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ナバックレター 養豚版Vol.77

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ナバックレター 養豚版Vol.77
ナバックレター 養豚版 Vol.77
受精率に対する種雄豚精子の運動性および形態の重要性(2)
Prof. Dr Karl Fritz Weitze, University of Veterinary Medicine, Hannover, Germany
精子の形態は受精のばらつきの一因となり、特に同腹子数のばらつきと関係することから、おそらく利用でき
る卵母細胞がすべて受精されるわけではないことを意味しています。精子の形態の影響は、精子の運動性、1
ドーズ当りの精子数、精液の保存期間、人工授精から排卵までの間隔、その他の精子品質異常の有無、季節的
変動および母豚の管理など、その他の一連の要因によって決まります。
精子細胞が卵管の精子貯留部位へ入るのを阻害するような精子の異常は、1 ドーズあたりの精子数を増やすこ
とによってある程度相殺できます。卵管内で選別されずにそのまま通過する場合の精子の異常は、相殺されな
いと考えられます。
精子の異常の定義には、目視による精子細胞の異常だけでなく、精子細胞の機能的または構造的な異常にも当
てはまります。
精子の卵管上皮への結合に関する in vitro 試験によって、精子の形態との相互関係が明らかになり、卵管峡部
上皮において、特に細胞質小滴遺残および尾部異常などの精子の形態学的異常が選別されることが示されました。
前提条件から、人工授精時の精子数を増やすことによって異常が相殺されるとすれば、こうした品質の精液の
受精率が向上する可能性があります。文献では、形態学的異常の増加と受精率の相関関係、および特に運動性
などのその他の精液パラメータとの相互作用について様々な報告がされています。
Alm ら(2006)が明らかにしたように、精子の形態学的異常率が 30%を超える雄豚が分析に含まれた場合、
母豚の発情回帰率は有意に増加しました。
異常率が 20%から 30%に増加した場合に生じる影響について筆者らが計算したところ、発情非回帰率は
0.2%、出産率は 0.5%、そして生産子数は 0.08 低下しました。
Gadea ら(2004)は、近位部細胞質小滴率を多変量回帰分析モデルの主成分に加えて試験を行いました。同
腹子豚数は、総異常率、膨化尾部率、近位部細胞質小滴と関連性があり、有意ではあるものの相関係数は低い
値でした。
(表 2)
形態学的異常と受精率の負の相関関係は、同腹子豚数にしばしば影響が現れましたが、分娩率にはそれほど
影響がみられませんでした。こうしたことから、コマーシャル条件下での同腹子豚数のばらつきの大部分は、
形態学によって説明できます(R2 = 0.59)。また、コンピュータを利用した形態学的分析(ASMA)から
表 2 母豚 1584 頭における精子異常と受精の相関関係(Waberski et al, 1994)
精液の保存期間
分娩率(%)
同腹子豚数(数)
2日
4日
2日
4日
形態学的異常精子細胞
**
(- 0.77)
**
(- 0.9)
―
―
近位部小滴
―
**
(0.79)
―
**
(- 0.87)
遠位部小滴
**
(- 0.87)
**
(- 0.92)
**
(- 0.8)
―
1
ナバックレター 養豚版 Vol.77
明らかなように、精子頭部の大きさが受精率に影響を及ぼす可能性があります。また別の可能性は、先体膜の
完全性が受精率に影響を及ぼしているというものです。しかし、完全な先体頭部(NAR)を有する精子細胞率
と受精率の相関係数は高くありませんでした。
Gadea ら(2004)が指摘しているように、精液検査データを未経産豚/母豚群が AI によって妊娠する可能性
を予測するために利用したとしても、それは単に推定にすぎず、確証を与えるものではありません。受胎の可
能性は、精液の品質など一連の要因の影響を受けます。
受精が成功するためには、多数のステップが連続して起こる必要があることを考慮すると、多くの検査は 1 つ
の特性しか分析できないという現実のため、受精率の正確な予測は困難になっています。多変量解析を用いて、
精子細胞の様々な能力に関する機能的なデータを組み合わせるなら、受精能の判定に役立つでしょう。したがっ
て受精能の予測には、厳選された精液検査を組み合わせた方が単一の検査よりも正確になります。
結論
受精について、特に精子の形態学的変化に関する上記のデータをまとめると、以下のようになります:
・精子の運動性のほか、形態も重要な受精に関連する品質パラメータである。
・受精抑制作用の程度は、多くの要因によって決まる。
・AI では、精子の形態について十分に検討されていない。
・精子の形態学的検査は改善が必要である。実用的なコンセプトが必要である。
・全般的目標は、最高品質の精液を届け、受精の機会を可能な限り高めることである。
これは「International Pig Topics, Vol.27, Number5」を抄訳したものです。
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