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ミスを大きな損失にしない3視点
月刊 創レポート Vol.070 ☆ 2007 年 6 月 ☆ Business & Management Report 世の中の 変化の波 に乗るシリーズ《Vol.05》 ミスは簡単になくなるものでもないから… ミスを大きな損失にしない3視点 ☆☆☆ ミスを恐れて守るよりも積極姿勢の基盤を作る ☆☆☆ ◆本レポートの内容◆ 【1】ミスは単純な失敗というより会社の スキ ? 【2】 勘違い によるミスにはなかなか気付けない! 【3】まずは ミス を スキ にしない感覚が重要 【4】 頭 ではなく 尻 から見るマネジメント? 【5】問題は ミス 自体ではなくその 対処法 ! ミスはしばしば 信用 や 顧客 ………… ……… ………… ………… ………… 1㌻ 2㌻ 3㌻ 4㌻ 5㌻ を失う素になる。 しかし現実には、ミス自体が問題なのではなく、その 早期発見や対処に失敗していることが トラブル を 増長させている。信用があっけなく崩れ去り得る今、 ミスとどう付き合うか。それが大きな経営課題だ…! 【公認会計士・税理士 伊藤会計事務所 【本 部】 〒104−0061 東京都中央区銀座6−13−16 銀座ウオールビル12階 TEL: 03ー3547−6049 e-mail:[email protected] 伊藤 隆】 (株)創コンサルティング 【会計工場】 〒510−0071 三重県四日市市西浦2−4−17 (エスタービル3F) TEL:059−352−0855 URL::http://www.cpa-itoh.com このレポートは経営者および経営幹部の皆様のために作成されています! 世の中の 変化の波 に乗るシリーズ《Vol.05》 【1】ミスは単純な失敗というより会社の スキ ? 1》1本のクレーム電話 生鮮食品を個人向けに宅配販売するA社に、ある朝1本のクレ ーム電話が入って来ました。その内容は、 毎月銀行口座から引き落とされている 金額 がおかしい というものです。その電話に 今風 の担当者が『はあ∼』とい う調子で応えたために、クレームは怒りに変わり、その場で取引 が解除されてしまいました。長年のお得意様だったそうです。 その担当者は『私が何か悪いことをしましたか?』という表情 で謝罪もしませんが、A社の社長も、 『担当者の対応が客を怒らせたのではなく問題の根は深い』 と言われるのです。 2》ミスは会社の スキ になる! 取引を継続するかどうかを迷い始めた顧客は、続けるかやめる かを決める きっかけ を求めます。顧客側にとっても 継続関 係 を終了させるには、それなりのエネルギーが必要なのです。 そんな時 ミス が目につけば、 決断 の絶好のチャンスとなる のでしょう。特に、取引関係を終わらせたいと思いながら、なか なか踏み切れない顧客はそうです。もちろん、そんな迷いの期間 を過ぎれば、また以前のような良好な関係に戻れるものですが、 『ミスは先々の修復可能性をも破壊する スキ になり得る』 と社長は言われるわけです。 3》本当の意味での対応 ミス は… 今回の電話対応では、実は担当者の 数値ミスを指摘する顧客の 真意 受け答え ではなく、 を読めない ところに未熟さがあったと言わざるを得ませんが、社長は、 『顧客の心情を読むほどの担当者はなかなか育たない。やはり 会社のスキ になりかねない数値ミスを減らす以外にない』 と考えているそうです。 そして、こうした観点からミスの発生状況を捉えると、そのミ スを引き起こす 要因 の意外さに驚かされてしまうことが少な くありません。特に非常に見つけにくくなった数値ミスをどう発 見するか、それは非常に重要な課題になりつつあるのです。 ミスは簡単になくなるものでもないから… ミスを大きな損失にしない3視点:1 ㌻ 世の中の 変化の波 に乗るシリーズ《Vol.05》 【2】勘違い によるミスにはなかなか気付けない! 1》A社の口座引き落としミスの要因は… A社の銀行口座引き落としのミスは、収納代行会社を変更した ことから生じました。収納代行会社変更に際し、顧客の口座番号 や引き落とし金額を、新しく入力し直す必要があったのですが、 その際、入力担当者が、 ある月だけの金額を 毎月固定的に発生する額 の欄に入力 してしまったのです。 ミス発生4ヵ月後に、たまたま 通帳記入 をして気付いた顧 客は、買い物量にかかわらず、毎月 定額 が引き落とされてい るのに驚きます。そして、タイミング悪く届いた 痛んだ野菜 への不快感も手伝って、一気に 嫌気 が爆発したのでしょう。 その上、担当者の電話対応が、カッコウの導火線になりました。 2》続発する送金トラブル A社側の業務フローでは、一旦 固定額引き落とし 欄に入力 された客は、毎月の 変動 額を入力すべきリストに名前が出て 来なくなりますから、ミスになかなか気付きません。4ヵ月も経 過してしまったのは、そのためでした。 支払いや集金のシステムが便利になって、こうしたミスや勘違 いは増えているようです。A社自身もかつて、取引業者への支払 いで、トラブルを起こしかけたことがあるからです。 それはインターネットで支払おうとした時でした。 3》支払った つもり なのに… 今日ではわざわざ銀行へ行かなくとも、インターネットで振込 業務が簡単にできます。その手続きも、パソコン画面に表示され る案内に従うだけで、難しくありません。しかし、必要事項をす べて打ち込み、指定内容が画面に表示された後に、 『確認ボタン』をクリックしなければ手続きが完了しない のです。間違った内容で送信してしまわないための安全弁ですが、 その確認ボタンを押さないというミスを犯して、 送金したつもりなのに送金業務が終わっていない ことがあり得るわけです。 業者から再三 未入金 に対する督促があり、一時は険悪なム ードになりかけたのだそうです。 ミスは簡単になくなるものでもないから… ミスを大きな損失にしない3視点:2 ㌻ 世の中の 変化の波 に乗るシリーズ《Vol.05》 【3】まずは ミス を スキ にしない感覚が重要 1》半年間も料金不払いを放置…? A社の社長が経営者の会合で 入出金ミス を話題にすると、 新聞配達店の経営者であるBさんが、こんな話を始めました。 スポーツ新聞を毎月とっていた顧客が、ある日『夜間に集金さ れるのは嫌だ』ということで、口座振替に変えてほしいと依頼し てきました。そこで早速、書類を郵便受けに入れたのですが、こ の書類の 不備 で、手続きが完了しません。そのことを顧客に 言うと、詳しい話も聞かず怒り出してしまったのです。新聞店の 担当者は、怒鳴られて萎縮し、その件を放置しました。 一方、いきさつを何も知らない配達員は、以前のとおり新聞を 届けますが、口座振替になるということで、集金はしません。そ んな状況で、新聞料金不払いの客に半年も新聞を届けてしまった のだそうです。 2》様々に起こるミスを、はたして排除できるのか…? そのミスは 顧客側 からの『なぜ口座からの引き落としがな いのか』という指摘から、話し合いになって 半額 集金までこ ぎつけたそうです。これは単なるシステムミスではありません。 『ちょっとしたことが 複数 重なって、思わぬミスにつなが り、その結果、入金や顧客自体を失うばかりではなく、こちらの 姿勢が疑われる。こう言っては何だが、客にバカにされると、自 分に対して猛烈に腹が立つ。どうにかすることはできないのか …』と、お二人の社長は考え込んでしまったそうです。 3》会合の講師の 助言 そこに、その会合の 講師 が現れ、こんな助言をしたといい ます。その助言には、大きく分けて3つの視点がありました。 その第一は ミスを起こす ことではなく ミスをなくす という思いが、かえって 会社のスキ になる ということです。業務にはミスがつきもので、それはゼロにはな りません。ですから、ノー・ミスを標榜すると、ミスが起きた時 に 精神的に弱い立場 を自然にとることになり、 そこが 付け入るスキ になる というわけです。 しかし、ミスを容認することはできないでしょう…。 ミスは簡単になくなるものでもないから… ミスを大きな損失にしない3視点:3 ㌻ 世の中の 変化の波 に乗るシリーズ《Vol.05》 【4】 頭 ではなく 尻 から見るマネジメント? 1》ミスがあるという前提で チェック体制 を作る 講師によれば、大切なのはミスを出さないことではなく ミスがあるという前提でチェックを行うのだと強く意識する ことなのだそうです。特にA社やB店の集金ミスなどは、 当月の売上と入金を 結果 からチェックする ことを怠らなければ、顧客より早く見つけることができたでしょ う。担当者は 自分がしたことが正しかったかどうか という判 定は比較的得意ですが、 結果としてすべての 計算尻 が合っているかどうか は、管理者や経営者でなければチェックが難しいのです。 『頭(手続きの流れ)から見るのではなく尻(結果)から見る』 マネジメントを意識すべきだと、講師は言うわけです。 2》ポイントは ①変動 ②整合 ③新規 つまり担当者の業務を後追いチェックするのではなく、まず ①毎月の試算表や伝票の合計でいつもと違うところはないか を見ます。これは ①変動チェック ②製品別売上と顧客別売上などの を行います。これは です。そして次に、 帳尻合わせ ②整合チェック です。更に、 ③新しく始めたことが決められたとおりにできているかどうか を見ます。 ③新規チェック です。 言葉にすれば当たり前なのですが、こうした ①変動チェック ②整合チェック ③新規チェック は、帳票や一覧表が整備 されていなければ、なかなかスムーズには進まないため、 ①②③チェックをいかに自分流にやりやすくするかがポイント だとさえ言えるのです。その工夫がミス発見を促進するからです。 3》失敗回避の前に失敗を知れ! 講師の話の2つ目の視点は、管理方法を工夫するだけでなく、 できるだけ失敗事例や対処事例を集めること でした。しかも、その事例には ミスがあった という事実だけ ではなく、 そのミスがどのように生じたかという要因把握 がなければなりません。失敗要因を知ることが大事なのです。 しかし、その要因把握を阻むものがあるそうなのです。 ミスは簡単になくなるものでもないから… ミスを大きな損失にしない3視点:4 ㌻ 世の中の 変化の波 に乗るシリーズ《Vol.05》 【5】問題は ミス 自体ではなくその 対処法 ! 1》責任の追及より事実の追究が先! その要因把握を阻害するものとは 責任の追及 だということ です。一般に、ミスが生じた時、私たちは何が起きたかという事 実把握より、誰が悪いかという責任把握に走りがちです。しかし 責任追及されると人は事実を隠す傾向に走るのが現実なのです。 担当者を叱ったり、責任追及したりする前に、 何が どのように 起きて、その結果が どうなったか を丁寧に見なければならないわけです。事実を丁寧に見て行くと、 100%正しい人がいないのと同様、100%不正な人もいないことに 気付き、責任追及を恐れてパニックになる人も減るでしょう。そ して何より、事実から善後策の知恵を得ることができるのです。 2》顧客のクレームは ミス発見 促進剤? この観点に立てば第3視点も理解しやすくなります。それは、 顧客はミス発見の協力者だと思え というのが3つ目の視点のポイントだからです。顧客クレームに どう対処するかではなく、顧客がミス発見を手伝ってくれるとい う感覚に立てば、顧客対応は様変わりになるのではないかという ことです。 お礼の言葉 などが非常に自然になるわけです。 クレーム対処法 として、クレームを抑え込むことばかりを 教えるケースもあるようですが、完全主義に陥らず、ミスもあり 得ると考えるなら、クレームはむしろ感謝材料かも知れません。 もちろん顧客のクレームには 悪質 なものもありますが、事 実把握を心掛ければ、その性質はすぐに明らかになるでしょう。 3》ミスがあっても信用をなくさない体制? ミスを起こさないという視点ではなく、いつでも起き得るミス にどう対処するかを考えるのは、非常に現実的かも知れません。 なぜなら ミスゼロ を目指すのは、顧客や取引先への信用を失 わないためだとするなら、ミスがあっても信用をなくさない準備 をすれば、目的は果たせたことになるからです。 ただし、そのためには『①変動②整合③新規のチェックを自分 自身に分かりやすくする工夫』 『ミス発生要因事例研究』 『顧客ク レームの再評価』が欠かせないとも言えるようです。今後もご一 緒に更なる 研究 を進めてまいりましょう。 以上 ミスは簡単になくなるものでもないから… ミスを大きな損失にしない3視点:5 ㌻