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1.グリーン・ツーリズムの 意味と背景 2.取組事例

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1.グリーン・ツーリズムの 意味と背景 2.取組事例
谷さんは、平成14年度食アメニティ・
コンテストで優良賞を受賞されていま
す。また、渋谷さんの先駆的な取組み
は、地域の内外に大きな勇気と希望を
与え、その後、宮城県における農家レ
ストランの開業は40軒以上にのぼって
いるということです。さらに、渋谷さ
んは農家レストラン開設を機に、蛍を
見る会、雪を愛でる会、月見の会など
四季折々の農村景観を活かした様々な
催し物の開催や、子ども達の農作業体
●各国における呼称
験にも取り組まれ、今では地域の人達
イギリス……グリ−ン・ツ−リズム、ル−ラル・ツ−リズム
フランス……ツ−リズム・ベ−ル(緑の旅行)
イタリア……アグリ・ツ−リズム
日 本……グリ−ン・ツ−リズム
私は仕事上「グリ−ン・ツ−リズム」
す。実際にお会いしてみると、飾らな
2.取組事例
さらに、八尾町では、「越中八尾ス
場を舞台に、音楽が好きな者は音楽会
いあけっぴろげな人柄の渋谷さん。そ
ロ−タウン特区」として構造改革特区
を、劇が好きな者は演劇会をという感
の渋谷さんの言葉で大変感銘を受けた
の認定を受け、地域を挙げてグリ−
じで、自分達で企画し、自分たちで楽
ものがあります。
という言葉をよく使います。とやまグ
どを通じて、地域の人々と交流し、余
こうした時代の空気を活かし、本県
リ−ン・ツ−リズム推進プラン、全国
暇活動を楽しむものということになり
においても、県内各地でグリ−ン・
ン・ツ−リズムに取り組んでいます。
しむいろんな催し物が行われました。
「何でもいいから一歩でも動き出せ
グリ−ン・ツ−リズム研究大会…etc。
ます。
ツ−リズムは取り組まれています。た
一方、全国に目を転じると、たとえば
やがて、田舎に面白いものがあるぞ、
ば、本当に違ってきます。本当にひと
しかし、自分が思うほどには世の中の
近年、都市住民を中心にこのグリ−
とえば、氷見市長坂では、都市住民な
大分県安心院町における農家民泊や宮
ということで都市の人達が集まり出し、
つの仕事、ひとつの階段をちょっと上
人達は、グリ−ン・ツ−リズムという
ン・ツ−リズムに対する関心が高まり
どを対象にした「棚田オ−ナ−制」が
崎県西米良村におけるワ−キングホリ
遊び場はいろんな職種の人達の交流の
がるだけで風もすごく違いますし、物
言葉を知らないのでは、とふと考えた
を見せ、農山漁村地域ではこれに取り
行われています。これは、都市住民が
ディ−(3日から1週間程度、地域の農作業な
場となっていきました。渋谷さんはそ
事を見る視線も違ってくるのです。す
りもします。何のこと?グリ−ンも分
組もうとする動きが広がっています。
棚田のオ−ナ−となって田植えや稲刈
どを手伝い、賃金を得、滞在費を稼ぎながら地
うした交流を通して、都市住民の食へ
ると、生きることも結構面白いなと思
かるし、ツ−リズムも分かる。だけど、
こうした双方のニ−ズを繋ぐことによ
を体験し、収穫された米を郵送しても
域と交流する制度)の取組みなど、先進的
の関心が高いことを知り、生産現場か
うようになるのです。そしてそう思う
繋ぐと分かんない…そんな困惑顔が頭
って農山漁村地域の活性化を図ろうと
らうという制度です。この制度により、
な事例がいくつもあります。そうした
らの食の提案、地元食材のPRを思い
人がこの地域に多くなると、もっとも
の中をちらつきます。そこで、今回、
する活動が全国各地で行われており、
棚田が保全されるとともに、交流を通
中から、宮城県小野田町で農家レスト
つき、平成8年レストランへの展開を図
っと地域が面白くなり、他の人達もひ
グリ−ン・ツ−リズムとは何か、につ
グリ−ン・ツ−リズムは過疎化、高齢
して地域が活性化されるという効果が
ラン「ふみえはらはん」を経営してお
ることとされました。これが農家レス
とつ覗いてみようかなという気持ちに
いて考えてみたいと思います。
化の進行する農山漁村地域の元気づく
生じます。また、朝日町蛭谷には、
られる渋谷文枝さんの取組みを紹介さ
トラン「ふみえはらはん」のはじまり
なるのだと思います。
」
せていただきます。
です。「ふみえはらはん」での料理の食
力説することなく、押し付けがまし
りの有効な施策のひとつとして注目さ
「夢創塾」というものづくり体験塾が
れています。このようなグリ−ン・
あります。この体験塾は、行政などか
「ふみえはらはん」とは、築180年
材は、アイガモ農法による有機米や自
くもなく、淡々と渋谷さんはそう語ら
ツ−リズム志向の高まりの背景には、
らの支援は一切受けず、長崎喜一さん
以上になる母屋を改築し、古い食器を
家野菜、地元で採れる山菜、川魚であ
れました。
「物質的豊かさ」より「ゆとり」「やす
を中心とした地域の方々の力で運営さ
活かした、伝統食や独自のアレンジ食
り、その料理センスは素晴らしく、渋
グリ−ン・ツ−リズムとは、
「緑豊か
らぎ」「いやし」といった「心の豊か
れており、炭焼き、和紙づくりなど
を提供する農家レストランのことです。
な農山漁村地域において、その自然、
さ」や「本物であること」「素である
様々なものづくりを体験しようと毎年
名称の由来は、渋谷さんの名前(文枝)
文化、人々との交流を楽しむ滞在型の
こと」を求める人々の価値観の変化が
多くの人で賑わっています。昨年、神
と地域の古い呼称である「はらはん」
(平成4
余暇活動」と定義されています。
あるのではないかと言われています。
奈川県向上高校の生徒が修学旅行で訪
を組み合わせたものです。もともとこ
れ、大変好評だったと聞いています。
の地域の人達は、渋谷さんの家をお茶
1.グリーン・ツーリズムの
1 意味と背景
年農林水産省「グリ−ン・ツ−リズム中間報告」
)
26
(3)直売市や農家レストランの利用な
を巻き込んだ大きな活動となっていま
宿坊の棚田(山田村)
詳しく言えば、都市住民などが農山漁
立山町では、“外国人サミット”を
飲み場にしていました。平成7年母屋を
村に滞在し、
(1)田植え、稲刈、地引網
開催するなど外国人をタ−ゲットにし
改築し、自分達の遊び場を造ろうとい
等の農林漁業体験、
(2)山、川、森とい
たグリ−ン・ツ−リズムに積極的に取
うことになり、翌年皆の力で遊び場は
った自然や伝統文化とのふれあい、
り組んでいます。
完成しました。そしてその新しい遊び
そばオーナー園(南砺市利賀村)
27
資料1:
「都市との交流による農山漁村地域の活性化に関する条例」の
基本目標と2つの柱
資料2:重点地域指定の概要
資料3:重点地域支援事業の概要
◆手続き
項
この条例は、富山県議会初の議員提案によるものであり、都市農山漁村交流に関す
市町村長は、交流地域活性化を推進する上で重要と認められる地域があるときは、
るものとしては、おそらくは全国最初の条例です。
知事に対し、当該地域を重点地域として指定するよう申し出ることができます。知
内 容 目
事業目的
重点地域として指定された地域における都市農山漁村交流に関する取組みを
支援し、農山漁村地域の活性化を図るもの
事は、規則で定める指定基準に適合しているときは、これを指定します。
事 業 名
とやま都市農山漁村交流活性化支援事業
1)農山漁村及び農林漁業が持っている多面的機能の維持向上と農山漁村地域の活性
化
◆規則で定める重点地域指定基準
事業主体
市町村又は推進組織
2)交流施設の整備などによる就業の場の確保と地域住民の生活の安定向上
1)農山漁村地域であり、かつ、交流地域活性化を推進する上で重要と認められる集
補 助 率
補助対象事業費の1/2以内
補助期間
1地区2年間
補助対象事業
市町村が事業を実施するために必要となる次に掲げる経費、並びに推進組織
が事業を実施するために必要となる次に掲げる経費に対し市町村が補助する
場合における当該補助に要する経費
◆ 3つの基本目標
3)農林漁業などに関する教育の普及による農山漁村の多面的機能への県民理解の深
落以上の規模のまとまりのある地域であること。
2)当該地域内に交流地域活性化に資すると認められる資源があること。
化と郷土愛の育成
3)交流地域活性化に関する活動を推進するために必要な体制が整備されている
◆ 2つの柱
1)柱の1…重点地域の指定
こと。
重点地域の指定を通して、都市農山漁村交流による地域の活性化を効果的に推進
し、県内のモデル地域として発信していくという趣旨です。
◆ 平成16年度指定重点地域
富山市水橋、池多、高岡市北部、氷見市八代、黒部市前沢、砺波市栴檀山、立山
町東谷、朝日町大家庄、八尾町大長谷
2)柱の2…NPO法人「交流地域活性化センタ−」の指定
条例では、都市農山漁村交流を推進するにあたり、申出により県内にひとつだ
け「交流地域活性化センタ−」を指定することになっています。都市農山漁村
1.実践活動事業
(1)備品、消耗品の購入費 計9地域
(2)広報宣伝費
(3)会場、機械等の借上費
※重点地域の指定を受けると「とやま交流地域活性化支援事業」による支援が実施
されます。
(4)講師への謝礼
(5)活動参加者等に対する傷害保険料
交流を役所主導ではなく、NPO法人など民間の方々の自由で、柔軟かつ独創的
(6)その他知事が適当と認める経費
な発想によって、推進していこうという趣旨です。
2.実践活動条件整備事業
(1)案内看板の設置
3.県の施策
全国的にグリ−ン・ツ−リズム推進
(2)コ−ディネ−タ−、インストラク
(2)テ−ブル、ベンチの設置
が持っているグリ−ン・ツ−リズムに
タ−をはじめとする人材の育成と
対する基本的なイメ−ジです。でも、
派遣
それってホント?グリ−ン・ツ−リズ
機運が高まる中、富山県では平成15
(3)イベント、グリ−ン・ツ−リズムツ
ムって、本当に良いことずくめなの?
年3月に、「都市との交流による農山漁
ア−コ−スの設定などを通じた都市
そんな疑問を感じる人もいるかもしれ
村地域の活性化に関する条例(条例の基
住民への広報
ません。安く泊めた上、農作業の邪魔
(3)その他知事が適当と認める経費
3.推進組織運営事業
(1)会議費
(2)アドバイザ−等の派遣費
(3)技能修得研修への参加費(旅費を除く)
(4)その他知事が適当と認める経費
夢創塾
による農林漁家所得の向上
●郷土料理・郷土芸能・祭りの復活と
姿勢ではないでしょうか。グリ−ン・
さあ、皆さんもこうした考え方をベ−
ツ−リズムにおける個人が受け取る金
スにグリ−ン・ツ−リズムによる地域
銭的な利益は、廉価な宿泊料、体験指
の元気づくり、はじめてみませんか!
本目標と2つの柱:資料1)」を制定し、こ
(4)交流メニュ−の企画提案、県民等か
をされるだけとか、勝手気ままな都市
の条例に基づき、平成16年度には県
らの各種相談などグリ−ン・ツ−リ
住民に振り回されるのはたまらないと
内の9地域 (資料2) を重点地域として
ズム総合支援窓口としての交流地域
か、そんな声が聞こえてくるような気
●来訪者の地域内消費活動
導料など僅かなものだと思います。観
ほら、どこかから楽しそうな議論がも
指定するとともに、サポ−ト機関の構
活性化センタ−の機能強化
がします。確かにそのようなこともあ
以上のような効果を通して、地域が経
光事業的な感覚で捉えると割に合わな
う聞こえてくるようですね。
ると思います。ただ、どうでしょう。
済的にも活性化されると提言していま
い事業といえるでしょう。だからこそ、
「埋もれてしまっている祭りはない
グリ−ン・ツ−リズムを地域の元気づ
す。さあ、どうでしょう。一歩踏み出
眉間に皺寄せていては、疲れてしまう。
か、棄て去ってしまった伝統の技はな
築を目的として、NPO法人「グリ−
ンツ−リズムとやま」を「交流地域活
(5)重点地域指定による地域活動への
支援(資料3)
事業化
性化センタ−」に指定しました。グ
等の施策を積極的に展開し、本県のグ
くりという視点で捉え直したら、そん
すことが大切なのではないでしょう
また、ビジネスと捉えてしまうと、グ
いか、その昔メダカが泳ぎ、ホタルが
リ−ン・ツ−リズムにおいては、地域
リ−ン・ツ−リズムを推進していきます。
な意見も多少は変わるのではないでし
か。自発的に集まった人達が、地域の
リ−ン・ツ−リズム本来の魅力である
舞っていた俺達の田舎。それらを蘇ら
の人達の主体的な取組みが何よりも大
ょうか。(財)都市農山漁村交流活性化
資源を見つめ直し、自分達にできる範
“素である”ということが摩耗してし
せ、昼は一緒に稲刈、夜は囲炉裏端で
切であると考えています。このため、
機構が編集した「地域ぐるみグリ−
囲で協力し合い、他にない自分達ブラ
まう。そうならないためにも、のびの
おしゃべりタイム。やってみようじゃ
4.グリーン・ツーリズムと
地域の元気づくり
ン・ツ−リズム運営のてびき」によれ
ンドのグリ−ン・ツ−リズムを企画
びとした遊び心と身の丈に合った視
ないか」
ば、グリ−ン・ツ−リズムによる地域
し、都市住民に発信する。そして、そ
点、そしてこの“ちょっとした”とい
(1)ホ−ムペ−ジ(GTナビゲ−タ−)やパ
「ふるさと」や「朧月夜」などで歌
の総合的な経済効果を次のようにまと
の企画が魅力的で面白いものであれ
う感覚が重要ではないかと思います。
ンフレット等による県内外の交流情
われる美しい農村の風景。私が持って
めています。
ば、前述の渋谷さんの取組みのように
報の提供 いるビデオ「美しい日本の歌」全8巻に
●農林漁業体験や産地直売活動による
人は自然と集い、地域が活性化し、キ
県としては、こうした取組みがうまく
立ち上がり、根付くように、
は、そんな農村風景が時々登場します。
しかし、ビデオで描かれたほどではな
くても、緑や林、せせらぎなどの名も
ない、ありふれた資源とふれあい、そ
こに住む人達との交流を通して、お互
いがリフレッシュし、元気になる。私
28
農林水産業の高付加価値化
●農林水産加工や伝統工芸の復活と体
験の事業化
●地域の廃屋・廃校・荒廃農地など既
存資源の有効活用
●農家民泊や農林水産物直送契約など
ラリと輝き出すのです。グリ−ン・
ツ−リズムが地域の元気づくり施策の
PROFILE
ひとつとして注目されている所以だと
石田 良樹(いしだ よしき)
1951年生まれ.。
出納課、高岡県税事務所等を経て、現在、農村環境
課副主幹。
趣味はドキュメンタリ−を観ること。ケ−ブルテレ
ビなども含め、番組欄のチェックと予約録画が朝の
日課。
思います。ただ、その際大切なのは、
ちょっとした勇気と時間を持ち寄り、
ちょっとした収入と元気を貰うという
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