内容)
59
対象と方法
86 例の慢性連日性頭痛の患者を調査した(女性 60 例、男性 26 例、平均年齢 12.3 歳、標準偏
差 2.1 歳、範囲 7–18 歳)
対象は我々の頭痛センターをはじめて受診した 571 患者の中から選ばれた。
100 例の患者を無作為に抽出しコントロール群とした:
64 例は片頭痛
36 例は緊張型頭痛
60
すべてのサンプル(571 例)における一次性頭痛の頻度。
慢性連日性頭痛 15%、片頭痛 50%、発作性緊張型頭痛(ETTH)35%
61
慢性連日性頭痛のサブタイプの頻度(86 例、上記 571 例の 15%)
女性 60 例、男性 26 例、平均年齢 12.3 歳、標準偏差 2 歳、範囲 7–18 歳
慢性緊張型頭痛 54%、片頭痛を伴う緊張形頭痛 37%、分類不能 9%
62
精神疾患併存症
上から、複数、単独、なし(サブタイプにより性心疾患併存症の頻度が異なる)
63
慢性連日性頭痛患者における精神疾患の頻度
左から、睡眠障害、調節障害、不安症?、School Ph(phobias で学校恐怖症?)
、気分障害、
チック、どもり
64
2008 年に、ICHD-II 基準で診断される慢性連日性頭痛、81 例中 46 例にインタビューをした(上
記調査からどれくらい時間が経っているのか不明?)。
女性 33 例、男性 13 例、平均年齢 21.8 歳、標準偏差 2.72 歳
65
2008 年までに 46 例中 40 例(87.0%)で改善、3 例(6.5%)で悪化、3 例(6.5%)で不変。
・
19 例は頭痛なし(41.3%)
・
11 例は緊張形頭痛の頻回のエピソード(23.9%)
・
9 例は緊張形頭痛の頻回でないエピソード(19.5%)
・
6 例は慢性緊張型頭痛、うち 1 例は二次性(13%)
・
1 例は前兆を伴わない片頭痛(2.2%)
・
鎮痛剤過剰使用の患者はいなかった
66
4 年ごと 10 年後の比較
Y 軸の単位が分かりませんが(%としてもすべて足すと 100%を超える?)、4 年後にはかなりの
症例が改善しているということでしょうか。
67
慢性連日性頭痛になりやすくなる因子(Sheshia & Grudetti. 2010)
(上部)一次性の繰り返す頭痛、あるいは急性頭痛がその後、慢性連日性頭痛へ移行。
(中央)
慢性連日性頭痛になりやすくなる因子として、遺伝、ストレス、生活スタイル、環境、鎮痛剤
の過剰使用、頭部外傷、性別(思春期後の女性)、不安症、うつ、他の精神疾患。
(下部)慢性
連日性頭痛に関連する疾患群として、精神疾患の併発(特に不安症やうつ)、他の痛みを伴う
疾患?、睡眠障害?、肥満?
68
我々はさらに何を知る必要があるか?
69
質問 1a:なぜ頭痛の頻度が変化するのか?
鎮痛剤の過剰使用?
ライフスタイルの変化?
・
いやちがう。患者は特殊な症例を除いては鎮痛剤を好んでいない。
・
両親は数ヶ月前に少女(患者)の生活の小さな問題として、一緒に住んでいた祖母の死、
に言及した。
70
質問 1b:
・
祖母は家族休暇中になくなった。
・
少女が家に戻ると、祖母を見つけることができなかった。
・
少女が 5 歳の頃から祖母は一緒に暮らしていた。
71
質問 2:関連する疾患はあるのか?
反復性腹痛(RAP)
NB(?)
:頭痛と反復性腹痛は、小児期には最も頻度の高い体の訴えである(Egger、Costello
1990)
72
質問 3:精神疾患の合併について
73
注目してみよう!
・
頭痛の発症と時間の関係:学校に行く前かつ起床後
・
家
族
の
精
神
疾
患
:
父
は
multiple
somatization
(http://www.gpnotebook.co.uk/simplepage.cfm?ID=-46858207)
、母は GAD(Generalized
Anxiety Disorder?:http://www.e-chiken.com/shikkan/gad.htm)
74
注目してみよう!
・
頭痛と片頭痛は(共通して)関連する精神的問題の発現形かもしれない。
・
頭痛の頻度がどの程度 QOL に影響するのか評価してみよう。
75
方法 1
最初の両親との会話。
・
少女も含めて 4 つの会話
・
3 つのフリートーク(祖母の死と学校の成績と健康状態?)
・
1 つのテストの説明(SAFA と CY-bocs?)
76
両親との会話
・
少女の学校の成績にはかなり心配をしている。
・
入眠することと睡眠を維持することが困難であることを強調した。症状は頻回に両親に一
緒に寝てほしいと頼む。
・
両親は娘がただ恥ずかしがり屋なのだと考えている。
・
両親は祖母の死は(娘の症状に)関連しないと考えている。祖母は 68 歳で年老いていた
(から当たり前)。
77
こどもとの会話
・
母親とは少し離れるのを嫌がったが、離れた後は協力的であった。
・
少女はすぐに、両親が祖母のように死んでしまうことを恐れている、と打ち明けた。
・
少女は学校の成績と人間関係(特に二人の先生のうちの一人と)にものすごく悩んでいた。
・
少女は自分の健康状態をものすごく心配していた。
78
自画像
79
樹を書く
80
結果(SAFA)
自画像の結果でしょうか?
普通のレベル(問題ない)
:抑うつ、神経性摂食障害、恐怖症
高いレベル(異常)
:不安、強迫観念、身体化障害
81
結果(CY-bocs;強迫性障害の尺度)
すべての項目で異常高値(→強迫性障害があるということ?)
82
治療
・
少女に対して週に 1 回の認知療法を 6 か月間
・
両親の精神療法を 15 日に 1 回を 6 か月間
・
薬物による予防治療はなし
・
必要時は Paracetamol(アセトアミノフェンのこと)
83
6 ヵ月後のフォローアップ
・
片頭痛の頻度は月に 1 回
・
分離不安症:減少。すぐに入眠できる、他の部屋でも眠れる、夜間に頭痛はない
・
健康への不安:減少。
・
週に 2 回ダンス
・
土曜日は友人と遊ぶ。
・
学校の成績は明らかに改善。
84
結論 1
・
少女は新生時期の活動過剰の典型的側面を持っていた。
・
つねに抱っこしなくてはならなかった。
・
ほ乳瓶からの授乳は旺盛
・
ベッドでは何度もぴくりと驚く
・
胃疝痛
・
S/W サイクル(sleep/wake?)の変化
・
このこと(上記のこと?)は完全に Temperament type B(B 型気質)に含まれる
・
Temperament はこどもがどのように世界にアプローチし、反応するかと いうこと。
Amplifiers(増幅?)!!!
85
結論 2
・
Amplifires は内因性の刺激をうまく取り込む(やりくりする?)能力が低下している(胃
疝痛)
、あるいは環境刺激をうまく取り込む能力が低下している(驚愕症)
、こどもに起こ
る。
・
健常小児の 20%が B 型気質である。
・
すべての種類のストレスは増幅された答え(?)をもたらす?:学業成績として。
・
B 型気質の小児は特に精神疾患にかかりやすい(不安症、抑うつ)
・
Guidetti et al. 1984,2011
86
小児と母親の間に見つかる関連は、乳児期においても、痛み行動の複雑性を強く示す。
個人レベルの活動性(気質)でも、乳児期早期の行動を予測する。
乳児期後期には、痛み行動は、痛みの原因となる母親の反応に、より強く関係する。
Sweet, McGrath, Symons. Pain 1999
87
結論 3
・
強い反応性を持つ乳児は小児期中頃(7 歳頃)に不安症状を呈しやすいことが明らかにな
った。
・
J. Kaga らは、乳児の気質と不安は学童期に表面化する(symptoms は動詞?)。
・
Development and という雑誌
88
結論 4
・
とりわけ、不安・抑うつ症状を小児期に呈するオッズは、高い反応性と避ける気質で(?)
、
倍になる
・
Andrew らの論文名
89
結論 5
・
このことは、少女の基本的な装備(体質?)が遺伝的に影響されていたと説明できる。
・
しかし、今までのストーリーは(病気の発症に)エピジェネティックス因子の重要性を強
く示す。
90
結論 6
・
エピジェネティックスは塩基配列を変えることなしに DNA 構造を変化させる。このことが、
クロマチンのリモデリングをもたらし、遺伝子の発現に影響を与える。エピジェネティッ
クスの部位(?)は動的かつ安定的に遺伝する。それゆえ、エピジェネティックスによる
過程は、細胞(の種類)あるいは(細胞の)発達段階に特異的な遺伝子発現を可能とする。
しかし同時に、環境要因に反応したプログラムが(世代を超えて)続くことに、重要な役
割を果たす。
・
Eising らは片頭痛におけるエピジェネティックスメカニズムという論文を報告した
(2013)
91
結論 7
・
エピジェネティックス機序が片頭痛の病因の一部分にあるだろう。そして、
(そのメカニ
ズムを知ることが)薬物治療の改善に大きく寄与するであろう。
・
スライド 90 と同様に Eising らの論文
92
エピジェネティックスと母親の行動
・
ストレスがエピゲノムに与える影響を評価した最初の報告は、母親のケアが乏しいと(生
後まもなくのストレス)
、糖質コルチコイドレセプター遺伝子 Nr4a3(主要なレセプター)
の脳に特異的なプロモータ領域の DNA メチル化により、ラットの子孫の行動やストレス反
応に末永く影響することを示した。
・
Weaver らの 2004 年の論文
93
結論 8
・
別のいくつかの研究も、生後早期のストレスを、成人のストレスと同様に、長く続くエピ
ジェネティックス変化に影響を与えると報告した(もう少し具体的な記載あり)
。
・
Hunter らの 2012 年の論文
94
図
95
図
片頭痛の起こるメカニズムを遺伝要因、環境要因から説明した図
96
ご清聴ありがとうございました m(_ _)m
頭痛の背景には何があるか、というタイトルで始まり、実際の小児例の提示、鑑別の思考過程
を経て、さまざまな環境要因が原因にあることに掘り下げていっています。背景を探ることに
より、治療はいわゆる頭痛の薬物療法によることなく、精神科的なアプローチで著効している
ことが印象的でした。最終的には、ここ最近のはやりのエピジェネティックスに話が到達して
います。
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