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祈りの手ほどき vol.05
http://mokusou-in-kamakura.info/
第 5 回 本格的な黙想の仕方
第3回で黙想の基本的な精神を述べた。今回は本格的な黙想のやり方を具体的に解説してみよう。
聖イグナチオ・ロヨラ(イエズス会の創立者、私もこのイエズス会に属している)の編み出した『霊操』
という祈り方に従って説明してみたい。
厳密に 30 分なり1時間なりのまとまった時間を使った黙想をする場合、厳密な形では、3つの時間を
とる。
まずは準備の時間をとり、次に黙想する時間をとり、最後に回想する時間をとるのである。
1.準備-前もって
・まずみことば(聖書)を読んでみる。ゆっくりと2,3回かけて読んでみる。どんなことばや情景が
心に響くだろか。心が動くところ、その意味を深めてみたいと思う一言、一節を選ぶ。それを黙想の要
点にして、深めていくことに する。
・そのみことばと今の自分の生活を重ねてみよう。そのみことばから、何か思い出されることがあるだ
ろうか。
・この黙想でどんな恵みをいただきたいか。それを祈りの意向として意識し、恵みを願う。
・朝一番に祈る場合、この準備は前晩にしておくとよい。朝目覚めてすぐに黙想に入ることができるか
らだ。
2-1.導入
・本格的に祈る場に身をおこう。自分の家のいつも祈る場へ。あるいは近くの聖堂でもよいだろう。
その場は、30 分から1時間、邪魔されずに集中して祈ることができることが最低条件になる。人によっ
て、祈りやすさが違うので、自分にとって心が落ち
着き、祈りやすい場所を選ぶように。
・祈りやすい姿勢をとる。少し腰骨を立てて、肩の力を抜く。
これも人によって違うが、リラックスしながら、集中できる姿勢をとる。やはり 30 分から1時間持続
できる姿勢をとる。
・ゆっくり呼吸して、心を落ち着かせ、静けさに入っていくようにする。
そして、心を沈めながら、神がここに共にいてくださること(神の現存)を意識する。
忙しい日常生活から急に気持ちを切り替えることはできないので、少しずつ沈黙に入っていく感じだ。
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祈りの手ほどき vol.05
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2-2.黙想の中味
・選んだみことばを思い出してみよう。それを手がかりにして、自分の信仰生活をふりかえってみよう。
ただ単にできたか、できなかったかという反省ではなく、神の目で見つめ直してみるのである。
・準備のときに選んだみことばを心の中で繰り返したり反芻したりしながら味わいを深めていく。そこ
から生じてくる心の動き(気持ち)を味わってみよう。
・そのことばが自分の生活にどのように関係しているだろうか。過去の自分の生活、あるいは現在の生
活を思い起こしながら、どのようなつながりがあるかをふりかえってみよう。どういうことが思い出さ
れ、どういうことと関連があるだろうか。
・そこからどのような心の動きを感じるだろうか。
喜びや平安など、肯定的な気持ちが少しでも湧いてくるかもしれない。そのかすかな動きにとどまって
それを味わってみよう。
逆に、否定的な思いが湧いてくるかもしれない。逃げずにそれを味わってみよう。そこから大切な気づ
きが生まれてくるかもしれないから。
・そのようなるふりかえりや味わいから何か気づかされることはないだろうか。
以前に大切だと思っていることを確認することは?
今までバラバラだったものに関連づけが見えてくるかもしれない(ある聖書のことばとある出来事の関
連とか、イエスの言動とある人の態度とのつながりとか)。
あるいは全く新しいことに気づくかもしれない。
・何らかの形で、神の働きかけを感じるだろうか。
その時は神だとは分からなかったけれど、今ふりかえってみて、神さまが導いておられたとか。
あるいは、神からのメッセージが聞こえるでしょうか。これはそういうことだったんだとか。
・伝統的な表現でいうと、黙想では、記憶(生活とのつながり)を働かせ、知性(気づき)を使い、そ
して意志(心の動き)を働かせるのである。
2-3.対話
・祈りが終わりに近づいたころ、神さまと対話をしてみよう。
気づかされたこと、感じたこと、とまどいや疑問、願いや思いを素直に神さまに話してみよう。
私の話に対して、神さまは何と答えられるだろうか。
神さまやイエスさまがあたかも自分の目の前におられるつもりで、神の答えを聞いてみよう。対話をし
てみよう。
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祈りの手ほどき vol.05
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・それまでの黙想がうまくいっていても、うまくいっていなくても、こちらからはそれを 正直に話せ
ばよいのである。メッセージを聴きとるのは難しいかもしれないが、まずは
聴こうとすることが大切
なことだ。
3.回想
・祈りを終えた後、場所や姿勢を変えて、今の黙想をふりかえる。
どのような心の動きや気づきがあっただろうか?
黙想の時間は長かったか、短かったか?
退屈だったか、実りを感じただろうか?
・神の働きかけ、呼びかけがあっただろうか? それに私はどう応えただろうか?
・特に印象深かった点や心に残っていることを、簡単に書きとめておくとよい。
・黙想の時、何も感じないし、何も頭に浮かばないことも多い。
ところが、それを回想すると、何か引っかかっていることに気づくこともあるので、うまくいかない黙
想でもいちおうふりかえっておくことが大切である。
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以上が黙想の正式な方法である。何か形式的で堅苦しいと感じられるかもしれない。
一種の訓練として回数を重ねていくうちに、だんだんと慣れてくるものである。
霊操を英語では、"Spiritual Exercises"という。霊的なエクササイズをするという意味である。
体のエクササイズを思い出してもらいたい。本格的に体を動かす前に準備体操などをする。それと同じ
ように、本格的に黙想する場合も準備の時間が必要である。
また体を本格的に動かした後は、整理体操をして体をクールダウンさせる。それと同様に、黙想が終わ
った後も回想のひとときをとるのである。
体も心も同じだが、ラジオやテレビのようにスイッチを入れたらすぐに作動し、スイッチを切ったから
すぐに止まるものではない。体も心もだんだんと調子があがり、だんだんと静まってくるものだ。
そのため、上記のような厳密な形でなくとも、黙想を本格的にする場合は、自分なりの手順を決めてお
くとよいだろう。
心をよりよく働かせるために、エクササイズを繰り返して、自分の霊魂を整えていこう。
体のエクササイズも大切だが、魂のエクササイズはもっと大切なことではないだろうか。
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