Comments
Description
Transcript
第 88 回 鳴り石の浜を舞台にしたまちの活性化プロジェクト
地域づくり情報局メールマガジン Vol.88 Vol. 88| 2016.8.26 第 88 回 鳴り石の浜を舞台にしたまちの活性化プロジェクト 地域づくり活動の苦労話や成功談などを地域のリーダーに直接お伺いし、お届けす る「地域づくりキーパーソンに聞く」コーナー。 鳥取県中部にある琴浦町は、海と山に囲まれた自然豊かで食も豊富なまちです。 平成 23 年 2 月、鳥取県琴浦町に山陰道東伯中山道路が開通し、渋滞がなくなるな ど便利にはなったものの、琴浦町内を走る国道9号線の交通量は激減し、それに伴い 国道沿いの店舗は売上げが減少し、廃業する店舗も出始めました。 「このままではまちが大変なことになる!」そう思った地元企業経営者の馬野さん と上田さんは、民間レベルでできる地域活性化の手法を模索し、平成23年6月に近隣 住民と共に「鳴り石の浜プロジェクト」を立ち上げ活動を開始しました。 行政とも協力して様々なアイデアと行動力で琴浦町の魅力を全国に発信する活動 を展開し、今では修学旅行生やサーファー、多くの観光客が訪れる観光地になってい ます。 今回は、「鳴り石の浜プロジェクト」リーダーの馬野慎一郎さん、サブリーダーの 上田啓悟さんに「鳴り石の浜」の魅力や活動の経緯やご苦労についてお話を伺いまし た。 1 地域づくり情報局メールマガジン Vol.88 【活動のきっかけ】 国道9号線のバイパスになる山陰道の開通は町民永年の願いでもありました。しか し、実際に高速道路が開通してみると町内を通過する国道9号線を通る車は6割も減 ってしまいました。渋滞がなくなるなど地域にとって便利になった反面、国道沿いの 商店に影響が出てきました。特に不特定多数の利用客があるコンビニエンスストアや ガソリンスタンド、飲食店は深刻でした。馬野さんと上田さんが経営されている店舗 へは直接影響はありませんでしたが、こうしてじわりじわりと商店が少なくなってく るとまち全体の活気がなくなることを危惧されていました。 「このままではまちがダメになってしまう。自分たちでできるまちの活性化方法を 考えなければ!」と思った二人は何度も議論を交わし、「魅力的な物があれば、人は 高速道路から下りてきてくれるに違いない」という仮説を立てました。 では、我が町の魅力的な物とは何なのか。自然や文化、グルメなど様々な物を検証 する中で行き着いたのが「鳴り石の浜」でした。当時は地元では当たり前と思ってい た光景でしたが、この貴重な自然海岸を守ってきた岩田弘さんに出会い話をしていく うちに「ここなら全国に発信できる!」と確信しました。二人が地元に眠っていた宝 物を探し当てた瞬間でした。 【鳴り石の浜の紹介】 ここは丸くすべすべとした大小様々な大きさのゴロタ石ばかりが並んだ約500 mの自然海岸で、打ち寄せる波の音に合わせて「カラカラコロコロ」と石が音を立て ることから「鳴り石の浜」と呼ばれており、全国にもこのような海岸はないと言う珍 しい海岸です。 以前は、海岸に漂着したゴミなどが散乱おり、遊歩道も整備されていませんでした が、海岸清掃を実施し、遊歩道が整備されウォーキング大会なども開催されるように なりました。 【整備前の海岸状況】 【整備後の海岸状況】 【これまでの活動プロセス】 地域住民に声を掛けプロジェクトを立ち上げたものの、資金もプランも無い状態か ら始まり、 「さてここの魅力をどう発信していくか。」プロジェクトはいきなり壁にぶ ち当たります。 2 地域づくり情報局メールマガジン Vol.88 「きれいな音がする自然海岸」と言うだけではインパクトが弱いと思っていた上田 さんは、「きれいな石の音がよく鳴る海岸」ということから、「物事が良くなる海岸」 というダジャレを思いつきます。そして鳴り石の浜に行くと頭が良くなる、売り上げ が良くなるなど、「運気の良くなる海岸」、「パワースポット」として発信を始めまし た。すると不思議なことにそんな冗談のような発信が注目され始め、やがて「ダジャ レでまちおこし」という記事が新聞やインターネット上で取り上げられるようになり ました。そこからプロジェクトはこの鳴り石の浜を舞台にした様々なイベントを企画 し、すぐに実行に移しました。 例えば、ただの海岸清掃も「海岸に打ち上げられたゴミや生物の観察会」と名を変 えれば立派なイベントになります。漂着ゴミでアートを作り、それにイルミネーショ ンを施したりと、「お金を掛けずにいかに話題性を作るか」というアイデアと行動力 がさらに注目され、鳴り石の浜に来る人の数は日に日に増えていきました。「経済効 果を実証するには時間がかかります。話題性があれば人が来る、人が来ればお金も落 ちるはず!と信じて、とにかく思いついたらすぐ実行しました。」と上田さんは振り 返ります。 そして活動開始から4年目、ついに奈良県から高校生の修学旅行がやって来ました。 高速道路から降りてきてもらうためにやって来た活動が、今や高速道路を使って遠く からも多くの人が来る観光地となりました。 【海岸石に願いを書く石絵馬】 【修学旅行生が来浜】 【住民などの協働】 プロジェクトのメンバーには地元愛のあ る20代から80代までの男女、職種も様々で す。そして馬野さんと上田さんが中心となっ てアイデアを出し、そこに参加できる人を 「この指止まれ」で毎回募集するという方式 をとっています。 「皆さん仕事や家庭など忙しいですから、 ゆるい会の方が参加しやすいのではないで しょうか。」と馬野さんは言います。 【鳴り石BARの定例会】 毎月開催している「鳴り石BAR」にも毎回新しい人がやってくるそうです。 3 地域づくり情報局メールマガジン Vol.88 【今後の抱負】 最後に馬野リーダーに今後の抱負について聞きました。 約5年間の活動の中で、まさに手作り感や人情味のある活動を続けてまいりました。 多くの心ある人たちとの出会いが私たちの活動のエネルギーになっています。また、 行政の皆様のサポートも心強く感じています。このたびの「手づくり郷土賞」受賞は 関わられました皆様、浜に来ていただいた皆様のおかげであり、感謝の気持ちで一杯 です。 今回の受賞を自信にして、「これからも独自のアイデアと行動力で地域を盛り上げ ていきたい」と抱負を述べていました。 【鳴り石の浜プロジェクトのメンバー】 【日中の海岸状況】 【夕方の海岸状況】 4