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特別講演 独創賞発表・講演 - 日本認知心理学会ホームページ

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特別講演 独創賞発表・講演 - 日本認知心理学会ホームページ
特別講演
Suppressing Unwanted Memories: Cognitive and Neural Systems
5 月 28 日(土) 16:15∼17:30
部屋:A1018
講演者:M. C. Anderson
University of Oregon
司
会:川口潤(名古屋大学)
講演の内容
People are often confronted with reminders to memories they would prefer not to think about. When
this happens, they may try to put the unwanted memories out of awareness. In this talk, I review
research showing that our ability to control unwanted memories is implemented by executive control
mechanisms that are not limited to controlling memory, but that are essential to overriding prepotent
responses more generally. In response override situations, one must stop a strong habitual response to a
stimulus when it is not desired. Overriding such a response is accomplished by inhibitory processes that
suppress it, enabling flexible control over behavior. A core theme advanced here is that inhibitory
mechanisms that control overt behavior are also targeted at declarative memories. In support of this, I
will review work on how people use inhibition to control retrieval. Recent neuroimaging findings
further establish that controlling conscious awareness of unwanted memories engages the dorsolateral
prefrontal cortex to reduce activation in the hippocampus, impairing later memory of the unwanted
trace. Interestingly, the magnitude of activation in prefrontal cortex predicts individual differences in
suppression, as do individual differences in executive function tasks. These findings indicate that
cognitive and neural systems that have evolved to override prepotent responses are also recruited to
override unwanted memory retrievals, and that this cognitive act leads to cases of motivated forgetting.
主な著書・論文
Anderson, M.C., Ochsner, K.N., Kuhl, B., Cooper, J., Robertson, E., Gabrieli, S.W., Glover, G.H.,
Gabrieli, J.D.E. (2004). Neural systems underlying the suppression of unwanted memories. Science,
303, 232-235.
Anderson, M.C. (2003). Rethinking interference theory: Executive control and the mechanisms of
forgetting. Journal of Memory and Language, 49, 415-445.
Anderson, M.C., & Green,C. (2001) Suppressing unwanted memories by executive control. Nature,
410, 366-369.
など多数.
独創賞発表・講演
5 月 29 日(日) 13:30∼14:30
部屋:A101
日本認知心理学会では,日本から発信する独創的な研究の数を大幅に増やすことを目的として
「独創賞」を創設いたしました.本年度は,複数の評価委員の独創性評価にもとづいて,選考
委員会が慎重に選考をおこなった結果,戸田正直氏(元北海道大学,元中京大学)のアージ理
論が受賞となりました.本大会においては受賞講演を予定しています.
司
会:高野陽太郎(東京大学・日本認知心理学会独創賞選考委員長)
-1-
シンポジウム 1
時間・空間・感動:
その緩慢な獲得と喪失を考える
5 月 28 日(土) 9:45∼11:45
部屋:A201
企画・司会者:齋藤洋典(名古屋大学大学院情報科学研究科)
話題提供者
柏木浩一(兵庫県立大学人間環境学部)
「建築と空間の視点から」
城川哲也(日本福祉大学情報社会学部)
「脳と加齢の視点から」
和気典二(中京大学文学部)
「視覚と触覚の視点から」
指定討論者
仁平義明(東北大学大学院文学研究科)
企画概要
認知心理学は,長らく一瞬に立ち現れるもの,あるいは瞬時にして失われるものごとに関心を
向け,その説明にずいぶんと腐心してきた.
他方,緩やかに蓄積され,つながりゆくものごとが,緩やかに失われ始めたときに,ある日愕
然として,ただ立ちつくすばかりの私たちがいる.それらの喪失が仮に一瞬であったとしても,
その意味を理解することに長い時間と広い空間を必要とする.
閃光や鋭く走る痛みのように刹那の変化の大きさとその印象深さに比べると,緩慢な獲得と喪
失は,微弱なものとして看過される.だが,ゆっくりと広がる時空に起こる変化の彼方に,し
みじみとした感動が生まれる.
刹那の変化に培われた性急な説明は,緩慢な獲得と喪失に対して,時に無力である.確かに,
学習,発達,加齢,そしてその対極にある喪失は,一瞬にして認知されねばならぬ.だが,そ
うした事実に自分をすりあわせるにはずいぶんと時間とそれを解きほぐす空間とを要する.
認知心理学は,こうした緩慢な獲得と喪失に対して,いかなる説明を蓄えてきたのか.
シンポジウム 2
認知的社会心理学の現在
5 月 28 日(土) 12:45∼14:45
部屋:A201
企画・司会者:唐沢 穣(神戸大学文学部)
話題提供者
北村英哉(東洋大学社会学部)
潮村公弘(岩手県立大学社会福祉学部)
内田由紀子(甲子園大学人間文化学部)
-2-
指定討論者
村田光二(一橋大学大学院社会学研究科)
川口 潤(名古屋大学大学院環境学研究科)
企画概要
行動主義全盛の時代にあっても対人印象や態度など人間の内的表象システムを積極的に前提
とした経緯を持つ社会心理学は、
「当初から認知的であった」と指摘される。その傾向は原因
帰属研究や情報処理論的アプローチを採ることが盛んになって以降、より明確である。近年さ
らなる転換を示す社会的認知研究の最新動向について議論することが、このシンポジウムのね
らいである。話題提供者には、人の行動を導く目標・意図・動機づけなどが従来考えられてい
たよりも無意識的に駆動し行為選択的に影響すること(北村氏)、また集団間認知や自己に関
する認知について自動的・統制的過程の比較にも触れながら(潮村氏)
、そして、自己と他者
に関する理解が返報性の期待に基づいて文化的に共有されたものである可能性について(内田
氏)、それぞれ各自の実証的研究成果をもとに議論していただく。認知と社会の相互的関係に
ついて活発な議論を展開したい。
シンポジウム 3
心, モデル, データ:心は本当にわかるのか
5 月 28 日(土) 15:00∼16:00
部屋:A201
企画者:川口 潤(名古屋大学)
司会者:原田悦子(法政大学)
話題提供者
豊田弘司(奈良教育大学)
「実験データからみる」
三輪和久(名古屋大学)
「認知科学からみる」
戸田山和久(名古屋大学)
「科学哲学からみる」
企画概要
近年の認知研究の進展により,心の機能の解明に向かって多様な手法が用いられるようになっ
てきている.実験心理学的手法,コンピュータモデルを念頭に置いた手法,脳活動の測定,あ
るいは,ロボットを用いた研究もあり,心を知るための「ツール」は豊富に用意される時代と
なった.しかし,それらのツールを用いた研究によって,心のどの部分が明らかになるのか,
あるいはどの部分は明らかにならないのか,といった議論はあまりなされていないように思わ
れる.本シンポジウムでは,実験心理的アプローチ,認知科学的アプローチ,科学哲学による
アプローチの3つの視点から,心を理解するための目標と制約について考えてみたい.時間が
短いため,結論は得られないとしても,多様な心の解明手法が目指すものを再考するきっかけ
にできればと考えている.
-3-
シンポジウム 4
記憶を測る
5 月 29 日(日) 9:30∼11:30
部屋:A201
企画者:箱田裕司(九州大学)・仁平義明(東北大学)
司会者:箱田裕司(九州大学)
話題提供者
佐久間尚子(老人研)
「エイジング研究から見た記憶測定の問題」
神尾陽子(九州大学)
「自閉症研究から見た記憶測定の問題」
梅田聡(慶應義塾大学)
「記憶障害研究から見た記憶測定の問題」
指定討論者
仁平義明(東北大学)
太田信夫(東京福祉大学)
企画概要
知的障害、加齢に伴う記憶能力の低下を測定する道具として、世界中で様々なテスト、検査が
使用されている。しかし、国内の研究の現状を見る限り、十分な標準化がなされないまま、研
究者それぞれが各人の研究目的に応じて、多くの場合、既存の記憶検査法を、あるいは自らが
開発したものを使用しているのが現状である。今後、諸外国に例を見ないほどの速度で高齢化
が進むわが国おいて、記憶の測定技術の確立・標準化の問題は、認知心理学会が取り組むべき
重要な問題であると思われる。本シンポでは、まず測定技術の現状について把握するために、
加齢研究、記憶傷害研究、自閉症研究に携わっておられる研究者にそれぞれの領域における「記
憶測定」について話題提供していただくことによって、現状についての共通理解を図るととも
に、認知心理学会が取り組むべき問題について明確化したい。
シンポジウム 5
画像認知の新展開:知覚的完成化と視覚美
5 月 29 日(日) 14:45∼16:45
部屋:A201
企画・司会者:松川順子(金沢大学)・行場次朗(東北大学)
話題提供者
川畑秀明(鹿児島大学)
野口 薫(日本大学)
渡辺 茂(慶応義塾大学)
-4-
指定討論者
松川順子(金沢大学)
行場次朗(東北大学)
企画概要
企画者らはこれまで断片図形の認知や知覚的補完の問題に携わってきた。そこではボトムアッ
プ処理とトップダウン処理の相互関与が議論されてきたが、最近、画像がもたらす視覚美の問
題を考慮にいれないわけにはいかなくなった。それには今回、お招きした3氏の影響によると
ころが大きい。野口氏はトップダウン・ボトムアップの二分法を越えた第3のアプローチとし
て、実験現象美学を唱え、ゲシュタルトとして錯視図形の美しさを測定し、錯視量と比較する
研究を独自に展開している。川畑氏は神経美学を創始した S. Zeki 博士と共同で、絵画知覚と
美の脳内機構に関する論文を最近は発表した。今回は、画像の曖昧性の認知と視覚美について
話題提供をしていただく予定である。渡辺氏は、御存じのように、ハトがピカソの絵とモネの
絵などを区別できることを示して、イグノーベル賞を 1995 年に受賞された。今回は、比較神
経科学の観点から、動物や子供の絵画知覚について、神経美学・進化・学習などとの関連から
お話いただく予定である。以上のように、本シンポジウムでは、不安定な画像刺激から完全で
美しい形態やシーンを知覚するプロセス、「未完の美」の問題、動物も美を感じるかなどのテ
ーマについて、フロアの方々もご一緒に討論を深めていきたいと考えている。
-5-
研究発表
#は非会員
口頭発表
5 月 28 日(土) 9:45∼11:30 口頭発表 1 記憶 1 部屋:L204
座長:川崎弥生・作田由衣子
o1-01
9:45-10:00
Remember/Know 手続きを用いた手がかり再生の記憶高進
筑波大学心理学研究科
o1-02
10:00-10:15
林美都子
日本人大学生の英単語の虚再生:直後と遅延の再生の比較から
神戸女学院大学大学院人間科学研究科
○川崎弥生
同志社大学社会学部
o1-03
10:15-10:30
井上智義
作動記憶負荷の長期的効果
慶應義塾大学大学院社会学研究科
佐々木尚
o1-04
10:30-10:45
感情が自伝的記憶の想起に及ぼす影響 自己知識の構造に注目した検討
日本学術振興会
東京大学大学院教育学研究科
榊美知子
o1-05
10:45-11:00
正立顔と倒立顔における印象と再認記憶の比較̶顔の性差に注目して̶
o1-06
11:00-11:15
東北大学大学院文学研究科
○作田由衣子
東北大学大学院文学研究科
行場次朗
イメージ統合過程における保持と処理の関係
中京大学心理学研究科
○成本忠正
中京大学心理学部
11:15-
牧野義隆
討論
5 月 28 日(土) 12:45∼14:15 口頭発表 2 神経科学
部屋:L204
座長:乾敏郎・西野由利恵
o2-01
12:45-13:00
音韻系列予測と音韻系列生成機構:fMRI による検討
京都大学大学院情報学研究科
○林 佐和
京都大学大学院情報学研究科
乾 敏郎
京都大学大学院情報学研究科
杉尾武志
-6-
o2-02
o2-03
o2-04
o2-05
13:00-13:15
13:15-13:30
13:30-13:45
13:45-14:00
音韻系列学習による文脈依存的な予測処理機構の検討
京都大学大学院情報学研究科
山村千草
京都大学大学院情報学研究科
○乾 敏郎
京都大学大学院情報学研究科
杉尾武志
3次元物体認知のボトムアップ/トップダウン処理に関わる脳部位
ATR 人間情報科学研究所
○西野由利恵
ATR 人間情報科学研究所
#安藤広志
視覚誘導運動における運動予測と視覚フィードバックの影響
京都大学大学院情報学研究科
○小川健二
京都大学大学院情報学研究科
乾 敏郎
京都大学大学院情報学研究科
杉尾武志
fMRI による共感覚計測:色聴者の音楽視聴時の V4/V8 活動
関西学院大学理工学部
○横井真一
関西学院大学理工学部
長田典子
京都大学大学院情報学研究科
杉尾武志
宝塚造形芸術大学
#井口征士
京都大学大学院情報学研究科
14:00-
乾 敏郎
討論
5 月 28 日(土) 14:45∼16:00 口頭発表 3 問題解決
部屋:L204
座長:山祐嗣・伊東裕司
o3-01
14:45-15:00
曖昧性がコントロールの錯誤生起に与える影響
−判断型の分類による探求−
神戸女学院大学大学院人間科学研究科
o3-02
15:00-15:15
義務論的条件推論における追加必要条件の効果
神戸女学院大学人間科学部
o3-03
o3-04
15:15-15:30
15:30-15:45
足立邦子
山 祐嗣
幼稚園児の分数理解
東北大学
○馬場伊美子
東北大学
岩崎祥一
カウント課題における方略選択の合理性と適応性
慶應義塾大学大学院社会学研究科
慶應義塾大学文学部
○渡辺彩香
伊東裕司
-7-
15:45-
討論
5 月 28 日(土) 14:45∼16:00 口頭発表 4 知覚・運動
部屋:L206
座長:福井隆雄・近江政雄
o4-01
o4-02
o4-03
o4-04
14:45-15:00
15:00-15:15
15:15-15:30
15:30-15:45
15:45-
視空間情報の知覚 ─運動系における変換処理の selective shaping
EWS 実用科学研究センター基礎部門
○北守 昭
EWS 実用科学研究センター基礎部門
#北守敦子
到達把持運動の速度による視覚情報利用の時間変化
京都大学大学院情報学研究科
○福井隆雄
京都大学大学院情報学研究科
乾 敏郎
到達把持運動の制御モデル:スピードと精度のトレードオフ
京都大学大学院情報学研究科
○竹村尚大
京都大学大学院情報学研究科
乾 敏郎
京都大学大学院情報学研究科
福井隆雄
フィードバックの質の違いによる脳活動の変化
金沢工業大学
○近江政雄
名古屋工業大学
#舟橋健司
名古屋工業大学
#久保谷太亮
金沢工業大学
#塚原大祐
討論
5 月 29 日(日) 9:30∼11:15 口頭発表 5 社会的認知・認知的加齢
部屋:L204
座長:熊田孝恒・原田悦子
o5-01
9:30-9:45
高レベル放射性廃棄物地層処分をテーマとする Web リスクコミュニケーシ
ョンモデルの開発と実験
関西電力(株)原子力事業本部
○久郷明秀
京都大学大学院エネルギー科学研究科
#宇田旭伸
京都大学大学院エネルギー科学研究科
#今木智隆
京都大学大学院エネルギー科学研究科
#下田 宏
大阪大学大学院基礎工学研究科
#伊藤京子
京都大学大学院経済研究科
#若林靖永
京都大学大学院エネルギー科学研究科
#吉川榮和
-8-
o5-02
9:45-10:00
「意図をもれなくくみ取る為のリスクコミュニケーション支援の研究」
独立行政法人産業安全研究所
○齋藤耕一
独立行政法人産業安全研究所
#大幢勝利
明治学院大学法科大学院
#櫻井成一朗
東京工業大大学知能システム専攻
o5-03
10:00-10:15
寺野隆雄
役割期待に基づくコミュニケーションが信念に与える影響
神戸大学大学院文化学研究科
○菅さやか
神戸大学大学文学部
o5-04
o5-05
o5-06
10:15-10:30
10:30-10:45
10:45-11:00
唐沢 穣
広告反復呈示とリスク情報が商品の安心感と購買意図に及ぼす効果
京都大学大学院教育学研究科
○松田 憲
京都大学大学院教育学研究科
楠見 孝
ユーザビリティ評価のための高齢者の注意・遂行機能評価テストの作成
産業技術総合研究所
○熊田孝恒
産業技術総合研究所
#北島宗雄
産業技術総合研究所
#小木 元
産業技術総合研究所
#赤松幹之
JR東日本研究開発センター
#山崎 博
エラー反復のメカニズムと注意機能
法政大学社会学部
○原田悦子
中央大学大学院文学研究科
11:00-
須藤 智
討論
5 月 29 日(日) 11:30∼12:45 口頭発表 6 言語 部屋:L204
座長:乾敏郎・伝康晴
o6-01
11:30-11:45
発達的制約からみた幼児音化:構音学習モデルを用いた定量的な検討
京都大学大学院情報学研究科
京都大学大学院情報学研究科
日本電信電話株式会社
NTT コミュニケーション科学基礎研究所
日本電信電話株式会社
NTT コミュニケーション科学基礎研究所
-9-
○井尻昌範
乾 敏郎
#天野成昭
#近藤公久
o6-02
o6-03
11:45-12:00
12:00-12:15
段階的に統語規則を獲得するニューラルネットワークモデル
京都大学大学院情報学研究科
○森藤大地
京都大学大学院情報学研究科
乾 敏郎
文脈は内容より強し?
千葉大学文学部
o6-04
12:15-12:30
12:30-
伝 康晴
ウソはどのような言語内容から判断されるのか?
東北大学文学研究科
○佐藤 拓
東北大学文学研究科
菊地史倫
東北大学文学研究科
仁平義明
討論
5 月 29 日(日) 11:15∼13:00 口頭発表 7 知覚・注意
部屋:L206
座長:石松一真・小林剛史
o7-01
11:15-11:30
画像特徴量の局所的相関を利用したシーンのカテゴリ認識モデル
京都大学大学院情報学研究科
京都大学大学院情報学研究科
科学技術振興機構
o7-02
o7-03
o7-04
o7-05
11:30-11:45
11:45-12:00
12:00-12:15
12:15-12:30
○鷲野浩之
齋木 潤
2 種の alignment effect と方位感覚の関係
法政大学社会学部
○新関亮太
法政大学社会学部
原田悦子
聴覚的な注意分割課題を用いた意味活性化の検討
名古屋大学大学院環境学研究科心理学講座
○大塚幸生
名古屋大学大学院環境学研究科心理学講座
川口 潤
視覚的移動フレームが目標探索に与える効果
産業技術総合研究所人間福祉医工学研究部門
○石松一真
産業技術総合研究所人間福祉医工学研究部門
熊田孝恒
表示画面位置の感性表現特性
筑波大学図書館情報メディア研究科
○椎名 健
筑波大学図書館情報メディア研究科
#志賀祐美子
- 10 -
o7-06
12:30-12:45
12:45-
断続的嗅覚刺激に対する感覚強度変化:認知的要因と学習効果
文京学院大学
○小林剛史
(独)産業技術総合研究所
(独)産業技術総合研究所
(独)産業技術総合研究所
日本体育大学スポーツトレーニングセンター
#小早川達
#秋山幸代
筑波大学大学院工学研究科
#戸田英樹
(独)産業技術総合研究所
#斉藤幸子
討論
5 月 29 日(日) 11:15∼13:00 口頭発表 8 記憶 2 部屋:L313
座長:高橋雅延・堀内孝
o8-01
o8-02
11:15-11:30
11:30-11:45
フォールスメモリに及ぼす部分手がかりの抑制効果
—テスト時の活性化説への反証—
聖心女子大学
○高橋雅延
愛知県立芸術大学
#川口敦生
自伝的記憶の新旧度が検索プロセスに及ぼす影響
岡山大学文学部
o8-03
o8-04
11:45-12:00
12:00-12:15
堀内 孝
自伝的記憶の長期にわたる語り直しの効果
東北大学文学研究科
○池田和浩
東北大学文学研究科
仁平義明
自伝的記憶の検索:感情比率を用いた検討
名古屋大学大学院情報科学研究科
o8-05
o8-06
12:15-12:30
12:30-12:45
○間野陽子
名古屋大学大学院人間情報学研究科
小河妙子
名古屋大学大学院情報科学研究科
齋藤洋典
検索誘導性忘却のモデル:検索固有性のシミュレーション
名古屋大学環境学研究科
○月元 敬
名古屋大学環境学研究科
川口 潤
快不快感情を随伴する自伝的記憶に対する再認過程
名古屋大学大学院情報科学研究科
○齋藤洋典
名古屋大学大学院情報科学研究科
井藤寛志
名古屋大学大学院情報科学研究科
大井 京
名古屋大学大学院人間情報学研究科
- 11 -
#清水英樹
12:45-
討論
5 月 29 日(日) 14:45∼16:15 口頭発表 9 スキル・身体 部屋:L204
座長:神宮英夫・沢田晴彦
o9-01
o9-02
o9-03
o9-04
14:45-15:00
15:00-15:15
15:15-15:30
15:30-15:45
技能遂行での段取りに関する研究
金沢工業大学情報フロンティア学部
心理情報学科
金沢工業大学情報フロンティア学部
心理情報学科
15:45-16:00
16:00-
#笠松慶子
手の左右同定課題における被験者自身の手の状態の影響
京都大学大学院教育学研究科
○石橋 遼
京都大学大学院教育学研究科
齊藤 智
打叩音によるコミュニケーション時の身体動作に関する研究
大阪大学大学院人間科学研究科
○河瀬 諭
大阪大学大学院人間科学研究科
中村敏枝
大阪大学大学院人間科学研究科
片平建史
大阪大学大学院人間科学研究科
川上 愛
大阪大学大学院人間科学研究科
安田晶子
発話に随伴するジェスチャーの想起に及ぼす DAF の効果
名古屋大学大学院情報科学研究科
o9-05
○神宮英夫
○大井 京
金沢工業大学人間情報システム研究所
沢田晴彦
名古屋大学大学院情報科学研究科
齊藤洋典
非流暢発話における自己指向的ジェスチャーの機能
名古屋大学大学院人間情報学研究科
(現:金沢工業大学人間情報システム研究所
石川県知的クラスター創成事業)
○沢田晴彦
名古屋大学大学院情報科学研究科
大井 京
名古屋大学大学院情報科学研究科
齋藤洋典
討論
- 12 -
ポスター発表
5 月 28 日(土) 9:45∼11:45 ポスター発表 1 認知、言語 部屋:L202
在籍責任時間:奇数番号 9:45∼10:45
p1-01
p1-02
偶数番号 10:45∼11:45
地理的情報処理方略と経路探索エラータイプ
東北大学大学院文学研究科
○本多明生
東北大学大学院文学研究科
仁平義明
ナスカ台地のランドマーク
山形大学人文学部
p1-03
渡邊洋一
男性は女性よりも高低差に敏感か−東北大学植物園を歩いた記憶−
東北大学文学部
○小澤麻美
東北大学文学研究科
p1-04
仁平義明
相関図の読みとりに関する検討
名古屋大学大学院教育発達科学研究科
秋田大学教育文化学部
p1-05
p1-06
p1-07
p1-08
p1-09
○布施光代
山名裕子
絵画の中の「余白」 −その構造,機能,印象−
九州大学大学院人間環境学府
○鮫島祥子
九州大学大学院人間環境学府
三浦佳世
遠近法の歪み知覚が絵画印象に与える影響−自由発話を指標として
名古屋大学大学院環境学研究科
○石坂裕子
名古屋大学大学院環境学研究科
#高橋晋也
手描き図形を用いた印象伝達の検討 −図形の着色−
筑波大学図書館情報メディア研究科
○山口由衣
筑波大学図書館情報メディア研究科
椎名 健
反復聴取は音楽の聴取印象に長期的な影響を与えるか
筑波大学心理学研究科
○生駒 忍
筑波大学人間学類
#新井紀彰
筑波大学心理学系
太田信夫
絶対音感保持者のメロディ認知における大脳半球機能差
関西大学社会学研究科
○水内真理
関西大学社会学部
関口理久子
- 13 -
p1-10
p1-11
p1-12
p1-13
音楽聴取時の感動と性格特性の関係について
大阪大学大学院人間科学研究科
○川上 愛
大阪大学大学院人間科学研究科
中村敏枝
大阪大学大学院人間科学研究科
河瀬 諭
大阪大学大学院人間科学研究科
安田晶子
大阪大学大学院人間科学研究科
片平建史
演奏におけるタイミング—演奏者と聴取者の認知の差—
大阪大学大学院人間科学研究科
○片平建史
大阪大学大学院人間科学研究科
中村敏枝
大阪大学大学院人間科学研究科
河瀬 諭
大阪大学大学院人間科学研究科
川上 愛
大阪大学大学院人間科学研究科
安田晶子
演奏音の音響的特性と聴取者の感動体験の関係
大阪大学大学院人間科学研究科
○安田晶子
大阪大学大学院人間科学研究科
中村敏枝
大阪大学大学院人間科学研究科
河瀬 諭
大阪大学大学院人間科学研究科
川上 愛
大阪大学大学院人間科学研究科
片平建史
メロディ認知におけるテンポ変容の効果
鹿児島大学大学院教育学研究科
p1-14
小山大輝
顔画像からの年齢判断
東北大学
日本学術振興会
○伊師華江
ATR 人間科学研究所
オムロン株式会社技術本部センシング研究所
画像センシンググループ
オムロン株式会社技術本部センシング研究所
画像センシンググループ
p1-15
蒲池みゆき
#瀧川えりな
#細井 聖
口唇裂・口蓋裂者の笑顔の印象
宮城大学
○真覚 健
宮城学院女子大学
#足立智昭
東北大学
#幸地省子
- 14 -
p1-16
p1-17
刺激提示時間による表情認知構造のフラクタル次元差
北星学園大学
○竹原卓真
帝塚山大学
#落合史生
産業技術総合研究所
#渡邊 洋
同志社大学
#鈴木直人
声の様態が年齢推定に与える影響
日本大学大学院文学研究科
○笠原洋子
日本大学文理学部
p1-18
p1-19
p1-20
p1-21
p1-22
厳島行雄
形態的類似と音韻的類似が単語の意味処理に与える影響
中京大学心理学研究科
○木下建一郎
中京大学心理学研究科
森 孝行
内包文字類似語の効果
中京大学心理学研究科
○岡田順介
中京大学心理学研究科
牧野義隆
文字の形態・音韻的符号化過程と母語の関係 (1) −米国のデータ−
中部大学人文学部
○水野りか
中部大学人文学部
松井孝雄
文字の形態・音韻的符号化過程と母語の関係 (2) −日本のデータ−
中部大学人文学部
○松井孝雄
中部大学人文学部
水野りか
母語方言の違いが単語アクセントの知覚に与える影響
法政大学大学院人文科学研究科
○田中邦佳
法政大学文学部
p1-23
p1-24
田嶋圭一
母語話者と非母語話者による日本語特殊拍の知覚:発話速度の効果
法政大学文学部
ATR 人間情報科学研究所
○田嶋圭一
ATR 人間情報科学研究所
#加藤宏明
ATR 人間情報科学研究所
ATR 人間情報科学研究所
#山田玲子
#アマンダ
・ロスウェル
クイーンズ大学
#ケビン・マンホール
日本語基本単語に対する連想語データベースの作成
「大規模知識資源・21 世紀 COE」東京工業大学
- 15 -
テリー・ジョイス
p1-25
漢字二字熟語 neighbor 間の意味類似性について(1)
大阪樟蔭女子大学人間科学部
p1-26
p1-27
p1-28
p1-29
川上正浩
常用漢字の主観的使用頻度と認知時間の関係
広島大学教育学研究科
國田祥子
語彙判断課題における漢字熟語の表記の親近性効果
財団法人長寿科学振興財団
中京大学
藤田知加子
漢字刺激における視覚の大域・局所特徴処理と干渉に関する一考察
筑波大学図書館情報メディア研究科
○坂本謡子
筑波大学図書館情報メディア研究科
椎名 健
カタカナ語の使用がもたらす印象評定への影響に関する一研究
名古屋大学大学院教育発達科学研究科
p1-30
p1-31
p1-32
海上智昭
携帯メールに見られる擬音語・擬態語の利用状況に関する調査
京都光華女子大学人間関係学部
○酒井浩二
京都光華女子大学人間関係学部
#宮田希実子
終助詞と手がかりコミュニケーション:意図の認知
常磐大学人間科学部
○伊東昌子
鳴門教育大学学校教育学部
#永田良太
文章における比喩の用いられ方と読解過程との関連性
立命館大学
p1-33
p1-34
中原 誠
テキスト表象の体制化における因果関係の形式とタイプの効果
筑波大学人間総合科学研究科
○井関龍太
筑波大学人間総合科学研究科
#菊地 正
筑波大学人間総合科学研究科
#海保博之
読みの形態による詩の理解への影響
法政大学文学部心理学科
p1-35
福田由紀
空間表現語理解過程における distractor 効果の検討
京都大学大学院教育学研究科
小島隆次
- 16 -
p1-36
言語内容からのウソ認知:絶対的逸脱と状況的逸脱
東北大学大学院文学研究科
○菊地史倫
東北大学大学院文学研究科
佐藤 拓
東北大学大学院文学研究科
仁平義明
5 月 28 日(土) 12:45∼14:15 ポスター発表 2 学習、記憶 1 部屋:L202
在籍責任時間:奇数番号 12:45∼13:45
p2-01
p2-02
p2-03
p2-04
偶数番号 13:45∼14:45
テスト期待効果の生起メカニズムの検討
−テストに対する困難度の認知と方略帰属に着目して−
東京大学大学院教育学研究科
日本学術振興会
村山 航
可算事象に対する事後情報効果の検討
北星学園大学文学部
心理応用コミュニケーション学科
後藤靖宏
事後情報が記憶に及ぼす影響
アテネオリンピックの状況を用いての後知恵バイアスと調和バイアスの検討
東京女子大学文理学部
○桑山恵真
東京女子大学文理学部
#今井久登
誘導尋問に対する選択肢呈示の効果―被暗示性尺度の再検討 (2)―
畿央大学健康科学部
p2-05
金敷大之
耐誘導試行が子供の被誘導性に及ぼす効果
東京家政大学文学研究科
○長尾 恵
東京家政大学文学部
p2-06
越智啓太
意図的な嘘が記憶検索に及ぼす影響についての検討
日本大学大学院文学研究科
○田中未央
日本大学
p2-07
厳島行雄
偽りの記憶の想起に関わる個人差の影響―記憶再構成誘導との関連
愛知学院大学大学院文学研究科
○松原生枝
島根大学法文学部
p2-08
北神慎司
DRM パラダイムにおいて虚再生が起こらないとき−テスト後再生・再認課題を用いて−
リエージュ大学認知心理学研究室
向居 暁
- 17 -
p2-09
「目に焼き付ける」符号化方略が目撃者の記憶に及ぼす効果
−認知符号化法で目撃者の記銘は促進されるか? (4)−
東京家政大学文学部
p2-10
越智啓太
描画による日常記憶の想起促進 (2)
東京家政大学大学院文学研究科
○小坂香織
東京家政大学文学部
p2-11
越智啓太
日誌法によるプルースト効果の研究
東京女子大学文理学部
p2-12
川平杏子
単語手がかり法による自伝的記憶のエピソード性についての検討
関西大学社会学部
p2-13
関口理久子
自伝的記憶の安定性−中高年が想起する青年期までの自己(1)−
群馬大学教育学部
p2-14
佐藤浩一
自伝想起と評価的判断の関連性
広島大学大学院教育学研究科
○中尾敬
広島大学大学院教育学研究科
p2-15
p2-16
宮谷真人
会議における座席位置の記憶
富士ゼロックス(株)研究本部 PAL-JAPAN
○大村賢悟
富士ゼロックス(株)研究本部 PAL-JAPAN
#永峯猛志
BGM 依存記憶におよぼす項目提示速度の効果
静岡県立大学短期大学部
○漁田俊子
静岡大学情報学部
p2-17
漁田武雄
自由再生における新近性効果におよぼす背景色文脈の効果
静岡大学情報学部
○漁田武雄
静岡県立大学短期大学部
p2-18
漁田俊子
作動記憶における視覚的リハーサルに対する視覚絵画刺激の妨害要因の検討
中央大学大学院文学研究科
○須藤 智
中央大学文学部
兵藤宗吉
- 18 -
p2-19
作動記憶課題における記憶表象の活性と侵入エラーの関係
中京大学心理学研究科
○大平直樹
中京大学心理学部
p2-20
牧野義隆
非言語刺激によるワーキングメモリ課題遂行能力の加齢変化
金沢大学文学研究科
p2-21
國見充展
作動記憶の資源コントロールがヒューマンエラーに及ぼす影響について
東北大学大学院情報科学研究科
○川原正広
岩手大学人文社会科学部
p2-22
p2-23
松岡和生
記憶促進における反復書記の有効性に関する検討
−繰り返し書くことにより覚えやすくなるか−
早稲田大学大学院文学研究科
○見崎研志
北海道大学大学院文学研究科
仲真紀子
視覚短期記憶における属性容量と物体容量との関連性について
福島大学生涯学習教育研究センター
p2-24
木暮照正
刺激間関係を考慮した再認の 2 過程モデル
千葉大学文学部
p2-25
須藤 昇
ビジュアルシーンの再認における輝度情報の効果
北海道大学大学院文学研究科
○川端康弘
拓殖大学北海道短期大学保育科
p2-26
p2-27
川端美穂
顔写真と名字の組み合わせに関する再認記憶
関西学院大学大学院文学研究科
○平野哲司
関西学院大学大学院文学研究科
山田陽平
触覚の再認記憶における言語陰蔽効果
島根大学法文学部
p2-28
北神慎司
顔の再認記憶に及ぼす加齢の影響 -方向付け課題を用いた活動性印象の影響の検討
九州大学大学院人間環境学府
○小松佐穂子
九州大学大学院人間環境学研究院
p2-29
箱田裕司
顔の表情が再認記憶に与える影響
日本大学大学院文学研究科
伊藤令枝
- 19 -
p2-30
p2-31
聴覚刺激を用いて示される長期的記憶現象
岡山大学教育学部
○上田紋佳
岡山大学教育学部
寺澤孝文
数ヶ月以前の聴覚刺激の呈示回数が再認成績に及ぼす影響
岡山大学教育学研究科
○勝部厚志
岡山大学教育学部
p2-32
寺澤孝文
3 ヶ月前の 2 秒の偶発学習回数が再認記憶の成績に与える影響
岡山大学
○北垣裕充
岡山大学
寺澤孝文
5 月 29 日(日) 9:45∼11:45 ポスター発表 3 発達、知覚・注意 部屋:L202
在籍責任時間:奇数番号 9:30∼10:30
p3-01
p3-02
偶数番号 10:30∼11:30
母親のセルフエフィカシーと育児不安の関係について
法政大学人間社会研究科
○石井睦子
法政大学文学部心理学科
渡辺弥生
大学生における 人格の二面性 と社会的適応
東京国際大学大学院臨床心理学研究科
○久田一雄
法政大学文学部心理学科
p3-03
p3-04
渡辺弥生
乳児期における年齢弁別の発達:顔刺激を用いて
九州大学大学院人間環境学府・日本学術振興会
○実藤和佳子
九州大学大学院人間環境学研究院
#大神英裕
九州大学大学院人間環境学研究院
橋彌和秀
乳児の視線転換に及ぼす情動の影響
九州大学大学院人間環境学府
p3-05
p3-06
黒木美紗
人生の意味・目的の獲得と理想自己が適応意識に及ぼす影響(1)
法政大学
○石川千香子
法政大学
藤田哲也
笑いの探索的研究
関西大学大学院社会学研究科
○吉田昂平
関西大学社会学部
関口理久子
- 20 -
p3-07
p3-08
p3-09
感性印象測定に用いられる形容詞尺度の感覚モダリティ関連性の分析
東北大学
○行場次朗
東北大学
鈴木美穂
鹿児島大学
川畑秀明
岩手大学
山口 浩
東北福祉大学
小松 紘
表情のモーフィング画像を用いた感情誘導に関する一考察
早稲田大学大学院文学研究科
○高木幸子
早稲田大学大学院文学研究科
井出野尚
顔の表情が伝達内容の理解に及ぼす影響
放送大学発達と教育
○奥居みどり
放送大学発達と教育
p3-10
p3-11
p3-12
p3-13
p3-14
星 薫
情動的ストレスが出来事の時間評価に及ぼす効果:覚醒度との相関
九州大学
○松本亜紀
九州大学
箱田裕司
九州大学
大沼夏子
不快感情が競合検出に基づく反応抑制に与える影響
広島大学大学院教育学研究科
○武澤友広
広島大学大学院教育学研究科
宮谷真人
感情制御方略が再認課題成績に及ぼす影響
立教大学文学研究科
○中村玲香
千葉大学
#小口孝司
感情の及ぼす Stroop 課題制御プロセスへの影響の検討−感情誘導法に表情動画を用いて−
早稲田大学大学院文学研究科心理学専攻
○井出野尚
早稲田大学大学院文学研究科心理学専攻
高木幸子
多数の運動物体への注意と方向変化検出の関係
大阪大学人間科学部適応認知行動学研究室
○駒田悠一
大阪大学人間科学部適応認知行動学研究室
三浦利章
- 21 -
p3-15
ストループ効果とプライミング効果の関係
神戸大学大学院自然科学研究科
○堤 教彰
神戸大学海事科学部
p3-16
嶋田博行
処理資源配分方略シフト
鉄道総合技術研究所
○重森雅嘉
立教大学
#高橋完介
鉄道総合技術研究所
#樋田 航
立教大学
p3-17
p3-18
p3-19
p3-20
p3-21
芳賀 繁
自律訓練法が情動ストループ課題の遂行に及ぼす影響 –中間報告
金沢工業大学心理学科研究所
○松本 圭
金沢工業大学心理学科研究所
塩谷 亨
金沢工業大学人間情報システム研究所
近江政雄
2 色型、異常 3 色型色覚者における色手がかりの効果についての検討
近畿福祉大学
○室井みや
愛媛女子短期大学
#齋藤雅英
愛媛女子短期大学
岡部康成
健常型と障害型色覚における色識別能力の個人差
北海道大学大学院文学研究科
○西川林太郎
北海道大学大学院文学研究科
川端康弘
室内空間の変化に対する認知の精度−視点の変化−
北海道大学大学院文学研究科
○笠井有利子
北海道大学大学院文学研究科
川端康弘
チェンジブラインドネスにおける変化の位置検出と特徴検出の差異
鹿児島大学大学院教育学研究科
○大崎弘孝
鹿児島大学教育学部
p3-22
川畑秀明
復帰抑制における attentional momentum 仮説の検討
東北大学大学院情報科学研究科
○松田幸久
富山大学人文学部
海老原直邦
- 22 -
p3-23
p3-24
p3-25
Preview Search における先行刺激の自動的抑制
中京大学心理学研究科
○大杉尚之
中京大学心理学研究科
森 孝行
視覚的注意の移動がリーチング動作に及ぼす影響
大阪大学大学院人間科学研究科
○内藤 宏
大阪大学大学院人間科学研究科
三浦利章
視覚−触覚モダリティ間における単純接触効果の検討
東北大学・日本学術振興会
○鈴木美穂
東北大学
p3-26
p3-27
行場次朗
長期間深深度潜水が潜水員の認知・注意機能に及ぼす影響について
海上自衛隊潜水医学実験隊
○景山 望
海上自衛隊潜水医学実験隊
#小沢浩二
海上自衛隊潜水医学実験隊
#木村民蔵
顔の示差性が特徴変化の判断と全体処理に及ぼす影響の検討
早稲田大学文学研究科
p3-28
p3-29
安田 孝
概念的一致が随伴性注意の捕捉に及ぼす効果の検討
中京大学大学院心理学研究科
○犬飼朋恵
中京大学大学院心理学研究科
森 孝行
矢印の方向指示力の提示位置による効果
立命館大学
p3-30
p3-31
尾田政臣
オブジェクトベースの注意効果における視覚的特徴の効果
中京大学大学院心理学研究科
○下村智斉
中京大学大学院心理学研究科
森 孝行
背景に呈示された奥行き運動刺激が空間的注意に及ぼす影響
大阪大学大学院人間科学研究科
○緑川直幸
大阪大学大学院人間科学研究科
木村貴彦
大阪大学大学院人間科学研究科
三浦利章
- 23 -
p3-32
p3-33
タイムプレッシャーがサイモン課題における系列効果に及ぼす影響
広島大学大学院教育学研究科
○白石舞衣子
広島大学大学院教育学研究科
宮谷真人
顔線画図形の快・不快判断時における ERP の検討
日本大学大学院文学研究科
○前田亜希
日本大学大学院文学研究科
渡邊伸行
日本大学大学院文学研究科
鈴木竜太
日本大学大学院文学研究科・日本大学文理学部
#山田 寛
5 月 29 日(日) 14:45∼16:45 ポスター発表 4 記憶 2、問題解決、応用
部屋:L202
在籍責任時間:奇数番号 14:45∼15:45
p4-01
p4-02
偶数番号 15:45∼16:45
人名想起における検索誘導性忘却
名古屋大学大学院環境学研究科心理学講座
名古屋大学大学院情報科学研究科
メディア表現論講座
○川口 潤
名古屋大学大学院環境学研究科心理学講座
月元 敬
人名の想起/生成における阻害要因と量的特性
早稲田大学
p4-03
p4-04
p4-05
#橋本浩利
上田卓司
意図的忘却における刺激特性の効果
金沢大学大学院文学研究科
○松田崇志
金沢大学大学院文学研究科
松川順子
修正指示忘却パラダイムにおける忘却教示の効果
関西学院大学大学院文学研究科
○山田陽平
関西学院大学大学院文学研究科
平野哲司
関西学院大学文学部
浮田 潤
検索容易性と記憶判断
一橋大学大学院社会学研究科
村田光二
- 24 -
p4-06
処理水準の異なる遮蔽物体の記憶表象に関わる脳部位の特定
科学技術振興機構
○高濱祥子
科学技術振興機構・京都大学大学院情報学研究科
(独)情報通信研究機構
関西先端研究センター脳情報グループ
(独)情報通信研究機構
関西先端研究センター脳情報グループ
p4-07
箱田裕司
系列位置曲線における刺激材料の持つ感情価の違い
京都光華女子大学文学部
p4-10
伊藤美加
記憶と感情に関する研究(9)
想起した出来事の当時と現在からの感情価評定の割合の違い
中央大学文学部
○兵藤宗吉
中央大学文学研究科
#野内 類
人物の姿勢およびモーションラインによって生じる記憶された人物位置のシフト
九州大学ユーザーサイエンス機構
○河邉隆寛
九州大学人間環境学研究院
p4-11
三浦佳世
行為事象の記憶のソースモニタリングⅢ
−行為文に対する処理水準を被験者間,実演の有無を被験者内で操作した場合−
法政大学文学部
p4-12
藤田哲也
意図優位性効果に語彙判断課題以降の課題が与える影響
立命館大学大学院文学研究科
p4-13
p4-14
p4-15
#宮内 哲
○野畑友恵
九州大学大学院人間環境学研究院
p4-09
#三崎将也
感情は記憶を断片化させるのか?:スナップショット化現象の検討
九州大学大学院人間環境学府
p4-08
齋木 潤
佐藤文紀
統合失調症患者における動物概念構造の分析
富山医科薬科大学医学系研究科
○扇 暁子
富山医科薬科大学医学系研究科
松井三枝
富山医科薬科大学医学系研究科
倉知正佳
鑑識眼 の研究−プロトタイプは事例の記憶に影響を及ぼすか−
日本学術振興会・
九州大学大学院人間環境学研究院
時津裕子
共感感情の喚起における注意の役割
名古屋大学大学院環境学研究科
三谷信広
- 25 -
p4-16
特性 X 状況連合が特性判断にあたえる影響について
千葉大学自然科学研究科
p4-17
青林 唯
対話方略としての笑い:若年層におけるクロージングの特徴
東京大学総合文化研究科 COE「心とことば」
p4-18
○南部美砂子
法政大学社会学部
原田悦子
法政大学社会学部
#山田洋介
雰囲気の把握とアサーションの関係
金沢工業大学大学院心理科学研究科
○岩室暖佳
金沢工業大学情報フロンティア学部心理情報学科
p4-19
神宮英夫
生死問題におけるフレーミング効果の消失条件の検討
東京女子大学文理学部
p4-20
工藤恵理子
目標フレーミングが主観的な覚醒に与える影響
名古屋大学大学院環境学研究科
○竹橋洋毅
名古屋大学大学院環境学研究科
p4-21
p4-22
唐沢かおり
日常生活における absentmindedness と展望記憶
東京女子大学
○山崎彩香
東京女子大学
今井久登
行動プランと実行動の乖離(1)
:計画錯誤と楽観・悲観傾向特性
広島修道大学人文学部
p4-23
増田尚史
ゲームの熟達における時系列チャンクの利用
○長井 将
大阪市立大学
大阪大学
p4-24
川村 智
高齢者の情報機器操作課題遂行における構造理解の重要性
慶應義塾大学大学院社会学研究科
○村瀬周子
慶應義塾大学文学部
p4-25
伊東裕司
医薬品オーダリングシステムの薬剤入力エラーに関する実験的研究
立教大学文学研究科
○山出康世
立教大学
芳賀 繁
東京医科歯科大学
#土屋文人
- 26 -
p4-26
CMC 上での誤解を招く表現形式について
樟蔭東女子短期大学
○岩原昭彦
日本電気株式会社
#猿橋 昌
名古屋大学大学院環境学研究科
p4-27
p4-28
八田武志
中高年者の認知機能の性差について
名古屋大学
○八田武志
名古屋大学
永原直子
樟蔭東女子短大
岩原昭彦
運転時の聴覚刺激反応課題がドライバーに与える生理的行動的変化
東北大学大学院文学研究科
p4-29
p4-30
p4-31
北村康宏
高齢者の抑制機能と機器操作エラー
東京学芸大学・教育心理学講座
○関口貴裕
東京学芸大学・教育心理学講座
#小池貴子
日常生活への新しい情報通信機器の導入:場所とメディアとの関係
メディア教育開発センター・総合研究大学院大学
○高橋秀明
メディア教育開発センター・総合研究大学院大学
#黒須正明
友人の顔文字の使用頻度が顔文字の印象に与える影響
立命館大学人間科学研究所
p4-32
荒川 歩
ナビゲーションにおける道案内図のわかりやすい要素
信州大学大学院人文科学研究科
p4-33
水谷弘絵
なぜマニュアルを読まないか:怠け者説と探索動機説
○田村裕一
東北大学文学部
東北大学文学研究科
p4-34
p4-35
仁平義明
HyperMirror における自己像の認知が対話の質に与える影響
産業技術総合研究所
○島田英昭
産業技術総合研究所
#森川 治
産業技術総合研究所
#北島宗雄
MHD において意思決定に影響を与える要因の二次元配置
筑波大学心理学研究科
○三好一英
筑波大学心理学研究科
生駒 忍
- 27 -
p4-36
思考抑制教示における逆説的効果の発現要因について
東京家政大学文学研究科
○中村敦子
東京家政大学文学部
p4-37
越智啓太
関連性判断と最適データ選択の関係性について
兵庫教育大学大学院学校教育研究科
p4-38
p4-39
一柳伸治
文章読解過程における MP, AC 推論の検討
名古屋大学大学院環境学研究科心理学講座
○中村紘子
名古屋大学大学院環境学研究科心理学講座
川口 潤
日常的状況における関連性
日本学術振興会特別研究員・京都大学
林 創
- 28 -
研究発表要旨
口頭発表
Remember/Know 手続きを用いた手がかり再生の記憶高進
筑波大学心理学研究科
林美都子
記憶高進(hypermnesia)とは,再学習の機会なしにテストのみを繰り返し行ったときに記憶成績が向上す
る現象のことをいう.本研究では,意識的・無意識的記憶がこの現象にどのように関与しているか検討す
るため,Remember/Know 手続きを用いた手がかり再生課題を行った.大学生 14 名(男性 5 名,女性 9 名)
に,学習直後に 3 回,1 週間後に 3 回の計 6 回テストを繰り返し実施した.その結果,直後,1 週間後,
全体のいずれにおいても記憶高進が生起しており,直後,1 週間後のようにテスト間間隔が短い場合は
Remember 判断率が上昇するが Know 判断率は変化せず,全体のように長いテスト間間隔を含む場合は
Remember 判断率は変化しないが Know 判断率は増加することが示された.すなわち,テスト間間隔の長
さにより,記憶高進の生起に意識的・無意識的記憶のいずれが中心的に関与するか決まる可能性が示唆さ
れた.
o1-01
日本人大学生の英単語の虚再生:直後と遅延の再生の比較から
神戸女学院大学大学院人間科学研究科
○川崎弥生
同志社大学社会学部
井上智義
本研究では日本人大学生を対象に,英語における虚記憶の生成を検討した.実験材料として,1つの非
提示語(ルアー語)を連想させる英単語 15 個からなるリストを使用した.実験参加者は,1 単語あたり 2 秒
の速さで 1 リストが CRT 上に視覚提示されるごとに、2 分間の再生テストに回答した.このリスト提示と
再生の試行は 6 試行行われた.また,1 週間後に提示 6 リストについての自由再生にも回答した.直後再
生テストと遅延再生テストを比較した結果,リスト語の再生率は遅延時間によって減少したのに対し,ル
アー語の虚再生率は増加した.これら直後再生テストと遅延再生テストの結果から,バイリンガルの第 2
言語における単語の処理過程についても考察する.
o1-02
作動記憶負荷の長期的効果
慶應義塾大学大学院社会学研究科
佐々木尚
本研究の目的は,作動記憶負荷の長期的影響を検討することであった.実験 1 において,再学習法を用
いて単語−非単語の対連合学習における構音抑制の効果が検討された.学習フェーズで,28 人の被験者が
単語−非単語の対応関係を構音抑制条件か単純タッピング条件のいずれかで完全学習した.遅延時間を置
いたあと,被験者は学習フェーズで学習した課題と同じ刺激を用いて手がかり再生課題と再学習課題を遂
行した.その結果,学習フェーズにおいて構音抑制条件にいた被験者は再学習フェーズにおける試行数が
有意に少ないことが見出された.この結果は実験 2 においても再現された.これらの結果から,初期の学
習における作動記憶負荷は再学習を容易にすることが示唆され,
「作動記憶容量が小さいことによる有利
さ」の存在を指し示す証拠の 1 つを得た.
o1-03
感情が自伝的記憶の想起に及ぼす影響 自己知識の構造に注目した検討
日本学術振興会
榊美知子
東京大学大学院教育学研究科
本研究では,気分一致効果(気分と一致する感情価を持つ記憶の想起が促進される)と気分不一致効果
(気分と逆の感情価を持つ記憶の想起が促進される)という相反する現象を取り上げ,これらの 2 つの現
象を弁別する要因を明らかにすることを目的とした.実験では,中性気分条件に加え,気分緩和動機が高
い不快気分条件,気分緩和動機が低い快気分条件を設けた.更に,記憶を想起する自己知識の領域を操作
し,感情を喚起した文脈と関連する領域(文脈関連領域)から記憶を想起する条件と,文脈とは無関連な
領域(文脈無関連領域)から想起する条件を設けた.その結果,快気分時には,文脈関連・無関連領域の
o1-04
- 29 -
いずれでも気分一致効果が確認された.一方,不快気分時には,文脈関連領域では気分一致効果,文脈無
関連領域では気分不一致効果が見出された.従って,気分一致効果・気分不一致効果の生起には,気分緩
和動機と自己知識構造が関与していると言える.
正立顔と倒立顔における印象と再認記憶の比較̶顔の性差に注目して̶
東北大学大学院文学研究科
○作田由衣子
東北大学大学院文学研究科
行場次朗
本研究では,SD 法で一般的に抽出される活動性・力量性・評価性の 3 因子の中で,評価性の特殊性に
着目し,倒立顔を用いて,顔認知における印象因子の影響について検討した.まず,倒立顔の印象につい
て SD 法を用いて測定し,正立顔の印象と比較した.その結果,倒立により,印象は全体的に中性化し,
因子得点がゼロに近くなることが示された.特に,評価性に関する印象は大きく中性化していた.次に,
倒立顔の再認実験を行ない,正立顔に対する再認成績との比較を行なった.その結果,男性顔については,
力量性の低い顔と評価性の低い顔が,正立顔に比べて大きく再認成績が低下していた.しかし女性顔につ
いては,再認成績はそれほど低下していなかった.したがって,印象と再認に関する倒立効果は,印象因
子と顔の性別により,異なって生じることが示された.評価性に関わる印象はほかの 2 因子とは異なる処
理がなされている可能性がある.
o1-05
イメージ統合過程における保持と処理の関係
中京大学心理学研究科
○成本忠正
中京大学心理学部
牧野義隆
本研究は、認知目標の達成(たとえば、文章理解や問題解決)に伴う保持と処理の関係を検討した。こ
の場合の認知過程とは、保持情報と処理情報が同一であり、認知目標の達成には保持情報が処理され、処
理された結果がまた保持される事態である。このように、保持情報と処理情報が相互依存的関係にある事
態においても処理は保持への認知負荷となるのだろうか。主課題に処理と保持を伴うイメージ更新課題、
妨害課題にイメージ判断および具象性判断という内的処理課題を用いて実験を行った。主課題の処理が同
一情報の保持に認知負荷とならない場合、妨害課題を同時に遂行しても保持は妨害課題の認知負荷だけを
受ける。しかしながら、妨害課題の認知負荷に加え、処理がすでに同一情報の保持に対し認知負荷である
なら、保持成績はさらに低下すると予測した。実験の結果、処理と保持が同一情報に基づく場合であって
も、処理は保持の認知負荷となることが示された。
o1-06
音韻系列予測と音韻系列生成機構:fMRI による検討
京都大学大学院情報学研究科
○林 佐和
京都大学大学院情報学研究科
乾 敏郎
京都大学大学院情報学研究科
杉尾武志
乾(1998)の『運動系列予測学習仮説』では、系列処理に Broca 野が関与しているとされる。本研究では
fMRI の事象関連デザインを用いて、音韻系列予測の系列提示時と系列生成時の脳活動を分離して検討し
た。
協力者は人工文法から作成された音韻系列をSRT 課題を用いて十分に学習した後、
fMRI 装置内でSRT
課題時の系列に基づく音韻系列予測課題を行った。音韻系列予測課題の最初のセッションでは人工文法系
列(AG 条件)を提示し、続くセッションでは系列の初め 2 音韻以降ランダムな系列(2AG 条件)、feedback の
みランダムな系列(RF 条件)を提示した。その結果、AG 条件の系列提示時に左 45 野のみの活動が見られ
たのに対し、AG 条件および 2AG 条件の系列生成時に左 44 野のみの活動が見られた。これらの結果から、
左 45 野が系列の感覚的予測に関与し、左 44 野は運動を伴う系列生成時に関与することが示唆された。
o2-01
音韻系列学習による文脈依存的な予測処理機構の検討
京都大学大学院情報学研究科
山村千草
京都大学大学院情報学研究科
○乾 敏郎
京都大学大学院情報学研究科
杉尾武志
山村ら(2004)は、人工文法構造に従う音韻系列の予測学習に、大脳基底核およびブローカ野が関与し、
o2-02
- 30 -
学習段階で異なるネットワークが機能する可能性を示した。本研究では、学習前後で予測に関わる脳活動
を計測し、比較することで、文脈依存的な予測に関わる神経基盤を検討した。課題に関与すると考えられ
る領域の脳活動時系列データを観測変数とし、共分散構造分析(SEM)を用いて、領域間の有効結合強度の
変化を推定した。その結果、人工文法構造の学習前には背側前頭前野(DLPFC)から左 BA45 および尾状核
への投射が重要であるのに対し、学習後には左 BA44 から BA45、BA45 から尾状核への投射が重要とな
ることが示された。このことから、DLPFC は学習初期に意識的処理に関与する一方で,大脳基底核に投
射する左 BA44 および BA45 間の相互作用は主に学習後の自動的な予測処理に関与することが示唆され
た。
3次元物体認知のボトムアップ/トップダウン処理に関わる脳部位
ATR 人間情報科学研究所
○西野由利恵
ATR 人間情報科学研究所
#安藤広志
3次元物体認知の記憶情報に基づくトップダウン(TD)処理と入力(網膜情報)に基づくボトムアッ
プ(BU)処理に共通して活動する部位の特定を fMRI 脳活動計測により試みた.昨年の発表では,共有部
位に外側後頭部(LO)が含まれる可能性を示唆した.本研究では,LO の部位を確認するため,スクラン
ブル(SC)刺激の異同判断を設けた.本実験の学習フェーズでは,SC 判断,3次元新奇物体の識別,記
憶,再認の各課題を,テストフェーズでは,TD 判断,BU 判断,コントロールの各課題を繰り返した.
統計分析の結果,SC 判断よりも3次元物体の識別に対して,側頭後部から後頭葉に活動が見られたこと
から,この部位が LO であると考えられる.この部位は,TD 処理と BU 処理の共通活動部位の一部と一
致した.この結果は,共通活動部位に LO が含まれ,記憶と入力に基づく3次元情報の統合がこれらの部
位で行われていることを示唆する.
o2-03
視覚誘導運動における運動予測と視覚フィードバックの影響
京都大学大学院情報学研究科
○小川健二
京都大学大学院情報学研究科
乾 敏郎
京都大学大学院情報学研究科
杉尾武志
小川ら(2004)は,後部頭頂皮質(PPC),頭頂側頭接合部(TPJ)が視覚誘導運動における運動予測に関連す
ることを示した.本研究では TPJ の機能的役割とともに,視覚誘導運動における内的な運動予測とオンラ
インの視覚フィードバックの影響に関連する神経基盤を fMRI で検討した.協力者はマウスによる曲線の
トレースを行い,運動開始後にカーソルの視覚フィードバックの遮断,遮断時間後に視覚フィードバック
の呈示を行った.結果から,視覚フィードバック遮断中に被殻,腹側運動前野,前補足運動野(pre-SMA),
呈示後に PPC,TPJ で有意な活動増加が見られ,さらに pre-SMA,PPC でそれぞれ遮断時間,視覚的運動
誤差と有意な正の相関が見られた.本実験から pre-SMA が視覚的運動予測,PPC,TPJ がそれぞれ視覚フ
ィードバックによる運動誤差の評価,および運動予測の更新に関与していることが示唆された.
o2-04
fMRI による共感覚計測:色聴者の音楽視聴時の V4/V8 活動
関西学院大学理工学部
○横井真一
関西学院大学理工学部
長田典子
京都大学大学院情報学研究科
杉尾武志
宝塚造形芸術大学
#井口征士
京都大学大学院情報学研究科
乾 敏郎
「音を聴くと,色が見える」という現象は,色聴と呼ばれており,共感覚の 1 つである.こうした現象
は,感覚モダリティ間の関係を明らかにする上で重要な手がかりとなることが期待される.本研究は,色
聴保持者において音楽視聴時に実際に色知覚に関与している脳内領野で活動が生じているかを fMRI を用
いて計測した(色聴保持者 2 名,非色聴保持者 1 名)
.実験は全 6 系列,全てブロックデザインで行われ
た.課題条件では系列ごとに音楽,音階,単語(色)
,数字,イメージ化(色)
,及びモンドリアンパター
ンの呈示が行われた.レスト条件では beep,beep,単語(形)
,ランダム語,イメージ化(形)
,及びモノ
クロモンドリアンパターンの呈示であった.分析は SPM99 を用いて行われた.色知覚に関わる V4/V8 の
o2-05
- 31 -
ROI 分析の結果,色聴保持者のみ音楽及び音階の呈示時に有意な活動がみられた.このことは,色聴が聴
覚系と視覚系の直接的な相互作用により生じていることを示唆している.
曖昧性がコントロールの錯誤生起に与える影響−判断型の分類による探求−
神戸女学院大学大学院人間科学研究科
足立邦子
サイコロやカードゲームなどによる賭場面においてコントロールの錯誤(IC; Langer, 1975)という現象が
生じる場合がある.これは人が不適切な自信を感じるため,客観的確率が保証するよりも不適切に成功確
率を期待するというものである.本研究では当たりの出る期待確率に関する情報が曖昧な状況(曖昧性あ
り)と明確な状況(曖昧性なし)を設定し,それら状況の違いによってコントロールの錯誤がどのように生じ
るのか検討する.そのため確率についての専門的知識をもたない学生と社会人を対象にくじ引きゲームを
行った.実験協力者の当たりが出る予想確率と確率を数値で予想してもらい,なぜそのように予想したの
か答えてもらった.それをもとに,確率判断がどのように行われたのか足立(2003)による分類法を用いて,
コントロールの錯誤が生じる様相を明らかにする.
o3-01
義務論的条件推論における追加必要条件の効果
神戸女学院大学人間科学部
山 祐嗣
実験参加者は、条件文と、真または偽の前提とともに、追加必要条件を与えられて、どの程度帰結を受
け入れるかを評定することを求められた。
「義務−利益」状況と、
「内集団−利益」状況において、実際に、
追加必要条件を考慮して、帰結の受け入れの程度を変更するということが確認された。また、この効果は、
「内集団−利益」状況で大きかった。
o3-02
幼稚園児の分数理解
東北大学
○馬場伊美子
東北大学
岩崎祥一
幼稚園児の保護者にお子様の分数理解についてアンケートをとったところほとんどの保護者は自分の
子どもは2つにわける、3つにわける、4つにわけることができると回答したので、幼稚園児 33 名を対
象に連続量として粘土、離散量としておはじきについて分ける実験を行った。分けることは分数理解の第
1 歩と考えられる。実験の結果、離散量よりも連続量のほうが等分に分ける割合が高く、年齢によっても
異なった。離散量では包含除のほうが幼稚園児にとっては理解しやすいようである。連続量の粘土と離散
量のおはじきでは理解が異なることが判明したので報告する。
o3-03
カウント課題における方略選択の合理性と適応性
慶應義塾大学大学院社会学研究科
○渡辺彩香
慶應義塾大学文学部
伊東裕司
方略選択の合理性,適応性に関して,灰色の画面に白い枠で区切られた黒いマスと灰色のマスから成る
7×7 のマス目を提示し,黒あるいは灰色のマスの数を答えさせる課題を用いて検討した.この課題では,
ターゲットのマスを数える方略,ターゲットではないマスを数えて総マス数から引き算する方略が適用可
能である.方略を自由に選択させた実験,マスの多さの判断と数えやすさに対するマスの色の影響をみた
実験から,マスの多さ,マスを数えるコスト,引き算のコストの見積もりに基づいて合理的に,かつ反応
時間の面で適応的にいずれかの方略が選択されることが示された.一方の方略を半強制的に,あるいは完
全に強制的に用いさせることが後の方略選択を非適応的にする場合があることを示した実験結果(渡辺・
伊東 2005)との比較から,方略選択の合理性,適応性に影響を与える要因について論じ,方略選択に関
して提出されているモデルの妥当性を検討する.
o3-04
視空間情報の知覚 ─運動系における変換処理の selective shaping
EWS 実用科学研究センター基礎部門
○北守 昭
EWS 実用科学研究センター基礎部門
#北守敦子
草食動物や鳥類の視野を知覚体験する目的で製作した左右広角メガネを装着し、5分間の歩行実験を実
o4-01
- 32 -
施したところ、いくつかの興味ある知覚体験報告が得られた。ある被験者の報告では、 人間の視界と違
い右眼と左眼で全く違う景色が映る。両方の眼の視界が重なる部分が全くないので、全体として入ってく
る情報量は多いが、正面が全く見えない上、距離感もなくどの位離れてのかも分からない。 というもの
であった。今回、このメガネを装着し、左右視野別々の情報(カタチと文字)を入力させ、カタチから文
字、もしくは文字からカタチへの知覚ー運動系における変換処理のしくみ(プラニング、プログラミング、
運動の指令)をエラー率や反応時間を指標として実験的検討を行う。
到達把持運動の速度による視覚情報利用の時間変化
京都大学大学院情報学研究科
○福井隆雄
京都大学大学院情報学研究科
乾 敏郎
本研究では,速い到達把持運動におけるオンライン視覚情報の影響を検討した.実験協力者(6 名)は,
スタート地点から 50cm 離れた物体への到達把持運動を約 500ms で行った.また協力者は液晶シャッター
ゴーグルを装着し,実験条件として,運動開始から視覚情報を利用できる時間が 0ms(NV 条件), 80ms
(80S 条件), 150ms(150S 条件), 220ms(220S 条件)と運動全体において利用可能(FV 条件)の計 5
条件を設定した.その結果,指間距離最大値において,220S 条件と FV 条件間に有意差が認められない一
方,NV,80S,150S 条件と FV 条件間に有意差が認められた.更に,NV 条件と 80S 条件間にも有意差が
認められた.これらの結果から,速い運動の把持制御において,運動開始後約 150ms までのオンライン視
覚情報が有効であり,特に運動開始直後から利用されていることが示された.
o4-02
到達把持運動の制御モデル:スピードと精度のトレードオフ
京都大学大学院情報学研究科
○竹村尚大
京都大学大学院情報学研究科
乾 敏郎
京都大学大学院情報学研究科
福井隆雄
到達把持運動では、運動スピードの増加と共に指間距離最大値が増大することが知られている。このこ
とは、運動スピードとトレードオフの関係にある運動精度が運動スピードの増加に伴なって悪化した結
果、到達把持の実現のために指間距離が大きくなるためであると考えられる。一方、竹村ら(2004)は、運
動精度を予測することで到達把持運動の制御を実現する計算論的モデルを構成し、シミュレーションによ
り到達把持運動中に視覚フィードバックを遮断すると指間距離最大値が大きくなる現象を再現した。本研
究では、
この精度予測制御モデルにより、
到達把持運動の運動時間を短くした実験(Fukui and Inui, submitted)
のシミュレーションを行い、運動時間の減少に伴う指間距離最大値の増大を再現した。このことにより、
精度予測による到達把持運動の制御メカニズムの存在が支持された。
o4-03
フィードバックの質の違いによる脳活動の変化
金沢工業大学
○近江政雄
名古屋工業大学
#舟橋健司
名古屋工業大学
#久保谷太亮
金沢工業大学
#塚原大祐
バーチャルリアリティ環境での作業には困難がともなうが、その原因として、実世界での作業に比べて
十分なフィードバックが得られないことが挙げられる。ここでは、赤外線トポグラフィ装置を使用して、
フィードバックの質の違いによる脳活動の変化について検討した。ハサミを使用して紙を切るという、被
験者が慣れている作業を継続しておこなわせたところ、作業時間の経過とともに脳活動が低下し、これは
大脳での認知・行動メカニズムの関与が減少して、自動的に作業がおこなわれていることをしめすものと
考えられる。実際のハサミを使用した場合に比較すると、バーチャルリアリティ環境でハサミを使用した
場合の方が脳活動の低下の程度が大きいという結果が得られ、フィードバックの質の違いによって脳活動
が変化することが明らかとなった。さらに、右脳の上部において、脳活動の変化の違いが特に顕著にあら
われた。
o4-04
o5-01
高レベル放射性廃棄物地層処分をテーマとする Web リスクコミュニケーションモデルの開発
- 33 -
と実験
関西電力(株)原子力事業本部
○久郷明秀
京都大学大学院エネルギー科学研究科
#宇田旭伸
京都大学大学院エネルギー科学研究科
#今木智隆
京都大学大学院エネルギー科学研究科
#下田 宏
大阪大学大学院基礎工学研究科
#伊藤京子
京都大学大学院経済研究科
#若林靖永
京都大学大学院エネルギー科学研究科
#吉川榮和
我国のエネルギー需給を担う原子力発電には高レベル放射性廃棄物地層処分という課題が存在する。こ
の課題を解決するため、体制の法制化がなされてはいるものの、一般社会の認知は薄く NIMBY 意識も強
い。この処分施設設置を受け入れる地域が現れ、周辺地域の理解と賛同を得るためには、一般社会がこの
課題を認知し、真剣に論議することが重要である。筆者らは Web 上に高レベル放射性廃棄物の知識を提
供し、サイトを訪れた人々が電子掲示板でこの問題について自由に意見を述べ合うコミュニケーションモ
デルの研究を行っている。本研究では、環境倫理をメタ認知として Schwartz の規範活性化理論を基にした
対話形式のコンテンツを作り、知識提供形式のコンテンツと対照実験を行った。その結果、対話形式のコ
ンテンツには内省を促し、社会協力行動につながる当事者意識を高める効果があることが判明した。
SCALAR(0x819f744)
「意図をもれなくくみ取る為のリスクコミュニケーション支援の研究」
独立行政法人産業安全研究所
○齋藤耕一
独立行政法人産業安全研究所
#大幢勝利
明治学院大学法科大学院
#櫻井成一朗
東京工業大大学知能システム専攻
寺野隆雄
「リスクの取り方の異なる不特定多数を対象としたリスクコミュニケーションで,ニーズは少数のメッ
セージの意図をもれなくくみ取るときがある.そして,同じ問題に直面してもメッセージの意図は,リス
クの取り方の違いにより人それぞれである.しかし,メッセージの意図の関係を計る予め客観的な評価を与
えることができず少数のメッセージの意図をくみ取ることは難しい.この問題を解決するために,どのよう
なメッセージの意図も必ず含まれるような網羅的な複数のクラスでリスクの取り方の多様性を表し,メッ
セージの意図も複数のクラスタの遷移によって現れるという仮説をたてる.本論文では,網羅的な評価方法
としてお互いに直接の影響を考慮しない「共感」により多様なリスクの取り方の違いを表す.そして,ILP
を利用した分類学習により一部の少数意見でも効率よくキーワードを抽出する方法を提案し,実験によっ
て本論文で提案する方法の有効性をしめす.
o5-02
役割期待に基づくコミュニケーションが信念に与える影響
神戸大学大学院文化学研究科
○菅さやか
神戸大学大学文学部
唐沢 穣
本研究の目的は、コミュニケーションの送り手が役割期待に応じた情報伝達を行う過程を明らかにする
ことである。実験では「製品アンケート」に「消費者」の役割で参加した大学生に回答を求め、その回答
結果がアンケート実施企業に伝えられると告げた。製品が、その企業(情報の受け手)から見て「自社製
品」である条件と、ライバル企業の製品である場合(
「他社製品」条件)を設けた。製品に関する刺激情
報として、ポジティブ・ネガティブ各情報を同数ずつ含むものを呈示した後、製品イメージの自由記述と
評定、そして刺激情報の記憶再生を求めた。分析の結果、受け手にとっての「自社製品」については、ポ
ジティブ情報よりネガティブ情報が多く伝達されるとともに、その伝達内容が遡って伝達者自身の評定や
記憶に影響することが明らかになった。役割期待という社会的関係要因がコミュニケーション行動と認知
に及ぼす影響について考察する。
o5-03
o5-04
広告反復呈示とリスク情報が商品の安心感と購買意図に及ぼす効果
- 34 -
京都大学大学院教育学研究科
○松田 憲
京都大学大学院教育学研究科
楠見 孝
本研究は,広告情報の反復呈示およびリスク情報提示が,消費者の商品に関する知識や安心感,さらに
購買行動に及ぼすプロセスを検討した.広告刺激として,レトルトカレーのコピー(例:これであなたも
「カレー名人」
)にメロディをつけたサウンドロゴを広告刺激として用いた.大学生・大学院生 20 名(男
性 6 名,女性 14 名)にサウンドロゴを聴覚呈示し,コピー文に含まれていた商品名に対する典型性,安
心感,好意度,商品購買意図評定課題を行った.その後に商品についての狂牛病のリスク情報(リスク高,
低)を呈示し,再び同様の評定課題をおこなった.その結果,直後評定ではサウンドロゴの反復呈示によ
って商品名への安心感が高まり,商品購買意図が上昇した.リスク情報呈示後は,安心感や好意度,購買
意図などへのサウンドロゴの呈示回数の効果が消失した.また,リスク情報の呈示によって,安心感と購
買意図が抑制されることが明らかになった.
ユーザビリティ評価のための高齢者の注意・遂行機能評価テストの作成
産業技術総合研究所
○熊田孝恒
産業技術総合研究所
#北島宗雄
産業技術総合研究所
#小木 元
産業技術総合研究所
#赤松幹之
JR東日本研究開発センター
#山崎 博
様々な機器や環境において高齢者にも使いやすい認知的インターフェイスが望まれている。一方、イン
ターフェイス評価の現場では、高齢者の個人差の扱いに苦慮している現状がある。本研究では、高齢者が
認知的インターフェイス場面で示す個人差の一部分は、認知機能の加齢変化の個人差によるという仮説を
たて、個人の認知機能の加齢特性を評価する方法の開発を試みた。特にインターフェイス場面で重要な注
意機能と遂行機能を測定する課題を作成した。高齢者154名に対してこれら課題を実施したところ、
「注
意機能低下群」と「遂行機能低下群」が抽出できた。各群の被験者は、駅施設のユーザビリティに関する
質問紙調査や実際の駅での行動実験において、互いに異なる結果を示した。また、それらは注意機能や遂
行機能の低下によって説明できるものであった。本研究から、認知的インターフェイスの評価において、
認知的加齢特性を考慮することの有効性が示された。
o5-05
エラー反復のメカニズムと注意機能
法政大学社会学部
○原田悦子
中央大学大学院文学研究科
須藤 智
高齢者に特徴的な「人−人工物間相互作用」の一つに,エラー反復,すなわち一旦おこなわれたエラー
操作が連続して繰返される現象がある.本研究は,ユーザビリティ・テストではしばしば観察されるエラ
ー反復現象を実験室内で再現し,その現象の発生に寄与する要因の抽出を目的として実験が行われた.漢
字選択課題(原田・須藤,2003)の実験条件を変更し,(a)反応選択肢を空間的にランダムに配置し,かつ(b)
選択肢の半分に視覚的顕在性を高めるための彩色を施したところ,(1)若年層(大学生)でも数%∼10%のエ
ラー反復が見られ,(2)二重課題による注意分割下では選択肢の彩色によりエラー反復が起こりやすくなる
ことが示された.そこで高齢者群については,予め AIST 版認知的加齢テストで群化した参加者を対象と
して実験を行い,エラー反復現象の発生要因,とりわけ注意要因についてさらに検討を行った.
o5-06
発達的制約からみた幼児音化:構音学習モデルを用いた定量的な検討
京都大学大学院情報学研究科
○井尻昌範
京都大学大学院情報学研究科
乾 敏郎
日本電信電話株式会社
#天野成昭
NTT コミュニケーション科学基礎研究所
日本電信電話株式会社
#近藤公久
NTT コミュニケーション科学基礎研究所
幼児が発話する際に,目的の音を構音できず誤った構音をする現象が知られている.この現象は幼児音
o6-01
- 35 -
化と呼ばれ,例えば「おさら」が「おしゃら」になるなどがみられる.本研究では構音制御モデルを用い
て幼児音化の生起メカニズムを定量的に検討した.対象としたのは,2 児の発話中に多くみられた語頭お
よび長音直後の/s/,/d/が/sh/,/n/に,語中で/d/が/r/に置換される幼児音化である.構音速度について検討した
結果,舌の前後運動を遅くすることで,語頭での幼児音化を再現することができた.また,各子音を構音
した際の,舌の前後運動に関連するパラメータの変化量を検討した結果,変化量が最小となる音と語頭で
の幼児音化が一致することがわかった.同様に,前後の音素を考慮したときの曲率を最小にする音と語中
での幼児音化が一致することも示された.これらのことから,幼児音化の原因が舌の前後運動の未発達で
あることが示唆された.
段階的に統語規則を獲得するニューラルネットワークモデル
京都大学大学院情報学研究科
○森藤大地
京都大学大学院情報学研究科
乾 敏郎
森藤,乾(2003)が提案した統語知識の学習進度に基づいた語彙獲得モデルでは,主語や述語など単語の
属する統語的カテゴリの学習に伴って語彙獲得が促進し,語彙爆発曲線が再現された.本研究では,この
ネットワークの統語規則の学習に対してより詳細に分析を行った.自然言語の特徴を部分的に含んだ言語
モデルで生成した文をネットワークに一単語毎に提示し,入力系列に対して次の単語を予測するよう学習
を行った.予測成績のプロフィールから, (1)主語-述語という基本的な語順,(2)自動詞と他動詞の識別,
(3)主語と述語の数の一致(三単現),という順序で提示された言語モデルに含まれる規則をネットワークが
段階的に学習することが示された.また,ネットワーク内部における単語の表現から,単語の属するカテ
ゴリを段階的に符号化していることが観察された.以上の結果と幼児の段階的な統語獲得の学習との関連
性について考察を行う.
o6-02
文脈は内容より強し?
千葉大学文学部
伝 康晴
「航空機がフランスとスペインのちょうど国境上に墜落した。当局は生存者をどこに埋めればいいだろ
うか」といった文章を読ませたとき、多くの被験者が「生存者」という語の意味的不適合に気づかないこ
とを Barton & Sanford (1993)は示した。しかし、彼らの実験は自由回答式であったため、被験者が本当に不
適合語に気づいていないのか、たんにそのことを報告しないだけなのかわからない。本研究では、彼らと
同様な不適合語を含む文章と、文章中で発せられる質問に対する3択の選択肢を提示した後、文章中に出
現した語に関する単語再認を課すという実験パラダイムによって、被験者が不適合語に気づいているかど
うかを明示的に検証した。その結果、不適合語を含む文章に対する単語再認の正解率・反応時間は適合語
を含む文章よりも悪く・遅くなることを確認した。文脈はしばしば、反対の意味の語を文脈に合った語に
読み誤らせるのである。
o6-03
ウソはどのような言語内容から判断されるのか?
東北大学文学研究科
○佐藤 拓
東北大学文学研究科
菊地史倫
東北大学文学研究科
仁平義明
人のウソ検出の正確さは一般に 45∼65%だとされる (Vrij, 2000).いくつかの言語的手がかりがウソ認
知へ影響することがわかっているが (e.g., McCornack, 1992),包括的な言語内容によるウソ認知の研究はさ
れてこなかった.そこで,
(1)実際の 9 ケースの話でウソかどうかの判断に影響した言語的手がかりを抽
出し,
(2)それらの手がかりがウソの最終判断にそれぞれがどの程度の重みを持っているか検討した.そ
の結果,12 の言語内容からの手がかり(生起頻度,矛盾,極化,曖昧,パラ言語,など)が抽出された.
また最終的なウソ認知に強く影響していたのは,
「手がかりの総数」と「生起頻度(絶対的生起頻度ち文
脈的生起頻度)
」であった.しかし,意識化された手がかりからの最終的なウソ判断への説明率はやや低
く,人は意識化されない手がかりによってウソを判断している可能性が高いと考えられた.
o6-04
o7-01
画像特徴量の局所的相関を利用したシーンのカテゴリ認識モデル
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京都大学大学院情報学研究科
○鷲野浩之
京都大学大学院情報学研究科
齋木 潤
科学技術振興機構
我々は,視環境中の複雑なシーンから得た情報を瞬時に正しく認識することができる.いかにしてシー
ンを瞬時に認識しているかについての見解はいくつか提案されているが,それらは,カテゴリ弁別のみを
対象とし,カテゴリ同定については議論していない.本研究では,シーンの自然画像からガボールフィル
タによって抽出した局所的な特徴量の相関,共分散を特徴ベクトルとして,自然画像のシーンカテゴリ認
識モデルを構成し,新規画像に対して,複数のシーンカテゴリを同定できることを示した.さらに,8つ
のシーンカテゴリから成る自然画像のセットを用いて,瞬間呈示された画像のカテゴリ同定実験を行い,
カテゴリ同定誤りパタンから混同行列を作成し,多次元尺度法を用いて人間の心理的類似性空間を構成し
た.この人間の類似性空間とモデルの類似性空間を比較し,局所的な画像特徴量の相関,共分散情報のみ
で人間と同様な認識を行えることを示した.
2 種の alignment effect と方位感覚の関係
法政大学社会学部
○新関亮太
法政大学社会学部
原田悦子
新関・原田(2004)は,外的表象である地図において方位が歪んでいる (北が上ではない) ことによる効果
が,方位を把握している群と位置関係のみを用いる群によって異なることを,スケッチマップ法を用いて
示した.本研究ではさらに alignment 効果(Levine,1982)に着目し,地図上の方位の歪みによる影響につい
て DM 版方向判断課題を用いて検討した.スクリーニングテストにより方位把握群/位置関係群の 2 群を
被験者として抽出し,自己中心座標の alignment 効果と方位による alignment 効果の 2 種の効果を検討した
ところ,方位把握群では 2 種の alignment を面として統合的に扱おうとする方略が見られるのに対し,位
置関係群では自己中心座標系を中心とし,2 種の alignment 効果がそれぞれ独立して影響を与えていること
が示された.空間表象における外的資源と内的枠組の関係について考察する.
o7-02
聴覚的な注意分割課題を用いた意味活性化の検討
名古屋大学大学院環境学研究科心理学講座
○大塚幸生
名古屋大学大学院環境学研究科心理学講座
川口 潤
単語を提示する際に注意分割課題を行うと,意味活性化の程度が影響を受けることが知られている.
Smith et al.(2001)は,単語の意味活性化の程度は,それに向けられる注意の量によって決定されるとし
た.しかし,この研究では単語に対して子音−母音判断という視覚的な注意分割課題が使用されたが,判
断の際に単語が音読されることで同時に意味処理も行われ,ターゲット処理との両方で意味処理が行われ
た結果,意味活性化が生じた可能性が残されている.そこで本研究では,意味処理が重複して行われる可
能性を排除するために,視覚的に提示される単語とは異なるモダリティの聴覚的な注意分割課題を使用
し,意味活性化の程度を検討した.その結果,全ての注意分割条件間で意味活性化の程度に違いが確認さ
れた.これは,Smith et al.(2001)の結論を支持しており,視覚的な単語認知と聴覚モダリティとの相互
作用が示唆された.
o7-03
視覚的移動フレームが目標探索に与える効果
産業技術総合研究所人間福祉医工学研究部門
○石松一真
産業技術総合研究所人間福祉医工学研究部門
熊田孝恒
高次脳機能障害では,適切な情報への注意の集中や持続が難しいなど注意機能に障害を有することが少
なくない.それてしまった障害者の注意を目的の対象へ向けなおすことが出来れば,効率的な情報獲得が
可能となる.本研究は,注意障害者のより円滑な情報獲得を支援するために,注意の喚起および維持に有
効な外的コントロールの方法を探ることを目的とした.そのために健常者を対象とした基礎データの収集
を行った.被験者はアルファベットが配列された画面から数字を探索し,奇数であるか偶数であるかを判
断した.外的コントロールとして目標の位置情報とは無関連な視覚的移動フレームを利用した.視覚的移
動フレームの有無,移動速度(一領域あたりのフレームの提示時間)
,および移動順序を操作し,目標探
o7-04
- 37 -
索時間を主な指標とした.視覚的移動フレームが目標探索に与える影響について,注意喚起・維持・誘導
効果という観点から考察する.
表示画面位置の感性表現特性
筑波大学図書館情報メディア研究科
○椎名 健
筑波大学図書館情報メディア研究科
#志賀祐美子
本研究は、表示画面のそれぞれの位置が感性的表現を異にする位置特性について検討した。実験1では、
色彩(赤・黄・緑・青)にふさわしいと感じる位置に「色パッチ」を配置することで色と位置の相性を調
べた。実験2では、形容詞など16語にふさわしい位置に、色パッチを配置し、形容詞の位置特性に色が
影響するかどうかを見た。実験3では、4色を典型的な位置に置いた「色・位置見本」を、上で述べた形
容詞など16語を両極とする8尺度を7段階で評定するSD法を用いて評価した。その結果、色にマッチ
した画面位置があること、形容詞にマッチした画面位置は色彩に強く影響を受けるものと受けないものが
あること等が明らかになった。
o7-05
断続的嗅覚刺激に対する感覚強度変化:認知的要因と学習効果
文京学院大学
(独)産業技術総合研究所
○小林剛史
(独)産業技術総合研究所
#小早川達
(独)産業技術総合研究所
#秋山幸代
日本体育大学スポーツトレーニングセンター
筑波大学大学院工学研究科
#戸田英樹
(独)産業技術総合研究所
#斉藤幸子
本研究は、におい刺激に関する情報の提示といった認知的要因がにおい刺激の知覚に及ぼす影響、およ
びにおい刺激の提示が初めて行われるのか、2 回目以降であるのかといった提示順(におい刺激に対する
慣れ:学習効果)の影響について、刺激を断続的に提示する方法を用いて検討した。実験参加者は、まず
使用されるにおい刺激に関する説明(positive/negative 条件のいずれか)を受け、その後断続的に提示さ
れるにおい刺激を計 60 回嗅ぎ、その間リアルタイムに強度評定を行った(session 1)
。その後、session 2
では session 1 で未経験の方の教示を受け、それ以外は同条件で強度評定を行なった。その結果、少なくと
も同一参加者に対してにおい刺激が断続的に提示される条件では、感覚強度に及ぼす学習効果の影響が認
知的要因の影響をマスキングすることを示唆する結果を得た。
o7-06
フォールスメモリに及ぼす部分手がかりの抑制効果 —テスト時の活性化説への反証—
聖心女子大学
○高橋雅延
愛知県立芸術大学
#川口敦生
部分手がかり抑制効果とは、リストの一部分である部分手がかりを与えた場合、何も手がかりを与えな
い自由再生より、記憶成績が抑制される効果を言う。本研究では、フォールスメモリを生み出すためのD
RMパラダイムを使い、リスト語とクリティカル語(フォールスメモリ)の再生率への部分手がかり抑制
効果について検討した。2つの実験において、75語の聴覚呈示の後、自由再生群と部分手がかり再生群
を比較したところ、部分手がかりによる抑制効果はリスト語でもクリティカル語のいずれにおいても認め
られた。これらの結果は、部分手がかりの呈示による検索方略中断説によって解釈された。
o8-01
自伝的記憶の新旧度が検索プロセスに及ぼす影響
岡山大学文学部
堀内 孝
自伝的記憶には最近のものから数十年前のものまで,その年代には大きな幅がある.想起する自伝的記
憶が古くなると,自伝想起における意識的成分と自動的成分はどのように変化するのであろうか.本研究
では,堀内(2004)に準拠して RK パラダイムを適用し,大学生 3 年生を被験者にして,新しい自伝的記憶
(大学時代の 3 年間)を想起する条件と古い自伝的記憶(中学時代の 3 年間)を想起する条件を比較した.
その結果,古い自伝的記憶条件の方が新しい自伝的記憶条件より,R 成分と K 成分のいずれに関しても有
o8-02
- 38 -
意に少なかった.また,Jacoby(1998)の IRK 手続を用いて,意識的成分と自動的成分を算出した結果,古
い自伝的記憶条件の方が,意識的成分と自動的成分のいずれに関しても有意に少なかった.以上の結果か
ら,自伝的記憶は古くなると回想し難くなると同時に,不随意的(自動的)にも想起され難くなることが
示唆される.
自伝的記憶の長期にわたる語り直しの効果
東北大学文学研究科
○池田和浩
東北大学文学研究科
仁平義明
自伝的記憶を肯定的に語り直すときのインターバルの長さが参加者の自伝的記憶の変容度に与える影
響を検討した.一群の参加者は自分が体験した受験生活の思い出を 1 週ごとに語り,もう一群の参加者は
1 ヶ月ごとに語った.セッション 1 ですべての参加者は彼ら自身の受験生活の思い出を語った.実験群の
参加者は,セッション 2・3 で受験生活の思い出を楽しかったこととして語り,セッション 4 で実験の最
初に語った元々の受験生活の思い出を再生した.統制群の参加者は,彼らの受験生活の思い出を繰り返し
語った.実験の前後で, 受験生活に関する中心的概念と周辺的概念 の印象評定が行われた.その結果,
ネガティブな体験を肯定的に語り直すことは,記憶の感情的側面,記憶の内容そのもの,記憶を構成する
中心的概念にそれぞれポジティブな影響を与えることが確認された.また,インターバルの長短に関わら
ず,自伝的記憶の内容が変容していた.
o8-03
自伝的記憶の検索:感情比率を用いた検討
名古屋大学大学院情報科学研究科
○間野陽子
名古屋大学大学院人間情報学研究科
小河妙子
名古屋大学大学院情報科学研究科
齋藤洋典
Haque & Conway (2001)は,自伝的記憶が人生の時期と一般事象と事象特定知識(ESK)からなる自伝的知
識基盤を通して直接検索と生成検索によって想起されると論じている.一般に自伝的記憶の想起には感情
が伴うことが報告されている.もし 2 種類の検索によって想起される ESK が等質な感情特性を含むなら
ば,それぞれの ESK に伴う感情に差は認められないと考えられる.本研究では,彼らの手続を一部変更
して集団実験を行い,ESK に伴う感情のタイプが直接検索か生成検索かに関わらず一定の比率を示すか否
かを検証した.被験者には,手がかり語に対して記憶を想起し,3 条件の検索時間(2,5,30 秒)を経た後
に想起内容を筆記再生することを求めた.その結果,不快感情を伴う ESK の想起率が 30 秒条件において
2 秒条件よりも高いことが確認された.この結果は 2 種類の検索が質的に異なる ESK への検索を促すこと
を示唆する.
o8-04
検索誘導性忘却のモデル:検索固有性のシミュレーション
名古屋大学環境学研究科
○月元 敬
名古屋大学環境学研究科
川口 潤
本研究の目的は,検索には抑制過程が付随しているという検索誘導性忘却研究からの知見に基づき構成
した記憶検索のモデルを示し,検索誘導性忘却及びその重要な特徴とされる検索固有性 (retrieval
specificity) のシミュレーション実験について論じる.このモデルは Hintzman (1984) の MINERVA 2 を基本
的なアーキテクチャとしているが,抑制過程を組み込んでいる (この点で寺澤 (2001) の UME モデルと概
念的には共通している).このモデルは,(1)活性化,(2)抑制または脱活性化,(3)反応生成,(4)表象の生成
能力の変動,(5)新たな表象の格納,という一連の過程からなるが,これらは全て表象の活動としてモデル
化されている.このモデルによるシミュレーションの結果,検索誘導性忘却の典型的パタンと検索固有性
のパタンの両方が認められた.
o8-05
o8-06
快不快感情を随伴する自伝的記憶に対する再認過程
名古屋大学大学院情報科学研究科
名古屋大学大学院情報科学研究科
名古屋大学大学院情報科学研究科
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○齋藤洋典
井藤寛志
大井 京
名古屋大学大学院人間情報学研究科
#清水英樹
本研究では,自伝的記憶に随伴する快不快感情が,自己に関する記憶の再認過程に果たす役割を検討す
る.被験者は,誕生から高校終了までの自伝的記憶の筆記再生と,それらに随伴する快不快感情の分類を
求められ,約1ヶ月後に個別に自伝的記憶の再認実験を受けた.再認材料の半数は,各被験者が再生した
(自己想起)項目であり,残り半数は他人が再生した(他者想起)項目であった.全再認項目は,随伴感
情 (快・不快)と,想起者(自己・他者)の組合せによって,4種類に区別される.被験者の課題は,視覚
呈示される語句が,再生課題で自身が想起した項目であるか否かを Yes/No 判断することであった.デー
タを想起者(2)×感情(2)タイプ別に分析した結果,不快感情を随伴する自己想起項目に対する正反応
時間が遅く,同項目に対する誤再認率が高いことが確認された.この結果は,不快な自伝的記憶が,快を
伴うそれとは異なる処理を受けることを示す.SCALAR(0x819f538)
技能遂行での段取りに関する研究
金沢工業大学情報フロンティア学部
○神宮英夫
心理情報学科
金沢工業大学情報フロンティア学部
#笠松慶子
心理情報学科
スキルとして組立作業を選び、その遂行結果をエラー数と総作業時間で分類し、パフォーマンスを評価
した。よいパフォーマンスを示した参加者が持つ組立てパターンと作業パターンとから、作業における段
取りの特質を明らかにし、どのような段取りがよいパフォーマンスをもたらすのかを論じた。
o9-01
手の左右同定課題における被験者自身の手の状態の影響
京都大学大学院教育学研究科
○石橋 遼
京都大学大学院教育学研究科
齊藤 智
手を表す視覚刺激を用いたメンタル・ローテーション課題(手の左右同定課題)において、RT パタン
が実際の手の運動制約に即したものになることが Sekiyama(1982)、Parsons(1987)などの研究によって知ら
れている。手の身体表象を形成・操作する過程と、実際の手を認知・制御する過程とは、ある程度同一の
心的機能の働きとして実現されている可能性がある。このとき、課題遂行時の被験者自身の手の状態が課
題結果に影響を及ぼすことが予想される。そこで被験者の手の状態を操作した上で手の左右同定課題を行
い、手の状態要因が RT に及ぼす影響を検討した。結果、刺激の種類によっては手の状態要因の影響が明
確に認められ、刺激に近い手の状態が予め用意されている時には反応時間が短くなることが示された。こ
のことから手の体性感覚情報が課題遂行に用いる身体表象の形成過程に影響を及ぼしていたことが示唆
された。
o9-02
打叩音によるコミュニケーション時の身体動作に関する研究
大阪大学大学院人間科学研究科
○河瀬 諭
大阪大学大学院人間科学研究科
中村敏枝
大阪大学大学院人間科学研究科
片平建史
大阪大学大学院人間科学研究科
川上 愛
大阪大学大学院人間科学研究科
安田晶子
日常的な対人コミュニケーション場面において、我々は多様なコミュニケーションチャネルを通して情
報のやり取りを行っている。本研究はその中でも身体動作に着目した。身体動作についてはこれまでジェ
スチャーや姿勢がその研究対象になってきたが、これらは定量的な計測が困難である場合が多かった。ま
た、近年四肢を備えたロボットが開発され、それらが人間と円滑なコミュニケーションを行うためにどの
ように振舞えばよいのかに関しては課題となっている。そこで、本研究ではコミュニケーションにおける
身体動作の定量化、さらにその法則性の発見を目的として実験を行った。本実験では、言語情報の影響を
排除するため、打楽器を用いたコミュニケーション場面を設定した。本研究はコミュニケーション時の身
体動作についてより定量的な分析手法を提案すると共に、今後工学的な応用についても視野に入れたもの
である。
o9-03
- 40 -
発話に随伴するジェスチャーの想起に及ぼす DAF の効果
名古屋大学大学院情報科学研究科
○大井 京
金沢工業大学人間情報システム研究所
沢田晴彦
名古屋大学大学院情報科学研究科
齊藤洋典
発話に随伴する自発的ジェスチャーは,発話内容との対応が認められる表象的ジェスチャーと,発話内
容との対応をもたず,リズミカルな動きとして表出されるビートとに区分される.観察したアニメーショ
ンの内容を,話者の発話音が遅れて聞こえる遅延聴覚フィードバック(DAF)条件と,遅延無く自然に聞こ
える(NAF)条件下で,別室の聞き手に伝達することを大学生に求めた.伝達課題の終了後に,発話内容の
忠実な想起と口述を DAF 条件下で求めた.発話 100 語あたりのジェスチャー生起頻度を分析した結果,
ビートの生起数は,DAF/NAF 条件にかかわらず,伝達と想起課題間で差が認められなかった.これに対
して,DAF 条件下で実施された伝達課題で産出された表象的ジェスチャーの生起数は,想起課題で半減
することが確認された.これは,ビートと表象的ジェスチャーとが DAF から異なる影響を受け,異なる
機能を有する可能性を示唆する.
o9-04
非流暢発話における自己指向的ジェスチャーの機能
名古屋大学大学院人間情報学研究科
(現:金沢工業大学人間情報システム研究所
石川県知的クラスター創成事業)
○沢田晴彦
名古屋大学大学院情報科学研究科
大井 京
名古屋大学大学院情報科学研究科
齊藤洋典
発話者の音声を 200ms 程度遅らせて聞かせる遅延聴覚フィードバックを与えると,非流暢な発話が引
き起こされることが知られている.齋藤・沢田・大井(2003)は,非対面状況での伝達課題を用いて,遅
延聴覚フィードバック下での非流暢発話における自己指向的ジェスチャーの役割を明らかにした.本研究
では,齋藤ら(2003)で確認された非対面状況における自己指向的ジェスチャーの役割を,聞き手の理解
という観点から主観評定実験を用いて検討した.8 名の評定者に伝達内容のわかりやすさについて主観的
に評定させた結果,ジェスチャーを見ることができる AV 条件と音声だけを聞く A 条件のわかりやすさに
違いはなかった.一方で,聴覚条件の変化に伴うジェスチャー割合の変化と話のわかりやすさに大きな相
関があることが明らかになった.これらの結果は,非対面状況におけるジェスチャーが自己指向的であり,
発話者の発話を助ける役割を持つことを示している.
o9-05
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ポスター発表
地理的情報処理方略と経路探索エラータイプ
東北大学大学院文学研究科
○本多明生
東北大学大学院文学研究科
仁平義明
本研究は, Questionnaire on Spatial Representation(Pazzaglia et al., 2000)を原著者の許可を得て翻訳し、
Burn(1998)の経路探索エラー項目を用いて、情報処理方略と対象者が実際に一週間内に経験した探索エ
ラーとの対応関係を検証した。併せて、竹内(1992)の方向感覚尺度(SDQ-S)との関連を調べた。その
結果、イタリアでの研究とは異なり、
(1)我が国の地理的情報処理方略はランドマーク型とサーヴェイ型
に 2 分されること、
(2)ジェンダー差(ランドマーク:女性>男性、サーヴェイ:男性>女性)が存在す
ることが示された。サーヴェイ尺度は SDQ-S 全体得点と有意な相関を示したが、ランドマーク尺度得点
はほとんど相関が無かった。さらに、
(3)ランドマーク型方略は「ルート情報の処理・検知エラー」と対
応し、
(4)サーヴェイ型方略は「意思決定エラー」と対応することが明らかにされた。SCALAR(0x819f828)
p1-01
ナスカ台地のランドマーク
山形大学人文学部
渡邊洋一
ナスカの地上絵(ペルー)を描いた人々の空間認知について、現地調査に基づいて検討した。ナスカの
地上絵は、年間降水量 10 ㎜以下の極度に乾燥した台地上の表面の石を除けることによって描かれており、
パンアメリカンハイウェイ建設以外には開発による大規模な破壊を免れている。そのため、1500 年∼2000
年前という地上絵が描かれた当時とほとんど同じ景観を観察することができる。台地東側の山並みは格好
のランドマークとなるが、その他に数 m 程度の起伏やケルンなどを目印として利用可能である。台地の
西側の山塊は遠く比較的平坦で顕著な目印とはならず、この方面には地上絵もほとんど描かれていない。
地上絵の多くは互いに重複して描かれており、相互関係を見いだすのは困難である。これらの観察結果を
ふまえ、地上絵を描いた人々の空間認知について考察する。
p1-02
男性は女性よりも高低差に敏感か−東北大学植物園を歩いた記憶−
東北大学文学部
○小澤麻美
東北大学文学研究科
仁平義明
これまで二次元(平面)空間の記憶に関する性差が報告されてきている。ここでは、三次元の屋外自然
環境である植物園をフィールドとして距離・高さの認知の性差に関する研究を行なった。のぼりくだりの
ある環境においても、距離認知では、男性の距離認知の相対的な正確さが示された。また、高さは全般的
に低く見積もられていたものの、男性は小さな高低の変化も女性よりも正確に認知し、高低差に敏感であ
った。両性とも、緩やかなのぼり道よりも、急なのぼり道の距離を過大評価した。これらの結果は労力仮
説(Cohen, Baldwin & Sherman, 1978)によって部分的に説明できた。さらに、再生された地図では、ルート
の曲がり角度の大きさは、両性ともに過大評価し、男性の方が正確だった。
p1-03
相関図の読みとりに関する検討
名古屋大学大学院教育発達科学研究科
○布施光代
秋田大学教育文化学部
山名裕子
図表の読みとりや作図は小学校から学校教育で扱われている。さらに,日常生活の中でも,情報を処理
したり,他者に伝達するために必要とされる能力である。また,心理学を学習したり研究する際には,適
切な図表の読みとりや作図能力が求められるであろう。多様な図表の中で,相関図は心理学を学習する上
で正しく理解することが求められる図でありながら,相関関係と因果関係の混同などの誤解が生じやすい
図であると考えられる。そこで,本研究では心理学を学習している大学 2,3 年生を被験者とし,呈示され
た相関図からどのようなことを読みとるのか,また,問題点を指摘できるかどうかを検討した。結果とし
て,全体的に正しく相関関係を読みとることができることが示唆された。また,問題点の指摘については,
単位がないことやデータの母集団に関する情報不足の指摘など,作図に関するものだけでなく心理学の研
究にとって重要であると思われる指摘もみられた。
p1-04
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絵画の中の「余白」 −その構造,機能,印象−
九州大学大学院人間環境学府
○鮫島祥子
九州大学大学院人間環境学府
三浦佳世
本研究では,絵画の中の「余白」に着目し,余白の種類とその働き,および余白とその他の印象との関
係について検討した.その際,各絵画について,余白をどれくらい感じるかという「余白感」を測定した.
また,余白に関する自由記述結果をもとに尺度を作成し,評定した.余白感以外の印象については,形容
語による記述選択を行った.以上の結果,余白には「メインとなる余白」
,
「引き立たせる余白」
,
「余白部
分と対象との関係性」の3つがあり,
「メインとなる余白」と「余白部分と対象との関係性」は「余白感」
に影響を与えることが示された.また,3つの余白とその他の印象との対応が見られ,
「引き立たせる余
白」と印象がポジティブであるのか,ネガティブであるのかという印象の質とに相関が確認された.これ
より,
「引き立たせる余白」という「余白感」には現れない余白の特性が,絵画全体の印象に影響を与え
ていることが示唆された.
p1-05
遠近法の歪み知覚が絵画印象に与える影響−自由発話を指標として
名古屋大学大学院環境学研究科
○石坂裕子
名古屋大学大学院環境学研究科
#高橋晋也
本研究では、遠近法が不正確な絵画と、正確になるよう修正された絵画を刺激とし、遠近法の歪みが絵
画の印象に与える影響について調べた。オリジナル絵画と修正絵画の印象評定値の比較、および絵画観察
時の自由発話における遠近法の歪みに関する発話の有無を指標とした。オリジナル・修正絵画を数日あけ
て「別の絵」として呈示した第1実験の結果、遠近法の歪みは必ずしも自発的に知覚できるわけではなく、
絵画の印象も変化しなかった。ただし、絵画の「奥行きの正確さ」判断課題でオリジナル絵画の歪みを判
断できた場合には、過去の実験でみられた教示効果と同様に、絵画の「新奇性」や「規則性」の印象が影
響を受けることが示された。この結果を踏まえ、第2実験ではオリジナル・修正絵画を同時に観察させて
自由発話を行わせた。二枚を直接見比べさせることでその差異に気づかせ、印象の変化をより鋭敏に捉え
ることを目的とした
p1-06
手描き図形を用いた印象伝達の検討 −図形の着色−
筑波大学図書館情報メディア研究科
○山口由衣
筑波大学図書館情報メディア研究科
椎名 健
本研究では、手描き図形を用いた印象伝達を促進させるために、図形着色実験を行い、形と色の相互作
用を検討する。まず、形容語6語について描画群 41 名が手描き図形を描画した。これらの 246 個の図形
のうち、描画者の自己評価の高い図形から各語 12 個づつ選出し、評価群 80 名に印象評価を行わせた。こ
の結果から、描画した形容語の印象評価値が最も高い(他者に形容語の印象を伝達できた)図形を各語1
個ずつ取り出し、これを典型図形とした。典型図形6個を着色群 10 名によって最適と思われる色を用い
て着色させ、着色色の最適度を自己評価させた。さらに、形のみの印象評価・着色した色のみの印象評価
を行った。手描き図形の印象における形と色の相互作用を検討する。
p1-07
反復聴取は音楽の聴取印象に長期的な影響を与えるか
筑波大学心理学研究科
○生駒 忍
筑波大学人間学類
#新井紀彰
筑波大学心理学系
太田信夫
反復聴取によってその音楽の聴取印象が変化しうることは多くの研究で認められており,記憶や感情の
学術研究のみならず,音楽マーケティングなどの応用的観点からみても興味深い現象である。しかし,こ
れまでの検討は 1 回の実験セッション内での変動のみを扱っており,このような効果が長期にわたり持続
するかどうかは検討されていない。そこで本研究では,反復聴取の効果がその 1 週間後にも確認されるか
どうかを検討した。被験者は予備調査によって選定された楽曲を 10 回聴取し(第 1 セッション)
,その 1
週間後に同一曲を再度聴取した(第 2 セッション)
。分析の結果,第 1 セッション内においては,好き−嫌
p1-08
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いの評定値に反復聴取による変動がみられた。しかし,第 2 セッションでの評定値は反復聴取前の状態へ
戻る傾向を示していた。よって,反復聴取が聴取印象に与える効果は長期にわたり安定して持続するわけ
ではなく,時間経過により減衰することが示された。
絶対音感保持者のメロディ認知における大脳半球機能差
関西大学社会学研究科
○水内真理
関西大学社会学部
関口理久子
本研究は絶対音感保持者のメロディ認知はどのような処理であるか、またその認知処理は非絶対音感者
と異なるのかを検討することを目的として、両耳分離聴法を用いた再認課題によりピアノ音、日本語歌詞
の歌、なじみのない外国語歌詞の歌における大脳半球機能差を検討した。実験は2種類行い、統制群とし
て実験1は無作為に選んだ男女、実験群として実験2では絶対音感保持者と非絶対音感者を被験者とし
た。この結果、実験1のピアノ音では男女とも右半球が優位、日本語では、女性のみに右半球優位、外国
語では左右差はないが、再認の反応に性差があるという結果が得られた。実験2のピアノ音では絶対音感
保持者は左半球優位、非絶対音感者は右半球優位、日本語と外国語では左右差はないが、絶対音感保持者
は非絶対音感者より反応時間が遅い傾向にあるという結果が得られた。これによって絶対音感保持者のメ
ロディ認知の処理は非絶対音感者と異なる傾向を示した。
p1-09
音楽聴取時の感動と性格特性の関係について
大阪大学大学院人間科学研究科
○川上 愛
大阪大学大学院人間科学研究科
中村敏枝
大阪大学大学院人間科学研究科
河瀬 諭
大阪大学大学院人間科学研究科
安田晶子
大阪大学大学院人間科学研究科
片平建史
音楽と情動に関する研究は古くから多く行われてきているが、 感動 と関連のある研究としては音楽
に対する 強い情動体験 (emotion of strong experiences with music)が挙げられる。中でも、Gabrielsson の
SEM(The Strong Experiences of Music)プロジェクトと名付けられた研究は音楽、人、状況のうち、どの要
因が SEM(The Strong Experiences of Music)に貢献するか調査することを目的としている。この調査は
Panzarella(1980)の研究を参考としており、Panzarella は音楽のピーク体験と人格特性に関係があることを示
唆している。したがって、本研究では音楽聴取時の感動と人格特性に関係があるか調べるため質問紙調査
を行った。質問紙は性格特性の尺度、音楽聴取時の感動に関する質問で構成されている。なお、性格特性
の尺度には和田さゆり(1996)によって開発された Big Five 尺度を用いた。
p1-10
演奏におけるタイミング—演奏者と聴取者の認知の差—
大阪大学大学院人間科学研究科
○片平建史
大阪大学大学院人間科学研究科
中村敏枝
大阪大学大学院人間科学研究科
河瀬 諭
大阪大学大学院人間科学研究科
川上 愛
大阪大学大学院人間科学研究科
安田晶子
この研究は、演奏のタイミングについての評価に演奏者と聴取者とで差異が生じるか、また生じる場合
にはそれがどのような差異であるかを調べたものである。同一の被験者が同じ演奏について、演奏者とし
て評価した場合と聴取者として評価した場合の比較を行うための2つの実験を行った。第1の実験では、
被験者は自分の行った演奏のタイミングについて評価を行った。第1の実験と同じ被験者を対象とした第
2の実験では、被験者は第1の実験で被験者本人が行った演奏を聴取し、演奏の評価を行う際と同様の評
価を行った。2つの実験で得られた結果は比較され、演奏音の音響特性や生理指標として測定された呼吸
の影響が検討された。この実験で得られた成果は、音楽的な技能の訓練においてフィードバックが重要で
あることを示すものであるとともに、演奏と聴取の両方を含む研究において演奏者と聴取者をいかに取り
扱うかという問題について示唆を与えるものである。
p1-11
- 44 -
演奏音の音響的特性と聴取者の感動体験の関係
大阪大学大学院人間科学研究科
○安田晶子
大阪大学大学院人間科学研究科
中村敏枝
大阪大学大学院人間科学研究科
河瀬 諭
大阪大学大学院人間科学研究科
川上 愛
大阪大学大学院人間科学研究科
片平建史
音楽聴取時に感動状態を経験することは日常的に起こり多くの人が報告しているにも関わらず、音楽聴
取時の感動体験を扱った研究は数少ない。そこで音楽聴取に伴う感動の要因を探るため、演奏音の音響的
特性に着目し定量的な研究を行った。予備調査により、
「鳥肌が立つ」
「胸が締め付けられる」
「背筋がぞ
くぞくする」
「涙が出そうになる」
「興奮する」
「切なさを感じる」の6つの強い情動反応が音楽聴取時の
感動体験に伴うことがわかった。次にこれらの強い情動反応を喚起する音響特性を特定するため実験を行
った。音楽聴取場面にある被験者に、各反応の生起をボタンによって報告してもらうという実験である。
結果をピッチ、レベル、テンポ、音価の側面から検討したところ、上行系のピッチを伴う「高揚部」から
レベルの減少やテンポの減速を伴う「沈静部」へと続く時系列的な変化が音楽聴取場面での感動状態の喚
起において重要な要因であることが示唆された。
p1-12
メロディ認知におけるテンポ変容の効果
鹿児島大学大学院教育学研究科
小山大輝
Welker(1982)は,被験者は前もって聞いた変奏された曲からプロトタイプメロディを抽出していると
した.このようなメロディでのプロトタイプ抽出に関した研究はその実験パラダイム上,新規メロディを
扱うことになる.しかし,新規メロディではなく既知メロディに関して我々の心内にそれがどのように形
成され,格納されているかといった研究は未だ十分になされているとは言えない.そこで本研究では心内
メロディとして形成され格納されている既知メロディのありようを検討するために,メロディに必然的に
付随している重要な要素であるテンポに焦点を当て,テンポの変容が既知メロディの再認にどのような影
響を及ぼすのかを検討した.また,このテンポ変容の程度とメロディ再認の関係は記憶の発達と深く関係
することが予想されるため,成人と幼児における実験結果を比較検討した.
p1-13
顔画像からの年齢判断
東北大学
○伊師華江
日本学術振興会
ATR 人間科学研究所
蒲池みゆき
オムロン株式会社技術本部センシング研究所
画像センシンググループ
#瀧川えりな
オムロン株式会社技術本部センシング研究所
画像センシンググループ
#細井 聖
評定者の年齢の違いによって,顔画像からの年齢推定の傾向に差が見られるか検討した.4つの年齢層
(若年層,青年層,壮年層,老年層)の評定者が,顔画像から人物の年齢を5歳刻みのカテゴリーを用い
て判断した.その結果,若年層と老年層の評定者に比べて,青年層と壮年層の評定者の推定結果において,
実年齢からの絶対的な推定誤差が小さく,より正確に年齢を判断できていた.このことは,年齢推定の精
度は,顔についての学習や経験の蓄積によって単純に向上するものではないことを示している.さらに,
推定された年齢が実年齢よりも過大であるか,過小であるかの推定誤差方向の分析から,全評定者年齢層
で同程度に過大な年齢評価を行なう傾向が示され,評定者の年齢差に伴う誤推定に質的な違いは見られな
いことが示唆された.SCALAR(0x819f7f8)
p1-14
p1-15
口唇裂・口蓋裂者の笑顔の印象
宮城大学
宮城学院女子大学
東北大学
○真覚 健
#足立智昭
#幸地省子
- 45 -
口唇裂・口蓋裂者では、上唇部の裂の瘢痕や鼻の歪みなどの顔の変形を有していることが多い。彼らの
表出した笑顔について、どのような印象を認知者に与えるのか、動画像を用いて検討した。笑顔表出場面
に対する印象と無表情場面に対する印象とを比較したところ、笑顔表出場面において印象がポジティブな
方向へ有意に変化することが示された。また、このポジティブな方向への印象の変化は、知覚された顔の
変形の程度とはあまり関連しないものであることが示唆された。このことから変形を伴う顔においても、
相手にポジティブな印象を与えるという笑顔の機能は有効であるといえる。
刺激提示時間による表情認知構造のフラクタル次元差
北星学園大学
○竹原卓真
帝塚山大学
#落合史生
産業技術総合研究所
#渡邊 洋
同志社大学
#鈴木直人
表情認知構造は「快−不快」
・
「覚醒度」の 2 次元平面上におおよそ円環状で存在していることが Russell
らによって見出され、その後 Takehara らによってその認知構造が小数次元のフラクタル次元によって定義
付けられることが見出された。Takehara らは、倒立表情や粗子化した表情を刺激として、フラクタル次元
の増加を見出した。そこで本研究では認知処理過程に影響を及ぼすと考えられる刺激提示時間を操作し、
100ms と 3000ms という 2 種類の提示時間を独立変数として扱い、その認知構造のフラクタル次元を定量
的に測定した。その結果、100ms 提示条件では表情認知構造のフラクタル次元が 1.41 次元、3000ms 提示
条件では 1.33 次元となり、その差は統計的に有意であった。この差異は、瞬間的に提示された表情と持続
的に提示された表情を認識する構造の質的な違いを反映していると考えられる。
p1-16
声の様態が年齢推定に与える影響
日本大学大学院文学研究科
○笠原洋子
日本大学文理学部
厳島行雄
声の認知に関する研究の一つに,声からの年齢推定がある.先行研究においては,年齢の偽装を意図し
た発話に対しても,比較的正確に推定されることが示されている.一方,声の偽装に関しては,容易に行
われるものとしてささやきをあげることが出来る.ささやきによって,声の高さが変化し,後の再認がし
づらくなることが示されている.しかし,年齢推定の観点からささやきの効果についての検討はなされて
いない.そこで本研究では,ささやき条件と統制条件を設け,声の様態の変化が年齢推定に与える影響を
検討した.その結果,声からの年齢推定はあまり正確であるとは言えず,高く見積もられる傾向にあるこ
とが示された.また条件間を比較すると,ささやき条件のほうが統制条件よりも,有意に年齢が高く推定
されることが示された.
p1-17
形態的類似と音韻的類似が単語の意味処理に与える影響
中京大学心理学研究科
○木下建一郎
中京大学心理学研究科
森 孝行
漢字表記の日本語単語は、仮名表記の場合と異なり、形態的処理から直接意味的処理がなされると主張
されてきた(斎藤,1981)
。しかし漢字単語であっても、音韻的処理の関与を示唆する研究(水野,1997)
もあり、漢字表記の単語認知における音韻的処理の位置づけが明確になっていない。本実験では、意味カ
テゴリ判断課題を用いて、形態的類似条件と音韻的類似条件で統制された漢字 2 字単語の処理について検
討した。形態的処理では、どの段階で類似効果が関与するかを確かめるため、単語レベルと文字レベルと
いう二つの類似条件を用意した。単語レベルの類似条件は単語内 2 文字のどちらか一方を別の漢字に置き
換えた単語で構成され、文字レベルでは単語を構成する漢字 2 文字両方の部首を一致した単語で構成され
た。音韻的類似性条件は、異綴同音異義語で構成された。その結果、単語レベルの形態類似条件と音韻的
類似条件の双方に効果があることが示唆された。
p1-18
p1-19
内包文字類似語の効果
中京大学心理学研究科
○岡田順介
- 46 -
中京大学心理学研究科
牧野義隆
単語認知研究において重要な現象の一つに類似語(neighbor)の効果がある。類似語とは、
「1文字を変
えることによってできる他の単語」と定義され、文字とその位置の情報が類似した単語であるといえる
(例:クルマ⇔クルミ)
。個々の単語に対するこのような類似語の存在が、単語認知に影響することが知
られている。一方、岡田・牧野(2003)は単語認知においてアナグラムの存在が影響することを報告してい
る。これは、文字の位置が一致していない場合でも、内包する文字外一致していることによって単語間の
影響が存在することを示唆している。このことから、現象として見られる類似語の効果において、内包す
る文字の類似性による効果、そして文字及びその位置の類似性の効果がどのようなものであるのかを明ら
かにする必要がある。本研究では先ず、内包する文字が類似している単語間(内包文字類似語 例:クル
マ⇔ミルク)の影響を検討した。
文字の形態・音韻的符号化過程と母語の関係 (1) −米国のデータ−
中部大学人文学部
○水野りか
中部大学人文学部
松井孝雄
大小アルファベットのマッチング課題で文字の形態・音韻的符号化過程を調べた Posner ら(1969)の実験
では,形態一致条件の RT が ISI の延びとともに長くなり,音韻一致条件の RT との差が1∼2秒後にな
くなったことから,形態情報は徐々に消失するが音韻情報は存続すると結論され,これが現在の定説とな
っている。ところが水野(発表予定)の追試では,形態一致条件の RT も,やや遅れて音韻一致条件の RT も
ISI が延びるほど短くなるという全く異なる結果が得られ,形態的符号化より遅れて音韻的符号化が生じ,
両情報は利用され続けると結論された。Posner らの実験には種々の疑問点・問題点が指摘できるが、一方
水野の結果は日本人被験者で得られたものであり,非母語文字の影響等があった可能性を否めない。本研
究では,様々な疑問点・問題点を解決した上で改めて米国で Posner らの追試を行い,Posner らの結果が再
現されるか否かを検討した実験結果を報告する。
p1-20
文字の形態・音韻的符号化過程と母語の関係 (2) −日本のデータ−
中部大学人文学部
○松井孝雄
中部大学人文学部
水野りか
アルファベットの大小文字を用いた文字マッチング課題における Posner ら(1969)の結果は水野(発表予
定)では再現されなかった。この原因が被験者の母語によるのか他の原因によるのか検討するため、英語
母語話者を被験者とした結果(発表 1)と同一の条件で日本語母語話者を被験者とした実験を行なった。英
語話者と同様、ISI が長くなっても形態一致条件の反応時間が増大する傾向はみられなかった。つまり
Posner らの結果の追試失敗の原因は被験者の母語にあるのではない。ただしその一方で、特に ISI が短か
い場合に音韻一致条件に対する反応時間は形態一致条件よりもかなり長く、2 条件の差がほとんどない英
語話者とは異なっていた。つまり日本語話者と英語話者の文字処理様式の違いの存在も示唆されたといえ
る。具体的には日本語話者のほうがアルファベットの音韻的符号化に時間がかかるか、または文字の形態
的表象に強く依存しているのだと考えられる。
p1-21
母語方言の違いが単語アクセントの知覚に与える影響
法政大学大学院人文科学研究科
○田中邦佳
法政大学文学部
田嶋圭一
東京方言話者による関西方言の模倣発話は関西方言としては違和感のあるものとして感じられ、また、
関西方言話者による東京方言の模倣発話も東京方言としては違和感のあるものとして感じられると言わ
れている。本研究では、それぞれの方言の母語聴取者が、母語話者による発話と非母語話者による発話に
対し異なる知覚傾向を示すかどうか検証する。
「はし(橋、箸)
」や「たび(足袋、旅)
」など東京方言と
関西方言で異なるアクセントを持つ 2 モーラ名詞に注目し、聴取実験を行った。各試行において聴取者は、
母語話者あるいは非母語話者による発話(聴覚刺激)とその発話と同じ読みの漢字(視覚刺激)を同時に
呈示され、聴取者の母語における聴覚刺激と視覚刺激の適合度を評定した。分析の結果、両方言の聴取者
共に、非母語話者による発話よりも母語話者による発話に良い評定を行う傾向が示され、また、聴取者の
p1-22
- 47 -
母語により評定の傾向が異なることも示された。
p1-23
母語話者と非母語話者による日本語特殊拍の知覚:発話速度の効果
法政大学文学部
ATR 人間情報科学研究所
ATR 人間情報科学研究所
ATR 人間情報科学研究所
ATR 人間情報科学研究所
○田嶋圭一
#加藤宏明
#山田玲子
#アマンダ・
ロスウェル
クイーンズ大学
#ケビン・マンホール
日本語の学習者にとって,
「地図」
「チーズ」のように主に音韻の持続時間によって対立する単語の区別
は習得が困難であることが知られている.著者らはこれまで,英語話者でも知覚同定訓練等によりこれら
の対立を含む単語の同定率が向上することを明らかにした.しかし,訓練前のテストの成績が全体的に高
かったため,訓練の般化の程度が十分に検討できなかった.本研究では,知覚訓練の効果をより正確に測
定するため新たにテストを作成し,訓練を実施した.テストでは,発話速度の異なる刺激語や,長音・促
音・撥音など様々な特殊拍の有無により対立する単語を同一ブロック内にランダムな順序で呈示した.そ
の結果,非母語話者の同定率は話速固定テストより話速混合テストのほうが有意に低いことが示された.
また,訓練の結果,促音や撥音など訓練に現れなかった対立を含む単語への般化があったものの,発話速
度による正答率の差異は訓練後も顕著に現れた.
日本語基本単語に対する連想語データベースの作成
「大規模知識資源・21 世紀 COE」
テリー・ジョイス
東京工業大学
言語刺激を使用する認知心理学実験は、その刺激の重要な語彙特徴を統制しなければならない。語彙親
密度、使用頻度、表記親密度などを操作するためのデータベース(天野・近藤 1999, 2000; 横山・笹原・
野崎・ロング 1998)は既に存在するが、連想効果を統制するための包括的なデータベースはない。従っ
て、本研究の目的は、日本語基本語に対する連想語データベースを作成することである。連想語データベ
ースは、認知心理学実験のための有用な資料となりうる。また、語彙の重要な特徴と語彙どうしの接続性
を捉えることのできる語彙連想マップとして利用することも考えられる。この語彙連想マップによって、
日本語のコネクショニスト・モデル(e.g., レンマ・ユニット・モデル Joyce, 1999, 2002, 2004)における意
味表象部分のモデル化が可能となる。SCALAR(0x819f800)
p1-24
漢字二字熟語 neighbor 間の意味類似性について(1)
大阪樟蔭女子大学人間科学部
川上正浩
視覚呈示された単語の認知過程において,呈示された単語のみならず当該単語と類似した単語の活性化
が議論されている.Coltheart, Davelaar, Jonasson, & Besner(1977)は,その単語に含まれる文字を一文字変
更することによって作成され得る単語(neighbor)数をカウントし,この数が単語処理過程に及ぼす影響
を検討した.漢字二字熟語においてこうした neighbor を考える時,そこには視覚的な類似性のみならず意
味的な類似性が想定される.本研究では,漢字二字熟語の neighbor 間における意味的な類似性の,主観的
評定に基づくデータベース化を目的とする.まず 1000 語の漢字二字熟語が,天野・近藤(2000)に基づ
き選出された.質問紙調査に基づき,それらの漢字二字熟語 neighbor 間の意味的類似性が測定,集計され
た.本発表ではそのデータベースについて報告する.
p1-25
常用漢字の主観的使用頻度と認知時間の関係
広島大学教育学研究科
國田祥子
使用頻度が高い項目ほど認知時間が短くなると言われているが、その多くはコーパスにおける出現頻
度、すなわち客観的使用頻度を用いて調べられてきた。本研究では常用漢字を用いて主観的使用頻度と認
知時間の関係を調べた。偶発学習として使用頻度を 1 度か 3 度評定させ、その直後か一週間後に学習漢字、
p1-26
- 48 -
無学習漢字、非漢字をランダムに呈示して漢字か否かを判断させるテストを行った。直後にテストを行っ
た場合、主観的評定値ごとに分析すると、単一評定群では高頻度漢字の方が低頻度漢字よりも速く認知さ
れたが反復評定群では認知時間の差は見られなかった。それに対して客観的使用頻度ごとに分析すると、
評定回数にかかわらず高頻度漢字の方が低頻度漢字よりも速く認知された。この結果から、主観的使用頻
度の方が客観的使用頻度よりも反復によるノードの状態変化に敏感であることが示唆された。
語彙判断課題における漢字熟語の表記の親近性効果
財団法人長寿科学振興財団
中京大学
藤田知加子
新聞などの活字媒体において,常用漢字外の漢字を用いた熟語は平仮名との交ぜ書きにするといった漢
字使用に関する自主的規制が慣例的に行われている.ここ数年その規制が緩和されてきたが,いくつかの
熟語は未だ漢字仮名混じりで表記されている(例:改竄,改ざん)
.そこで,本実験では,漢字二字熟語
の表記の親近性効果を検討し,熟語を漢字と仮名の交ぜ書きにすることが持つ意味を検討した.具体的に
は,漢字二字熟語のうち,漢字単一表記に比して漢字仮名混じり表記での出現頻度が高く,かつ表記の親
近性の評定においては漢字単一表記での親近性が高く評価された熟語を用い,その表記の親近性が語彙判
断課題遂行に及ぼす影響とその虚記憶の生起率を検討した.その結果,混合表記に対する語彙判断は,単
一表記に対するよりも速く行われる一方で,課題時に混合表記で呈示された語は,単一表記で呈示された
語に比べ虚記憶が生起しやすいことが明らかとなった.
p1-27
漢字刺激における視覚の大域・局所特徴処理と干渉に関する一考察
筑波大学図書館情報メディア研究科
○坂本謡子
筑波大学図書館情報メディア研究科
椎名 健
人は視覚から多くの情報を得ているが、一瞬ごとの処理量は限られている。必然的に視覚システムは処
理の順序を選択しなければならない。それは注意の役割である。その注意の選択順序に対して、
Navon(1977)は実験を通し大域優先性を提唱した。Navon のアルファベット刺激を用いた実験では、大域と
局所の音韻干渉だけでなく、形態的な干渉を混在させたとも言える。そこで本研究では大域と局所を併せ
持つ 2 階層の漢字を刺激として使用し、大域文字を答えてもらう大域指示条件と局所文字を答えてもらう
局所指示条件という 2 つの指示条件を設定した。この2つの指示条件を比較することにより、階層間の音
韻と形態的な干渉のみでなく意味的な干渉についても検討を行った。その結果、大域から局所への一方向
的な干渉だけでなく、実験条件によっては大域から局所、局所から大域への双方向的な干渉が示唆された。
p1-28
カタカナ語の使用がもたらす印象評定への影響に関する一研究
名古屋大学大学院教育発達科学研究科
海上智昭
ことばが、人の印象評定に大きく関係することは、従来のコミュニケーション研究で明らかにされてい
るところである。フランス語と英語の刺激に対して、異なる印象評定が下されたことを報告した Lambert
ら(1960)の研究にも示されているとおり、ことばは、印象評定に大きく寄与すると考えられる。本研究
では、日本語で多用される西洋文化圏言語から日本語に輸入されたことば、カタカナ語について、日本語
と比較してどのような効果が期待できるかを、日本語のみで作成された文章と、カタカナ語を使用した文
章を用いて、印象評定の観点から大学生を対象として検証した。同じ内容の文章を、日本語のみを使用し
たものとカタカナ語を使用したもの、2通りを作成し、読み取り、聞き取りの2側面から、文章に対する
印象と、文章作成者についての印象を A 県内の大学生に評定させ、カタカナ語が日本語文脈で使用された
際の効果を、印象評定の側面から、日本語文章との比較をとおして検証した。
p1-29
携帯メールに見られる擬音語・擬態語の利用状況に関する調査
京都光華女子大学人間関係学部
○酒井浩二
京都光華女子大学人間関係学部
#宮田希実子
非対面での文字を使ったやりとりで、自分の気持ちを相手にうまく伝える表現方法の 1 つとして、擬音
語・擬態語がある。本研究では、大学生が日常使用する擬音語・擬態語にはどのような特徴がみられるのか
p1-30
- 49 -
について調査分析を試みた。方法は、同性友人、異性友人、交際相手の3者へ送信した携帯メールに見ら
れる擬音語・擬態語を被験者が書き出し、それらの単語の表現特性を分析した。その結果、擬音語より擬
態語のほうが利用率は高かった。また、擬音語・擬態語の構成文字列は4文字のものがもっとも多く、そ
の中でもカタカナでの繰り返し表現が多かった。さらに、擬音語・擬態語の利用率は、男性より女性の方
が高い傾向であった。擬音語・擬態語の利用回数に関して、送信相手となる同性友人、異性友人、交際相
手の比率に男女の被験者間で差はみられなかった。
終助詞と手がかりコミュニケーション:意図の認知
常磐大学人間科学部
○伊東昌子
鳴門教育大学学校教育学部
#永田良太
本研究では、文字言語コミュニケーションにおいて、終助詞が書き手意図の認知に及ぼす影響を調べた。
終助詞「の」を付加した終助詞文から成る文章と付加しない宣言文から成る文章を刺激として用い、書き
手の意図を示す8項目について、大学生男女 95 名に 5 段階評定をしてもらった。その結果、終助詞文条
件では、読み手である被験者は、性別にかかわらず、書き手が内容を誰かに伝えたい、話を聞いてほしい、
何か反応してほしい、というコミュニケーション意図を持つと解釈した。反応を期待していると判断した
割合は、宣言文条件が 1%、終助詞文条件が 82%であった。具体的な反応としては、興味・関心を示すあ
いづちや話題を展開・発展させる問いかけが期待されていると報告された。この結果から、日本語の終助
詞は、書き手のコミュニケーション意図の認知において、手がかり情報としての役割を果たすという、終
助詞の機能の新たな側面が明らかになった。
p1-31
文章における比喩の用いられ方と読解過程との関連性
立命館大学
中原 誠
読み手にとっての分かりやすさを重視する文章(説明文など)では,文章中の個々の比喩が類推構造を
構成して統一感のある用いられ方をするのに対して,読み手に一定の印象をもたらすことを重視する文章
(随筆文など)では,個々の比喩がそれぞれ自由に用いられる傾向がある,と考えられる.そこで本研究
では,比喩を多用した説明文と随筆文を用いて,比喩の用いられ方(統一感/自由さ)と文章が読み手に
もたらす要素(分かりやすさ/印象の強さ)との間に,実際にそのような関連性があるかどうかを調べる.
それぞれ比喩的統一感を持った文章と比喩的自由さのある文章を作成し,それら4種類の文章の分かりや
すさと印象の強さを6件法で測定・比較する.また,文章の要約課題とその自己評価(6件法)によって
実際の理解度を測定し,文章中の単語の再生課題によって実際の印象の強度を測定・比較し,さらに各相
関を検討する.
p1-32
テキスト表象の体制化における因果関係の形式とタイプの効果
筑波大学人間総合科学研究科
○井関龍太
筑波大学人間総合科学研究科
#菊地 正
筑波大学人間総合科学研究科
#海保博之
物語中のイベント情報を統合する際には,因果関係が重要な役割を果たす。因果関係のタイプには,物
理的関係,心理的関係,動機があり,タイプによって知覚される因果関係の強さが異なるという結果が報
告されている。しかし,この結果には,因果関係の形式,すなわち,必要性と十分性の寄与が混交してい
る可能性がある。本研究では,形式とタイプの独立の貢献を評価するため,これらの要因を独立変数とし
て,連合強度を予測する重回帰分析を行った。連合強度は物語中のイベントを表すカードの分類課題によ
って測定した。結果として,5つすべての理論変数を投入した場合には,必要性と十分性,心理的関係の
効果のみが有意であった。これに対して,因果関係の3つのタイプのみを理論変数として投入した場合に
は,物理的関係と動機の効果が有意になった。これらのことから,因果関係のタイプの違いの効果の背後
には,因果関係の形式の貢献があることが示唆された。
p1-33
p1-34
読みの形態による詩の理解への影響
法政大学文学部心理学科
福田由紀
- 50 -
黙読・音読・暗誦による詩の理解への影響を検討するために、大学生を用い詩の面白さの程度、好みの
程度、視覚的イメージ喚起の程度、詩の内容に関する自由記述を比較した。材料として、視覚的イメージ
が思い浮かべやすいと考えられる詩を1つとそうでもないと考えられる詩を1つの計2つを用意した。黙
読・音読条件の被験者はその場で詩を読んでもらった。一方、暗誦条件の被験者にはあらかじめ詩を与え、
暗誦してきてもらった。前記の課題を行う前に暗誦していることを確認をしてから、課題を行った。3つ
の条件を比較した結果、面白さや好みの評定には有意差はなかった。一方、視覚的イメージの喚起は暗誦
条件と音読条件でより強く喚起された。自由記述に関しては、暗誦条件では暗記をするための苦労が多く
記述されたおり、予想された詩に対するより深い理解は得られなかった。
空間表現語理解過程における distractor 効果の検討
京都大学大学院教育学研究科
小島隆次
空間表現語指示領域内の適合度は参照対象と指示対象の間にこれら以外の第三の対象(distractor)が存
在する場合には、存在しない場合に比べて低下することが報告されている(Carlson & Logan, 2001)。こうし
た適合度低下の一因は、distractor が存在する場合には distractor が新たな参照対象として認知されるためで
あると考えられる。そこで本研究では 2 つの日本語空間表現語(まえ・うしろ)を用いて、斯かる仮説を
実験的に検討した。実験は distractor の有無と指示領域の評定に関する教示 3 条件(教示なし;呈示された
空間表現のみを考慮する教示;呈示された空間表現以外も考慮するよう教示)を実験変数として 31 名の
被験者に対して行った。被験者の反応は 9 件法による評定法で取得された。実験の結果、distractor による
空間表現語指示領域内の適合度低下は、distractor が指示対象として認知されることによるものであること
が示唆された。
p1-35
言語内容からのウソ認知:絶対的逸脱と状況的逸脱
東北大学大学院文学研究科
○菊地史倫
東北大学大学院文学研究科
佐藤 拓
東北大学大学院文学研究科
仁平義明
これまで,言語内容からのウソ認知に生起頻度(ある事象がどの程度起こりえるか)が強く影響を与え
る可能性が示唆されてきた(e.g., 佐藤ら,未発表)
.本研究において,絶対的生起頻度(その出来事が生
起する文脈に関わらず,どの程度起こりえることか)
,相対的生起頻度(出来事の文脈からみて,どの程
度起こりえることか)を操作し,それらがウソ認知にどのような影響を与えるかを調査した.絶対的に逸
脱した事象を含む文章,相対的に逸脱した事象を含む文章,逸脱がない文章を被検者に与えて,真実度を
判断させた.その結果,絶対逸脱条件,相対逸脱条件,逸脱なし条件の順にウソと認知される傾向が強く
なった.異なる出来事についての文章でも同様な結果が得られた.また,ウソを見抜く自信もウソの認知
に影響を与えており,ウソを見抜く自信が高い人は生起頻度に左右されないケースもみられた.
p1-36
テスト期待効果の生起メカニズムの検討
−テストに対する困難度の認知と方略帰属に着目して−
東京大学大学院教育学研究科
日本学術振興会
村山 航
テスト期待効果研究では,テストの予期が学習方略の変容を促進することが示されている.しかし,テ
スト形式の予期が方略を変容させる規定因は明らかになっていない.本研究では,そのような方略変容の
規定因を検討した.実験 1 では,15 人の大学生を被験者として,方略変容と相関する変数を探索的に検討
した.その結果,テストに対する困難度が,方略変容の規定因である可能性が示唆された.そこで実験 2
では,大学生 64 人を被験者とし,テストの困難度(易・難)と予期するテストの形式(空所補充・記述)
を直接操作した実験を行った.結果,テストが困難な場合に,空所補充型テストの予期は暗記型方略の使
用を増大させ,記述式テストの予期は意味理解型方略の使用を増大させることが明らかになった.また方
略帰属と方略変容の間に,正の相関が見られた.最後に,これまでの先行研究を踏まえ,テスト形式の予
期による方略変容プロセスモデルの提案を行った.
p2-01
- 51 -
可算事象に対する事後情報効果の検討
北星学園大学文学部心理
後藤靖宏
応用コミュニケーション学科
可算事象(意図すれば数えることができる事象)に関する目撃証言について,事後情報の影響を受ける
かどうかを実験的に検討した.本研究では実験材料に K-2 の試合の一部を用い,被験者には選手が何発も
殴られて倒れるまでを提示して,試合結果について異なる事後情報を与えた.一方の群には、
「ダウンし
た選手は再び起きあがり試合を続行した」
,他方の群には、
「ダウンした選手はそのままノックアウトされ
た」とそれぞれ教示し,倒れた選手が殴られた合計回数を見積もらせた.その結果、前者の条件の被験者
は「より多く殴られた」と見積もった.従来の目撃証言に関する研究は「スピード」や「体重」など,目
視だけでは正確な見積もりが出来ないものを対象としていたが,本研究の結果からは,
「パンチの回数」
という意図すれば数えることができる可算事象についても,事後情報の影響を受ける可能性が示唆され
た.
p2-02
事後情報が記憶に及ぼす影響
アテネオリンピックの状況を用いての後知恵バイアスと調和バイアスの検討
東京女子大学文理学部
○桑山恵真
東京女子大学文理学部
#今井久登
研究の目的は後知恵バイアスを確認しその影響力の大きさを検討することであった。本研究はアテネオ
リンピックの状況を用いて行った。調査には質問紙を用い,アテネオリンピック開催前と開催後の 2 回,
同一の被験者を対象に行った。開催前の結果予想を開催後に再生してもらい,その2つを比較した結果,
良い成績を残した競技・選手に関して開催前の予想を低く見積もるというほぼ一貫した結果が得られた。
バイアスの説明あり群となし群の再生のしかたに差が見られなかったことから,後知恵バイアスはメタ認
知の欠如によるものではないといえる。さらに記憶の正確性と記憶の正確性に対する自信との間にも相関
関係がなかったという結果からも,本人がバイアスの影響を自覚する事さえままならないだろうと考えら
れる。したがって我々が後知恵バイアスを意識的に避けることは非常に困難であるといえるであろう。
p2-03
誘導尋問に対する選択肢呈示の効果―被暗示性尺度の再検討 (2)―
畿央大学健康科学部
金敷大之
本研究は,金敷(2004, 認知心)に引き続き,グドジョンソン被暗示性尺度(仲, 1998)の反応傾向に対する
コミュニケーション様式の効果を検討する。金敷(2004, 認知心)では,回答用紙あり・選択肢呈示あり条件
と,回答用紙なし・選択肢呈示なし条件との比較が行われていた。しかしながら,これらの条件だけでは,
被験者の反応傾向に対するコミュニケーション様式の効果を検討する上で不十分である。それ故,本研究
では,新たな条件として,回答用紙なし・選択肢呈示あり条件の反応傾向を測定し,金敷(2004, 認知心)
のデータとの比較を行う。
p2-04
耐誘導試行が子供の被誘導性に及ぼす効果
東京家政大学文学研究科
○長尾 恵
東京家政大学文学部
越智啓太
目撃証言についてはかねてから多くの研究者が報告を提出してきた。本研究では、子どもの記憶能力に
着目し、実験・検討を行った。幼稚園児(4歳児・5歳児)に対し各年齢ごとに紙芝居を呈示し、その後紙
芝居の内容について1対1で面接を行った。質問は紙芝居の内容に合致したものと相違したもの、半々で
構成されている。各年齢における半数の実験群に対しては面接の初頭で「間違った内容があるのでひっか
からないように」との教示を行い、練習問題(トレーニング)を 1 題課し、正否のフィードバックをしたが
統制群には教示も練習問題も課さなかった。その結果、年齢間で有意に差が生じ、5 歳児において正確な
記憶の想起がなされていることが明らかとなり、条件間でも実験群において正しい記憶の想起が行われて
いる傾向があることが示唆された。
p2-05
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意図的な嘘が記憶検索に及ぼす影響についての検討
日本大学大学院文学研究科
○田中未央
日本大学
厳島行雄
目撃者の記憶パフォーマンスを比較した場合、出来事の中心的情報は周辺的情報よりも正確に想起され
るといわれている。また、出来事の中心性は意図的に嘘をついた場合の記憶パフォーマンスにも影響を与
えることがいくつかの研究によって明らかにされている。Pickel (2004) では記憶を想起する際に出来事の
中心的人物について嘘をついた場合、記憶が著しく損傷されることが明らかにされた。これまでの研究で
は、出来事に含まれる事柄や人物の中心性と周辺性の違いが記憶に及ぼす影響についての検討は行われて
きたが、中心的出来事と中心的人物の比較といった中心性や周辺性の程度が等しい事柄と人物についての
嘘が記憶に及ぼす影響についての比較はほとんど行われていない。よって本研究では中心性の等しい事柄
についての嘘と人物についての嘘が記憶にどのような影響を与えるかを検討することを目的とした。本研
究では記憶想起の際に参加者に出来事の中心的事柄か中心的人物のどちらかについて嘘の証言を行って
もらい、参加者の記憶パフォーマンスの比較を行ったところ、出来事についての意図的な嘘は正確な記憶
想起を抑制するが人物に関する意図的な嘘は記憶想起を促進するという結果が得られた。
p2-06
p2-07
偽りの記憶の想起に関わる個人差の影響―記憶再構成誘導との関連
愛知学院大学大学院文学研究科
○松原生枝
島根大学法文学部
北神慎司
本研究では,誘導によって想起された偽りの記憶に関わる要因として,被暗示性,解離体験の頻度,社
会的望ましさ,没頭性を取り上げ,それらの関連について検討することを目的とし,偽りの記憶を想起さ
せる実験を行った.そこで,誘導によって想起された偽りの記憶と個人差について相関係数を求めたとこ
ろ,創造的イマジネーション尺度(CIS)
,解離体験尺度(DES)は偽りの記憶と正の相関関係が見られた.
これは個人の被暗示性と解離体験の頻度が情報源の識別の能力と関わっているためであり,被暗示性と解
離体験の頻度は偽りの記憶を想起するプロセスに大きな影響を与える要因であるということがわかった.
つまり,本研究の結果から,記憶を再構成させる方法は,その特徴や個人差を考慮に入れて臨床場面で用
いなければ,確信が高く,詳細な偽りの記憶を想起させる危険性が増加するということが示唆された.
DRM パラダイムにおいて虚再生が起こらないとき−テスト後再生・再認課題を用いて−
リエージュ大学認知心理学研究室
向居 暁
Bredart (2000)はテスト後再生課題を用いて、DRM パラダイムにおいて虚再生が起こらないのは、リス
トがルアー語を活性化するのに失敗したのではなく、ルアー語が呈示されなかったことを覚えている、つ
まり、モニタリングが成功したためだと結論付けた。しかし、リストによってはこの解釈が単純に当ては
まらないものもあることがわかってきた。本研究では、Bredart のテスト後再生課題に加えて、テスト後再
認課題を行い、DRM パラダイムにおいて虚再生が起こらないときの実験中のルアー語活性化におけるリ
スト差を検討した。人名のルアー語を生成する 8 リスト(15 語)が聴覚呈示された。その結果、テスト後
再認課題は、実験中に活性化されたルアー語を効果的に検出するために有効な方法だということがわかっ
た。また、モニタリングの成功にはリスト差があることが示唆された。
p2-08
「目に焼き付ける」符号化方略が目撃者の記憶に及ぼす効果
−認知符号化法で目撃者の記銘は促進されるか? (4) −
東京家政大学文学部
越智啓太
目撃者の事件の記銘を促進する方略として、見たことを言語化する方略が有効であることが指摘されて
いる。その理由としては、目撃証言研究においてはテストが言語を媒介にしたものであるため、符号化の
形態とテストの形態が一致しているからだと考えられている。そうだとすれば、言語を媒介とせず、画像
自体の再認課題を用いたテストを行った場合には、言語的な符号化方略の優位性はなくなり、逆に、事件
を「目に焼き付ける」などのイメージ的な符号化の成績が優れることになるはずである。そこで、このよ
うな実験を行ったが、やはり言語化方略の優位性は消失しなかった。この結果をふまえて、言語化方略の
p2-09
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メカニズムについて検討を行った。
描画による日常記憶の想起促進 (2)
東京家政大学大学院文学研究科
○小坂香織
東京家政大学文学部
越智啓太
本研究では、日常場面の記憶再生において、描画法の有効性を検討することとする。実験協力者は大学
生女子81名で、ランダムに 2 群に分けられた。両群に同一の一枚の写真を呈示し、その一週間後に実験
群には写真についての絵を描くように、統制群には写真について思い出すように求め、その後両群に自由
再生とプローブ型再生テストを実施した。各条件において再生項目数をカウントした結果、実験群は統制
群より、有意に多くの情報を再生した。再生項目中のフォールスメモリーの数と、プローブ型再生テスト
の結果について、両群に有意差は見られなかった。本実験は、直後再生だけでなく遅延再生における描画
法の有効性を示し、今後実際の捜査場面等への応用の可能性を示唆していると思われる。
p2-10
日誌法によるプルースト効果の研究
東京女子大学文理学部
川平杏子
本研究では,五感に含まれる刺激を手がかりとした自伝的記憶の無意図的想起をプルースト効果とし,
その特徴を明らかにすることを目的とした.調査は女子大生 90 名を対象とし,日誌法による報告を求め
た.50 名がプルースト効果の経験があると報告し,得られた 117 事例について分析を行った.手がかりと
なる刺激は,五感に含まれる全ての刺激について報告があり,匂いに限らず無意図的想起の手がかりとな
るようである.想起内容は,風景・情景,感情・感覚の順に報告が多く,その当時の生々しい想起,その
場に引き戻されるような想起といったプルースト効果の特徴を表しているようであった.刺激が想起の手
がかりとなりやすいのは,出来事と同時的にその刺激が存在していた場合のようであり,プルースト効果
においては,記銘の段階でも無意図的な過程が働いているという特徴があるということがいえそうであ
る.
p2-11
p2-12
単語手がかり法による自伝的記憶のエピソード性についての検討
関西大学社会学部
関口理久子
本研究では、単語(肯定的情動語、否定的情動語、中立語)手がかり法を用いて自伝的エピソードにつ
いてのインタビューを行い、以下の点を検討した。実験 1 では、自己記入式抑うつ性尺度(SDS)により
スクリーニングした非臨床群の被験者について、抑うつ傾向の高低により、再生された自伝的記憶のエピ
ソード性(エピソードの詳しさ)とエピソード再生率に違いがあるかどうかを検討した。実験 2 では、抑
うつ傾向に差がない場合に、上記2つの測度に性差があるかどうかを検討した。実験 1 の結果、抑うつ傾
向の高い被験者が自伝的記憶のエピソード性が低いという結果は得られず、抑うつ傾向の低い被験者は否
定的情動語に対するエピソード性や再生率が有意に少なかった。実験 2 では、エピソード再生率では、男
性では肯定的情動語について有意に高いが、女性では単語の種類による差は認められなかった。また、否
定的情動語に対するエピソード性は女性の方が高く、肯定的情動語や中立語では性差は認められなかっ
た。本研究では、単語(肯定的情動語、否定的情動語、中立語)手がかり法を用いて自伝的エピソードに
ついてのインタビューを行い、以下の点を検討した。実験 1 では、自己記入式抑うつ性尺度(SDS)によ
りスクリーニングした非臨床群の被験者について、抑うつ傾向の高低により、再生された自伝的記憶のエ
ピソード性(エピソードの詳しさ)とエピソード再生率に違いがあるかどうかを検討した。実験 2 では、
抑うつ傾向に差がない場合に、上記2つの測度に性差があるかどうかを検討した。実験 1 の結果、抑うつ
傾向の高い被験者が自伝的記憶のエピソード性が低いという結果は得られず、抑うつ傾向の低い被験者は
否定的情動語に対するエピソード性や再生率が有意に少なかった。実験 2 では、エピソード再生率では、
男性では肯定的情動語について有意に高いが、女性では単語の種類による差は認められなかった。また、
否定的情動語に対するエピソード性は女性の方が高く、肯定的情動語や中立語では性差は認められなかっ
た。
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p2-13
自伝的記憶の安定性−中高年が想起する青年期までの自己(1)−
群馬大学教育学部
佐藤浩一
これまでの研究で,自分の人生を振り返って大切な出来事を 8 つ想起するという課題を,約 2 カ月の間
隔をおいて 2 回くり返し求めると,中高年は青年に比べて同じ出来事をくり返し想起しやすいことが見出
されている(青年:平均 3.4 個,中高年:平均 5.0 個)。今回の研究では中高年(30∼60 歳)の回答者を対象に,
「20
歳頃までの大切な出来事」を約 2 ヶ月の間隔をおいて 2 回想起してもらった。あわせて,その出来事にま
つわる感情や,出来事の重要度の評定等を求めた。その結果,平均 4.4 個の出来事が繰り返し想起され,
中高年にとっての青年期までの人生は,青年にとっての人生よりも,安定して想起されることが示された。
先行研究で青年の想起が中高年より不安定だったのは,
「青年期の出来事が不安定に想起される」ためで
はなく,
「青年による人生の想起は不安定である」あるいは「近い過去の想起は不安定である」ことを示
していると考えられる。
自伝想起と評価的判断の関連性
広島大学大学院教育学研究科
○中尾敬
広島大学大学院教育学研究科
宮谷真人
本研究では自伝想起課題 (あなたの過去の経験を思い出せますか?) を行っている際には評価的判断
(一般的に望ましい性質ですか?) が引き起こされていないのかについて検討を行った。自伝想起の際に評
価的判断が引き起こされていなければ,自伝想起と評価的判断の両方を記銘語に対して行うことで,自伝
想起のみを行った場合よりも記憶成績が優れると考えられる。自伝想起課題と評価的判断を行う条件,自
伝的想起課題を 2 回行う条件,評価的判断を 2 回行う条件を設け,記銘語の再生成績を比較した。その結
果,自伝想起課題と評価的判断を行った条件と自伝想起課題のみを行った条件の再生成績に有意差は見ら
れなかった。この結果は自伝想起と評価的判断に関連性がないということに疑問を呈するものである。
p2-14
会議における座席位置の記憶
富士ゼロックス(株)研究本部 PAL-JAPAN
○大村賢悟
富士ゼロックス(株)研究本部 PAL-JAPAN
#永峯猛志
最近、私たちは、会議参加者の位置情報をクエリーにして会議映像を検索するシステムを構築した。し
かし、問題は、
「どこに誰がいたか」を人がどの程度正確に想起できるかという点にある。そこで、17 名
の被験者に対して、1 週間前と 1 ヶ月前に開催された会議における参加者たち(約 20 名)の座席位置を想起
するように要求した。その結果、座席図の適切な位置に名前を定位できた比率は、1 週間前の会議では
36.4%、1 ヶ月前の会議では 10.5%であった。誤差 2 メートル以内の精度で定位できた比率は、それぞれ
60%、26%になった。この結果から、人物の位置に関する高精度の記憶は 1 ヶ月経過すると大きく減衰す
るが、
「あの辺り」といったかたちでの記憶はある程度持続すると言える。また、他者に比べて自分の座
席位置はより正確に想起できること、また自分の近くにいた人たちのほうが遠くにいた人たちよりも定位
の精度が高いことが確認された。
p2-15
BGM 依存記憶におよぼす項目提示速度の効果
静岡県立大学短期大学部
○漁田俊子
静岡大学情報学部
漁田武雄
BGM 文脈依存記憶とは,学習時と想起時の BGM が同じである方が,異なる場合よりも想起成績がよ
いという現象である.漁田・漁田(2003)は,BGM 文脈×項目反復回数の実験を行い,直後再生で BGM
文脈依存記憶を検出した.ただし,その効果は項目の反復回数の増加に伴って消失した.本研究では,意
味的文脈が BGM 文脈効果を遮蔽しやすい分散反復に替え,提示速度を用いて漁田・漁田(2003)を追試
した. BGM 文脈条件(同文脈 vs 異文脈)×提示速度(4 秒/項目 vs 8 秒/項目)の 2 要因被験者間計画で,
各群に大学生を 20 名ずつランダムに割り当てた.20 項目の偶発学習(連想反応の生成)による符号化に
続いて,直後自由再生を行った.その結果,文脈と提示速度の主効果が有意で,交互作用は有意でなかっ
た.これは,(1) 意味的文脈を抑制すれば BGM 文脈依存記憶を検出できること,(2) その効果が項目強度
p2-16
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と独立であることを意味している.
自由再生における新近性効果におよぼす背景色文脈の効果
静岡大学情報学部
○漁田武雄
静岡県立大学短期大学部
漁田俊子
本研究は,比の法則によれば新近性効果が生じるとされる条件下(提示間隔=30 秒,保持期間=30 秒)
において,リスト学習時と自由再生テスト時で背景色文脈が変化する時,新近性効果が消失するか否かを
調べた.被験者には,7対の名詞からなる記銘リストの意図学習を行わせた.各名詞対は6秒/対の提示
速度で提示し,対提示の前後に 30 秒間の計算課題を挿入した.最後の計算課題後,直ちに口頭自由再生
を開始した.この手続を3リストについて繰り返した.そして,学習時の背景色と保持期間およびとテス
ト時の背景色が同じ(SC)条件と異なる(DC)条件の系列位置曲線を比較した.被験者は大学生 48 名で,
ランダムに SC 条件と DC 条件に割り当てた.実験の結果,SC 条件では新近性効果が生じたが,DC 条件
では消失した.本研究結果は,新近性効果が,比の法則よりも,学習時とテスト時の文脈の異同に依存す
ることを示している.
p2-17
作動記憶における視覚的リハーサルに対する視覚絵画刺激の妨害要因の検討
中央大学大学院文学研究科
○須藤 智
中央大学文学部
兵藤宗吉
視覚的情報の保持課題において,絵画刺激を保持時間中に挿入することで課題成績が低下することが報
告されている(Logie & Marchetti,1991).それに対して,ランダムドットを動的に提示した場合は,課題成績
は低下しないことが報告されている.これらからは,課題成績の低下は,絵画刺激による視覚キャッシュ
のオーバーフローが原因でない可能性が考えられる.そこで本研究では,特に,絵画刺激に含まれる意味
性に焦点をあて,絵画刺激の視覚的リハーサルに対する妨害要因を二重課題法によって検討した.一次課
題としては視覚スパンテストの再認課題,二次課題として有意味絵画刺激(Snodgrass,1980),無意味絵画
刺激(フラクタル画像)を用いた.その結果,視覚パターンテストの正再認率に対して,有意味絵画刺激
のみが妨害効果を示した.この結果からは,視覚的リハーサルに対して長期記憶が関与している可能性が
示唆される.
p2-18
作動記憶課題における記憶表象の活性と侵入エラーの関係
中京大学心理学研究科
○大平直樹
中京大学心理学部
牧野義隆
作動記憶課題における処理と保持の相互の影響についての理論的説明として、Saito&Miyake(2004)は
表象ベースの干渉を提案した。ここでは処理と保持の相互の影響を、両課題の遂行において生成された、
表象のオーバーラップによる干渉として説明している。これに加え、タスク末部における処理効率の低下
がリソース共有に基づくトレード・オフの予測より微弱であったことから、記憶表象が再生時までアクテ
ィブに保たれないということも想定している。表象のオーバーラップを端的に反映していると考えられる
現象として、非ターゲットを誤再生する侵入エラーが挙げられるが、Saito らの理論に基づけばアクティブ
でない表象はオーバーラップせず、そこでの侵入エラーは生じなくなると考えられる。本研究では侵入エ
ラーを誘発させる妨害語と記憶項目の系列位置関係を操作し、記憶表象の活性強度低下が侵入エラーに反
映されるか否かを検討した。
p2-19
p2-20
非言語刺激によるワーキングメモリ課題遂行能力の加齢変化
金沢大学文学研究科
國見充展
一般に、加齢により記憶能力は衰退すると考えられているが、記憶能力全体が低下するわけではなく、
記憶過程によって違いが見られる事が知られている。特にワーキングメモリにおいては加齢影響が見られ
るとの報告が多くなされている。しかし多くの実験では、若年群と老年群からなる2群の比較を用いた結
果から加齢影響が見られる、と結論付けており、その間の加齢影響の過程を報告する研究は未だ深くは考
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察されていない。そこで本実験ではワーキングメモリの加齢変化を段階的に捉える事を試みた。刺激には
3×3のマトリクス図形を用い、順に提示される刺激群から最終項目、最後から1つ前の項目、最後から
2つ前の項目を再認させるワーキングメモリ課題の3実験の成績を年代群間で比較し、結果を考察した。
作動記憶の資源コントロールがヒューマンエラーに及ぼす影響について
東北大学大学院情報科学研究科
○川原正広
岩手大学人文社会科学部
松岡和生
ヒューマンエラーは認知活動の中で発生し、行動を伴って現象として生起するものと考えられる。認知
活動には様々な機能が関連していると考えられるが、その中枢的な役割を担うシステムの一つとして作動
記憶が挙げられる。ヒューマンエラーが認知活動の中で生じる現象であることを考えると、作動記憶の持
つ特性が、ヒューマンエラーに何らかの影響を及ぼすことが考えられる。作動記憶を説明するモデルとし
ては Baddeley(1986)のモデルがよく用いられるが、Baddeley のモデルについては「サブシステムの容量制
約性」や「中央実行系における資源コントロール」などの特徴を有していると言われている(Baddeley &
Logie,1999)。そこで本研究では、資源コントロールの個人差を測定する課題として Pancil-and-paper
test(Baddeley et al.1997)を実施し、失敗傾向質問紙(山田,1999)と比較することで、中央実行系における資
源コントロールとヒューマンエラーの関連を検討した。
p2-21
記憶促進における反復書記の有効性に関する検討
−繰り返し書くことにより覚えやすくなるか−
早稲田大学大学院文学研究科
○見崎研志
北海道大学大学院文学研究科
仲真紀子
本研究は,小・中学校の教育場面において推奨されている,漢字の書き取り練習や英単語などを繰り返
し書いて覚えるという学習方法が効果的な学習方法であるか否かを検討することを目的としている.直観
的には,提示された記銘材料を単に見て覚えるよりも,その材料を繰り返し書きながら覚えた方が覚えや
すいように思える.しかしながら,このような書記行為が記憶に及ぼす影響を実験的に検討した研究は少
ない.記憶方略としての書記行為は,提示された記銘材料を視覚的に確認し,その記銘材料を音韻的・意
味的・形態的に符号化し,短期記憶内に留め,手指の筋肉運動により外部へ出力し,再度確認するという
一連の動作によって成り立っている.本研究では,このような一連の処理過程の内,どのような処理活動
が記銘材料の記憶促進に貢献にしているかを実験的に検討する.
p2-22
視覚短期記憶における属性容量と物体容量との関連性について
福島大学生涯学習教育研究センター
木暮照正
Vogel, Woodman, & Luck (2001)は,変化検出法を用いて,視覚短期記憶の単位と容量について検討し,
その結果から,保持されている単位は物体レベルであり,容量は 3-4 個と推定されると主張した.しかし
ながら,この見解には異論も多い(e.g., Wheeler & Treisman, 2002).本研究では,大学生 48 名を対象に Vogel
et al. (2001)とほぼ同様の実験手続で視覚短期記憶の属性容量(色のみ・方位のみを保持する場合)と物体
容量(色と方位の両方を保持する場合)の推定を行った.色の属性容量と物体容量の推定値間の相関は比
較的高い傾向にあったが,色の属性容量と方位の属性容量及び方位の属性容量と物体容量の推定値間の相
関は認められなかった.このことに基づいて,視覚短期記憶の単位と容量について考察を行う.
p2-23
刺激間関係を考慮した再認の 2 過程モデル
千葉大学文学部
須藤 昇
再認の研究においては、学習刺激と検査刺激が一致している場合の正再認、刺激間に一定の関連がある
場合の虚再認、刺激間に関連がない場合の虚再認を適切に予測・説明する認知心理学的モデルが求められ
ている。これまでに刺激間の familiarity(親密度)を基礎とするモデル、familiarity と recollection を考慮に
いれた 2 過程モデル等が提案されてきている。本発表では、学習刺激と検査刺激間の関係を考慮に入れて
考案した 2 過程モデルについて報告する。このモデルは、刺激の構成要素と要素間の関係に着目した2つ
p2-24
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の下位過程の統合によって再認結果を推測する点に特徴があり、いくつかの再認実験によって支持され
る。
ビジュアルシーンの再認における輝度情報の効果
北海道大学大学院文学研究科
○川端康弘
拓殖大学北海道短期大学保育科
川端美穂
日常的な情景の再認記憶において、画像に含まれる局所的で詳細な輝度輪郭で記述された情報の効果に
ついて検討した。筆者らは記憶した情景(学習刺激)に含まれる様々な情報の一部を取り除いた刺激をテ
スト刺激として用いる手がかり再認課題においては、画像に含まれる様々な情報のうちで色で記述された
対象物の輪郭が有効に利用されていることを報告した(川端, 2002, 日本心理学会)
。その際に色は主に低
い空間周波数情報と結びついてシーンの大局的情報をよく表現するようである。今回は画像に含まれる輝
度情報と空間周波数情報の量を組織的に変えて、色彩の場合とほぼ同様の実験を行った。その結果、輝度
の輪郭線情報は高い空間周波数成分と結びついて、シーン内のやや局所的な情報から詳細な情報をより効
率的に表現し、再認記憶に影響を与えていることが示された。
p2-25
顔写真と名字の組み合わせに関する再認記憶
関西学院大学大学院文学研究科
○平野哲司
関西学院大学大学院文学研究科
山田陽平
参加者に顔写真が持つ印象とそれに付記された名字が持つ印象がどれくらい一致しているかを判断さ
せた後,予期しない再認テストを課した.再認テストには,顔写真と名字が学習時と同じ組み合わせのも
の(same)
,顔写真も名字も学習時に提示されてはいたがその組み合わせが異なるもの(interchanged)
,学
習時に提示された顔写真(あるいは名字)と未提示の名字(あるいは顔写真)が組み合わされたもの(part)
,
そして顔写真も名字も未提示のもの同士で組み合わされたもの(unpresented)が含まれていた.実験の結
果,same に対する old 反応率が最も高く,次いで interchanged,part,unpresented の順になった.これらは
一連の記憶結合エラー実験における結果と酷似しており,その点も含めて,関係情報の符号化,及び再認
テストでの熟知性から論議される.
p2-26
触覚の再認記憶における言語陰蔽効果
島根大学法文学部
北神慎司
言語陰蔽効果(verbal overshadowing effect)とは,広義には, 非言語情報の記憶や認知に対して言語化
が妨害的に働く という現象を意味する(北神,2000)
.これまで,感覚モダリティーの別で言えば,視
覚,聴覚,味覚,嗅覚において,それぞれ言語陰蔽効果が生起することが確認されているが,触覚につい
ては,まったく検討されて来なかった.そこで,本研究では,触覚でも,特にその再認記憶において,言
語陰蔽効果が見られるかどうかを検討することを主たる目的とした.さらに,テストセットの類似度の違
いによって,言語化の効果が異なるかどうかも併せて検討した.その結果,触覚の再認記憶においても,
他の感覚モダリティーと同様,言語陰蔽効果が生起しうること,テストセットの類似度の違いによって,
言語化の効果が異なる可能性が示唆された.
p2-27
顔の再認記憶に及ぼす加齢の影響 -方向付け課題を用いた活動性印象の影響の検討
九州大学大学院人間環境学府
○小松佐穂子
九州大学大学院人間環境学研究院
箱田裕司
本研究は,顔の再認記憶に及ぼす加齢の影響について検討した.これまで,顔の再認における加齢研究
では,主に若者(20 歳代)と高齢者(60 歳代以降)が比較されている.その結果,実際に見ていない顔
を誤って 見た と再認してしまう誤認率が,高齢者において高いことが明らかになっている.本研究で
は,30 歳代,40 歳代,50 歳代の被験者について検討することで,誤認率などの顔の再認成績が,加齢と
ともにどのように変化していくのかについて検討した.
p2-28
- 58 -
顔の表情が再認記憶に与える影響
日本大学大学院文学研究科
伊藤令枝
顔の再認記憶は表情の変化による影響を受けるが,本実験では,符号化方略の要因を含めて再認記憶に
ついて検討を行った.被験者は,偶発学習手続きによって未知人物の笑顔や真顔を符号化した.符号化課
題には,顔の特徴を抽出する示差特徴処理を想定した示差特徴課題と,顔の全体的,配置的処理を導くと
される示差表情課題の 2 種類を用いた.約 25 分後に再認テストが行われたが,ターゲットの半数は符号
化した表情と一致した表情が呈示され,残り半分は不一致であった.実験結果は,表情が符号化−検索間
で変化すると,再認成績が減少することを示していた.また,示差特徴処理を行っても,配置的処理を行
っても,後の記憶に差異は認められなかった.さらに,笑顔で顔を符号化しても,真顔で符号化しても,
記憶を促進しなかった.これは,感情や魅力などの影響を介在しないと考えられる符号化課題を用いたた
めに生じた結果であると考えられた.
p2-29
聴覚刺激を用いて示される長期的記憶現象
岡山大学教育学部
○上田紋佳
岡山大学教育学部
寺澤孝文
近年,学習の経験を思い出せないことと学習の効果が残っていないことは,必ずしも一致しておらず,
学習の効果は思い出せなくても残っているということが明らかになってきている.このような学習の効果
は,潜在記憶と呼ばれ,現在盛んに研究が行われている.一方,寺澤(1995)は間接再認手続きを用い,
通常の再認課題の成績に数ヶ月前の単語に関するわずかな繰り返しの効果が現れることを報告している.
この長期的記憶現象は再認判断に潜在記憶が現れることを意味している.また,無作為に作成された聴覚
刺激を用いた実験でも長期的な記憶現象が検出されている(寺澤,2004).本研究では,言語的に意味のあ
る聴覚刺激を用いて現象の検出を目指した.その結果,8 週間前のわずかな偶発学習の効果が虚再認率に
検出された.
p2-30
数ヶ月以前の聴覚刺激の呈示回数が再認成績に及ぼす影響
岡山大学教育学研究科
○勝部厚志
岡山大学教育学部
寺澤孝文
現在,思い出すことのできない数ヶ月以前の学習の効果が寺澤(1995)などの研究から明らかにされて
いる.これらの先行研究では,視覚刺激が用いられ,学習回数に応じたヒット率に独特の振動パターンが
報告されている.追試を目的とした勝部・寺澤(2003)においても,ヒット率に独特の振動パターンが報
告されており,頑健性がうかがえる.しかし,聴覚刺激を用いた寺澤(2004)では,数ヶ月以前の学習の
効果は検出されたが,独特の振動パターンは検出されなかった.そこで本研究は,寺澤(2004)の追試を
目的とし,数ヶ月以前の学習の効果の有無と先行研究にみられる独特の振動パターンの出現の有無を検討
した.その結果,数ヶ月以前の学習の効果が検出された.また,ヒット率に関して,先行研究に見られた
独特の振動パターンは検出されず,寺澤(2004)で報告されているグラフと同様の結果が得られた.
p2-31
3 ヶ月前の 2 秒の偶発学習回数が再認記憶の成績に与える影響
岡山大学
○北垣裕充
岡山大学
寺澤孝文
数ヶ月前のわずかな経験が長期に渡って保持されている事実が,間接再認手続きを用いた寺澤・太田
(1993)などの研究から明らかとなっている.間接再認手続きとは,学習と再認実験との間に長期インター
バルを設定し,長期インターバルの前の学習(セッション 1)がその後の再認実験(セッション 2)に及ぼす影
響を検討するための手続きである.勝部・寺澤(2003)では,11 週間前の英単語に関する偶発学習の回数
の効果が検出されている.学習回数の長期的な効果の出現はインターバルに左右されることを示した寺澤
(1998)の結果に基づき,本研究では 12 週間のインターバルを設け,勝部・寺澤(2003)の追試を行う.な
お,大学生を被験者とした勝部・寺澤(2003)に対して本研究では高校生を対象にし,セッション 1 の英単
語に関する偶発学習の回数(0∼5 回)がセッション 2 の再認テストの成績に及ぼす影響を検討した.結果,
p2-32
- 59 -
ヒット率に関して,セッション 1 で 2,4 回繰り返した単語は 0 回繰り返した単語よりも有意に高かった.
母親のセルフエフィカシーと育児不安の関係について
法政大学人間社会研究科
○石井睦子
法政大学文学部心理学科
渡辺弥生
1 歳 6 ヶ月並びに 3 歳児を持つ母親を対象に、育児不安に影響を及ぼす要因として、セルフエフィカシ
ー、育児観、育児ソーシャルサポートを取り上げ関連性を検討した。その結果、(1)個人の一般的信念の認
知であるセルフエフィカシーが低い母親ほど育児不安が高いこと(2)育児不安と育児ストレッサーの間に
正の相関が認められ、さらに子どもの発達段階によってストレッサーが異なること(3)育児以外にも自分ら
しくありたいと望む母親は、母親は育児に専念すべきという育児観を持つ母親に比べ、育児不安をより多
くかんじている(4)育児不安と育児ソーシャルサポートには、3 歳児の母親のみに負の相関がみられ、特に
育児仲間を求めているものほど育児不安が高い、ことがわかった。さらに、育児不安を規定する要因とし
て、順に育児ストレッサー、育児観、セルフエフィカシーの三つであることが明らかとなった。
p3-01
大学生における 人格の二面性 と社会的適応
東京国際大学大学院臨床心理学研究科
○久田一雄
法政大学文学部心理学科
渡辺弥生
人格の発達や適応の指標として、相異なる性質の共存が挙げられる。しかしこれまでの種々の人格測定
検査では人間の多様性・複雑性について存在は否定されてはいないものの、積極的に取り上げられては来
なかった(芹澤, 2003)。本研究では、 人格の二面性 及び個人志向性・社会志向性に着目し、社会的スキ
ルとの関わりから社会的適応について考察した。大学生を対象に 人格の二面性 尺度の短縮版(TSPS:
桑原, 1983)、個人志向性・社会志向性尺度(伊藤, 1993)、社会的スキル尺度(菊池, 1988)が実施された。その
結果、相異なる性質を許容できる者は、認知が柔軟であり、ものごとに適応的に対処できる可能性が示さ
れた。社会的適応を考える上で、同時にものごとを多面的に認知し、許容することが社会的スキルなどの
向上を目指すうえで重要となることが示唆された。
p3-02
乳児期における年齢弁別の発達:顔刺激を用いて
九州大学大学院人間環境学府・日本学術振興会 ○実藤和佳子
九州大学大学院環境学研究院
#大神英裕
九州大学大学院環境学研究院
橋彌和秀
乳児が幼児の方よりも乳児の方を選好することが先行研究で報告されている。これまで発表者らはこの
現象に関する実証研究を行い、6・9 ヶ月児が 3 ヶ月齢年上/年下の乳児より被験児と同月齢乳児の動画や
全身写真を選好することを明らかにしてきた。乳児は外見的特徴を用いて 3 ヶ月齢を弁別したと考えられ
るが、外見的特徴の中でも何の要素を手がかりとしたのだろうか。本研究では、対人認知に重要と考えら
れる顔に焦点を当てた検討を行った。6・9・12 ヶ月児の平均顔刺激を 6・9 ヶ月児に提示したところ、9
ヶ月児は同月齢である 9 ヶ月刺激を長く注視し、刺激注視中にバンギングが多く見られた。一方、6 ヶ月
児は刺激によって異なった反応は見られなかった。この結果から、生後 1 年目の後半に顔情報から年齢を
弁別する能力が発達していくことが示唆された。発表当日には、乳児・3 歳児・成人の平均顔を提示した
際の反応も併せて発表し、更に議論を深める。
p3-03
乳児の視線転換に及ぼす情動の影響
九州大学大学院人間環境学府
黒木美紗
乳児の視線転換の生起頻度が月齢、および情動状態によって変化するかを明らかにするため、6, 9, 12
ヶ月児を対象とした実験観察を行った。乳児はイスに座った状態で玩具を提示され、養育者は乳児の傍ら
に座り、乳児に対して働きかけないよう教示された。玩具遊び中に観察された養育者およびその他の対象
への乳児の視線転換の相対頻度を計測したところ、乳児がポジティブな情動を喚起されているときには、
玩具から視線を転じる行動が生じやすく、ニュートラル時よりも有意に多いことが示された。このことか
ら、ポジティブな情動は注視対象からの視線転換を増加させるものと考えられる。発表当日は、乳児の視
p3-04
- 60 -
線転換の月齢に伴う変化について触れるとともに、この情動の機能が乳児の注意行動の発達に果たす役割
について論じる。
人生の意味・目的の獲得と理想自己が適応意識に及ぼす影響(1)
法政大学
○石川千香子
法政大学
藤田哲也
本研究は、変化し続ける社会において、成人がより納得した自分らしい生き方を可能とすることに対し、
人生の意味・目的の獲得および理想自己という、適応意識をつくりだす側面から検証した。成人期 323 名
を対象に、一部に自由記述法を含めた質問紙による調査を行った結果、最も重要とする理想自己を表出す
ることには、様々な視点が絡み合っており、さらに成人前期(22 才∼45 才)では自分自身に視点が向いてい
るのに比較して、成人後期(46 才∼60 才)では社会との関係性に視点が変化しているという傾向がみられ
た。また、成人前期に人生の意味や目的を獲得している人ほど理想自己への志向性は高く、成人後期では
人生の意味や目的を獲得していない人ほど理想自己への志向性が高いという傾向がみられた。さらに、理
想自己を実現するための手段がある人や人生の意味や目的を見出している人ほど、自己肯定感が強いとい
う傾向が確認された。
p3-05
p3-06
笑いの探索的研究
関西大学大学院社会学研究科
○吉田昂平
関西大学社会学部
関口理久子
本研究では、
「笑い」生起に重要な因子を見つけ出すことを目的とし、視聴者の受ける感覚という観点
からそれを考えた。調査 1 では笑いの理論をもとに、コント視聴者の受ける感覚という観点から、8 種類
のコントについて内容分析を行った。その結果、
「優越感」
、
「驚き」
、
「意外性」
、
「不調和」がどのコント
においても 50%より多く見られた。調査 2 は調査 1 の結果の一般性の検証を目的とした。
「優越感」
、
「驚
き」
、
「意外性」
、
「不調和」を含むコントを被験者に視聴させ、その感覚の有無の測定とコント視聴前・視
聴後の感情測定(敵意、倦怠、非活動的快、集中、驚愕)を行った。その結果、
「優越感」
、
「驚き」が調
査 1 の結果と一致せず、感情測定では、敵意、非活動的快、集中、驚愕のみ視聴前後に有意な差が認めら
れたコントがあった。以上より「笑い」生起に重要な因子の一般性を見いだすためには方法、素材の数な
どのさらなる検討が必要である。
感性印象測定に用いられる形容詞尺度の感覚モダリティ関連性の分析
東北大学
○行場次朗
東北大学
鈴木美穂
鹿児島大学
川畑秀明
岩手大学
山口 浩
東北福祉大学
小松 紘
感性印象を測定する際に良く用いられる形容詞対(井上・小林, 1985; 鈴木・行場, 2003)について、感覚
モダリティとの関連性を約 300 名の被験者を用いて調べた。具体的には、各形容詞対が、視覚、聴覚、嗅
覚、味覚、温覚、冷覚、嗅覚、触覚、平衡感覚、身体運動感覚とどれぐらい関連が深いと感じるか、7 段
階で評定をおこなった。それらのデータを主成分分析にかけると、第 1 主成分には近感覚(皮膚感覚)に属
するモダリティが高い負荷量を示し、第 2 主成分には平衡・運動感覚が、第 3 主成分には遠感覚(聴覚、
視覚)のモダリティが高い負荷量を示した。また、
「気持ちのよい―気持ちの悪い」
「鋭い―鈍い」など多
くの感覚に高い関連性を示し、マルチモーダル性が強い形容詞対や、
「明るい−暗い」
「うるさい―静かな」
な特定のモダリティに比較的特化した形容詞対の存在が明らかにされた。これらの結果から、感性情報処
理における共感覚性の構造的特徴が議論された。
p3-07
p3-08
表情のモーフィング画像を用いた感情誘導に関する一考察
早稲田大学大学院文学研究科
早稲田大学大学院文学研究科
- 61 -
○高木幸子
井出野尚
本研究は、表情を動画呈示することによる感情誘導法の有効性をエモーショナル・ストループ課題を題
材に検討することを目的とした。これまで、中立顔から各表情(e.g. 喜び、悲しみ)へのモーフィング画像
を呈示することにより、表情の認識が促進されることが示されている(高木, 2003)。表情の認識が促進され
ることにより、感情誘導が可能となることが仮定される。実験計画は、独立変数として感情種
(positive/negative/neutral)×刺激種(快語・不快語・コントロール)の 2 要因計画を用いた。従属変数として、
表情呈示後に呈示されるエモーショナル・ストループ刺激への反応時間を用いた。また、感情誘導に用い
たモーフィング画像には、positive 条件(中立表情から喜び表情)、negative 条件(中立表情から恐怖表情)、
neutral 条件(各表情(喜び・恐怖)から中立顔)の 3 条件を用いた。
顔の表情が伝達内容の理解に及ぼす影響
放送大学発達と教育
○奥居みどり
放送大学発達と教育
星 薫
顔の表情は、伝達された話の内容の理解に影響を及ぼすのだろうか。ビデオ映像による講義を用いて検
討することを目的とし、明るい顔の表情、暗い顔の表情、視線を下げたままの表情、および中性表情の静
止画像(統制条件)以上 4 種類の条件で講義をする講師のビデオをそれぞれ作製した。そのビデオを被験者
の大学生に見せ、質問紙に話の内容の再生、講師についての印象など 8 項目の質問に関して記入を求めた。
実験の結果、明るい顔の表情の講師の話を聴いた被験者は、暗い顔の表情、視線を下げたままの表情の講
師の話を聞いた被験者に比べ、話の内容の理解が有意に高かったことがわかった。視線を下げたままの表
情においては、男性は、内容の理解を示す再生率の落ち込みが明らかであり、女性は、他の条件のビデオ
より再生結果に高い数値がみられた。視線を下げたままの表情による講師の場合、話の内容の理解に男性
と女性の性差が現れる事が明確に示された。
p3-09
情動的ストレスが出来事の時間評価に及ぼす効果:覚醒度との相関
九州大学
○松本亜紀
九州大学
箱田裕司
九州大学
大沼夏子
情動的ストレスが喚起される出来事の持続時間は実際よりも長く評価されることが明らかにされてい
る(Loftus, Schooler, Boone, & Kline, 1986)。これまで行った一連の研究では、出来事を見た直後において、情
動的ストレスが喚起される出来事を見た被験者(実験群)と喚起されない出来事を見た被験者(統制群)の時
間評価に差がない一方で、出来事を見てから時間が経過すると(3 日後・7 日後)、実験群の方が統制群より
も出来事を長く評価することを確認した。本研究では、出来事を見たときに喚起された覚醒度を
JUMACL(日本版 UWIST 気分チェックリスト)を用いて測定し、覚醒度と時間評価の相関関係を検討した。
p3-10
不快感情が競合検出に基づく反応抑制に与える影響
広島大学大学院教育学研究科
○武澤友広
広島大学大学院教育学研究科
宮谷真人
フランカー課題において、直前の試行で競合が生じた試行と生じなかった試行では、前者の方が反応時
間が長い。この反応時間の遅延は、エラーの原因となる競合を検出し反応抑制を引き起こすことでエラー
を回避しようとするリスク検出処理の働きを反映している。本研究では、このリスク検出処理にエラーに
伴う不快感情が与える影響を検討した。被験者は、エラーをする度に罰が与えられる高リスク条件と罰の
ない低リスク条件の2つの状況下でフランカー課題に取り組んだ。その結果、前試行で競合が生じた場合
の後続試行の反応時間は両リスク条件とも長くなったが、その遅延の程度には条件差はなく、リスク検出
処理への不快感情の影響は認められなかった。しかし、競合が生じる試行の反応時間から推測される競合
の量は高リスク条件の方が少なかったことから、不快感情が喚起されやすい高リスク条件では反応抑制が
強く働き、競合が生じにくかった可能性が示唆された。
p3-11
p3-12
感情制御方略が再認課題成績に及ぼす影響
立教大学文学研究科
○中村玲香
- 62 -
千葉大学
#小口孝司
感情制御をすることは認知的なリソースを消耗し、情報処理課題の成績の低下につながるという知見が
得られている。本研究では、方略の違いによって認知的なリソースの消耗の程度が異なり課題成績に違い
がみられると考え、制御方略の違いがもたらす認知的リソースへの影響を探ることを目的とした。教示に
よる誘導によって感情制御方略を操作し、
70 名の被験者に対してネガティブな感情を誘導するビデオをみ
せた。ビデオをみた後、スライドによってビデオ画像の再認テストを行い、制御方略別にその正答率を検
討した。その結果、抑制群が行った表情の抑制による感情制御は、逃避群の注意回避をする感情制御方略
よりも認知的負荷が高いと考えられ、感情制御方略の違いは認知的なリソースの消耗の程度に影響を及ぼ
す可能性があることが示唆された。
感情の及ぼす Stroop 課題制御プロセスへの影響の検討−感情誘導法に表情動画を用いて−
早稲田大学大学院文学研究科心理学専攻
○井出野尚
早稲田大学大学院文学研究科心理学専攻
高木幸子
これまで、Stroop 課題を題材にコンフリクト課題における課題制御プロセスの検討が試みられている
(Kerns, et. al., 2004)。本研究の目的は、感情が及ぼすコンフリクト・モニタリング・プロセスへの影響を検
討することである。感情誘導には、表情動画による表情プライミング手続きを用いた。表情プライミング
手続きとは、プラムとして表情動画(e.g. 笑顔,怒り表情)を短時間呈示し、後続するターゲットへの影響
を検討する実験パラダイムである。表情動画は、中立顔から各表情(e.g. 笑顔、怒り表情)へのモーフィン
グ画像を連続呈示することにより作成された。要員配置は感情種(Angry・Happy・Neutral)×刺激(congruent・
incongruent・control)の 3×3 とし,両要因とも被験者内計画とした。従属変数は、表情呈示後に後続する
ストループ刺激への反応時間を用いた。
p3-13
多数の運動物体への注意と方向変化検出の関係
大阪大学人間科学部適応認知行動学研究室
○駒田悠一
大阪大学人間科学部適応認知行動学研究室
三浦利章
本実験では分割的注意状態における、方向変化検出を取り扱った。MOT 課題を利用して被験者に複数
の物体に対して注意を向けさせ、注意を向けている対象と向けていない対象のそれぞれに対して発生する
運動方向変化の検出率を測定した。結果、注意を向けている場合は変化角度 90 度程度で正答率が平衡に
達したが、その成績は最高でも 50%程度だった。また、注意を向けていない場合、変化角度に応じて成績
は線形に増加した。さらに実験 2 ではフラッシュを利用して注意をひきつけた際の成績と、変化する物体
数が検出に与える影響を検討した。結果、検出成績は注意が向けられている間だけ上昇し、その成績に最
も影響を与えたのは変化する物体数であった。結論として、トラッキングと方向変化検出は独立の仕組み
であり、方向変化検出にはトップダウンの注意の役割が大きいことが示された。
p3-14
ストループ効果とプライミング効果の関係
神戸大学大学院自然科学研究科
○堤 教彰
神戸大学海事科学部
嶋田博行
ストループ効果の派生効果である継時的提示効果とポジティブ・プライミング効果およびネガティブ・
プライミング効果との関係を検証した。被験者は 18-24 歳の 16 人で、画面の左右に表示されるカラーワ
ード・カラーパッチに反応させ、その反応時間の測定を行った。カラーパッチを導入することで、二つの
関係を検討することができた。実験 I では、画面の右にカラーパッチ、画面の左にカラーワードを表示 し
た(ポジティブ・プライミングとの関係)。実験 II では、画面の右にカラーワード、画面の左にカラーパッ
チを表示した(ネガティブ・プライミングとの関係)。それぞれの提示条件は条件 A(全て一致)、条件 B(左
右のカラーが一致し残りは不一致)、条件 C(左のワードと右のカラーが一致し残りは不一致)、条件 D(全て
不一致)であった。実験の結果、ストループ効果とプライミ ング効果はそれぞれ独立していることが分か
った。
p3-15
p3-16
処理資源配分方略シフト
- 63 -
鉄道総合技術研究所
○重森雅嘉
立教大学
#高橋完介
鉄道総合技術研究所
#樋田 航
立教大学
芳賀 繁
ストループ課題(主)に数値暗唱課題(副)を組み合わせた二重課題を用いて副課題負荷量の増加がストル
ープ干渉量に与える影響を大学生 49 名を被験者に検討した。結果,負荷量の増加に伴う干渉量の増加は
得られなかった。しかし、練習効果を考慮して、課題の後半のみを分析し直したところ、後半部の数値暗
唱負荷条件において 3 桁よりも 4 桁で干渉量が有意に大きくなった。しかし、ここでも 5 桁では 3 桁と同
程度の干渉量しか得られなかった。この結果の解釈として、副課題の処理資源配分方略を想定し、4 桁条
件では主副両立方略を、5 桁条件では主課題優先方略を採ったことによる結果として現象を解釈した。こ
れにしたがうと後半よりも処理資源を必要とする前半においては、3 桁条件で主副両立方略を、4 桁条件
以後で主課題優先方略を採ることが予測される。前半を分析した結果、副課題の処理資源配分方略を支持
する結果が得られた。
自律訓練法が情動ストループ課題の遂行に及ぼす影響 –中間報告
金沢工業大学心理学科研究所
○松本 圭
金沢工業大学心理学科研究所
塩谷 亨
金沢工業大学人間情報システム研究所
近江政雄
不安の生起と維持に注意バイアスが関連していることが指摘されている。注意バイアスとは脅威情報へ
選択的に注意が向けられる傾向のことを指す。注意バイアスが不安の変化に鋭敏であるとすれば、不安を
標的とする心理療法の効果を注意バイアスの指標によって客観的に評価できる可能性がある。注意バイア
スを測定する方法の中で最も広く使用されている方法に情動ストループ課題がある。情動ストループ課題
とは色付きの情動語を提示し、色名呼称を求める課題である。高不安者では中性語よりも脅威語において
反応が遅延する、つまり注意バイアスが見られるとされている。そこで、本研究では 23 名の被験者に不
安の低減に効果があるとされる自律訓練法を習得させ、その前後で情動ストループ課題を実施した。その
結果、自律訓練習得後に脅威語に対する反応時間の有意な減少が見られ、習得前には見られていた注意バ
イアスが習得後には消失することが確認された。
p3-17
2 色型、異常 3 色型色覚者における色手がかりの効果についての検討
近畿福祉大学
○室井みや
愛媛女子短期大学
#齋藤雅英
愛媛女子短期大学
岡部康成
日常のさまざまな場面で色の変化による情報呈示や注意喚起という方法が用いられている。しかし、2
色型、異常 3 色型色覚者(いわゆる色盲・色弱者)にとって、色の変化は必ずしも有効な手がかりとはなっ
ていない可能性がある。本研究では、色または明度の違いを手がかりとした視覚探索課題を行い、2 色型、
異常 3 色型色覚者にとっての色手がかりの有効性について検討した。その結果、2 色型、異常 3 色型色覚
者においても色による手がかりは有効であった。しかしながら、赤、緑を手がかりとした場合だけでなく、
青や黄を手がかりとした場合でも、通常色覚者と比べて 2 色型、異常 3 色型色覚者の反応促進の効果が小
さくなる傾向がみられ、彼らが全般的に色に依存しない方法で情報処理を行っている可能性が示された。
p3-18
健常型と障害型色覚における色識別能力の個人差
北海道大学大学院文学研究科
○西川林太郎
北海道大学大学院文学研究科
川端康弘
色覚障害に関する研究では重度の色覚障害と健常者を区別する方法はある程度確立されているが、色覚
健常者と軽度の先天性色覚障害を分離する基準はまだ明確でない。また色の識別能力については健常者、
障害者ともにある程度の個人差が存在すると思われるが、この点について体系的に報告された研究はあま
りない。本研究では日本色研 100 色相配列検査器を用いて色覚型を分類し、さらにアンケートに基づいて
年齢、性別、出身地、視力、好きな色・嫌いな色、色に関する経験などの項目と色覚検査の結果との関連
p3-19
- 64 -
を調査した。その結果、色覚検査の色範囲や被験者の性別などによって、色識別能力に差異があることが
明らかとなった。このことは色覚が遺伝によってのみ決定されるのではなく、健常型、障害型ともに個人
差があることを示していると考えられる。また軽度の色覚障害と色覚の個人差とを区別するために色覚障
害の遺伝的要因の強度を表す指標についても検討した。
室内空間の変化に対する認知の精度−視点の変化−
北海道大学大学院文学研究科
○笠井有利子
北海道大学大学院文学研究科
川端康弘
ビジュアルシーンに含まれる様々な情報を選択し認知しながら人間の日常的活動は営まれている。その
心内表現や情報利用には認知活動による違いや個人差が存在しているだろう。本研究ではビジュアルシー
ンの変化に対する感受性を調査した。日常的なシーンの例として室内空間の画像を CG で作成し実験に用
いた。日常的に起こりうる変化のひとつに、室内を見るときの位置(角度)があげられる。この角度を段階
的に変化させた画像をディストラクタとして作成した。変化前の画像を提示し記憶させ、直後にディスト
ラクタを混ぜてもとの画像と判別する再認課題を行い、正答率と反応時間を測定した。全体として元の画
像に近い方位に反応が集中するが、ある程度広がりを持って分布しているので識別課題ほどの精度は維持
されない。また個別の画像で見ると、シーンに含まれる色情報の多彩さや、物体の配置により課題の難易
度が異なることが示唆された。
p3-20
チェンジブラインドネスにおける変化の位置検出と特徴検出の差異
鹿児島大学大学院教育学研究科
○大崎弘孝
鹿児島大学教育学部
川畑秀明
視覚刺激の検出課題において、ターゲットの位置検出と特徴検出はそれぞれ独立した処理過程によるこ
とが明らかにされている。本研究では、視覚探索的刺激布置におけるチェンジブラインドネスを指標とし
て、視覚刺激の追加/削除/色変化/方位変化の位置検出・特徴検出過程を検討した。刺激ディスプレイ
は赤および緑の色からなる縦向きまたは横向きの長方形がランダムな位置に配列されたものであり、被験
者は、変化が生じた場所、または変化した特徴について回答することが求められた。その結果、色および
方位の位置検出と特徴検出に違いが見られなかったのに対し、刺激の追加および削除の検出においては両
検出に違いが見られた。また、追加および削除はそれぞれの検出で同じ傾向を示すことが明らかになった。
p3-21
復帰抑制における attentional momentum 仮説の検討
東北大学大学院情報科学研究科
○松田幸久
富山大学人文学部
海老原直邦
復帰抑制(IOR)の原因として提案された Attentional Momentum 仮説(Pratt et al., 1999)について検討した。
AM 仮説は周辺手がかり出現位置から注視点に向かう注意の慣性の存在を想定する。ターゲットの出現位
置によっては注意の移動方向の変更が必要となる。AM 仮説は注意の移動方向の変更量の増加に伴って
RT が増加すると考え、増加分が IOR であると説明する。実験 1 では SOA を 320ms、600ms、880ms の 3
条件を用いて追試した。結果、SOA320ms 条件で AM 仮説を支持する促進効果が得られた。実験 2 では
SOA320ms 条件のみを用い実験 1 を追試したところ促進効果は得られなかった。実験 1 で得られた促進効
果は不安定である一方、抑制効果は実験 1、2 において安定して得られたことから AM 仮説が IOR の説明
として妥当ではないことが示唆された。
p3-22
Preview Search における先行刺激の自動的抑制
中京大学心理学研究科
○大杉尚之
中京大学心理学研究科
森 孝行
視覚探索課題において、探索刺激を継時的に二画面に分けて提示すると、第一画面の刺激が無視され、
第二画面のみ探索が行われる。このような効果を先行提示効果といい、位置と特徴の意図的な抑制処理メ
カニズムによって説明されている。しかし、特徴ベースの抑制処理は、タスクの達成に有効でない場合で
さえ生じることから、意図的な処理ではなく、第一画面の刺激特徴に依存した自動的処理である可能性が
p3-23
- 65 -
ある。実験では、第一画面の刺激の色特徴が、第二画面の目標刺激の色特徴を共有する条件と、第二画面
の妨害刺激の色特徴を共有する条件とを等しい確率で提示し、抑制が意図的処理か自動的処理かを検討し
た。意図的処理ならば、タスクにとって有効でない第一画面の刺激の抑制を生じないため、両条件に差は
認められないはずである。結果は、両条件に差が認められ、抑制が自動的処理である可能性が示唆された。
視覚的注意の移動がリーチング動作に及ぼす影響
大阪大学大学院人間科学研究科
○内藤 宏
大阪大学大学院人間科学研究科
三浦利章
本研究はターゲットへのリーチング動作を課題とし、視覚的注意の移動がリーチング動作に及ぼす影響
を検討した。リーチング動作の運動方向は「近くから遠くへ」と「遠くから近くへ」の 2 つであった。視
覚的注意の操作に関して先行手がかりパラダイムを適用し、ターゲットの提示前に、実験 1 では中心的手
がかり、実験 2 では周辺的手がかりを与えた。手がかり条件は、手がかり通りにターゲットが提示される
Valid 条件、手がかりが中立的な情報しか持たない Neutral 条件、手がかりよりも被験者に近い位置にター
ゲットが提示される Invalid-Near 条件、手がかりよりも被験者から遠い位置にターゲットが提示される
Invalid-Far 条件の 4 水準であった。結果は、リーチング動作の運動終点位置が手がかり条件によって異な
る傾向が見られ、ターゲット検出後の運動制御にも視覚的注意の移動が影響することが示唆された。
p3-24
視覚−触覚モダリティ間における単純接触効果の検討
東北大学・日本学術振興会
○鈴木美穂
東北大学
行場次朗
立体刺激を用いて、視覚‐触覚間で単純接触効果が生起するか検討した。視覚で単純接触し、触覚で好
意判断を行う群(VT 条件)と、触覚で単純接触し、視覚で好意判断する群(TV 条件)を実験条件とし、コン
トロール群では、単純接触無しで視覚、触覚それぞれのモダリティで好意判断課題を実施した。その結果、
VT 条件は、視覚で単純接触したターゲット刺激のほうが、単純接触していないディストラクタ刺激に比
べ、有意に好意評価が高かった。一方、TV 条件は、ターゲットとディストラクタともに、コントロール
条件よりも、より好意的に判断された。コントロール条件では、視覚、触覚のいずれにおいても、ターゲ
ットとディストラクタ間に有意な差は得られなかった。これらの結果は、視覚から触覚、触覚から視覚へ
という単純接触の方向性によって、好意判断におよぼす影響に非対称性があることを示している。
p3-25
長期間深深度潜水が潜水員の認知・注意機能に及ぼす影響について
海上自衛隊潜水医学実験隊
○景山 望
海上自衛隊潜水医学実験隊
#小沢浩二
海上自衛隊潜水医学実験隊
#木村民蔵
現在、海難事故等で深海面に沈んだ船体等の引き上げに伴う索取付け等の作業は、未だ人間が行い、作
業を行う潜水員は大気圧の最大 44 倍の気圧下での生活を、長期間余儀なくされる。生理学において、こ
うした作業や生活環境の影響による潜水員の認知機能の低下が報告されている(小沢,2004)。本研究では、
選択的注意の簡便な指標として用いられるストループ干渉によって、長期間の深深度潜水作業及び生活
が、潜水員の認知機能に及ぼす影響について検討した。深深度潜水訓練期間中の職業潜水員に対し、箱田・
佐々木(1991)の新ストループ検査 II を水深 0m−440m までの深度で実施した。440m において、最もスト
ループ干渉が大きくなり、4 つの下位検査得点も 440m で最も悪くなった。本研究の結果は、これまで生
理学で得られた知見と一致し、更に認知機能の低下によるヒューマンエラーの諸要因を解明する足がかり
となるものであった。
p3-26
顔の示差性が特徴変化の判断と全体処理に及ぼす影響の検討
早稲田大学文学研究科
安田 孝
本研究では顔の認知について、全体処理と顔の示差性に注目し、示差性の低い顔(典型顔)は全体処理へ
の依存が大きい、という仮説を反応時間により検討した。示差性の高い顔と低い顔をそれぞれ 16 枚ずつ
合計 32 枚用意した。さらに次の 3 とおりの条件を設定した。1)特徴変化(部分特徴入れ替えた顔)、2)布置
p3-27
- 66 -
情報変化(部分特徴の配置を変化)、3)オリジナル(無操作条件)。被験者は連続して提示される 2 枚の写真が
同じか異なるかを、できるだけ速く判断した。実験の結果、得られた反応時間について 2(顔の示差性・高
/低)×3(顔の操作・特徴変化/布置情報変化/統制)の分散分析を行なったところ、顔の示差性と顔の操作の主
効果、ならびに交互作用がいずれも 5%水準で優位となった。どの顔の操作条件でも、示差性の低い顔で
反応時間が速かったことから、示差性の低い顔は全体処理への依存が大きいことを示唆する結果と考えら
れる。
概念的一致が随伴性注意の捕捉に及ぼす効果の検討
中京大学大学院心理学研究科
○犬飼朋恵
中京大学大学院心理学研究科
森 孝行
注意の構えと合致する対象のみが注意を捕捉する現象を、随伴性注意の捕捉と呼ぶ(Folk, Remington &
Johnston, 1992)。構えは、ターゲットを定義する特性に対して確立されるため、ターゲットと特性を共有す
る対象のみが注意を引き付けると考えられてきた。しかしながら、ターゲットと異なる特性を有する妨害
刺激が先行提示された場合に、課題の遂行を妨害する場合がある(Ariga & Kawahara, 2004)。この妨害刺激
先見効果では、ターゲットと妨害刺激は異なる特性(色と色名)で定義されていたが、概念レベルでは同じ
色を示していた。そこで本研究では、構えと概念レベルで一致する刺激によって注意の捕捉が生じるかを
検討する。
p3-28
矢印の方向指示力の提示位置による効果
立命館大学
尾田政臣
標識として垂直面上に上向きに描かれた矢印は一般的に前方を指示すると解釈されている。これまでの
研究から、実験的にもそれを裏付ける結果を得ている。一方、下向きに描かれた矢印は自分より後方を指
示すると解釈されるものの、その指示力は弱く後方指示を確実なものにするためには遠近法的な描画と組
み合わせる必要があることが明らかにされている。しかし、その矢印の提示される位置が天井に近く見上
げる場合と、そうでない場合では、矢印の指示する方向および指示力についての効果に違いがあるのでは
ないかとの疑問が生じる。そこで矢印の提示位置による効果について実験的に検証した。その結果、下向
き矢印に対しては、天井に近い位置に提示された場合、その方向指示力が弱まることが示された。
p3-29
オブジェクトベースの注意効果における視覚的特徴の効果
中京大学大学院心理学研究科
○下村智斉
中京大学大学院心理学研究科
森 孝行
選択的注意における問題の一つとして視覚的注意の選択対象をめぐる議論がある。これまでの研究から
視覚的注意は特定の空間のみではなく、一つのオブジェクトをも選択していることが明らかになってい
る。このうち後者は、オブジェクトの一部に空間手がかりが与えられた場合、空間的に等距離であるにも
かかわらず、他のオブジェクト内よりもそのオブジェクト内でのイベントに対する反応時間が短いことを
根拠としている。このオブジェクトベースの注意効果に関する現在までの研究は、空間的注意の分布の様
態を問題としてきた。しかしこのメカニズムについては統一した見解は得られていない。そこで本研究で
はそのメカニズムを明らかにするためにオブジェクトの知覚が成立する過程を考慮に入れ、オブジェクト
の視覚的特徴が空間的注意の分布に及ぼす効果の検討を行う。
p3-30
背景に呈示された奥行き運動刺激が空間的注意に及ぼす影響
大阪大学大学院人間科学研究科
○緑川直幸
大阪大学大学院人間科学研究科
木村貴彦
大阪大学大学院人間科学研究科
三浦利章
背景運動の呈示が空間的注意に及ぼす影響を調べた。背景運動として奥行き方向への移動を模擬した
optic flow を呈示し、その収斂点を手がかりとした空間手がかり法によって注意移動を制御した。要因とし
て Validity(Valid・Neutral・Invalid)と optic flow の速度(Static 条件・Low 条件・High 条件)を設定した。結果
は、手がかりによって注意移動が制御されたことを示した。また、Static 条件が最も反応時間が短くなり、
p3-31
- 67 -
背景運動が呈示された場合、されない場合と比較して、課題遂行に干渉的な影響を与えることが示された。
加えて、High 条件は Low 条件よりも反応時間が短くなり、速度による異方性も示された。これらのこと
から、optic flow の呈示による知覚処理が注意に対して影響を及ぼすことを示唆している。
タイムプレッシャーがサイモン課題における系列効果に及ぼす影響
広島大学大学院教育学研究科
○白石舞衣子
広島大学大学院教育学研究科
宮谷真人
我々は時間的制約を受けながら作業をしたり、意思決定したりするとタイムプレッシャー(以下 TP)を感
じる。本研究では、反応選択の難易度を操作できるサイモン課題を用いて、反応時間を制限することによ
って生じる TP が、選択反応における刺激評価過程および運動出力過程に及ぼす影響について、RT、P300
および LRP を指標として検討した。その結果、TP によって P300 潜時は変化しないが、LRP 潜時は短縮
した。また、連続する 2 試行について、先行試行の反応選択の難易度(刺激呈示位置と反応する手が一致
するか否か、一致 vs.不一致)によって、次試行の反応選択に及ぼす TP の影響の仕方が変化するのかどう
かを検討した。一致試行の RT は、先行試行が不一致試行である場合に、一致試行が先行するよりも長く
なった。この RT の遅延の程度は、TP が強い場合よりも弱い場合に大きかった。
p3-32
顔線画図形の快・不快判断時における ERP の検討
日本大学大学院文学研究科
○前田亜希
日本大学大学院文学研究科
渡邊伸行
日本大学大学院文学研究科
鈴木竜太
日本大学大学院文学研究科・日本大学文理学部 #山田 寛
本研究の目的は、顔線画図形の快・不快弁別判断時に観察される ERP 成分について検討を行うことで
ある。刺激は顔刺激生成システム SEE(Yamada, 1993)を用いて作成した 5 つの顔線画図形であった。それ
らは山田(2000)における視覚情報次元上の「口の傾斜性」の軸上で物理的に等間隔に変化させたものであ
り、このうち 1 枚が無表情、2 枚が無表情から正の方向に変化させたもの、2 枚が負の方向に変化させた
ものであった。実験では、まず注視点を 500ms 呈示し、それに続けて第 1 刺激として無表情図形を 500ms、
さらに第 2 刺激として表情図形を 1000ms 呈示し、その際の EEG を測定、記録した。第 2 刺激の表情につ
いて、被験者は快もしくは不快の判断をボタン押しによって報告し、その際の反応時間の測定も同時に行
った。
p3-33
人名想起における検索誘導性忘却
名古屋大学大学院環境学研究科心理学講座
○川口 潤
名古屋大学大学院情報科学研究科
#橋本浩利
メディア表現論講座
名古屋大学大学院環境学研究科心理学講座
月元 敬
一連の情報を学習し,その後一部の情報を検索,そしてすべての情報を再生した場合,検索した情報と
関連はあるが検索しなかった情報は,統制条件(関連がなく検索しなかった情報)と比べて再生成績が低
下することが知られている.この現象は検索誘導性忘却(retrieval induced forgetting)と呼ばれ,人の忘却メカ
ニズムの重要な側面を反映しているといえる.本研究では,これまで取り上げられなかった人名の想起に
おいて,同様の現象が見られるかどうかを検討した.その結果,途中で検索を行った人名と同じ職業名を
有するが,検索を行わなかった人名は,統制条件と比べ手がかり再生成績が低下し検索誘導性忘却がみら
れた.人名の想起は一般の単語の想起よりも想起困難が生じやすい(e.g., TOT)ことが知られているが,
本研究でみられた人名の想起の抑制は,他の情報と共通した想起プロセスを反映したものと考えることが
できる.
p4-01
人名の想起/生成における阻害要因と量的特性
早稲田大学
上田卓司
ある個人についての情報を想起する際に,その他の属性と比較した場合,その名前の想起についてはよ
p4-02
- 68 -
り困難であり,また普通名詞と比較した場合の固有名詞の想起の困難さも指摘されている.臨床的には,
固有名に限局した健忘失語(proper name anomia)の症例が報告されている.名前想起のメカニズムについ
ての理論的説明はいくつか提唱されているが十全とは言い難い.そこで本研究では,健常な成人を対象に,
制限連想による名字生成課題を実施し,人名想起においてどのような阻害要因があるのかを検討した.一
定時間内にどのくらい多くの名字を挙げられるかを記録した結果,顔を思い出せるが名前が出て来ない,
といった想起の失敗とみなされるような幾つかの想起パタンは個人内ではかなりの程度一貫した傾向が
あることが示唆された.また,データから示唆される検索過程の特性や,既知の名字における語彙量の推
定に関しても考察を行った.
意図的忘却における刺激特性の効果
金沢大学大学院文学研究科
○松田崇志
金沢大学大学院文学研究科
松川順子
本研究の目的は刺激特性が意図的忘却にどのように影響するかを検討することである。そこで、刺激特
性として単語であるか画像であるか(刺激形態)と刺激がよく知られた物であるか知られていない物である
か(熟知価)を操作した。被験者はランダムに提示されるこれらを組み合わせた項目を記憶し、その後、意
図的に忘却するように教示される群(忘却教示群)と教示をされない群(統制群)に分けられ、
忘却教示群は意
図的に忘れる行為を 30 秒行い、統制群は計算課題を 30 秒行った。それから再生テスト、ソースモニタリ
ングテスト(S テスト)、再認テストを実施した。再生テストの結果、教示と刺激形態の交互作用は得られ
ず、教示と熟知価の交互作用が得られた。これにより、意図的忘却が刺激形態ではなく熟知価に影響され
るということが明らかになった。さらに、S テストでは、忘却教示の効果は見られず、再生テストとは異
なる結果となった。
p4-03
修正指示忘却パラダイムにおける忘却教示の効果
関西学院大学大学院文学研究科
○山田陽平
関西学院大学大学院文学研究科
平野哲司
関西学院大学文学部
浮田 潤
一度覚えたリストを忘却し(F 項目)
、その後違うリスト(R 項目)を覚えるよう指示されると、後の
再生テストで忘却教示が与えられなかった被験者よりもF 項目の再生が低下し、
R 項目の再生が高くなる。
この現象は指示忘却といわれている。一般に指示忘却のメカニズムは検索抑制の観点から論じられている
が(Bjork, 1989)、最近では文脈変化で説明しようという試みがなされている (Sahakyan & Kelley, 2002)。本
実験は、符号化時に文脈変化が起こっていない状況での忘却教示の効果を検討した。被験者は 12 語から
なるリストを 2 リスト続けて学習した後、後半のリストはテストしないので忘れ、前半のリストだけを思
い出してもらうと指示された。その結果、指示忘却効果が得られなかった。ただし、忘却群における再生
率はリスト後半からの逆向干渉を受けていないことを示した。この結果は、only effect の観点から論じる
ことができる。
p4-04
検索容易性と記憶判断
一橋大学大学院社会学研究科
村田光二
Winkielman たち(1998)は、子ども時代の記憶の程度の判断に検索容易性が影響を及ぼすことを示した。
本研究では、出来事の内容(好ましさ)を要因に加えて、この研究を追試した。子ども時代の出来事を3
個思い出した者は、8個思い出した者と比べて検索が容易なので、その頃の記憶を想起できる程度を大き
く見積もるだろう。また、子ども時代の幸福度の判断には出来事の内容が影響を及ぼし、ポジティブな出
来事を少数思い出した場合に、またネガティブな出来事を多数思い出した場合に高まると予測される。212
名の学生を対象に教室内で行った実験結果は、想起の容易さおよび幸福感の指標とも、これらの仮説を支
持しなかった。しかし、子ども時代の出来事の頻度推定の尺度では、ポジティブな出来事を思い出した方
がネガティブな出来事を思い出した場合よりも、ネガティブな出来事が多かったと判断することが認めら
れ、検索容易性の観点から考察を行った。
p4-05
- 69 -
処理水準の異なる遮蔽物体の記憶表象に関わる脳部位の特定
科学技術振興機構
○高濱祥子
科学技術振興機構・京都大学大学院情報学研究科
齋木 潤
(独)情報通信研究機構関西先端研究センター
#三崎将也
脳情報グループ
(独)情報通信研究機構関西先端研究センター
脳情報グループ
#宮内 哲
一時的に物体が眼前から消えた場合、我々は、視覚的作業記憶として脳内に保持された物体の特徴に関
する記憶表象と、眼前の物体の知覚表象と照合することによって、物体の同一性を判断する。視覚的作業
記憶の容量を検討するために考案された多物体恒常性追跡(MOPT)課題(Saiki, 2003)では、遮蔽によ
り見え隠れする複数の物体が呈示され、実験協力者は、遮蔽時に変化した属性の組み合わせの入れ替えの
検出、あるいは入れ替えタイプの同定を行う。本研究では、色情報と位置情報の結合の必要の有無に注目
して3段階の処理水準を設定した MOPT 課題を用い、視覚的作業記憶に関わる脳部位の特定を fMRI によ
り試みた。その結果、処理水準によって、前頭葉、頭頂葉の活動に違いがみられたことから、処理水準に
特有な神経基盤と処理水準に関わらず変化の検出に共通な神経基盤について議論する。
p4-06
感情は記憶を断片化させるのか?:スナップショット化現象の検討
九州大学大学院人間環境学府
○野畑友恵
九州大学大学院人間環境学研究院
箱田裕司
本研究では,感情を喚起した出来事が,どのような形で記憶されるのかという記憶の質に焦点を当てて
検討した.不快感情を喚起した記憶であるフラッシュバルブメモリやトラウマ記憶の研究から,記憶が断
片的になり,特定の一部分だけが切り取られて記憶されるという記憶のスナップショット化現象が報告さ
れている.では,このようなスナップショット化は,どのような感情が喚起されたときに生じるのだろう
か.実験において,被験者は,快感情,不快感情,特に感情を生じさせないいずれかの映像を視聴した.
視聴 1 時間後に,記憶がどの程度スナップショット化したのかについての評定と,ストーリーの順序と内
容の記憶テストを行った.その結果,スナップショット化評定には,条件間で有意差はなかったが,順序
と内容の記憶テストでは有意差があり,不快条件が,快条件と中性条件よりも記憶成績がよいことが示さ
れた.
p4-07
系列位置曲線における刺激材料の持つ感情価の違い
京都光華女子大学文学部
伊藤美加
刺激材料の感情価が記憶に及ぼす影響を検討した研究では,刺激材料のリストは,快語や不快語などの
感情語,中立語がランダムな順序で並べられて構成されており,最終的に得られる記憶成績全体における
刺激材料の量的な差異のみが分析対象にされ,刺激材料リストの提示された系列位置による違いといっ
た,記憶成績における質的な差異については取り上げられてこなかった.そこで本研究では,単語を刺激
材料に用いて,被験者に特定の刺激材料を意図学習させた後自由再生を求め,系列位置曲線における刺激
材料の感情価の違いについて検討した.刺激リストとして,快語/不快語/中立語のいずれかのみからな
る 3 リスト,7 番目の単語のみが快語/不快語のいずれかからなる 2 リストの 5 リストを用意し,快語/
不快語/中立語のみからなるリストの比較,快語を含むリストの比較,不快語を含むリストの比較を行い,
刺激材料の感情価が記憶に及ぼす影響を吟味した.
p4-08
記憶と感情に関する研究(9)想起した出来事の当時と現在からの感情価評定の割合の違い
中央大学文学部
○兵藤宗吉
中央大学文学研究科
#野内 類
10代から60歳代の被験者を対象に中学時代と高校時代の自伝的記憶を5分間で想起させ、快・不
快・中立の3つの感情価別に分類させた。また、感情価を分類するときに、当時の感情と現在の感情とを
別に評価させた。
p4-09
- 70 -
人物の姿勢およびモーションラインによって生じる記憶された人物位置のシフト
九州大学ユーザーサイエンス機構
○河邉隆寛
九州大学人間環境学研究院
三浦佳世
本研究は,静止した人物の位置の記憶が,人物の姿勢および隣接して提示されたモーションラインによ
って変化するか否かを検討した.被験者は,500ミリ秒間提示された人物の位置を,刺激消失1秒後に
提示された垂直線を動かすことにより再生した.実験デザインは,人物が走る姿勢の有無(2)×モーシ
ョンラインの有無(2)であった.実際の位置と再生された位置との差分を分析対象とした.実験の結果,
人物の姿勢およびモーションラインが同時に提示された場合にのみ有意な記憶表象のシフトが観察され
た.これらの結果は,姿勢やモーションラインなどの静止した視覚情報が人間の動的な心的表象を駆動す
る可能性を示すものである.
p4-10
行為事象の記憶のソースモニタリングⅢ
−行為文に対する処理水準を被験者間,実演の有無を被験者内で操作した場合−
法政大学文学部
藤田哲也
行為文の内容を被験者自身が実演する SPTs 条件の方が,実演しない文条件に比べて記銘が優れるとい
う SPT 効果について,ソースモニタリング課題を用いて検討した。実験 1 は行為文に対して深い意味処理
を,実験 2 では浅い物理処理を求めて行為文を偶発学習した。学習時に,行為文の内容を実演する SPTs
条件と実演しない文条件とを被験者内で設定した。テスト時に,各行為文に対して実演を行ったか否かに
ついてのソース判断を求めた。その結果,ソースモニタリング正答率については,SPT 効果も処理水準効
果も認められなかったが,算出した修正再認率においては,SPT 効果は認められたが,処理水準効果は有
意にならなかった。本研究では,より詳細な学習エピソードの想起が必要なソースモニタリングと,再認
記憶とでは,SPT 効果について分離が認められたが,より一般性のある結論を導くには,ソース判断の対
象をより多様にして検討を重ねる必要がある。
p4-11
意図優位性効果に語彙判断課題以降の課題が与える影響
立命館大学大学院文学研究科
佐藤文紀
展望的記憶とは、 明日 10 時に図書館に行く といったような、将来に対する行為の記憶を指す。そし
て、このような意図を伴った記憶は、伴っていない記憶よりも活性化水準が高く、アクセシビリティーが
高いことが知られている。これを意図優位性効果という。先行研究では、そのアクセシビリティーを測定
するために、語彙判断課題の RT を従属変数としてよく用いられている。本研究では、そのアクセシビリ
ティーを測定するのに用いる語彙判断課題後の課題の種類が、この意図優位性効果の出現に与える影響を
検討することを目的とした。そこで、語彙判断課題以後にもう一度語彙判断課題を求める場合と、語彙判
断課題以後に再認課題を求める場合とで、意図優位性効果の出現に対する影響を比較した。その結果、も
う一度語彙判断課題を求めた場合には意図優位性効果は出現しなかったのに対し、再認課題を求めた場合
は意図優位性効果が出現した。
p4-12
統合失調症患者における動物概念構造の分析
富山医科薬科大学医学系研究科
○扇 暁子
富山医科薬科大学医学系研究科
松井三枝
富山医科薬科大学医学系研究科
倉知正佳
統合失調症患者では、語流暢性課題で、想起語の減少が認められることが知られている。この背景に想
起語の意味構造が健常者とは異なることが想定される。これまで動物カテゴリーにおいて、健常者では野
生―家畜、大きい―小さいという 2 次元の意味構造が認められるのに対し、統合失調症患者ではそのよう
な意味構造が認められないことが示された。本研究では、語流暢性課題の動物カテゴリーを用い、個別分
析によって統合失調症患者特有の意味構造の存在の仮定を検証することを目的とした。方法)健常者 74
名、患者 61 名に対して、1 分間で可能な動物の語想起課題を施行した。この結果得られた想起語の1)出
現頻度の患者群と健常者群との比較検討を行った。2)ヒエラルキー構造や概念間のまとまりに関する分
析を行った。この結果、両群において共通するものと患者特有の頻度および想起語のまとまりの差異が示
p4-13
- 71 -
唆された。
鑑識眼 の研究 -プロトタイプは事例の記憶に影響を及ぼすか日本学術振興会・
九州大学大学院人間環境学研究院
時津裕子
熟練した考古学者は,人工物認知のための技能 鑑識眼 を獲得している.出土遺物の速く正確な同定
が可能であるほか,短時間提示された対象の記憶を長期にわたってよく保持するなど,観察対象の記憶に
もすぐれている.彼らの記憶パフォーマンスを支える要因は何であろうか.先行研究において熟達者に特
徴的な注視パターン(観察法)と記憶精度の関連を示唆するデータが得られているが,観察対象が被験者
にとって既知のカテゴリーに属する場合,プロトタイプなどの表象も影響を及ぼす可能性が十分にある.
遺物観察後に行わせた再生描画(スケッチ)を素材とし,当該カテゴリーのプロトタイプ描画との比較対
照を通じて,この問題の検討を行った.
p4-14
共感感情の喚起における注意の役割
名古屋大学大学院環境学研究科
三谷信広
共感喚起状況では,他者の感情経験と一致する感情とともに,共感的関心や個人的苦痛などの様々な感
情が生起するとされている。そして,これらの感情は注意が 自己 か 他者 のいずれかに向けられる
ことにより生起するとされてきた。しかし,他者の感情反応に対して感情が生起することが,社会的参照
や警戒としての機能を持つことを考えると,自己と他者以外に,他者の感情反応の 対象 にも注意が向
けられると考えられる。そこで本研究では,共感喚起状況において注意が向けられる対象として自己・他
者・対象を想定し,それらと生起する感情の関係性を検討した。手続きは,共感喚起文を読ませ,その後,
自己・他者・対象をどの程度想像しながら読んだかを評定させ,最後に生起した感情を評定させた。重回
帰分析の結果,注意の対象と生起した感情との間に関連性が見られ,特に 対象 への注意が感情の生起
に関与することが明らかになった。
p4-15
特性 X 状況連合が特性判断にあたえる影響について
千葉大学自然科学研究科
青林 唯
再生・再認や反応時間などのパラダイムを用いたパーソナリティあるいは自己概念の構造に関する研究
では、主に性格特性概念をパーソナリティ構造の一部を表象したものとみなし理論化を行っている。しか
し古典的なパーソナリティ理論である Mischel (1968) の相互作用論、これを拡張した Mischel & Shoda
(1995) 、Cervone (2004) ではパーソナリティを状況との相互作用から捉え、そのパターンがパーソナリテ
ィ構造の安定性を表すとしている。本研究では相互作用論に基づき、様々な状況を呈示がパーソナリティ
判断に対する影響について反応時間および Jacoby (1989) の Opposition Procedure から検討した。さらに、
Cervone (2004) を参考に個性記述アプローチを採用し、個人内での状況と特性概念の連合がパーソナリテ
ィ判断に与える影響を検討した。
p4-16
対話方略としての笑い:若年層におけるクロージングの特徴
東京大学総合文化研究科 COE「心とことば」
○南部美砂子
法政大学社会学部
原田悦子
法政大学社会学部
#山田洋介
近年,特に若年層の会話のなかで,その内容とは無関係に「笑い」が生じる傾向が見受けられる.会話
における笑いには様々な社会的機能があるが,このような意味のない笑いは,現代の若年層にとってある
種の圧力として存在し,
「会話の終わりには笑いがなければならない」
,
「笑わなければ会話が終わらない」
という状況を作り出しているようにも思われる.そこで本研究では,若年層の会話における笑いの特徴を
明らかにするため,対話者の関係性(友人同士/初対面)および対話状況(対面/電話)を被験者間要因
とする対話実験を行い,会話の各段階(序盤/中盤/終盤)における笑いの生起頻度や特徴について分析
を行った.その結果,笑いは特に終盤で増加しており,そこに社会的関係性の影響がみられないことから,
会話の内容とは無関係に笑うという行為がクロージング方略として規範化しており,笑うことへの圧力が
p4-17
- 72 -
生じている可能性が示された.また,電話対話の状況では単独笑いや笑いながらの発話が抑制されており,
笑いを効果的な対話方略として共有するのは困難であることも示唆された.
雰囲気の把握とアサーションの関係
金沢工業大学大学院心理科学研究科
○岩室暖佳
金沢工業大学情報フロンティア学部心理情報学科
神宮英夫
アサーションとは、相手や場所、その場の雰囲気等あらゆる状況を考慮しながら行う自己主張である。
本研究では、アサーションを構成していると考えられるスキルを特定し、雰囲気の把握とアサーションス
キルの関係について明らかにした。
p4-18
生死問題におけるフレーミング効果の消失条件の検討
東京女子大学文理学部
工藤恵理子
Wang ら(Wang, 1996;Wang & Johnston, 1995)は、生死問題におけるフレーミング効果(Tversky & Karneman,
1981)が集団の人数を小さくすると消失することを示したが、必ずしもその消失理由は明確ではない。本
研究では、死の顕現性を高める操作を行い、死が強調された場合には、それを避けようとして、リスク選
択が増加する可能性を検討した。実験デザインは、フレーミング(ポジティブ・ネガティブ)×集団サイズ(600 人・60
人)×死の顕現性操作(あり・なし)であった。結果は、フレーミングと死の顕現性の交互作用効果が有意で、
死の顕現性が高められなければ、両方の集団サイズにおいてフレーミング効果が生じていたが、死の顕現性が高
められると両方の集団サイズにおいて、ポジティブ・フレームのリスク選択が増加することでフレーミング効果が消失し
ていた。集団サイズに関わらず、死を身近に感じた場合それを避けようとする反応が顕著になることが示唆
された。
p4-19
目標フレーミングが主観的な覚醒に与える影響
名古屋大学大学院環境学研究科
○竹橋洋毅
名古屋大学大学院環境学研究科
唐沢かおり
制御焦点理論(Higgins, 1998)に基づいて,本研究では目標フレーミングが 2 種類の覚醒(畑山・松岡・
丸山, 1994)に与える影響について検討した.130 人の大学生は,架空の目標達成の場面が呈示された後,
その状況下でどのような気分を感じるか(覚醒)と目標達成に対してどのように取り組むか(行動方略)
について回答した.目標は,利得-非利得(促進焦点)あるいは損失-非損失(防衛焦点)の枠組みから表
現された.その結果,防衛焦点下の被験者は活力的な覚醒よりも緊張的な覚醒を高く評定したのに対して,
促進焦点下の被験者はそのような傾向を示さなかった.また,防衛焦点下の被験者は,促進焦点下の被験
者よりも回避的な行動方略を選好した.しかしながら,覚醒を共変量として再分析したところ,前述の傾
向は消失した.これらの結果は,目標フレーミングが覚醒を媒介して行動方略に影響したことを示唆する.
最後に,覚醒と自己制御の関係性が議論された.
p4-20
日常生活における absentmindedness と展望記憶
東京女子大学
○山崎彩香
東京女子大学
今井久登
本研究は absentmindedness を集中状態からの注意力と持続力が低下したぼんやり状態として考え,ぼん
やり状態の詳細を調べた.日記法による質問紙調査を予備調査,調査①,調査②として行った.予備調査
では,日常生活として会話中においてぼんやりした回数とその詳細,ぼんやり状態時に考えていた事やぼ
んやり状態に気がついたきっかけを調べ,調査①でそれを改善した調査を行った.調査②では講義中にぼ
んやりした回数と個人の性格特性を調べ,性格特性とぼんやりしやすさの関係を調査した.結果,ぼんや
りしやすいのは話を聞いている時や会話相手との親密度が極端に低い時と高い時であること,ぼんやり状
態時に考えていることは展望的記憶が多いこと,ぼんやり状態から覚醒するきっかけは聴覚的情報が多い
ことがわかった.また,外向性,協調性,勤勉性,情緒安定性,知性の主要 5 因子の性格特性とぼんやり
しやすさに関係は見られなかった.
p4-21
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行動プランと実行動の乖離(1)
:計画錯誤と楽観・悲観傾向特性
広島修道大学人文学部
増田尚史
本研究では,大学生にとって身近な課題であるレポート作成を題材として,課題の遂行が当初のプラン
より遅延される計画錯誤(planning fallacy)と,個人特性としての楽観および悲観主義傾向を質問紙法によ
って調査した.その結果,次の2点が確認された.
(1)レポートの完成日に関して,計画段階での予定
日と実際の完成日とを比較したところ,楽観主義傾向の高い群はこの差(客観的計画錯誤量)が相対的に
大きいのに対して,悲観主義傾向と客観的計画錯誤量間には関連性が認められなかった.
(2)悲観主義
傾向の高い群は実際のレポート完成日がプランよりも遅れたと感じている程度(主観的計画錯誤)が相対
的に大きいのに対して,楽観主義傾向と主観的計画錯誤間には関連性が認められなかった.以上のことは,
実行動との乖離の少ないプランを生成するためには,まず客観的計画錯誤量を正確にモニタする能力の育
成が必要であることを示唆している.
p4-22
ゲームの熟達における時系列チャンクの利用
大阪市立大学
○長井 将
大阪大学
川村 智
囲碁の熟達化に関し、熟達者(アマチュア 6 段以上)、中級者(同、級位∼2 段程度)、囲碁未経験者の 3 群
に棋譜を記憶・再生する課題を行わせた。課題用の棋譜として、別の熟達者による 13 路盤の実戦譜を用
いた。それぞれの課題遂行者は初手から 40 手目までの手順を記憶しその手順を再生する条件と、40 手目
の静止局面を記憶しそれを再生する条件を行った。その結果、手順条件において熟達の程度に伴って記憶
に要する時間が有意に減少した。局面条件においては、記憶に要する時間は群間で有意な差が見られなか
った。このことは、熟達における記憶パフォーマンスの向上が、単なる図形記憶としての場合に比べ、手
順という時間的な要因に関する場合により強く見られるということを示唆するものである。
p4-23
高齢者の情報機器操作課題遂行における構造理解の重要性
慶應義塾大学大学院社会学研究科
○村瀬周子
慶應義塾大学文学部
伊東裕司
本研究では高齢者を対象とし,情報機器(携帯電話)操作の訓練の種類が操作の習得,および後の課題遂
行に与える効果について検討した.操作課題は,項目を選択し決定キーを押すことで階層化されたメニュ
ーをたどることにより達成される.したがって操作の習得には項目の選択/決定操作の方法,および「最終
目的に段階的に接近する」という階層構造メニュー概念の理解が必要であると考えられる.操作手順のみ
を訓練する統制群と,選択/決定操作の訓練を加えた群,階層構造メニュー概念理解のための訓練を加えた
群を設け,群間のパフォーマンスを比較した.その結果,階層構造メニューの理解によって,テスト時に
おける,特に最終目的から遠い上位階層における適切な操作の率が向上すること,訓練課題と同一の課題
では,遂行時間が短く,余分な操作が少なく,エラー率が低くなること,類似した課題構造を持つ転移課
題では,エラー率が低くなることが示された.
p4-24
医薬品オーダリングシステムの薬剤入力エラーに関する実験的研究
立教大学文学研究科
○山出康世
立教大学
芳賀 繁
東京医科歯科大学
#土屋文人
医薬品の名称類似を原因とするエラー防止を目的として,オーダリングシステムによる薬剤入力エラー
に関する研究を行った.実際のシステム入力場面を模した実験プログラムを作成し,入力文字数を独立変
数,エラー率を従属変数とした実験を行った.また,商標特定度を3段階に分け,同じ名前で剤形等が異
なる医薬品が存在するものとしないもの(同名薬有・無)
,スクロールの有無を均等に配分し 24 のターゲ
ット刺激を選定した.被験者の課題は,提示されたターゲット刺激の先頭1∼3文字をキーボードを用い
て入力し,該当する候補からマウスで選択するというものであった.実験結果からは先行研究で示唆され
た商標特定度の違いとエラーの関係は見出せなかったが,剤形や容量の異なる同じ名前の薬がエラー誘発
の一因となる可能性が示された.
p4-25
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CMC 上での誤解を招く表現形式について
樟蔭東女子短期大学
○岩原昭彦
日本電気株式会社
#猿橋 昌
名古屋大学大学院環境学研究科
八田武志
本研究の目的は,携帯メールで生じるミスコミュニケーションの事例を収集し分類することであった。
具体的には,
「どのようなメールを送ったときに,どのような誤解を受けたのか」あるいは,
「どのような
メールを受け取ったときに,どのように誤解したのか」に関するものであった。得られた事例は,主に語
用論的な観点に基づいて分類された。その結果,メールによる対話で生じる誤解には,一定の表現形式が
用いられていることが明らかになった。また,ミスコミュニケーションを防ぐためにはどうすればよいの
かに関しても分析を行った。表記の逸脱や絵文字の使用がどの程度,送信者の意図を伝達することに貢献
すると感じているのか,誤解を防ぐためにはどのような表現形式を用いればよいのかについて調査をした
結果,ミスコミュニケーションの防止に対する意識と実際に利用する表現形式には ずれ があることが
認められた。
p4-26
中高年者の認知機能の性差について
名古屋大学
○八田武志
名古屋大学
永原直子
樟蔭東女子短大
岩原昭彦
認知機能に性差があることはよく知られた事実であり、とくに言語能力や知覚的速度における女子の優
位はよく知られている。D. Kimura (1996) はこのような性差の起源を性ホルモンに求めて、説明モデルを
提唱した。もし、彼女のホルモン理論が妥当であるとすると、閉経期以降の女子には言語機能での優位性
が消失することが考えられるが、従来の認知機能の性差研究は児童や青年期を対象としたものがほとんど
で Kimura のモデルの検討は出来ない。我々はコホート研究で得た中高年者の認知能力について、Kimura
のモデルの妥当性を検討する目的で分析したので報告する。
p4-27
運転時の聴覚刺激反応課題がドライバーに与える生理的行動的変化
東北大学大学院文学研究科
北村康宏
自動車の運転中に聴覚情報に対して反応を求められる作業負荷がある場合,ドライバーにはどのような
影響が生じるかを行動的・生理的に検討した.運転中のドライバーの主観的な作業負荷量,心拍,瞬目,
交差点における首振り確認行動を測度とした.参加者はキャンパス路を含む一般道を利用し,いつもどお
りの走行を行う統制条件,メトロノームの音にタイミングを合わせて単語を喋る条件を難易度を変え 2 検
査条件、計 3 条件での走行を行った.その結果,瞬目率,安全確認行動の回数のふたつの指標が,心拍数
と負荷の主観評定値とは異なる傾向を示すことが明らかになった.このことから聴覚的な情報を処理しな
がら運転を行う場合,単に運転パフォーマンスが負荷に応じて下がるのではなくドライバーが困難な状況
に対処しようと適応的に行動を変化させる段階を持つことが示された.
p4-28
高齢者の抑制機能と機器操作エラー
東京学芸大学・教育心理学講座
○関口貴裕
東京学芸大学・教育心理学講座
#小池貴子
高齢者は,課題に不適切な概念や行動を抑制する機能が,若年者に比べ低下していることが示されてい
る。本研究では,こうした高齢者の抑制機能の低下と機器操作エラーとの関係について検討した。24 名の
高齢者(60 歳以上)に銀行ATMを模したコンピュータ画面の操作をさせ,その際にどのような操作エラ
ーが出現するかを記録した。さらに,抑制の能力を評価するためにストループ課題を実施し,その成績に
基づき高齢者を抑制機能・高群と低群とにわけ,エラーのパタンを比較した。その結果,低群は高群に比
べ操作エラーが多く,特に「別の場面での操作を行なうエラー(例;金額入力で暗証番号を押す)
」
,
「入
力ミスにきづかないエラー」でエラー数の差が有意であった。さらに,低群の高齢者は,一度犯したエラ
ーを別の場面で反復することも示された。これらの結果は,高齢者における抑制機能の低下が,機器の操
p4-29
- 75 -
作エラーに結びついていることを示唆している。
日常生活への新しい情報通信機器の導入:場所とメディアとの関係
メディア教育開発センター・総合研究大学院大学
○高橋秀明
メディア教育開発センター・総合研究大学院大学
#黒須正明
将来のユビキタス社会における通信情報機器の設計指針を開発するために、現在の携帯電話で実現でき
る技術に基づいたアプリケーション(愛称「ここメモ」
)を開発し、それを使用した日常生活におけるコ
ミュニケーション実験を行った。
「ここメモ」によって、
「今ここで」発信したい情報(画像・コメント)
を、地図を介してコミュニケーションすることが可能となる。参加者は、既知の間柄である3人からなる
以下の2群である:1)20−30 代女性、設定した地図内に、勤務地がある2名と、居住地がある1名、2)40-50
代女性、全員地図内に居住地あり、1名は携帯電話を初めて使用する。実験は、初日に実習を行い、その
後1週間自由に使うことを求め、最後にグループインタビューを実施した。
「ここメモ」でのコミュニケ
ーションのプロセスを、参加者の居住地や勤務地など活動場所の違いに注目して、比較検討した。
p4-30
友人の顔文字の使用頻度が顔文字の印象に与える影響
立命館大学人間科学研究所
荒川 歩
本研究では,世代の要因と同世代から顔文字付きのメールをどれくらい受信するかの要因の 2 種類が,
顔文字の印象に与える影響について検討した.大学生 38 名(男性 14 名,女性 24 名,平均年齢 20.3 才)と
40 才代と 50 才代の 34 名(男性 17 名,女性 17 名)がメールメッセージの印象評定実験に参加した.また調
査対象者には「同世代の親しい人」からどの程度顔文字付きのメールを受け取るかについて回答を求めた.
その結果,同世代の親しい人から顔文字付きのメールを受け取る頻度が顔文字に対する印象に影響を与え
ることが認められた.しかし,顔文字付きのメールの受信頻度が高い限りは,顔文字の印象に世代による
差は認められなかった.これらのことは,普段から顔文字を利用するスタイルのコミュニティに属してい
るのかそうでないのかが,顔文字の印象に対して重要な影響をもたらすことを示している.
p4-31
ナビゲーションにおける道案内図のわかりやすい要素
信州大学大学院人文科学研究科
水谷弘絵
本研究は、ナビゲーションにおける道案内図を収集するとともに、道案内図のわかりやすさ、わかりや
すい要素を調べることを目的とした。実験では、本多・仁平(2002)において、わかりやすい道案内(文章)
に多く含まれた要素、「弁別的な特徴」と「ポイントでの移動指示」が、本当にわかりやすさの評定に影響
を与えるのかを文章と図の両方で比較を行った。また、本多・仁平(2003)で明らかになった、共感的関
心の高い者と空間能力の高い者がよりわかりやすい道案内(文章)をすることについても、作成させた文章
と図でわかりやすさの評定値による比較を行った。そして、先行研究で言及されていたわかりやすい要素
と説明者の特性の関係について、各要素の出現数との比較で検討を行った。今後、道案内の文章・図にお
けるわかりやすい要素を明確にすることで、道を案内する側の留意点を提供できると思われる。
p4-32
なぜマニュアルを読まないか:怠け者説と探索動機説
東北大学文学部
○田村裕一
東北大学文学研究科
仁平義明
システムを学習するときマニュアルを読もうとする人は少ない。本研究では、Microsoft PowerPoint を用
いて、マニュアルを読まない探索的操作、またはマニュアルに沿って操作をするときにどのような違いが
あるかを比較した。被験者はそのシステムの経験が多い群と少ない群、探索的操作群とマニュアルに沿っ
た操作群とに分けられ、求められた課題を行った。その結果、パフォーマンスは経験多の群が達成された
レベルは高かった。課題に対するモチベーションは経験少の群が高く、さらに探索的操作を行った方がマ
ニュアルに沿った操作よりも高いモチベーションを示した。このことから高いパフォーマンスには直接的
に結びつかないが、よりアクティブな操作を行える探索的操作の方がマニュアルによる操作よりも高いモ
チベーションを持って取り組むことができるために、人は探索的操作を好んで選択するのではないかとい
うことが示唆された。
p4-33
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HyperMirror における自己像の認知が対話の質に与える影響
産業技術総合研究所
○島田英昭
産業技術総合研究所
#森川 治
産業技術総合研究所
#北島宗雄
遠隔対話システムである HyperMirror を試用したユーザ(n=90)に対して,自己像を利用したかどうかの
質問(自己像利用性)2 項目,対話を十分に行うことができたかの質問(対話の質)2 項目に対する調査を行っ
た.多重指標モデルによる分析の結果,自己像利用性は対話の質を高める効果を持つことが明らかになっ
た.この結果は,ユーザのメンタルモデルを記述するモデルである VARAMM の枠組みから議論した.
p4-34
MHD において意思決定に影響を与える要因の二次元配置
筑波大学心理学研究科
○三好一英
筑波大学心理学研究科
生駒 忍
SCALAR(0x819f820) モンティーホールジレンマ(Monty Hall Dilemma: MHD)においては,ホストからの
事後情報の提示を受けて選択を変更する場合の当選確率は 2/3,選択を変更しない場合の当選確率は 1/3
となる.そのため,確率的に有利な戦略はホストからの情報の提示を受けて選択を変更することである.
しかし、文化によらずほとんどの人々はドアを変更しない傾向にあることが知られており,それは日本人
においても同様である.MHD に対して人々が問題構造をどのように捉えているのかを検討すべく,なぜ
ドアを変更しないのかに焦点を当てその理由の分類を行った先行研究をもとに,本研究では,先行研究か
ら明らかになったそれらの理由同士がどのような関係にあるのかを探るため主成分分析を行った.その結
果,第一主成分として,アタマ―ココロの軸が,第二主成分として判断材料の位置(外部―内部)の軸が
得られた.
p4-35
思考抑制教示における逆説的効果の発現要因について
東京家政大学文学研究科
○中村敦子
東京家政大学文学部
越智啓太
本研究は、抑制教示による逆説的効果を提示する内容の視点より取り上げ、両者の関連を明らかにする
ことを目的とした。ポジティブ・ネガティブな内容の刺激をランダムに被験者に提示した後、その提示さ
れた内容についての思考を抑制するという操作を行うことにより、①統制群と実験群の比較を行い思考禁
止教示による逆説的効果現象が生じているかを確認するとともに、②ポジティブ内容とネガティブ内容に
おける比較を行い、抑制の逆説的効果における思考内容の影響について検討した。結果は、抑制を試みる
と抑制中にも関わらず侵入思考数が増しており、抑制の逆説的効果の即時的増強効果が生じていた。また、
逆説的効果における提示内容の影響について本研究ではポジティブ内容とネガティブ内容とで比較を行
ったが、内容の差による思考の増加、抑制への影響はみられなかった。しかし、提示内容の影響について
は更なる検討を行う必要があろう。
p4-36
関連性判断と最適データ選択の関係性について
兵庫教育大学大学院学校教育研究科
一柳伸治
直説法的 Wason 選択課題に関する主要な理論に,H-A 理論と情報獲得理論がある.本研究は,条件文
の主観的確率の操作を用いた実験により,それぞれの理論が説明する,関連性判断と最適データ選択の関
係性を検討した.実験の結果,抽象的条件文を用いた Wason 選択課題では,そのカード選択に最適データ
選択が適応されないことが示され,人は顕在的な確率情報の心的計算を不得意とし,処理努力の低減とい
う点から,カードの選択過程には H-A 理論による関連性判断の関与が優勢であると推察された.これは
関連性判断と最適データ選択の関係が階層構造にあり,カードの選択は基本的には低次の関連性判断によ
るが,条件文の意味内容によっては,より高次である最適データ選択が作用することの示唆になると考え
られる.
p4-37
p4-38
文章読解過程における MP, AC 推論の検討
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名古屋大学大学院環境学研究科心理学講座
○中村紘子
名古屋大学大学院環境学研究科心理学講座
川口 潤
文章読解の過程において, 条件文と MP, AC 推論の小前提が文章中に含まれていれば, 自動的に結論が
推論されることが示されている(Rader & Sloutsky, 2002). 本研究は, 読解過程において MP, AC 推論が行わ
れるかを, 推論の結論に含まれる単語への反応時間を指標として検討した. また, 読解過程においてなさ
れる条件推論と, 文章読解後に行われる推論との関係を検討するため, 結論の妥当性判断を行った. プロ
ーブ単語の反応時間には, 小前提あり条件と小前提無し条件の間で差が見られなかった. 一方, 結論の妥
当性判断では, MP, AC 推論ともに小前提あり条件において結論を妥当と判断しやすかった. 先行研究とは
異なり, 読解過程において MP, AC 推論が行われていることは示されなかった. 妥当性判断課題において,
MP 推論と AC 推論形式との間で差が見られなかったことは, 被験者が条件文を双条件分として解釈した
可能性を示唆している.
日常的状況における関連性
日本学術振興会特別研究員・京都大学
林 創
本研究は,
「関連性理論」の観点から,日常的場面における人間の認知体系を検討したものである。た
とえば,我々は「今,何時ですか?」と尋ねられると,腕時計が 3:08 を指していれば,
「3:10 です」と切
りのよい数字で答えることがある。こうした概数化は,話し手が聞き手に対して「最適な関連性を持つ(聞
き手が最小限の労力で導くことができる)情報」を推論する傾向があることを示す。実際に,Van der Henst
et al.(2002)は,概数化した答えは,処理が容易で,正確な時刻を言うのと同様の結果を与えることを明
らかにした。しかし,この調査はフランス人を対象としたもので,日本人が同様の傾向を持っているかは
不明であった。そこで,日本人を対象に,同様の調査を行なったところ,概ね類似した結果が見られ,こ
のような傾向は普遍的なものであることが示唆された。
p4-39
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